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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】構造部材の接続部構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241025BHJP
   E04B 1/78 20060101ALI20241025BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241025BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
E04B1/58 506T
E04B1/78 A
E04B1/94 K
E04B1/58 508T
E04B1/30 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021059739
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156180
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】エキ田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼林 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】萩生田 秀之
(72)【発明者】
【氏名】八神 紗良
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029092(JP,A)
【文献】特開2014-029093(JP,A)
【文献】実開昭57-089703(JP,U)
【文献】実開昭57-080506(JP,U)
【文献】特開2019-190206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/62 - 1/99
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の荷重支持部を備えた第1の構造部材と、
第2の荷重支持部を備えた第2の構造部材と、
第1の荷重支持部に固定された載置部と、
載置部の上に載置されて載置部に固定されていない伝熱抑制部材とを備え、
第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、
第2の荷重支持部が伝熱抑制部材の上に載置されて伝熱抑制部材に固定されていないことを特徴とする構造部材の接続部構造。
【請求項2】
載置部の載置面と当該載置面に載置される伝熱抑制部材の面とが凹凸係合され、かつ、伝熱抑制部材の面と当該面に載置される第2の荷重支持部の面とが凹凸係合されたことを特徴とする請求項1に記載の構造部材の接続部構造。
【請求項3】
第1の構造部材は、第1の荷重支持部としての金属質柱又は金属質梁と、当該金属質柱又は金属質梁の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部とを備えて構成され、
第2の構造部材は、第2の荷重支持部としての木質梁と、当該木質梁の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部とを備えて構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造部材の接続部構造。
【請求項4】
金属質柱又は金属質梁の表面に設けられた第1の耐火被覆部と当該第1の耐火被覆部と対向するように木質梁の梁端面に設けられた第2の耐火被覆部との間に空間が形成されたことを特徴とする請求項3に記載の構造部材の接続部構造。
【請求項5】
第2の耐火被覆部が石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成されたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の構造部材の接続部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の構造部材の第1の荷重支持部と第2の構造部材の第2の荷重支持部とを接合する構造部材の接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製の第1構造部材と、荷重を支持する木製の心材と該心材の周囲を取り囲む燃え止まり層とを備えた第2構造部材と、第1構造部材と第2構造部材とを接合し第1構造部材から心材へ及び心材から第1構造部材へ力を伝えると共に、第1構造部材から心材への熱の伝達を抑制するコンクリートブロック等の遮蔽部材とを有した構造部材の接合構造が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5990424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された接合構造においては、例えばコンクリートブロック等の遮蔽部材を第2構造部材の心材の側面に固定する構造である。
この場合、例えばアンカーボルトを埋設したコンクリートブロックを用いて、心材に形成された貫通孔にアンカーボルトを通して当該アンカーボルトにナットを締結することで、当該コンクリートブロックを第2構造部材の心材の側面に固定しなければならない。
しかしながら、このように重量物であるコンクリートブロックのアンカーボルトを心材に形成された貫通孔に通して固定する作業は、重量物であるコンクリートブロックを支えながらの作業となり、大変な作業となるため、施工性の面での課題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みて、第1の構造部材の第1の荷重支持部と第2の構造部材の第2の荷重支持部との間の熱伝達を抑制するように構成される構造部材の接続部構造において、施工性を向上させた構造部材の接続部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る構造部材の接続部構造は、第1の荷重支持部を備えた第1の構造部材と、第2の荷重支持部を備えた第2の構造部材と、第1の荷重支持部に固定された載置部と、載置部の上に載置されて載置部に固定されていない伝熱抑制部材とを備え、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、第2の荷重支持部が伝熱抑制部材の上に載置されて伝熱抑制部材に固定されていないことを特徴とするので、第1の構造部材の第1の荷重支持部と第2の構造部材の第2の荷重支持部との間の熱伝達を抑制するように構成される構造部材の接続部構造において、施工性を向上させた構造部材の接続部構造を提供できる。
また、載置部の載置面と当該載置面に載置される伝熱抑制部材の面とが凹凸係合され、かつ、伝熱抑制部材の面と当該面に載置される第2の荷重支持部の面とが凹凸係合されたことを特徴とするので、第1の荷重支持部から第2の荷重支持部に力を伝達でき、かつ、第2の荷重支持部から第1の荷重支持部に力を伝達できる構造部材の接続部構造を容易に提供できる。
第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であることを特徴とするので、第1の構造部材の第1の荷重支持部と第2の構造部材の第2の荷重支持部との間の熱伝達を抑制できる。
第1の構造部材は、第1の荷重支持部としての金属質柱又は金属質梁と、当該金属質柱又は金属質梁の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部とを備えて構成され、第2の構造部材は、第2の荷重支持部としての木質梁と、当該木質梁の表面を覆うように設けられた第2の耐火被覆部とを備えて構成されたことを特徴とするので、金属質柱又は金属質梁と木質梁との間の熱伝達を抑制できるとともに、金属質柱又は金属質梁及び木質梁の耐火性能を向上できる。
また、金属質柱又は金属質梁の表面に設けられた第1の耐火被覆部と当該第1の耐火被覆部と対向するように木質梁の梁端面に設けられた第2の耐火被覆部との間に空間が形成されたことを特徴とするので、金属質柱又は金属質梁から木質梁への熱の伝達、及び、木質梁から金属質柱又は金属質梁への熱の伝達を、空間を介して、より効果的に抑制できるようになる。
さらに、第2の耐火被覆部が石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成されたことを特徴とするので、耐火性能、施工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の荷重支持部としての金属質柱と第2の荷重支持部としての木質梁との接続部構造を示す斜視図(実施形態1)。
図2】金属質柱と木質梁との接続部構造を示す横断面図(実施形態1)。
図3図2のA-A断面相当図(縦断面図)(実施形態1)。
図4】第1の荷重支持部としての金属質梁と木質梁との接続部構造を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のA-A断面相当図(実施形態2)。
図5】第1の荷重支持部としての金属質梁と木質梁との接続部構造を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のA-A断面相当図(実施形態3)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る構造部材の接続部構造は、図1乃至図3に示すように、第1の荷重支持部を備えた第1の構造部材1と、第2の荷重支持部を備えた第2の構造部材2と、第1の荷重支持部に固定された載置部3と、載置部3の上に載置された伝熱抑制部材4とを備え、第2の荷重支持部が伝熱抑制部材4の上に載置されたことによって、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが伝熱抑制部材4及び載置部3により接続された接続部構造である。
また、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であり、実施形態1に係る構造部材の接続部構造では、荷重を支持する第1の荷重支持部としての例えば断面ロ字状の鋼管柱等の中空の金属質柱10と荷重を支持する第2の荷重支持部としての例えば木質梁20とが伝熱抑制部材4及び載置部3により接続された接続部構造とした。
【0008】
第1の構造部材1は、第1の荷重支持部としての金属質柱10と、当該金属質柱10の表面を覆うように設けられた第1の耐火被覆部11とを備えた構成とした。
【0009】
第1の耐火被覆部11は、例えば金属質柱10の表面を覆うように設けられた石こうボード等の耐火板による耐火被覆層、あるいは、ロックウールとセメントとを混ぜ合わせた耐火被覆材を金属質柱10の表面に吹き付けて形成された耐火被覆層等により構成される。
尚、第1の耐火被覆部11を石こうボード等の耐火板による耐火被覆層で構成した場合には、第1の耐火被覆部11の表面には、表面仕上げ材を設けることが好ましいが、当該表面仕上げ材は設けなくても良い。
【0010】
第2の構造部材2は、第2の荷重支持部としての木質梁20と、当該木質梁20の表面に設けられた第2の耐火被覆部21とを備えた構成とした。
【0011】
木質梁20は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された梁である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0012】
木質梁20は、伝熱抑制部材4の上に載置される梁端部20eの下面に、1つ以上の凹部26が形成された構成となっている。
また、木質梁20は、梁の上面25から上方に突出するように、上階の床スラブFとの接合のための棒状の接合軸材6としての例えばラグスクリューボルトを備える。当該接合軸材6は、木質梁20の延長方向に沿って所定の間隔を隔てて複数設けられている。
そして、木質梁20の上面25の上には、上階の床スラブFが形成される。
【0013】
第2の耐火被覆部21は、木質梁20の両方の側面22,22と下面23と梁端面24とを覆う耐火被覆層により構成される。
当該第2の耐火被覆部21は、例えば一層以上の石こうボード等の耐火部材により構成すればよい。
当該第2の耐火被覆部21は、具体的には、例えば、石こうボードと石こうボードとの間に断熱性(耐火性)を有した板(以下、耐熱耐火パネルという)を設けた積層構造の耐火被覆層とした。即ち、木質梁20の互いに対向する両方の梁側面22,22、木質梁20の下面23、及び、木質梁20の梁端面24,24に、所定厚さの石こうボードを取付けた1層目の被覆層を形成するとともに、当該1層目の被覆層の表面に断熱耐火パネルを取付けた2層目の被覆層を形成し、当該2層目の被覆層の表面に所定厚さの石こうボードを取付けた3層目の被覆層を形成した耐火被覆構造、つまり、3層構造の耐火被覆層により構成された耐火被覆部とした。
尚、第2の耐火被覆部21の表面には、表面仕上げ材を設けることが好ましいが、表面仕上げ材は設けなくても良い。
また、第2の耐火被覆部21は、必ずしも3層構造である必要はなく、2層構造、単層構造、多層構造であってもかまわない。
即ち、第2の耐火被覆部21を、石こうボードを含む1層以上の耐火被覆層により構成したことにより、耐火性能、施工性を向上できる。
【0014】
載置部3及び伝熱抑制部材4は、金属質柱10から木質梁20に力を伝達するとともに、木質梁20から金属質柱10に力を伝達する材料により形成されている。
【0015】
また、伝熱抑制部材4は、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達を抑制するとともに、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を抑制する材料により形成されている。
【0016】
載置部3は、力を伝達する材料である、例えば、鋼等の金属で形成されて、溶接、又は、ボルト等の固定手段により金属質柱10の一側面12に固定されることによって、伝熱抑制部材4の載せ台として機能する板(プレート)により構成される。
尚、金属質柱10の一側面12とは、木質梁20の梁端面24と対向する面である。
載置部3は、例えば、図2図3に示すように、矩形状の板面を有した所定厚さの板により形成され、矩形の一側縁32(例えば一方の長辺側縁)と金属質柱10の一側面12とが固定手段により固定される。当該載置部3が金属質柱10の一側面12に固定された状態で当該載置部3の載置面30を形成する上面には1つ以上の凸部31が形成されている。
載置部3は、補強支持手段により支持された構成とすることが好ましい。
当該補強支持手段は、例えば、当該載置部3を下から支える鋼等の金属で形成された板状の支持体5により構成される。当該支持体5は、1つ以上設けられていれば良い。例えば、当該支持体5、金属質柱10の一側面12に固定された載置部3を形成する板の少なくとも幅方向(長手方向に沿った幅方向(木質梁20の梁幅方向に対応した幅方向))の両端側を下から支えることができるように、2つ設けるようにすればよい(尚、当該支持体5を1つだけ設ける場合は、載置部3を形成する板の幅方向の中央側を支持するような1つの支持体5を設ければよい)。
当該支持体5は、例えば図3に示すように、直角部50を有した台形状板、又は、直角三角形状板等の板により構成され、板の直角部50を介して互いに直交する辺縁のうちの一方の辺縁側が一方側固定部51として機能し、他方の辺縁側が他方側固定部52として機能するように構成される。そして、当該一方側固定部51と金属質柱10の一側面12とが固定手段により固定されるとともに、他方側固定部52と載置部3の下面34とが固定手段により固定される。当該支持体5が例えば台形状板により形成される場合、台形の下底により形成される一方側固定部51と金属質柱10の一側面12と固定され、かつ、台形の一方の脚により形成される他方側固定部52と載置部3の下面34とが固定される。
尚、固定手段としては、例えば、溶接、又は、ボルト等を用いればよい。
【0017】
伝熱抑制部材4は、力を伝達するとともに熱の伝達を抑制する材料である、例えばコンクリートにより形成されたコンクリートブロックにより構成される。
伝熱抑制部材4は、下面に、載置部3の載置面(上面)30に形成された凸部31と係合する1つ以上の凹部42が形成された構成となっている。
伝熱抑制部材4は、上面に、伝熱抑制部材4の上に載置される木質梁20の梁端部20eの下面に形成された凹部26と係合する1つ以上の凸部41が形成された構成となっている。
【0018】
尚、伝熱抑制部材4を構成するコンクリートブロックは、例えば直方体の一面により形成された上面に凸部41を備えるととともに、上面と対向する下面に凹部42を備えて、上面の大きさが、木質梁20の梁端部20eの下面の大きさに対応した大きさに形成された構成とすることが好ましい。
また、載置部3の載置面30は、伝熱抑制部材4を構成するコンクリートブロックの下面よりも大きい大きさに形成された構成とすることが好ましい。
【0019】
即ち、実施形態1に係る構造部材の接続部構造によれば、載置部3の載置面30に形成された凸部31と伝熱抑制部材4の下面に形成された凹部42とが係合状態となるように、伝熱抑制部材4の下面が載置部3の載置面30に載置され、かつ、伝熱抑制部材4の上面に形成された凸部41と木質梁20の梁端部20eの下面に形成された凹部26とが係合状態となるように、木質梁20の梁端部20eが伝熱抑制部材4の上面に載置されたことにより、載置部3及び伝熱抑制部材4が、金属質柱10から木質梁20にせん断力等の力を伝達するとともに、木質梁20から金属質柱10にせん断力等の力を伝達するように構成され、かつ、伝熱抑制部材4が、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達を抑制するとともに、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を抑制するように構成される。
【0020】
以上説明した構成の接続部構造の施工手順の一例について説明する。
まず、載置部3の一側縁32と金属質柱10の一側面12とを溶接等で接続することにより、載置部3を金属質柱10に固定する。
次に、支持体5の一方側固定部51と金属質柱10の一側面12とを溶接等で接続するとともに、支持体5の他方側固定部52と載置部3の下面34とを溶接等で接続する。
そして、載置部3の載置面30の凸部31,31…と伝熱抑制部材4の下面の凹部42,42…とが係合するように、載置部3の載置面30に伝熱抑制部材4を載置する。
さらに、複数の接合軸材6,6…が上面25から上方に突出するように作製された木質梁20の梁端部20eの下面の凹部26,26…と伝熱抑制部材4の上面の凸部41,41…とが係合するように、伝熱抑制部材4の上に木質梁20の梁端部20eを載置する。
次に、上階の床スラブFを形成するための図外のコンクリート打設用の型枠を設置して、当該型枠の上、及び、木質梁20の上にコンクリートを打設することにより、上階の床スラブFを形成する。
従って、木質梁20の上面25から上方に突出するように設けられた接合軸材6により、木質梁20と上階の床スラブFとが接合される。
そして、金属質柱10の露出した表面に第1の耐火被覆部11を形成するとともに、木質梁20の露出した表面(梁側面22,22、下面23、及び、梁端面24,24)に、第2の耐火被覆部21を形成する。
尚、上述した施工手順の順番は、あくまでも一例であり、施工手順は上述した順番でなくとも構わない。
例えば、載置部3及び支持体5を金属質柱10の一側面12に固定した後に、金属質柱10の表面に第1の耐火被覆部11を形成し、その後、載置部3の載置面30に伝熱抑制部材4を載置する。そして、木質梁20の表面に第2の耐火被覆部21が設けれて形成された第2の構造部材2の梁端部20eを伝熱抑制部材4の上に載置し、その後、上階の床スラブFを形成するようにしてもよい。
【0021】
以上により、伝熱抑制部材4及び載置部3が、第1の荷重支持部である金属質柱10から第2の荷重支持部である木質梁20に力を伝達するとともに、木質梁20から金属質柱10に力を伝達するように構成されるとともに、伝熱抑制部材4が、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達を抑制するとともに、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を抑制することができる金属質柱10と木質梁20との接続部構造が構成される。
【0022】
実施形態1に係る接続部構造によれば、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達を抑制するとともに、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を抑制する材料により形成された伝熱抑制部材4としてのコンクリートブロックを、金属質柱10に固定された載置部3の載置面30に載置し、かつ、木質梁20の梁端部20eを当該コンクリートブロックの上に載置した接続部構造とした。
即ち、実施形態1に係る接続部構造によれば、伝熱抑制部材4としてのコンクリートブロックを、金属質柱10に固定された載置部3の載置面30に載置するだけなので、特許文献1に開示された接合構造のように、重量物であるコンクリートブロックを支えながら金属質柱10に固定する作業を不要とでき、金属質柱10と木質梁20との間の熱伝達を抑制するように構成される接続部構造の施工を容易に行える。
また、木質梁20の梁端部20eをコンクリートブロックの上に載置するだけなので、施工を容易に行える。
即ち、金属質柱10から木質梁20にせん断力等の力を伝達できるとともに、木質梁20から金属質柱10にせん断力等の力を伝達でき、しかも、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達を抑制できるとともに、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を抑制できる構造部材の接続部構造を容易に提供できる。
つまり、実施形態1によれば、金属質柱10と木質梁20との間でせん断力等の力を伝達でき、かつ、金属質柱10と木質梁20との間の熱伝達を抑制するように構成される構造部材の接続部構造において、施工性を向上させた構造部材の接続部構造を提供できるようになった。
また、第1の耐火被覆部11を備えるので、金属質柱10の耐火性能を向上でき、また、第2の耐火被覆部21を備えるので、木質梁20の耐火性能を向上できる。
【0023】
また、図2図3に示すように、実施形態1に係る接続部構造においては、金属質柱10の一側面12に設けられた第1の耐火被覆部11と木質梁20の梁端面24に設けられた第2の耐火被覆部21との間に空間S1を設けた構成としたことにより、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達、及び、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を、空間S1を介して、より効果的に抑制できるようになる。
また、図2図3に示すように、実施形態1に係る接続部構造においては、金属質柱10の一側面12に設けられた第1の耐火被覆部11と伝熱抑制部材4との間に空間S2を設けた構成としたことにより、金属質柱10から木質梁20への熱の伝達、及び、木質梁20から金属質柱10への熱の伝達を、空間S2を介して、より効果的に抑制できるようになる。
尚、空間S1,空間S2は、必ずしも形成する必要はない。即ち、金属質柱10の一側面12に設けられた第1の耐火被覆部11と木質梁20の梁端面24に設けられた第2の耐火被覆部21とを接触させた構成としてもよいし、また、金属質柱10の一側面12に設けられた第1の耐火被覆部11と伝熱抑制部材4とを接触させた構成としてもよい。
【0024】
実施形態1では、第1の荷重支持部としての金属質柱10と第2の荷重支持部としての木質梁20との接続部構造を例示したが、後述する実施形態2や実施形態3のように、例えば金属質柱10に接合された第1の荷重支持部としての金属質梁7と第2の荷重支持部としての木質梁20とを接続する接続部構造においても、実施形態1と同様に構成できる。
尚、実施形態2を説明する図4、及び、実施形態3を説明する図5において、実施形態1の図1乃至図3に示した部分と同一又は相当部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0025】
実施形態2
実施形態2では、例えば、図4に示すように、金属質梁7と載置部3とを固定するとともに、金属質梁7の下に補強体8を設けて、載置部3を支持する1つ以上の支持体5を当該補強体8に固定した構成とした。
金属質梁7は、例えばウェブ7aの上下にフランジ7b,7cを備えたH形鋼を用い、補強体8は、例えばウェブ8aの上下にフランジ8b,8cを備えたH形鋼を用いた。
当該実施形態2では、金属質梁7の下側のフランジ7cの下面と補強体8の上側のフランジ8bの上面とが接触するように金属質梁7と補強体8とが固定手段を介して固定された構成とした。
そして、金属質梁7の下側のフランジ7cにおいて、補強体8の木質梁20側に位置される側の側縁7dと載置部3の一側縁32とが固定手段を介して固定されて、載置部3を構成する板の材軸と金属質梁7の下側のフランジ7cの材軸とが同一平面(例えば同一水平面)上に位置されるように構成される。
当該載置部3を支持する支持体5は、一方側固定部51が、補強体8の木質梁20側に位置される側の、上側のフランジ8bの下面、下側のフランジ8cの上面、これら下面及び上面に連続するウェブ8aの一方の面とに固定手段を介して固定される辺縁により形成され、かつ、他方側固定部52が、載置部3の下面34に固定手段を介して固定される辺縁により形成された構成のものを用いればよい。
尚、図4では、金属質梁7の下側のフランジ7cの側縁7dに固定された載置部3を形成する板の少なくとも幅方向の中央側を、1つの支持体5を用いて、下から支える構成を例示した。
この場合、支持体5の上方に位置される金属質梁7の木質梁20側の、上側のフランジ7bの下面、下側のフランジ7cの上面、これら下面及び上面に連続するウェブ7aの一方の面とに固定手段を介して固定される補強プレート71を設けることが好ましい。
また、支持体5の上方に位置される金属質梁7の木質梁20側とは反対側の、上側のフランジ7bの下面、下側のフランジ7cの上面、これら下面及び上面に連続するウェブ7aの他方の面とに固定手段を介して固定される補強プレート72を設けることが好ましい。
さらに、補強体8の木質梁20側とは反対側の、上側のフランジ8bの下面、下側のフランジ8cの上面、これら下面及び上面に連続するウェブ8aの他方の面とに固定手段を介して固定される補強プレート81を設けることが好ましい。
【0026】
実施形態3
図5に示すような、金属質柱10に接合された第1の荷重支持部としての金属質梁7と第2の荷重支持部としての木質梁20とを接続する接続部構造を構成してもよい。
当該実施形態3では、例えば、金属質梁7は、実施形態2と同様に、ウェブ7aの上下にフランジ7b,7cを備えたH形鋼を用い、図5に示すように、金属質梁7のウェブ7aの木質梁20側の一方の面と載置部3の一側縁32とが固定手段を介して固定され、かつ、当該載置部3を支持する1つ以上の支持体5を設けた構成とした。
また、金属質梁7のウェブ7aの木質梁20側とは反対側の他方の面と補強板35の一側縁とが固定手段を介して固定されている。
そして、載置部3を構成する板の材軸と補強板35の板の材軸とが同一平面(例えば同一水平面)上に位置されるように構成される。
支持体5は、一方側固定部51が、金属質梁7のウェブ7aの木質梁20側の一方の面及び当該一方の面と連続する下側のフランジ7cの上面に固定手段を介して固定される辺縁により形成され、かつ、他方側固定部52が、載置部3の下面34に固定手段を介して固定される辺縁により形成された構成のものを用いればよい。
尚、図5では、金属質梁7のウェブ7aに固定された載置部3を形成する板の少なくとも幅方向の中央側を、1つの支持体5を用いて、下から支える構成を例示した。
この場合、支持体5の上方に位置される金属質梁7の木質梁20側の、上側のフランジ7bの下面と当該下面に連続するウェブ7aの一方の面と当該一方の面に連続する載置部3の上面とに固定手段を介して固定される補強プレート73を設けることが好ましい。
また、支持体5の上方に位置される金属質梁7の木質梁20側とは反対側の、上側のフランジ7bの下面と当該下面に連続するウェブ7aの他方の面と当該他方の面に連続する補強板35の上面とに固定手段を介して固定される補強プレート74を設けることが好ましい。
また、金属質梁7のウェブ7aの木質梁20側とは反対側の他方の面と当該他方の面と連続する補強板35の下面及び下側のフランジ7cの上面とに、固定手段を介して固定される補強プレート75を設けることが好ましい。
【0027】
実施形態2においては、支持体5、補強プレート71,72,81を構成する板の材軸が同一平面(例えば同一垂直面)上に位置されるように構成されることが好ましい。
尚、補強プレート71,72,81は、設けることが好ましいが、必ずしも設けなくともよく、例えば、金属質梁7、補強体8の強度が十分である場合などは、設けなくともよい。
実施形態3においては、支持体5、補強プレート73,74,75を構成する板の材軸が同一平面(例えば同一垂直面)上に位置されるように構成されることが好ましい。
尚、補強板35、補強プレート73,74,75は、設けることが好ましいが、必ずしも設けなくともよく、例えば、金属質梁7の強度が十分である場合などは、設けなくともよい。
また、実施形態2,3において、固定手段としては、例えば溶接、又は、ボルト等を用いればよい。
以上説明した実施形態2,3に係る第1の荷重支持部としての金属質梁7と第2の荷重支持部としての木質梁20との接続部構造であっても、実施形態1と同様な効果が得られる。
【0028】
尚、載置部3の載置面30に凹部を形成して、当該凹部に係合させる凸部を伝熱抑制部材4の下面に形成した構成としてもよい。
また、伝熱抑制部材4の上面に凹部を形成して、当該凹部に係合させる凸部を木質梁20の梁端部20eの下面に形成した構成としてもよい。
即ち、本発明においては、載置部3の載置面30及び当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面のうちの一方に凹部を有するとともに、載置部3の載置面30及び当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面のうちの他方に凸部を有して、これら凹部と凸部とが係合状態となるように、伝熱抑制部材4の下面が載置部3の載置面30に載置された構成とし、かつ、伝熱抑制部材4の上面及び当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面のうちの一方に凹部を有するとともに、伝熱抑制部材4の上面及び当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面のうちの他方に凸部を有して、これら凹部と凸部とが係合状態となるように、木質梁20の梁端部20eの下面が伝熱抑制部材の上面に載置された構成とすればよい。
【0029】
本発明での構成要素である、凹部、及び、凸部の形成は、例えば、型枠を用いて形成したり、あるいは、切削加工等で形成すればよい。
また、載置部3の載置面30と当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面とを凹凸係合させる構成、伝熱抑制部材4の上面と当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面とを凹凸係合させる構成としては、載置部3の載置面30、当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面、伝熱抑制部材4の上面、当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面に、それぞれ、小さな凸凹を形成した構成としてもよい。
即ち、載置部3の載置面30、当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面、伝熱抑制部材4の上面、当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面を、それぞれ、小さな凸凹を有した粗面に形成することにより、載置部3の載置面30と当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面とを凹凸係合させ、かつ、伝熱抑制部材4の上面と当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面とを凹凸係合させる構成とすればよい。
【0030】
また、各実施形態においては、載置部3の載置面30と当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面とが凹凸係合し、かつ、伝熱抑制部材4の上面と当該上面に載置される木質梁20の梁端部20eの下面とが凹凸係合する構成を例示したが、当該凹凸係合の構成は無くてもよい。
即ち、凹凸を有しない載置部3の載置面30と伝熱抑制部材4の下面とが面接触するように、伝熱抑制部材4を載置面30に載置するとともに、凹凸を有しない伝熱抑制部材4の上面と木質梁20の梁端部20eの下面とが面接触するように、木質梁20の梁端部20eを伝熱抑制部材4の上面に載置するだけの構成としてもよい。この場合でも、上階の床スラブFの荷重が木質梁20を介して伝熱抑制部材4及び載置部3に加わるため、載置面30と伝熱抑制部材4の下面との密着性、及び、伝熱抑制部材4の上面と木質梁20の梁端部20eの下面との密着性が維持されて、第1の荷重支持部としての金属質柱又は金属質梁と第2の荷重支持部としての木質梁とが伝熱抑制部材4及び載置部3により接続された状態となるからである。
【0031】
また、各実施形態では、第1の荷重支持部が金属質柱10又は金属質梁であり、第2の荷重支持部が木質梁20である場合を例にして説明したが、本発明の接続部構造は、第1の荷重支持部が木質柱又は木質梁であり、第2の荷重支持部が金属質梁である場合であっても適用可能である。
即ち、各実施形態では、第1の荷重支持部としての金属質柱10又は金属質梁に固定された載置部3と、当該載置部3の載置面30の上に載置された伝熱抑制部材4とを備え、第2の荷重支持部としての木質梁20が伝熱抑制部材4の上に載置された構成を例示したが、第1の荷重支持部としての木質柱又は木質梁に固定された載置部と、載置部の載置面の上に載置された伝熱抑制部材とを備え、第2の荷重支持部としての金属質梁が伝熱抑制部材の上に載置された構成としてもよい。
【0032】
尚、上記では、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部のうちの、一方が金属質の荷重支持部、他方が木質の荷重支持部の場合を例示したが、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部は、金属質や木質以外の荷重支持部であってもよい。例えば、第1の荷重支持部及び第2の荷重支持部のうちの、一方が金属質の荷重支持部、他方がコンクリートの荷重支持部であってもよい。
即ち、本発明の接続部構造では、第1の荷重支持部と第2の荷重支持部とが、それぞれ、異なる材料により形成された荷重支持部であればよい。
【0033】
また、各実施形態においては、伝熱抑制部材4としてコンクリートブロックを用いた例を示したが、伝熱抑制部材4は、コンクリートブロック以外のものであってもよい。
即ち、伝熱抑制部材4は、第1の荷重支持部から第2の荷重支持部への熱の伝達を抑制することができるとともに、第2の荷重支持部から第1の荷重支持部への熱の伝達を抑制することができ、かつ、第2の荷重支持部を載置することができる材料で形成されたものであれば、どのような物であってもかまわない。
【0034】
また、載置部3の載置面30と当該載置面30に載置される伝熱抑制部材4の下面との凹凸係合は、載置部3の載置面30及び伝熱抑制部材4の下面の両方に形成された凹部と、これら凹部間に設けられてこれら凹部に係合する係合部(係合ピース)とを備えた凹凸係合構造としてもよい。
同様に、伝熱抑制部材4の上面と当該面に載置される第2の荷重支持部の下面(木質梁20の下面23)との凹凸係合は、伝熱抑制部材4の上面及び第2の荷重支持部の下面の両方に形成された凹部と、これら凹部間に設けられてこれら凹部に係合する係合部(係合ピース)とを備えた凹凸係合構造としてもよい。
【0035】
また、本発明は、柱、梁以外の構造部材にも適用可能である。
例えば、柱と耐震壁との接続部構造、柱と床との接続部構造、耐震壁と床との接続部構造等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 第1の構造部材、2 第2の構造部材、3 載置部、4 伝熱抑制部材、
7 金属質梁(第1の荷重支持部)、10 金属質柱(第1の荷重支持部)、
11 第1の耐火被覆部、20 木質梁(第2の荷重支持部)、20e 梁端部、
21 第2の耐火被覆部、30 載置面、26,42 凹部、31,41 凸部。
図1
図2
図3
図4
図5