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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】湿分硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20241025BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241025BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20241025BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20241025BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241025BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20241025BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20241025BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20241025BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20241025BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/013
C08K5/5415
C08K5/544
C08L83/04
C09D183/04
C09D183/06
C09J183/04
C09J183/06
C09K3/10 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020504667
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018044372
(87)【国際公開番号】W WO2019027897
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/538,847
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ウィリアム エム.
(72)【発明者】
【氏名】マルシャン、クリスティン
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-145900(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077100(WO,A1)
【文献】特開2012-017427(JP,A)
【文献】特開2013-139510(JP,A)
【文献】特開2007-177032(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101864173(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101864172(CN,A)
【文献】特開2014-218558(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033563(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103436215(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102977840(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C09D183/00-183/16
C09J183/00-183/16
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部型湿分硬化型シリコーン組成物であって、
ベース成分と、
触媒パッケージ成分と、を含み、
前記触媒パッケージ成分が、前記触媒パッケージ成分の総重量に基づいて、
(i)40~65重量%の、一般式:R -Si-O-((RSiO)-Si-R (2)
[式中、各Rはアルキル基又はフェニル基であり、各Rは同じであっても異なっていてもよく、R、アルキル基、フェニル基、アルケニル基、又はアルキニル基から選択され、dは、25℃で5~100,000mPa.sの粘度を有するポリジアルキルシロキサン(i)をもたらす整数である]を有する、ポリジアルキルシロキサンと、
(ii)15~30重量%の、式:(RO)(Y3-m-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-m
[式中、各RはC1-10アルキル基であり、各Yは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは孤立電子対を有するヘテロ原子を含む化学基であり、各xは1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各mは独立して1、2、又は3であり、nは、0又は1である]による1つ以上の二脚状シランと、
(iii)2~20重量%の、架橋剤と、
(iv)0.01~3重量%の、スズ系触媒と、
を含み、
前記二脚状シランは、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンであり、前記架橋剤は、テトラエチルオルトシリケートであり、かつ、前記スズ系触媒は、ジメチルスズジネオデカノエートであり、
前記ベース成分が、前記ベース成分の総重量に基づいて、
(a)20~80重量%の、少なくとも2つの末端ヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有し、25℃で1,500~150,000mPa.sの粘度を有する、シロキサンポリマーと、
(b)20~70重量%の、1つ以上の補強充填剤と、
(c)0~20重量%の、1つ以上の非補強充填剤と、
を含む、
2部型湿分硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記触媒パッケージ成分の成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)が、完全に混和性である、請求項1に記載の2部型湿分硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマー(a)が、前記ベース成分の総重量に基づいて、20~70重量%の量で、前記組成物中に存在する、請求項1又は2に記載の2部型湿分硬化型シリコーン組成物。
【請求項4】
前記補強充填剤(b)が、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、沈降炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の2部型湿分硬化型シリコーン組成物。
【請求項5】
前記ベース成分:触媒パッケージ成分の重量比が、混合する場合、15:1~1:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の2部型湿分硬化型シリコーン組成物。
【請求項6】
コーティング、コーキング、型製造、及び封入材料としての、又はそれらのための、請求項1~5のいずれか一項に記載の2部型湿分硬化型シリコーン組成物の、使用。
【請求項7】
構造物並びに/又は構造体のガラス及び/若しくは遮断ガラス用途、並びに/又は建物の外装要素及び/又はガス充填遮断構造物パネル、ソーラー用途、自動車用途、電子機器用途、並びに産業用アセンブリ及び保全用途における、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月31日に出願された米国特許出願公開第62/538,847号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ベース成分(又はベース成分組成物)と触媒パッケージ(又は触媒パッケージ組成物)とを含む、2部型(又は2成分型)湿分硬化オルガノシロキサン組成物に関する。触媒パッケージは、貯蔵中に最低限、相分離する。
【0003】
縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、硬化するとエラストマー固形分になり、当該技術分野において理解されている。典型的には、このような組成物は、反応性末端基、例えばヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンを、例えば、ポリジオルガノシロキサンと反応性のシラン架橋剤、例えば、アセトキシシラン、オキシモシラン、アミノシラン、又はアルコキシシランと、好適な触媒の存在下で混合することにより得られる。得られた組成物は、室温での大気の湿分への暴露時に硬化性となり、構造体のシーラント/接着剤として使用することができる。
【0004】
シーラントとして使用する場合には、組成物が、エラストマー体を提供するために、比較的厚い層を硬化できることが重要である。多くの場合で望ましいことは、オルガノポリシロキサン組成物が、塗布後数時間以内に強固な封止を提供するのに十分素早く硬化するが、塗布直後に表面を所望の形状にツールで成形できないほど素早くはないことである。硬化の手段(例えば、架橋剤及び触媒)に応じて、このような組成物は、基材上に直接塗布することができる1部型硬化性製品にてユーザーに提供されてもよく、あるいは使用直前に複数部を一緒に混合することを必要とする複数部、典型的には2部の組み合わせにてユーザーに提供されてもよい。
【0005】
上記の複数部型組成物の個々の部の特性は、概して、大気の湿分によって影響を受けないが、一緒に混合すると、得られる混合物は、優れた深部硬化性を有し、封止材料の本体全体にわたって、すなわち、表面から内側部分まで、実質的に均一な硬化を可能にする。典型的には、このような2成分型組成物は、シラノール末端ジオルガノポリシロキサン及び補強充填剤、例えば、炭酸カルシウムを含有する、第1の(ベース)成分と、アルキル末端ジオルガノポリシロキサン、スズ系触媒、架橋剤、及び接着促進剤、例えばアミノシランを含有する、第2の成分(触媒又は硬化パッケージ)と、を含む。
【0006】
この種類の2成分型組成物の硬化速度は、2つの成分を一緒に混合した後、スズ触媒濃度及び接着促進剤濃度のいずれか又は両方を増加させることによって容易に加速することができることが、全般的に確認されている。しかし、接着促進剤の増加により、特に一級アミノシランの場合、触媒パッケージ中のアルキル末端ジオルガノポリシロキサンはランダムに鎖切断され、これにより粘度が低下し、混合物が不安定になる。加えて、触媒パッケージ中の成分は、常に混和性というわけではない。この非混和性により、アルキル末端ジオルガノポリシロキサンは容器の頂部に上昇することによって相分離する場合があり、その結果、触媒パッケージ中のシラン及び充填剤は、混合物の底部に沈殿する。上記相分離の結果として、触媒パッケージの貯蔵安定性は、劇的に影響を受けることがある。
【0007】
相分離は、エンドユーザにとって重大な問題である。貯蔵期間後、使用前にこのような2液型組成物の触媒パッケージを再混合することは、使用する触媒の一部が可燃性であることによって場合により安全上の危険を引き起こすことがあるので、特に大規模では非常に面倒であり、時間がかかる。更に、担体の流体、例えば非反応性のシリコーンは材料の頂部で上相に蓄積しやすく、他方、充填剤は、シランが豊富な下相に沈殿する可能性が高く、大規模で再混合すると、少なくとも問題になるが、極端な、特に工業規模での場合、顕著な相分離が明らかであるときに、触媒パッケージを交換することが必要になってくる場合がある。
【0008】
本明細書では、ベース成分と触媒パッケージ成分とを有する、2部型湿分硬化型シリコーン組成物が提供される。触媒パッケージ成分は、
(i)一般式:
-Si-O-((RSiO) -Si-R (2)
[式中、各Rはアルキル基又はフェニル基であり、各Rは同じであっても異なっていてもよく、R、アルキル基、フェニル基、アルケニル基、又はアルキニル基から選択される]を有し、25℃で約5~約100,000mPa.sの粘度を有する、すなわち、dが、この粘度範囲をもたらす整数である、ポリジアルキルシロキサンと、
(ii)式:
(RO)(Y3-m-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-m
[式中、各RはC1~10アルキル基であり、各Yは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは孤立電子対を有するヘテロ原子を含む化学基であり、各xは1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各mは独立して1、2、又は3であり、nは、0又は1である]による1つ以上の二脚状シランと、
(iii)架橋剤と、
(iv)スズ系触媒と、を含む。
【0009】
任意の好適なベース成分を用いることができる。例えば、ベース成分は、
(a)少なくとも2つの末端ヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有し、25℃で約1,500~約150,000mPa.sの粘度を有する、シロキサンポリマーと、
(b)1つ以上の補強充填剤と、所望により、
(c)1つ以上の非補強充填剤と、を含んでもよい。
【0010】
あるいは、本明細書では、ベース成分と触媒パッケージ成分とを有する、2部型湿分硬化型シリコーン組成物が提供される。ベース成分は、
(a)少なくとも2つの末端ヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有し、25℃で約1,500~約150,000mPa.sの粘度を有する、シロキサンポリマーと、
(b)1つ以上の補強充填剤と、所望により、
(c)1つ以上の非補強充填剤と、を含み、また、
触媒パッケージは、
(i)ベース成分のポリマー(a)と非反応性のポリジアルキルシロキサンであって、一般式:
-Si-O-((RSiO) -Si-R (2)
[式中、各Rはアルキル基又はフェニル基であり、各Rは同じであっても異なっていてもよく、R、アルキル基、フェニル基、アルケニル基、又はアルキニル基から選択される]を有し、25℃で約5~約100,000mPa.sの粘度を有する、すなわち、dが、この粘度範囲をもたらす整数である、ポリジアルキルシロキサンと、
(ii)式:
(RO)(Y3-m-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-m
[式中、各RはC1~10アルキル基であり、各Yは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは孤立電子対を有するヘテロ原子を含む化学基であり、各xは1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各mは独立して1、2、又は3であり、nは、0又は1である]による1つ以上の二脚状シランと、
(iii)架橋剤と、
(iv)スズ系触媒と、を含む。
【0011】
別途記載のない限り、全ての粘度測定値は、Brookfield(登録商標)コーンプレート粘度計(RV DIII)を使用して、40,000mPa.s以下の粘度についてはコーンプレートCP-52を使用し、40,000mPa.sより高粘度の材料についてはコーンプレートCP-41を使用し、ポリマーの粘度によって速度を調節して測定したものであり、全ての粘度測定値は、別途記載のない限り、25℃で得られた。
【0012】
ベース成分は、(a)少なくとも2つの末端ヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有し、25℃で約1,500~約150,000mPa.s、あるいは25℃で約1,500~約100,000mPa.s、あるいは25℃で約1,500~約80,000mPa.sの粘度を有する、シロキサンポリマーを含んでもよい。シロキサンポリマー(a)は、以下の分子式(1):
3-aSi-Z-O-(R SiO(4-y)/2-Z-Si-R3-a (1)
[式中、aは0、1、2、又は3であり、bは、0又は1であり、zは300~5000の整数であり、yは、0、1、又は2、あるいは2である]によって表してもよい。
【0013】
SiO(4-y)/2の少なくとも97%は、y=2で特徴付けられる。Xは、ヒドロキシル基、又は任意の縮合性基若しくは任意の加水分解性基である。各Zは独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。
【0014】
各Rは独立して、アルキル基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、エポキシアルキル基、若しくはアルケニル基から選択される脂肪族有機基、あるいは各場合において1つの基当たり1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、若しくはエポキシアルキル基、又は各場合において1つの基当たり2~10個の炭素原子を有するアルケニル基から選択され、又は芳香族アリール基、あるいは6~20個の炭素原子を有する芳香族アリール基である。特定の実施形態において、各Rは個々に、メチル基、エチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、及びフェニル基から選択される。
【0015】
各Rは個々に、X;アルキル基、あるいは1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、あるいは2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、及び芳香族基、あるいは6~20個の炭素原子を有する芳香族基からなる群から選択される。特定の実施形態において、各Rは個々に、メチル基、エチル基、オクチル基、トリフルオロプロピル基、ビニル基、及びフェニル基から選択される。いくつかのR基は、上述のように末端基を有してもよいポリマー主鎖からのシロキサン分枝であってもよい。特定の実施形態において、各Rは、メチル基である。
【0016】
シロキサンポリマー(a)の各X基は、同じでも異なっていてもよく、ヒドロキシル基、又は縮合性基若しくは加水分解基であってもよい。用語「加水分解性基」とは、室温で水によって加水分解される、ケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Xは、式-OT[式中、Tは、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、若しくはオクタデシル基;アルケニル基、例えばアリル基、ヘキセニル基;環式基、例えばシクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、若しくはβ-フェニルエチル基;炭化水素エーテル基、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシイソプロピル基、2-ブトキシイソブチル基、p-メトキシフェニル基、若しくは-(CHCHO)CHである]の基、又は任意のN,N-アミノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、若しくはジシクロヘキシルアミノ基を含む。
【0017】
特定の実施形態において、各X基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基から選択される。例示的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、及び2-エチルヘキソキシ基;並びにジアルコキシ基、例えばメトキシメトキシ基又はエトキシメトキシ基、及びアルコキシアリールオキシ基、例えばエトキシフェノキシ基である。特定の実施形態において、各X基は、メトキシ基又はエトキシ基から選択される。
【0018】
各Zは独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。1つの代替例では、各Zは独立して、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基から選択され、更なる代替例では、各Zは独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。
【0019】
ベース成分のシロキサンポリマー(a)は、式(1)によって表わされる単一のシロキサンであってもよく、又は上記式によって表されるシロキサンの混合物であってもよい。ベース成分の成分(a)に関する用語「シロキサンポリマー混合物」により、任意の個々のシロキサンポリマー(a)又はシロキサンポリマー(a)の混合物を包含することを意味する。本明細書で使用するとき、用語「シリコーン含有量」は、シロキサンポリマー(a)、ポリマー混合物、及び/又は樹脂を含むがこれらに限定されない、供給源に無関係の、ベース成分と触媒パッケージとに使用されるシリコーンの総量を意味する。
【0020】
重合度(DP)(すなわち、上記式中、実質的に下付き文字z)は、通常、シリコーンの巨大分子又はポリマー若しくはオリゴマー分子中の、モノマー単位の数として定義される。合成ポリマーは常に、異なる重合度、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物からなる。異なる種類の平均ポリマー分子量があり、異なる実験で測定することができる。最重要な2つは、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)である。シリコーンポリマーのMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、約10~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的なものであり、Mw、Mn、及び多分散指数(PI)が得られる。重合度(DP)=Mn/Mu[式中、Mnは、GPC測定からの数平均分子量であり、Muは、モノマー単位の分子量である]である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによってポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど、粘度は高くなる。様々な実施形態において、シロキサンポリマー(a)は、ベース成分の約20~約80重量%、あるいは約35~約65重量%の量で存在する。
【0021】
ベース成分補強充填剤(b)は、例えば籾殻灰をはじめとする、沈降炭酸カルシウム、高表面積ヒュームドシリカ、及び/又は高表面積沈降シリカなどの、1つ以上の微細化補強充填剤を含有してもよい。典型的には、補強充填剤(b)の表面積は、少なくとも50m/gである。高表面積ヒュームドシリカ及び/又は高表面積沈降シリカの場合、これらは、BET法によって測定して、例えば100~400m/g、あるいは100~300m/gの表面積を有することができる。様々な実施形態において、補強充填剤は、ベース成分の約20~約70重量%、あるいは約35~約65重量%の量で存在する。
【0022】
ベース成分の所望による非補強充填剤(c)は、粉砕炭酸カルシウム、破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、及びカーボンブラック、タルク、珪灰石などの非補強充填剤を含んでもよい。単独で又は上記に加えて使用することができる他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(水滑石)などの粘土、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチウム石が挙げられる。
【0023】
酸化アルミニウム、かんらん石族からなる群からのケイ酸塩;ざくろ石族;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;及び層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩が挙げられる。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMgSiOを含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;MgAlSi12;緑ざくろ石;及びCaAlSi12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩は、ケイ線石;AlSiO;ムライト;3Al.2SiO;カイヤナイト;及びAlSiOなどの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。
【0024】
環状ケイ酸塩族は、コージェライト及びAl(Mg、Fe)[SiAlO18]などのケイ酸塩鉱石を含むが、これらに限定されない。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO]を含むが、これらに限定されない。
【0025】
層状ケイ酸塩は、雲母;KAI14[SiAl20](OH);葉蝋石;Al[Si20](OH);タルク;Mg[Si20](OH);蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al[Si10](OH);及びバーミキュライトなどのケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。所望による非補強充填剤が用いられる様々な実施形態において、非補強充填剤は、ベース成分の最大20重量%の量で存在する。
【0026】
加えて、例えば、脂肪酸若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルにより、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールにより、ベース成分の補強充填剤(b)及び所望によるベース成分の非補強充填剤(c)の表面処理を行うことによって、充填剤を疎水性にし、これにより、他のシーラント成分との均質混合物をより容易に取り扱うこと及び入手することができる。充填剤の表面処理により、それらは、ベース成分のシロキサン(a)ポリマーによって容易に濡れるようになる。これらの表面変性充填剤は凝集せず、ベース成分のシリコーンポリマー(i)に均一に組み込むことができる。これにより未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。充填剤を、前処理してもよく、又はポリマー(a)と混合する際にin situで処理してもよい。
【0027】
触媒パッケージ
本明細書の触媒パッケージについて、貯蔵中に相分離は最低限であり、多くの場合、相分離はないことが見出された。
【0028】
上記のように、2部型組成物の触媒パッケージは、ポリジアルキルシロキサン(i)を含み、これは、ベース成分(すなわち、上記のポリマー(a))中のいずれの反応性のポリマーとも非反応性である。ポリジアルキルシロキサン(i)は、一般式:
-Si-O-((RSiO) -Si-R (2)
[式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、アルキル基又はフェニル基、あるいはC1~10アルキル基、あるいはC1~6アルキル基、あるいはメチル基若しくはエチル基であり;各Rは同じであっても異なっていてもよく、上記R、又はアルケニル基若しくはアルキニル基から選択される]を有してもよい。典型的には、ポリジアルキルシロキサン(i)は、25℃で約5~約100,000mPa.sの粘度を有するものであり、dが、特定の粘度範囲内のポリジアルキルシロキサンをもたらす整数である。典型的には、これらは、組成物のシロキサンポリマーと非反応性のポリジメチルシロキサンであり、例えば、各Rがメチル基であり、各Rが、例えばメチル基、ビニル基、若しくはフェニル基、又はこれらのR基の組み合わせであるポリジメチルシロキサンである。典型的には、ポリジアルキルシロキサン(i)は直鎖状であるが、ある程度の分枝を有してもよい。ポリマー(a)と非反応性のポリジアルキルシロキサン(i)は、典型的には、触媒パッケージ中に担体として存在する。様々な実施形態において、ポリジアルキルシロキサン(i)は、触媒パッケージの約30~約80重量%、あるいは約40~約65重量%の量で存在する。
【0029】
2部型組成物の触媒パッケージはまた、1つ以上の二脚状シラン(ii)を含有する。触媒パッケージの二脚状シランは、以下の式:
(RO)(Y3-m-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH-Si(OR(Y3-m
[式中、各RはC1~10アルキル基であり、各Yは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qは孤立電子対を有するヘテロ原子を含む化学基、あるいはアミン又は尿素であり、各xは1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各mは独立して1、2、又は3、あるいは、2又は3であり、更なる代替例では、mは3であり、nは、0又は1、あるいは1である]によって定義されてもよい。
【0030】
1つの代替例では、触媒パッケージは、以下の式によって定義されてもよい:
(RO)(Y3-m-Si(CH-((NHCHCH-Q(CH)-Si(OR(Y3-m(すなわち、式中、n=1)。
【0031】
1つの代替例では、Qは二級アミンであり、各xは、2~4である。
【0032】
二脚状シラン(ii)の例としては、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)尿素、及び/又はビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)尿素が挙げられる。
【0033】
二脚状シラン(ii)の特定の好適な例としては、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)尿素、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)尿素、及び/又はビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)尿素が挙げられる。
【0034】
なおも更なる代替例では、二脚状シラン(ii)は、以下の式のものである。
(RO)-Si(CH-(NHCHCH-(NHCH-Si(OR
【0035】
この場合、二脚状シランは、ビス(3-トリプロピルオキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、並びに、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、
【化1】
又はビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン
【化2】
などのビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミンから選択されてもよい。
【0036】
あるいは、二脚状シラン(ii)は、N,N’-ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン
【化3】
などのビス(トリアルコキシシリルアルキル)アルキレンジアミンであってもよい。
【0037】
二脚状シラン(ii)は、触媒パッケージ中のポリジアルキルシロキサン(i)と相溶性である。
【0038】
本明細書の種類の2部型組成物は、速やかな深部硬化をもたらすものであり、したがって、接着促進剤は、硬化速度、及び当然のことながら組成物が塗布される基材表面への接着性を確保するために、このような組成物中の必須成分である。接着促進剤として上記機能を良好にもたらすだけでなく、それらによって触媒パッケージの他の成分との相溶性もより良好になるとも思われ、それにより、他のアミノ官能性接着促進剤、例えば非二脚状アミン官能性接着促進剤を単独で使用した場合に、このような組成物中で以前に見られた相分離の回避の完全な根拠になることが、確認された。様々な実施形態において、二脚状シラン(ii)は、触媒パッケージの約5~約50重量%、あるいは約10~約30重量%の量で存在する。
【0039】
任意の好適な架橋剤を、触媒パッケージの架橋剤(iii)として使用することができる。上述の硬化性組成物中の架橋剤(iii)は、ケイ素結合加水分解性基、例えばアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino)基);アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソブトキシ基及びプロポキシ基);及びアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)を含む、1つ以上のシラン又はシロキサンであってもよい。
【0040】
シロキサン系架橋剤の場合、分子構造は、直鎖、分枝状、又は環式であってよい。
【0041】
触媒パッケージの架橋剤(iii)は、好ましくは、1分子当たりオルガノポリシロキサンポリマー(a)中の縮合性基と反応性の、少なくとも3個又は4個のケイ素結合縮合性基(好ましくはヒドロキシル基及び/又は加水分解性基)を有する。架橋剤がシランであり、そのシランが1分子当たり3個のケイ素結合加水分解性基を有する場合、第4の基は、好適には非加水分解性ケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適にはヒドロカルビル基であり、所望によりフッ素及び塩素などのハロゲンによって置換されている。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基);アルケニル基(例えば、ビニル基及びアリル基);アリール基(例えば、フェニル基及びトリル基);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル基)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。ただし、好ましくは、第4のケイ素結合有機基は、メチル基である。
【0042】
触媒パッケージの架橋剤(iii)として使用することができるシラン及びシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン(alkoxytrioximosilane)、アルケニルトリオキシモシラン(alkenyltrioximosilane)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ-ブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオンオキシシラン(phenyl-tripropionoxysilane)、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ(methylethylketoximo))シラン、ビニル-トリス-メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラアミルオルトシリケート及びジメチルテトラアセトキシジシロキサンが挙げられる。
【0043】
触媒パッケージの架橋剤(iii)として使用される架橋剤はまた、上記の2つ以上の任意の組み合わせを含んでもよい。全組成物中(すなわち、ベース成分と触媒パッケージとが一緒に混合されるときの全組成物中)に存在する架橋剤の量は、架橋剤の特定の性質、特に選択される分子の分子量に応じて変化する。好適には、組成物は、上記のシロキサンポリマー(a)と比較して、少なくとも化学量論量で架橋剤を含む。様々な実施形態において、架橋剤(iii)は、触媒パッケージの約1~約30重量%、あるいは約5~約25重量%の量で存在する。
【0044】
触媒パッケージ中の第4の必須成分は、ベース成分と触媒パッケージ成分とを一緒に混合した後の硬化反応のための触媒として使用するのに好適な、スズ系縮合触媒(iv)である。例としては、スズトリフレート、有機スズ金属触媒、例えば、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、並びにジオルガノスズ塩、特にジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート(DMTDN)、及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。様々な実施形態において、スズ触媒は、触媒パッケージの約0.01~約3重量%、あるいは約0.1~約0.5重量%の量で存在する。
【0045】
所望により、触媒パッケージはまた、顔料(v)及び/又は充填剤(vi)のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0046】
顔料
顔料は必要に応じて用いられ、組成物を着色する。組成物と相溶性である限り、任意の好適な顔料を用いることができる。2部型組成物では、顔料及び/又は着色(非白色)充填剤、例えばカーボンブラックを触媒パッケージに用いて、エンドシーラント製品を着色してもよい。存在する場合、カーボンブラックは、充填剤及び着色剤の両方として機能する。
【0047】
充填剤
ベース成分に使用される充填剤のうちの1つはまた、適切とみなされた場合/とき、触媒パッケージに使用することができる。シリカ、例えば、ヒュームドシリカ及び/又は炭酸カルシウムが好ましい。充填剤は、組成物の2つの部の混合比に応じて、0~約50重量%の量で触媒パッケージ中に存在してもよい。
【0048】
他の添加剤を、必要に応じて使用することができる。これらとしては、非二脚状接着促進剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線安定剤、硬化調整剤、電気伝導性充填剤、熱伝導性充填剤、並びに殺真菌剤及び/又は殺生物剤などを挙げることができる。
【0049】
レオロジー調整剤
本発明による湿分硬化性組成物中に組み込まれてもよいレオロジー調整剤としては、ポリエーテル又はポリエステルのポリオールに基づくシリコーン有機コポリマー(欧州特許第0802233号に記載されているものなど)、ノニオン性界面活性剤(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、コポリマー若しくはエチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイド、及びシリコーンポリエーテルコポリマーからなる群から選択されるもの)、並びにシリコーングリコールが挙げられる。いくつかの系について、これらのレオロジー調整剤、特に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、及びシリコーンポリエーテルコポリマーにより、シーラントの、基材に対する接着性、特に可塑性基材に対する接着性を強化することができる。
【0050】
非二脚状接着促進剤
本発明による湿分硬化性組成物中に組み込まれてもよい非二脚状接着促進剤の例としては、アルコキシシラン((エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、アミノアルキルアルコキシシラン、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン又はγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メルカプト-アルキルアルコキシシランなど)、並びにエチレンジアミンとシリルアクリレートとの反応生成物が挙げられる。ケイ素基を含むイソシアヌレート(1,3,5-トリス(トリアルコキシシリアルキル)イソシヌレートなど)を、更に用いてもよい。更に好適な接着促進剤には、エポキシアルキルアルコキシシラン(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなど)の、アミノ置換アルコキシシラン(3-アミノプロピルトリメトキシシランなど)との、及び所望によりアルキルアルコキシシラン(メチルトリメトキシシランなど)との反応生成物がある。典型的には、これらを、少量、例えば、触媒パッケージの最大10重量%で使用して、接着性を向上させることができるが、前述のように、これらの少なくとも部分的な置き換えは有利であり、このことは、これらの組成物において長らく遭遇してきた相分離の問題に対してだけでなく、高投入量の一級アミン系接着促進剤種によって、例えば、触媒パッケージに使用される非反応性のシリコーンのランダムな鎖切断により触媒は不安定になることがあるからでもある。
【0051】
殺生物剤
必要な場合、殺生物剤を組成物中で更に用いてもよい。用語「殺生物剤」は、殺菌剤、殺真菌剤、及び殺藻剤などを包含するものである。本明細書に記載の組成物中で用いることができる、有用な殺生物剤の好適な例としては、例えば、
【0052】
カルバメート(メチル-N-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(カルベンダジム)及び他の好適なカルバメートなど)、10,10’-オキシビスフェノキシアルシン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、
【0053】
N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、ジヨードメチルp-トリルスルホン、紫外線安定剤との組み合わせに適切な場合、2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾール、3-ヨード-2-プロピニル(propinyl)ブチルカルバメート(IPBC)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキサイド、トリアゾリル化合物及びイソチアゾリノン(4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(n-オクチル)4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、及びn-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BBIT)など)が挙げられる。他の殺生物剤としては、例えば、亜鉛ピリジンチオン、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール及び/又は1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾールを挙げることができる。
【0054】
好適には、殺真菌剤及び/又は殺生物剤は、組成物の0~約0.3重量%の量で存在していてもよく、欧州特許第2106418号に記載されているとおり、要求される場合、封入された形態で存在していてもよい。
【0055】
一緒に混合されるとき、ベース成分と触媒パッケージとの全組成物は、組み合わせた組成物の総重量を100重量%として、およそ:
18~72重量%のシロキサンポリマー(a)と、
18~63重量%の補強充填剤(b)と、
0~18重量%の非補強充填剤(c)と、
0~4.5重量%の粘性ポリマー(d)と、
ポリマー(a)と非反応性の、3~8重量%のポリジアルキルシロキサン(i)と、
0.5~5重量%の二脚状シラン(ii)と、
0~3重量%の架橋剤(iii)と、更に、
0~0.3重量%のスズ系触媒(iv)と、
を含む。
【0056】
2部型組成物の場合、ベース成分は、ベース成分の総重量を100重量%として、
20~80重量%のシロキサンポリマー(a)と、
20~70重量%の補強充填剤(b)と、更に、
0~20重量%の非補強充填剤(c)と、
を含む。
【0057】
触媒パッケージは、触媒パッケージの総重量を100重量%として、ポリマー(a)と非反応性の、30~80重量%のポリジアルキルシロキサン(i)、あるいはポリマー(a)と非反応性の、40~65重量%のポリジアルキルシロキサン(i)と、5~50重量%の二脚状シラン(ii)、あるいは15~30重量%の二脚状シラン(ii)と、1~30重量%の架橋剤(iii)、あるいは2~20重量%の架橋剤(iii)と、更に、0~3重量%のスズ系触媒、あるいは0.1~3重量%のスズ系触媒、あるいは0.1~0.5重量%のスズ系触媒と、存在する場合、0~30重量%の着色充填剤(例えば、カーボンブラック)又は顔料、あるいは1~20重量%の着色充填剤と、0~20重量%の補強充填剤、あるいは1~10重量%の補強充填剤と、を含む。
【0058】
2部型シーラント剤組成物の場合には、各部の成分を、上記で示した範囲内の量で一緒に混合した後、ベース成分と触媒パッケージとを、所定の比、例えば、2つの部を混合するとき、15:1~1:1、あるいは15:1~5:1にて、相互混合する。ベース成分:触媒パッケージの目標混合比が15:1以上である場合、概して、充填剤を触媒パッケージに用いない。しかし、ベース成分:触媒パッケージの目標混合比が15:1未満である場合、充填剤を触媒パッケージ中に、目標比が1:1の場合に、触媒パッケージの最大50重量%まで量を多くして用いてもよい。湿分硬化性組成物は、任意の好適な混合装置を用いて、成分を混合することにより調製することができる。
【0059】
得られた組成物は、様々な用途、例えば、ガラス、アルミニウム、ステンレス鋼、塗装された金属、粉末コーティングされた金属などの基材とともに使用するための、コーティング、コーキング、型製造、及び封入材料として用いることができる。具体的には、これらは、構造物並びに/又は構造体のガラス及び/若しくは遮断ガラス用途に使用するためのものである。例えば、各々の場合に上記のようなシリコーンシーラント組成物で封止した、遮断ガラスユニット及び/又は建物の外装要素、例えば、陳列ケース及び/又は構造体のガラス取付けユニット及び/又はガス充填遮断構造物パネルである。他の見込みがある用途としては、ソーラ用途、自動車用途、電子機器用途、並びに産業用アセンブリ及び保全用途が挙げられる。
【0060】
以下の実施例を提示することにより、本明細書で提供される触媒パッケージについて、最低限の相分離で長期間貯蔵/熟成することができることを示す。
【0061】
記述された全ての粘度について、Brookfield(登録商標)コーンプレート粘度計(RV DIII)を使用して、40,000mPa.s以下の粘度についてはコーンプレートCP-52を使用し、40,000mPa.sより高粘度の材料についてはコーンプレートCP-41を使用し、ポリマーの粘度によって速度を調節して測定した。全ての量は、特に明記しない限り、重量パーセント(重量%)である。
【0062】
実施例1
二脚状シラン接着促進剤を使用した上記の2部型組成物の触媒パッケージ(実施例1)における相分離と、標準的な(先行技術の)接着促進剤を使用した比較用の市販触媒パッケージDow Corning(登録商標)983SGS Curing Agent(比較例1)との比較。
【表1】
【0063】
実施例1を、10LのTurelloミキサで調製した。以下のプロセスを使用する。
工程(i):25℃で60,000mPa.sのアルキル末端ジオルガノポリシロキサンを、最初にミキサに導入した。
工程(ii):カーボンブラックをアルキル末端ジオルガノポリシロキサンに添加して、数分間混合した。
工程(iii):次いで、シリカを工程(ii)の生成物に添加し、混合した。
工程(iv):次いで、工程(iii)の生成物を、十分な真空を適用し2000rpmの速度で更に10分間混合した。
工程(v):次いで、工程(iv)の組成物を室温まで冷却した後、それぞれのシラン及び触媒を工程(iv)の生成物に導入し、混合した。
【0064】
実施例1は、ベース成分と混合すると、2部型組成物の硬化を生じさせることに関し、良好に機能することが見出された。物理的特性を試験するために、実施例1及び比較例1の両方で使用して硬化生成物を製造するベース成分は、Dow Corningから市販のベース成分(Dow Corning(登録商標)983 Silicone Glazing及びCurtainwall Base)であった。
【0065】
ベース成分とそれぞれの触媒パッケージとを、Plas-Pak空気圧式ガン及びRatio-Pak(登録商標)8:1カートリッジを使用して混合した。ガンの上にカートリッジを装着した後、キャップを取り外し、プランジャーを前進させることにより、硬化剤及びベースの両方がノズルから流れた。36エレメントのスタティックミキサを取り付け、混合された材料中に筋が観察されなくなるまで材料を押出した。均一な混合が得られてから、試験試料を調製した。全ての材料を約97psi(668.8kPa)で押出した。
【0066】
次いで、得られた実施例1の触媒パッケージを5ガロンのペールに入れ、室温で1年間熟成させた。同様に、比較例1の在庫試料を、同じ方法で熟成した。5ガロンのペール内にて室温で1年間貯蔵後、実施例1は、<2mmの分離を示した。室温で2ケ月間貯蔵後、比較例1は、最大40mmの相分離を示した。これらの値を定規により測定した。
【0067】
実施例2
上記のように様々な触媒パッケージ試料を、上記実施例1におけるプロセスによって調製した。触媒パッケージに用いた組成物は、以下の表2aに特定されるとおりであった。
【表2】
【0068】
次いで、QUV Accelerated Weathering Tester Model QUV/seを使用して、異なる試料を以下の表2bに示すように設定された持続時間にわたって熟成した。QUV熟成は、0.89の放射照度のUVA及び60℃で8時間のサイクルに続いて、50℃で4時間の結露とした。第2の市販の触媒パッケージDow Corning(登録商標)982Curing Agent(比較例2)もまた、更なる比較として熟成させた。
【0069】
これらの触媒パッケージを、実施例1に関して記載した方法で熟成した後、Dow Corning(登録商標)983Silicone Glazing及びCurtainwall Baseと再び相互混合し、得られた硬化材料の物理的特性を測定した。引張強度及び伸びについて、ASTM D412-98A(2002)e1試験方法Aによって試験した。材料の100mil(2.54mm)のスラブをポリエチレンテレフタレート(PET)上に引き伸ばし、室温及び50%の相対湿度(RH)で7日間硬化させた。後硬化の条件は、報告したとおりである。ドッグボーンを、ダイDIN S2を使用して切断し、MTS Alliance R/5上にて20.0インチ/分(0.01ms-1)で5kNのロードセルを使用して引張った。データを収集し、Test Works Elite v.2.3.6を使用して分析した。
【0070】
デュロメータ値を、Shore(登録商標)Conveloader CV-71200タイプAで測定した。試料を、1/2”(1.27mm)の厚さに積層した。報告された値は3つの平均である。
【表3】
【0071】
二脚状の試料(1~4)のデュロメータ値は、QUV熟成後になお安定であった。本発明者らは、この熟成試験後にわずかに低くなったデュロメータ値が見られると予想した。比較例2(Dow Corning(登録商標)982Silicone Insulating Glass Sealant)は、実際にはデュロメータ値が上昇し、このことは、いくらかの量の移動が望ましい分野の用途において、問題となる恐れがある。Dow Corning(登録商標)983SGS Curing Agent(比較例1)は、デュロメータ値が二脚状の実施例よりもはるかに悪化し、加水分解安定性がより低いと見られる。
【表4】
【0072】
二脚状の実施例では、QUV熟成後に、より高い引張強度が維持され、それらが比較例1及び比較例2の両方よりも加水分解安定性であることを示している。
【表5】
【表6】
【0073】
二脚状の実施例(1~4)の弾性率は、QUV熟成後になお安定であった。本発明者らは、この熟成試験後にわずかに低くなった弾性率が見られると予想した。比較例2は、実際には弾性率が上昇し、このことは、いくらかの量の移動が望ましい分野の用途において、問題となる恐れがある。比較例1は、弾性率が二脚状の実施例よりもわずかに悪化し、加水分解安定性がより低いと見られる。
【表7】
【0074】
実施例のQUV耐久性は、比較例1に匹敵し、比較例2の欠点である顕著な悪化も弾性率の上昇もない。
【0075】
用語「含んでいる(comprising)」又は「含む(comprise)」は、本明細書においてこれらの最も広い意味で使用され、「含んでいる(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」という概念を意味し、包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合でも、数値に当てはまることがある。
【0076】
一般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、特に1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体を本明細書に組み込む。
【0077】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュグループに関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュメンバーとは無関係のそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから得られることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0078】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、全体値及び/又は小数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0079】
本発明は、実例となる様式で本明細書に記載されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本発明の多くの修正形態及び変形形態が、上記教示を踏まえて可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲内に具体的に記載されているもの以外に、他の方法で実行してもよい。独立請求項及び従属請求項、単一及び複数の従属請求項の両方の、主題の全ての組み合わせが、本明細書において明確に想定されている。