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特許7576999バイオガス供給システム及びバイオガス供給方法
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  • 特許-バイオガス供給システム及びバイオガス供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】バイオガス供給システム及びバイオガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/02 20060101AFI20241025BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
F02D23/02 Z
F02D19/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021038869
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138787
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川口 昇
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 正訓
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亘
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223584(JP,A)
【文献】特開2004-239114(JP,A)
【文献】特開2002-290134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 23/02
F02D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物の発酵により生成するバイオガスが貯留された貯留室(12)を有するバイオガス供給装置(10)と、
前記バイオガスを消費する燃料消費装置(20)と、を備え、
前記バイオガス供給装置(10)が、前記燃料消費装置(20)から排出される排気ガスが導入されるバルーン(14)と、有機物の発酵によりバイオガスを生成する発酵槽(16)とを前記貯留室(12)内に有する、バイオガス供給システム(1)。
【請求項2】
前記バイオガス供給装置(10)の前記バルーン(14)と、前記燃料消費装置(20)とは、配管(30)で接続され、
前記配管(30)が、前記貯留室(12)内の圧力を調整する圧力調整装置(32)を有する、請求項1に記載のバイオガス供給システム(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイオガス供給システム(1)を用いたバイオガス供給方法であって、
前記バルーン(14)を膨張させて前記貯留室(12)内の前記バイオガスを加圧し、前記バイオガスを前記燃料消費装置(20)に供給する、バイオガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス供給システム及びバイオガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理及び資源の有効利用の観点から、家畜糞尿、生ゴミ等の有機物から、メタン発酵等の発酵を利用して、メタン等を含むバイオガスを発生させることが行われている。
バイオガスは、エンジンやボイラー等の燃料消費装置の燃料として有効に利用できる。
【0003】
バイオガスを有効利用する方法として、例えば、ベンチュリミキサの吸引負圧を高めることでストイキ燃焼に必要な流量のバイオガスを吸引することができるバイオガス専焼エンジンが知られている(特許文献1参照)。例えば、バイオガスを燃料として使用するデュアルフューエル・ディーゼルエンジンが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-217142号公報
【文献】特開2002-309979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、バイオガスを燃料消費装置に供給する際、ブロアやポンプ等の燃料輸送機器を設置する必要がある。燃料輸送機器を設置すると、燃料輸送機器を設置するスペースを要し、バイオガスを燃料消費装置に供給するバイオガス供給システムが大きくなる。加えて、燃料輸送機器を駆動するための電力等のランニングコストがかかり、燃料輸送機器をメンテナンスする手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、小型化が可能であり、バイオガスを燃料消費装置に供給するためのエネルギーを低減できるバイオガス供給システム及びバイオガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載したバイオガス供給システム(1)は、有機物の発酵により生成するバイオガスが貯留された貯留室(12)を有するバイオガス供給装置(10)と、前記バイオガスを消費する燃料消費装置(20)と、を備え、前記バイオガス供給装置(10)が、前記燃料消費装置(20)から排出される排気ガスが導入されるバルーン(14)と、有機物の発酵によりバイオガスを生成する発酵槽(16)とを前記貯留室(12)内に有することを特徴とする。
この構成によれば、バイオガスを燃料消費装置に供給するための燃料輸送機器が不要となるため、小型化が可能であり、バイオガスを燃料消費装置に供給するためのエネルギーを低減できる。
【0008】
請求項2に記載したバイオガス供給システム(1)は、前記バイオガス供給装置(10)の前記バルーン(14)と、前記燃料消費装置(20)とは、配管(30)で接続され、前記配管(30)が、前記貯留室(12)内の圧力を調整する圧力調整装置(32)を有することを特徴とする。
この構成によれば、貯留室内の圧力を制御でき、バイオガスの供給量を容易に制御できる。
【0009】
請求項3に記載したバイオガス供給方法は、上述したバイオガス供給システム(1)を用いたバイオガス供給方法であって、前記バルーン(14)を膨張させて前記貯留室(12)内の前記バイオガスを加圧し、前記バイオガスを前記燃料消費装置(20)に供給することを特徴とする。
この構成によれば、バイオガスを燃料消費装置に供給するための燃料輸送機器が不要となるため、小型化が可能であり、バイオガスを燃料消費装置に供給するためのエネルギーを低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバイオガス供給システム及びバイオガス供給方法によれば、小型化が可能であり、バイオガスを燃料消費装置に供給するためのエネルギーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るバイオガス供給システム1の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るバイオガス供給システム1について、添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のバイオガス供給システム1は、バイオガス供給装置10と、燃料消費装置20とを備える。
バイオガス供給装置10と、燃料消費装置20とは、配管30及び配管36で接続されている。配管30には、圧力調整装置32が設けられている。
図中の矢印は、バイオガスや排気ガス等の流体の移動方向を示す。
【0013】
バイオガス供給装置10は、貯留室12を有し、貯留室12内にバルーン14と、発酵槽16とを有する。貯留室12には、配管36が接続されている。バルーン14は、一方が配管30と接続され、他方が配管34と接続されている。
【0014】
バイオガス供給装置10は、バイオガスを燃料消費装置20に供給する装置である。バイオガス供給装置10は、バイオガスが貯留された貯留室12を有していればよく、特に限定されない。バイオガス供給装置10としては、例えば、内部にバイオガスを貯留できる貯留室12(貯留部ともいう)を有するタンク等の容器が挙げられる。
【0015】
貯留室12は、燃料消費装置20から排出される排気ガスが導入されるバルーン14を有する。貯留室12は、バイオガスを貯留できればよく、特に限定されない。貯留室12としては、例えば、バイオガスを貯留できる密閉空間を有し、容積が一定の容器等が挙げられる。
【0016】
バルーン14は、排気ガスが導入されることによって膨張する風船状の袋体である。バルーン14は、排気ガスを密閉できればよく、特に限定されない。バルーン14の素材としては、例えば、ゴムやフィルム等、柔軟性を有する樹脂が挙げられる。
バルーン14は、貯留室12の密閉空間と同等の容積まで膨張しても破裂しない強度と、柔軟性を有することが好ましい。また、バルーン14は、加温による耐熱性、繰り返しの膨張、収縮や温度差に耐えられる耐久性を有することが好ましい。
【0017】
本実施形態では、貯留室12は、発酵槽16を有する。発酵槽16は、内部に貯留される家畜糞尿、生ゴミ等の有機物の発酵によりバイオガスを生成する容器である。発酵槽16としては、例えば、細菌、真菌等の微生物を用いた湿式の発酵槽等が挙げられる。発酵槽16は、密閉空間を有するバルーン14と同様の袋体で形成されていてもよい。
【0018】
燃料消費装置20は、バイオガスを燃料として駆動する装置である。燃料消費装置20は、バイオガスを消費し、排気ガスを排出する。燃料消費装置20としては、例えば、エンジン、ボイラー、発電機等が挙げられる。
【0019】
配管30は、金属又は樹脂製の配管である。配管30は、耐熱性、耐腐食性を有することが好ましい。
配管34は、配管30と同様である。配管34の素材は、配管30の素材と同じでもよく、異なっていてもよい。
配管36は、配管30と同様である。配管36の素材は、配管30の素材と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0020】
圧力調整装置32は、貯留室12内の圧力を調整する装置である。圧力調整装置32としては、例えば、開閉可能なバルブ(開閉弁)、配管の断面積を変化させられる装置等が挙げられる。
【0021】
(バイオガス供給方法)
本発明のバイオガス供給方法は、バルーンを膨張させて貯留室内のバイオガスを加圧し、バイオガスを燃料消費装置に供給することを特徴とする。
以下、本実施形態のバイオガス供給システム1を用いたバイオガス供給方法について説明する。
【0022】
バイオガス供給装置10の貯留室12内には、バイオガスが貯留される。本実施形態においては、貯留室12内に、発酵槽16が設けられている。
発酵槽16では、家畜糞尿、生ゴミ等の有機物からメタン発酵等の発酵により、メタン等を含むバイオガスが生成される。生成したバイオガスは、貯留室12の密閉空間内に貯留される。
【0023】
燃料消費装置20を駆動すると、燃焼反応等により二酸化炭素等を含む排気ガスが生成する。燃料消費装置20を駆動する際の燃料は、石油精製等によって得られるバイオガス以外の燃料であってもよいが、バイオガスを有効利用する観点から、燃料消費装置20を駆動する際の燃料は、バイオガスが好ましい。
燃料消費装置20で生成した排気ガスは、配管30を介して貯留室12内に設置されたバルーン14に導入される。
【0024】
バルーン14に排気ガスが導入されると、バルーン14が膨張し、貯留室12内のバイオガスが貯留されている空間の容積が減少する。その結果、バイオガスが加圧される。加圧されたバイオガスは、配管36を介して燃料消費装置20に供給される。
【0025】
バルーン14には、導入された排気ガスを排出する配管34が接続されている。配管34を介して排気ガスを排出すると、バルーン14は収縮する。バルーン14が収縮することにより、バイオガスが貯留されている空間の容積が元の状態に戻り、内部の圧力は常圧(大気圧、約0.1MPa)となる。
【0026】
バルーン14に導入される排気ガスの流量は、配管30に設けられた圧力調整装置32によって調整できる。排気ガスの流量を調整することにより、バルーン14の膨張の程度を調整できる。その結果、貯留室12内のバイオガスが貯留されている空間の容積の大きさを調整でき、貯留室12内の圧力を調整できる。
このため、貯留室12内の圧力を制御でき、バイオガスの供給量を容易に制御できる。
【0027】
貯留室12内の圧力は、配管34や配管36に圧力調整装置を設け、該圧力調整装置を操作することにより調整してもよい。圧力調整装置を複数設けることにより、貯留室12内の圧力をより細やかに制御できる。
【0028】
(作用効果)
本実施形態のバイオガス供給方法は、バルーン14を膨張させることにより、貯留室12内のバイオガスを加圧し、燃料消費装置20に供給できる。このため、バイオガスを燃料消費装置20に供給するための燃料輸送機器が不要となる。よって、バイオガス供給システム1の設備をコンパクトにでき、小型化が可能である。加えて、燃料輸送機器を駆動するために要するエネルギーを低減できる。さらに、バイオガスを供給するための動力源やエネルギーを必要としないため、バイオガスの安定した供給が可能となる。
本実施形態のバイオガス供給方法は、燃料消費装置20から排出される排気ガスをバルーン14に導入するため、排気ガスによる加温(熱回収)が可能となる。このため、発酵槽16を加温することができ、バイオガスの生成を促進できる。
バイオガスの供給量が多く、燃料消費装置20の負荷が高い高負荷時には、排気ガスの排出量が多く、バルーン14が大きく膨張し、バイオガスの圧力が高くなる。一方、バイオガスの供給量が少なく、燃料消費装置20の負荷が低い低負荷時には、排気ガスの排出量が減少し、バルーン14の膨張が抑えられ、バイオガスの圧力が小さくなる。このように、本実施形態のバイオガス供給方法では、排気ガスの排出量とバイオガスの供給量とを連動させることができる。このため、燃料消費装置20の負荷に応じたバイオガスの供給量の制御が可能となる。
本実施形態のバイオガス供給方法は、圧力調整装置32を有するため、貯留室12内の圧力を調整できる。このため、バイオガスの供給量を容易に制御できる。
発酵槽16が密閉空間を有するバルーン14と同様の袋体で形成されている場合、バルーン14を膨張させることで、発酵槽16の内部のバイオガスが、貯留室12の内部空間に漏出することを抑制できる。
【0029】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0030】
例えば、バイオガス供給システム1においては、バルーン14の数は1つであるが、バイオガス供給システムは、バルーンを2つ以上有していてもよい。
例えば、バイオガス供給システム1においては、貯留室12の数は1つであるが、バイオガス供給システムは、貯留室を2つ以上有していてもよい。しかし、バイオガス供給システムをよりコンパクトな設備とする観点から、貯留室の数は1つであることが好ましい。
【0031】
例えば、バイオガス供給システム1においては、バイオガス供給装置10の数は1つであるが、バイオガス供給システムは、バイオガス供給装置を2つ以上有していてもよい。しかし、バイオガス供給システムをよりコンパクトな設備とする観点から、バイオガス供給装置の数は1つであることが好ましい。
例えば、バイオガス供給システム1においては、燃料消費装置20の数は1つであるが、バイオガス供給システムは、燃料消費装置を2つ以上有していてもよい。しかし、バイオガス供給システムをよりコンパクトな設備とする観点から、燃料消費装置の数は1つであることが好ましい。
【0032】
例えば、バイオガス供給システム1においては、貯留室12内に発酵槽16を有するが、バイオガス供給システムは、貯留室の外部に発酵槽を有していてもよい。この場合、貯留室と発酵槽とを接続する配管が設けられ、発酵槽で生成されたバイオガスは、該配管を介して貯留室の内部に貯留される。しかし、バイオガス供給システムをよりコンパクトな設備とする観点から、バイオガス供給システムは、貯留室内に発酵槽を有することが好ましい。加えて、排気ガスの熱エネルギーをバイオガスの生成に利用できる観点から、バイオガス供給システムは、貯留室内に発酵槽を有することが好ましい。
【0033】
例えば、バイオガス供給システム1においては、配管30に圧力調整装置32が1つ設けられているが、バイオガス供給システムは、複数の配管に複数の圧力調整装置を有していてもよい。
バイオガス供給システムは、排気ガスを浄化する排ガス処理装置を有していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…バイオガス供給システム、10…バイオガス供給装置、12…貯留室、14…バルーン、16…発酵槽、20…燃料消費装置、30,34,36…配管、32…圧力調整装置
図1