(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】車両の走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241025BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241025BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2020567649
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 IB2019000064
(87)【国際公開番号】W WO2020152490
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福重 孝志
(72)【発明者】
【氏名】田家 智
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】山本 信平
【審判官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-16799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/10
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行可能な道路領域である走行路の、左側境界線に関する左側走行路境界情報と、右側境界線に関する右側走行路境界情報とを取得し、
前記左側走行路境界情報の左側境界線が第1ポテンシャル値、前記右側走行路境界情報の右側境界線が前記第1ポテンシャル値とは異なる第2ポテンシャル値になるポテンシャル場を走行路の空間内に生成し、
前記左側境界線もしくは右側境界線を基準として前記走行路内に、道路環境に応じて予め定められた走行経路の横方向位置と、
前記ポテンシャル場における前記第1ポテンシャル値と前記第2ポテンシャル値との中間値となる位置から定められる前記
走行路の中心線の横方向位置と、の差の絶対値が所定値以下となるように、前記第1ポテンシャル値及び/又は前記第2ポテンシャル値を補正し
、
前記左側走行路境界情報の左側境界線が補正後の第1ポテンシャル値、前記右側走行路境界情報の右側境界線が補正後の第2ポテンシャル値になる、補正後のポテンシャル場を走行路の空間内に生成し、
生成された補正後のポテンシャル場におけるポテンシャル値の等ポテンシャル線にしたがって自車両が走行する走行経路を生成し、
生成された走行経路にしたがって、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御方法。
【請求項2】
前記左側走行路境界情報と前記右側走行路境界情報は、
自車両の現在位置情報と道路境界情報が定義された地図情報とから、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第1走行路境界情報を検出し、
自車両の周囲の物体及び道路状況を周囲情報として取得し、当該周囲情報から、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第2走行路境界情報を検出し、
前記第1走行路境界情報と前記第2走行路境界情報とを統合して統合走行路境界情報を生成し、
前記統合走行路境界情報を、左側走行路境界情報と右側走行路境界情報とに分離して取得する請求項1に記載の車両の走行制御方法。
【請求項3】
前記予め定められた走行経路の横方向位置は、前記走行路の横方向の中心位置、前記走行路の右側境界線から左方向に第1所定距離の位置、又は前記走行路の左側境界線から右方向に第2所定距離の位置のいずれかである請求項1又は2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項4】
予め、自車両が走行する道路の環境情報と関連付けた走行経路の横方向位置を記憶し、
自車両が走行する道路の環境情報を取得し、記憶した横方向位置から、当該道路の環境情報に関連付けられた走行経路の横方向位置を抽出する請求項3に記載の車両の走行制御方法。
【請求項5】
前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報の走行方向における単位距離あたりの横方向変化の頻度をそれぞれ演算し、
前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報のうち前記頻度が小さい方の走行路境界情報を基準にして、前記走行経路の横方向位置を抽出する請求項3に記載の車両の走行制御方法。
【請求項6】
前記ポテンシャル場のポテンシャル値は、ラプラス方程式の近似解を用いる請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項7】
前記ポテンシャル場のポテンシャル値は、
前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報を、それぞれ折線情報に変換し、
前記折線情報のそれぞれの線分の位置、方向及び長さにより規定される調和関数を基底関数とし、これらの線形結合の近似解を用いる請求項6に記載の車両の走行制御方法。
【請求項8】
前記ポテンシャル場のポテンシャル値は、
対象とされる水平面を複素平面として走行路境界情報を複素数情報に変換し、
基底関数を複素正則関数とし、これらの線形結合の近似解としての複素ポテンシャルを用いる請求項7に記載の車両の走行制御方法。
【請求項9】
zを複素数変数としたときに、前記基底関数を、f(z)=ln(z1-z)+ln{(z1-z)/(z0-z)}(z0-z)/(z1-z0)とする請求項8に記載の車両の走行制御方法。
【請求項10】
前記折線情報のそれぞれの線分の中点をディリクレ境界条件の適用場所として選点し、代用電荷法を適用して前記線形結合の係数を得る請求項7に記載の車両の走行制御方法。
【請求項11】
自車両の走行経路を生成し、前記走行経路にしたがって、操舵装置、動力装置及び制動装置の少なくとも何れかを制御して自動走行制御を実行する車両の走行制御装置において、
前記走行制御装置は、
自車両が走行可能な道路領域である走行路の、左側境界線に関する左側走行路境界情報と、右側境界線に関する右側走行路境界情報とを取得し、
前記左側走行路境界情報の左側境界線が第1ポテンシャル値、前記右側走行路境界情報の右側境界線が前記第1ポテンシャル値とは異なる第2ポテンシャル値になるポテンシャル場を走行路の空間内に生成し、
前記左側境界線もしくは右側境界線を基準として前記走行路内に、道路環境に応じて予め定められた走行経路の横方向位置と、
前記ポテンシャル場における前記第1ポテンシャル値と前記第2ポテンシャル値との中間値となる位置から定められる前記
走行路の中心線の横方向位置と、の差の絶対値が所定値以下となるように、前記第1ポテンシャル値及び/又は前記第2ポテンシャル値を補正し
、
前記左側走行路境界情報の左側境界線が補正後の第1ポテンシャル値、前記右側走行路境界情報の右側境界線が補正後の第2ポテンシャル値になる、補正後のポテンシャル場を走行路の空間内に生成し、
生成された補正後のポテンシャル場における等ポテンシャル線にしたがって自車両が走行する走行経路を生成し、
生成された走行経路にしたがって、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御方法及び走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転等に利用される走行経路生成装置として、自車両の周囲情報と自車両の走行状態とを取得し、周囲情報に基づいて取得する道路幅、道路形状及び障害物等から、自車両の走行可能領域と走行不可領域とを認識し、認識された走行可能領域において、自車両の車速と目標横加速度とに基づいて走行経路の曲率を設定し、この曲率からサポートベクターマシンでカーネル関数として使用する動径基底関数の係数を曲率パラメータとして設定する走行経路生成装置が知られている(特許文献1)。そして、この走行経路生成装置のサポートベクターマシンにより、設定された曲率パラメータに基づいて車両の走行経路を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、道路の左右のクラスにそれぞれ属する特徴点のうち識別面に最も近い特徴点をサポートベクターとし、サポートベクターと識別面との距離が最大になるように識別面を生成し、これを走行経路とする。すなわち、走行可能と認識された道路の領域の左右幅方向のほぼ中央を走行経路とする。したがって、たとえば比較的幅が広い道路の左側の路側にのみ障害物、たとえば駐車車両が点在する場合などにおいては、障害物が存在しない範囲だけ道路の中央に戻るといった、波打った走行経路が生成され、乗員に違和感を与えることがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、乗員の違和感を払拭して円滑な自動走行制御を実現できる車両の走行制御方法及び走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両が走行可能な道路領域の走行路を検出し、当該走行路空間に対して、左側境界線のポテンシャル値と右側境界線のポテンシャル値とを互いに異なる値に設定したポテンシャル場を生成し、ポテンシャル場におけるポテンシャル値から定められる走行経路の横方向位置が、左側境界線もしくは右側境界線を基準として走行路内に予め定められた走行経路の横方向位置に対して差異がある場合には、その部分のポテンシャル値を補正し、補正後のポテンシャル値より走行経路を生成し、生成された走行経路にしたがって車両の自動走行制御を実行する。これにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め定められた走行経路の横方向位置にしたがった走行経路が生成されるので、乗員の違和感を払拭して円滑な自動走行制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る車両の走行制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1の走行路幅演算部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の走行経路演算部の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の車両の走行制御装置で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のステップS1~S4の処理を説明するための走行路の平面図である。
【
図6】
図4のステップS5~S6の処理を説明するためのポテンシャル場及び等ポテンシャル線を示す図である。
【
図7】
図4のステップS7の処理を説明するための、
図6のVII-VII線に沿う断面におけるポテンシャル値を示すグラフである。
【
図8】
図4のステップS8~S10の処理の一例を説明するための、
図6のVII-VII線に沿う断面におけるポテンシャル値を示すグラフである。
【
図9】
図4のステップS8~S10の処理の他の例を説明するための、
図6のVII-VII線に沿う断面におけるポテンシャル値を示すグラフである。
【
図10】
図1の横方向位置指令部に記憶された制御マップの一例を示す図である。
【
図11】
図4のステップS12の処理を説明するためのポテンシャル場及び等ポテンシャル線を示す図である。
【
図12】
図4のステップS13の処理を説明するためのポテンシャル場及び等ポテンシャル線を示す図である。
【
図13】本発明の車両の走行制御装置を用いて生成される走行経路の前提となるシーンの一例を示す平面図である。
【
図14】
図13のシーンに対して、本発明の車両の走行制御装置を用いて実行される処理を説明するための平面図(その1)である。
【
図15】
図13のシーンに対して、本発明の車両の走行制御装置を用いて実行される処理を説明するための平面図(その2)である。
【
図16】
図13のシーンに対して、本発明の車両の走行制御装置を用いて実行される処理を説明するための平面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTCの構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の走行制御装置VTCは、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。
図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTCは、走行路境界取得部1~5と、走行路境界統合部6と、道路環境認識部7と、横方向位置指令部8と、境界条件設定部9と、走行路幅演算部10と、走行経路演算部11と、走行経路追従制御部12と、を備える。
【0010】
これらのユニットのうち走行路境界取得部1~5は、後述するとおり各種のセンサ類で構成されている。また、走行路境界統合部6と、道路環境認識部7と、横方向位置指令部8と、境界条件設定部9と、走行路幅演算部10と、走行経路演算部11と、走行経路追従制御部12とは、一又は複数のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされたソフトウェアにより構成されている。コンピュータは、走行路境界統合部6、道路環境認識部7、横方向位置指令部8、境界条件設定部9、走行路幅演算部10、走行経路演算部11、及び走行経路追従制御部12といった各ユニットを機能させるためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。
【0011】
走行路境界取得部1~5は、自動走行制御の制御対象となる自車両Vの走行路TAの左側境界線に関する左側走行路境界情報と、右側境界線に関する右側走行路境界情報とを取得するための各種の情報を検出する。
【0012】
走行路境界取得部1は、自車両に搭載された自車両位置検出器による自車両位置情報と、地図データベースに格納された三次元高精度地図情報とを取得し、これらの情報を走行路境界統合部6と道路環境認識部7に出力する。この自車両位置検出器は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成され、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両の現在の位置情報を検出する。また、地図データベースに格納された三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報であり、地図情報とともに、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア/パーキングエリアなどの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。
【0013】
走行路境界取得部2は、車両の前部に設けられたレーザレンジファインダ(LRF)による障害物情報(LRF情報)を取得し、これを走行路境界統合部6と道路環境認識部7に出力する。レーザレンジファインダは、距離測定用の出力波であるレーザ光を車両の前方領域に照射し、その反射波(検知波)を検出することで、車両周囲の物標(物標とは、例えば、車両が走行する走行路の他車両、二輪車、自転車、歩行者、走行路面上の車線区分線、路肩の縁石、ガードレール、壁面、盛り土等である。)と、車両との間の相対位置を示す測距信号を生成する。
【0014】
走行路境界取得部3は、ミリ波又は超音波を用いたレーダ装置による障害物情報(レーダ情報)を取得し、これを走行路境界統合部6に出力する。レーダ装置は、ミリ波や超音波を車両の前方に照射して自車両の周囲の所定の範囲を走査し、自車両の周囲に存在する他車両、二輪車、自転車、歩行者、路肩の縁石、ガードレール、壁面、盛り土等等の障害物を検出する。例えば、レーダ装置は、障害物と自車両との相対位置(方位)、障害物の相対速度、自車両から障害物までの距離等を自車両の周囲状況として検出する。
【0015】
走行路境界取得部4は、車両の前方等に設けられたカメラによる障害物情報(カメラ情報)を取得し、これを走行路境界統合部6に出力する。カメラは、自車両の前方の所定の範囲を撮像して画像データを取得するイメージセンサであり、例えば車室内のフロントウィンドウ上部に設けられたCCD広角カメラからなる。カメラは、ステレオカメラや全方位カメラであってもよく、複数のイメージセンサを含むようにしてもよい。カメラは、取得した画像データから、自車両の前方に存在する道路及び道路周辺の構造物、道路標示、標識、他車両、二輪車、自転車、歩行者等を自車両の周囲状況として検出する。
【0016】
走行路境界取得部5は、車両の前方、後方及び側方の全周囲に設けられたカメラによる障害物情報(アラウンドビューモニター(登録商標)AVM情報)を取得し、これを走行路境界統合部6に出力する。カメラは、自車両の全周囲の範囲を撮像して画像データを取得するイメージセンサであり、例えば車室内のフロントウィンドウ上部、左右のサイドミラー、トランクリッド等に設けられたCCD広角カメラからなる。カメラは、取得した画像データから、自車両の周囲に存在する道路及び道路周辺の構造物、道路標示、標識、他車両、二輪車、自転車、歩行者等を自車両の周囲状況として検出する。
【0017】
以上の走行路境界取得部1~5は、全て設ける必要はなく、少なくとも走行路境界取得部1と、走行路境界取得部2又は走行路境界取得部3のいずれか一方と、走行路境界取得部4又は走行路境界取得部5のいずれか一方と、を設ければよい。走行路境界取得部1は、自車両の現在位置情報とその近傍の三次元高精度地図情報を取得するので、自車両の近傍の障害物以外の道路形状を認識することができる。また、走行路境界取得部2又は走行路境界取得部3は、レーザ光等を用いて走査するので比較的遠くの障害物の有無を認識することができる。これに対して、走行路境界取得部4又は走行路境界取得部5はイメージセンサ等を用いて撮像するので、障害物の有無だけでなくその種類まで認識することができる。
【0018】
走行路境界統合部6は、これら走行路境界取得部1~5により取得された情報に基づいて、自車両が走行可能な道路領域である走行路の、左側境界線に関する左側走行路境界情報と、右側境界線に関する右側走行路境界情報とを生成する。すなわち、走行路境界取得部1により取得された自車両の現在位置情報と道路境界情報が定義された地図情報とから、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第1走行路境界情報を検出する。また、これと同時に、走行路境界取得部2~5により取得された自車両の周囲の物体及び道路状況を周囲情報として取得し、当該周囲情報から、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第2走行路境界情報を検出する。
【0019】
ちなみに、本明細書において、「道路」とは、障害物の有無にかかわらず現実に存在して地図情報に含まれる、車両や人間が通行するように整備された道自体を意味するものとする。これに対して本明細書において、「走行路」とは、道路のうち自車両が走行可能な領域、すなわち障害物を除いた自車両が走行可能な道路の領域を意味するものとする。したがって、走行路境界統合部6は、走行路境界取得部1により取得された「道路」に関する第1走行路境界情報を検出する一方、走行路境界取得部2~5により取得された「走行路」に関する第2走行路境界情報を検出する。そして、走行路境界統合部6は、第1走行路境界情報と第2走行路境界情報とを統合して統合走行路境界情報を生成し、さらに当該統合走行路境界情報を、左側走行路境界情報と右側走行路境界情報とに分離する。なお、本明細書において「左側」、「右側」及び「横方向」とは自車両進行方向を前方とした場合の左側、右側及び横方向を意味する。
【0020】
図13は、自車両Vが走行する道路の一例を示す平面図であり、日本や英国のような左側通行の法規の国において、左側の一車線を示している。このシーンの場合、走行路境界統合部6は、走行路境界取得部1により自車両Vの現在位置、具体的には緯度・経度情報をGPSユニットから取得するとともに、三次元高精度地図情報から自車両Vが存在する周囲の道路情報、具体的には道路Rの環境又は属性(国情報、道路左端RLの位置情報、道路右端RRの位置情報、道路Rの幅、高速道路・一般道その他の道路種別など)を取得する。走行路境界統合部6は、これと同時に、走行路境界取得部2~5により自車両Vの周囲に存在する他車両、二輪車、自転車、歩行者、路肩の縁石、ガードレール、壁面、盛り土等等の障害物の位置情報を取得する。
【0021】
そして、走行路境界統合部6は、走行路境界取得部1により取得された自車両Vの現在位置情報及びその周辺の三次元高精度地図情報から認識される道路Rの領域から、走行路境界取得部2~5により取得された障害物の位置情報から認識される障害物の存在領域を減算し、自車両Vが走行可能な走行路TAを演算する。そして、走行路境界統合部6は、このようにして演算された走行路TAの領域情報から、左側境界線ELを示す左側走行路境界情報と、右側境界線ERを示す右側走行路境界情報とを演算する。
図13に示すシーンについて言えば、道路Rの左側部に3台の静止障害物(駐車車両)V1,V2,V3が存在することが走行路境界取得部2~5により取得されるので、左側境界線ELは点線で示す線となる一方、道路Rの右側部には障害物は存在しないので、右側境界線ERは道路右端RRと同じ線となる。なお、走行路境界統合部6は、左側境界線ELに係る左側走行路境界情報と、右側境界線ERに係る右側走行路境界情報とのそれぞれを、
図13に示す比較的単純な道路形状であっても、
図5に示す複雑な道路形状であっても、
図5に示すように直線の折線情報の集合体に変換して保有する。
【0022】
図1に戻り、道路環境認識部7は、走行路境界取得部1により取得された自車両Vの現在位置情報及びその周辺の三次元高精度地図情報及び走行路境界取得部2により取得された障害物の位置情報から、自車両Vが現在走行中の道路環境等を認識する。具体的には、
図10に示すように、道路環境として道路Rの左右いずれかの側部に駐車車両が多い車線か否か、自動車の走行法規が左走行か右走行かといった国情報、及び左側境界線ELの左側走行路境界情報の周波数と右側境界線ERの右側走行路境界情報の周波数を認識する。
図10は、
図1の横方向位置指令部8に記憶された制御マップの一例を示す図である。
【0023】
横方向位置指令部8は、道路環境に応じて、自車両Vが走行するのに適した走行路TAの横方向位置を予め定めたユニットである。たとえば、日本国においては、乗用車の車幅が1.4~2.5mであるのに対し、1車線の道路Rの幅(幅員)は、3.5m前後と規定されている。しかしながら、日本国を含めて国によっては、5~6m程度の幅広の道路も存在し、こうした道路にあっては路側駐車が認められていることも少なくない。そのため、本実施形態の横方向位置指令部8においては、道路環境として路側に駐車車両が多い車線か否かを、走行路境界取得部1の三次元高精度地図情報により駐車禁止ではないことを取得するとともに、走行路境界取得部2のLRF情報により実際に駐車車両が存在するか否かを取得する。また、走行路境界取得部1の三次元高精度地図情報により自車両Vの走行中の国情報を取得して左側走行か右側走行かを認識する。さらに、他の条件として、走行路境界統合部6にて取得される左側境界線ELの左側走行路境界情報の周波数と右側境界線ERの右側走行路境界情報の周波数を取得し、左側境界線ELと右側境界線ERの何れに障害物が多いかを認識する。なお、左側走行路境界情報の周波数及び右側走行路境界情報の周波数とは、
図13に示す左側境界線ELで言えば、道路Rの延在方向(
図13の上下方向)に対する横方向のジグザグ線の周波数を意味する。すなわち横方向の変化を振幅、道路Rに沿った方向を時間と捉えた場合の左側境界線EL及び右側境界線ERの周波数を意味し、道路Rに沿った方向における単位距離あたりの横方向変化の頻度である。周波数が大きい場合には障害物が多いことを意味し、周波数が小さい場合には障害物が少ないことを意味する。
【0024】
そして、横方向位置指令部8は、道路環境認識部7により認識された道路環境、国情報及び他の条件と、横方向位置指令部8に記憶された
図10に示す制御マップとから、道路環境として路側に駐車車両が多い車線である場合、国情報から左側走行の国であることが認識されたときは、走行路TAの右端から左に1.5mの位置を自車両Vの車幅中心として自動走行制御するように指令を出力し、国情報から右側走行の国であることが認識されたときは、走行路TAの左端から右に1.5mの位置を自車両Vの車幅中心として自動走行制御するように指令を出力する。同様に、横方向位置指令部8は、道路環境として路側に駐車車両が多い車線である場合、国情報が得られないときは、走行路境界統合部6にて取得される左側境界線ELの左側走行路境界情報の周波数と右側境界線ERの右側走行路境界情報の周波数を取得し、左側走行路境界情報の周波数の方が小さいときは、走行路TAの左端から右に1.5mの位置を自車両Vの車幅中心として自動走行制御するように指令を出力し、右側走行路境界情報の周波数の方が小さいときは、走行路TAの右端から左に1.5mの位置を自車両Vの車幅中心として自動走行制御するように指令を出力する。なお、道路環境として路側に駐車車両が多い車線ではない場合には、走行路TAの中心位置が自車両Vの車幅中心に一致するように、自動走行制御するように指令を出力する。
【0025】
再び
図1に戻り、走行路幅演算部10は、走行路境界統合部6により演算された統合走行路境界情報(左側走行路境界情報及び右側走行路境界情報を含む)を取得し、自車両Vの前方の走行路TAの走行路幅Wを演算する。
図2は、
図1の走行路幅演算部10の具体的構成を示すブロック図、
図5は、走行路境界統合部6により演算された統合走行路境界情報(左側走行路境界情報及び右側走行路境界情報を含む)を示す平面図である。
【0026】
走行路幅演算部10は、
図2に示すように、ポテンシャル値演算部101と、等ポテンシャル線演算部102と、勾配演算部103とを備え、左側境界線ELに係る左側走行路境界情報と、右側境界線ERに係る右側走行路境界情報とのそれぞれを読み込み、自車両Vの走行方向に対して所定間隔で走行路幅Wを演算し、これを境界条件設定部9へ出力する。
【0027】
図6は、代用電荷法(電荷重畳法ともいう。)を用いて、左側走行路境界情報の左側境界線ELが第1ポテンシャル値(同図に示す例では+3V)、右側走行路境界情報の右側境界線ERが第1ポテンシャル値(+3V)とは異なる第2ポテンシャル値(同図に示す例では-3V)になるポテンシャル場を走行路TAの二次元空間(x-y平面)内に生成し、ポテンシャル場のポテンシャル値を演算した結果を示す図である。複数の折線の集合体で示される左側境界線ELと、同じく複数の折線の集合体で示される右側境界線ERとの間に走行路TAが存在する二次元空間に、コンピュータシミュレーションを用いて代用電荷法を適用し、左側境界線ELに+3Vの電圧を印加し、右側境界線ERに-3Vの電圧を印加した場合の電界の等電荷線(等ポテンシャル線)を示している。すなわち、
図6は、左側境界線ELと右側境界線ERとの間に形成された走行路TAの二次元空間における、ラプラス方程式の解であるポテンシャル値を、代用電荷法を用いて演算した結果を示すものである。
【0028】
図7は、
図6の走行路TAの一断面であるVII-VII線に沿う断面におけるポテンシャル値(電荷)を示すグラフである。
図7の縦軸のポテンシャル値「+P」が
図6の+3Vに相当し、
図7の縦軸のポテンシャル値「-P」が
図6の-3Vに相当する。そして、
図7において、左側境界線ELから右側境界線ERに至るポテンシャル値の勾配kは、ほぼ一定になることが本発明者らにより確認されているから、ポテンシャル値P,走行路幅W,勾配kとすると、
図7のグラフからkW=2Pが成り立ち、走行路幅W=2P/kから走行路幅Wを演算することができる。
【0029】
ここで、ラプラス方程式とは、自然界における定常状態(時間によって変化しない状態、すなわち時間の変数がない状態)のポテンシャル場を解く微分方程式であって、たとえば
図6に示すような電荷分布のない一様な媒質中の静電ポテンシャルのほか、熱源に接触する固体内の温度分布に関する熱伝導の拡散方程式、重力場における重力ポテンシャルを解く方程式も含まれる。具体的には、本実施形態のような走行路TAの二次元空間(x,y)における二次関数Eに対して、(∂
2E/∂x
2)+(∂
2E/∂y
2)=0となる方程式という。
【0030】
また、このラプラス方程式の解を演算するにあたっては、ラプラス方程式を満たす二階連続微分が可能な関数(以下、調和関数)を用いて演算することができる。すなわち、本実施形態のような走行路TAの二次元空間(x,y)における二次関数Eに対して、E=ax+by+c,E=aln(√(x2+y2))が、調和関数となる(ただし、a,b,cは定数、lnは自然対数を示す)。なお調和関数は、二階連続微分が可能な関数を仮定しているが、無限回微分可能でもある。ここで、本実施形態のような走行路TAの二次元空間(x,y)の場合、(∂E/∂x)(∂F/∂x)+(∂E/∂y)(∂F/∂y)=0という方程式を満たす、対となる次調和関数E,Fが存在する。この対となる関数E,Fを用いて得られる複素関数G(x,y)=E(x,y)+iF(x,y)は、ラプラス方程式を満たす調和関数の一種であり、正則関数と称され、演算に便利な特徴を有する。
【0031】
図2に示すポテンシャル値演算部101は、走行路TAの二次元空間(x-y平面)に代用電荷法を適用し、その電界に関するラプラス方程式の解を求める。具体的には、左側走行路境界情報及び右側走行路境界情報のそれぞれの折線情報の線分の位置、方向及び長さにより規定される調和関数を基底関数とし、これらの線形結合の近似解を用いる。ここで、折線情報のそれぞれの線分の中点をディリクレ境界条件の適用場所として選点し、代用電荷法を適用して線形結合の係数を得る。そしてより具体的には、走行路TAの二次元空間(x-y平面)を複素平面として走行路境界情報を複素数情報に変換し、基底関数を複素正則関数とし、これらの線形結合の近似解としての複素ポテンシャルを用いることで、二次元空間(x-y平面)の全部又は一部の位置における電荷(ポテンシャル値)を得ることができる。なお、基底関数としての複素正則関数は、zを複素数変数として、f(z)=ln(z1-z)+ln{(z1-z)/(z0-z)}(z0-z)/(z1-z0)にて定義される。このように、ポテンシャル場の対象となる走行路TAを複素平面として左側境界線ELの左側境界情報と右側境界線ERの右側境界情報とを複素数情報に変換すれば、勾配kが容易に求められるので、勾配演算部103は、
図7に示す走行路幅W=2P/kから、走行路幅Wを演算し、境界条件設定部9へ出力する。
【0032】
ただし、ポテンシャル値演算部101により走行路TAのx-y平面の全ての電荷(ポテンシャル値)を求めると、演算負荷が大きく演算時間も長くなる。そのため、等ポテンシャル線演算部102は、電荷(ポテンシャル値)が等しい基準となる位置を探索することで、等電荷線(等ポテンシャル線)を得る。たとえば、
図6に示す走行路TAの例では、左側境界線ELに+3V、右側境界線ERに-3Vの電圧を印加した電界をポテンシャル場として生成したので、その中間値となる0Vの位置、すなわち走行路TAの中心点を自車両Vの走行方向に沿って探索する。
図11は、こうした等ポテンシャル線の探索方法を説明するための平面図である。
【0033】
等ポテンシャル線演算部102は、
図11の左図において、自車両Vの走行前方にある走行路TAについて、走行路TAの中心線の始点としたい位置を仮に設定し、ニュートン法を用いて真の走行路TAの中心点を求める。なお、ニュートン法(ニュートン・ラフソン法ともいう。)とは、方程式系を数値計算によって解くための反復法による求根アルゴリズムであり、仮に設定された初期値x
nにおける関数の接線とポテンシャルP=0との切片を求め、これをx
n+1に設定し、次に当該値x
n+1における関数の接線とポテンシャルP=0との切片を求め、これをx
n+2に設定し、この処理を繰り返すことで、真の走行路TAの中心点の始点位置TR0を求めるアルゴリズムである。
【0034】
等ポテンシャル線演算部102は、上述したニュートン法により、走行路TAの中心線の真の始点位置TR0を求めたら、
図11の右図に示すように、自車両Vの走行方向に対して所定距離だけ前方の位置TR1における走行路TAの中心点を、4次のルンゲ・クッタ法(RK4)を用いて求める。ここで4次のルンゲ・クッタ法(RK4)とは、初期値が既知の微分方程式をテイラー展開した4次項を用いて解く数値解析法である。たとえば、関数f(x,y)=dy/dx,初期値x0,y0のとき、所定距離hだけ前方の位置x0+hにおけるy(x0+h)の4次のテイラー展開式は、y(x0+h)=y0+hf(x0,y0)+hf(x0+h/2,y0+k1/2)+hf(x0+h/2,y0+k2/2)+hf(x0+h,y0+k3)となる。ただし、k1=hf(x0,y0),k2=hf(x0+h/2,y0+k1/2),k3=hf(x0+h/2,y0+k2/2),k4=hf(x0+h,y0+k3),k=(k1+2k2+2k3+k4)/6である。等ポテンシャル線演算部102は、以下、この処理を繰り返して、
図11の右図に示すように走行路TAの前方の位置TRnにおける走行路TAの中心点を求める。そして、等ポテンシャル線演算部102は、これらの中心点を結合して走行路TAの中心線CLとし、勾配演算部103へ出力する。勾配演算部103は、上述して演算した走行路幅Wとともに、走行路TAの中心線CLの情報を保有し、境界条件設定部9へ出力する。
【0035】
図1に戻り、境界条件設定部9は、走行路幅演算部10から取得した走行路幅W及び走行路TAの中心線CLと、横方向位置指令部8から取得した横方向位置とから、境界条件を設定する。
図8及び
図9は、
図6のVII-VII線に沿う断面におけるポテンシャル値を示すグラフであって、走行路幅演算部10から取得した走行路幅W及び走行路TAの中心線CLを含むポテンシャル値を実線で示し、横方向位置指令部8から取得した横方向位置に対するポテンシャル値を点線で示したグラフである。
【0036】
すなわち、
図8に示すシーン例は、実線で示す左側境界線ELのポテンシャル値が+P、右側境界線ERのポテンシャル値が-P、走行路TAの中心線がCLであるのに対し、横方向位置指令部8からの指令が走行路TAの中心線CLから左へX1(m)オフセットした位置である場合を示す。この場合、境界条件設定部9は、点線で示すように、ポテンシャル値Pが0となる位置が、走行路TAの中心線CLから左にX1オフセットした位置CLaとなるように、境界条件である左側境界線ELのポテンシャル値P
1Lと、右側境界線ERのポテンシャル値-P
1Rを演算する。具体的には、実線で示す走行路幅演算部10の勾配演算部103から勾配kを取得し、P
1L=+P-kX1,P
1R=-P-kX1の関係式を用いて、P
1L及びP
1Rを演算する。これらのポテンシャル値P
1L及びP
1Rは、境界条件として、後述する走行経路演算部11の境界条件補正部111に出力される。
【0037】
図9に示すシーン例は、実線で示す左側境界線ELのポテンシャル値が+P、右側境界線ERのポテンシャル値が-P、走行路TAの中心線がCLであるのに対し、横方向位置指令部8からの指令が走行路TAの右側境界線ERから左へX2(m)オフセットした位置である場合を示す。この場合、境界条件設定部9は、点線で示すように、ポテンシャル値Pが0となる位置が、走行路TAの右側境界線から左へX2オフセットした位置CLaとなるように、境界条件である左側境界線ELのポテンシャル値P
1Lと、右側境界線ERのポテンシャル値-P
1Rを演算する。具体的には、実線で示す走行路幅演算部10の勾配演算部103から勾配kを取得し、P
1L=+P-(2P
2/kX2),P
1R=-Pの関係式を用いて、P
1L及びP
1Rを演算する。これらのポテンシャル値P
1L及びP
1Rは、境界条件として、後述する走行経路演算部11の境界条件補正部111に出力される。
【0038】
図1に戻り、走行経路演算部11は、走行路境界統合部6から取得した統合走行路境界情報と、境界条件設定部9から取得した境界条件とから、自車両Vの走行経路TRを演算し、これを走行経路追従制御部12へ出力する。
図3は、
図1の走行経路演算部11の具体的構成を示すブロック図、
図12は、走行経路演算部11により演算された走行経路TRを示す平面図である。走行経路演算部11は、
図3に示すように、境界条件補正部111と、ポテンシャル値演算部112と、等ポテンシャル線演算部113と、勾配演算部114とを備える。
【0039】
境界条件補正部111は、走行路境界統合部6から取得した統合走行路境界情報と、境界条件設定部9から取得した境界条件とから、統合走行路境界情報に含まれる左側境界情報に係る左側境界線ELのポテンシャル値と、右側境界情報に係る右側境界線ERのポテンシャル値とを補正する。このポテンシャル値の補正は、
図8及び
図9に示すように、補正前の走行路の中心線CLと、横方向位置指令部8から取得した横方向位置(
図8及び
図9において点線で示す補正後の走行路の中心線CLa)とに差が存在した区間について実行される。すなわち、走行路幅演算部10と横方向位置指令部8とから求められる、境界条件設定部9にて設定した境界条件が、走行路幅演算部10のポテンシャル値演算部101にて当初設定したポテンシャル値と異なる区間については、当該ポテンシャル値を補正し、その他の区間についてはポテンシャル値演算部101にて当初設定したポテンシャル値をそのまま用いる。
【0040】
すなわち、自車両Vの前方の走行路TAのある区間において、
図8に示すような状況である場合には、その区間については、左側境界線ELのポテンシャル値+PをP
1Lに補正し、右側境界線ERのポテンシャル値-Pを-P
1Rに補正する。同様に、自車両Vの前方の走行路TAのある区間において、
図9に示すような状況である場合には、その区間については、左側境界線ELのポテンシャル値+PをP
1Lに補正し、右側境界線ERのポテンシャル値-Pは補正しないでそのまま-Pとする。
【0041】
ポテンシャル値演算部112は、左側境界線ELのポテンシャル値と、右側境界情報に係る右側境界線ERのポテンシャル値とを補正すること以外は、
図2に示す走行路幅演算部10のポテンシャル値演算部101と同じ処理を実行する。すなわち、ポテンシャル値演算部112は、
図5に示す走行路TAの二次元空間(x-y平面)に対し、境界条件補正部111にて補正された区間については補正後のポテンシャル値+P
1L,-P
1R、補正されない区間については当初のポテンシャル値+P,-Pを、それぞれ左側境界線ELのポテンシャル値及び右側境界線ERのポテンシャル値とし、代用電荷法(電荷重畳法ともいう。)を用いて、当該走行路TAの二次元空間(x-y平面)内にポテンシャル場を生成し、その電界に関するラプラス方程式の解を求める。具体的には、左側走行路境界情報及び右側走行路境界情報のそれぞれの折線情報の線分の位置、方向及び長さにより規定される調和関数を基底関数とし、これらの線形結合の近似解を用いる。ここで、折線情報のそれぞれの線分の中点をディリクレ境界条件の適用場所として選点し、代用電荷法を適用して線形結合の係数を得る。そしてより具体的には、走行路TAの二次元空間(x-y平面)を複素平面として走行路境界情報を複素数情報に変換し、基底関数を複素正則関数とし、これらの線形結合の近似解としての複素ポテンシャルを用いることで、二次元空間(x-y平面)の全部又は一部の位置における電荷(ポテンシャル値)を得ることができる。なお、基底関数としての複素正則関数は、zを複素数変数として、f(z)=ln(z1-z)+ln{(z1-z)/(z0-z)}(z0-z)/(z1-z0)にて定義される。
【0042】
等ポテンシャル線演算部113は、
図2に示す走行路幅演算部10の等ポテンシャル線演算部102と同様に、電荷(ポテンシャル値)が等しい基準となる位置を探索することで、等電荷線(等ポテンシャル線)を得る。たとえば、
図6に示す走行路TAの例では、左側境界線ELに+3V又は補正後のポテンシャル値、右側境界線ERに-3V又は補正後のポテンシャル値の電圧を印加した電界をポテンシャル場として生成したので、その中間値となる0Vの位置、すなわち走行路TAの中心点を自車両Vの走行方向に沿って探索する。
【0043】
すなわち、等ポテンシャル線演算部113は、
図11の左図において、自車両Vの走行前方にある走行路TAについて、走行路TAの中心線の始点としたい位置を仮に設定し、ニュートン法を用いて真の走行路TAの中心点を求める。等ポテンシャル線演算部113は、上述したニュートン法により、走行路TAの中心線の真の始点位置TR0を求めたら、
図11の右図に示すように、自車両Vの走行方向に対して所定距離だけ前方の位置TR1における走行路TAの中心点を、4次のルンゲ・クッタ法(RK4)を用いて求める。そして、等ポテンシャル線演算部113は、以下、この処理を繰り返して、
図11の右図に示すように走行路TAの前方の位置TRnにおける走行路TAの中心点を求める。そして、等ポテンシャル線演算部113は、
図12に示すように、これらの中心点を結合して走行路TAの中心線CLを走行経路TRとし、勾配演算部114へ出力する。勾配演算部114は、上述して演算した走行路幅Wとともに、走行経路TRの情報を保有し、走行経路追従制御部12へ出力する。
【0044】
なお、等ポテンシャル線演算部113は、境界条件補正部111にて左側境界線EL及び/又は右側境界線ERのポテンシャル値が補正された区間についても、走行路TAの前方の位置TRnにおける走行路TAの中心点を求める。これは、
図8及び
図9に示すように、補正後の左側境界線EL及び/又は右側境界線ERのポテンシャル値を用いて得られるラプラス方程式の解は、補正後の走行路の中心線CLaに対応するからである。
【0045】
走行経路追従制御部12は、走行経路演算部11から取得した自車両Vの走行経路TRを目標経路にして、自車両Vの操舵制御を実行するステアリングアクチュエータを含む操舵装置、自車両Vの加速又は減速制御を実行するアクセリングアクチュエータ(又は燃料噴射若しくは駆動源モータの電流)を含む加減速駆動装置、及び自車両Vのブレーキ制御を実行するブレーキングアクチュエータを含む制動装置を制御する。
【0046】
次に、
図4のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTCの制御手順を説明する。
図4は、
図1の車両の走行制御装置VTCで実行される処理手順を示すフローチャートである。上述した本実施形態に係る車両の走行制御装置VTCの構成は、
図5,
図6,
図11及び
図12に示すように一般化された道路に基づいて説明したが、以下の制御手順においては、本実施形態の作用効果の理解を容易にするために、自車両Vが、
図13に示す単純な道路Rを走行するシーンについて説明する。
図13に示す道路Rは、日本や英国のような左側通行の法規の国において、左側の一車線を示している。またこの道路Rは、一般的な道路幅である3.5mよりも広い、たとえば5~6m程度の幅広の道路Rであって、路側駐車が認められているものとする。
【0047】
まず
図4のステップS1において、走行路境界取得部1により取得された自車両Vの現在位置情報と道路境界情報が定義された地図情報とから、自車両Vが走行可能な道路領域の水平面内における第1走行路境界情報を検出する。また、これと同時に、ステップS2において、走行路境界取得部2~5により取得された自車両Vの周囲の物体及び道路状況を周囲情報として取得し、当該周囲情報から、自車両Vが走行可能な道路領域の水平面内における第2走行路境界情報を検出する。第1走行路境界情報により、自車両Vの近傍の障害物以外の道路形状を認識することができ、第2走行路境界情報により、自車両Vの周囲の遠近両方の障害物の有無及び種類を認識することができる。
【0048】
ステップS3において、走行路境界統合部6は、走行路境界取得部1~5により取得された第1走行路境界情報及び第2走行路境界情報を統合して統合走行路境界情報を生成する。すなわち、
図13に示すシーンに対し、走行路境界統合部6は、走行路境界取得部1により取得された自車両Vの現在位置情報及びその周辺の三次元高精度地図情報から認識される道路Rの領域から、走行路境界取得部2~5により取得された障害物V1,V2,V3の位置情報から認識される障害物V1,V2,V3の存在領域を減算し、自車両Vが走行可能な走行路TAを演算する。
【0049】
さらに、ステップS4において、走行路境界統合部6は、統合走行路境界情報を、自車両Vが走行可能な道路領域である走行路の、左側境界線ELに関する左側走行路境界情報と、右側境界線ERに関する右側走行路境界情報とに分離する。
図13に示すシーンについて言えば、道路Rの左側部に3台の静止障害物(駐車車両)V1,V2,V3が存在することが走行路境界取得部2~5により取得されるので、左側境界線ELは点線で示す線となる一方、道路Rの右側部には障害物は存在しないので、右側境界線ERは道路右端RRと同じ線となる。分離された左側境界線ELに関する左側走行路境界情報と、右側境界線ERに関する右側走行路境界情報とを
図14の左図に示す。
【0050】
背景技術の欄で述べたとおり、
図14の左図に示す左側境界線EL、右側境界線ER及びこれらにより画定される走行路TAから、サポートベクターマシンにより、設定された曲率パラメータに基づいて車両の走行経路を生成すると、
図14の右図に示すように、障害物である駐車車両が存在しない区間が長い場合には、走行経路TRがこの部分で波打った経路となり、乗員に違和感を与えてしまう。特に、
図13に示すような5~6m程度の幅広の道路Rであって、路側駐車が認められている道路Rにおいては、走行路TAの中心に沿って走行するより、むしろ道路右端RRを基準にして走行する方が、路側駐車の有無に拘らず、滑らかな走行経路が生成できる。
【0051】
そこで、本実施形態の車両の走行制御装置VTCは、ステップS5~S13において、
図14の左図に示す現在の走行路TAについて、左側の路側に駐車車両V1,V2,V3が存在するか否かに拘らず、右側境界線ERから左へX2(m)オフセットした位置を自車両Vの走行経路TRになるように、ラプラス方程式の解を用いて演算する。
【0052】
すなわち、ステップS5において、走行路幅演算部10のポテンシャル値演算部101は、
図15の左図に示す、ステップS4にて求められた左側境界線EL、右側境界線ER及びこれらにより画定される走行路TAについて、代用電荷法を用いて、左側境界線ELが第1ポテンシャル値(例えば+3V)、右側境界線ERが第2ポテンシャル値(例えば-3V)になるポテンシャル場を走行路TAの二次元空間(x-y平面)内に生成する。続くステップS6において、等ポテンシャル線演算部102は、電荷(ポテンシャル値)が等しい基準となる位置を探索することで、等電荷線(等ポテンシャル線)を得る。そして、ステップS7において、勾配演算部103は、ポテンシャル場の解から勾配kを求めたのち、
図7に示す走行路幅W=2P/kから、走行路幅Wを演算し、境界条件設定部9へ出力する。なお、この走行路幅Wは、
図15の右図に示すように、自車両Vの前方の走行路TAについて所定距離間隔で演算する。また勾配演算部103は、演算した走行路幅Wとともに、走行路TAの中心線CLの情報を保有し、境界条件設定部9へ出力する。
【0053】
ステップS8において、道路環境認識部7、横方向位置指令部8、及び境界条件設定部9は、横方向位置を比較する。すなわち、横方向位置指令部8は、道路環境認識部7から取得した道路環境と国情報から、
図10に示すように、自車両Vの走行中の道路Rが、駐車車両が多い車線であって左側走行の国であることを検出するので、横方向位置の指令内容として、「走行路右端からX2(たとえば1.5m)」の位置を走行経路TRの中心線にする指令を抽出する。そして、ステップS9において、境界条件設定部9は、
図9に示すように、走行路幅演算部10から取得された走行路幅Wの走行路TAの中心線CLの位置が、横方向位置指令部8で抽出された「走行路右端からX2(たとえば1.5m)」の位置に比較して差があるか否かを判断する。なお、この判断に当たっては、必ずしも差が0である必要はなく、乗員に違和感を与えない程度の差の存在を許容してもよい。また、この差の有無の判断は、
図15の右図に示す走行路幅Wが取得された所定距離間隔ごとに実行する。
【0054】
ステップS9において、差があると判断された場合にはステップS10へ進み、差がないと判断された場合はステップS11へ進む。差があると判断されたステップS10においては、
図9に示すように、走行路幅演算部10から取得された走行路幅Wの走行路TAの中心線CLの位置が、横方向位置指令部8で抽出された「走行路右端からX2(たとえば1.5m)」の位置に比較して差があるので、境界条件設定部9は、
図9に点線で示すように、ポテンシャル値Pが0となる位置が、走行路TAの右側境界線から左へX2オフセットした位置CLaとなるように、境界条件である左側境界線ELのポテンシャル値P
1Lと、右側境界線ERのポテンシャル値-P
1Rを演算する。具体的には、実線で示す走行路幅演算部10の勾配演算部103から勾配kを取得し、P
1L=+P-(2P
2/kX2),P
1R=-Pの関係式を用いて、P
1L及びP
1Rを演算する。これらのポテンシャル値P
1L及びP
1Rは、境界条件として、走行経路演算部11の境界条件補正部111に出力される。境界条件補正部111は、境界条件設定部9から取得した左側境界情報に係る左側境界線ELのポテンシャル値と、右側境界情報に係る右側境界線ERのポテンシャル値とを補正する。
図16の左図に、自車両Vの前方の走行路TAにおいてポテンシャル値が補正された範囲を示す。本例の場合、
図9に示すように、当初のポテンシャル値+Pが、これより大きいポテンシャル値+P
1Lに補正されている。
【0055】
ステップS11において、走行経路演算部11は、
図16に示す補正後のポテンシャル値(補正されていない区間については当初のポテンシャル値)を左側境界線ELと右側境界線ERとに設定し、代用電荷法を用いて、ポテンシャル場を走行路TAの二次元空間(x-y平面)内に生成する。続くステップS12において、等ポテンシャル線演算部113は、電荷(ポテンシャル値)が等しい基準となる位置(本例ではポテンシャル値が0Vとなる位置)を、上述したニュートン法及び4次のルンゲ・クッタ法を用いて探索することで、等電荷線(等ポテンシャル線)を得る。この等ポテンシャル線が、
図16の右図に示す自車両Vの走行経路TAとなるので、ステップS13においてこれを走行経路TAとして走行経路追従制御部12に出力する。ステップS12において、走行経路追従制御部12は、取得した走行経路TAの位置情報に沿って自車両の操舵装置、加減速駆動装置及び制動装置を自動制御することで、自動走行制御を実行する。
【0056】
上述した実施形態では、左側境界線ELのポテンシャル値を+P(たとえば+3Vの電圧),右側境界線ERのポテンシャル値を-P(たとえば-3Vの電圧)に設定して代用電荷法により走行路TAのポテンシャル値に関するラプラス方程式の解を求め、ポテンシャル値が0となる位置を走行経路TRとしたが、これら+P,-P,0は単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明に係る車両の走行制御方法及び制御装置においては、少なくとも左側境界線ELのポテンシャル値と右側境界線ERのポテンシャル値とを異なる値に設定してポテンシャル場を生成し、ラプラス方程式の解であるポテンシャル値を求めることにある。したがって、たとえば左側境界線ELのポテンシャル値を+2P(たとえば+6Vの電圧),右側境界線ERのポテンシャル値を-P(たとえば-3Vの電圧)に設定して代用電荷法により走行路TAのポテンシャル値に関するラプラス方程式の解を求め、ポテンシャル値が+3となる位置を走行経路TRとしても、同様の結果が得られる。また、ポテンシャル場の解法は、電界場に対する代用電荷法にのみ限定される趣旨ではなく、上述したとおり熱源に接触する固体内の温度分布に関する熱伝導の拡散方程式や、重力場における重力ポテンシャルを解く方程式であってもよい。
【0057】
以上のとおり、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、予め定められた走行経路の横方向位置と、演算された走行路幅から定められる走行経路の横方向位置と、を比較してその差を演算し、演算された差の絶対値が所定値以下となるように前記第1ポテンシャル値及び/又は前記第2ポテンシャル値を補正し、補正後のポテンシャル値によるポテンシャル場の等ポテンシャル線にしたがって自車両が走行する走行経路を生成するので、障害物の有無に拘らず、予め定められた走行経路の横方向位置に沿った走行経路を低負荷演算により生成することができる。これにより、乗員の違和感を払拭して円滑な自動走行制御を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、左側走行路境界情報と右側走行路境界情報を取得するにあたり、自車両の現在位置情報と道路境界情報が定義された地図情報とから、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第1走行路境界情報を検出し、自車両の周囲の物体及び道路状況を周囲情報として取得し、当該周囲情報から、自車両が走行可能な道路領域の水平面内における第2走行路境界情報を検出し、前記第1走行路境界情報と前記第2走行路境界情報とを統合して統合走行路境界情報を生成し、前記統合走行路境界情報を、左側走行路境界情報と右側走行路境界情報とに分離する。したがって、第1走行路境界情報により、自車両Vの近傍の障害物以外の道路形状を認識することができ、第2走行路境界情報により、自車両Vの周囲の遠近両方の障害物の有無及び種類を認識することができる。その結果、静的な情報と動的な情報の両方を高い精度で含む左側走行路境界情報と右側走行路境界情報を取得することができる。
【0059】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、予め定められた走行経路の横方向位置は、前記走行路の横方向の中心位置、前記走行路の右端から左方向に第1所定距離の位置、又は前記走行路の左端から右方向に第2所定距離の位置のいずれかである。したがって、走行路の横方向の中心位置である場合は、乗員の安心感がより高くなる走行経路を生成することができる。一方、走行路の右端から左方向に第1所定距離の位置又は走行路の左端から右方向に第2所定距離の位置である場合は、道路環境に応じた走行経路を生成することができる。
【0060】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、予め、自車両が走行する道路環境情報と関連付けた走行経路の横方向位置を記憶し、自車両が走行する道路環境情報を取得し、記憶した横方向位置から、当該道路環境情報に関連付けられた走行経路の横方向位置を抽出する。したがって、演算負荷を増加させることなく、道路環境に応じた走行経路を生成することができる。
【0061】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報の走行方向の周波数をそれぞれ演算し、前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報のうち周波数が小さい方の走行路境界情報を基準にして、前記走行経路の横方向位置を抽出する。したがって、より一層乗員の違和感を払拭して円滑な自動走行制御を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、ポテンシャル場のポテンシャル値は、ラプラス方程式の近似解を用いるので、波打った走行経路の生成が抑制され、より一層乗員の違和感を払拭して円滑な自動走行制御を実現することができる。
【0063】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、ポテンシャル場のポテンシャル値は、前記左側走行路境界情報及び前記右側走行路境界情報を、それぞれ折線情報に変換し、前記折線情報のそれぞれの線分の位置、方向及び長さにより規定される調和関数を基底関数とし、これらの線形結合の近似解を用いる。したがって、低演算負荷で近似解を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、ポテンシャル場のポテンシャル値は、対象とされる水平面を複素平面として走行路境界情報を複素数情報に変換し、基底関数を複素正則関数とし、これらの線形結合の近似解としての複素ポテンシャルを用いる。したがって、ポテンシャル値の勾配を低演算負荷で求めることができる。
【0065】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、zを複素数変数としたときに、前記基底関数を、f(z)=ln(z1-z)+ln{(z1-z)/(z0-z)}(z0-z)/(z1-z0)とする。したがって、実部をとるだけで、連続的なポテンシャル値が得られるため、計算が高速化することができ、かつ左右の走行路境界線が並行な場合には、計算誤差を0とすることができる。
【0066】
また、本実施形態の車両の走行制御装置VTC及び車両の走行制御方法によれば、折線情報のそれぞれの線分の中点をディリクレ境界条件の適用場所として選点し、代用電荷法を適用して前記線形結合の係数を得るので、低演算負荷かつ誤差が小さい演算結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
VTC…車両の走行制御装置
1…走行路境界取得部(高精度地図情報)
2…走行路境界取得部(LRF情報)
3…走行路境界取得部(レーダ情報)
4…走行路境界取得部(カメラ情報)
5…走行路境界取得部(AVM情報)
6…走行路境界統合部
7…道路環境認識部
8…横方向位置指令部
9…境界条件設定部
10…走行路幅演算部
101…ポテンシャル値演算部
102…等ポテンシャル線演算部
103…勾配演算部
11…走行経路演算部
111…境界条件補正部
112…ポテンシャル値演算部
113…等ポテンシャル線演算部
114…勾配演算部
12…走行経路追従制御部
V…自車両
R…道路
TA…走行路
TR…走行経路
EL…左側境界線
ER…右側境界線
P…ポテンシャル値
PF…ポテンシャル場
W…走行路幅