(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】可変光透過デバイス及び関連する制御方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20241025BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20241025BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241025BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20241025BHJP
G02F 1/163 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G02C7/10
G02C7/12
G02F1/13 505
G02F1/15 503
G02F1/163
(21)【出願番号】P 2020542447
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052812
(87)【国際公開番号】W WO2019154821
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-24
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・プルー
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0044112(US,A1)
【文献】国際公開第2017/104466(WO,A1)
【文献】特表2018-524640(JP,A)
【文献】特表2015-537240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0351118(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014014577(DE,A1)
【文献】特表2016-541020(JP,A)
【文献】特開2016-038583(JP,A)
【文献】特開2014-238565(JP,A)
【文献】特開2004-045483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02F 1/15- 1/19
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- エレクトロクロミック光学系および液晶光学系のいずれかから選択される可変透過光学系(4a,4b)であって、初期透過値(τV(ti))と目標透過値(τV,target)との間で光透過性を変化させることが可能な可変透過光学系(4a,4b)と、
- 前記可変透過光学系の光透過性を制御するように構成される、制御ユニット(5)であって、前記初期透過値(τV(ti))及び前記目標透過値(τV,target)の関数として前記可変透過光学系の応答期間を制御するように構成される、制御ユニット(5)と、
を備えている可変光透過デバイス(2)において、
前記制御ユニット(5)は、初期透過値と前記可変透過光学系によって到達される目標透過値との間に含まれる中間透過値を表す複数のコマンド信号を送信することによって、前記可変透過光学系の光透過性を制御するように構成され
、
前記制御ユニット(5)は、前記初期透過値(τV(ti))と前記目標透過値(τV,target)との差の符号に応じて前記応答期間を制御するように構成され、
前記制御ユニット(5)は、
〇 初期透過値(τV(ti))から目標透過値(τV,target)まで前記可変透過光学系の光透過性を低下させる第1の応答期間(ΔtDn)、及び
〇 前記初期透過値(τV(ti))から前記目標透過値(τV,target)まで前記光透過性を増大させる第2の応答期間(ΔtBl)
を制御するように構成され、前記第1の応答期間(ΔtDn)が、前記第2の応答期間(ΔtBl)とは異なり、
さらに、前記制御ユニット(5)は、光透過値が
【数1】
に従って変化するように、前記光透過値を制御するように構成され、
τV(ti)が、時間t=tiにおける前記初期透過値であり、
τV(ti+t)が、時間ti+tにおける現在の透過値であり、
【数2】
が、前記初期透過値τV(ti)及びt=tiの後で照度の変化が検出されないときに
【数3】
であるように定義される前記目標透過値τV,targetに応じた遷移関数であり、
前記遷移関数は、前記遷移関数が0.95(τV,target-τV(ti))の透過値に到達する期間によって定義される全体遷移期間を有し、
前記応答期間が、前記全体遷移期間を含み、
前記遷移関数が、線形遷移関数である、可変光透過デバイス(2)。
【請求項2】
前記応答期間が、装着者又は装着者のグループの嗜好に従って選択される、請求項1に記載の可変光透過デバイス(2)。
【請求項3】
周期的に照度を測定し、前記照度の変化を検出するように構成される、環境光センサをさらに含み、
- 測定された前記照度が所定の時間稼ぎ期間に基準照度とは異なるときに、前記照度の変化が検出され、
- 前記制御ユニット(5)が、前記所定の時間稼ぎ期間後に前記照度の変化を検出すると、前記可変透過光学系の透過パラメータを制御するように構成され、
- 前記応答期間が、前記所定の時間稼ぎ期間を含む、
請求項
1に記載の可変光透過デバイス(2)。
【請求項4】
前記全体遷移期間が、300ミリ秒以上且つ10,500ミリ秒以下に選択される、請求項
1に記載の可変光透過デバイス(2)。
【請求項5】
- 前記光透過性が、第1の初期透過値から第1の目標透過値まで低下するときに、前記光透過性が、第1の全体遷移期間を有する第1の遷移関数に従って変化し、
- 前記光透過性が、第2の初期透過値から第2の目標透過値まで増大するときに、前記光透過性が、第2の全体遷移期間を有する第2の遷移関数に従って変化し、
前記第2の全体遷移期間が、前記第1の全体遷移期間とは異なる、請求項
1に記載の可変光透過デバイス。
【請求項6】
前記第1の初期透過値が、前記第2の目標透過値と等しく、前記第1の目標透過値が、前記第2の初期透過値と等しい、請求項
5に記載の可変光透過デバイス。
【請求項7】
前記可変透過光学系が、フォトクロミック光学系であり、可変透過デバイスが、透明加熱素子をさらに含み、前記制御ユニットが、所定の加熱期間(Δtheat;Δtheat,Dn,Δtheat,Bl)に所定の温度(Temp;TempDn,TempBl)を設定することによって前記フォトクロミック光学系の前記応答期間を制御するように構成され、前記所定の温度(Temp;TempDn,TempBl)及び加熱期間(Δtheat;Δtheat,Dn,Δtheat,Bl)が、前記初期透過値(τV(ti))及び前記目標透過値(τV,target)の関数として決定される、請求項1に記載の可変光透過デバイス(2)。
【請求項8】
前記可変光透過デバイスが、
- 前記制御ユニットに、
〇 少なくとも第1の応答期間及び第2の応答期間
を送信するように構成される、リモート構成ユニットをさらに備え、
前記構成ユニットが、前記可変光透過デバイスの装着者に対して異なる第1の応答期間、第2の応答期間をテストするため、又は前記装着者の嗜好に従って第1の応答期間及び第2の応答期間で前記可変光透過デバイスを構成するために使用されるように意図される、請求項1に記載の可変光透過デバイス。
【請求項9】
可変光透過デバイスを制御する方法であって、
- 前記可変光透過デバイスにおけるエレクトロクロミック光学系および液晶光学系のいずれかから選択される可変透過光学系の光透過性を制御すること(S200)を含み、
- 初期透過値(τV(ti))及び目標透過値(τV,target)の関数として前記可変透過光学系の応答期間を制御することをさらに含み、
前記可変透過光学系の光透過性は、初期透過値と前記可変透過光学系が到達する目標透過値との間に含まれる中間透過値を表す複数のコマンド信号を送信することによって、制御され
る、可変光透過デバイスを制御する方法において、
- 前記初期透過値(τV(ti))と前記目標透過値(τV,target)との差の符号に応じて前記応答期間を制御するステップであって、
- 初期透過値(τV(ti))から目標透過値(τV,target)まで前記可変透過光学系の光透過性を低下させる第1の応答期間(ΔtDn)を制御することと、
- 初期透過値(τV(ti))から目標透過値(τV,target)まで前記光透過性を増大させる第2の応答期間(ΔtBl)を制御することと、
を含み、前記第1の応答期間(ΔtDn)が、前記第2の応答期間(ΔtBl)とは異なる、前記応答期間を制御するステップを含み、
光透過値が、
【数4】
に従って変化し、
τV(ti)が、時間t=tiにおける前記初期透過値であり、
τV(ti+t)が、時間ti+tにおける現在の透過値であり、
【数5】
が、前記初期透過値τV(ti)及びt=tiの後で照度の変化が検出されないときに
【数6】
であるように定義される前記目標透過値τV,targetに応じた遷移関数であり、
前記遷移関数は、前記遷移関数が0.95(τV,target-τV(ti))の透過値に到達する期間によって定義される全体遷移期間を有し、
前記応答期間が、前記全体遷移期間を含み、
前記遷移関数が、線形遷移関数である、可変光透過デバイスを制御する方法。
【請求項10】
前記応答期間が、装着者の嗜好に従って選択される、請求項
9に記載の可変光透過デバイスを制御する方法。
【請求項11】
プロセッサにアクセス可能であり、前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに請求項
9に記載の方法のステップを実行させる、1つ又は複数の記憶された命令シーケンスを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変透過光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
可変透過光学系では、光透過性が、装着者の照明環境の関数として、又は要求に応じて自動的に変化し得る。
【0003】
可変透過光学系は、眼鏡レンズ、サングラス、スキーヘルメットにおいて、又は建物の窓、ドア、若しくは壁においてでさえも使用され得る。眼鏡レンズ、サングラス、スキーヘルメット、又は建物の窓の場合、光透過性が、照明環境の関数として、又は要求に応じて自動的に変化し得る。ドア又は壁の場合、光透過性は、室内の人にいくらかのプライバシーをもたらすために要求に応じて減少され得る。
【0004】
可変透過光学系は、例えば、エレクトロクロミック成分、液晶又はフォトクロミック成分を含み得る。
【0005】
可変透過レンズの応答期間が、装着者の快適性に対して影響があることは周知である。レンズの光透過性があまりにゆっくりと変化するとき、例えばフォトクロミックレンズを用いるとき、装着者は、その環境の光度の変化によってやはり気分が悪くなる。それとは逆に、レンズの光透過性があまりに素早く変化するとき、例えば液晶レンズを用いるとき、装着者が体感する光度の変化が急激過ぎ、また不快感をもたらす。
【0006】
フォトクロミックレンズでは、応答期間は、フォトクロミック成分の合成物及び濃度に依存し、装着者の嗜好に適合されない場合がある。エレクトロクロミックレンズ及び液晶レンズでは、応答期間は、レンズの制御ユニットによって自動的に設定され、これもまた装着者の嗜好に対応しないことがある。
【0007】
したがって、可変透過レンズの装着者、又はより一般的には可変透過光学系のユーザの快適性を改善し、装着者の嗜好に対する応答期間の適合性を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の点から見て、発明の1つの目的は、先行技術の不都合の少なくとも一部を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に、発明の1つの目的は、可変透過光学系の装着者の快適性を改善することである。
【0010】
発明の別の目的は、装着者の嗜好に対する応答期間の適合性を改善することである。この目的を達成するために、第1の態様によれば、可変光透過デバイスであって、
- 初期透過値と目標透過値との間で光透過性を変化させることが可能な可変透過光学系と、
- 可変透過光学系の透過パラメータを制御するように構成される、制御ユニットであって、初期透過値及び目標透過値の関数として可変透過光学系の応答期間を制御するように構成される、制御ユニットと、
を含む、可変光透過デバイスが提案される。
【0011】
実施形態において、可変透過デバイスは、以下の特徴のうちの1つ又は組み合わせをさらに含み得る。
- 応答期間は、装着者又は装着者のグループの嗜好に従って選択される。
- 制御ユニットは、初期透過値と目標透過値との差の符号に応じて応答期間を制御するように構成され、制御ユニットは、
〇 初期透過値から目標透過値まで可変透過光学系の光透過性を低下させる第1の応答期間、及び
〇 初期透過値から目標透過値まで光透過性を増大させる第2の応答期間
を制御するように構成され、第1の応答期間は、第2の応答期間とは異なる。
- 可変光透過デバイスは、周期的に照度を測定し、照度の変化を検出するように構成される、環境光センサをさらに含み、
〇 測定された照度が所定の時間稼ぎ(temporization)期間に基準照度とは異なるときに、照度の変化が検出され、
〇 制御ユニットは、所定の時間稼ぎ期間後に照度の変化を検出すると、可変透過光学系の透過パラメータを制御するように構成され、
〇 応答期間は、所定の時間稼ぎ期間を含む。
- 所定の時間稼ぎは、初期透過値及び目標透過値の関数として定義される。
- 基準照度は、第1の基準照度及び第2の基準照度を含み、所定の時間稼ぎ期間は、第1の時間稼ぎ期間及び第2の時間稼ぎ期間を含み、測定された照度が第1の時間稼ぎ期間に第1の基準よりも大きいとき、及び測定された照度が第2の時間稼ぎ期間に第2の基準照度よりも小さいときに、照度の変化が検出される。
- 第1の時間稼ぎ期間は、第2の時間稼ぎ期間とは異なる。
- 第1の時間稼ぎ期間及び第2の時間稼ぎ期間は、初期透過値と目標透過値との差の符号に依存する。
- 可変透過デバイスは、
〇 制御ユニットに、
・ 少なくとも第1の応答期間及び第2の応答期間を送信するように構成され、構成ユニットが、可変透過デバイスの装着者に対して異なる第1の応答期間、第2の応答期間をテストするために、又は可変透過デバイスを装着者の嗜好に従って第1の応答期間及び第2の応答期間で構成するために使用されるように意図される、
リモート構成ユニットをさらに含む。
【0012】
実施形態によれば、可変透過光学系は、エレクトロクロミック光学系及び液晶光学系のうちの1つから選択され、可変透過光学系の透過パラメータは、可変透過光学系の光透過性である。
【0013】
その実施形態によれば、可変透過デバイスは、以下の特徴のうちの1つ又は組み合わせをさらに含み得る。
- 制御ユニットは、光透過値が
【数1】
に従って変化するように、光透過値を制御するように構成され、
τ
V(t
i)は、時間t=t
iにおける初期透過値であり、
τ
V(t
i+t)は、時間t
i+tにおける現在の透過値であり、
【数2】
は、初期透過値τ
V(t
i)及びt=t
iの後で照度の変化が検出されないときに
【数3】
であるように定義される目標透過値τ
V,targetに応じた遷移関数である。
さらに、遷移関数は、遷移関数が0.95(τ
V,target-τ
V(t
i))の透過値に到達する期間によって定義される全体遷移期間を有し、応答期間は、全体遷移期間を含む。
- 全体遷移期間は、300ミリ秒以上且つ10,500ミリ秒以下に選択される。
- 全体遷移期間は、初期透過値及び目標透過値の関数として定義される。
- 光透過性が第1の初期透過値から第1の目標透過値まで低下するとき、光透過性は、第1の全体遷移期間Δt
trans,Dnを有する第1の遷移関数に従って変化し、光透過性が第2の初期透過値から第2の目標透過値まで増大するとき、光透過性は、第2の全体遷移期間Δt
trans,Blを有する第2の遷移関数に従って変化し、
第2の全体遷移期間が、第1の全体遷移期間とは異なる。
- 0.2<Δt
trans,Dn/Δt
trans,Bl<0.8
- 光透過性が、第1の初期透過値から第1の目標透過値まで低下するときに、光透過性は、第1の全体遷移期間を有する第1の遷移関数に従って変化し、
光透過性が、第2の初期透過値から第2の目標透過値まで増大するときに、光透過性は、第2の全体遷移期間を有する第2の遷移関数に従って変化し、
第1の初期透過値は、第2の目標透過値と等しく、第1の目標透過値は、第2の初期透過値と等しく、
第2の全体遷移期間は、第1の全体遷移期間とは異なる。
【0014】
別の実施形態によれば、可変透過光学系は、フォトクロミック光学系であり、可変透過デバイスは、透明加熱素子をさらに含み、制御ユニットは、所定の加熱期間中に所定の温度を設定することによってフォトクロミック光学系の応答期間を制御するように構成され、所定の温度及び加熱期間は、初期透過値及び目標透過値の関数として決定される。
【0015】
第2の態様によれば、可変透過デバイスの透過性を制御する方法であって、
- 上記可変透過デバイスの可変透過光学系の透過パラメータを制御することを含み、方法が、
- 初期透過値及び目標透過値の関数として可変透過光学系の応答期間を制御することをさらに含む、可変透過デバイスの透過性を制御する方法が提案される。
【0016】
実施形態において、方法は、以下の特徴のうちの1つ又は組み合わせをさらに含み得る。
- 応答期間は、装着者の嗜好に従って選択される。
- 方法は、
〇 初期透過値と目標透過値との差の符号に応じて応答期間を制御することであって、
・ 初期透過値から目標透過値まで可変透過光学系の光透過性を低下させる第1の応答期間を制御すること、及び
・ 初期透過値から目標透過値まで光透過性を増大させる第2の応答期間を制御することを含む、制御することを含み、
〇 第1の応答期間は、第2の応答期間とは異なる。
- 方法は、
〇 環境光センサを用いて周期的に照度を測定することと、
〇 測定された照度が所定の時間稼ぎ期間に基準照度とは異なるときに、測定された照度の変化を検出することと、
〇 所定の時間稼ぎ期間後に照度の変化を検出すると、可変透過光学系の透過パラメータを制御することと、を含む。
- 方法は、
〇 環境光センサを用いて周期的に照度を測定することと、
〇 測定された照度が第1の時間稼ぎ期間の間事前定義された範囲よりも大きいとき、及び測定された照度が第2の時間稼ぎ期間の間事前定義された範囲よりも小さいときに、照度の変化を検出することであって、第1の時間稼ぎ期間が第2の時間稼ぎ期間とは異なる、検出することと、を含み、
〇 制御ユニットが、照度の変化を検出すると、可変透過光学系の透過パラメータを制御する。
【0017】
第3の態様によれば、プロセッサにアクセス可能であり、プロセッサによって実行されるときに、プロセッサに前述した方法のステップを実行させる、1つ又は複数の記憶された命令シーケンスを含む、コンピュータプログラム、例えば非一時的コンピュータプログラムも提案される。
【0018】
前述した上記コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体、例えば、非一時的記憶媒体も提案される。
【0019】
さらに詳細な、提案される解決策の態様及び実施形態が、単なる例として図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態による、可変透過デバイスを含むアイウェアを表す。
【
図3】実施形態に従って制御ユニットによって実行され得る、自動モードにおいて可変透過デバイスを制御する方法を表す。
【
図3A】センサによって測定される照度の例を示す。
【
図3B】1つの実施形態による、制御ユニットによって制御される可変透過デバイスの透過値を概略的に表す。
【
図3C】1つの実施形態による、制御ユニットのコマンド信号によって送信される透過値を示す。
【
図4】ユーザの母集団によって好まれる第1の応答期間及び第2の応答期間に関するパラメータの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、可変透過デバイス2及びフレーム3を含む、システム、本明細書ではアイウェア1を表す。可変透過デバイス2は、2つの可変透過光学系4a、4b、本明細書では眼鏡レンズ、及び少なくとも制御ユニット5を含む。本明細書で説明される実施形態において、可変透過光学系は、エレクトロクロミックレンズ又は液晶レンズであってもよい。可変透過光学系4a、4bのそれぞれが、可変透過光学系の透過パラメータ、本明細書ではエレクトロクロミックレンズ又は液晶レンズの光透過性を制御するように構成される制御ユニット5によって制御される。
【0022】
システム、即ちアイウェア1は、例えば2つの眼鏡レンズ4a、4bの間のフレーム3上に配置される、環境光センサ8を含み得る。環境光センサ8は、外部環境における照度の変化を検出し、及び/又は測定された照度を制御ユニット5に伝送するように構成され得る。可変透過デバイス2は、よって「自動モード」で制御される。
【0023】
任意選択的に、可変透過デバイス2は、自動モードと手動モードとの間で切り替えるために使用され得る制御素子9を含み得る。手動モードでは、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェースを用いて、可変透過光学系4a、4bによって到達予定の透過性の目標値、及び透過性の目標値に到達する特定の応答期間を設定するために使用され得るパラメータを含む、使用される制御構成を指示し得る。制御素子9は、例えば、触覚スライダ、異なる位置を有するスイッチ、又はスマートフォンであってもよい。
【0024】
エレクトロクロミックレンズ(又はより一般的には光学系)は、2枚の透明層、例えば、有機ガラス又はミネラルガラスでできた2枚の板を含み、少なくとも2つの電極がその上に配置されている。2枚の透明層の内側面は、エレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック混合物で満たされたセルを定義する。エレクトロクロミック化合物は、酸化及び還元反応に起因して、電圧が印加されるときにそれらの色を可逆的に変化させる特性を有する。したがって、少なくとも2つの電極間に電界を印加することによって、セルの光透過性及びそれによる光学系の光透過性が、変化し得る。電極は、暗くならないときに装着者がレンズを通して見るのに十分な可視光を透過しなければならない。
【0025】
液晶レンズ(又はより一般的には光学系)は、類似の構造を有し、電極が置かれる2つの透明層を含む。透明層の内側面によって定義されるセルは、液晶構造で満たされている。電界が電極上に印加されるとき、液晶は、その配向を変更し、よって液晶セルを横切る光の経路を修正する。液晶レンズ又は光学系を横切る光の強度は、したがって電極上に異なる電圧を印加することによって変更され得る。電極は、暗くならないときに装着者がレンズを通して見るのに十分な可視光を透過しなければならない。異なる種類の液晶光学系が考えられ得る。例えば、2つの交差した偏光子の間に配置されたネマチック液晶が考えられ得る。ゲストホスト型液晶も考えられ得る。ゲストホスト型液晶は、二色性染料に関連付けられたネマチック液晶を含む。電界が2つの電極の間に印加されるとき、二色性染料は、ネマチック液晶と同一方向に配向し、液晶光学系のグローバル透過性が、印加された電界に依存する。ゲストホスト型液晶は、したがって、交差する偏光子がないことによって50%より大きな透過値を提示する。
【0026】
したがって、エレクトロクロミック又は液晶セルの電極の異なる電圧関数を適用することによって、エレクトロクロミック又は液晶レンズ又は光学系の光透過性を制御することが可能である。
【0027】
エレクトロクロミック又は液晶レンズ又は光学系の光透過性を制御するために、システムは、また、制御ユニット5からコマンド信号を受信し、可変透過光学系の電極に印加されるように意図される電圧信号を出力するように構成される電圧ドライバ7を含む。
【0028】
システムは、また、
図1に表されるように、電気エネルギー源、例えば、フレーム3の分岐3a上に取り付けられた電池6を含む。電池は、制御ユニット5、並びにセンサ8、制御素子9、及び/又は電圧ドライバ7などの他の電気コンポーネントに供給する。
【0029】
システムは、また、可視化ユニット10、例えば、発光ダイオード(LED)を含み得る。可視化ユニット10は、例えば、電池が空のとき、又は環境光センサが適切に機能していないときに、アイウェアの装着者に機能不全を通知し得る。
【0030】
システムは、また、フレーム3の分岐のうちの1つ、例えば、分岐3b上に位置する閉検出素子11を含み得る。閉検出素子は、分岐3bが開いたとき、又は閉じられたときに検出し、制御ユニット5をオン又はオフに切り替えるために制御ユニット5と通信するように構成される。閉検出素子11は、例えば、分岐3bと可変透過光学系4aとの間のフレーム上に位置する磁石に関連付けられる磁気抵抗効果素子であってもよい。
【0031】
図2は、可変透過デバイス2が自動モードで動作される実施形態によれば、制御ユニット5を表す。制御ユニット5は、プロセッサPROCと、クロックTIMと、メモリMEMと、入力インタフェースIN及び出力インタフェースOUTそれぞれと、通信インタフェースCOMMと、を含み得る。入力インタフェースINは、環境光センサ8によって送信される信号を受信し、信号をプロセッサPROCに送信する。プロセッサPROCは、環境光センサ8によって送信される信号から受信される入力データに応じて、出力インタフェースOUTを介して電圧ドライバ7に伝送されるように意図される可変透過光学系の透過値を表す1つ又は複数のコマンド信号を計算する。電圧ドライバ7は、エレクトロクロミック又は液晶レンズ4a、4bの中に含まれるエレクトロクロミック又は液晶セルCELL ELECTRの電極に印加される対応電圧信号を生成する。プロセッサPROCは、また、出力インタフェースOUTを介してセンサを構成し得る。コマンド信号を計算するために、プロセッサPROCは、メモリMEMから命令を取り出す。メモリMEMは、また、異なるコマンド信号を算出するときにプロセッサPROCによって使用される異なる変数を含み得る。プロセッサPROCは、また、必要なときにメモリMEM内にいくつかの変数をセーブし、又は更新し得る。
【0032】
クロックTIMは、プロセッサPROCにクロック供給するために使用され、異なる信号の送信及び受信のための時間基準である。電圧ドライバ7及びセンサ8は、制御ユニット5に統合され得る。通信インタフェースCOMMは、プロセッサPROCとリモート構成ユニットRCUとの間で通信を確立するように構成される。
【0033】
リモート構成ユニットRCUは、制御ユニット5を構成するために制御ユニット5のプロセッサPROCと通信する。リモート構成ユニットRCUは、例えば、制御ユニットを構成する専用アプリケーションを含むスマートフォンであってもよい。特に、構成ユニットは、プロセッサPROCによって実行される命令及び/又はメモリMEM上にセーブされ得る様々な変数若しくはパラメータを更新又はロードし得る。リモート構成ユニットRCUは、Bluetooth(商標)プロトコルを用いて通信インタフェースを介して制御ユニット5と通信し得る。
【0034】
リモート構成ユニットRCUは、また、可変透過レンズ又は光学系の応答期間をユーザの嗜好に適合させるために、可変透過デバイスのユーザに対して異なるパラメータをテストするために使用され得る。特に、リモート構成ユニットRCUは、可変透過デバイスの透過性が低下されるか若しくは増大されるかに応じて、又は初期透過値及び目標透過値に応じて、異なる応答期間をテストするために使用され得る。
【0035】
任意選択的に、可変透過デバイス2は、自動モードと手動モードとの間で切り替えるためにユーザによって使用され得る制御素子9を含む。制御素子9は、到達予定の目標透過性の値、及び透過性の目標値に到達する特定の応答期間を設定するために使用され得るパラメータを含む、特定の制御構成を選択するためにも使用され得る。発明によれば、制御ユニットは、目標透過値及び初期透過値の関数として決定される応答期間を制御するように構成される。よって、到達予定の目標透過値及び可変透過光学系の初期透過値に応じて、異なる応答期間が使用され得る。応答期間は、また、目標透過値に到達するために光透過性が低下されるか、又は増大されるかに応じて選択され得る。
【0036】
可変透過光学系の応答期間は、制御ユニットによって制御される。応答期間は、可変透過光学系が自動モードで制御されるときは照明環境の変化に応答して、又は可変透過光学系が手動モードで制御されるときは制御素子のアクティブ化に応答して、光透過性が初期透過値から目標透過値まで変化する期間に対応する。目標透過値は、応答期間の終わりに光学系によって到達される透過性の定常値に対応する。
【0037】
エレクトロクロミック又は液晶光学系の場合、目標透過値は、環境光センサによって測定される現在の照度の関数として選択され得る。
【0038】
応答期間は、説明の残りの部分において示される、異なるやり方で制御されてもよい。
【0039】
可変透過デバイス2は、例えば自動モードで動作され得る。自動モードでは、環境光センサ8は、外部環境の照度を周期的に測定し、外部環境における照度の変化がいつ発生するかを示す。環境光センサ8は、また、現在測定される照度の標識を提供し得る。現在測定される照度の値は、目標透過値を算出するために制御ユニット5のプロセッサPROCによって使用され得る。プロセッサPROCは、次いで、電圧ドライバ7に送信される、初期透過値と目標透過値との間で光透過性を変化させるための1つ又は複数のコマンド信号を生成する。電圧ドライバ7は、エレクトロクロミック又は液晶レンズ4a、4bのコマンド電極に印加される、対応する電圧信号を生成する。電圧信号は、例えば、液晶レンズ又は光学系の光透過性を制御するためにデューティ周期が変化され得る、パルス幅変調(PWM)信号であってもよい。光透過性は、また、例えば、エレクトロクロミック若しくは液晶レンズ若しくは光学系の所定の光透過性に振幅が対応する電圧信号を印加することによって、又は変化する周波数を有する電圧信号を印加することによって、変化し得る。
【0040】
図3は、実施形態に従って、エレクトロクロミック又は液晶光学系を含む可変透過デバイスを自動モードで制御する方法を表す。本明細書で説明される方法は、可変光透過デバイスの応答期間を制御することを可能にする。
【0041】
方法は、初期化ステップS000と、照度の変化を検出するステップS100と、可変光透過デバイスの光透過性を制御するステップS200と、を含む。
【0042】
初期化ステップS000は、応答期間及び光透過性を制御するためのコマンド信号を計算するためにプロセッサPROCによって使用されるように意図される命令及びパラメータを、制御ユニット5のメモリMEM内にロードすることを含む。さらに、初期化ステップS000は、現在の照度を測定することと、到達予定の透過値を表すコマンド信号を送信することによって第1の透過値を設定することと、を含む。
【0043】
ステップS100の間に、環境光センサ8は、照度を周期的に測定し、照度の変化が発生したかどうかを検出する。環境光センサ8が照度の変化を検出した場合、環境光センサは、照度の変化が発生したことを制御ユニットに示し、ステップS200を開始する制御ユニットのプロセッサPROCに現在測定される照度を伝送する。
【0044】
ステップS200において、プロセッサPROCは、現在測定される照度を用いて、可変光透過デバイスの目標透過値を算出する。プロセッサPROCは、次いで、可変光透過デバイスの透過パラメータを制御する1つ又は複数のコマンド信号を生成する。
【0045】
応答期間は、異なるやり方で変化されてもよい。
【0046】
ステップS100において、時間稼ぎΔttempoは、センサ8が制御ユニット5のプロセッサPROCに照度の変化を示す前に、適用され得る。その場合、照度の変化は、測定された照度が所定の時間稼ぎ期間Δttempoの間基準照度とは異なるときに検出される。
【0047】
ステップS200において、所定の期間を有する遷移関数は、初期透過値と目標透過値との間で光透過性を変化させるために使用され得る。所与の時間tにおける光透過値は、
【数4】
に従って決定される。τ
V(t
i)は、時間t=t
iにおける初期透過値であり、照度の変化が検出されるときに、自動モードにおいて可変光透過光学系の透過値に対応する。τ
V(t
i+t)は、時間t
i+tにおける現在の透過値であり、
【数5】
は、初期透過値τ
V(t
i)及びt=t
iの後で照度の変化が検出されないときに
【数6】
であるように定義される目標透過値τ
V,targetに応じた遷移関数である。
【0048】
遷移関数は、遷移関数が0.95(τV,target-τV(ti))の透過値に到達する期間によって定義される全体遷移期間Δttransを有する。
【0049】
したがって、応答期間は、エレクトロクロミック又は液晶レンズの場合、時間稼ぎ期間及び/又は全体遷移期間と呼ばれる遷移関数の期間を含む。
【0050】
方法は、
図3A、
図3B、
図3Cを参照してさらに説明される実施形態に従って、
図1及び
図2を参照して説明される可変光透過デバイスの場合において説明される。
【0051】
図3A、
図3B、及び
図3Cは、2つの異なる時間稼ぎ期間Δt
tempo,Bl及びΔt
tempo,Dnを有する異なる照明範囲P1、P2、P3、...Pnの間、照度の変化が検出される実施形態を示す。この実施形態において、光透過値は、考えられる初期透過値及び目標透過値に応じた全体遷移期間を有する遷移関数に従って、初期透過値と目標透過値との間で変化する。説明のため、遷移関数は、線形遷移関数として表される。後述されるように、他の形態の遷移関数が考えられ得る。
【0052】
図3Aは、環境光センサ8によって測定される照度の例を表す。
図3Bは、制御ユニットによって制御される可変透過デバイスの透過値を概略的に表し、
図3Cは、制御ユニットのコマンド信号によって電圧変換器に送信される透過値の例を示す。
【0053】
この実施形態において、制御ユニット5は、制御ユニット5のメモリMEMに記憶される複数の照度範囲、例えば4つの照度範囲P1、P2、P3、P4を定義し得る。各照度範囲は、それぞれ最小照度値及び最大照度値Imin1、Imax1、Imin2、Imax2、Imin3、Imax3を含む。照度範囲は、
図3Aに表されるように、互いに隣接し、即ち、Imax1=Imin2、max2=Imin3、Imax3=Imin4であってもよく、又は国際公開第2017/009544号パンフレットにおいてさらに説明されるように部分的に重なり合ってもよい。明確さの問題で、互いに隣接する照度範囲は、本明細書でさらに考えられるが、重なり合う範囲に対して同一の理由付けが適用し得る。その実施形態において、透過値は、照度の変化が検出されるときに測定された照度に対応する照度範囲の関数として決定される。
【0054】
特に、本明細書で説明される実施形態において、以下のパラメータが使用され得る。
- 照度範囲P1について、[Imin1; Imax1]=[0; 1000 1x]及びτv1=0.9
- 照度範囲P2について、[Imin2; Imax2]=[1000 1x; 3000 1x]及びτv2=0.55
- 照度範囲P3について、[Imin3; Imax3]=[3000 1x; 10000 1x]及びτv3=0.25
- 照度範囲P4について、[Imin4;=10000 1x; Imax4]及びτv4=0.1
- Δttempo,Bl=1.6s及びΔttempo,Dn=1.2s
【0055】
照度範囲を定義する値は、使用条件に適合され得る。各照度範囲に対して単一の目標透過値を関連付けることによって、可変透過光学系の電力消費量が減少し得る。代替手段において、目標透過値は、センサによってプロセッサに伝送される現在測定される照度の関数として決定され得る。
【0056】
エレクトロクロミック又は液晶光学系を制御する方法は、以下のとおりである。
【0057】
初期化段階S000の間、初期照度値が測定され、入力インタフェースINを介して制御ユニット5のプロセッサPROCに伝送される。プロセッサPROCは、初期照度値が事前定義された照度範囲のうちの1つの最小照度値と最大照度値との間に含まれる照度範囲を決定する。現在の照度範囲の対応する最小照度値及び最大照度値が、次いでセンサ8のメモリに送信される。制御ユニット5のプロセッサは、また、第1の時間稼ぎ期間Δttempo,Dn及び第2の時間稼ぎ期間Δttempo,Blの値を、制御ユニット5の出力インタフェースOUTを介して送信する。
【0058】
ステップS100の間、集積マイクロプロセッサも含むセンサ8は、現在測定される照度が第1の時間稼ぎ期間Δttempo,Dnの間現在の照明範囲の最大照度値より大きいとき、又は現在測定される照度が第2の時間稼ぎ期間Δttempo,Blの間現在の照明範囲の最小照度値より小さいときに照度の変化を検出するために、周期的に照度を測定する。照度の変化が検出されるとき、現在測定される照度の値、即ち最後に測定された照度が、入力インタフェースINを介して制御ユニット5のプロセッサPROCに送信される。
【0059】
ステップS200の間、プロセッサは、どの照度範囲が測定された照度に対応するかを決定し、その照度範囲に対応する目標透過値を決定する。プロセッサは、次いで、照度の変化検出前の初期透過値と目標透過値との間で光透過性を変化させる1つ又は複数のコマンド信号を生成し、透過値は、(1)に従って変化し、遷移関数は、線形遷移関数である。プロセッサは、センサ8に実際の照度範囲の最小照度及び最大照度の更新済みの値を送信し、センサは、照度の別の変化が検出されるまで、ステップS100において説明されるように、周期的に照度を測定する。
【0060】
図3Aは、環境光センサ8によって周期的に測定される照度の例を示す。照度は、最初は範囲P2の中に含まれ、次いで、範囲P1の中に含まれるように低下し、さらに範囲P3の中になるように増加する。最初に、測定された照度値は、
図3Bに見られ得るように範囲P2の中にあるため、可変透過レンズの透過値は、τv2の値を有するように設定される。
【0061】
測定された照度が、t=t0-Δttempo,Blとt=t0との間の第2の時間稼ぎ期間Δttempo,Blよりも大きい期間、Imin2より低いとき、センサ8は、照度の第1の変化を検出する。次いで、センサ8は、例えば照度範囲P1内にある、t=t0において測定された照度値を制御ユニット5のプロセッサに送信する。プロセッサは、電圧ドライバ7に送信される、全体遷移期間Δttrans[τv2,τv1]を有する線形遷移関数に従ってτv2とτv1との間で透過性を変化させる、1つ又は複数のコマンド信号を生成する。プロセッサは、また、照度範囲P1の最小照度値Imin1及び最大照度値Imax1を含む信号を、入力インタフェースINを介してセンサ8に送信する。
【0062】
測定された照度が、t=t1-Δttempo,Dnとt=t1との間の第1の時間稼ぎ期間Δttempo,Dnよりも大きい期間、Imax1より大きいとき、センサ8は、次いで照度の第2の変化を検出する。次いで、センサ8は、制御ユニット5のプロセッサに、例えば照度範囲P3内にある、t=t1において測定された現在測定される照度値を送信する。プロセッサは、電圧ドライバ7に送信される、全体遷移期間Δttrans[τv(t1),τv3]を有する線形遷移関数に従ってτv(t1)とτv3との間で透過性を変化させる、1つ又は複数のコマンド信号を生成する。プロセッサは、また、照度範囲P3の最小照度値Imin3及び最大照度値Imax3を含む信号を、入力インタフェースINを介してセンサ8に送信する。
【0063】
本明細書で説明される実施形態において、応答期間ΔtBl,ΔtDnのそれぞれが、時間稼ぎ期間Δttempo,Bl、Δttempo,Dn、及び使用される遷移関数の全体遷移期間Δttrans[τv2,τv1]、Δttrans[τv(t1)、τv3]をそれぞれ含む。
【0064】
本明細書で説明される実施形態において、第1の時間稼ぎ期間Δttempo,Dnは、第2の時間稼ぎ期間Δttempo,Blとは異なり、初期透過値と目標透過値との差の符号に依存する。言い換えると、目標透過値が初期透過値より大きい場合、例えば、τv1がτv(t0)=τv2より大きいとき、時間稼ぎ期間Δttempo,Blが適用され、目標透過値が初期透過値よりも低い場合、例えば、τv3がτv(t1)より低いときに、時間稼ぎ期間Δttempo,Dnが適用される。
【0065】
別の実施形態によれば、第1の時間稼ぎ期間及び第2の時間稼ぎ期間は、照度が変化した後すぐに検出に使用される現在の照度範囲外で測定される照度の関数として決定され得る。
【0066】
好適には、全体遷移期間Δttrans、ここではΔttrans[τv2,τv1]及びΔttrans[τv(t1)、τv3]は、300ミリ秒以上且つ10,500ミリ秒以下で選択される。それらの値は、可変透過デバイスを含む眼鏡の装着者及び改善された視覚的快適性を認められた装着者に対してテストされている。
【0067】
代替手段では、第1の時間稼ぎ期間Δt
tempo,Dn及び第2の時間稼ぎ期間Δt
tempo,Blは、互いに等しくてもよく、又は0に等しくてもよい。第1の時間稼ぎ期間Δt
tempo,Dn及び第2の時間稼ぎ期間Δt
tempo,Blが0に等しいとき、応答期間は、遷移関数
【数7】
の全体遷移期間Δt
transに対応する。
【0068】
前述の通り、全体遷移期間Δttransの値は、初期透過値及び目標透過値に依存する。全体遷移期間Δttransの値は、初期透過値と目標透過値との差の絶対値に依存してもよく、及び/又は全体遷移期間の値は、初期透過値と目標透過値との差の符号に依存してもよい。
【0069】
実施形態によれば、全体遷移期間の値は、透過性が増大しているか又は低下しているかに応じて異なり得る。透過性が低下するとき、即ち、可変透過光学系が暗くなるとき、全体遷移期間Δttrans,Dnが適用され得る。透過性が増大するとき、即ち、可変透過光学系が明るくなるとき、全体遷移期間Δttrans,Blが適用され得る。
【0070】
変化形によれば、全体遷移期間Δttrans,Dn、Δttrans,Blの値は、一定であり、Δttrans,Dnは、Δttrans,Blとは異なる。選択する全体遷移期間の値は、初期透過値と目標透過値との差の符号のみに依存する。
【0071】
別の変化形によれば、全体遷移期間Δttrans,Dn、Δttrans,Blは、変化し得る。選択する全体遷移期間の値は、初期透過値と目標透過値との差の符号及び絶対値の両方に依存する。したがって、異なる遷移期間Δttrans,Blは、例えば光透過性がτv3からτv2まで、及びτv3からτv1まで増大するときに、使用され得る。さらに、例えば、τv2からτv3まで透過性を低下させるために用いられる全体遷移期間Δttrans,Dnは、τv3からτv2まで透過性を増大させるために用いられる全体遷移期間Δttrans,Blとは異なる。
【0072】
図3Cに表されるように、制御ユニット5は、エレクトロクロミック又は液晶光学系によって到達予定の透過値を表す複数のコマンド信号を送信し得る。複数のコマンド信号は、例えば、初期透過値τ
v(t
i)=τv2と目標透過値τ
v,target=τv1との間に含まれる中間透過値のレベルを表す複数のコマンド信号を含んでもよく、線形遷移関数の場合に目標透過値τ
v,targetを表すコマンド信号を含んでもよい。中間透過値の各レベルは、制御ユニット5によって制御される異なる期間を有してもよく、好適には装着者に知覚可能でなくてもよく、即ち、中間透過値のレベルは、典型的には30Hzのオーダの、残像より低い周波数で変化する。
図3Cにおいて見られ得るように、中間遷移値は、式(1)に従って大幅に変化する。
【0073】
遷移関数
【数8】
は、
【数9】
であるように定義される任意の遷移関数であってもよい。
【0074】
実施形態によれば、遷移関数
【数10】
は、
【数11】
として定義される指数関数であってもよく、τ
V(t
i)は、時間t=t
iにおける初期透過値であり、τ
v,targetは、目標透過値であり、tは、現在時間であり、
【数12】
は、遷移関数の時間定数である。
【0075】
指数遷移関数の時間定数
【数13】
は、初期透過値及び目標透過値の関数として決定され得る。遷移関数が指数関数であるときの遷移関数
【数14】
の全体遷移期間Δt
transは、時間定数
【数15】
の3倍に等しい。
【0076】
実施形態によれば、時間定数、及びしたがって全体遷移期間は、sign(τ
V(t
i)-τ
V,target)=1であるときに、
【数16】
、且つsign(τ
V(t
i)-τ
V,target)=-1であるときに、
【数17】
であるように、初期透過値τ
V(t
i)と目標透過値τ
V,targetとの差の符号に依存し得る。
【0077】
したがって、考えられる初期透過値及び目標透過値にかかわらず、透過性が増大するか又は低下するかに依存して、指数遷移関数が異なる時間定数
【数18】
を有するように、T
Dnは、t
Blとは異なる。
【0078】
さらに、TDn及びTBlは、好適には、100ミリ秒より大きく、且つ3500ミリ秒より小さく選択され得る。それらの値は、可変透過デバイスを含む眼鏡の装着者及び改善された視覚的快適性を認められた装着者に対してテストされている。別の実施形態によれば、光透過値が低下するか又は増大するかに依存して、即ち、初期透過値と目標透過値との差の符号に依存して、異なる遷移関数が使用され得る。
【0079】
図4は、液晶レンズを含むアイウェアの装着者に対して行われる実験の結果を示す。リモート構成ユニットを用いると、制御ユニット5は、ユーザの母集団によって設定された、時間定数T
Dn及びT
Blについての異なる値を有する第1の指数遷移関数及び第2の指数遷移関数で構成された。
図4は、各ユーザに最良の視覚的快適性をもたらした値(T
Dn及びT
Bl)のグラフを示す。グラフから読み取られ得るように、T
Dn、T
Blの異なる値についてユーザの最良の視覚的快適性が得られてもよく、各対(T
Dn,T
Bl)は、ユーザ毎に異なる。それはまた、何人かの装着者、又は装着者の特定のグループについて、アイウェアの透過性が増大するとき、即ち可変透過光学系が退色するときに適用された応答期間(T
Blに依存する)が、アイウェアの透過性が減少するとき、即ち可変透過光学系が暗くなるときに適用された応答期間(T
Dnに依存する)とは異なるときに、視覚的快適性が向上するという結果をもたらす。
図4上で見られ得るように、対(T
Dn,T
Bl)は、1の勾配を有する線形関数上に位置しない。
【0080】
ユーザの視覚的快適性は、使用される遷移関数の全体遷移期間を変化させること、及び/又は時間稼ぎ期間を変化させることによっても改善され得ると理解され得る。
【0081】
したがって、リモート構成ユニットは、異なる全体遷移期間及び/又は異なる時間稼ぎ期間及び/又は異なる遷移関数を装着者又は装着者の異なるグループに対してテストするために使用され得る。テストの結果に応じて、特定の遷移関数及び/又は特定の時間稼ぎ期間及び/又は特定の全体遷移期間が、テストされた装着者の嗜好又は装着者のグループの嗜好に従って、装着者に提案され得る。
【0082】
本明細書で説明される実施形態では、可変透過光学系は、エレクトロクロミック又は液晶レンズであり、応答期間は、可変透過光学系の光透過性を制御することによって、自動モードで制御される。
【0083】
代替手段において、制御ユニットは、手動モードで制御されてもよい。制御素子9を用いて、ユーザは、可変透過光学系4a、4bによって到達予定の透過性の目標値を設定し得る。透過性の目標値に到達する特定の応答期間を設定するために使用され得るパラメータは、専用のユーザインタフェースを任意選択的に含み得るリモート制御ユニットを用いて、前もって設定されてもよい。
【0084】
別の実施形態において、可変透過光学系は、フォトクロミックレンズであってもよい。その場合、目標透過値は、照明環境の変化に続くフォトクロミック反応が完結すると、光学系によって到達される透過性の定常値に対応する。
【0085】
応答期間は、フォトクロミックレンズを加熱することによって光透過性が変化する速度を制御することによって、制御され得る。
【0086】
フォトクロミックレンズ又は光学系は、ポリマー層内、又はレンズ若しくは光学系の中に埋め込まれたフォトクロミック化合物を含む。レンズ又は光学系の光透過性の変化が、フォトクロミック化合物により吸収される光によって開始される、化学反応をもたらす。光透過性が変化する速度は、フォトクロミック化合物の合成物及び濃度に依存する。フォトクロミックレンズ又は光学系の光透過性が変化する速度は、例えば文献、国際公開第2014/071179号パンフレットにおいて開示されるように、ポリマー層内又はレンズ若しくは光学系の中に埋め込まれたフォトクロミック化合物を加熱することによっても、制御され得る。
【0087】
したがって、所定の期間中所定の温度を加えることによって、フォトクロミックレンズ又は光学系の応答期間を制御することが可能である。そのために、フォトクロミックレンズ又は光学系は、フォトクロミック化合物を含むポリマー層と接触して、又はフォトクロミックレンズ若しくは光学系と接触して配置された透明ヒータを含み得る。透明ヒータは、所与の抵抗を有し、フォトクロミック素子を暗くさせ、又は明るくさせるのに十分なUV光を透過し、暗くならないときに装着者がレンズを通して見るのに十分な可視光を透過する、導電性物質の層であってもよい。透明ヒータは、電圧源に接続された2つの電極を含む。したがって、透明ヒータを形成する導電性物質の層を通して電流が流れるとき、フォトクロミック化合物を含む周辺の物質は、ジュール効果の結果として加熱される。適当な導電性物質の例は、酸化インジウムスズ(ITO)である。フォトクロミック化合物は、また、導電性ポリマー及び/又は導電性ナノ粒子を有する導電性ポリマーの中に埋め込まれてもよい。低い抵抗を有する2つの導電性電極は、したがって、フォトクロミック化合物及び任意選択的に導電性ナノ粒子を含む導電性ポリマーの両側に配置される。その場合、熱は、ジュール効果によって上記層内に直接生じる。
【0088】
フォトクロミックレンズの場合、可変透過性の応答期間は、所定の期間所定の温度を加えることによって制御される。応答期間は、初期透過値及び目標透過値の関数として決定され得る。初期透過値は、レンズ又は光学系の透過値を測定するように構成されたセンサによって測定され得る。目標透過値は、環境光センサによって測定される照度の測定値から推定され得る。初期透過値と目標透過値との差の値に応じて、応答期間、より詳細には温度Temp及び加熱期間Δtheatが、決定され得る。温度Temp及び加熱期間Δtheatは、コントローラによって、より詳細には制御ユニットによって電圧ドライバ7に送信されるコマンド信号によって、設定される。フォトクロミックレンズに加えるように意図される温度Tempは、透明ヒータの2つの電極間に対応する電圧を印加することによって設定される。
【0089】
別の実施形態によれば、応答期間の値、より詳細には温度及び加熱期間は、初期透過値と目標透過値との差の符号の関数として決定される。その場合、応答期間の値は、フォトクロミックの光透過性が低下するか又は増大するかに応じて、即ちフォトクロミック光学系が暗くなるか又は明るくなるかに応じてのみ、決定される。
【0090】
よって、目標透過値が初期透過値よりも低い場合、第1の温度TempBl及び第1の加熱期間Δtheat,Blがコントローラによって設定され、目標透過値が初期透過値よりも大きい場合、第2の温度TempDn及び第2の加熱期間Δtheat,Dnがコントローラによって設定される。加熱期間は、閉制御ループを用いてレンズ又は光学系の現在の透過性を制御することによって微調整され得る。前述の通り、環境光センサは、前述した方法のうちの1つに従って可変透過光学系の周りの照明環境の照度変化を検出するために使用され得る。
【0091】
また前述の通り、別の実施形態によれば、時間稼ぎは、センサ8が制御ユニット5のプロセッサPROCに照度の変化を示す前に、適用され得る。
【0092】
他の実施形態によれば、可変透過デバイスは、サングラスなどの他の種類のアイウェア、スキーヘルメット、又は仮想現実眼鏡及びより一般的にはヘッドマウントディスプレイに含まれてもよい。可変透過光学系は、したがって、補正が必要ではない場合に装着者の屈折異常を補正するように特に設計されないこともあるアイウェアの種類に応じて、1つ又は2つの眼鏡レンズから形成され得る。可変透過デバイスは、また、建物の窓、ドア、又は壁に組み込まれてもよい。その場合、可変透過光学系は、四角形のフレーム上に取り付けられた有機ガラス又はミネラルガラスの平面基板から形成される。