(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】スリーブ
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20241025BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20241025BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
F16L5/00 Q
E04B1/94 F
F16L5/00 G
F16L5/04
(21)【出願番号】P 2021017344
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062729(JP,A)
【文献】実開昭58-022581(JP,U)
【文献】実開昭60-071781(JP,U)
【文献】米国特許第04221092(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00-59/22
A62C 3/00
E04B 1/00、1/94
H02G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体を貫通するように形成された貫通孔を貫通するように取付けられるとともに、内側に挿通部材を通すための挿通孔を備えたスリーブであって、
貫通孔の一方の開口から当該貫通孔内に挿入される第1スリーブと、貫通孔の他方の開口から当該貫通孔内に挿入される第2スリーブとを備え、
貫通孔の一方の開口から当該貫通孔内に挿入された第1スリーブと貫通孔の他方の開口から当該貫通孔内に挿入された第2スリーブとが結合されてスリーブが構成された状態において、スリーブの挿通孔は、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔に構成され、かつ、スリーブの外周面は、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成され
、
第1スリーブは、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成されたスリーブの外周面を形成する外周面及び内周面を有した外側管状部と、当該外側管状部の内周面の径寸法よりも小さい一定の径寸法を有した外周面及び内周面を有した内側管状部とを備え、
第2スリーブは、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成された挿通孔の周面を形成する内周面及び外周面を有した内側管状部と、当該内側管状部の外周面の径寸法よりも大きい一定の径寸法を有した内周面及び外周面を有した外側管状部とを備え、
第1スリーブの外側管状部の内周面と第2スリーブの外側管状部の外周面とが結合され、かつ、第1スリーブの内側管状部の内周面と第2スリーブの内側管状部の外周面とが結合されたことにより、挿通孔の外周側に、第1スリーブと第2スリーブとで囲まれた空間が構成されたことを特徴とするスリーブ。
【請求項2】
第1スリーブは、後端に、貫通孔の一方の開口の外周側に位置される躯体面に接触する鍔部を備え、
第2スリーブは、後端に、貫通孔の他方の開口の外周側に位置される躯体面に接触する鍔部を備えたことを特徴とする
請求項1に記載のスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体を貫通するように形成された貫通孔を貫通するように取付けられるとともに、内側に挿通部材を通すための挿通孔を備えたスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁、床等の躯体を貫通するように形成された貫通孔を貫通するように取付けられるとともに、内側に、給水管、冷媒管、電線管などの挿通部材を貫通させるための挿通孔を備えたスリーブ管において、耐火性熱膨張材で構成されたスリーブ管が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1では、第1スリーブ管(第1スリーブ)の内周面に形成されたねじ部と第2スリーブ管(第2スリーブ)の外周面に形成されたねじ部とを螺合させることによって、貫通孔内で第1スリーブ管と第2スリーブ管とが結合されて貫通孔に設置されたスリーブ管(スリーブ)が構成される。
特許文献1のスリーブ管では、第1スリーブ管の内周面に形成されたねじ部と第2スリーブ管の外周面に形成されたねじ部とを螺合させて結合するので、厚さの異なる躯体にも対応できるようになる。
しかしながら、特許文献1のスリーブ管は、貫通孔内で第1スリーブ管と第2スリーブ管とが結合された状態において、第1スリーブ管の内周面と第2スリーブ管の内周面との境界部分が段差となる。即ち、第1スリーブ管の内周面の径寸法が第2スリーブ管の内周面の径寸法よりも大きく、第1スリーブ管の内周面と第2スリーブ管の内周面とが貫通孔の中心軸を中心とした同径の内周面とはならないため、スリーブ管の挿通孔に貫通するように通された挿通部材の外周面と第1スリーブ管の内周面との間の間隔と挿通部材の外周面と第2スリーブ管の内周面との間の間隔とが一定にはならない。
また、特許文献1のスリーブ管は、貫通孔内で第1スリーブ管と第2スリーブ管とが結合された状態において、第1スリーブ管の外周面と第2スリーブ管の外周面との境界部分が段差となる。即ち、第1スリーブ管の外周面の径寸法が第2スリーブ管の外周面の径寸法よりも大きく、第1スリーブ管の外周面と第2スリーブ管の外周面とが貫通孔の中心軸を中心とした同径の内周面とはならないため、貫通孔の周面と第1スリーブ管の外周面との間の間隔と貫通孔の周面と第2スリーブ管の外周面との間の間隔とが一定にはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1のスリーブ管は、貫通孔の周面と第1スリーブ管の外周面との間の間隔と貫通孔の周面と第2スリーブ管の外周面との間の間隔とが一定にはならず、また、スリーブ管の挿通孔に貫通するように通された挿通部材の外周面と第1スリーブ管の内周面との間の間隔と挿通部材の外周面と第2スリーブ管の内周面との間の間隔とが一定にはならない構成である。従って、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔を塞ぐために、当該貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間に充填材を充填する処理を確実かつ容易に行うことが難しくなり、施工が煩雑になる。さらに、スリーブ管の内周面と挿通部材との間の間隔を塞ぐために、当該スリーブ管の内周面と挿通部材との間に充填材を充填する処理を確実かつ容易に行うことが難しくなり、施工が煩雑になる。
例えば、特許文献1のスリーブ管を耐火性熱膨張材で形成しない場合には、耐火を目的として、スリーブ管の外周面にロックウールやグラスウール等の耐火材を巻き付けて当該外周面に耐火材を巻き付けたスリーブ管を躯体に形成された貫通孔に設置することが考えられる。この場合、貫通孔の周面と第2スリーブ管の外周面との間の間隔が貫通孔の周面と第1スリーブ管の外周面との間の間隔よりも大きくなってしまうため、それぞれの間隔に合わせて、各スリーブ管の外周面に設ける耐火材の厚さを異なる厚さに設定する作業が必要となり、各スリーブ管の外周面に耐火材を設ける耐火処理作業が煩雑困難となってしまう。さらに、この場合、第2スリーブ管の外周面に形成されたねじ部に、ロックウールやグラスウール等の耐火材を設けてしまうと、ねじ結合ができなくなったり、あるいは、ねじ結合の際に耐火材が損傷してしまう可能性がある。よって、耐火を目的として、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔を塞ぐために耐火材を充填する処理を確実かつ容易に行えなくなり、施工が煩雑になるという問題が生じる。
さらに、特許文献1のスリーブ管を耐火性熱膨張材で形成しない場合には、耐火を目的として、挿通部材の外周面にロックウールやグラスウール等の耐火材を巻き付けて当該外周面に耐火材を巻き付けた挿通部材をスリーブ管の挿通孔に貫通するように設置することが考えられる。この場合、内径寸法の小さい第2スリーブ管の内側に挿通部材を貫通させる必要があるため、外周面に耐火材を巻き付けた挿通部材の外径寸法を第2スリーブ管の内径よりも小さくする必要がある。従って、第2スリーブ管の内径よりも大きい内径を有した第1スリーブ管の内周面と挿通部材の外周面に巻き付けられた耐火材との間の隙間が大きくなってしまう可能性がある。よって、耐火を目的として、スリーブ管の内周面と挿通部材との間の間隔を塞ぐために耐火材を充填する処理を確実かつ容易に行えなくなり、施工が煩雑になるという問題が生じる。
従って、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔が一定にはならず、また、挿通部材の外周面とスリーブ管の内周面との間の間隔が一定にはならない構成である特許文献1のスリーブ管において、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の耐火処理、及び、スリーブ管の内周面と挿通部材との間の耐火処理を、確実かつ容易に行うためには、第1スリーブ管及び第2スリーブ管のうちの1つ以上のスリーブ管を耐火性熱膨張材で形成しなければならない。しかしながら、耐火性熱膨張材により形成されたスリーブ管はコストが高くなってしまうため、施工コストが高騰するという課題があった。
また、特許文献1のスリーブ管の構成では、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔や挿通部材の外周面とスリーブ管の内周面との間の間隔が一定にはならない構成であるため、耐火処理を行わない場合であっても、スリーブ管や挿通部材の取付後の安定性を確保するために、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔を一定にするための処理や挿通部材の外周面とスリーブ管の内周面との間の間隔を一定にするための処理が必要になる場合が考えられ、施工が煩雑になる可能性がある。
即ち、貫通孔の周面とスリーブ管の外周面との間の間隔や挿通部材の外周面とスリーブ管の内周面との間の間隔が一定にはならない構成である特許文献1のスリーブ管においては、これら間隔に充填材を充填する処理等の施工が煩雑になるため、施工性の面での課題があった。
本願発明は、上述した課題に鑑みて、安価で、かつ、厚さの異なる躯体にも対応できるとともに、スリーブの外周面と貫通孔の周面との間の間隔やスリーブの挿通孔の周面と挿通部材の外周面との間の間隔を一定にできて、施工性に優れたスリーブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスリーブは、躯体を貫通するように形成された貫通孔を貫通するように取付けられるとともに、内側に挿通部材を通すための挿通孔を備えたスリーブであって、貫通孔の一方の開口から当該貫通孔内に挿入される第1スリーブと、貫通孔の他方の開口から当該貫通孔内に挿入される第2スリーブとを備え、貫通孔の一方の開口から当該貫通孔内に挿入された第1スリーブと貫通孔の他方の開口から当該貫通孔内に挿入された第2スリーブとが結合されてスリーブが構成された状態において、スリーブの挿通孔は、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔に構成され、かつ、スリーブの外周面は、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成され、第1スリーブは、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成されたスリーブの外周面を形成する外周面及び内周面を有した外側管状部と、当該外側管状部の内周面の径寸法よりも小さい一定の径寸法を有した外周面及び内周面を有した内側管状部とを備え、第2スリーブは、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成された挿通孔の周面を形成する内周面及び外周面を有した内側管状部と、当該内側管状部の外周面の径寸法よりも大きい一定の径寸法を有した内周面及び外周面を有した外側管状部とを備え、第1スリーブの外側管状部の内周面と第2スリーブの外側管状部の外周面とが結合され、かつ、第1スリーブの内側管状部の内周面と第2スリーブの内側管状部の外周面とが結合されたことにより、挿通孔の外周側に、第1スリーブと第2スリーブとで囲まれた空間が構成されたことを特徴とする。
当該スリーブによれば、安価で、かつ、厚さの異なる躯体にも対応できるとともに、スリーブの挿通孔の周面と挿通部材の外周面との間の間隔、及び、スリーブの外周面と貫通孔の周面との間の間隔を一定にできて、施工性に優れたスリーブを提供できる。また、第1スリーブ2と第2スリーブ3とで囲まれた空間に耐火材を設けることにより、耐火性能をより向上できるようになる。
さらに、第1スリーブは、後端に、貫通孔の一方の開口の外周側に位置される躯体面に接触する鍔部を備え、第2スリーブは、後端に、貫通孔の他方の開口の外周側に位置される躯体面に接触する鍔部を備えたことを特徴とする。
当該スリーブによれば、第1スリーブの鍔部と第2スリーブの鍔部とで躯体を挟み込んだ状態に、スリーブを貫通孔に確実容易に設置することができるとともに、火災時において、火炎がスリーブと貫通孔との間に進入し難いようにできるため、耐火性能をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】貫通孔に取付けられたスリーブを示す断面図(実施形態1)。
【
図2】第1スリーブと第2スリーブとを示す断面図(実施形態1)。
【
図3】スリーブの設置方法の一例を示す説明図(実施形態1)。
【
図4】貫通孔に取付けられたスリーブを示す断面図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係るスリーブ1は、建物などの構造物における壁、床、梁等の躯体10を貫通するように形成された例えば断面円形の貫通孔11を貫通するように取付けられるとともに、内側に、管状の挿通部材12を通すための挿通孔13を備えた例えば断面円形状の管状部材である。
躯体10は、例えば木質壁10aの表面に耐火被覆層10bを設けて構成された耐火構造壁である。耐火被覆層10bは、例えば石こうボード等の耐火板を積層して構成される。
挿通部材12は、給水管、冷媒管、電線管などの例えば断面円形状の管状部材である。
【0008】
スリーブ1は、躯体10に形成された貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に挿入される第1スリーブ2と、当該貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔内に挿入される第2スリーブ3とを備え、これら第1スリーブ2と第2スリーブ3とが結合されて構成される。
【0009】
図1に示すように、貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に挿入された第1スリーブ2と貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔11内に挿入された第2スリーブ3とが結合されてスリーブ1が構成された状態において、挿通部材12の外周面と対向するスリーブ1の挿通孔13は、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に構成され、かつ、貫通孔11の周面と対向するスリーブ1の外周面14は、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に構成される。
【0010】
図1,
図2に示すように、第1スリーブ2は、外側管状部20Aと内側管状部20Bと鍔部20Cとを備えて構成される。
また、
図2は、第1スリーブ2と第2スリーブ3とが結合される前の状態を示す断面図である。
尚、本明細書において、後述する、各周面の径寸法とは、第1スリーブ2の中心軸11Cから周面までの半径寸法のこと、あるいは、第2スリーブ3の中心軸11Cから周面までの半径寸法のことである。
【0011】
外側管状部20Aは、内周面21と外周面22とを有する。
外側管状部20Aの内周面21は、貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に先に挿入される側である先端側の内周面21bと先端側以外の内周面21aとで構成され、先端側の内周面21bの径寸法は先端側以外の内周面21aの径寸法よりも大きい寸法に形成される。
第1スリーブ2と第2スリーブ3とが結合されてスリーブ1が構成された場合、外側管状部20Aの外周面22は、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成されたスリーブ1の外周面14となる。
内側管状部20Bは、内周面21の径寸法よりも例えば数mm~数cm程度小さい一定の径寸法を有した外周面23及び内周面24を有する。
【0012】
鍔部20Cは、外側管状部20Aの後端側と内側管状部20Bの後端側との間を塞ぐ塞ぎ部となる内周側部分と、貫通孔11の一方の開口15の外周側に位置される躯体面17に接触する板面25を有した鍔として機能する外周側部分とを有した構成である。尚、外側管状部20Aの後端、内側管状部20Bの後端とは、貫通孔11内に先に挿入される先端とは反対側の端のことである。
【0013】
換言すれば、第1スリーブ2は、外側管状部20Aと内側管状部20Bとが同軸上に位置されて、外側管状部20Aの後端側と内側管状部20Bの後端側との間が鍔部20Cの内周側部分で塞がれるように、外側管状部20Aと内側管状部20Bと鍔部20Cとが一体に形成されて構成される。これにより、
図2に示した断面形状のような、後端側に、鍔部20Cの内側板面と外側管状部20Aの内周面21aと内側管状部20Bの外周面23とで囲まれた円環状空間部を備えるとともに、躯体面17に接触する板面25を有した鍔を備えた第1スリーブ2が構成される。
【0014】
図1,
図2に示すように、第2スリーブ3は、外側管状部30Aと内側管状部30Bと鍔部30Cとを備えて構成される。
内側管状部30Bは、外周面31と内周面32とを有する。
内側管状部30Bの外周面31は、貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔11内に先に挿入される側である先端側の外周面31bと先端側以外の外周面31aとで構成され、先端側の外周面31bの径寸法は先端側以外の外周面31aの径寸法よりも小さい寸法に形成される。
第1スリーブ2と第2スリーブ3とが結合されてスリーブ1が構成された場合、内側管状部30Bの内周面32は、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法に形成されたスリーブ1の挿通孔13となる。
外側管状部30Aは、外周面31の径寸法よりも例えば数mm~数cm程度大きい一定の径寸法を有した内周面34及び外周面33を有する。
【0015】
鍔部30Cは、内側管状部30Bの後端側と外側管状部30Aの後端側との間を塞ぐ塞ぎ部となる内周側部分と、貫通孔11の他方の開口16の外周側に位置される躯体面17に接触する板面35を有した鍔として機能する外周側部分とを有した構成である。尚、内側管状部30Bの後端、外側管状部30Aの後端とは、貫通孔11内に先に挿入される先端とは反対側の端のことである。
【0016】
換言すれば、第2スリーブ3は、外側管状部30Aと内側管状部30Bとが同軸上に位置されて、外側管状部30Aの後端側と内側管状部30Bの後端側との間が鍔部30Cの内周側部分で塞がれるように、外側管状部30Aと内側管状部30Bと鍔部30Cとが一体に形成されて構成される。これにより、
図2に示した断面形状のような、後端側に、鍔部30Cの内側板面と外側管状部30Aの内周面34と内側管状部30Bの外周面31aとで囲まれた円環状空間部を備えるとともに、躯体面17に接触する板面35を有した鍔を備えた第2スリーブ3が構成される。
【0017】
尚、第2スリーブ3の内側管状部30Bの内周面32の先端面と第1スリーブ2の鍔部20Cの外側板面とが同一平面上に位置されるように第2スリーブ3が貫通孔11内に設置されて、内側管状部30Bの内周面32の先端開口縁により挿通孔13の一端側開口が形成される。
また、内側管状部30Bの内周面32の後端縁により挿通孔13の他端側開口が形成される。
【0018】
第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bと第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33とが同径の円周面にねじ40が形成された構成とされ、かつ、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bと第1スリーブ2の内側管状部20Bの内周面24とが同径の円周面にねじ40が形成された構成とされている。
即ち、互いに結合される第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bと第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33とには、互いに螺合するねじ40,40が形成されている。
また、互いに結合される第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bと第1スリーブ2の内側管状部20Bの内周面24とには、互いに螺合するねじ40,40が形成されている。
【0019】
そして、第1スリーブ2が貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に設置されるとともに、第2スリーブ3が貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔11内に設置される。この際、第1スリーブ2の外側管状部20Aの内周面21の先端側内周面21bと第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33とがねじ結合され、かつ、第1スリーブ2の内側管状部20Bの内周面24と第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bとがねじ結合される。
以上により、
図1に示すように、貫通孔11を貫通して、外側管状部20Aの外周面22が外周面14となり、かつ、内側管状部30Bの内周面32が挿通孔13となるスリーブ1が構成されることになる。
【0020】
上記のように、貫通孔11を貫通するスリーブ1が構成された場合、第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側以外の内周面21aと第2スリーブ3の外側管状部30Aの内周面34とが同径寸法の円周面に形成される。
さらに、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側以外の外周面31aと第1スリーブ2の内側管状部20Bの外周面23とが同径寸法の円周面に形成される。
また、挿通孔13の外周側に、内周面21と内周面34と外周面31と外周面23と鍔部20Cの内側板面と鍔部30Cの内側板面とで囲まれた空間であって、貫通孔11の延長方向に亘って連続する断面円環状の円筒状空間が構成されることになる。
【0021】
尚、第1スリーブ2及び第2スリーブ3は、例えば、切断可能な金属質の材料により形成される。
【0022】
次に、
図3(a),(b)、及び、
図1に基づいて、スリーブ1の設置方法の一例を説明する。
躯体10の厚さは、例えば耐火被覆層10bの厚さに応じて可変する。従って、まず、第1スリーブ2を貫通孔11に設置するが、この際、第1スリーブ2の中心軸11Cに添った方向の長さ寸法を躯体10の厚さ寸法に合わせる必要がある。つまり、第1スリーブ2を先端側から貫通孔11の一方の開口15を介して貫通孔11内に挿入し、鍔部20Cの板面25を貫通孔11の一方の開口15の外周側に位置される躯体面17に接触させた状態で、貫通孔11の他方の開口16から突出する外側管状部20Aの先端側部分と貫通孔11内に位置される外側管状部20Aの部分との境界位置に、外側管状部20Aの先端側部分を切断するための目印となる切断目印線を付ける。次に、第1スリーブ2を貫通孔11内から一旦取り外した後、切断目印線に従って他方の開口16から突出する部分となる外側管状部20Aの先端側部分を切断する。
そして、
図3(a)に示すように、外側管状部20Aの先端側部分を切断した第1スリーブ2を貫通孔11に設置した後、
図3(b)に示すように、第2スリーブ3を先端側から貫通孔11の他方の開口16を介して貫通孔11内に挿入する。そして、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bに形成されたねじ40と第1スリーブ2の内側管状部20Bの内周面24に形成されたねじ40とを螺着させるとともに、第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33に形成されたねじ40と第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bに形成されたねじ40とを螺着させて、鍔部30Cの板面35を貫通孔11の他方の開口16の外周側に位置される躯体面17に接触させた状態とする。この状態で、貫通孔11の一方の開口15から突出する内側管状部30Aの先端側部分30Tと貫通孔11内に位置される内側管状部30Aの部分との境界位置に、内側管状部30Aの先端側部分30Tを切断するための目印となる切断目印線を付ける。次に、第2スリーブ3を貫通孔11内から一旦取り外した後、切断目印線に従って一方の開口15から突出する部分となる内側管状部30Aの先端側部分30Tを切断する。
次に、内側管状部30Aの先端側部分30Tを切断した第2スリーブ3の内側管状部30Aの外周側にロックウールやグラスウール等の耐火材9を所定の量だけ設けた状態で、第2スリーブ3を先端側から貫通孔11の他方の開口16を介して貫通孔11内に挿入する。
そして、
図1に示すように、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bに形成されたねじ40と第1スリーブ2の内側管状部20Aの内周面24に形成されたねじ40とを螺着させるとともに、第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33に形成されたねじ40と第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bに形成されたねじ40とを螺着させて、第2スリーブ3と第1スリーブ2とを結合させることにより、貫通孔11にスリーブ1が設置されることになる。
その後、挿通部材12を、貫通孔11に設置されたスリーブ1の挿通孔13に貫通させるようにして設置する。
【0023】
実施形態1に係るスリーブ1によれば、安価で、かつ、厚さの異なる躯体10にも対応できるとともに、スリーブ1の挿通孔13の周面と挿通部材12の外周面との間の間隔、及び、スリーブ1の外周面14と貫通孔11の周面との間の間隔を一定にできて、スリーブ1と挿通部材12との間の間隔、及び、スリーブ1と貫通孔11との間の間隔を塞ぐために耐火性を有した材料等を充填材として充填する処理を、確実かつ容易に行えるスリーブ1を提供できる。即ち、施工性に優れたスリーブ1を提供できる。
【0024】
即ち、実施形態1に係るスリーブ1は、挿通部材12の外周面と対向する挿通孔13が、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面(内周面32)を有した貫通孔により構成されている。
従って、スリーブ1の挿通孔13と挿通部材12との間の間隔を、貫通孔の延長方向に亘って均等な一定の隙間に設定できるようになるので、挿通部材12の外周面に例えばロックウールやグラスウール等の耐火材を一定の厚さだけ巻き付けることにより、スリーブ1の挿通孔13と挿通部材12との間の間隔を塞ぐために耐火性を有した材料等を充填材として充填する処理を、確実かつ容易に行えるようになる。
また、実施形態1に係るスリーブ1は、貫通孔11の周面と対向するスリーブ1の外周面14が、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面(外周面22)に構成されている。
従って、スリーブ1の外周面14と貫通孔11との間の間隔を、貫通孔11の延長方向に亘って均等な一定の隙間に設定できるようになるので、スリーブ1の外周面14に例えばロックウールやグラスウール等の耐火材を一定の厚さだけ巻き付けることにより、スリーブ1の外周面14と貫通孔11との間の間隔を塞ぐために耐火性を有した材料等を充填材として充填する処理を、確実かつ容易に行えるようになる。
【0025】
即ち、実施形態1に係るスリーブ1によれば、スリーブ1と挿通部材12との間の間隔、及び、スリーブ1と貫通孔11との間の間隔を一定にできるため、施工性に優れたスリーブ1を提供できるようになった。
【0026】
さらに、実施形態1に係るスリーブ1では、第1スリーブ2と第2スリーブ3とが結合されることで、第1スリーブ2と第2スリーブ3とで囲まれた断面円環状の円筒状空間が形成されるため、例えば、当該円筒状空間に、ロックウールやグラスウール等の耐火材9(
図1参照)を設けることによって、耐火性能を向上させることが可能となる。
【0027】
また、実施形態1に係るスリーブ1では、第1スリーブ2が、後端に、貫通孔11の一方の開口15の外周側に位置される躯体面17に接触する板面25を有した鍔として機能する鍔部20Cを備えるとともに、第2スリーブ3が、後端に、貫通孔11の他方の開口16の外周側に位置される躯体面17に接触する板面35を有した鍔として機能する鍔部30Cを備えている。
このため、鍔部20Cと鍔部30Cとで躯体10を挟み込んだ状態に、スリーブ1を貫通孔11に確実容易に設置することができるとともに、火災時において、火炎がスリーブ1と貫通孔11との間に進入し難いようにできるため、耐火性能を向上できる。
【0028】
実施形態2
図4に示すように、実施形態2に係るスリーブ1Aは、躯体10に形成された貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に挿入される第1スリーブ2Aと、当該貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔内に挿入される第2スリーブ3Aとを備え、これら第1スリーブ2Aと第2スリーブ3Aとが結合されて構成される。
尚、実施形態2の構成を示す
図4において、実施形態1の構成を示す
図1乃至
図3と同一部分又は相当部分については同一符号を付し、説明を省略する。
【0029】
第1スリーブ2Aは、貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に先に挿入される側である先端側の内周面22Aの径寸法が当該先端側以外の内周面21Aの径寸法よりも大きい寸法に形成されたとともに、一定の径寸法を有した外周面23Aを有する。
即ち、第1スリーブ2Aは、内周面が、先端側内周面22Aと先端側以外の内周面21Aとで構成される。
第1スリーブ2Aの後端には、一方の開口15の外周側に位置される躯体面17に接触する板面25を有した鍔部2Cを備える。
【0030】
第2スリーブ3Aは、貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔11内に先に挿入される側である先端側の外周面32Aの径寸法が当該先端側以外の外周面33Aの径寸法よりも小さい寸法に形成されたとともに、一定の径寸法を有した内周面31Aを有する。
即ち、第2スリーブ3Aは、外周面が、先端側外周面32Aと先端側以外の外周面33Aとで構成される。
第2スリーブ3Aの後端には、他方の開口16の外周側に位置される躯体面17に接触する板面35を有した鍔部3Cを備える。
【0031】
第1スリーブ2Aの先端側内周面22A及び第2スリーブ3の先端側外周面32Aには、互いに螺合するねじ40,40が形成されている。
【0032】
そして、貫通孔11の一方の開口15から挿入された第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aと貫通孔11の他方の開口16から挿入された第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aとが貫通孔11内でねじ結合されてスリーブ1Aが構成される。
【0033】
即ち、貫通孔11の一方の開口15から挿入された第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aに形成されたねじ40と他方の開口16から挿入された第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aに形成されたねじ40とが螺合して、第1スリーブ2Aの外周面23Aの先端面24xと第2スリーブ3Aにおける先端側以外の外周面33Aの先端面34xとが近接するとともに、第1スリーブ2Aにおける先端側以外の内周面21Aの先端面25xと第2スリーブ3の内周面31Aの先端面35xとが近接することにより、第1スリーブ2Aと第2スリーブ3Aとがねじ結合される。つまり、第1スリーブ2Aの外周面23Aと第2スリーブ3Aの先端側以外の外周面33Aとによって貫通孔11の周面と対向するスリーブ1Aの外周面14Aが形成されるとともに、第1スリーブ2Aの先端側以外の内周面21Aと第2スリーブ3Aの内周面31Aとによってスリーブ1Aの挿通孔13Aが形成されることになる。
即ち、第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aと第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aとが貫通孔11内でねじ結合されたことにより、第1スリーブ2Aの外周面23Aと第2スリーブ3Aの先端側以外の外周面33Aとで貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法のスリーブ1Aの外周面14Aが構成されるとともに、第1スリーブ2Aの先端側以外の内周面21Aと第2スリーブ3Aの内周面31Aとで貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法のスリーブ1Aの挿通孔13Aが構成される。
【0034】
換言すれば、スリーブ1Aの挿通孔13Aの周面が、貫通孔11の延長方向に亘って連続してスリーブ1Aの中心軸11Cを中心とした同径の周面上に位置されるように構成されたとともに、スリーブ1Aの外周面14Aが、貫通孔11の延長方向に亘って連続してスリーブ1Aの中心軸11Cを中心とした同径の周面上に位置されるように構成されている。
【0035】
尚、実施形態2において、上述した「近接」という言葉の意味は、接触している場合を含むものとする。
【0036】
また、第1スリーブ2A及び第2スリーブ3Aは、例えば、切断可能な金属質の材料により形成される。
【0037】
実施形態2に係るスリーブ1Aによれば、現場において、スリーブ1Aの長さが躯体10の厚さ寸法よりも長いことが判明した場合には、第1スリーブ2Aの先端側及び第2スリーブ3Aの先端側の両方を同じ長さだけ切断することにより、スリーブ1Aの長さを躯体10の厚さ寸法に合わせて短くすることが可能となる。
また、第1スリーブ2Aを短くするとともに、第2スリーブ3Aを長くしておいて、第2スリーブ3Aの先端側だけを切断するようにしてもよい。
【0038】
実施形態2に係るスリーブ1Aによれば、スリーブ1Aの挿通孔13Aの周面と挿通部材12の外周面との間の間隔を、貫通孔11の延長方向に亘って均等な隙間に設定できるようになるので、挿通部材12の外周面に例えばロックウールやグラスウール等の耐火材を一定の厚さだけ巻き付けることにより、スリーブ1の挿通孔13と挿通部材12との間の間隔を塞ぐために耐火性を有した材料等を充填材として充填する処理を、確実かつ容易に行える施工性に優れたスリーブ1Aを提供できる。
また、スリーブ1Aの外周面14Aの径寸法を貫通孔11の周面の径寸法に対応した寸法に設定することにより、当該外周面14Aと貫通孔11との間に耐火性を有した材料等を充填材として充填するスペースを無くすことが可能となる。この場合、外周面14Aと貫通孔11との間の耐火性能が求められない場合にも使用可能なスリーブ1Aを提供できるようになる。
即ち、実施形態2に係るスリーブ1Aによれば、スリーブ1Aと挿通部材12との間の間隔、及び、スリーブ1Aと貫通孔11との間の間隔を一定にできるため、施工性に優れたスリーブ1Aを提供できるようになった。
【0039】
また、鍔部2Cと鍔部3Cとで躯体10を挟み込んだ状態に、スリーブ1Aを貫通孔11に確実容易に設置することができるとともに、火災時において、火炎がスリーブ1Aと貫通孔11との間に進入し難いようにできるため、耐火性能を向上できる。
【0040】
また、実施形態2に係るスリーブ1Aにおいて、スリーブ1Aの挿通孔13Aと挿通部材12との間の間隔やスリーブ1Aの外周面14Aと貫通孔11との間の間隔が大きくなってしまう場合や、耐火性能をより向上させたい場合には、スリーブ1Aの外周面14Aや挿通部材12の外周面に、グラスウール、ロックウール、耐火テープ、耐火シート等の耐火材を一定の厚さになるように巻き付けるなどして設ければよいので、スリーブ1Aと挿通部材12との間の間隔、及び、スリーブ1Aと貫通孔11との間の間隔を塞ぐために耐火性を有した材料を充填材として充填する処理を、確実かつ容易に行えるようになる。
【0041】
また、実施形態1に係るスリーブ1においては、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bに形成されたねじ40と第1スリーブ2の内側管状部20Aの内周面24に形成されたねじ40とを螺着させるとともに、第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33に形成されたねじ40と第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bに形成されたねじ40とを螺着させて、第2スリーブ3と第1スリーブ2とを結合させる構成を例示したが、第2スリーブ3の内側管状部30Bの先端側外周面31bと第1スリーブ2の内側管状部20Aの内周面24とを嵌合状態に結合するとともに、第2スリーブ3の外側管状部30Aの外周面33と第1スリーブ2の外側管状部20Aの先端側内周面21bとを嵌合状態に結合する構成としてもよい。
また、実施形態2に係るスリーブ1Aにおいては、第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aと第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aとがねじ結合された構成のスリーブ1を例示したが、第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aと第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aとを嵌合状態で結合する構成としてもよい。
尚、これら嵌合状態で結合する構成においては、互いに嵌合する面に廻止めとなる凹凸を備えた嵌合結合構造とすればよい。
【0042】
また、実施形態2のスリーブ1Aにおいて、第1スリーブ2Aの外周面23Aの先端面24xと第2スリーブ3Aにおける先端側以外の外周面33Aの先端面34xとの間の耐火処理や、第1スリーブ2Aにおける先端側以外の内周面21Aの先端面25xと第2スリーブ3Aの内周面31Aの先端面35xとの間の耐火処理が必要な場合には、例えば、互いに対向する先端面のうちの少なくとも一方に、グラスウール、ロックウール、耐火テープ、耐火シート等の耐火材を取付けておいて、互いに対向する先端面同士を耐火材を介して突き合せる如く第1スリーブ2Aの先端側内周面22Aと第2スリーブ3Aの先端側外周面32Aとを結合すればよい。
【0043】
また、実施形態1,2においては、
図1の第1スリーブ2,
図4の2Aを先に貫通孔11に設置した後に、
図1の第2スリーブ3,
図4の3Aを貫通孔11に設置して、両者を結合して
図1のスリーブ1,
図4の1Aを構成するようにしたが、第2スリーブ3,3Aを先に貫通孔11に設置した後に、第1スリーブ2,2Aを貫通孔11に設置して、両者を結合してスリーブ1,1Aを構成するようにしてもよい。
【0044】
また、実施形態1,2においては、貫通孔11の一方の開口15から当該貫通孔11内に挿入された第1スリーブ2,2Aと貫通孔11の他方の開口16から当該貫通孔11内に挿入された第2スリーブ3,3Aとが結合されてスリーブ1,1Aが構成された状態において、挿通部材12の外周面と対向するスリーブ1の挿通孔13,13Aが、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔13に構成され、かつ、貫通孔11の周面と対向するスリーブ1,1Aの外周面14,14Aが、貫通孔11の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成されたスリーブ1,1Aを例示した。
しかしながら、本願発明のスリーブは、挿通部材の外周面と対向する挿通孔が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔に構成されたという条件を満たして、貫通孔の周面と対向する外周面が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成するという条件を満たさないスリーブであっても良い。
このような構成のスリーブであっても、スリーブの挿通孔の周面と挿通部材の外周面との間の間隔を一定にできるため、安価で、かつ、厚さの異なる躯体にも対応できるとともに、施工性に優れたスリーブを得ることができるからである。
逆に、貫通孔の周面と対向する外周面が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成するという条件を満たして、挿通部材の外周面と対向する挿通孔が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔に構成されたという条件を満たさないスリーブであっても良い。
このような構成のスリーブであっても、スリーブの外周面と貫通孔の周面との間の間隔を一定にできるため、安価で、かつ、厚さの異なる躯体にも対応できるとともに、施工性に優れたスリーブを得ることができるからである。
【0045】
また、実施形態1,2においては、断面円形状のスリーブ1,1Aを例示したが、本発明のスリーブは、第1スリーブと第2スリーブとを嵌合結合して構成されるスリーブであれば、断面円形状に限らず、例えば、断面角形状であってもよい。
【0046】
尚、上記では、躯体10として、耐火構造壁を例示したが、躯体は、耐火構造床、耐火構造梁等であってもよい。
また、躯体10は、木造構造物、鉄骨構造物において、表面に耐火被覆層が設けられていない壁、床、梁等の躯体であってもよい。
また、躯体10は、鉄筋コンクリート構造物の壁、床、梁等の躯体であってもよい。
【0047】
また、本発明のスリーブが、表面に耐火被覆層が設けられていない壁、床、梁等の躯体を貫通するように形成された貫通孔を貫通するように使用されるスリーブである場合、切断可能な材料で形成されたスリーブを用いればよい。例えば、プラスチック、木等の材料で形成されたスリーブを用いても構わない。
当該スリーブであっても、挿通部材の外周面と対向する挿通孔が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の周面を有した挿通孔に構成されたり、貫通孔の周面と対向する外周面が、貫通孔の延長方向に亘って連続して一定した径寸法の外周面に構成されることにより、スリーブの挿通孔と挿通部材との間の間隔やスリーブの外周面と貫通孔との間の間隔を一定にできる。従って、例えば、スリーブと挿通部材との間の間隔やスリーブと貫通孔との間の間隔を塞ぐために充填材を充填する処理を、確実かつ容易に行えたり、あるいは、不要とできるスリーブ、即ち、施工性に優れたスリーブを提供できるようになる。
【0048】
また、本発明に係るスリーブは、貫通孔の周面とスリーブの外周面との間の間隔や挿通部材の外周面とスリーブの内周面との間の間隔を一定にできるため、スリーブや挿通部材の取付後の安定性を確保するために処理が必要になる場合においても当該処理が容易となり、施工性に優れたスリーブとなる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A スリーブ、2,2A 第1スリーブ、3,3A 第2スリーブ、
10 躯体、11 貫通孔、12 挿通部材、13,13A 挿通孔、
15 一方の開口、16 他方の開口、20A,30A 外側管状部、
20B,30B 内側管状部、20C,30C,2C,3C 鍔部、
22A 先端側内周面、32A 先端側外周面。