(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】複合ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241025BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241025BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241025BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241025BHJP
B65D 53/00 20060101ALI20241025BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 H
B32B27/30 A
B32B27/30 C
B32B27/30 Z
B32B27/36
B65D53/00 200
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020517851
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 US2018052907
(87)【国際公開番号】W WO2019067582
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505077426
【氏名又は名称】マイラー・スペシャリティ・フィルムズ・ユー・エス・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シェンシェン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】フェンフア・デン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ニール・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】モイラ・テイラー
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144570(JP,A)
【文献】特表2007-519814(JP,A)
【文献】特開2002-205752(JP,A)
【文献】特開平11-165772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 35/44-35/54、39/00-55/16
65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリマーフィルムの自立層と、
b)前記ポリマーフィルム上にあり、前記ポリマーフィルムとヒートシール層(c)との間にある、プライマー層であって、ポリ塩化ビニリデンポリマーを含むか、またはアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含み、前記アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂が、C
1~4アルキルビニルアセタート樹脂及びC
1~4(メタ)アクリル酸樹脂からなる群の樹脂から選択される、プライマー層と
を含む複合フィルムであって、
ヒートシール組成物を含む前記ヒートシール層が、前記プライマー層の上に配置されており、
前記ヒートシール組成物が、ポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂
、粘着付与剤
、及びC
1~4
アルキルビニルアセタート樹脂及びC
1~4
(メタ)アクリル酸樹脂からなる群の樹脂から選択される、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含み、
i.前記粘着付与剤が、前記ヒートシール組成物の全質量を100%として、前記ヒートシール組成物の少なくとも36質量%であり、60質量%以下の量で存在し、
ii.前記POP樹脂が、前記ヒートシール組成物の全質量を100%として、前記ヒートシール組成物の少なくとも
15質量%であり、
60質量%以下の量で存在
し、
iii. アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂が、前記ヒートシール組成物の全質量を100%として、前記ヒートシール組成物の少なくとも15質量%であり、40質量%以下の量で存在する、
複合フィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂が、エチレンアクリラート(EA)、エチレンビニルアセタート(EVA)、エチレンアクリル酸(EAA)及びエチレンメタクリル酸(EMA)からなる群から選択される、請求項
1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記ヒートシール層(c)中の前記POP樹脂が、
式1:
CH
2=CHR 式1
(式中、Rは、H又はC
1~10アルキルである)
の少なくとも1種のモノマーと、
下記I)~V):
I.同じく式1で表される少なくとも1種の異なるポリマー前駆体
II.式2で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C
4-20α(アルファ),ω(オメガ)-ジオレフィン 式2
III.式3で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C
3-20α(アルファ)-オレフィン 式3
IV.式4で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C
≧18ジオレフィン 式4、及び
V.式5で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C
4~18環状オレフィン(ノルボレンを含む) 式5
のいずれかから選択される少なくとも1種の他の異なるポリマー前駆体と
から得られるか又は得ることができる樹脂から選択される、請求項1
または2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
式1がエチレンモノマーを表す、請求項
3に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記POP樹脂が、少なくとも1種のC
2~4アルキレンと、式2~5のいずれかの少なくとも1種のポリマー前駆体とのコポリマーを含む、請求項
3に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記POP樹脂が、エチレン及び/又はプロピレンと、少なくとも1種のC
5~20ヒドロカルビレンとのコポリマーを含む、請求項
3に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記POP樹脂が、エチレンと、少なくとも1種のC
6~15アルキレンとのコポリマーを含む、請求項
6に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記POP樹脂が、エチレンと、少なくとも1種のC
6~12アルキレンとのコポリマーを含む、請求項
7に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記POP樹脂が、エチレンと、少なくとも1種の直鎖状一不飽和C
6~10アルキレンとのコポリマーを含む、請求項
8に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記POP樹脂が、エチレンと、1-オクテンとのコポリマーである、請求項
9に記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記POP樹脂のDSC融点が、100℃未満である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記POP樹脂の数平均分子量(M
n)が、5000~50000ダルトンである、請求項1から
11のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項13】
前記POP樹脂中のα(アルファ)-オレフィンコモノマーの量が、前記POP樹脂の総量を100mol%として、5~85mol%である、請求項1から
12のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記ポリマーフィルムの層が、極性ポリマー及び/又はポリオレフィンポリマーから形成されている、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項15】
前記ポリマーフィルムが、ポリエステル又はポリオレフィンを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項16】
前記ポリマーフィルムが、二軸配向ポリエステルフィルムを含む、請求項
15に記載の複合フィルム。
【請求項17】
前記ポリマーフィルムが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリエチレンアジパート(PEA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレラート)(PHBV)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、液晶芳香族ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、並びに/又はこれらの組合せ及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項18】
前記ポリマーフィルムが、PLA、PHB、PET、PEN、PEF、これらの組合せ及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項19】
前記ポリエステルが、PET、PEN及びPEFからなる群から選択される、請求項
18に記載の複合フィルム。
【請求項20】
前記ポリエステルが、PET及びPENからなる群から選択される、請求項
19に記載の複合フィルム。
【請求項21】
前記ポリエステルがPETである、請求項
20に記載の複合フィルム。
【請求項22】
前記ポリマーフィルムの層が、二軸配向されている、請求項1から
21のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項23】
請求項1に記載の複合フィルムを製造する方法であって、
i)溶媒中に前記ヒートシール組成物を含むコーティング組成物を、前記ポリマーフィルムの上にある前記プライマー層に適用する工程と、次いで、
ii)前記溶媒を蒸発させる工程と
を含み、
前記ヒートシール組成物が、
前記ヒートシール組成物の全質量を100%として前記ヒートシール組成物の少なくとも
15質量%であり、
60質量%以下の量で存在するポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂、
前記ヒートシール組成物の全質量を100%として前記ヒートシール組成物の少なくとも36質量%であり、60質量%以下の量で存在する粘着付与剤、及び
C
1~4
アルキルビニルアセタート樹脂及びC
1~4
(メタ)アクリル酸樹脂からなる群の樹脂から選択され、前記ヒートシール組成物の全質量を100%として、前記ヒートシール組成物の少なくとも15質量%であり、40質量%以下の量で存在する、
アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂
を含む、方法。
【請求項24】
ポリマーフィルムがポリエステルを含む、請求項
23に記載の複合フィルムを製造する方法。
【請求項25】
前記
アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂が、エチレンアクリラート(EA)、エチレンビニルアセタート(EVA)、エチレンアクリル酸(EAA)及びエチレンメタクリル酸(EMA)からなる群から選択される
、請求項
23に記載の複合フィルムを製造する方法。
【請求項26】
ポリマーフィルムを容器又は自立フィルムに接着させる方法であって、請求項1から22のいずれか一項に記載の複合フィルムを、前記容器又は前記自立フィルムの表面にヒートシールする工程を含む、方法。
【請求項27】
前記表面が、ポリオレフィンの表面である、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記表面が、ポリプロピレン(PP)又は高密度ポリエチレン(HDPE)の表面である、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
包装用物品のヒートシール可能な成分としての、及び/又は包装用物品のためのキャップ用のライナーとしての、請求項1から
22のいずれか一項に記載の複合フィルムの使用。
【請求項30】
前記包装用物品が、オーブンで使用できる食品容器である、請求項
29に記載の複合フィルムの使用。
【請求項31】
請求項1から
22のいずれか一項に記載の複合フィルムを含む包装用物品。
【請求項32】
オーブンで使用できる食品容器である、請求項
31に記載の包装用物品。
【請求項33】
請求項1から
22のいずれか一項に記載の複合フィルムでライニングされた、包装用物品のためのキャップ。
【請求項34】
請求項
33に規定のキャップでシールされた、充填された包装用物品。
【請求項35】
包装用物品に食料品又は液体を充填する方法であって、
a.前記包装用物品に前記食料品又は液体を充填する工程と、
b.前記充填された物品に請求項
33に規定した前記キャップを適用して、前記物品を可逆的にシールする工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月27日出願、COMPOSITE POLYESTER FILMS FOR HEAT SEALING TO NON-POLAR SUBSTRATESと題する米国仮出願第62/563,695号に関し、その優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
非極性基材にヒートシール可能なポリマーフィルムは、コスト削減のために益々多くの食品製造業者がポリプロピレン(PP)トレイに切り替えていることから、益々重要になっている。また、医薬及び食品産業における高密度ポリエチレン(HDPE)及びPP容器用の誘導シールキャップのライナーの市場は、着実に成長している。従来は、エチレンビニルアセタート(EVA)樹脂が、こうした用途に使用されてきたが、PP及びHDPEに対して比較的弱いシールを生成する傾向があり、そのため、多くの用途において適用が限定されてきた。従来の低密度ポリエチレンを採用した代替的なヒートシール接着剤が導入されたが、これらはヒートシール工程のための実用温度範囲がかなり狭い傾向があり、一般的な有機溶媒への溶解度が極端に低いため、溶剤コーティングによって全てのポリマー基材に対して適用できるわけではない(例えば、ポリエステル基材には適用できない)。従って、これらの問題に対処するヒートシール層を有するポリマーフィルム(例えばポリエステルフィルム)は、包装技術において歓迎すべき進歩を示すであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US 4542199
【文献】US4752597
【文献】US4808561
【文献】US5189192
【文献】US5349100
【文献】WO 93/17060
【非特許文献】
【0004】
【文献】「Determination of Number-Average and Weight-Average Molecular Weights of Polymer Sample from Diffusion and Sedimentation Velocity Measurements in Theta Solvent」、Okabe及びMatsuda、第28巻、2325~23339頁、Journal of Applied Polymer Science
【文献】Pure Appl. Chem.、68巻、No.12、2287~2311頁、1996
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、本発明の一態様は、
a)ポリマーフィルム(任意選択で、極性ポリマー及び/又はポリオレフィンポリマーを含むポリマーフィルムであってよい)の自立層であって、更に任意選択で少なくとも一方向に配向されていてよい、自立層と、
b)ポリマーフィルム上にあり、ポリマーフィルムとヒートシール層(c)との間にある、任意選択で存在していてよいプライマー層であって、ハロポリビニリデンポリマー、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含む任意選択のプライマー層と
を含む複合フィルムであって、
ヒートシール組成物を含むヒートシール層が、任意選択のプライマー層が存在する場合にはその上に、任意選択のプライマー層(b)が存在しない場合にはポリマーフィルムの表面上に直接配置されており、
ヒートシール組成物が、ポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂と粘着付与剤とを含み、
(i)粘着付与剤が、ヒートシール組成物の全質量を100%として、ヒートシール組成物の少なくとも20質量%の量で存在し、
(ii)POP樹脂が、ヒートシール組成物の全質量を100%として、ヒートシール組成物の80質量%以下の量で存在し、
(iii)任意選択のプライマー層は、ポリマーフィルムがポリオレフィンを含む場合のみ存在せず、任意選択のプライマー層(b)が存在しない場合には、ヒートシール層(c)と接触しているポリマーフィルムの表面が、コロナ処理されている、
複合フィルムを提供する。
【0006】
複合フィルムは、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を更に含むヒートシール組成物を含んでもよい。
【0007】
複合フィルムは、任意選択のプライマー層(b)中に、ハロポリビニリデンポリマーを含んでもよく、すなわち、PVdX樹脂(式中、Xはハロである(例えば、Xはクロロである))、より好ましくはPVdC樹脂、最も好ましくはPVdC樹脂を含む。
【0008】
複合フィルムは、任意選択のプライマー層(b)及び/又はヒートシール層(c)に存在するアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含んでもよく、このアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂は、C1~4アルキルビニルアセタート樹脂及びC1~4(メタ)アクリル酸樹脂からなる群から、好ましくはエチルアクリラート(EA)、エチレンビニルアセタート(EVA)、エチルアクリル酸(EAA)及びエチルメタクリル酸(EMA)からなる群から選択される。
【0009】
複合フィルムは、ヒートシール層(c)にPOP樹脂を含んでもよく、適切なPOP樹脂を、本明細書において更に定義する。
【0010】
POP樹脂のDSC融点は、100℃未満であってもよい。
【0011】
本明細書に記載のポリマー及び樹脂の分子量(例えば、質量平均(Mw)及び数平均(Mn))は、当業者に公知の任意の適切な方法、例えば実験(例えば、GPC、SEC等)及び/又は理論計算によって判定できる。Mw及びMnを測定する方法は、「Determination of Number-Average and Weight-Average Molecular Weights of Polymer Sample from Diffusion and Sedimentation Velocity Measurements in Theta Solvent」、Okabe及びMatsuda、第28巻、2325~2339頁、Journal of Applied Polymer Scienceに記載されており、この論文を、参照により本明細書に組み込む。
【0012】
POP樹脂中のα(アルファ)-オレフィンコモノマーの量は、100mol%であるPOP樹脂の総量に対して、5~85mol%であってもよい。
【0013】
複合フィルムは、ヒートシール組成物の全質量を100%として、75質量%以下の量で存在するPOP樹脂を含んでもよい。
【0014】
複合フィルムは、粘着付与樹脂であって、ヒートシール組成物の全質量を100%として、好ましくはヒートシール組成物の少なくとも25質量%を構成する粘着付与剤を含んでもよい。
【0015】
複合フィルムは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリエチレンフラノアート(PEF)及びポリエチレンナフタラート(PEN)からなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルを含んでもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の複合フィルムを製造する方法であって、
(i)溶媒中にヒートシール組成物を含むコーティング組成物を、ポリマーフィルムの上にあるプライマー層に(例えば、極性フィルム、例えばポリエステルフィルムに)適用するか、又は、任意選択のプライマー層が存在しない場合には、ポリマーフィルムのコロナ処理されている表面に直接適用する工程と、次いで、
(ii)溶媒を蒸発させる工程と
を含み、
ヒートシール組成物が、
ポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂、
ヒートシール組成物を100%として少なくとも20質量%の量で存在する粘着付与樹脂、並びに
任意選択でアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂、好ましくはEVA樹脂を含む、
方法を提供する。
【0017】
本発明の更なる態様は、ポリマーフィルムを容器又は自立フィルムに接着させる方法であって、本明細書に記載の通りの本発明の複合フィルムを、容器又は自立フィルムの表面にヒートシールする工程を含む、方法を提供する。表面は、ポリオレフィンの表面、例えばポリプロピレン(PP)及び/又は高密度ポリエチレン(HDPE)の表面であってもよい。本発明のヒートシール可能な複合フィルムは、本明細書に記載する通りのヒートシール層をその上に含む、プライマー処理していないポリオレフィンフィルム、又はプライマー処理した極性フィルム(例えば、プライマー処理したポリエステルフィルム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による、HDPE基材へとヒートシールされた、ヒートシール組成物でコーティングされたプライマー処理されたポリエステルフィルムを含む、複合フィルムについての、ヒートシールを行った温度の関数としての剥離強度を、押出コーティングされたEVAヒートシール層を有する先行技術のフィルムをヒートシールした場合と比較して示すグラフである。
【
図2】
図1に図示する試行に類似した、HDPE基材の代わりにポリプロピレン基材を用いた試行の場合の剥離強度結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、非極性基材、例えば、ポリオレフィン基材等、例えばPP及びHDPEを含む様々な基材に対して優れたヒートシール強度を実現する複合フィルムを提供する。複合フィルムは、基材へのヒートシールのための温度範囲が非常に広く、溶剤コーティングによって適用できるという利点がある。複合フィルムは、好都合なことに、ヒートシール開始温度が低く、従来のヒートシール組成物を使用するフィルムと比較して、ヒートシール温度の関数として比較的一定の剥離強度を実現する。これにより、ヒートシール工程における滞留時間が短縮され、それは、プロセス効率に有利に働く。
【0020】
本明細書において使用する場合、「ヒートシール開始温度」という用語は、80psi(約552kPa)で1秒間シールすると、HDPE基材に対して少なくとも350g重(g force)/インチ(約135N/m)の剥離強度が生成される温度である。ヒートシール開始温度は、シール用ポリマーが十分に溶融し、流動して、隣接する層にシール内で溶融結合する最低温度である。この温度未満では、コーティングは、基材に対しての結合強度が不十分となる。多くの包装ラインの用途では、十分なシール強度を確保するために、ヒートシール開始温度をかなり超えるシール温度が一般に使用される。
【0021】
本発明に有用な複合フィルムの組成物のためのヒートシール開始温度は、典型的には265°F(約129℃)又は275°F(約141℃)以下である。更に、本発明の様々な実施形態による複合フィルムの組成物は、典型的な押出コーティングされた製品と比較して、広いシール温度範囲にわたって剥離強度に驚くほどわずかな変化しかもたらさない。275°F(約141℃)で生成されたヒートシールの場合の剥離強度は、典型的には400°F(約204℃)で生成されたヒートシールの少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上である。
【0022】
本発明による複合フィルムは、典型的には、HDPE基材に300°F(約149℃)及び80psi(約552kPa)で1秒間適用されると、少なくとも350g重/インチ(約135N/m)、又は少なくとも500g重/インチ、又は700g重/インチ以上、又は900g重/インチ以上、又は925g重/インチ以上、又は950g重/インチ以上、又は975g重/インチ以上、又は1000g重/インチ以上、又は1025g重/インチ以上(それぞれ約193N/m以上、約270N/m以上、約347N/m以上、約357N/m以上、約367N/m以上、約376N/m以上、約386N/m以上及び約396N/m以上)の剥離強度を実現する。
【0023】
本発明者らは、本発明のヒートシール組成物の高い粘着付与剤含有量のため、これらのヒートシール組成物は、冷却ロール離れが悪く、典型的には押出コーティングによって適用できないことを発見している。本発明者らは、この問題を、ヒートシール組成物をプライマー処理した基材に溶剤コーティングすることによって解決し、ここで、プライマー処理した基材は、極性ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル等)の上にプライマー層を含む。ヒートシール組成物は、プライマー処理していない基材にコーティングすることもでき、ここで、プライマー処理していない基材は、ポリオレフィンポリマーフィルムを含み、ポリオレフィンポリマーフィルムは、プライマーコーティングの使用に代わる手段として任意選択でコロナ処理されていてもよいが、ポリマーフィルムに対するヒートシール層の接着性向上を実現するには、より広い範囲の条件下での複合フィルムの層間剥離を防止し得るため、プライマーの使用が依然として好ましい。本発明は、ある特定のタイプの粘着付与剤樹脂が押出コーティングに使用されることを妨げる熱安定性の問題にも対処する。例えば、軟化点の低い粘着付与剤(例えば、Piccolyte(登録商標)C85樹脂、軟化点82~88℃)は、典型的な押出コーティング条件下では、発煙の原因となり得る。
【0024】
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層を容器又は自立フィルムとの接触層として用いて、容器又は自立フィルムにヒートシールすることができる。容器は、前もって形作られていてもよく、複合フィルムに接合される容器の表面は、いかなる材料で作られていてもよい。適切な例示的材料としては、ガラス、金属、及びポリマーが挙げられる。例示的なポリマーとしては、ナイロン及びポリエステルが挙げられ、それ自体がヒートシール可能ではないポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)ホモポリマーも含まれる。殊に、材料は、HDPE又はPPであってもよい。これに対し、複合フィルムを自立フィルムにヒートシールする場合には、複合フィルムがヒートシールされる自立フィルムの表面が、これらの同じ材料のいずれかで作られていてもよい。
【0025】
本発明の複合フィルムは、ポリマーフィルムの自立層と、ポリマーフィルム上にある任意選択のプライマー層(ポリマーフィルムがコロナ処理されたポリオレフィンフィルムである場合には、任意選択で存在する層)と、プライマー層の上にあるか、任意選択のプライマー層が存在しない場合には、直接プライマー処理していないコロナ処理されたポリマーフィルムの上にある、ヒートシール層と、を含む。典型的には、これらの層は全て、同一の広がりをもっている。
【0026】
ヒートシール層は、1又は複数種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂、好ましくはEVA、EAA又はEMA、より好ましくはEVA樹脂と、1又は複数種の粘着付与剤(例えば、粘着付与樹脂)と、1又は複数種のポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂とを含むヒートシール組成物を含む。複合フィルムの成分のそれぞれについて、ヒートシール層の成分の説明も含め、本明細書において詳細に検討する。
【0027】
本発明のなお更なる態様は、包装用物品(例えばオーブンで使用できる食品容器)のヒートシール可能な成分としての、及び/又は包装用物品のためのキャップ用のライナーとしての、本明細書に記載の本発明のフィルムの使用を提供する。
【0028】
本発明の更に別の態様は、本明細書に記載する通りの本発明の複合フィルムを含む包装用物品を提供し、この包装用物品は、例えば、本明細書に記載する通りの、任意選択でHDPE若しくはPPトレイを含んでいてよいオーブンで使用できる食品容器、及び/又は本発明の複合フィルムでライニングされた包装用物品のためのキャップ、を含む。
【0029】
アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂
アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂は、活性化された不飽和部分を含む少なくとも1種のポリマー前駆体(即ち、それ自体が高分子、例えばオリゴマー又はモノマーであり得る)から得られるか、又は得ることができる可能性のある、樹脂の部分集合を指す。
【0030】
「活性化された不飽和部分」という用語は、本明細書において、少なくとも1つの活性化部分に化学的に近接した、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合を含む種を表すために使用される。好ましくは、活性化部分は、エチレン性不飽和二重結合を、適切な求電子基によるそれへの付加のために活性化する、任意の基を含む。好都合には、活性化部分は、オキシ、チオ、(任意選択で有機置換されていてもよい)アミノ、チオカルボニル及び/又はカルボニル基(後の2つの基は、任意選択でチオ、オキシ又は(任意選択で有機置換されていてもよい)アミノにより置換されていてもよい)を含む。より好都合には、活性化部分は、(チオ)エーテル、(チオ)エステル及び/又は(チオ)アミド部分である。最も好都合には、「活性化された不飽和部分」は、1つ又は複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)カルボニル(チオ)オキシ」及び/又は1つ又は複数の「ヒドロカルビリデニル(チオ)-カルボニル(オルガノ)アミノ」基及び/又は類似部分及び/又は誘導部分、例えば(メタ)アクリラート官能基及び/又はその誘導体を含む部分を含む有機種を表す「不飽和エステル部分」を含む。「不飽和エステル部分」は、任意選択で置換されていてもよい一般的なα,β-不飽和の酸、エステル、並びに/又は、チオ誘導体及びその類似体を含むその他のそれらの誘導体を任意選択で含んでいてもよい。
【0031】
本発明で使用できるアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の調製に適するアクリル前駆体及び/又はビニルポリマー前駆体(例えば、アクリル系及び/又はビニル系のオリゴマー又はモノマー)は、1又は複数種の疎水性、親水性及び/又は部分的に親水性のポリマー前駆体を、重合してアクリルポリマー及び/又はビニルポリマーを形成し得るそれらの成分として含んでいてもよい。
【0032】
疎水性ポリマー前駆体は、少なくとも1つの活性化された不飽和部分、好都合には少なくとも1種の疎水性(メタ)アクリラートモノマーを含む少なくとも1種の疎水性ポリマー前駆体、及び/又はアリールアルキレンポリマー前駆体を、含んでいてもよく、好都合にはそれらから本質的になっていてもよい。本明細書において使用する場合、(メタ)アクリラートは、アクリラート及び/又はメタクリラートの部分を表し、同様に、本明細書においては、(メタ)アクリル系は、アクリル系及び/又はメタクリル系の部分を表す。
【0033】
疎水性(メタ)アクリラートは、C>4ヒドロカルボ(メタ)アクリラートを含んでもよく、好都合には、C>4ヒドロカルボ部分は、C4~20ヒドロカルビル、より好都合には、C4~14アルキル、最も好都合にはC4~10アルキル、例えばC4~8アルキルであってもよい。疎水性(メタ)アクリラートは、イソオクチルアクリラート、4-メチル-2-ペンチルアクリラート、2-メチルブチルアクリラート、イソアミルアクリラート、sec-ブチルアクリラート、n-ブチルアクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、イソデシルメタクリラート、イソノニルアクリラート、イソデシルアクリラート、及び/又はこれらの混合物から選択されてもよい。
【0034】
アリールアルキレンモノマーは、(任意選択でヒドロカルボ置換されていてもよい)スチレンを含んでいてもよく、この任意選択のヒドロカルボは、C1~10ヒドロカルビル、より好都合にはC1~4アルキルであってもよい。アリールアルキレンモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン及び/又はこれらの混合物から選択される。
【0035】
親水性ポリマー前駆体は、疎水性ポリマー前駆体と共重合可能なものであってもよく、水溶性である。少なくとも1種の疎水性のポリマー前駆体は、少なくとも1つの活性化された不飽和部分を含んでいてもよい。親水性モノマーは、少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸(例えば、1つのエチレン基と1つ又は2つのカルボキシ基を有する酸)を含み、有利にはそれから本質的になる。酸は、アクリル酸(及びそのオリゴマー)、ベータカルボキシエチルアクリラート、シトラコン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、メタクリル酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0036】
部分的に親水性のポリマー前駆体は、部分的に水溶性のモノマーと称してもよく、好都合には、少なくとも1つの活性化された不飽和部分を含んでもよい。好ましい部分的に親水性のモノマーは、少なくとも1種のC1~2アルキル(メタ)アクリラートを含み、好都合にはそれから本質的になる。より好ましい部分的に親水性のモノマーは、メチルアクリラート(MA)、メチルメタクリラート(MMA)、エチルアクリラート(EA)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
適切なエチルアクリラート(EA)樹脂の一例は、Bynel(登録商標)2000シリーズの販売名でDuPont社が市販する樹脂である。
【0038】
エチレン-ビニルアセタート(EVA)樹脂は、ポリ(エチレン-ビニルアセタート)(PEVA)としても公知であり、エチレンとビニルアセタートモノマーとから形成されるコポリマーのクラスを表す。ビニルアセタート(VA)は、以下の構造を有する。
【0039】
【0040】
エチレン-アクリル酸(EAA)樹脂は、エチレンとアクリル酸(AA)モノマーとから形成されるコポリマーのクラスを表す。アクリル酸(AA)は、以下の構造を有する。
【0041】
【0042】
エチレン-メタクリル酸(EMA)樹脂は、エチレンとメタクリル酸(MAA)モノマーとから形成されるコポリマーのクラスを表す。メタクリル酸(MAA)は、以下の構造を有する。
【0043】
【0044】
典型的には、ヒートシール層のヒートシール組成物中の1又は複数種のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂(例えば、EA、EAA、EVA及び/又はEMA樹脂)の総量は、質量でヒートシール組成物の少なくとも15%、又は少なくとも18%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は30%がアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂である。典型的には、60%以下、又は55%、50%、45%、若しくは40%以下のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂が、ヒートシール組成物中に存在し、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の質量は全て、100%であるそれぞれのヒートシール組成物の全質量に対するものである(アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂がその一部を形成する組成物次第である)。EVA樹脂は、好ましいビニル樹脂であり、より好ましくは先に記載した量で使用される。ヒートシール組成物中に存在するアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の総量は、質量でヒートシール組成物の15%~60%、好ましくは18%~55%、より好ましくは20%~50%、更により好ましくは25%~45%、最も好ましくは30%~40%、又は例えば18%、23%、30%、34%、36%、54%若しくは60%であってもよい。本明細書に記載のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の質量は全て、100%であるそれぞれのヒートシール組成物の全質量に対するものである。
【0045】
当然ながら、任意選択のプライマー層の成分として任意のアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂も存在する場合、任意のこうしたアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂プライマー層成分の量は、別々に計算され、ヒートシール層の一部を形成し得るアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂に関して本明細書に記載される量の一部を形成しない。
【0046】
本発明に有用なエチレンビニルアセタート(EVA)ポリマーは、ビニルアセタートを15~50wt%、又は18~40wt%、又は25~40wt%含有する。こうしたEVA樹脂は、DuPont社からElvax(登録商標)(250、420、3180、3185、4031、4260)という商標で、Celanese社からAteva(登録商標)(2810A、2821A、3325AC、4031AC)という商標で、Arkema社からEvatane(登録商標)(28-05、28-25、28-40、28-150、33-25、33-45、40-55、42-60)という商標で市販されている。
【0047】
EVA樹脂は、EVAターポリマーとすることもできる。これらは、エチレン、ビニルアセタート、及びアクリル又はメタクリル酸のターポリマーである。例としては、Elvax(登録商標)4260、4310、及び4320が挙げられる。
【0048】
粘着付与剤
ヒートシール温度の関数としての比較的一定のヒートシール剥離強度に加え、適切に低いヒートシール開始温度を実現するため、ヒートシール組成物は、1又は複数種の粘着付与剤の総量を、質量でヒートシール組成物の少なくとも20%、又は全質量でヒートシール組成物の少なくとも22%、25%、27%、若しくは30%が粘着付与剤となる量で含む。粘着付与剤は、粘着付与樹脂であってもよい。ただし、粘着付与剤は、ヒートシール組成物中の他の成分と比較して比較的高価となる傾向があり、コーティングのブロッキングの問題を引き起こす傾向があるため、典型的な用途のためのヒートシール組成物中に60質量%を超える粘着付与剤の総量が含まれる場合、不利な点があり得る。典型的には、ヒートシール組成物中に存在することになる粘着付与剤の総量は、質量でヒートシール組成物の60%以下、又は55%、50%、若しくは45%以下の粘着付与剤である。このヒートシール組成物中に存在する粘着付与剤の総量は、質量でヒートシール組成物の20%~60%、好ましくは22%~60%、より好ましくは25%~55%、更により好ましくは27%~50%、最も好ましくは30%~45%、又は例えば6%、18%、24%、25%、30%若しくは60%であってもよい。本明細書に記載の粘着付与剤の質量は全て、100%であるヒートシール組成物の全質量に対するものである。
【0049】
本発明に適する粘着付与剤(粘着付与樹脂を含んでもよい)としては、合成及び天然ポリテルペン、炭化水素樹脂、ロジン及びロジンエステル樹脂、並びにこれらの組合せが挙げられるが、これに限定されない。粘着付与樹脂は、20℃~160℃、好ましくは90℃~125℃の環球式軟化点を有していてもよい。粘着付与樹脂の数平均分子量は、典型的には少なくとも200又は500ダルトン、典型的には5000ダルトン、2000ダルトン、又は1000ダルトン以下であり、従って、典型的には200~5000ダルトン、好ましくは500~1000ダルトン、より好ましくは500~1000ダルトンのMnを有していてもよい。
【0050】
天然のポリテルペン粘着付与樹脂は、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン及びd-リモネンを含む、天然の再生可能な供給原料をベースとするものである。例としては、以下が挙げられる:
1)Piccolyte(登録商標)C樹脂(C85、C105、C115、C125、C135)、Piccolyte(登録商標)F樹脂(F105、F115)、Piccolyte(登録商標)A樹脂(A25、A115、A125、A135)、Piccolyte(登録商標)S樹脂(525、585、5115、5125、5135);全てPinova社から入手可能。
2)Sylvares(登録商標)TR樹脂(A25L、90、105、7115、7125);全てArizona Chemical社から入手可能。
【0051】
炭化水素粘着付与樹脂は、石油ベースの供給原料である、脂肪族(C5)、芳香族(C9)、DCPD(ジシクロペンタジエン)、又はこれらの混合物のいずれかから製造される。例としては、以下が挙げられる:
1)Piccotac(商標)1020、1095、1100、1115、6095-E、8095;Picco(商標)5120、5140、6100、2215;Regalite(商標)51100、7125;Regalite(商標)R1010、1100、9100、Regalrez(商標)1018、1094、3102、6108;全てEastman社から入手可能;
2)Quintone(登録商標)A100、B170、K100、M100、N295、U190、5100、D100、U185;全てNippon Zeon of Japan社から入手可能;
3)Escorez(商標)1102、1304、1315、2203、5300、5320、5340、5400、5415、5600、5615、5690;全てExxonMobil社から入手可能;
4)Wingtack(登録商標)86、95、98;Norsolene(登録商標)W85、90、100、110、120、130、140;全てCray Valley社から入手可能。
【0052】
ロジンエステル粘着付与樹脂は、ロジン酸とアルコールとの反応によって製造される。ロジン酸は、水素化又は不均化によって改質されていてもよい。典型的な市販品は、メチル、トリエチレングリコール、グリセロール、及びペンタエリトリトールのエステルである。例としては、以下が挙げられる:
1)Foral(登録商標)85、105;3085;Pentalyn(登録商標)A、H、Pentalyn(登録商標)9085、9100;Staybelite(登録商標)エステル3、5、10;全てPinova社から入手可能;
2)Sylvalite(商標) RE8OHP、RE85GB、RE100XL、RE100L、105L、110L、RE25、85、98;全てArizona Chemical社から入手可能;
3)Foralyn(商標)90、110、50201;Permalyn(商標)2085、5095、3100、5110、6110;全てEastman社から入手可能。
【0053】
ポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂
典型的には、ヒートシール組成物は、合計で質量で少なくとも10%の1又は複数種のポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂、又は質量でヒートシール組成物の少なくとも15質量%若しくは20質量%のPOP樹脂を含む。典型的には、質量でヒートシール組成物の60%以下、又は50%以下、40%以下、若しくは30%以下のPOP樹脂が存在する。ヒートシール組成物に存在するPOP樹脂の総量は、質量でヒートシール組成物の10%~60%、好ましくは10%~50%、より好ましくは15%~40%、最も好ましくは20%~30%であってもよい。本明細書に記載のPOP樹脂の質量は全て、100%であるヒートシール組成物の全質量に対するものである。
【0054】
ポリオレフィンプラストマー(POP)樹脂は、エラストマー及びプラスチックの性質を併せ持つポリマーであり、ゴムのような特性と熱可塑性樹脂の加工性とを提供する。本発明での使用に適するPOP樹脂は、エチレンと、メタロセン触媒を用いて重合された少なくとも1種のC3~C20α(アルファ)-オレフィン、好ましくはC4~C8α(アルファ)-オレフィンを含む。こうした樹脂の例、及びそれらを製造する方法は、US 4542199、US4752597、US4808561、US5189192及びUS5349100に開示されており、その全てがあらゆる目的のため、参照することによりに本明細書に組み込まれる。適切なプラストマーは、Affinity(商標)、Versify(商標)及びEngage(商標)(Dow Chemicals社)、Queo(商標)(Borealis社)、Exact(商標)及びVistaMaxx(商標)(ExxonMobil社)という商標で市販されている。
【0055】
本発明で使用するPOP樹脂は、
下記式1:
CH2=CHR 式1
(式中、Rは、H又はC1~10アルキルである)
(好ましくは、式1は、エチレンモノマーを表す)
の少なくとも1種のモノマーと、
下記I~V:
I.同じ式1で表される少なくとも1種の異なるポリマー前駆体
II.式2で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C4~20α(アルファ)、ω(オメガ)-ジオレフィン-式2
III.式3で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C3~20α(アルファ)-オレフィン-式3
IV.式4で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C≧18ジオレフィン-式4、及び
V.式5で表される少なくとも1種のポリマー前駆体
C4~18環状オレフィン(ノルボレンを含む)-式5
のいずれかから選択される少なくとも1種の他の異なるポリマー前駆体と
から得られたものであるか、又はそれらから得ることができる。
【0056】
本発明での使用に有用なPOP樹脂は、少なくとも1種のC2~4アルキレンと式2~5のいずれかの少なくとも1種のポリマー前駆体とのコポリマーが有効な場合もある。
【0057】
好ましいPOP樹脂は、エチレン及び/又はプロピレンと少なくとも1種のC5~20ヒドロカルビレンとのコポリマーであり、より好ましくは、エチレンと少なくとも1種のC6~15アルキレンとのコポリマーであり、更により好ましくは、エチレンと少なくとも1種のC6~12アルキレンとのコポリマーであり、最も好ましくは、エチレンと少なくとも1種の直鎖状一不飽和C6~10アルキレンとのコポリマーであり、例えば、エチレンと1-オクテンとのコポリマーである。
【0058】
好都合には、本発明で使用するPOP樹脂は、適切な触媒、より好都合にはチーグラー-ナッタ触媒又はフリーラジカル開始剤以外を用いて調製され、最も好都合には、触媒は、メタロセン(例えば、ジルコニウム、ハフニウム及び/又はバナジウムとの錯体)、アルモキサン、アニオン性、非イオン性の配位子系であって4~8族金属を含むもの、及び/又はキラル有機金属錯体からなる群から選択される。
【0059】
本発明で使用されるポリオレフィンプラストマー樹脂は、例えば、プラスチックの加工性を有するゴム様の特性を呈することにより、エラストマー及びプラスチックの性質を併せ持つものであってもよい。現在市販されているPOP樹脂は、典型的にはメタロセン触媒を用いて製造されるエチレンと他のオレフィンとのコポリマーである。対照的に、典型的な低密度オレフィンポリマー(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);低密度ポリエチレン(LDPE)及び超直鎖状低密度ポリエチレン(VLDPE))は、従来のチーグラー-ナッタ触媒又はフリーラジカル開始剤によって製造される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、POP樹脂は、多量の他のオレフィン単位を含み、非常に低い融点と低い結晶化度を有し得るが、それでも依然として比較的高い分子量を呈するため、POP樹脂は、ヒートシール可能なコーティングの要件に特に適し得ると出願人は考える。
【0060】
本明細書に記載する通りのポリマー又はオリゴマーの分子量、例えば質量平均分子量(Mwとも表す)若しくは数平均分子量(Mnとも表す)は、理論によって計算してもよく、並びに/又は当業者に公知のように任意の適切な従来の方法によって、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC);ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)及び/若しくはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定してもよい。ポリスチレン標準を用いたGPC法が好ましい。
【0061】
本発明に用いるPOPプラストマーの質量平均分子量(Mw)は、典型的には少なくとも3キロダルトン、又は少なくとも5キロダルトン、又は少なくとも12キロダルトン、又は少なくとも15キロダルトンであって、60キロダルトン以下、又は50キロダルトン以下又は40キロダルトン以下又は30キロダルトン以下であり、Mwは、好ましくはポリスチレン標準を用いたGPCによって判定される。有用には、POPプラストマーは、3~60キロダルトン、又は5~50キロダルトン、又は12~40キロダルトン、又は15~30キロダルトンのMwを有する。
【0062】
本発明に用いるPOPプラストマーの数平均分子量s(Mn)は、典型的には少なくとも5キロダルトン、又は少なくとも15キロダルトンであって、50キロダルトン以下、又は30キロダルトン以下であり、Mnは、好ましくはポリスチレン標準を用いたGPCによって判定される。有用には、POPプラストマーは、5~50キロダルトン、又は15~30キロダルトンのMnを有する。
【0063】
プラストマー中のα(アルファ)-オレフィンコモノマーの量は、5~85mol%、好ましくは10~25mol%、より好ましくは10~30mol%である。プラストマーのDSC融点は、典型的には100℃未満、又は70℃以下である。DSC融点は、典型的には少なくとも40℃、又は少なくとも45℃若しくは50℃である。プラストマーの引張強度は一般に、1.0~20MPa、好ましくは5~10MPa[20インチ/分(約50.8cm/分)、ASTM D369]である。
【0064】
典型的には、本発明による使用に適するPOP樹脂は、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、又はこれらのいずれかとTHF若しくは酢酸エチルとの混合物のうちの少なくとも1種に、いずれの場合も65℃で少なくとも10%の固形分濃度で可溶である。典型的には、結果として得られる溶液は、透明である。
【0065】
他の原材料
複合フィルムがそれ自体又は変換装置の部品の上を摺動する際の抵抗を低減するために、スリップ添加剤が使用される。コーティング産業における最も一般的なスリップ添加剤は、長鎖脂肪酸アミド、例えば、エルカミド及びオレアミドである。
【0066】
1又は複数種のスリップ剤、例えばステアリン酸カルシウム又は脂肪酸アミド(例えばKemamide(登録商標)EZ及びKemamide(登録商標)OR、Chemtura社から入手可能)が、典型的にはヒートシール組成物に含まれる。含まれる場合、スリップ剤は、合計で、典型的には質量でヒートシール組成物の少なくとも0.15%、又は質量でヒートシール組成物の少なくとも0.2%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、若しくは3.5%を構成する。
【0067】
スリップ剤は、合計で、典型的には組成物の7wt%以下、又はヒートシール組成物の6.5%、6%、5.5%、5%、若しくは4.5%以下を構成する。ヒートシール組成物に存在するスリップ剤の総量は、質量でヒートシール組成物の0.15%~7%、好ましくは0.2%~6.5%、より好ましくは0.5%~6.5%、更により好ましくは1%~6.5%、最も好ましくは1.5%~6.5%若しくは2%~6%若しくは2.5%~5.5%若しくは3%~5%若しくは3.5%~4.5%、又は例えば1.5%、1.7%若しくは2.5%であってもよい。本明細書に記載のスリップ剤の質量は全て、100%であるヒートシール組成物の全質量に対するものである。
【0068】
ヒートシール層用の任意選択の原材料は、とりわけ、下記のうちの1又は複数種を含んでもよい:抗ブロック添加剤及び/又はマット感付与剤、例えばシリカ、例えば、Grace Davison社から入手可能なSyloid244又はSyloid620(任意選択で、質量でヒートシール組成物の1%~3%、好ましくは1.5%~2.5%、例えば1.5%;2.2%又は2.5%の量で存在していてよい)、曇り止め剤、例えばソルビタンエステル、例えば、Croda Polymer Additives社から入手可能なATMER(商標)100;帯電防止剤、例えばグリセロールエステル、例えば、Croda Polymer Additives社から入手可能なAtmer(商標)129; UV吸収剤、例えばCiba社から入手可能なTinuvin(登録商標)477DW及びTinuvin(登録商標)1130;並びに顔料、例えば二酸化チタン、例えば、Chemours社から入手可能なTi-Pure(商標)R-101。
【0069】
ヒートシール組成物は、本発明の複合フィルムのヒートシール層を形成し、そのため、本明細書において与えられるヒートシール組成物中の同じ質量%のアクリル樹脂、ビニル樹脂、POP樹脂粘着付与剤、スリップ剤及び/又はその任意の他の成分が、ヒートシール層中に存在し得る質量によるこれらの成分の全質量にも対応し、ここで、ヒートシール層の全質量は100%である。
【0070】
ポリマーフィルム
本発明で使用されるポリマーフィルムは、任意のコーティング又は層の堆積の前に、フィルムを形成することができる任意の適切なポリマーであってよく、従って、ポリオレフィン[例えば、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレン(PE)]、ポリウレタン、ポリビニルハライド[例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)]、極性ポリマー、ポリエステル[例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)]若しくは本明細書に記載する通りの他のポリエステル、ポリアミド[例えば、ナイロン]、ポリアリールエーテルケトン、及び/又は非炭化水素ポリマー;これらの適切な組合せ及び/又は混合物を含み得る。
【0071】
好ましくは、ポリマーフィルムは、ホモポリマー、結晶質ポリマー及び/又はランダムに配向された非晶質で結晶質でないポリマー鎖のポリマーを含む。
【0072】
好都合には、本発明においてポリマーフィルムとして使用すべきポリオレフィンフィルムは、1又は複数種のポリオレフィン[例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンホモポリマー[例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)]及び/又はポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー;任意選択で1つ又は複数の層に]を含んでもよい。本発明のポリマーフィルムの構成するポリマー及び/又は層は、配向、ブロー成形、収縮、延伸、キャスト、押出、共押出されていてもよく、及び/又はこれらの任意の適切な混合物及び/又は組合せを含んでいてもよい。ポリマーフィルムは、任意選択で、任意の適切な手段、例えば電子ビーム(EB)又はUV架橋によって、必要な場合はポリマーフィルムへの適切な添加剤の使用によって架橋してもよい。
【0073】
本明細書において意図されるポリオレフィンの定義は、有意な百分率、好ましくは50質量%以上の1又は複数種のオレフィンモノマーから組み立てられるポリマーである。コポリマーは、2種以上のモノマーから組み立てられるポリマーである。ポリオレフィンフィルムは、ポリエチレンホモポリマー、エチレン-α-オレフィンコポリマー、ポリプロピレン-α-オレフィンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン-ビニルアセタートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー及びそれらの塩、エチレン-スチレンポリマー並びに/又はこうしたポリマーのブレンドを含んでもよいが、これに限定されない。
【0074】
本発明のポリマーフィルムの製造に使用される高分子樹脂は、一般にペレット形態で市販されており、タンブラー、ミキサー及び/又はブレンダーを含む市販の設備を使用して、当技術分野で公知の周知の方法により、溶融ブレンド又は機械的混合されてもよい。樹脂は、加工助剤及び/又は着色剤等の周知の添加剤と共にブレンドされる他の追加の樹脂を有してもよい。ポリマーフィルムを製造する方法は周知であり、狭いスリットダイを通してフィルムを薄いシートとしてキャストする技法や、溶融ポリマーの押出チューブを所望の気泡径及び/又は膜厚にまで膨張させるインフレーションフィルム技法が挙げられる。例えば、ポリマーフィルムを製造するには、樹脂と添加剤を押出機に導入してもよく、そこで、樹脂は加熱によって溶融可塑化され、次いでフィルムチューブへの形成のために押出ダイに移送される。押出温度及びダイ温度は一般に、加工される特定の樹脂に依存し、適切な温度範囲は一般に、当技術分野で公知であるか、樹脂製造業者から入手可能な技術報告書に記載されている。加工温度は、選ばれるプロセスパラメータに応じて様々であり得る。
【0075】
本発明のポリマーフィルムは、無配向(キャストフィルム)であってもよく、好ましくは少なくとも一方向に配向(一軸配向)されていてもよく、より好ましくは二方向に配向(二軸配向)されていてよい。
【0076】
本発明のポリマーフィルムの配向は、その構成ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超える温度でポリマーフィルムを延伸することによって達成できる。結果として得られる配向ポリマーフィルムは、引張及び剛性特性の大幅な改善を呈し得る。配向は、ポリマーフィルムが一方向のみに延伸される場合は1つの軸に沿ったものとなり、ポリマーフィルムがフィルムの平面において互いに垂直な2方向のそれぞれに延伸される場合は、二軸配向となり得る。二軸配向ポリマーフィルムは、平衡であっても非平衡であってもよく、ここで、非平衡フィルムは、好ましい方向、通常は横方向により高い配向度を有する。従来、縦方向(LD)は、フィルムが機械を通過する方向(機械方向又はMDとしても公知である)であり、横方向(TD)は、MDに垂直である。好ましいポリマーフィルムは、MDとTDの両方に配向されている。ポリマーフィルムの配向は、任意の適切な技法によって達成できる。例えば、平坦なポリマーフィルムは、テンターによって、又は引き取りロールとテンターの組合せによって、互いに垂直な2方向のそれぞれに同時に又は順次延伸することによって配向させることができる。気泡プロセスでは、ポリマーフィルムを、複合チューブの形態で押出し、チューブをその後クエンチし、再加熱し、次いで内部ガス圧によって膨張させてTDに配向させ、押出速度よりも速い速度で引き出してMDに延伸し、配向させる。
【0077】
複合フィルムのポリマーフィルムは自立型であり、二軸配向フィルムであって、任意選択で極性ポリマー又はポリオレフィンであることが好ましい。ポリマーフィルムは、任意選択でスリップ添加剤及び/又は抗ブロック添加剤を含有してもよい。
【0078】
本明細書において使用する場合、「極性ポリマー」という用語は、それ自体が極性部分を含む少なくとも1種のポリマー前駆体から得られる及び/若しくは得ることができるポリマー、並びに/又はポリマーが極性部分を含む反復単位を含む場合に得られる及び/若しくは得ることができるポリマーを表す。こうした極性部分の一例は、カルボニルオキシ部分である。極性ポリマーという用語は、従って、結果として得られるポリマー又はそれから製造されるフィルムにおける何らかの一般的な特性を必ずしも含意するものではない。有用には、極性ポリマーには、ポリエステルポリマー及び/又はポリアリールエーテルケトンポリマーが含まれる。
【0079】
極性ポリマーの例には、ポリアリールエーテルケトン;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリラクタート(PLA)、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリフラノアート(PEF)及び/又はポリエチレンナフタラート(PEN)を含むポリエステル;上記のいずれかのための反復単位(又は本明細書に記載の任意の他のポリエステル)を含むコポリエステル、例えばテレフタル酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、フラン(furanoic)酸、ナフタル酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸とジオールとを含むか又はそれらからなるコポリエステル;例えばテレフタル酸、ナフタル酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸とジオールとのコポリエステルを含む。適切な極性ポリマーの更なる例は、本明細書に記載されている。本明細書に記載のポリマーフィルムの自立層を形成するには、ポリエステルが特に好ましい。
【0080】
ポリマーフィルムは、沸騰水に5秒間曝したときに、長さ及び/又は幅が5%未満の収縮率を有してもよい。ポリマーフィルムは、プライマーとヒートシール組成物を担持する表面の反対側の表面上に、何らかのポリマー(同じ又は異なる)を含む他の層、又は金属の層を有さない、ポリマーの単一層であってもよい。
【0081】
本発明で使用されるポリマーフィルムの自立層の形成に適するポリオレフィンには、単独で(即ち、実質的に純粋なポリマーとして)、並びに/又は他のポリマー(例えば本明細書に記載のいずれか)との混合及び/若しくはコポリマーで、フィルムに形成できる(フィルム化できる)、本明細書に記載のポリオレフィンのいずれもが含まれ得る。好ましいポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレン(PE)であり、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムがより好ましい。
【0082】
本発明で使用されるポリマーフィルムの自立層の形成に適するポリエステルには、単独で、並びに/又は他のポリマー(例えば、本明細書に記載の任意の他のポリマー、例えばポリエステル)との混合及び/若しくはコポリマーで、フィルムに形成することができる下記のいずれかもが含まれ得る。
【0083】
脂肪族ポリエステルホモポリマー、例えば、ポリグリコリド若しくはポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)及び/又はポリヒドロキシブチラート(PHB)。
【0084】
脂肪族ポリエステルコポリマー、例えば、ポリエチレンアジパート(PEA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)及び/又はポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレラート)(PHBV)。
【0085】
半芳香族ポリエステルコポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリエチレンナフタラート(PEN)及び/又はポリエチレンフラノアート(PEF)。
【0086】
芳香族ポリエステルコポリマー、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸との重縮合によって得られる及び/又は得ることができるポリマーであって、Kuraray社からVectran(商標)の販売名で市販されているポリマー。
【0087】
同じく本発明での使用に適するのは、フィルム化できる極性ポリマー、例えば、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばVictrex Plc社から登録商標Victrex(登録商標)で市販されているポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0088】
本発明において極性ポリマーフィルムとしての使用に適するポリエステル及び/又はポリアリールエーテルケトンには、脂肪族ポリエステルホモポリマー(例えば、PGA、PLA、PCL、PHA及び/又はPHB);脂肪族ポリエステルコポリマー(例えば、PEA、PBS及び/又はPHBV);半芳香族ポリエステルコポリマー(例えば、PET、PBT、PTT、PEN及び/又はPEF);芳香族ポリエステルコポリマー(例えば、Vectran(商標))、PEEKポリマー(例えば、登録商標Victrex(登録商標)で市販されているもの)、これらの任意の適切な混合物、組合せ及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーが含まれ得る。
【0089】
本発明において極性ポリマーフィルムとしての使用に適する好ましいポリマーは、PGA、PLA、PCL、PHA、PHB、PEA、PBS、PHBV、PET、PBT、PTT、PEN、PEF、Vectran(登録商標)、PEEK及び/又はこれらの任意の適切な混合物、組合せ及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0090】
本発明においてポリマーフィルムとしての使用に適するより好ましいポリエステルは、PLA、PHB、PET、PEN、PEF、これらの任意の適切な混合物、組合せ及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む。
【0091】
本発明においてポリマーフィルムとしての使用に適する更により好ましいポリエステルは、PET、PEN及びPEFからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0092】
本発明においてポリマーフィルムとしての使用に適する最も好ましいポリエステルは、PET及びPENからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0093】
例えば、本発明においてポリマーフィルムとしての使用に適するポリエステルは、少なくとも1種のPETポリマーを含む。
【0094】
プライマー層
任意選択のプライマー層は、存在する場合、ハロポリビニリデンポリマー(例えば、PVdXポリマーであり、式中、Xはハロである)、好ましくはポリ塩化ビニリデンポリマー(例えば、Xはクロロの場合、即ち、PVdC)及び/又はアクリルポリマー及び/又はビニルポリマー(好ましくはEVAポリマー)を含んでもよい。プライマー層に含ませるのに有用なアクリル及び/又はビニルポリマーは、ヒートシール層がプライマー層に十分に接着して層間剥離に耐性を持つように、ヒートシール層に含ませるために本明細書に記載されているものである。エチレン-アクリル酸(EAA)及び/又はエチレン-メタクリル酸(EMA)のプライマーを使用することもできる。或いは、ポリマーフィルムの自立層がコロナ処理されたポリオレフィンフィルムであり、従ってその表面が十分に活性化されていて、ヒートシール可能な組成物がプライマー処理していないポリオレフィンフィルムに直接適用されてそれに強く接着できるようになっている場合、プライマー層は存在しなくてもよい。
【0095】
プライマー組成物は、本発明の複合フィルムの調製に使用されるポリマーフィルムの自立層に適用してもよく、プライマー組成物は、適切な量のハロポリビニリデン、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含む。従って、任意選択のプライマー層は、任意のハロポリビニリデンポリマー、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を、これらの任意の適切な混合物中に任意の適切な割合又は量で含むこともできる。
【0096】
プライマー層に存在してもよいアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の総量は、ヒートシール層に存在するアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂に関して本明細書において記載した量と同じであってよく、プライマー層の残部は、PVdX成分である。好ましくは、プライマー層は、ハロポリビニリデンポリマー(例えば、PVdCポリマー)、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂(例えば、EVA)を含み、より好ましくはこれらからなり、更により好ましくは、PVdC及び/又はEVAであり、最も好ましくはPVdCである。
【0097】
プライマー組成物がアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂を含む場合、これらの成分の量(100%であるプライマー組成物又は層の全質量に対する質量百分率として表される)は、ヒートシール組成物又は層に存在する量について本明細書において質量で与えられたアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の全質量に対応し得るが、当然のことながら、プライマー層及び/又はヒートシール層のそれぞれに存在してもよいアクリル樹脂及び/又はビニル樹脂の量は、別々に独立して計算される。
【0098】
コーティング(ヒートシール及び/又はプライマー)組成物及び方法
上記成分は、有機溶媒に溶解した溶液又はその混合物からポリマーフィルム、例えばポリエステル基材に適用してもよい。任意の従来のコーティング法、例えばスプレーコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、浸漬コーティング、ワイヤーバーコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、ドクターナイフコーティング、ダイレクト及びリバースグラビアコーティング等を使用してコーティング組成物を適用してもよい。次いでコーティングを乾燥させる。
【0099】
本発明の更に他の態様は、本明細書に記載する通りの本発明の複合フィルムでライニングされた、包装用物品のためのキャップである包装用物品を提供する。
【0100】
本発明のなお更なる他の態様は、本明細書に記載する通りの本発明のキャップでシールされた充填された包装用物品を提供する。
【0101】
本発明のなお更なる別の態様は、包装用物品に食料品又は人間及び/若しくは動物が消費可能な液体を充填する方法であって、
a)物品に食料品又は人間及び/若しくは動物が消費可能な液体を充填する工程と、
b)充填された物品に本発明のキャップを適用して、物品を可逆的にシールする工程と
を含む、方法を提供する。
【0102】
文脈が明らかに別の意味を示していない限り、本明細書において使用する場合、本明細書における用語の複数形は、単数形を含むものと解釈すべきであり、逆もまた同様である。
【0103】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書において使用する場合、後に続くリストが網羅的ではなく、必要に応じて任意の他の追加の適切な項目、例えば1つ又は複数の更なる特徴、成分、原材料及び/又は置換基を含むことも含まないこともあることを意味するものと理解される。
【0104】
「からなる(consisting)」、「からなる(consisting of)」及び/又は「である」という用語は、本明細書において使用する場合、後に続くリストが実質的に網羅的であり、そのため、列挙された成分を一般にその主成分として含み、従って、例えば他の追加項目を除外できることを意味するものと理解される。
【0105】
「主成分」(又はその同義語)は、本明細書において使用する場合、存在する任意の追加の要素又は添加剤が、成分の特性に対して実質的効果を持たない場合の割合を意味するものと理解され、従って、主成分は、関連する全体の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、とりわけ少なくとも90%、殊に約99%の部分の量で存在してもよい。
【0106】
「有効な」、「許容される」「活性のある」及び/又は「適切な」という用語(例えば本発明の、及び/又は必要に応じて本明細書に記載の任意のプロセス、使用、方法、適用、調製、生成物、材料、配合物、化合物、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、及び/又はポリマーに関する)は、本発明の特徴及び/又は本発明に対して使用される特徴を指すものと理解され、その特徴は、正しい方法で使用された場合、それらが追加及び/又は導入されるものに、本明細書に記載されるような実用性のあるものとするために必要な特性を提供するものである。こうした実用性は、例えば、材料が前述の使用にとって必要とされる特性を有する場合は、直接的なものとなり、及び/又は、例えば、材料が、直接的実用性を持つ他の材料を調製する際に合成中間体及び/又は診断ツールとしての用途がある場合は、間接的なものとなり得る。本明細書において使用する場合、これらの用語は、官能基が有効な、許容される、活性のある及び/又は適切な最終生成物の生成に適合することも表す。
【0107】
本発明の好ましい実用性は、包装用物品、例えば食品用のオーブンで使用できるトレイのヒートシール可能な成分(例えば蓋)としての、及び/又は包装用物品のためのキャップ用のライナーとしてのフィルムの使用の1つ又は複数を含む。
【0108】
本明細書における本発明の検討において、別途記載がない限り、パラメータの許容範囲の上限及び下限に関する代替的な値が、前記値の1つが他の値よりもより好ましいという表示を伴って開示されている場合、前記代替値のより好ましいものとより好ましくないものの間にある前記パラメータの各中間値自体が、前記より好ましくない値よりも好ましく、それぞれのより好ましくない値及び前記中間値よりもまた好ましいことを含意する記載であると解釈すべきである。
【0109】
本明細書において与えられる任意のパラメータの上側及び/又は下側境界全てについて、境界値は、各パラメータに関する値に含まれる。同じく当然ながら、本発明の様々な実施形態において本明細書に記載されるパラメータの好ましい及び/又は中間の最小及び最大境界値の組合せは全て、本明細書においてこうした値の組合せが具体的に開示されているか否かに関わらず、本発明の様々な他の実施形態及び/又は優先傾向に関して各パラメータに代替的範囲を定義するためにも使用され得る。
【0110】
従って、例えば、本明細書において0~「x」(例えば、質量及び/又は質量%の単位で)の量で存在すると記載される物質は、(文脈が明らかに別の意味を示していない限り)2つの選択肢の両方を包含することを意味し、第1には、物質は、任意選択で存在しなくてもよい(量がゼロである場合)か、検出可能量未満のごくわずかな量で存在してもよいというより広い選択肢である。第2の好ましい選択肢(物質の量についての範囲においてゼロという少量で表される)は、物質が存在することを示し、ゼロは、少量が、ごく微量、例えば適切な従来の分析技法により検出されるのに十分な任意の量であることを示し、より好ましくは、ゼロは、物質の量の下限が、0.001質量%(本明細書に記載のように計算)以上であることを表す。
【0111】
当然ながら、本明細書において、百分率で表される任意の量の総計は、(丸め誤差を見込んでも)100%を超えることはできない。例えば、本発明の組成物(又はその一部)を構成する全成分の合計は、組成物(又はその同じ一部)の質量(又は他の)百分率で表される場合、丸め誤差を見込んで合計が100%になり得る。しかし、成分のリストが網羅的ではない場合、こうした成分のそれぞれについての百分率の合計は、本明細書に明記されていない任意の追加成分の追加量のある程度の百分率を許容するため、100%未満となり得る。
【0112】
「実質的に」という用語は、本明細書において使用する場合、量又は実体を指し、それが大量又は大部分であることを意味してもよい。「実質的に」は、それが使用されている文脈において問題となる場合、量的に(説明の文脈においてそれが言及するあらゆる量又は実体に関して)関連する全体の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、とりわけ少なくとも98%、例えば約100%の割合を構成することを意味するものと理解できる。類推により、「実質的に含まない」という用語は、同様に、それが言及している量又は実体が、関連する全体の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下、とりわけ2%以下、例えば約0%を構成することを表すことができる。
【0113】
「任意選択の置換基」及び/又は「任意選択で置換されている」という用語は、本明細書において使用する場合、(他の置換基のリストが続かない限り)下記の基、即ち:カルボキシ、スルホ、ホルミル、ヒドロキシ、ハロアミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、メチル、メトキシ及び/又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数(又はこれらの基による置換)を表す。これらの任意選択の基は、前述の基のうちの複数(好ましくは2つ)の同じ部分における全ての化学的に可能な組合せを含む(例えば、アミノとスルフォニルは、直接互いに結合している場合、スルファモイル基を表す)。好ましい任意選択の置換基としては、カルボキシ、スルホ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、シアノ、メチル、クロロ、フルオロ、トリハロメチル及び/又はメトキシが挙げられる。
【0114】
本明細書において使用する場合の「有機置換基」及び「有機基」という同義語(本明細書では「オルガノ」とも略される)は、1つ又は複数の炭素原子と、任意選択で1つ又は複数の他のヘテロ原子を含む、任意の一価又は多価部分を表す(任意選択で1つ又は複数他の部分に結合している)。有機基は、炭素を含有する一価基を含むオルガノヘテリル基(有機元素基としても公知)を含んでもよく、そのため、有機物であるが、炭素以外の原子に自由原子価を有する(例えばオルガノチオ基)。有機基は、これに代えて、又はこれに加えて、官能基のタイプに関わらず、炭素原子に1自由原子価を有する任意の有機置換基を含むオルガニル基を含んでもよい。有機基はまた、複素環式化合物(少なくとも2種の異なる元素の原子を環員として有する環状化合物であり、この場合、1種は炭素である)の任意の環原子から水素原子を除去することによって形成される一価基を含むヘテロシクリル基を含んでもよい。好ましくは、有機基中の非炭素原子は、水素、ハロ、リン、窒素、酸素、ケイ素及び/又は硫黄から、より好ましくは水素、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄から選択されてもよい。
【0115】
最も好ましい有機基は、下記の炭素含有部分、即ちアルキル、アルコキシ、アルカノイル、カルボキシ、カルボニル、ホルミル及び/又はこれらの組合せのうちの1つ又は複数を、任意選択で、下記のヘテロ原子含有部分、即ちオキシ、チオ、スルフィニル、スルフォニル、アミノ、イミノ、ニトリロ及び/又はこれらの組合せのうちの1又は複数種と組み合わせて含む。有機基は、前述の炭素含有及び/又はヘテロ原子部分のうちの複数(好ましくは2つ)の同じ部分における全ての化学的に可能な組合せを含む(例えば、アルコキシとカルボニルは、互いに直接結合している場合、アルコキシカルボニル基を表す)。
【0116】
本明細書において使用される場合の「ヒドロカルボ基」という用語は、有機基の部分集合であり、1つ又は複数の水素原子と1つ又は複数の炭素原子からなり、1つ又は複数の飽和、不飽和及び/又は芳香族部分を含んでもよい任意の一価又は多価部分(任意選択で1つ又は複数の他の部分に結合している)を表す。ヒドロカルボ基は、下記の基のうちの1又は複数種を含んでもよい。ヒドロカルビル基は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価基を含む(例えばアルキル)。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2つの水素原子を除去することによって形成される二価基を含み、その自由原子価は、二重結合に関与しない(例えばアルキレン)。ヒドロカルビリデン基は、炭化水素の同じ炭素原子から2つの水素原子を除去することによって形成される二価基(「R2C=」で表すことができる)を含み、その自由原子価は、二重結合に関与する(例えばアルキリデン)。ヒドロカルビリジン基は、炭化水素の同じ炭素原子から3つの水素原子を除去することによって形成される三価基(「RC≡」で表すことができる)を含み、その自由原子価は、三重結合に関与する(例えばアルキリジン)。ヒドロカルボ基はまた、飽和炭素-炭素単結合(例えば、アルキル基中の);不飽和二重及び/若しくは三重炭素-炭素結合(例えば、それぞれアルケニル基及びアルキニル基中の);芳香族基(例えば、アリール基中の)並びに/又はこれらの組合せを同じ部分に含んでもよく、指定があれば、他の官能基で置換されてもよい。
【0117】
本明細書において使用される場合の「アルキル」という用語又はその均等物(例えば「アルキ(alk)」)は、必要に応じ、文脈が明らかに別の意味を示していない限り、任意の他のヒドロカルボ基を包含する用語、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば二重結合、三重結合、芳香族部分(例えば、それぞれアルケニル、アルキニル及び/又はアリール)及び/又はこれらの組合せ(例えば、アラルキル)、並びに2つ以上の部分を連結する任意の多価ヒドロカルボ種(例えば二価のヒドロカルビレンラジカル、例えば、アルキレン)を含む)によって容易に置きかえられ得る。
【0118】
本明細書において言及したラジカル、置換基、基又は部分はいずれも、特に明記しない限り又は文脈が明らかに別の意味を示していない限り、多価又は一価の種であってもよいが、好ましくは一価の種(例えば、2つの他の部分を連結する二価のヒドロカルビレン部分(例えばアルキレン部分))である。ただし、本明細書に指定があれば、こうした一価又は多価の種は、依然として任意選択の置換基も含むことができる。3個以上の原子の鎖を含む基は、鎖が全体的に又は部分的に直鎖状であり得る、分枝であり得る、及び/又は環(スピロ及び/又は縮合環を含む)を形成し得る基を意味する。ある特定の原子の総数がある特定の置換基について規定され、例えばC1~Nオルガノは、1~N個の炭素原子を含むオルガノ部分を意味する。本明細書における式のいずれかにおいて、1つ又は複数の置換基がある部分(例えば、鎖及び/又は環に沿った特定の位置の)中の任意特定の原子に結合しているものとして示されていない場合、置換基は、任意のHを置きかえてもよく、及び/又は化学的に適切及び/又は有効な部分の任意の利用可能な位置に位置してもよい。
【0119】
好ましくは、本明細書において列挙したオルガノ基はいずれも、炭素原子を1~36個、より好ましくは1~18個含む。オルガノ基中の炭素原子の数は、1~12個であることが更により好ましく、最も好ましくは1~10個、更に最も好ましくは1~6個、例えば1~4個の炭素原子である。
【0120】
本明細書において使用する場合、括弧内に示される特徴を含む化学用語(具体的に特定された化合物のIUAPC名以外)、例えば、(アルキル)アクリラート、(メタ)アクリラート及び/又は(コ)ポリマーは、文脈が示すように、括弧内の部分が任意選択であることを表し、そのため、例えば(メタ)アクリラートという用語は、メタクリラートとアクリラートの両方を表す。
【0121】
ポリマー及び/又はオリゴマーの反復単位上の置換基は、本明細書に記載の使用のためにそれが配合及び/又は導入され得るポリマー及び/又は樹脂と材料との相溶性を向上させるために選択してもよい。従って、置換基のサイズ及び長さを選択して樹脂との物理的絡み合い又は相互配置を最適化してもよく、それらは、必要に応じて、そうした他の樹脂との化学反応及び/又は架橋が可能な他の反応性物質を含んでも含まなくてもよい。
【0122】
本明細書に記載する通りの本発明の一部又は全部を構成する、及び/又はそれらで使用されるある特定の部分、種、基、反復単位、化合物、オリゴマー、ポリマー、材料、混合物、組成物及び/又は配合物は、下記の非網羅的リストのいずれかを含む1つ又は複数の異なる形態(例えば、異性体及び/又は物理的形態)として存在してもよい:
立体異性体(例えば、エナンチオマー(例えばE型及び/又はZ型)、ジアステレオ異性体及び/又は幾何異性体);互変異性体(例えばケト型及び/又はエノール型)、配座異性体、塩、双性イオン、錯体(例えば、キレート、クラスレート、クラウン化合物、クリプタンド/クリプテート、包接化合物、層間化合物、侵入型化合物、配位子錯体、有機金属錯体、非化学量論錯体、π-付加物、溶媒和物及び/又は水和物);同位体置換形態、高分子構成[例えば、ホモ又はコポリマー、ランダム、グラフト及び/又はブロックポリマー、直鎖状及び/又は分枝ポリマー(例えば星形及び/又は側鎖分枝)、多分枝ポリマー(例えば、WO 93/17060に記載されるタイプのもの)、架橋及び/又はネットワーク化ポリマー、二価及び/又は三価反復単位から得ることができるポリマー、樹枝状高分子(例えば、デンドリマー)、立体規則性が異なるポリマー(例えば、イソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックポリマー)];多形体(例えば、侵入型形態、結晶形態及び/又は非晶質形態)、異相、固溶体;及び/又は可能な場合にはこれらの組合せ及び/又はこれらの混合物。本発明は、有効であるこうした形態の全てを含む、及び/又は使用する(例えば、本明細書において定義したように)。
【0123】
本明細書において使用される高分子科学からの他の従来の用語(例えば、ポリマー、モノマー、オリゴマー等)は、IUPACによって推奨され、Pure Appl. Chem.、68巻、No.12、2287~2311頁、1996に定義される通りの意味を有し、その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。「樹脂」及び「ポリマー」という用語は、文脈が明らかに別の意味を示していない限り、本明細書においては交換可能に使用され、そのため、例えばアクリル樹脂及びビニル樹脂という用語は、それぞれアクリルポリマー及びビニルポリマーも表し、逆もまた同様である。
【0124】
本明細書における式は、ポリマー混合物又は一連の個別の化合物を表し得る。本明細書における式が、単分散である種(例えば化合物)を表す場合、そこに示される数値変数の値(例えば、反復単位の数を表す「n」等)はいずれも、独立して特定の範囲内の整数(又は文脈が許容する場合はゼロ)である。式が多分散オリゴマー及び/又はポリマー混合物中に存在する多数の個別の種の平均的構造を表す場合、式中に示される変数の数値はいずれも、特定の範囲を有する実数の非整数であってもよい。
【0125】
当然のことであるが、明確化のために別々の実施形態の文脈において記載されている本発明のある特定の特徴を、単一の実施形態において組み合わせて実現することができる。これとは逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴を、別々に、又は任意の適切な下位組合せにおいて実現することもできる。本発明の他の多くの変形実施形態が当業者には明らかとなり、そのような変形は、本発明の広い範囲内に含まれると考えられる。
【0126】
本発明の更なる態様及びその好ましい特徴は、本明細書において特許請求の範囲に示されている。
【実施例】
【0127】
ここで、本発明を、本発明のプロセス及び組成物を更に例示するために提供される下記の非限定的実施例を参照して詳細に記載する。これらの実施例は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定する意図は全くない。特別の定めがない限り、部、百分率、及び比率は全て、質量基準である。実施例の前の接頭辞C又はCOMPは、それが比較例であり、本発明の一部を形成しないことを示す。
【0128】
様々な登録商標、その他の名称及び/又は略語が、本発明のポリマー及び組成物の調製に使用される原材料の一部を表すために本明細書において使用されている。これらは、化学名及び/又は商品名、並びに任意選択でそれらを市販する製造業者又は供給業者によって以下に特定される。ただし、本明細書に記載の材料の化学名及び/又は供給業者が与えられない場合、それは、例えば当業者に周知の参照文献に容易に見い出すことができるものである。
【0129】
別段の指示がない限り、本明細書に記載される組成の百分率及び比率は全て、質量基準であり、コーティング質量は全て、乾燥させたコーティングの質量を指す。下記の原材料は、更に以下で検討する実施例において言及される。
【0130】
Affinity(商標)GA1950ポリマーは、Dow社から入手可能なエチレン-オクテンポリオレフィンエラストマーであり、メタロセン触媒重合によって製造される。
【0131】
Elvax(登録商標)3180樹脂は、28%のビニルアセタートと72%のエチレン単位を含有するEVAであり、DuPont社から入手可能である。
【0132】
Elvax(登録商標)3185樹脂は、32%のビニルアセタートと68%のエチレン単位を含有するEVAであり、DuPont社から入手可能である。
【0133】
Elvax(登録商標)4260樹脂は、28%のビニルアセタート、71%のエチレン及び約1%のメタクリル酸単位を含有するEVAであり、DuPont社から入手可能である。
【0134】
Engage(商標)8200ポリオレフィンエラストマーは、Dow社から入手可能なエチレン-オクテンコポリマーであり、メタロセン触媒溶液重合によって製造される。
【0135】
Exact(商標)プラストマーは、ExxonMobil社から入手可能なエチレン-アルファオレフィンコポリマーであり、メタロセン触媒重合によって製造される。
【0136】
Kemamide(登録商標)EZは、脂肪アミド(エルカミド)スリップ剤であり、Chemtura社から入手可能である。
【0137】
Pentalyn(登録商標)H粘着付与樹脂は、94~102℃の環球式軟化点を有し、Pinova Solutions社から入手可能である。
【0138】
Piccolyte(登録商標)A115、C115、及びF115粘着付与樹脂は、112~118℃の環球式軟化点を有し、Pinova Solutions社から入手可能である。
【0139】
Queo(商標)7007LAポリマーは、融点が62℃のエチレンベースのオクテン-1プラストマーであり、メタロセン触媒溶液重合によって生成され、Borealis社から入手可能である。
【0140】
Queo(商標)8201ポリマーは、エチレンベースのオクテン-1プラストマーであり、メタロセン触媒溶液重合によって製造され、Borealis社から入手可能である。
【0141】
Syloid(登録商標)620マット感付与剤は、非晶質合成シリカであり、Grace社から入手可能である。
【0142】
Vistamaxx(商標)5102ポリマーは、ランダムエチレン分布を持つイソタクチックプロピレン反復単位で主に構成され、ExxonMobil社から入手可能であり、メタロセン触媒重合によって製造される。
【0143】
Vistamaxx(商標)6202ポリマーは、ExxonMobil社から入手可能なエチレン-プロピレンエラストマーであり、メタロセン触媒重合によって生成される。
【0144】
高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリプロピレン(PP)に対するコーティングのヒートシール強度(本明細書においては剥離強度とも呼ばれる)を、下記のように評価した。コーティングしたポリマーフィルム、即ち、複合フィルムを、Sentinelヒートシーラー(Packaging Industries Group Inc.社によるモデル12)を用いてHDPE又はPPにシールした。特に明記しない限り、ヒートシーラーのパラメータは、350°F(約177℃)(上側挟持部)、100°F(約38℃)(下側挟持部)/1秒/80psi(約552kPa)である。上側挟持部が別の温度であった場合でも、下側挟持部は依然として約100°F(約38℃)であり、わずかな変動があった。シールしたサンプルにマークをつけ、25mm幅の帯に切断し、INSTRON(登録商標)モデル4464試験機上での剥離強度試験によりヒートシール強度を判定した。挟持部は、50mm間隔に設定した。上側の挟持部がシールされたサンプルのフィルム片をつかんで250mm/分の速度で上昇し、一方、下側の挟持部はシールされたサンプルのHDPE又はPP片をつかんで静止していた。フィルムの2片を分離するのに必要な平均力を記録した。コーティングされた各サンプルについて、5枚のシールしたサンプル片を測定した。
【0145】
本明細書における実施例において、一実施例が本明細書に記載の別の実施例と同様に繰り返される、及び/又は調製されるものとして記載される場合、それは、特に示す場合を除き、それ以前の実施例と同様にして、使用したものと同じ原材料を同じ量で使用し、同じ方法で調製される。
【0146】
実施例C1並びに実施例2、3及び4
(実施例C1)
(比較例、POP樹脂を含まないヒートシール組成物)
このヒートシール組成物は、POP樹脂を含有していなかった。Elvax(登録商標)3180(9.0g、DuPont社、質量でヒートシール組成物の28%がビニルアセタート、約60wt%のEVA樹脂)、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂(5.4g、Pinova社、質量でヒートシール組成物の約36wt%の粘着付与樹脂)、Syloid620(0.375g、Grace社、質量でヒートシール組成物の約2.5wt%のマット感付与剤)及びKemamide(登録商標)EZ(0.225g、Chemtura社、質量でヒートシール組成物の約1.5wt%のスリップ剤)を100mlのトルエンに65℃で溶解することにより、ヒートシールコーティング溶液を調製した。このヒートシールコーティング溶液を、Elvax(登録商標)4260EVA樹脂でプライマー処理した23μm(ミクロン)のPETポリマーフィルムにMayerコーティングロッドを用いてコーティングした(コーティング質量、5.5g/m2)。コーティングしたフィルム、即ち、複合フィルムを115℃に予めセットした強制通風オーブンで2分間乾燥させた。複合フィルムをHDPE及びPP基材にシールし[300°F(約149℃)/1秒]、シール強度は、892g重/インチ(約344N/m)(HDPE)及び615g重/インチ(約237N/m)(PP)であった。
【0147】
(実施例2)
(6wt%のPOP)
0.9gのElvax(登録商標)3180樹脂をQueo(商標)7007LAポリマーで置きかえて本発明の複合フィルムを調製したことを除き、比較例C1を繰り返した。他の原材料の量は変化させず、そのため、実施例2のヒートシール組成物は、8.1g(約54wt%)のEVA樹脂と0.9gのPOP樹脂(約6wt%)を含んでいた。結果として得られた複合フィルムに対して実施例C1に記載するように試験を行った際のシール強度は、1105g重/インチ(約427N/m)(HDPE)及び756g重/インチ(約292N/m)(PP)であった。
【0148】
(実施例3)
(30wt%のPOP)
4.5gのElvax(登録商標)3180樹脂をQueo(商標)7007LAポリマーで置きかえて本発明の複合フィルムを調製したことを除き、比較例1を繰り返した。他の原材料の量は変化させず、そのため、実施例3のヒートシール組成物は、4.5g(約30wt%)のEVA樹脂と4.5gのPOP樹脂(約30wt%)を含んでいた。結果として得られた複合フィルムに対して実施例C1に記載するように試験を行った際のシール強度は、1447g重/インチ(約559N/m)(HDPE)及び761g重/インチ(約294N/m)(PP)であった。
【0149】
(実施例4)
(60wt%のPOP)
9.0gのElvax(登録商標)3180樹脂を、同量のQueo(商標)7007LAポリマーで完全に置きかえて本発明の複合フィルムを調製したことを除き、比較例1を繰り返した。他の原材料の量は変化させず、そのため、実施例3のヒートシール組成物は、EVA樹脂を含まず、9.0gのPOP樹脂(約60wt%)を含んでいた。結果として得られた複合フィルムに対して実施例C1に記載するように試験を行った際のシール強度は、1415g重/インチ(約546N/m)(HDPE)及び743g重/インチ(約287N/m)(PP)であった。
【0150】
実施例C5並びに実施例6、7及び8
実施例3のヒートシールコーティング(Elvax(登録商標)3180/Queo(商標)7007LA/Piccolyte(登録商標))
PET上のプライマーの効果
(実施例C5)
(比較例-プライマー処理していないPETポリマーフィルム)
実施例C1のPETポリマーフィルムをプライマー処理せず(コロナ処理もせず)、比較例を提供するために使用した。プライマー処理していないPETポリマーフィルム上のコーティング質量を6.5g/m2としたことを除き、実施例3を繰り返した。シール強度は、744g重/インチ(約287N/m)(HDPE)及び775g重/インチ(約299N/m)(PP)であった。サンプル試験後、かなりの量のヒートシールコーティングがHDPE及びPP上に残り、プライマー層なしでは、コロナ処理していないPETフィルム上のヒートシールコーティングとPETポリマーフィルムとの間の接着が不十分であることが示された。
【0151】
(実施例6)
(PVdCプライマー処理したPETポリマーフィルム)
PETポリマーフィルムをPVdCでプライマー処理したことを除き、実施例C5を繰り返した。シール強度は、1454g重/インチ(約561N/m)(HDPE)及び815g重/インチ(約315N/m)(PP)であった。
【0152】
(実施例7)
(EVAプライマー処理したPETポリマーフィルム)
Elvax(登録商標)4260EVA樹脂でプライマー処理したPETポリマーフィルムを使用したことを除き、実施例5を繰り返した。シール強度は、1564g重/インチ(約604N/m)(HDPE)及び791g重/インチ(約305N/m)(PP)であった。
【0153】
(実施例8)
(EAAプライマー処理したPETポリマーフィルム)
EAAでプライマー処理したPETポリマーフィルムを使用したことを除き、実施例5を繰り返した。シール強度は、712g重/インチ(約275N/m)(HDPE)及び894g重/インチ(約345N/m)(PP)であった。HDPEからの複合フィルムのきれいな剥離が、ヒートシール可能なトップコートがEAAでプライマー処理したPETポリマーフィルムへの接着に特に有効であり、従って、複合フィルムがHDPE表面から剥離される場合に層間剥離に耐性があることを示している。
【0154】
他のPOP及びEVA樹脂(実施例9~16)
(実施例9)
Elvax(登録商標)3185(2.7g、DuPont社、質量で32%がビニルアセタート、質量でヒートシール組成物の約18wt%のEVA樹脂)、Elvax(登録商標)4260(2.7g、DuPont社、質量でヒートシール組成物の28%がビニルアセタート、約18wt%のEVA樹脂)、Affinity(商標)GA1950(3.6g、DOW Chemical Company社、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)、Piccolyte(登録商標)C115(5.4g、Pinova社、質量でヒートシール組成物の約36wt%の粘着付与樹脂)、Syloid620(0.375g、Grace社、質量でヒートシール組成物の約2.5wt%のマット感付与剤)及びKemamide(登録商標)EZ(0.225g、Chemtura社、質量でヒートシール組成物の約1.5wt%のスリップ剤)を100mLのトルエンに65℃で溶解することにより、ヒートシールコーティング溶液を調製した。このヒートシールコーティング溶液を、Elvax(登録商標)4260EVA樹脂でプライマー処理した23μm(ミクロン)のPETポリマーフィルムにMayerコーティングロッドを用いてコーティングした(コーティング質量、6.5g/m2)。コーティングしたフィルムを115℃に予めセットした強制通風オーブンで2分間乾燥させた。コーティングしたフィルム、即ち、複合フィルムをHDPE及びPP基材にシールし[300°F(約149℃)/1秒]、シール強度は、1200g重/インチ(約463N/m)(HDPE)及び895g重/インチ(約346N/m)(PP)であった。
【0155】
(実施例10)
PVdCでプライマー処理したPETポリマーフィルムを使用したことを除き、実施例9を繰り返した。シール強度は、1300g重/インチ(約502N/m)(HDPE)及び847g重/インチ(約327N/m)(PP)であった。
【0156】
(実施例11)
Affinity(商標)GA1950POP樹脂を同じ質量のVistamaxx(商標)6202(ExxonMobil社)(3.6g、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)で置きかえたことを除き、実施例10を繰り返した。シール強度は、1190g重/インチ(約459N/m)(PP)であった。
【0157】
(実施例12)
Affinity(商標)GA1950POP樹脂を同じ質量のVistamaxx(商標)6102(ExxonMobil社))(3.6g、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)により置きかえたことを除き、実施例10を繰り返した。5.4gのPiccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を、同じ質量のPentalyn(登録商標)H粘着付与樹脂(Pinova社) (5.4g、質量でヒートシール組成物の約36wt%の粘着付与樹脂)で置きかえた。シール強度は、1080g重/インチ(約417N/m)(PP)であった。
【0158】
(実施例13)
Affinity(商標)GA1950POP樹脂を同じ質量のQueo(商標)8201POPポリマー(3.6g、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)で置きかえたことを除き、実施例9を繰り返した。シール強度は、1115g重/インチ(約430N/m)(HDPE)及び714g重/インチ(約276N/m)(PP)であった。
【0159】
(実施例14)
Affinity(商標)GA1950POP樹脂を同じ質量のQueo(商標)7007LAPOPポリマー(3.6g、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)で置きかえたことを除き、実施例10を繰り返した。シール強度は、1230g重/インチ(約475N/m)(HDPE)及び849g重/インチ(約337N/m)(PP)であった。
【0160】
(実施例15)
Elvax(登録商標)3185及びElvax(登録商標)4260EVA樹脂を共に、同じ総量の低VAのEVA樹脂であるElvax(登録商標)420(5.4g、質量でヒートシール組成物の約36wt%のEVA樹脂)で置きかえたことを除き、実施例14を繰り返した。シール強度は、1277g重/インチ(約493N/m)(HDPE)及び923g重/インチ(約356N/m)(PP)であった。Elvax(登録商標)420は、より良好なフィルムの透明性が示すように、Queo(商標)7007LAPOPポリマーと非常に良好な相溶性を有していた。
【0161】
(実施例16)
Affinity(商標)GA1950POP樹脂を、同じ質量のEngage(商標)8200POP樹脂(DOW Chemical Company社)(3.6g、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)で置きかえ、コーティング質量を8.5g/m2としたことを除き、実施例9を繰り返した。シール強度は、1480g重/インチ(約571N/m)(HDPE)及び1039g重/インチ(約422N/m)(PP)であった。
【0162】
図1は、複合フィルムに対してヒートシールを行った温度の関数としての剥離強度を示し、複合フィルムは、Elvax(登録商標)426CEVA樹脂でプライマー処理し、実施例15に記載するヒートシール組成物を6.8g/m
2でコーティングしたPETポリマーフィルムを含み、HDPE基材にヒートシールしたものである。同じ条件下でHDPE基材にヒートシールした、従来のEVAヒートシール組成物を約12.5g/m
2で押出コーティングした市販のPETフィルムの場合の対応する結果も示す。
【0163】
図2は、
図1に図示する試行に類似した、HDPE基材の代わりにポリプロピレン基材を用いた試行の場合の剥離強度の結果を示す。
【0164】
図1及び
図2に見られるように、本発明によるヒートシール組成物を使用すると、剥離強度は著しく高くなり、剥離強度は、ヒートシール温度に関してよりほぼ一定であった。
【0165】
HDPEへのシール強度におけるヒートシールコーティング組成物の効果(実施例17並びにC18、C19及びC20)
(実施例17)
EVA(6.12g、Elvax(登録商標)4260樹脂、DuPont社、質量でヒートシール組成物の約25wt%のEVA樹脂)、POP(4.50g、Queo(商標)7007LAポリマー、質量でヒートシール組成物の約24wt%のPOP樹脂)、粘着付与剤(6.66g、Piccolyte(登録商標)C115、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)を100mLのトルエンに65℃で溶解し、続いてKemamide-EZ(0.17g、質量でヒートシール組成物の約0.9wt%のスリップ剤)、KemamideW20(0.15g、質量でヒートシール組成物の約0.8wt%のスリップ剤)及びSyloid620(0.40g、質量でヒートシール組成物の約2.2wt%のマット感付与剤)を添加することにより、ヒートシールコーティング溶液を調製した。このヒートシールコーティング溶液を、PVdCでプライマー処理した23μm(ミクロン)のPETポリマーフィルムにMayerコーティングロッドを用いてコーティングした(コーティング質量、6.5g/m2)。コーティングしたフィルムをオーブンで115℃で2分間乾燥させた。コーティングしたフィルム、即ち、複合フィルムをHDPE基材に様々な温度でシールし[80psi(約552kPa)/1秒]、INSTRON(登録商標)モデル4464試験機上でシール強度を測定した。
【0166】
(実施例C18、C19及びC20(比較例))
Table 1(表1)に示すヒートシール組成物を使用して、比較例C18~C20を実施例17と同様に行った。Table 1(表1)は、g重/インチでの剥離強度を報告する(括弧内の剥離強度値はN/mに変換されている)。これらの実施例は、下記のように調製した。
【0167】
(実施例C18)
(比較例、粘着付与剤不足)
同じPiccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂の質量を1.8g(質量でヒートシール組成物の約10wt%の粘着付与樹脂)に減らし、同じElvax(登録商標)4260EVA樹脂の質量を10.98g(質量でヒートシール組成物の約61wt%のEVA樹脂)に増やしたことを除き、実施例17を繰り返し、他の原材料(POP樹脂、スリップ剤及びマット感付与剤)は同じままで、同じ質量で存在した。比較例C18は、本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層に使用した粘着付与剤の量と比較して、遙かに少ない量の粘着付与剤を有していた。
【0168】
(実施例C19)
(比較例、粘着付与剤なし)
Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を含めず、同じElvax(登録商標)4260EVA樹脂の質量を12.78g(質量でヒートシール組成物の約71wt%のEVA樹脂)に増やしたことを除き、実施例17を繰り返し、他の原材料(POP樹脂、スリップ剤及びマット感付与剤)は同じままで、同じ質量で存在した。比較例C19は、本発明の複合フィルムを含むヒートシール層とは異なり、粘着付与剤を有していなかった。
【0169】
(実施例C20)
(比較例、POP樹脂なし)
Queo(商標)7007LAPOP樹脂を含めず、同じElvax(登録商標)4260EVA樹脂の質量を10.62g(質量でヒートシール組成物の約59wt%のEVA樹脂)に増やしたことを除き、実施例17を繰り返し、他の原材料(粘着付与樹脂、スリップ剤及びマット感付与剤)は同じままで、同じ質量で存在した。比較例C20は、本発明の複合フィルムを含むヒートシール層とは異なり、POP樹脂を有していなかった。
【0170】
これらの比較用フィルムC18、C19及びC20と実施例17との特性の違いをTable 1(表1)に見ることができる。
【0171】
【0172】
実施例C18~20と比較するとわかるように、本発明の複合フィルム(実施例17)は、シール温度が低くても強力なヒートシールを生じ、シール強度は、広いシール温度範囲にわたって比較的一定であった。
【0173】
他の粘着付与剤を用いたヒートシール組成物(実施例21~29)
(実施例21)
実施例21は、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を同じ質量のPiccolyte(登録商標)A115(Pinova Solutions社、環球式軟化点112~118℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1412g重/インチ(約542N/m)であった。
【0174】
(実施例22)
実施例22は、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を同じ質量のPiccolyte(登録商標)F115(Pinova Solutions社、環球式軟化点112~118℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1530g重/インチ(約591N/m)であった。
【0175】
(実施例23)
実施例23は、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を同じ質量のPiccolyte(登録商標)C85(Pinova Solutions社、環球式軟化点82~88℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1389g重/インチ(約536N/m)であった。
【0176】
(実施例24)
実施例24は、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を同じ質量のForal(登録商標)105(Pinova Solutions社、環球式軟化点95~103℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1240g重/インチ(約479N/m)であった。
【0177】
(実施例25)
実施例25は、Piccolyte(登録商標)C115粘着付与樹脂を同じ質量のPentalyn(登録商標)H(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1286g重/インチ(約497N/m)であった。
【0178】
(実施例26)
実施例26は、Piccolyte(登録商標)C115の質量の33%をForal(登録商標)105(Pinova Solutions社、環球式軟化点95~103℃)(4.44g、質量でヒートシール組成物の約12.3wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1353g重/インチ(約522N/m)であった。
【0179】
(実施例27)
実施例27は、Piccolyte(登録商標)C115をPiccotac(商標)6095-E(Eastman社、環球式軟化点98℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1290g重/インチ(約498N/m)であった。
【0180】
(実施例28)
実施例28は、Piccolyte(登録商標)C115をRegalite(商標)S1100(Eastman社、環球式軟化点100℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1238g重/インチ(約478N/m)であった。
【0181】
(実施例29)
実施例29は、Piccolyte(登録商標)C115をForalyn(商標)90-FG(Eastman社、環球式軟化点100℃)(6.66g、質量でヒートシール組成物の約37wt%の粘着付与樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17と同様に調製した。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1311g重/インチ(約506N/m)であった。
【0182】
粘着付与剤含有量がより高いヒートシール組成物(実施例30及び31)
(実施例30)
実施例30は、EVA/POP/粘着付与剤の質量比を、23/23/50(これらの原材料の質量はそれぞれ4.14g、4.14g及び9g、他の原材料の質量は変更せず)としたことを除き、実施例17と同様に調製した。粘着付与剤含有量は、ヒートシール組成物の50質量%であった。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1560g重/インチ(約602N/m)であった。
【0183】
(実施例31)
実施例31は、EVA/POP/粘着付与剤の比を18/18/60(これらの原材料の質量はそれぞれ3.24g、3.24g及び10.8g、他の原材料の質量は変更せず)としたことを除き、実施例17と同様に調製した。粘着付与剤の含有量は、ヒートシール組成物の60質量%であった。350°F(約177℃)/80psi(約552kPa)/1秒でHDPEにシールしたヒートシールコーティングの剥離強度は、1343g重/インチ(約519N/m)であった。
【0184】
実施例30及び31のフィルムブロッキング及び加工性評価
フィルムブロッキング及び加工性を評価するため、ロールサンプルは、パイロットコーター上で、実施例30及び31の高粘着付与剤ヒートシール組成物を、PVdCでプライマー処理したPETにコーティングした。ヒートシールコーティング溶液温度は50℃、コーティングしたフィルムの乾燥温度は120℃であり;冷却ロール温度は25℃であった。コーティングしたロールはどちらも、裂けることなく容易に巻きが戻された。Table 2(表2)に見られるように、静的及び動的摩擦係数(COF)の値は、0.30と約0.50の間であり、加工性が良好な商用フィルム製品の典型的なCOFの範囲内であった。
【0185】
【0186】
HDPE及びPPへのヒートシール用の2種のコーティングの比較(実施例32及び33)
(実施例32)
Elvax(登録商標)4260EVA樹脂を、同じ質量のElvax(登録商標)420EVA樹脂(DuPont社、質量で18%がビニルアセタート、6.12g、質量でヒートシール組成物の約25wt%のEVA樹脂)で置きかえたことを除き、実施例17のヒートシールコーティング溶液を調製し、他の原材料は同じとし、同じ質量で存在した。この溶液を、Elvax(登録商標)4260EVA樹脂でプライマー処理した23μmのPETフィルムにMayerコーティングロッドを用いてコーティングした(コーティング質量、3.5g/m2)。コーティングしたフィルムは、オーブンで2分間、115℃で乾燥させた。
【0187】
(実施例33)
実施例32を繰り返したが、コーティング質量を10g/m2とした。
【0188】
コーティングしたフィルム、即ち、実施例32及び33で調製した複合フィルムをHDPE及びPP基材に、様々な温度で滞留時間1秒、80psi(約552kPa)でヒートシールし、INSTRON(登録商標)モデル4464試験機上でg重/インチ単位のシール強度を測定した。HDPEの場合の結果をTable 3(表3)、PPの場合の結果をTable 4(表4)(g重/インチ単位の剥離強度値を示し、括弧内は、N/mに変換されている)に示す。
【0189】
【0190】
【0191】
実施例32及び33に見られるように、ビニルアセタート含有量が18%のElvax(登録商標)420EVA樹脂を含むヒートシール層を含む複合フィルムは、HDPEとPP基材の両方に対して強力な剥離強度を示した。
【0192】
実施例17と比較例C34-押出コーティングしたヒートシール層を含む複合フィルムとの比較
実施例17を、押出コーティングしたLDPE(低密度ポリエチレン)ヒートシール層を持つ市販のPETフィルム(比較例C34)と比較した。結果をTable 5(表5)(g重/インチ単位の剥離強度値を示し、括弧内は、N/mに変換されている)に示す。
【0193】
【0194】
Table 5(表5)に見られるように、実施例17は、一定の剥離強度を有する剥離可能な製品を実現した一方、押出製品(実施例C34)は、シール強度が劇的に上昇し、剥離テスト中のフィルムの細断、及び/又は剥離不能な溶着シールという結果となった。
【0195】
本明細書において、特定の実施形態を参照して本発明を例示し説明したが、本発明は、示した詳細に限定されることを意図していない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲の均等物の範囲及び領域内において、この詳細に様々な修正を加えることができる。