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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】圧縮機システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 25/16 20060101AFI20241025BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
F04D25/16
F04D29/60 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021053814
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2021156290
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】永尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅博
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05382132(US,A)
【文献】実開平01-104442(JP,U)
【文献】特開2013-036375(JP,A)
【文献】特開2017-137768(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095507(WO,A1)
【文献】特開平05-077652(JP,A)
【文献】特開昭49-020704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/16
F04D 29/60
F16H 1/28-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転する駆動軸を有して回転駆動される駆動部と、
ガスを圧縮する複数の圧縮機と、
前記駆動軸の回転を増速させて複数の前記圧縮機に伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、
前記駆動軸とともに回転する主軸と、
前記主軸に固定された主歯車と、
前記主軸を囲むように配置されて、前記主軸の回転を対応する一つの前記圧縮機にそれぞれ伝達する複数の歯車機構を備え、
前記歯車機構は、
前記主歯車に噛み合う副歯車と、
前記副歯車が固定されて前記副歯車とともに第一中心線を中心として回転し、柱状をなしている副軸と、
前記副軸を囲むように周方向に互いには離れて配置されて、前記副軸とともに回転する複数の第一歯車と、
前記第一歯車に噛み合う出力歯車と、
前記第一中心線の延びる方向で前記副軸と離れて配置され、前記出力歯車が固定されて前記圧縮機に接続され、前記第一中心線を中心として回転する出力軸と、
前記副軸を回転可能に支持する第一軸受と、
前記出力軸を回転可能に支持する第二軸受と、を有する圧縮機システム。
【請求項2】
前記第二軸受はティルティングパッド軸受である請求項1に記載の圧縮機システム。
【請求項3】
前記圧縮機は、分子量10以下の前記ガスを圧縮する請求項1から2に記載の圧縮機システム。
【請求項4】
前記歯車機構は、前記第一歯車として遊星歯車を有する遊星歯車機構であり、
前記遊星歯車機構は、前記副軸に固定され、前記出力軸の軸線を中心として環状に形成され、複数の前記遊星歯車と噛み合う内歯車を有する請求項1から3の何れか一項に記載の圧縮機システム。
【請求項5】
前記歯車機構は、
前記第一歯車が固定されて前記第一歯車自身の中心線を中心として自転可能とされた第一歯車軸と、
前記第一歯車に対して、離れた位置で前記第一歯車軸に固定された第二歯車と、
前記副歯車に対して、離れた位置で前記副軸に固定されて前記第二歯車と噛み合う第二副歯車とを有する請求項1から4の何れか一項に記載の圧縮機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の圧縮流体を生成する軸流圧縮機や遠心圧縮機等の圧縮機には、駆動機(モータ)によって駆動されるものがある。例えば、特許文献1には、一台の駆動機により、複数の圧縮機を駆動する圧縮機システムがある。特許文献1の構造では、一台の駆動機に対して、異なる出力軸に接続された増速機を介して高圧側の圧縮機と低圧側の圧縮機とが直列に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/042639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような駆動機に対して、駆動軸である二軸の駆動機の出力軸に接続された圧縮機を高速でそれぞれ運転させる際には、増速機と圧縮機とを繋ぐ増速機の出力軸が高速で回転する。また、高速で出力軸を回転させるためには、増速機の出力軸の軸径を小さくする必要がある。軸径が小さくなれば、増速機の出力軸を支持する軸受の径も小さくなる。軸受が小さくなることで、軸受の許容可能な周速の関係上、軸受が受ける単位面積当たりの荷重である面圧が大きくなってしまう。面圧が大きくなりすぎると、軸受で許容可能な面圧に限りがあるため、高速で回転する軸を安定して支持することが難しくなってしまう。このように、一つの駆動機で複数の圧縮機を安定して高速運転させることが難しい。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、一つに駆動機で複数の圧縮機を安定して高速運転させることが可能な圧縮機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る圧縮機システムは、軸線を中心に回転する駆動軸を有して回転駆動される駆動部と、ガスを圧縮する複数の圧縮機と、前記駆動軸の回転を増速させて複数の前記圧縮機に伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記駆動軸とともに回転する主軸と、前記主軸に固定された主歯車と、前記主軸を囲むように配置されて、前記主軸の回転を対応する一つの前記圧縮機にそれぞれ伝達する複数の歯車機構を備え、前記歯車機構は、前記主歯車に噛み合う副歯車と、前記副歯車が固定されて前記副歯車とともに第一中心線を中心として回転し、柱状をなしている副軸と、前記副軸を囲むように周方向に互いには離れて配置されて、前記副軸とともに回転する複数の第一歯車と、前記第一歯車に噛み合う出力歯車と、前記第一中心線の延びる方向で前記副軸と離れて配置され、前記出力歯車が固定されて前記圧縮機に接続され、前記第一中心線を中心として回転する出力軸と、前記副軸を回転可能に支持する第一軸受と、前記出力軸を回転可能に支持する第二軸受と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の圧縮機システムによれば、一つに駆動機で複数の圧縮機を安定して高速運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る圧縮機システムの概略構成を示す模式図である。
図2】第一実施形態の遊星歯車機構を示す圧縮機システムの要部拡大図である。
図3図1のA-A矢視断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る圧縮機システムの概略構成を示す模式図である。
図5図4のB-B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示による圧縮機システムを実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0010】
(圧縮機システムの構成)
圧縮機システム1は、一つの駆動機2で複数の圧縮機3を高速運転させる。圧縮機システム1では、駆動機2に対して複数の圧縮機3が同じサイドに並んでおり、一つの駆動機2に対して複数の圧縮機3が並列に繋がれている。図1に示すように、本実施形態の圧縮機システム1は、駆動機2と、複数の圧縮機3と、伝達機構4と、を備えている。本実施形態の圧縮機システム1では、一つの駆動機2のみが配置されている。
【0011】
駆動機2は、圧縮機3を駆動させるための動力を発生させるように回転駆動される。駆動機2は、軸線Oを中心に回転する駆動軸21を有している。駆動軸21は、一つのみ配置されている。駆動軸21は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。本実施形態の駆動機2は、駆動軸21を駆動させるモータである。なお、駆動機2としては、圧縮機3を駆動させるための動力を発生させることができればよく、モータ以外に蒸気タービン等を採用することができる。
【0012】
圧縮機3は、作動流体としてガスを圧縮する。圧縮機3は、それぞれ内部に配置されたインペラ(不図示)を用いて分子量10以下のガスを圧縮する。本実施形態の圧縮機3は、水素ガスを圧縮する一軸多段遠心圧縮機である。本実施形態の圧縮機3として、第一圧縮機31、第二圧縮機32、及び第三圧縮機(不図示)の三つを有している。第一圧縮機31、第二圧縮機32、及び第三圧縮機は、配管(不図示)を介して順に接続されている。圧縮機システム1では、圧縮すべきガスが、第一圧縮機31、第二圧縮機32、及び第三圧縮機の順に導入されて順次圧縮される。ガスは、第三圧縮機において圧縮された後、圧縮機システム1の外部の供給先に供給される。なお、複数の圧縮機3は、互いに繋がるよう順に接続されるように配置されていることに限定されるものではない。複数の圧縮機3は、互いに切り離されて独立して運転可能なように、並列に配置されていてもよい。
【0013】
(伝達機構の構成)
伝達機構4は、駆動軸21の回転を増速させて複数の圧縮機3に伝達する。伝達機構4は、一つの駆動軸21と、複数の圧縮機3とを接続している。伝達機構4は、圧縮機3の定格運転時に、後述する太陽軸58を10000回転以上100000回転以内程度の周速まで増速させて回転させる。伝達機構4は、ケーシング40と、主軸41と、主歯車42と、主軸軸受43と、複数の遊星歯車機構(歯車機構)5と、を有している。
【0014】
ケーシング40は、伝達機構4における外装を構成している。ケーシング40は、主軸41と、主歯車42と、主軸軸受43と、複数の遊星歯車機構5とを内部に収容している。
【0015】
主軸41は、駆動軸21とともに回転する。主軸41は、主歯車42を介して、駆動軸21の回転を複数の遊星歯車機構5に伝達する。主軸41は、ケーシング40の外部で駆動軸21の端部と接続されている。主軸41は、駆動軸21によって軸線Oまわりに回転駆動される。主軸41は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。つまり、主軸41は、駆動軸21と同軸となるように配置されている。主軸41は、先端がケーシング40内に配置されるようにケーシング40を貫通している。
【0016】
主歯車42は、ケーシング40内で主軸41に固定されている。主歯車42は、軸線Oを中心とする円板状に形成された外歯車である。本実施形態の主歯車42は、伝達機構4で使用される歯車の中でも最も外径が大きい。なお、主歯車42は、伝達機構4で使用される歯車の中でも最も外径が大きい形状であることに限定されるものではない。
【0017】
主軸軸受43は、ケーシング40に対して主軸41を回転可能に支持している。主軸軸受43は、ケーシング40の内部に固定されている。本実施形態の主軸軸受43は、ジャーナル軸受である。主軸軸受43は、主歯車42を挟むように、主軸41に対して一対配置されている。
【0018】
(遊星歯車機の構成)
複数の遊星歯車機構5は、主軸41を囲むようにケーシング40の内部に配置されている歯車機構である。各遊星歯車機構5は、対応する一つの圧縮機3と一対一の関係で接続されている。各遊星歯車機構5は、主軸41の回転を対応する一つの圧縮機3に伝達する。本実施形態では、第一圧縮機31に接続された第一遊星歯車機構5A、第二圧縮機32に接続された第二遊星歯車機構5B、及び第三圧縮機に接続された第三遊星歯車機構5Cの三つが、図3に示すように、ケーシング40内に均等に離れて配置されている。本実施形態では、第一遊星歯車機構5A、第二遊星歯車機構5B、及び第三遊星歯車機構5Cは、同じ構成となされている。図2に示すように、本実施形態における各遊星歯車機構5は、副軸51と、副歯車52と、複数の遊星歯車(第一歯車)53と、複数の第一歯車軸54と、歯車支持部55と、内歯車56と、太陽歯車(出力歯車)57と、太陽軸(出力軸)58と、第一軸受61と、第二軸受62とを有している。
【0019】
副軸51は、主軸41の回転が伝達され、主軸41とともに回転する。副軸51は、軸線Oと平行に延びる第一中心線O1を中心とする円柱状に形成されている。副軸51は、主軸41に対して、主軸41の径方向の外側に離れた位置に配置されている。副軸51は、主軸41と平行に延びている。副軸51は、主軸41が回転することで、第一中心線O1を中心に回転する。
【0020】
副歯車52は、主歯車42と噛み合っている。副歯車52は、副軸51に固定されている。副歯車52は、第一中心線O1を中心とする円板状に形成された外歯車である。本実施形態の副歯車52は、主歯車42よりも外径が小さい。なお、副歯車52は、主歯車42よりも外径が小さいことに限定されるものではない。例えば、副歯車52は、主歯車42と同じ径であってもよい。
【0021】
複数の遊星歯車53は、副軸51の回転が伝達され、副軸51とともに回転する歯車機構における第一歯車である。複数の遊星歯車53は、内歯車56を介して副軸51の回転が伝達され、副軸51の回転とともに回転する。複数の遊星歯車53は、副軸51に対して、副軸51の径方向の外側に配置されている。複数の遊星歯車53は、図3に示すように、太陽軸58の周方向に互いに間隔をあけて配置されている。本実施形態では、三つの遊星歯車53が周方向に均等に離れて配置されている。なお、第一歯車である遊星歯車53の数は、三つに限定されるものではなく二つ以上であればよく、四つ以上配置されていてもよい。その際、遊星歯車53の数は、三つ以上が均等に離れて配置されることが好ましい。各遊星歯車53は、第二中心線O2を中心とする円板状に形成された外歯車である。複数の遊星歯車53は、公転せずに、自身の中心線である第二中心線O2を中心として自転のみする。
【0022】
図2に示すように、第一歯車軸54は、遊星歯車53とともに回転する遊星歯車軸である。第一歯車軸54は、軸線O及び第一中心線O1と平行に延びる第二中心線O2を中心とする円柱状に形成されている。第一歯車軸54は、副軸51に対して、副軸51の径方向の外側に離れた位置に配置されている。第一歯車軸54は、主軸41及び副軸51と平行に延びている。第一歯車軸54は、第二中心線O2を中心として自転可能に遊星歯車53を支持する。
【0023】
歯車支持部55は、複数の遊星歯車53を自転可能に支持する。本実施形態の歯車支持部55は、第一歯車支持部55Aと、第二歯車支持部55Bとを有している。具体的には、第一歯車支持部55A及び第二歯車支持部55Bは、第二中心線O2を中心として回転可能に複数の第一歯車軸54の両端を支持している遊星キャリアである。第一歯車支持部55A及び第二歯車支持部55Bは、複数の第一歯車軸54が移動しないように、複数の第一歯車軸54の相互の位置を維持している。第一歯車支持部55Aは、ケーシング40に対して移動不能な状態で固定されている。第二歯車支持部55Bは、ケーシング40に対して固定されていない。
【0024】
内歯車56は、副軸51の端部に固定されている。内歯車56は、第一中心線O1を中心として環状に内側に向かって複数の歯が並び、複数の遊星歯車53と噛み合っている。本実施形態の内歯車56は、第一中心線O1を中心とする有底円筒状に形成されている。図3に示すように、内歯車56は、内部に収容された複数の遊星歯車53に対して外側から噛み合っている。内歯車56は、副軸51とともに回転することで、内部に配置された複数の遊星歯車53に対して副軸51の回転を伝達する。なお、内歯車56は、歯が内側に形成された筒状の部材と、副軸51に固定される部材とが別の部材で形成されていてもよい。したがって、内歯車56は、副軸51に固定される部材に複数の孔が形成されたような構造であってもよい。また、内歯車56は、副軸51に固定される部材が複数の部材に分かれたストラッド形状であってもよい。
【0025】
太陽歯車57は、複数の遊星歯車53に対して内側で噛み合っている出力歯車である。太陽歯車57は、第一中心線O1を中心とする円板状に形成された外歯車である。太陽歯車57は、複数の遊星歯車53よりも外径が小さい。なお、太陽歯車57は、円板状であることに限定されるものではなく、円筒状であってもよい。つまり、太陽歯車57の厚みは何ら限定されるものではない。また、太陽歯車57は、複数の遊星歯車53よりも外径が小さいことに限定されるものではない。したがって、太陽歯車57の大きさ、複数の遊星歯車53と同じ又は大きく形成されていてもよい。
【0026】
図2に示すように、太陽軸58は、その一方の端部(駆動機2に近い端部)に太陽歯車57が固定されている出力軸である。太陽軸58は、その他方の端部(駆動機2に近い端部と反対側の端部)に圧縮機3の回転軸に接続されている。太陽軸58は、遊星歯車53の回転が伝達された太陽歯車57とともに、第一中心線O1を中心として回転する。太陽軸58は、第一中心線O1を中心とする円柱状に形成されている。太陽軸58の軸線は、副軸51の第一中心線O1と一致している。つまり、太陽軸58は、駆動軸21に対して平行かつ径方向の外側にずれた位置となるように配置されている。図1に示すように、太陽軸58は、先端(一方の端部)がケーシング40内に配置されるように、ケーシング40を貫通している。なお、太陽軸58は、先端がケーシング40内に配置されるように、ケーシング40を貫通した構造に限定されるものではない。太陽軸58は、継手を用いる場合には、ケーシング40内に収容されていればよく、ケーシング40を貫通した構造でなくてもよい。
【0027】
図1及び図2に示すように、第一軸受61は、副軸51をケーシング40に対して回転可能に支持している。第一軸受61は、ケーシング40の内部に固定されている。本実施形態の第一軸受61は、ジャーナル軸受である。第一軸受61は、ジャーナル軸受であれば、主軸軸受43と同じ種類及び大きさの軸受であってもよく、異なる種類及び大きさの軸受であってもよい。したがって、第一軸受61は、転がり軸受やすべり軸受であってもよい。第一軸受61がすべり軸受の場合には、例えば、周方向に分割されていない筒状のスリーブタイプの軸受であってもよい。また、第一軸受61がすべり軸受の場合には、例えば、周方向に分割された複数のパッドを有するティルティングパッド軸受であってもよい。第一軸受61は、副歯車52を挟むように、副軸51に対して一対配置されている。
【0028】
第二軸受62は、太陽軸58をケーシング40に対して回転可能に支持している。第二軸受62は、第一歯車支持部55Aに固定されている。本実施形態の第二軸受62は、ティルティングパッド軸受である。第二軸受62は、太陽歯車57に対して圧縮機3に近い位置に配置されている。第二軸受62は、ケーシング40に対して移動不能な状態とされていればよく、第一歯車支持部55Aに固定された構造に限定されるものではない。例えば、第二軸受62は、ケーシング40に直接固定されていてもよい。また、第二軸受62は、太陽軸58の振動を減衰させるようなダンピング機能が付加された軸受であってもよい。
【0029】
(作用効果)
上記構成の圧縮機システム1では、駆動軸21の回転が、伝達機構4を介して圧縮機3に増速されて伝達されている。伝達機構4では、駆動軸21が回転することで、駆動軸21に接続された主軸41が回転する。その結果、主軸41に固定された主歯車42が回転する。主歯車42の回転によって、主歯車42と噛み合う副歯車52が回転し、主軸41よりも回転数が大きい状態で副軸51が回転する。副軸51が回転することで、副軸51に接続された内歯車56が回転する。内歯車56が回転することで、三つの遊星歯車53が回転し、三つの遊星歯車53と噛み合う太陽歯車57が回転する。その結果、太陽歯車57が固定された太陽軸58が、副軸51よりも回転数が大きい状態で回転する。このように、駆動軸21の回転は、主軸41、主歯車42、副歯車52、副軸51、内歯車56、三つの遊星歯車53、太陽歯車57、太陽軸58の順に回転が伝達される。太陽軸58が回転することで、太陽軸58に接続された圧縮機3に回転が伝達される。
【0030】
本実施形態の圧縮機システム1では、駆動機2から圧縮機3に対して回転が伝達される途中で歯車機構である遊星歯車機構5が介在されている。つまり、副軸51は、圧縮機3と直接繋がれているわけではなく、遊星歯車機構5を介して圧縮機3と繋がれている。そのため、圧縮機3を高速運転させる場合でも、太陽軸58を高速で回転させることとなり、副軸51を高速で回転させる必要が無い。つまり、副軸51を太陽軸58に比べて低速で回転させることができる。その結果、副軸51の軸径を小さくする必要が無くなる。したがって、副軸51を支持する第一軸受61を小さくする必要が無くなり、第一軸受61の受ける面圧を小さくすることができる。これにより、第一軸受61としてジャーナル軸受の種類を問わず様々な軸受を使用できる。したがって、第一軸受61に対して設計上の自由度を確保したうえで、副軸51を安定して支持できる。さらに、遊星歯車機構5では、均等に離れて配置された三つの遊星歯車53から中心に配置された太陽歯車57に伝わる荷重は、三つの遊星歯車53のそれぞれから働く荷重によって互いに相殺されて限りなく小さくなる。その結果、太陽歯車57が固定された太陽軸58には遊星歯車53による荷重がほとんど作用しない。これにより、太陽軸58を高速で回転させても、太陽軸58から第二軸受62に作用する面圧を抑えることができる。このように伝達機構4に配置された軸受に作用する面圧が小さくできる。そのため、圧縮機3を高速運転させた場合であっても、第二軸受62への影響が小さくなり、第二軸受62の小型化を図ることができる。そして、このような遊星歯車機構5を複数有することで、軸受への影響を低減させて、複数の圧縮機3を一台の駆動機2で安定して高速運転させることができる。
【0031】
また、ティルティングパッド軸受である第二軸受62によって太陽軸58が支持されている。つまり、面圧が非常に小さくとも軸を支持可能なティルティングパッド軸受で太陽軸58が支持される。その結果、複数の遊星歯車53によって太陽軸58から第二軸受62に作用する面圧を抑えた状態でも、高速で回転することで不安定振動が生じやすい太陽軸58を、第二軸受62で安定して支持することができる。
【0032】
また、圧縮機3は、分子量10以下の水素ガスを圧縮している。水素ガスのよう分子量の小さいガスを圧縮する場合、多数のインペラによって多段階で徐々に圧縮しなければ、所望の圧力まで圧縮することができないことが多い。つまり、分子量の小さいガスを圧縮する場合には、多段圧縮機であっても一つだけでは足りないため場合もあるため、複数の圧縮機3を使用する必要がある。一方で、複数の圧縮機3を駆動させるために、各圧縮機3に駆動機2や増速機を設置すると、設置コストが増加してしまう。また、一つの駆動機2に増速機を介して複数の圧縮機3を直列に接続して複数の圧縮機3を高速運転すると、増速機の出力軸である太陽軸58に大きな負荷がかかってしまう。その結果、太陽軸58を支持にする軸受や太陽軸58自体の強度を確保する必要が生じ、設置コストが増加してしまう。これらに対し、本願のように複数の遊星歯車機構5を有する伝達機構4を介して一つの駆動機2の回転を複数の圧縮機3に増速して伝達することで、一つの駆動機2に高速運転する複数の圧縮機3に並列に接続することができる。その結果、増速機である複数の伝達機構4の各太陽軸58への負荷が抑えられる。また、太陽軸58への負荷が抑えられることで、強度上、太陽軸58自体を細くすることができ、より高速回転に適した構造とすることができる。
【0033】
また、複数の遊星歯車53は、副軸51に固定された内歯車56と噛み合っている。これにより、副軸51の回転を簡易な構成で遊星歯車53に伝達することができる。
【0034】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る圧縮機システムの第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0035】
(遊星歯車機構の構成)
図4及び図5に示すように、第二実施形態の圧縮機システム10では、歯車機構の構造が第一実施形態と異なっている。第二実施形態の歯車機構50は、内歯車56を有していない。歯車機構50は、第二歯車72と、第二副歯車82とを有している。
【0036】
第二歯車72は、遊星歯車53を第一歯車71と称した場合に、第一歯車71とは異なる歯車である。第二歯車72は、第一歯車71に対して、離れた位置で第一歯車軸54に固定されている。第二歯車72は、第一歯車71に対して駆動機2に近い位置に配置されている。第二歯車72は、第二中心線O2を中心とする円板状に形成された外歯車である。第二歯車72は、第一歯車71よりも外径が小さい。なお、第二歯車72は、第一歯車71よりも外径が小さいことに限定されるものではない。例えば、第二歯車72は、第一歯車71よりも外径が大きくてもよく、同じであってもよい。第二歯車72は、一つの第一歯車71に対して一つが対応して配置されるように、複数配置されている。複数の第二歯車72は、第二中心線O2を中心として自転する。
【0037】
第二副歯車82は、副歯車52を第一副歯車81と称した場合に、第一副歯車81とは異なる歯車である。第二副歯車82は、第一副歯車81に対して、離れた位置で副軸51の端部に固定されている。第二副歯車82は、第一副歯車81に対して圧縮機3に近い位置に配置されている。第二副歯車82は、第二歯車72と噛み合っている。第二副歯車82は、第一中心線O1を中心とする円板状に形成された外歯車である。第二副歯車82は、第一副歯車81と同じ外径とされている。なお、第二副歯車82は、第一副歯車81と同じ外径であることに限定されるものではない。例えば、第二副歯車82は、第一副歯車81よりも外径が大きくてもよく、小さくてもよい。第二副歯車82は、一つの第一副歯車81に対して一つが対応して配置されている。
【0038】
(作用効果)
径方向の外側から遊星歯車53と噛み合う歯車である内歯車56は、遊星歯車53を径方向の外側から囲むように配置される。そのため、内歯車56は、高速で回転した場合のように大きな遠心力の影響を受けると、径方向の外側に広がるような力を受ける。径方向の外側に広がるような力を受けて内歯車56が変形すると、遊星歯車53へ回転を安定して伝達しづらくなる。一方で、第二実施形態の圧縮機システム10では、第一実施形態のように遊星歯車53と噛み合う内歯車56が存在していない。具体的には、第二実施形態の歯車機構50では、副軸51の回転は、第二副歯車82を介して第二歯車72に伝わる。そして、第二歯車72が回転することで、第一歯車軸54が回転して第一歯車71が回転する。
【0039】
このように第一歯車71や第二歯車72に対して、径方向の外側から噛み合う歯車を介在させずに、副軸51の回転を太陽軸58まで伝達している。その結果、各歯車が高速で回転しても、その遠心力の影響を受けづらくなる。したがって、歯車機構50をより高速化に対応させることができる。これにより、複数の圧縮機3を一台の駆動機2でより一層安定して高速運転させることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0041】
なお、本実施形態では、太陽軸58を10000回転以上の周速まで増速させて高速で複数の圧縮機3を運転させているが、高速運転するのであれば、複数の圧縮機3の回転数は異なっていてもよい。つまり、第一圧縮機31、第二圧縮機32、及び第三圧縮機は、それぞれ異なる回転数で運転されてもよい。
【0042】
また、伝達機構4に配置される遊星歯車機構5及び歯車機構50の数は、本実施形態のように三つであることに限定されるものではない。遊星歯車機構5及び歯車機構50は、一つの伝達機構4において二つ以上配置されていればよい。さらに、複数の遊星歯車機構5及び歯車機構50は、同じ構成であることに限定されるものではない。例えば、複数の歯車機構は、それぞれ異なるギア比で構成されていてもよい。また、複数の歯車機構は、一部が第一実施形態のように内歯車56を有し、一部が第二実施形態のように第一歯車71や第二歯車72を有していてもよい。
【0043】
<付記>
実施形態に記載の圧縮機システム1は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)第1の態様に係る圧縮機システム1は、軸線Oを中心に回転する駆動軸21を有して回転駆動される駆動部と、ガスを圧縮する複数の圧縮機3と、前記駆動軸21の回転を増速させて複数の前記圧縮機3に伝達する伝達機構4と、を備え、前記伝達機構4は、前記駆動軸21とともに回転する主軸41と、前記主軸41に固定された主歯車42と、前記主軸41を囲むように配置されて、前記主軸41の回転を対応する一つの前記圧縮機3にそれぞれ伝達する複数の歯車機構を備え、前記歯車機構は、前記主歯車42に噛み合う副歯車52と、前記副歯車52が固定されて前記副歯車52とともに回転する副軸51と、前記副軸51を囲むように周方向に互いには離れて配置されて、前記副軸51とともに回転する複数の第一歯車と、前記第一歯車に噛み合う出力歯車と、前記出力歯車が固定されて前記圧縮機3に接続された出力軸と、前記副軸51を回転可能に支持する第一軸受61と、前記出力軸を回転可能に支持する第二軸受62と、を有する。
【0045】
この圧縮機システム1では、駆動機2から圧縮機3に対して回転が伝達される途中で歯車機構が介在されている。つまり、副軸51は、圧縮機3と直接繋がれているわけではなく、歯車機構を介して圧縮機3と繋がれている。そのため、圧縮機3を高速運転させる場合でも、出力軸を高速で回転させることとなり、副軸51を高速で回転させる必要が無い。つまり、副軸51を出力軸に比べて低速で回転させることができる。その結果、副軸51の軸径を小さくする必要が無くなる。その結果、軸受の種類を問わず、副軸51を安定して支持できる。したがって、第一軸受61に対して設計上の自由度を確保したうえで、副軸51を安定して支持できる。さらに、歯車機構では、複数の第一歯車から中心に配置された出力歯車57に伝わる荷重は、複数の第一歯車のそれぞれから働く荷重によって互いに相殺されて限りなく小さくなる。その結果、出力歯車が固定された出力軸には第一歯車による荷重がほとんどかからない。これにより、出力軸を高速で回転させても、出力軸から第二軸受62に作用する面圧を抑えることができる。このように伝達機構4に配置された軸受が作用する面圧が小さくできるため、圧縮機3を高速で回転させて場合であっても、第二軸受62への影響が小さくなる。そして、このような遊星歯車機構5を複数有することで、軸受への影響を低減させて、複数の圧縮機3を一台の駆動機2で安定して高速運転させることができる。
【0046】
(2)第2の態様に係る圧縮機システム1は、(1)の圧縮機システム1であって、前記第二軸受62はティルティングパッド軸受であってもよい。
【0047】
これにより、面圧が非常に小さくとも軸を支持可能なティルティングパッド軸受で出力軸が支持される。その結果、複数の第一歯車によって出力軸から第二軸受62に作用する面圧を抑えた状態でも、高速で回転することで不安定振動が生じやすい出力軸を、第二軸受62で安定して支持することができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る圧縮機システム1は、(1)又は(2)の圧縮機システム1であって、前記圧縮機3は、分子量10以下の前記ガスを圧縮してもよい。
【0049】
分子量の小さいガスを圧縮する場合には、一つの圧縮機3だけでは足りない場合がある。この場合、複数の圧縮機3を使用する必要があり、設置コストが増加してしまう。これに対し、複数の歯車機構を有する伝達機構4を介して一つの駆動機2の回転を複数の圧縮機3に増速して伝達することで、一つの駆動機2に高速運転する複数の圧縮機3に並列に接続することができる。その結果、並列に配置された増速機である複数の伝達機構4の各出力軸への負荷が抑えられる。また、出力軸への負荷が抑えられることで、出力軸自体を細くすることができ、より高速回転に適した構造とすることができる。
【0050】
(4)第4の態様に係る圧縮機システム1は、(1)から(3)の何れか一つの圧縮機システム1であって、前記歯車機構は、前記第一歯車として遊星歯車を有する遊星歯車機構であり、前記遊星歯車機構5は、前記副軸51に固定され、前記出力軸の軸線を中心として環状に形成され、複数の前記遊星歯車53と噛み合う内歯車56を有していてもよい。
【0051】
これにより、副軸51の回転を簡易な構成で遊星歯車53に伝達することができる。
【0052】
(5)第5の態様に係る圧縮機システム10は、(1)から(4)の何れか一つの圧縮機システム1であって、前記歯車機構50は、前記第一歯車71が固定されて前記第一歯車71自身の中心線を中心として自転可能とされた第一歯車軸54と、前記第一歯車71に対して、離れた位置で前記第一歯車軸54に固定された第二歯車72と、前記副歯車52に対して、離れた位置で前記副軸51に固定されて前記第二歯車72と噛み合う第二副歯車82とを有していてもよい。
【0053】
これにより、第一歯車71や第二歯車72に対して、径方向の外側から噛み合う歯車を介在させずに、副軸51の回転を出力軸に伝達できる。その結果、各歯車が高速で回転しても、その遠心力の影響を受けづらくなる。したがって、歯車機構50をより高速化に対応させることができる。これにより、複数の圧縮機3を一台の駆動機2でより一層安定して高速運転させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、10 圧縮機システム
O 軸線
2 駆動機
21 駆動軸
3 圧縮機
31 第一圧縮機
32 第二圧縮機
4 伝達機構
40 ケーシング
41 主軸
42 主歯車
43 主軸軸受
5 遊星歯車機構(歯車機構)
50 歯車機構
51 副軸
52 副歯車
O1 第一中心線
53 遊星歯車(第一歯車)
O2 第二中心線
54 遊星歯車軸(第一歯車軸)
55 歯車支持部
55A 第一歯車支持部
55B 第二歯車支持部
56 内歯車
57 太陽歯車(出力歯車)
58 太陽軸(出力軸)
61 第一軸受
62 第二軸受
5A 第一遊星歯車機構
5B 第二遊星歯車機構
5C 第三遊星歯車機構
71 第一歯車
72 第二歯車
81 第一副歯車
82 第二副歯車
図1
図2
図3
図4
図5