(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】カードリーダ及びその異物検出方法
(51)【国際特許分類】
G06K 13/06 20060101AFI20241025BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20241025BHJP
G06K 13/067 20060101ALI20241025BHJP
G06K 13/07 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G06K13/06 B
G06K7/08 040
G06K13/06 C
G06K13/067 Z
G06K13/07 B
(21)【出願番号】P 2021012962
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 宗政
(72)【発明者】
【氏名】北澤 康博
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-057267(JP,A)
【文献】特開2004-280308(JP,A)
【文献】特開2011-100404(JP,A)
【文献】特開2019-219824(JP,A)
【文献】特開2019-219825(JP,A)
【文献】特開2016-110415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
G06K 7/08
G06K 13/067
G06K 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに対して処理を行うカードリーダであって、
本体部と、
前記本体部に開口して前記カードが挿入される挿入口と、
前記本体部の内部に設けられて挿入された前記カードが搬送される搬送路と、
前記搬送路において前記カードを搬送する駆動機構と、
前記カードの前記挿入口への挿入及び前記搬送路における前記カードの搬送の状態を検知する複数のセンサと、
前記複数のセンサによる前記カードの検出結果における状態遷移を監視し、所定の状態遷移とは異なる形態で状態遷移が発生したことを検知したときに、前記カードリーダに異物が挿入された
と判断する制御部と、
前記挿入口に近接して設けられて前記本体部の内部へのアクセスを制限するシャッター部材と、
前記シャッター部材が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検知する開閉センサと、
を有
し、
前記制御部は、前記開閉センサによる検出結果を含む前記状態遷移に基づいて前記異物の挿入を判断する
、カードリーダ。
【請求項2】
前記搬送路に沿って磁気ヘッドが設けられ、
前記複数のセンサに、前記磁気ヘッドの位置に対応して設けられたセンサと、前記磁気ヘッドと前記シャッター部材との間の位置に設けられた少なくとも1つのセンサと、前記磁気ヘッドを挟んで前記挿入口の反対側に設けられた少なくとも1つのセンサとが含まれる、請求項
1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記シャッター部材と前記磁気ヘッドとの間の前記搬送路の長さと、前記磁気ヘッドを挟んで前記挿入口の反対側となる部分の前記搬送路の長さは、いずれも、搬送方向に沿った前記カードの長さよりも長い、請求項
2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
本体部と、前記本体部に開口し
てカードが挿入される挿入口と、前記本体部の内部に設けられて挿入された前記カードが搬送される搬送路と、前記カードの前記挿入口への挿入及び前記搬送路における前記カードの搬送の状態を検知する複数のセンサと、
前記挿入口に近接して設けられて前記本体部の内部へのアクセスを制限するシャッター部材と、前記シャッター部材が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検知する開閉センサと、を有
し、前記開閉センサが前記挿入口と前記シャッター部材との間に配置されているカードリーダにおける異物検出方法であって、
前記複数のセンサにおいて前記カードの検出を行い、
前記開閉センサによる検出結果を含めて前記複数のセンサによる検出結果における状態遷移が所定の状態遷移とは異なる形態であることを検知したときに、前記カードリーダに異物が挿入された
と判断する、異物検出方法。
【請求項5】
前記カードリーダにおいて前記搬送路に沿って磁気ヘッドが設けられ、
前記複数のセンサに、前記磁気ヘッドの位置に対応して設けられたセンサと、前記磁気ヘッドと前記シャッター部材との間の位置に設けられた少なくとも1つのセンサと、前記磁気ヘッドを挟んで前記挿入口の反対側に設けられた少なくとも1つのセンサとが含まれる、請求項
4に記載の異物検出方法。
【請求項6】
前記カードリーダにおいて、前記シャッター部材と前記磁気ヘッドとの間の前記搬送路の長さと、前記磁気ヘッドを挟んで前記挿入口の反対側となる部分の前記搬送路の長さは、いずれも、搬送方向に沿った前記カードの長さよりも長い、請求項
5に記載の異物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードリーダとその異物検出方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードなどのカードに対してデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行うカードリーダは、例えばATM(現金自動預け払い機:Automated Teller Machine)などの上位装置に搭載されて使用される。カードリーダは、一般に、利用者によってカードが挿し込まれる挿入口と、挿入口に挿し込まれたカードを引き込んでカードに対するデータの読み出しや書き込みを行う本体部とから構成される。本体部には、カードが搬送される経路である搬送路が形成されるとともに、カードを搬送するためのローラやローラを駆動するモータ、搬送路におけるカード位置を検出するためのいくつかのセンサ、カードに対してデータの読み出しや書き込みを行うヘッドなどが設けられる。さらに本体部において挿入口に近接する位置には、カードが挿入されたことを検出するカード挿入検知スイッチと、開閉可能なシャッター部材とが設けられる。
【0003】
近年、磁気カードに書き込まれた情報を不正に取得するすなわちスキミングを行うためにカードリーダ内に異物(すなわちスキミング部材)を設置する事例が増えて大きな社会問題となってきており、カードリーダ内に配置された異物を検出することに対する強い要望が生じている。カードリーダ内に配置された異物を検出する方法として特許文献1は、磁気カードを対象とするカードリーダにおいて、カードからの磁気を検出するプリヘッドを挿入口の近傍に設け、搬送路に設けられてカード先端を検出するセンサによってカードの先端を検出したときにプリヘッドにおける磁気の監視を開始し、その後、プリヘッドにおいて磁気を検出しなくなったときにその磁気を検出していない期間でのカードの移動距離が所定値以上となるときに、実際にはカードではなく異物が挿入されたと判断する方法を開示している。この方法は、スキミング部材などの異物は、磁気ストライプを有しないか、ダミーの磁気ストライプを備えていてもその長さは正規の磁気カードでの磁気ストライプよりも短いので、プリヘッドにおいて磁気を検出していない期間における異物の移動距離が正規の磁気カードにおける移動距離よりも長くなることを利用している。
【0004】
特許文献2は、挿入口にカードが挿入されたことをカード挿入検知機構によって検知したのちに搬送路に設けられたセンサによってカードの先端を検知し、その後、カード挿入検知機構がカードを検出しなくなったタイミングで搬送路のセンサもカードを検知しないときにシャッター部材を閉じる制御を行ない、この制御を実行したにも関わらずシャッター部材が閉鎖位置に移動しなかった場合に、異物が挿入されたと判断する方法を開示している。この方法は、異物が正規のカードとは異なる特定の形状を有することを利用して異物がカードリーダ内に挿入されたかどうかを判断する方法である。
【0005】
特許文献3は、挿入口と本体部との間に設けられたシャッター部材と、本体部の内部に設けられてスキミング部材の有無を検出する静電容量センサと、を有し、挿入口にカードが挿入されたことを検出したときシャッター部材を開いてカードを本体部の内部に引き込み、カードが本体部の内部に引き込まれたらシャッター部材を閉じ、その後、本体部の内部でカードに対するデータの読み書きを行うカードリーダを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-219824号公報
【文献】特開2019-219825号公報
【文献】特開2019-219826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載された方法では、カードリーダがその内部にカードを取り込もうと動作している状態にあるとき以外のタイミングで、例えば、カード取り込み時に無理やりジャムなどのエラーを発生させて取り込み処理を中断させてシャッター部材が開放したままとなっているタイミングで、異物がカードリーダ内に押し込まれて配置されたときに、その異物を検出することができない。待機時のシャッター部材が閉じている状態で無理やり異物がカードリーダ内に押し込まれたときも、その異物を検出することができない。また、特許文献1や特許文献2に記載された方法は、異物が特定の形状を有することを前提としており、想定外の形状の異物がカードリーダ内に配置されたときにその異物を検出することができない。特許文献3に記載された方法は、特許文献1や特許文献2に記載された方法では検出できない形状の異物を検出することができるが、カードリーダに静電容量センサを設けることが必要となり、コスト上昇などの要因となる。また、カードリーダに対して静電容量センサを後付けで設けることは難しいので、静電容量センサを備えない既存のカードリーダでは、特許文献3の方法による異物の検出を行うことは難しい。
【0008】
本発明の目的は、特定の形状の異物に限定されることなく、かつ、静電容量センサなどの特殊なセンサを必要とせずに異物の配置を検出できるカードリーダと、その異物検出方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカードリーダは、カードに対して処理を行うカードリーダであって、本体部と、本体部に開口してカードが挿入される挿入口と、本体部の内部に設けられて挿入されたカードが搬送される搬送路と、搬送路においてカードを搬送する駆動機構と、カードの挿入口への挿入及び搬送路におけるカードの搬送の状態を検知する複数のセンサと、複数のセンサによるカードの検出結果における状態遷移を監視し、所定の状態遷移とは異なる形態の状態遷移が発生したことを検知したときに、カードリーダに異物が挿入されたと判断する制御部と、挿入口に近接して設けられて本体部の内部へのアクセスを制限するシャッター部材と、シャッター部材が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検知する開閉センサと、を有し、制御部は、開閉センサによる検出結果を含む状態遷移に基づいて異物の挿入を判断する。
【0010】
カードの挿入口への挿入及び搬送路におけるカードの搬送の状態を検知する複数のセンサが設けられているカードリーダにおいて、複数のセンサによるカードの検出結果を組み合わせたものをパターンと呼ぶことにする。スキミングを目的とした異物の場合、センサによって検出されない状態でカードリーダ内に残留し続ける必要があるから、センサに対応する位置には切れ込みや開口が形成されているなど、正規のカードとは形状が一般に異なっている。カードの挿入や搬送が進行するにつれてパターンは変化するが、正規のカードと異物とは形状が異なることや、異物をカードリーダ内に押し込むために用いられる道具がセンサによって検出されることがあることから、あるパターンからどのパターンに遷移するかという状態遷移は、正規のカードが挿入された場合と異物をカードリーダ内に配置しようとした場合とでは異なると考えられる。そこで本発明では、カードの検出結果における状態遷移を監視し、所定の状態遷移とは異なる形態の状態遷移が発生したことを検知したときに、カードリーダに異物が挿入されたと判断する。これにより本発明では、特定の形状の異物に限定されることなく、また、静電容量センサなどの付加的な部材を用いることなく、カードリーダへの異物の配置を検出することができる。さらに本発明では、シャッター部材を設けるとともに、シャッター部材の開閉状態も含めた状態遷移に基づいて異物の挿入の判断を行うことにより、スキミング部材などの異物がカードリーダ内に配置されることをさらに防止できる。
【0012】
本発明のカードリーダでは、搬送路に沿って磁気ヘッドが設けられている場合に、複数のセンサに、磁気ヘッドの位置に対応して設けられたセンサと、磁気ヘッドとシャッター部材との間の位置に設けられた少なくとも1つのセンサと、磁気ヘッドを挟んで挿入口の反対側に設けられた少なくとも1つのセンサとが含まれるようにすることが好ましい。このようなセンサは、磁気ヘッドを備えるカードリーダすなわち磁気カードリーダにおいて一般的に設けられているものであるから、磁気カードリーダがファームウェアによって制御されるときにそのファームウェアを変更・更新することによって、既存の磁気カードリーダを本発明に基づくカードリーダとして使用することが可能になる。
【0013】
本発明のカードリーダでは、シャッター部材と磁気ヘッドとの間の搬送路の長さと、磁気ヘッドを挟んで挿入口の反対側となる部分の搬送路の長さは、いずれも、搬送方向に沿ったカードの長さよりも長くすることができる。この形式のカードリーダは、シャッター部材を閉じた状態で磁気ヘッドに対してカードを往復移動させることによりデータの読み書きを行うものであり、このような形式のカードリーダにおいても本発明を適用することにより、スキミング部材などの異物の検出をより確実に行うことができるようになる。
【0014】
本発明の異物検出方法は、本体部と、本体部に開口してカードが挿入される挿入口と、本体部の内部に設けられて挿入されたカードが搬送される搬送路と、カードの挿入口への挿入及び搬送路におけるカードの搬送の状態を検知する複数のセンサと、挿入口に近接して設けられて本体部の内部へのアクセスを制限するシャッター部材と、シャッター部材が開放状態にあるか閉鎖状態にあるかを検知する開閉センサと、を有し、開閉センサが挿入口とシャッター部材との間に配置されているカードリーダにおける異物検出方法であって、複数のセンサにおいてカードの検出を行い、開閉センサによる検出結果を含めて複数のセンサによる検出結果における状態遷移が所定の状態遷移とは異なる形態であることを検知したときに、カードリーダに異物が挿入されたと判断する。
【0015】
上述したようにカードリーダにおいて複数のセンサによる検出結果における状態遷移は、正規のカードが挿入された場合と異物をカードリーダ内に配置しようとした場合とでは異なると考えられる。そこで本発明の異物検出方法では、開閉センサによる検出結果を含めて複数のセンサによる検出結果における状態遷移を監視し、所定の状態遷移とは異なる形態の状態遷移が発生したことを検知したときに、カードリーダに異物が挿入されたと判断する。これにより、特定の形状の異物に限定されることなく、また、静電容量センサなどの付加的な部材を用いることなく、カードリーダへの異物の配置を検出することができる。また、一般にカードリーダにはカードの挿入口への挿入及び搬送路におけるカードの搬送の状態を検知する複数のセンサが設けられており、シャッター部材や開閉センサを備えるカードリーダも一般的であるから、本発明の異物検出方法によれば、既存のカードリーダにおける異物の検出が可能になり、特にシャッター部材の開閉状態も含めた状態遷移に基づいて異物の挿入の判断を行うことにより、スキミング部材などの異物がカードリーダ内に配置されることをより確実に検出できるようになる。
【0017】
本発明の異物検出方法では、搬送路に沿って磁気ヘッドが設けられたカードリーダを用いるときに、複数のセンサに、磁気ヘッドの位置に対応して設けられたセンサと、磁気ヘッドとシャッター部材との間の位置に設けられた少なくとも1つのセンサと、磁気ヘッドを挟んで挿入口の反対側に設けられた少なくとも1つのセンサとが含まれるようにすることができる。このようなセンサは、磁気ヘッドを備えるカードリーダすなわち磁気カートリーダにおいて一般的に設けられているものであるから、磁気カードリーダがファームウェアによって制御されるときにそのファームウェアを変更・更新することによって、既存の磁気カードリーダを本発明に基づくカードリーダとして使用することが可能になる。
【0018】
本発明の異物検出方法では、カードリーダが磁気カードリーダである場合、カードリーダにおいて、シャッター部材と磁気ヘッドとの間の搬送路の長さと、磁気ヘッドを挟んで挿入口の反対側となる部分の搬送路の長さは、いずれも、搬送方向に沿ったカードの長さよりも長くすることができる。この形式のカードリーダは、シャッター部材を閉じた状態で、磁気ヘッドに対してカードを往復移動させることによりデータの読み書きを行うものであり、このような形式のカードリーダにおいても本発明を適用することによって、スキミング部材などの異物の検出をより確実に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カードリーダにおいて、特定の形状の異物に限定されることなく、かつ、かつ静電容量センサなどの特殊なセンサを必要とせずに異物の配置を検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の一形態のカードリーダを説明する図であって、(a)はカードリーダの構成を示す模式断面図であり、(b)は、正規のカードに対する各センサの出力状態を説明する図である。
【
図2】
図1に示すカードリーダのブロック図である。
【
図3】正規のカードを取り込み、あるいは排出するときの状態遷移を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の実施の一形態のカードリーダの構成を示している。
図1(a)に示すカードリーダ1は、磁気カードなどであるカード2に対して、データの読み出し及び書き込みを含む各種の処理を実行するものである。ここでカード2が少なくとも磁気ストライプを備えるカードであるものとする。
【0022】
カードリーダ1は、利用者によってカード2が挿し込まれる挿入口3と、挿入口3が設けられて挿入口3に挿し込まれたカード2を引き込んでそのカード2に対する各種の処理を実行する本体部4と、を備えている。本体部4において挿入口3の近傍には、挿入口3にカード2が挿し込まれたかどうかを検出するカード挿入検知センサSWが取り付けられている。カード挿入検知センサSWは、例えば機械的にカード2を検出するスイッチで構成されていてもよいし、例えば発光部と受光部との間の光路がカード2によって遮断されることによってカード2が挿入されたことを検知するセンサであってもよし、あるいは、プリヘッドを備えてカード2の磁気ストライプを検出することによってカード2を検知するものであってもよい。カード2が挿入口3に挿入されたことを確実に検知することができるものであれば、任意の形態のカード挿入検知センサSWを用いることができる。本体部4において挿入口3の近傍には、本体部4の内部への不正なアクセスなどを防止するための開閉可能なシャッター部材6が設けられている。シャッター部材6は、カード挿入検知機構SWよりは本体部4の内部側に設けられている。シャッター部材6には、シャッター部材6が開放状態になっているか閉鎖状態になっているかを検出するシャッター開閉センサSHTが接続している。この構成では、カード挿入検知センサSWは、シャッター部材6よりも挿入口3に近い側、すなわちカードリーダの使用状態においてカード2を挿入しようとする利用者から見て手前側に設けられている。
【0023】
本体部4の内部には、カード2に対する処理を実行するときにカード2が搬送されることなる搬送路41と、カード2を搬送するために搬送路41に沿って設けられた搬送ローラ42と、搬送路41の長さ方向のほぼ中央に設けられた磁気ヘッド43と、搬送路41に沿って設けられ、カード2などの物体を検出する複数のカードセンサと、を備えている。図示した例では3対の搬送ローラ42と4個のカードセンサPD1~PD3,PDiとが設けられている。搬送ローラ42は、搬送モータ52(
図2参照)により駆動されるものであって、搬送ローラ42と搬送モータ52とによって、搬送路41においてカード2を搬送する駆動機構が形成されている。
【0024】
4個のカードセンサPD1~PD3,PDiは、搬送路41におけるカード2の搬送の状態を検知するものであって、より具体的には、搬送路41におけるそれらのカードセンサPD1~PD3,PDiの設置位置にカード2が存在していることを検出する。4個のカードセンサPD1~PD3,PDiのうちカードセンサPD1は挿入口3に近い位置に設けられ、カードセンサPD2は磁気ヘッド43の設置位置に対応して設けられ、カードセンサPD3は磁気ヘッド43の設置位置を挟んで挿入口3とは反対側に設けられている。カードセンサPDiは、カードセンサPD2よりもやや挿入口3の側となる位置に設けられている。カード2の搬送方向に沿ったカード2の寸法をカード2の長さLとすると、図示した例では、カード挿入検出センサSWとカードセンサPD1との間隔は長さLよりも短く、シャッター部材6による閉鎖位置とカードセンサPDiまでの距離は長さLよりも長く、カードセンサPD1とカードセンサPD2の間の距離は長さLよりも短く、カードセンサPD1とカードセンサPD3の間の距離は長さLよりも長く、カードセンサPDiとカードセンサPD3の間の距離は長さLよりも短くなっている。なおこの説明から明らかなように、シャッター部材6による閉鎖位置と磁気ヘッド43との間の搬送路41の長さは長さLよりも長いが、磁気ヘッド43を挟んで挿入口3の反対側となる部分の搬送路41の長さも長さLもよりも長く、シャッター部材6が閉鎖位置にある状態で、磁気ヘッド43を挟んでその両側の間でデータの読み書きのためのカード2を往復搬送できるようになっている。カードセンサPD1~PD3,PDiとしては、例えば、物体によって光路が遮断されることによりその物体を検知する光学式のものなどを使用することができ、場合によっては、静電容量変化を検出して物体を検知する静電容量型のものを使用してもよい。
【0025】
図2は、本実施形態のカードリーダ1の電気的な構成を示すブロック図である。電気的構成としてカードリーダ1は、カードリーダ1の動作の制御を行うとともに上位装置との間でデータの入出力を行い、異物を検出したときに上位装置に警報を出力する制御部50と、磁気ヘッド43と制御部50との間に設けられた読み出し・書き込み回路51と、搬送ローラ42を駆動する搬送モータ52と、シャッター部材6を開閉駆動するソレノイド53と、を備えている。搬送モータ52及びソレノイド53は、制御部50によって制御される。カード挿入検知センサSW、シャッター開閉センサSHT及びカードセンサPD1~PD3,PDiの検出出力は制御部50に入力する。制御部50は、例えば、マイクロプロセッサによって構成される。
【0026】
カードリーダ1によりカード2に対してなんらかの処理を行うときは、カード2は本体部4の中に取り込まれ、処理の内容に応じ、本体部4の内部で搬送路41に沿って搬送される。挿入口3からのカード2の取り込み、搬送路41に沿ったカード2の搬送、そして挿入口3からのカード2の排出は、各センサPD1~PD3,PDi,SHT,SWの検出結果に基いて制御部50が搬送モータ52を駆動することによって実行され、制御される。本実施形態のカードリーダ1では、シャッター部材6が閉じた状態において搬送路41に沿って磁気ヘッド43を挟む一方の側と他方の側との間で両方向でカード2が移動できるだけの空間が用意されている。そして、磁気ヘッド43によるカード2に対するデータの読み書きは、磁気ヘッド43を挟む一方の側と他方の側との間でカード2を搬送しながら行われる。
【0027】
カードリーダ1において各センサPD1~PD3,PDi,SHT,SWは、カード2の搬送方向に沿って配置している。その結果、挿入口3からのカード2の取り込みを行い、続いて搬送路41に沿ってカード2を搬送した場合、各センサPD1~PD3,PDi,SHT,SWにおける検出結果はカード2の移動に伴って経時的に変化する。
図1(b)は、カードリーダ1におけるカード2の位置によって、各センサPD1~PD3,PDi,SHT,SWの検出結果がどのように変化するかを示している。カードセンサPD1~PD3、PDi及びカード挿入検知センサSWに関しては、検出結果における「ON」はカード2を検出していることを示し、「OFF」はカード2を検出していないことを示している。シャッター開閉センサSHTに関しては、「ON」はシャッター部材6が開放状態にあることを示し、「OFF」はシャッター部材6が閉鎖状態にあることを示している。
【0028】
各センサからの検出結果を組み合わせたものを「パターン」と呼ぶことにすると、
図1(b)に示すように、カードリーダ1におけるカード2の現在位置に応じていくつかのパターンが生じる。例えば、カード2がカードリーダ1に挿入されていない状態では、スすべてのセンサが「OFF」となる(パターンP1)。利用者がカード2を挿入口3に挿入すれば、カード挿入検知センサSWだけが「ON」となり、他のセンサは「OFF」のままである(パターンP2)。その後、カード2が押し込まれ、シャッター部材6が開くので、シャッター開閉センサSHTも「ON」となる(パターンP3)。搬送ローラ42によるカード2の取り込みが進行すると、カードセンサPD1の「ON」になる(パターンP4)。カード2がさらに図示左方向すなわちカードリーダ1の奥側に向けて搬送されると、カード2を検出しなくなるのでカード挿入検知センサSWが「OFF」となり(パターンP5)、続いてシャッター部材6が閉じてシャッター開閉センサSHTも「OFF」となる(パターンP6)。カード2の先端がカードセンサPDiの位置に達すればカードセンサPDiが「ON」となり(パターンP7)、続いて、カードセンサPD2も「ON」となる(パターンP8)。パターンP8のときよりもさらに奥側に向けてカード2が搬送されると、カードセンサPD1が「OFF」となり(パターンP9)、その後、カードセンサPD3が「ON」となり(パターンP10)、続いてカードセンサPDiが「OFF」となる(パターンP11)。カード2をカードリーダ1の最奥まで搬送した状態では、カードセンサPD3だけが「ON」となる(パターンP12)。カード2を図示右方向に搬送し、最終的に挿入口3から排出するときは、パターンP12からパターンP1へと逆順で各パターンが発生する。
【0029】
本実施形態のカードリーダ1において、正規のカード2が挿入されて搬送されるときに生ずるパターンは、上述したパターンP1~P12の12通りだけである。そして、生じているパターン間の遷移に注目すると、必ず、パターンの番号が1だけ増減するパターン間でしか遷移しない。例えばパターンP2からパターンP5に直接遷移することはなく、パターンP2、パターンP3及びパターンP4を経てパターンP5に遷移する。カード2の搬送方向が逆転するときも、パターンP11からパターンP12となったのちに必ずパターンP11に戻る。パターンP11からパターンP12となったのち、パターンP10に直接遷移することはない。パターンP5に遷移するのは、パターンP4かパターンP6に限られる。
図3は、正規のカード2に対して起こり得るパターン間の状態遷移を示す状態遷移図である。実線の遷移はカード2が
図1における図示左方向に向けて動くときにおこる状態遷移を示し、破線の遷移はカード2が図示右方向に動くときにおこる状態遷移を示している。
【0030】
スキミングなどを行うために不正にカードリーダ1に設置される異物は、異物の設置の発覚を防止するために、カードリーダ1内に設置されている状態で各センサによって検出されないような形状とされる。具体的には、カードリーダ1内に設置されている状態で、各センサに対応する位置が開口や切れ込みとなっているような形状とされる。正規のカード2には一般に開口や切れ込みは存在しないから、正規のカード2と異物とは、形状、特に、開口や切れ込みの有無で異なっている。カード2のカードリーダ1への挿入や搬送路41での搬送が進行するにつれてパターンは変化するが、正規のカード2と異物とは形状が異なることや、異物をカードリーダ1内に押し込むために用いられる道具がセンサによって検出されることがあることから、パターン間の状態遷移の形態が、正規のカード2が挿入された場合と異物をカードリーダ1内に配置しようとした場合とでは異なると考えられる。スキミングなどの目的で異物をカードリーダ1内に配置する場合、各センサの検出結果がいずれも「OFF」である状態、すなわちパターン1となるように設置される。正規のカード2であれば、パターンP1にはパターンP2からしか遷移しないが、カードリーダ1の例えば磁気ヘッド43の位置に異物を配置する場合、配置までの過程で異物における開口や切れ込みの周縁部分が例えばカードセンサPD1,PDiによって検出されることが十分に予想される。カードセンサPD1が「ON」となるのはパターンP4~P6であり、カードセンサPDiが「ON」となるのはパターンP7~P10であるが、パターンP3~P10のいずれかからパターンP1に直接遷移した場合には、そのような遷移は正規のカード2では起こらないものであるから、カードリーダ1内に異物が挿入されたと判断することができる。
【0031】
そこで本実施形態のカードリーダ1では、制御部50は、各センサPD1~PD3,PDi,SHT,SWの出力に基づいて各センサの検出結果の組み合わせであるパターンを判別して、パターン間の状態遷移を常時監視し、正規のカード2で起こり得る状態遷移すなわち所定の状態遷移とは異なる形態の状態遷移が発生したことを検知したときに、カードリーダに異物が挿入された判断する。
図1及び
図2に示したカードリーダ1の場合、所定の状態遷移は
図3に示したものとなる。この異物検出処理は、制御部50を構成するマイクロプロセッサなどにおけるファームウェアによって実行可能である。所定の状態遷移とは異なる形態の状態遷移には、正規のカード2では起こり得ないパターン、すなわちパターンP1~P12以外のパターンが生起したことも含まれる。そして制御部50は、異物が挿入されたと判断したときは、上位装置に対して警報を出力するとともに、異物挿入エラーを制御部50内の不揮発性メモリ(不図示)などに格納し、所定の手順によりこのエラーがクリアされるまですべてのカード取引動作要求に対して異物挿入エラーを返し、カード2の取り込みや搬送などの一切の動作を行わないようにする。これにより制御部50は、スキミング部材などによるスキミングを防止する。
【0032】
以上説明したように本実施形態のカードリーダ1によれば、特定の形状の異物に限定されることなく、また、静電容量センサなどの付加的な部材を用いることなく、カードリーダへの異物の配置を検出することができる。また、センサとして一般的にカードリーダに既に設けられているものを使用することを前提として、ファームウェアによるソフトウェア処理によって異物の検出を行うことができるので、ファームウェア更新により既存のカードリーダを本発明に基づくカードリーダとすることも容易である。
【0033】
図1及び
図2に示すカードリーダ1では、カード2の挿入口3への挿入及び搬送路41におけるカード2の搬送の状態を検知する複数のセンサとしてカード挿入検知センサSW及び4個のカードセンサPD1~PD3,PDiが設けられ、さらに、シャッター開閉センサSHTが設けられている。しかしながら、本発明のカードリーダにおいては、これらのセンサの数を増減することができる。また、搬送路41におけるカードセンサなどのセンサの配置位置も、上述したものに限定されるものではない。正規のカード2と異物とを各センサの検出結果における状態遷移によって区別することができるのであれば、センサの数やセンサの配置は任意である。
【0034】
本発明に基づくカードリーダでは、挿入口3に近接して設けられるシャッター部材6は必ずしも必須のものではない。しかしながら、本体部4の内部へのスキミング部材などの異物の設置を防止するだけでなく、本体部4の内部への雨滴や塵埃の侵入を防ぐためにも、シャッター部材6を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1…カードリーダ;2…カード;3…挿入口;4…本体部;6…シャッター部材、41…搬送路;42…搬送ローラ;43…磁気ヘッド;50…制御部;51…読み出し・書き込み回路;52…搬送モータ;53…ソレノイド;PD1~PD3,PDi…カードセンサ、SHT…シャッター開閉センサ;SW…カード挿入検知センサ。