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特許7576975二酸化炭素ガス回収装置および二酸化炭素ガス回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】二酸化炭素ガス回収装置および二酸化炭素ガス回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
B01D53/14 220
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020214853
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100713
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】池永 大貴
(72)【発明者】
【氏名】萩生 大介
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/044487(WO,A1)
【文献】特開2013-208531(JP,A)
【文献】特開2017-113665(JP,A)
【文献】特開2015-139748(JP,A)
【文献】特開2012-236170(JP,A)
【文献】特開2013-202496(JP,A)
【文献】特開2013-158685(JP,A)
【文献】特開2016-016393(JP,A)
【文献】特開2015-144981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245737(US,A1)
【文献】特開2011-042554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/00,53/24,53/30-53/32
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、
前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、
前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、
前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、
前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報(但し、吸収液の粘度に係る情報を除く。)に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する制御部と、
を有する、二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項2】
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、
前記制御部は、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する、請求項1に記載の二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の増加量と前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量との関係を特定する情報に基づいて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する、請求項2に記載の二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項4】
二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、
前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、
前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、
前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、
前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する制御部と、を有し、
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、
前記制御部は、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する、二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の増加量と前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量との関係を特定する情報に基づいて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する、請求項4に記載の二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項6】
前記不純物は、重金属成分または熱安定性塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化炭素ガス回収装置。
【請求項7】
二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、を用いる二酸化炭素ガス回収方法であって、
前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報(但し、吸収液の粘度に係る情報を除く。)に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整することを含む、二酸化炭素ガス回収方法。
【請求項8】
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、
前記液量を調整することにおいて、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する、請求項に記載の二酸化炭素ガス回収方法。
【請求項9】
二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、を用いる二酸化炭素ガス回収方法であって、
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、
前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整することを含み、
前記液量を調整することにおいて、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する二酸化炭素ガス回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素ガス回収装置および二酸化炭素ガス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸収液を用いて二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するシステムにおいて、二酸化炭素含有ガスに含まれる酸性ガスの濃度に基づいて、二酸化炭素の吸収性能が低下した吸収液を再生する再生装置への吸収液の抜き出し量を制御することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-208531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の手法では、システムに導入する二酸化炭素含有ガスの酸性ガスの濃度と吸収液の性能の低下に関係があることを仮定した制御であり、吸収液を浄化して再生することが適切に行われていない可能性がある。
【0005】
本開示は、原料ガス中の二酸化炭素を吸収する吸収液の浄化を適切に行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る二酸化炭素ガス回収装置は、二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する制御部と、を有する。
【0007】
上記の二酸化炭素ガス回収装置によれば、再生部における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて、浄化部へ導入する吸収液の液量が調整される。処理ガスの回収量の変化は、吸収液の性能低下と関連していることから、この回収量の変化に基づいて浄化する吸収液の液量を調整することで、吸収液を適切に浄化することが可能となる。
【0008】
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、前記制御部は、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する態様としてもよい。
【0009】
上記の構成を有することで、再生部からの処理ガスの回収量に基づいて加熱蒸気の流量を調整しながら、吸収液の浄化を適切に行うことができる。
【0010】
前記制御部は、前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の増加量と前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量との関係を特定する情報に基づいて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する態様としてもよい。
【0011】
上記の構成を有することで、加熱部に供給する加熱蒸気の増加量に基づいて浄化部へ導入する吸収液の液量を調整することができるので、吸収液の浄化をより適切に行うことができる。
【0012】
前記不純物は、重金属成分または熱安定性塩である態様としてもよい。
【0013】
重金属成分または熱安定性塩が不純物として含まれている場合、再生部において回収される処理ガスにも不純物として重金属成分および熱安定性塩が含まれ得る。これに対して、上記のように浄化部において重金属成分および熱安定性塩を除去する構成とすることで、吸収液の浄化を行ないながら、処理ガス中の重金属成分および熱安定性塩の含有量をより小さくすることができる。
【0014】
本開示の一形態に係る二酸化炭素ガス回収方法は、二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部と、前記吸収部からの前記吸収液を加熱することにより、前記二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部と、前記吸収部と前記再生部との間で前記吸収液を循環させる循環経路と、前記循環経路を流れる前記吸収液の一部を導入し、前記吸収液中の不純物を除去した後に前記循環経路に返送する浄化部と、を用いる二酸化炭素ガス回収方法であって、前記再生部における前記処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整することを含む。
【0015】
上記の二酸化炭素ガス回収方法によれば、再生部における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて、浄化装置へ導入する吸収液の液量が調整される。処理ガスの回収量の変化は、吸収液の性能低下と関連していることから、この回収量の変化に基づいて浄化する吸収液の液量を調整することで、吸収液を適切に浄化することが可能となる。)
【0016】
前記再生部は、加熱蒸気を供給して前記吸収液を加熱する加熱部と、前記処理ガスの回収量を計測する回収量計測部と、を有し、前記液量を調整することにおいて、前記回収量計測部で計測される前記処理ガスの回収量に基づいて前記加熱部に供給する前記加熱蒸気の流量を制御すると共に、前記処理ガスの回収量の変化に係る情報として前記加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、前記浄化部へ導入する前記吸収液の液量を調整する態様としてもよい。
【0017】
上記の構成を有することで、再生部からの処理ガスの回収量に基づいて加熱蒸気の流量を調整しながら、吸収液の浄化を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料ガス中の二酸化炭素を吸収する吸収液の浄化を適切に行うことが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示の一形態に係る回収装置を模式的に示す図である。
図2図2は、制御部の機能を模式的に示すブロック図である。
図3図3は、制御部によるロジック構成の一例を示す図である。
図4図4は、制御部のハードウェア構成を示す図である。
図5図5は、二酸化炭素回収方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[回収装置]
図1は、本開示の一形態に係る二酸化炭素ガス回収装置である回収装置1を模式的に示す図である。回収装置1は、二酸化炭素を含む原料ガスを導入し、原料ガスから二酸化炭素を分離して回収する装置である。原料ガスは、例えば、主成分として窒素および二酸化炭素を含み、その他の成分として二酸化炭素以外の成分を含むガスである。原料ガスにおける二酸化炭素の濃度は、例えば10~40体積%である。その他の成分の例としては、酸素、一酸化炭素、炭化水素、硫黄酸化物、および窒素酸化物等が挙げられる。
【0022】
回収装置1は、吸収部10と、循環部20と、再生部30と、浄化部40と、制御部50と、を含んで構成される。また、回収装置1は、上述の各部を互いに接続する流路、および任意の付帯機器を有する。回収装置1における流路は、例えば配管で構成されていてもよく、配管に加えて槽およびタンク等で構成されていてもよい。
【0023】
吸収部10は、原料ガスを吸収液に吸収させる機能を有する。吸収部10は、例えば、吸収塔11を含んで構成される。吸収塔11には流路L1を介して供給される原料ガスを導入する。吸収塔11は、化学吸収法によって原料ガスから二酸化炭素を回収する。吸収塔11は、原料ガスと二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させて、原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる。吸収液によって二酸化炭素が低減または除去された原料ガス(オフガス)は外部に大気放散されてもよい。
【0024】
吸収塔11の上部には、後述の再生部30において二酸化炭素の含有量が十分に低減された吸収液を吸収塔11内に供給する流路L2が接続されている。吸収液は、流路L2を流通して、吸収塔11内に供給される。吸収液は、二酸化炭素を吸収する液体であり、例えばアミン水溶液である。アミン水溶液としては、例えば、MEA(モノエタノールアミン)、EAE(エチルアミノエタノール)、IPAE(イソプロパアミノエタノール)、およびTMDAH(テトラメチルジアミノヘキサン)等の水溶液が挙げられる。
【0025】
吸収塔11では、吸収液が降下するとともに原料ガスが上昇する。これによって、吸収液と原料ガスが向流接触して、原料ガスに含まれる二酸化炭素が吸収液に吸収される。吸収塔11内の温度は、例えば吸収液の種類に応じて設定することが可能され、例えば30~40℃とされる。吸収塔11内の圧力は例えば0~1.0MPa(ゲージ圧)である。
【0026】
吸収塔11の下部には、二酸化炭素を吸収した吸収液を排出する流路L3が接続されている。なお、二酸化炭素を吸収した後の原料ガスは、図示しない排気流路によって吸収塔11から排出されて後段の処理装置等へ運搬される。流路L3上にはポンプP1が設けられ、流路L3上での吸収液の移動が制御される。
【0027】
循環部20は、吸収部10と再生部30との間で吸収液を循環させる機能を有する。循環部20は、上述の流路L2,L3に加えて、熱交換器21、流路L4,L5を有する。
吸収液を循環させる流路L2,L3,L4,L5は、例えば配管で構成されていてもよく、配管に加えて槽およびタンク等で構成されていてもよい。吸収液を循環させる流路L2,L3,L4,L5が吸収液を循環させる循環経路を構成する。
【0028】
流路L4は、後述の再生部30の再生塔31からの吸収液を熱交換器21へ導入する流路である。流路L4上にはポンプP2が設けられ、流路L4上での吸収液の移動が制御される。流路L4は再生塔31の下部に接続される。また、流路L5は、流路L3を介して熱交換器21へ導入された吸収液を後述の再生部30の再生塔31へ導入する流路である。流路L5は再生塔31の上部に接続される。
【0029】
熱交換器21は、吸収塔11から排出された流路L3を流れる吸収液と、再生部30から排出された流路L4を流れる吸収液との間で熱交換を行う。流路L3を流れる吸収液が例えば80℃~90℃に加熱されて流路L5へ排出される。また、流路L4を流れる吸収液は熱交換により温度が低下した後流路L2へ排出される。
【0030】
再生部30は、吸収部10において二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)から二酸化炭素を分離して、吸収液を再生する。再生部30は、再生塔31と、加熱部32とを含む。
【0031】
再生塔31は、例えば、上方から下方に向かって、複数の充填層を有する。充填層としては、例えば、ラシヒリング等の充填物が充填された層であり、吸収液から二酸化炭素を分離する機能を有する。充填層を複数設けることで、液体と気体との分離を効率よく行うことが可能となり得る。再生塔31は、このような構成に限定されず、吸収液から二酸化炭素を分離することが可能な構成であればよい。
【0032】
再生塔31の下部(塔底部または塔底部付近)には、上方に接続された流路L5から導入された吸収液を受けるトレイが設けられる。再生塔31には、トレイに滞留した吸収液を加熱部32へ導入する流路L6と、加熱部32からの吸収液を再生塔31内へ導入する流路L7と、が接続される。また、再生塔31の下部であって、上記のトレイの下方には、二酸化炭素が分離された吸収液を熱交換器21へ向けて排出するための流路L4が接続される。
【0033】
加熱部32は、再生塔31から流路L6を経て導入された吸収液を加熱する機能を有する。加熱部32には、流路L8を介して熱媒としての低圧蒸気(加熱蒸気)が導入され、低圧蒸気との間で熱交換を行うことで、吸収液が例えば80℃~130℃に加熱される。低圧蒸気は、例えば、水(純水)を加熱することによって生成されて、流路L8へ導入される。加熱部32で加熱された吸収液は流路L7を経て再生塔31内へ戻される。低圧蒸気は熱交換によって水となり、外部へ排出される。
【0034】
流路L8には、低圧蒸気の流量を測定する流量計F1と、低圧蒸気の流量を調整するバルブV1(調整弁)とが設けられる。
【0035】
再生塔31の塔頂には、二酸化炭素を含むガスを排出するための流路L9が設けられる。再生塔31内で吸収液から分離された二酸化炭素を含むガスは、再生塔31内を上昇し塔頂の流路L9から再生塔31の外部へ排出される。流路L9から排出されるガスは、回収される。流路L9には、流路L9を流れる気体の量を測定する流量計F2が設けられる。流量計F2は、処理ガスの回収量を計測する回収量計測部としての機能を有する。処理ガス中における二酸化炭素の濃度は、例えば99体積%以上であり、好ましくは99.9体積%以上である。
【0036】
なお、回収された処理ガスは、二酸化炭素を主成分とするガスとして種々の用途に使用され得る。用途の一例としては、例えば、工業製品、食品などの製造等が挙げられる。なお、用途に応じて、処理ガス中の二酸化炭素の濃度、または、処理ガス中の二酸化炭素以外の成分等に制限が生じる場合がある。
【0037】
浄化部40は、流路L3を流れる吸収液の一部を導入し、吸収液中の不純物を除去した後に流路L3に返送する機能を有する。浄化部40は、浄化装置41と、浄化装置41に対して流路L3から吸収液を導入する流路L10と、浄化装置41を経た吸収液を流路L3へ返送する流路L11とを含む。また、流路L10には、流路L10を流れる吸収液の流量を測定する流量計F3と、吸収液の流量を調整するバルブV3(調整弁)とが設けられる。
【0038】
浄化装置41は、吸収液中の不純物を除去する。除去対象となる不純物としては、例えば、原料ガスに由来する無機ダスト(シリカ、アルミナ、酸化鉄、Ni等)、有機物(揮発油分、炭化水素類等)、その他微量ガス成分(SO、NO、CO、炭化水素類、Ni,Mn等の重金属成分等)、吸収液が酸または無機塩等と反応することによって生じる熱安定性塩(熱安定性アミン塩)等が挙げられる。これらの不純物のうちどの成分が吸収液に混入しやすいかは、例えば、原料ガスの含有成分等にも由来する。したがって、不純物を除去するための浄化装置41は、吸収液に含有され得る不純物を除去可能な装置が適宜選択して設定され得る。
【0039】
なお、吸収液の不純物は、再生塔31で二酸化炭素と共に吸収液から分離され得るため、二酸化炭素を含むガス中の不純物として混入し得る。したがって、吸収液中の不純物を低減させることで、二酸化炭素を含むガス中の不純物の割合を低減させることができる。また、吸収液から不純物を除去することで、吸収液による二酸化炭素の回収率も向上し得る。
【0040】
制御部50は、回収装置1における各部の制御を行う機能を有する。特に、制御部50は、再生部30における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて、浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する機能を有する。制御部50による制御の詳細については後述する。
【0041】
上記の回収装置1では、流路L1から吸収塔11に導入された原料ガスは、吸収塔11内を下方から上方へ移動する。このとき、流路L2によって吸収塔11内に導入され、上方から下方へ移動する吸収液と接触することによって、原料ガス中の二酸化炭素が吸収液に吸収される。二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)は、吸収塔11から流路L3へ排出される。熱交換器21を経由することで加熱された吸収液は、流路L5を経て再生塔31の上方へ導入される。
【0042】
吸収液は、再生塔31内の充填層を通過しながら、二酸化炭素が分離されつつ下方へ移動する。さらに、吸収液は流路L6を経て加熱部32へ導入される。加熱部32では、流路L8を経て加熱部32に供給される低圧蒸気との間で熱交換が行われることで、吸収液が加熱される。流路L8に設けられたバルブV1の開度を調整することで、加熱部32に供給される低圧蒸気の流量が調整される。低圧蒸気の流量の増減によって吸収液の加熱温度が調整され得る。加熱部32において加熱された吸収液は、流路L7を経て再生塔31へ戻され、再度二酸化炭素の分離が行われた後に流路L4から排出される。流路L4を流れる吸収液(リーン液)は、熱交換器21において熱交換によって冷却された後、流路L3へ排出される。このように、循環部20に含まれる流路L2,L3,L4,L5を経て、吸収液は吸収部10(吸収塔11)と再生部30(再生塔31および加熱部32)との間を循環する。
【0043】
流路L3を流れる吸収液のうち一部は流路L3から分岐する流路L10へ流れ、浄化装置41を経て不純物が除去された後に、流路L11を経由して流路L3へ返送される。バルブV3の開度に応じて、流路L10を経由して浄化装置41へ導入される吸収液の流量が変化し得る。
【0044】
[制御部]
制御部50は、上記の回収装置1において、バルブV1,V3の調整を行うことで、加熱部32における吸収液の加熱温度と、浄化部40の浄化装置41において不純物を除去する吸収液の液量と、を調整する。この際に、処理ガスの回収量の変化に係る情報を用いて、浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整することになる。
【0045】
図2に示されるように、制御部50は、処理ガス流量情報取得部51、蒸気流量情報取得部52、浄化量情報取得部53、蒸気流量調節部54、浄化量調節部55、関連情報保持部56を含んで構成される。
【0046】
処理ガス流量情報取得部51は、流路L9に設けられた流量計F2の計測結果に係る情報を取得する機能を有する。流量計F2の計測結果に係る情報は、処理ガスの流量に係る情報であり、再生塔31で回収された二酸化炭素を含むガスの回収量に係る情報となる。
【0047】
蒸気流量情報取得部52は、流路L8に設けられた流量計F1の計測結果に係る情報を取得する機能を有する。流量計F1の計測結果に係る情報は、加熱部32に供給される低圧蒸気の流量に係る情報であり、加熱部32における吸収液の加熱量に対応する情報となる。
【0048】
浄化量情報取得部53は、流路L10に設けられた流量計F3の計測結果に係る情報を取得する機能を有する。流量計F3の計測結果に係る情報は、浄化装置41に導入される吸収液の流量に係る情報である。
【0049】
蒸気流量調節部54は、流路L8に設けられたバルブV1の開度を調節する機能を有する。バルブV1の開度を調節することで、加熱部32へ供給される低圧蒸気の流量が変化する。
【0050】
浄化量調節部55は、流路L10に設けられたバルブV3の開度を調節する機能を有する。バルブV3の開度を調節することで、浄化装置41を含む浄化部40へ導入される吸収液の流量が変化する。
【0051】
関連情報保持部56は、蒸気流量調節部54におけるバルブV1の調節および浄化量調節部55におけるバルブV3の調節に必要な情報を保持する機能を有する。
【0052】
ここで、流量計F1,F2,F3における計測結果に基づいたバルブV1,V3の調節について、説明する。
【0053】
回収装置1では、加熱部32に供給される低圧蒸気の流量は、再生塔31から排出される処理ガスの流量が一定となるように(目標値となるように)調整される。なお、本実施形態における「一定」とは、特定の1つの値に限定されるのではなく、例えば、「所定の範囲内で変動する状態」も「一定」に含まれ得る。例えば、処理ガスの回収量の目標値が3000Nm/hの場合、予め定め得られた±100Nm/hの範囲で処理ガスの回収量が変動した場合も、「一定」といえる。この程度の変動は通常生じ得る程度のものである。
【0054】
原料ガスに含まれる二酸化炭素の割合がある程度一定であって、回収装置1への原料ガスの単位時間あたりの供給量が一定であり、さらに、回収装置1を循環する吸収液の量が一定であり、品質も一定であったとする。この場合、再生塔31から回収される処理ガスの量は理論上は一定となり得る。ここで、加熱部32において吸収液の加熱温度が上昇すると、加熱部32から再生塔31へ返送された吸収液から分離するガスの量が増加するため、処理ガスの回収量が増加する。一方、吸収液の使用を継続していると、吸収液中の不純物が増加することが考えられる。不純物の増加は吸収液の劣化に相当する。吸収液が劣化すると、吸収液が原料ガスと接触することによる二酸化炭素の吸収能が低下する。そのため、再生塔31において回収することができる処理ガスの量が低下することが考えられる。また、実際には、吸収液の劣化以外の事情(例えば、原料ガスの特性の変化等)によっても処理ガスの回収量が低下する可能性が存在する。
【0055】
回収装置1における処理ガスの単位時間あたりの回収量が低下している状況において、回収量を一定にしようとする場合の対処の1つとして、加熱部32における加熱温度を上昇させることが考えられる。加熱温度を上昇させると、加熱後の吸収液からの気体の分離が促進されるため、吸収液からの二酸化炭素を含む気体の回収率が向上する。そのため、加熱温度を上昇させることで、吸収液からの処理ガスの回収量を増加させることができる。
【0056】
上記の観点から、低圧蒸気の流量は処理ガスの回収量が一定となるように制御される。すなわちバルブV1の開度は、流量計F2の計測結果が一定となるように調節される。処理ガスの回収量(単位時間当たりの回収量)は事前に設定されている。また、吸収液の劣化がないと仮定した状態における、処理ガスの回収量の変化量と加熱温度の変化量との相関を特定する情報(処理ガスの回収量の実測値と設定値との差分を埋めるために吸収液をどの程度加熱すればよいかを特定する情報)を予め保持しておくことで、流量計F2の計測結果に応じて、バルブV1の開度を調節することが可能となる。関連情報保持部56において、事前に設定された回収量の設定値を特定する情報と、処理ガスの回収量の変化量と加熱温度の変化量との相関を特定する情報と、を予め保持しておく。そして、蒸気流量調節部54は、関連情報保持部56に保持された上記の情報に基づいて、流量計F2で計測される処理ガスの回収量が設定値となるように、バルブV1の開度を調節することで加熱温度を調整することができる。実際には、蒸気流量調節部54がバルブV1を調節するための制御信号をバルブV1(を動作させる駆動部)に送信することで、バルブV1の調節が行われる。また、流量計F1における計測結果を参照しながら、吸収液の加熱温度が所定の値となるようにバルブV1を制御する。
【0057】
ただし、吸収液が劣化すると、上記の処理ガスの回収量の実測値に応じて設定値に近付けるための加熱温度となるようにバルブV1の開度を調節したとしても、設定値に対応する量の処理ガスを回収できないことが考えられる。これは、吸収液自体の吸収能が低下しているために、そもそも原料ガスからの二酸化炭素の吸収が十分に行えないことに由来する。また、設定値に対応する量の処理ガスを回収できない程度に吸収液が劣化している状況では、吸収液中の不純物の量も増大していると考えられる。このような場合、処理ガスにも上記の不純物に由来した不純物が含まれ、処理ガスにおける二酸化炭素の純度が低下する可能性が考えられる。したがって、このような状況では吸収液の再生が必要であり、浄化装置41による浄化が必要となる。
【0058】
循環部20を循環する吸収液を浄化する方法として、循環する吸収液の全量を浄化装置41において浄化すれば、吸収液の劣化という問題は生じにくいと考えられる。しかしながら、浄化装置41を用いた吸収液中の不純物の除去には多大なコストが発生する。例えば、浄化装置41における不純物の除去プロセスにもよるが、除去プロセス中に、吸収液の主成分(例えば、アミン水溶液では、アミン)の一部が廃棄されてしまう場合がある。そのため、不純物の除去を行った結果、吸収液が回収装置1から失われてしまうことが考えられる。循環経路から失われた吸収液を循環経路に対して補充することは可能であるが、補充する吸収液に係るコストも発生し得る。さらに、不純物の除去プロセスにもよるが、例えば、浄化装置41を動作させるためのコストも発生し得る。このような点を考えると、処理ガスの回収量が十分に確保できる(設定値通りの回収が可能である)範囲で、浄化装置41を用いた吸収液中の不純物の除去を行うことが、コストの増大を防ぎながら適切に処理ガスを回収することに繋がる。換言すると、浄化装置41において不純物を除去する吸収液の量を適切に調節することによって、コスト増大を抑制しつつ、処理ガスにおける二酸化炭素の純度の低下も防ぐことが可能になると考えられる。
【0059】
上記の観点から、浄化装置41へ導入する吸収液の量は、加熱部32における加熱温度に応じて調節される。すなわち、バルブV3の開度は、加熱温度の変化量に対応させて調節される。上述の通り、加熱部32における加熱温度を一定とした場合であっても処理ガスの回収量が減少する場合、加熱部32による加熱温度を上昇させることで処理ガスの回収量が一定となるように調整ができる。しかしながら、このような事象が起きるのは吸収液の劣化が疑われる。そこで、加熱温度の変化量と、浄化装置41へ導入する吸収液の量との相関を特定する情報を予め保持しておくことで、蒸気流量調節部54による加熱温度の調節内容、すなわち、バルブV1の調整内容に応じて、バルブV3の開度を調節することが可能となる。関連情報保持部56において、加熱温度の変化量と、浄化装置41へ導入する吸収液の量を特定するためのバルブV3の開度との相関を特定する情報を予め保持しておく。そして、浄化量調節部55は、関連情報保持部56に保持された上記の情報に基づいて、バルブV3の開度を調節することができる。実際には、浄化量調節部55がバルブV3を調節するための制御信号をバルブV3(を動作させる駆動部)に送信することで、バルブV3の調節が行われる。
【0060】
上述した構成を実現するために制御部50において設定されるロジック構成例を図3に示す。図3では、中央線より下方に回収装置1における制御部50以外の各部を簡略化した状態で示し、図示上方に制御部50が受信する信号および制御部50から送信する信号等の関係を示している。図3中で「AI」とは「アナログ入力」を示し、「AO」とは「アナログ出力」を示している。まず、制御部50の処理ガス流量情報取得部51が流量計F2からの信号(処理ガスの回収量を特定する情報)を取得すると、蒸気流量調節部54において、処理ガス流量を所定の値とするために、設定値情報D1と、処理ガスの回収量の変化量とバルブV1の開度の変化量との相関を特定する情報D2と、に基づいて、加熱部32における加熱温度をどの程度まで変化させるかの目標となる設定値を決定する(図3では、設定値情報D1と情報D2とから導かれるSVとして示している)。そして、この設定値となるように、蒸気流量調節部54は、流量計F2による計測結果(低圧蒸気の流量)を確認しながら、バルブV1の調節を行って、加熱部32における加熱温度を調整する。これらの一連の調整は、所謂カスケード制御によって行われる。
【0061】
制御部50の処理ガス流量情報取得部51は、流量計F2からの信号(処理ガスの回収量を特定する情報)を繰り返し(所定の間隔を空けながら、連続的に)取得する。したがって、処理ガス流量情報取得部51が取得する情報は、処理ガスの回収量の変化量に係る情報といえる。また、蒸気流量調節部54による加熱温度の調整量(バルブV1の調節量)も、処理ガスの回収量の変化に応じて変化する量であるので、処理ガスの回収量の変化量に係る情報の一種であるといえる。
【0062】
一方、浄化量調節部55は、蒸気流量調節部54における調節結果(どの程度加熱温度を変化させたかを特定する情報)と、加熱温度の変化量と浄化装置41へ導入する吸収液の量を特定するためのバルブV3の開度との相関を特定する情報D3とに基づいて、浄化装置41(浄化部40)へ導入する吸収液の量の目標となる設定値を決定する(図3ではD3から導かれるSVとして示している)。情報D3は、浄化装置41へ流す吸収液の液量を特定する情報に対応する。上記の設定値となるように、浄化量調節部55は、バルブV3の調節を行って、浄化装置41へ導入する吸収液の液量を調整する。
【0063】
このように、制御部50の各部は、再生部30における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する制御を行っている。
【0064】
[制御部のハードウェア構成]
制御部50のハードウェアは、それぞれ、例えば一つまたは複数の制御用のコンピュータにより構成される。例えば、制御部50は、図4に示す回路110を有する。回路110は、一つまたは複数のプロセッサ111と、メモリ112と、ストレージ113と、入出力ポート114と、タイマ115とを有する。ストレージ113は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の制御に係る手順を制御部50に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクおよび光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ112は、ストレージ113の記憶媒体からロードしたプログラムおよびプロセッサ111による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ111は、メモリ112と協働して上記プログラムを実行することで、上述した制御部50の各部の機能を発揮する。入出力ポート114は、プロセッサ111からの指令に従って、他の装置との間で電気信号の入出力を行う。タイマ115は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0065】
制御部50は、上記の構成により、回収装置1に含まれる各部等を制御する。なお、上記の制御部50に係るハードウェア構成は一例であって、上記に限定されるものではない。
【0066】
[二酸化炭素回収方法]
図5を参照しながら、回収装置1における二酸化炭素回収方法について説明する。
【0067】
ここでは、回収装置1が既に動作開始し、原料ガスが導入されると共にポンプP1,P2が動作し吸収液が循環している状態であるとする。ここで、制御部50の処理ガス流量情報取得部51が処理ガス流量情報として流量計F2からの信号を取得する(S01)。処理ガス流量情報取得部51が流量計F2からの信号を取得した場合、蒸気流量調節部54は、上述の通り処理ガス流量を維持するように(一定となるように)、蒸気流量を調整する(S02)。このとき、蒸気流量調節部54は、蒸気流量情報取得部52が取得する流量計F1の情報を参照しながら、バルブV1を調整する。また、流量計F2からの信号に基づく蒸気流量の調節の際には、制御部50の関連情報保持部56で保持される設定値情報D1と、処理ガスの回収量の変化量とバルブV1の開度の変化量との相関を特定する情報D2と、が用いられる。
【0068】
一方、浄化量調節部55は、蒸気流量調節部54による加熱温度の調節内容、すなわち、バルブV1の調整内容に応じて、浄化量、すなわち、浄化部40へ分岐させる吸収液の液量を算出する(S03)。浄化量調節部55は、関連情報保持部56において保持される加熱温度の変化量と浄化装置41へ導入する吸収液の量を特定するためのバルブV3の開度との相関を特定する情報D3を参照し、蒸気流量調節部54によって加熱温度をどの程度調整したかに基づいて浄化装置41へ導入する吸収液の量を決定する。そして、浄化量調節部55は、上記の算出結果に基づいて、バルブV3の開度を調節することによって浄化量を調節する(S04)。この一連の動作は、原料ガスの処理を終了するまで(S05-YESとなるまで)継続される。
【0069】
[作用]
上記の回収装置1(二酸化炭素ガス回収装置)および二酸化炭素ガス回収方法では、二酸化炭素を含む原料ガスを吸収液に吸収させる吸収部10と、吸収部10からの吸収液を加熱することにより、二酸化炭素を含む処理ガスを回収する再生部30と、吸収部10と再生部30との間で吸収液を循環させる循環経路(流路L2,L3,L4,L5)と、循環経路を流れる吸収液の一部を導入し、吸収液中の不純物を除去した後に循環経路に返送する浄化部40と、再生部30における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する制御部50と、を有する。上記の回収装置1によれば、再生部30における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて、浄化部40へ導入する吸収液の液量が調整される。処理ガスの回収量の変化は、吸収液の性能低下と関連していることから、この回収量の変化に基づいて浄化する吸収液の液量を調整することで、吸収液を適切に浄化することが可能となる。
【0070】
従来から、吸収液を用いて二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するシステムは知られているが、吸収液の浄化を適切に行う方法については十分な検討が行われていなかった。しかしながら、特に、二酸化炭素以外の種々の不純物を含む原料ガスから、二酸化炭素を吸収する場合、吸収液に不純物が混入しやすいため、処理ガスにも不純物が混入しやすくなる。二酸化炭素の純度が高い処理ガスを回収することが求められている状況では、不純物の混入が重要な問題となり得る。そのため、吸収液の浄化は重要な要素であると言える。一方で、吸収液の浄化は費用的にも作業的にもコストが発生するプロセスであるため、例えば、使用する吸収液全量を浄化しながら循環させるというような装置構成は現実的ではない。また、吸収液の劣化(汚染)の度合いを先に見込んで浄化量を予め定めておくことも考えられるが、吸収液の劣化の度合いを先に予想することは難しく、浄化が不十分な状況も起こり得る。
【0071】
上記の回収装置1(二酸化炭素ガス回収装置)および二酸化炭素ガス回収方法は、これらの問題を解決するものである。すなわち、回収装置1では、処理ガスの回収量の変化が吸収液の劣化(汚染)の状態に密接に関係することに着目し、再生部30における処理ガスの回収量の変化に係る情報に基づいて、浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する。これにより、吸収液の劣化(汚染)の状態を適切に把握し、浄化を行うことが実現される。そのため、吸収液の浄化によって生じるコストの増大を抑制しながら、処理ガスへの不純物の混入も抑制することが可能となる。
【0072】
また、再生部30は、加熱蒸気を供給して吸収液を加熱する加熱部32と、処理ガスの回収量を計測する回収量計測部としての流量計F2と、を有し、制御部50は、回収量計測部で計測される処理ガスの回収量に基づいて加熱部32に供給する加熱蒸気の流量を制御する。また、制御部50は、処理ガスの回収量の変化に係る情報として加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて、浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する。この場合、再生部30からの処理ガスの回収量に基づいて加熱蒸気の流量を調整しながら、吸収液の浄化を適切に行うことができる。
【0073】
また、上記の構成では、吸収液が適切に浄化されるため、処理ガスの回収量を加熱蒸気の流量によってコントロールする場合において、加熱蒸気による吸収液の過度の加熱が防がれる。吸収液の加熱温度が上昇すると、二酸化炭素の回収効率を高めることができる一方で、吸収液が吸収した不純物も処理ガスとして回収される可能性が高くなる。そのため、加熱蒸気の流量に基づいて浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する制御を行う場合、処理ガスに不純物が含まれる可能性をより低くすることができる。
【0074】
上記の回収装置1では、制御部50は、加熱部32に供給する加熱蒸気の増加量と浄化部40へ導入する吸収液の液量との関係を特定する情報に基づいて、浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整する。このような場合、加熱部32に供給する加熱蒸気の増加量に基づいて浄化部40へ導入する吸収液の液量を調整することができる。したがって、吸収液の浄化をより適切に行うことができる。
【0075】
また、浄化部40の浄化装置41における除去の対象となる不純物は、重金属成分または熱安定性塩であってもよい。重金属成分または熱安定性塩が不純物として含まれている場合、再生部30において回収される処理ガスにも不純物として重金属成分または熱安定性塩が含まれ得る。この場合、処理ガスを特定の用途(例えば、食品の製造等)に使用できないといった問題が生じる可能性がある。これに対して、上記のように浄化部40において重金属成分および熱安定性塩を除去する構成とすることで、吸収液の浄化を行ないながら、処理ガス中の重金属成分および熱安定性塩の含有量をより小さくすることができる。
【0076】
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0077】
例えば、上記で説明した回収装置1、吸収部10、循環部20、再生部30、浄化部40等の構成は一例であって、適宜変更することができる。
【0078】
また、制御部50は、バルブV1,V3の開度を調整することで、各部の流量を調整する場合について説明したが、流量の調整方法としてバルブV1,V3の開度を調整する方法とは異なる方法を用いてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、処理ガスの回収量の変化に係る情報として加熱蒸気の流量の変化に係る情報を用いて浄化する吸収液の液量を調整する場合について説明したが、処理ガスの回収量の変化に係る情報として用いることができる情報は、加熱蒸気の流量の変化に係る情報に限定されない。上記の回収装置1では、処理ガスの回収量を一定とすることを前提としているため、回収量を一定とするために調整する加熱蒸気の流量に着目して、この加熱蒸気の流量の変化量を処理ガスの回収量の変化に係る情報として用いている。しかしながら、例えば、処理ガスの回収量を一定としないという条件では、処理ガスの回収量の変化に係る情報として、例えば、流量計F2の計測結果の変動に基づいて、浄化する吸収液の液量を調整する構成としてもよい。また、処理ガスの回収量を一定とすることを前提とした場合であっても、回収量を一定とすることを目的として加熱蒸気の流量とは異なるパラメータを制御する場合もある。このような場合に、制御部50は、加熱蒸気の流量とは異なるパラメータの制御内容を処理ガスの回収量の変化に係る情報として用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…回収装置、10…吸収部、11…吸収塔、20…循環部、30…再生部、31…再生塔、32…加熱部、40…浄化部、41…浄化装置、50…制御部、51…処理ガス流量情報取得部、52…蒸気流量情報取得部、53…浄化量情報取得部、54…蒸気流量調節部、55…浄化量調節部、56…関連情報保持部、F1~F3…流量計、L1~L10…流路、V1,V3…バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5