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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】分注量の調整可能なピペット
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
B01L3/02 D
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021079204
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2021191573
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】20176323.2
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・テッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・モリトール
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-185361(JP,A)
【文献】特表2013-503032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0374936(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0014696(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第20321525(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 3/02
G01N 35/00
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注量を調整することのできるピペットであって、
・ロッド状のハウジング(2)と、
・前記ハウジング(2)の下端部でピペット・チップ(8)を解除可能に保持するための少なくとも1つのシート(7)と、
・その中に変位可能な変位要素(12)を有する変位チャンバ(9)を備えた変位装置と、
・前記変位チャンバ(9)を前記シート(7)にある開口部(11)に接続する接続チャネル(10)と、
・下端部で前記変位要素(12)に連結されており、前記変位チャンバ(9)における前記変位要素(12)を変位させるために前記ハウジング(2)において長手方向に変位可能なストローク・ロッド(17)と、
・前記ストローク・ロッド(17)の上端部に接続されており、前記ハウジングから突出しているコントロール・ボタン(18)と、
・前記ストローク・ロッド(17)の外周部にある停止要素(26)と、
・前記ストローク・ロッド(17)のストロークを制限するための、前記停止要素(26)用の上部停止部(25)および前記停止要素(26)用の下部停止部(58)と
・前記ハウジング(2)内で前記上部停止部(25)の位置を調整するための調整装置(32)と、
・設定された分注量を表示する表示装置(45)と、を備え、
・前記調整装置(32)と前記表示装置(45)との間にある、形状適合型連結装置(74)を特徴とし、前記連結装置は前記調整装置(32)を係合状態で前記表示装置(45)に連結させ、前記調整装置(32)を解除状態で前記表示装置(45)から連結解除するように設計されており、
・前記連結装置(74)が連結解除された場合に前記表示装置(45)の設定を変更するように設計されたキャリブレーション装置(75)を備え、
・前記連結装置(74)および前記キャリブレーション装置(75)が、前記ハウジング(2)にキャリブレーション・ツール(104)を挿入することによって、前記連結装置(74)の連結を最初に解除することができ、その後、前記キャリブレーション・ツール(104)をさらに前記ハウジングに挿入し、ついで前記キャリブレーション・ツールを回転させることによって、前記表示装置(45)の設定を変更することができるように設計されていることを特徴とする、ピペット。
【請求項2】
前記連結装置(74)が前記ハウジング(2)の外側から連結を解除したり連結したりできるように設計されている、請求項1に記載のピペット。
【請求項3】
前記ハウジング(2)の外側から前記ハウジング(2)内にキャリブレーション・ツール(104)を挿入することによって、前記連結装置(74)の連結および連結解除を行うことができるように設計されている、請求項1または2に記載のピペット。
【請求項4】
前記キャリブレーション装置(75)が、前記連結装置(74)が連結解除された場合に、前記表示装置の設定を前記ハウジング(2)の外側からキャリブレーション・ツール(104)によって変更できるように設計されている、請求項1に記載のピペット。
【請求項5】
前記調整装置(32)を前記表示装置(45)から連結解除し、かつ前記表示装置(45)の設定を変更するために、前記キャリブレーション・ツール(104)が、前記ハウジング(2)のハウジング開口部(103)を通って前記ハウジング(2)に挿入可能である、請求項4に記載のピペット。
【請求項6】
前記連結装置(74)が、前記調整装置(32)に連結され回転軸を中心に回転可能となるように装着されている第1の駆動歯車(79)と、前記回転軸の方向に並進して変位可能となるように前記ハウジング(2)の第1の軸受(78)に取り付けられ前記第1の駆動歯車(79)を担持するシャフト(76)と、前記第1の駆動歯車(79)と噛合する前記表示装置(45)の第2の従動歯車(80)と、前記シャフト(76)によって支えられている第1の機構要素(82)および前記ハウジング(2)内に固定的に配置されている第2の機構要素(84)を有するカム機構(81)と、それと共に回転するための前記第1の機構要素(84)に接続されている回転レバー(86)とを備え、前記第1の駆動歯車(79)が前記シャフト(76)上を上方へ移動しないように前記シャフト(76)に保持されており、前記第1の機構要素(84)が前記シャフト(76)上を下方へ移動しないように前記シャフト(76)に保持されており、前記調整装置(32)の連結を前記表示装置(45)から解除するために、前記回転レバー(86)を旋回させることによって、前記シャフト(76)が前記カム機構(81)を介して並進して変位することができ、前記第1の駆動歯車(79)が前記第2の従動歯車(80)から係合が解除されることが可能である、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のピペット。
【請求項7】
前記第1の機構要素(82)が第1のカム(83)であり、かつ/または、第2の機構要素(84)が第2のカム(85)である、請求項6に記載のピペット。
【請求項8】
前記ハウジング(2)のハウジング開口部(103)を通って前記キャリブレーション・ツール(104)を挿入することによって、前記回転レバー(86)を旋回することができる、請求項6または7に記載のピペット。
【請求項9】
第1のばね装置(88)が前記シャフト(76)と前記ハウジング(2)内で固定されて配置されているカウンタ・ベアリング(90)との間に配置されており、前記第1のばね装置(88)は、前記シャフト(76)を前記第2の従動歯車(80)と噛合する位置まで前記第1の駆動歯車(79)で押圧し、前記第1の駆動歯車(79)は前記第1のばね装置(88)の効果に反して前記第2の従動歯車(80)から係合を解除することができる、請求項6から8のいずれか一項に記載のピペット。
【請求項10】
前記キャリブレーション装置(75)が第1の駆動ホイール(95)を備え、前記第1の駆動ホイール(95)は、回転軸を中心に回転可能であるように、かつ前記回転軸の方向に並進して変位可能であるように前記ハウジング(2)内の第2の軸受(91)に装着されており、前記表示装置(45)に連結されている第2の従動ホイール(101)に接触するまで前記第1の駆動ホイール(95)を変位させるために、前記第2の従動ホイール(101)を前記第1の駆動ホイール(95)を回転させることによって回転させるために、かつ前記表示装置(45)の設定を変更するために、前記ハウジング(2)の外側からアクセス可能である、請求項9に記載のピペット。
【請求項11】
前記キャリブレーション・ツール(104)を前記ハウジング(2)に挿入することによって前記第1の駆動ホイール(95)が前記第2の従動ホイール(101)まで変位可能であり、それによって駆動される前記第1の駆動ホイール(95)および前記第2の従動ホイール(101)が前記キャリブレーション・ツール(104)を回転することによって回転可能となる、請求項10に記載のピペット。
【請求項12】
前記第1の駆動ホイール(95)および前記第2の従動ホイール(101)は、摩擦駆動装置(100)の第1の摩擦ホイール(99)および第2の摩擦ホイール(102)である、請求項10または11に記載のピペット。
【請求項13】
前記第1のばね装置(88)が、前記シャフト(76)および解除された回転レバー(86)を介して、前記第1の駆動ホイール(95)が前記第2の軸受(91)に接触するまで前記第1の駆動ホイール(95)を前記第2の従動ホイール(101)から押し離す、請求項10から12のうちのいずれか一項に記載のピペット。
【請求項14】
回転レバー(86)を前記ハウジング(2)のハウジング開口部(103)に導入されているシャフトによって回転させるため、第1駆動ホイール(95)との共に回転するよう接続部に入るために、さらに挿入されているシャフト(105)を用いて前記第1の駆動ホイール(95)を第2従動ホイール(101)と摩擦接続させるため、かつ回転している前記キャリブレーション・ツール(104)を用いて前記第1の駆動ホイール(95)によって第2の従動ホイール(101)を回転させるために、前記連結装置(74)および前記キャリブレーション装置(75)が、前記第1の駆動ホイール(95)のツール係合部(97)に適合した輪郭を有するシャフト(105)と、前記シャフト(105)に非回転式に接続されているハンドル(106)を有するキャリブレーション・ツール(104)を用いて作動可能に設計されている、請求項4から13のうちのいずれか一項に記載のピペット。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のピペットとキャリブレーション・ツール(104)とを備えるセットであって、前記キャリブレーション・ツール(104)が、第1の駆動ホイール(95)のツール係合部(97)に適合した輪郭を有するシャフト(105)と、前記シャフトに非回転式に接続されているハンドル(106)とを有する、セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注量を調整することのできるピペットに関する。
【0002】
ピペットは、液体を分注するために、特に、実験室で使用される。この目的のために、ピペット・チップはその上端部でピペットのシートにしっかりと固締される。シートは、概して、ピペットのハウジングに対して円錐形または円柱形の凸部であり、その上にピペット・チップがそのチューブ状本体の上部開口部で固締可能である。ピペット・チップは、そのチューブ状本体の下部開口部を通して液体を吸い上げ、注入することができる。空気変位ピペットは、シートの開口部を通して連通しているピペット・チップに接続された空気の変位装置を含む。液体がピペット・チップに吸引され、ピペット・チップから排出されるように、空気バッファが変位装置によって移動する。これを達成するために、変位装置は変位可能な変位要素を有する変位チャンバを有する。変位装置は、典型的に、その中に変位可能なピストンが配置されているシリンダである。
【0003】
使用後、このピペット・チップをシートから取り外し、新しいピペット・チップと交換する。このことによって、後続の分注時に液体の移送によって生じる汚染を防ぐことができる。一般的に、ピペットはピペット・チップが把持されることなくボタンの作動によってピペット・チップを吐出することが可能な吐出装置を有する。一般的に、使い捨てのピペット・チップはプラスチックからなる。
【0004】
プランジャは、シリンダ内でプランジャを移動させるのに役立つ駆動装置に連結されている。駆動装置は、上下の停止部間の停止要素によって移動可能なストローク・ロッドを有する。シリンダに空気を引き込み始めると、停止要素は下部停止部に配置される。シリンダから空気が変位してシリンダから出始めると、停止要素は上部停止部に配置される。引き出され、放出された液体量は、上下の停止部間のストローク・ロッドのストロークに依存する。
【0005】
固定容量のピペットにおいて、上下の停止部間の距離は一定である。分注量が調整可能なピペットにおいて、上部停止部の位置が変更可能である。既知のピペットは、ねじ付きスピンドルの底面に上部停止部を有し、ねじ付きスピンドルは、ハウジング内に固定して配置されているスピンドル・ナットにおいて調整可能である。ねじ付きスピンドルを調整するために、設定された分注量を表示するカウンタ形式の表示装置に連結されている調整装置が利用可能である。
【0006】
独国特許第4335863C1号、欧州特許第0649678B1号、および米国特許第5,531,131号は、作動ボタンが上部でハウジングから突出し、下端部でプランジャに接続されているストローク・ロッドの上端部に接続されているピペットを記載している。ストローク・ロッドは、ねじ付きスピンドルと下部停止部にある通路チャネルを介して案内される。ストローク・ロッドは、ねじ付きスピンドルの下部にある上部停止部と下部停止部との間のストローク・ロッドの動きを制限する外向きに突出するビーズの形をした停止部を有する。戻しばねの力に反して作動要素を押すことによって、停止要素が下部停止部に当接するまでプランジャがシリンダの奥深くまで移動する。作動要素を解除した後、停止要素がねじ付きスピンドルに当接している戻しばねの効果の結果として、プランジャは定位置に戻る。ねじ付きスピンドルを調整するための調整装置は、ハウジングに回転可能に取り付けられ、上部がハウジングから突出し、作動ボタンが軸方向に移動可能な調整スリーブを有する。調整スリーブは、その内周にある軸方向の溝によって、およびねじ付きスピンドルの上端部から径方向に突出するキャッチによって、ねじ付きスピンドルに接続されて共に回転する。調整スリーブを回転させることによって、上部停止部を備えたねじ付きスピンドルを、したがって分注量を調整することができる。調整スリーブは、平歯車を下端部に有する。平歯車は、カウンタの平歯車と共通のシャフトにある2つの連結用平歯車に、装置を連結することによって適合する形で連結されている。連結装置を分離するために、移動装置を用いて、2つの連結用平歯車が装着されているシャフトを変位させることができる。これにより、ピペットのキャリブレーションを工場で行うことができる。不利な点は、それぞれの設定されたストロークを測定することなく調整スリーブの上端部を回転させることによって上部停止部の位置合わせが不正確となるため、キャリブレーションには反復手順が必要となる点である。
【0007】
前述の文献は、工場での既知のキャリブレーションを記載しており、ここでは、スライド連結部がピストンのストロークの調整装置とカウンタとの間を移動する。この目的のために、ピペットのハウジングに開口部があり、これを通って、設定されたベベル歯車よりスライド連結部までねじ回しを導くことができる。この容量調整装置(volume setting)を保持してねじ回しを回転させるか、またはその逆によって、容量調整装置とカウンタの間の連結を変更することができる。これによって生じる精度偏差(取り込まれる液体量と表示される液体量の差)は、ピペット操作された質量を計量することによって確認可能である。不利な点は、このようにピペット補正要因の設定することは、外部からアクセスするには特に容易ではなく、一般的に工場出荷時の設定または例外的な場合にはクライアントによってのみ使用される点である。もう一つの不利な点は、カウンタが調整されると、スライド連結部の摩擦接続要素も常に同様に移動するため、ストローク・システムを移動できないように固定しなければならないという点である。さらに、摩擦接続要素間が恒久的に摩擦接触することによって、システム内で相当な摩耗が生じることとなる。
【0008】
独国特許第102005033378B4号、欧州特許第1743701B1号、および米国特許第8,133,453B2号は、シリンダに対して下部停止部を保持するホルダの位置を調整するための調整装置と、ホルダの位置を表示する表示装置とを付加的に有する上記のタイプのピペットを記載している。これにより、ユーザがキャリブレーションを変更して工場出荷時のキャリブレーションを回復することがより簡単となる。
【0009】
独国特許第102012003846B号および欧州特許第2633915B1号は、調整装置が下部停止部の位置を調整するために、上述のピペットと比較してより少ない構成部品で処理する構造を含むピペットを記載している。これにより、ユーザはより良いキャリブレーション精度でキャリブレーションを行うことができる。
【0010】
このような背景に対して、本発明の目的は、より簡単にキャリブレーションを行うピペットを提供することである。
【0011】
本目的は、請求項1の特徴を有するピペットによって達成される。ピペットの有利な実施形態は、従属請求項において特定されている。
【0012】
本発明による、分注量の調整可能なピペットは、
・ロッド状のハウジングと、
・ハウジングの下端部でピペット・チップを解除可能に保持するための少なくとも1つのシートと、
・その中に変位可能な変位要素を有する変位チャンバを備えた変位装置と、
・変位チャンバをシートにある開口部に接続する接続チャネルと、
・下端部で変位要素に連結されており、変位チャンバにおける変位要素を変位させるためにハウジングにおいて長手方向に変位可能なストローク・ロッドと、
・ストローク・ロッドの上端部に接続されており、ハウジングから突出しているコントロール・ボタンと、
・ストローク・ロッドの外周部にある停止要素と、
・ストローク・ロッドのストロークを制限するための、停止要素用の上部停止部および停止要素用の下部停止部と
・ハウジング内で上部停止部の位置を調整するための調整装置と、
・設定された分注量を表示する表示装置と、を備え、
・調整装置と表示装置との間にある、形状適合型連結装置を特徴とし、連結装置は調整装置を係合状態で表示装置に連結させ、調整装置を解除状態で表示装置から連結解除するように設計されており、
・前記連結装置(74)が連結解除された場合に前記表示装置(45)の設定を変更するように設計されたキャリブレーション装置(75)を備え、
・前記連結装置(74)および前記キャリブレーション装置(75)が、前記ハウジング(2)にキャリブレーション・ツール(104)を挿入することによって、前記連結装置(74)の連結を最初に解除することができ、その後、前記キャリブレーション・ツール(104)をさらに前記ハウジングに挿入し、ついで前記キャリブレーション・ツールを回転させることによって、前記表示装置(45)の設定を変更することができるように設計されている。
【0013】
本発明によるピペットを用いると、工場内やサービス部門およびクライアントによるキャリブレーションが大幅に容易になる。このことは、調整装置によって設定されたストローク・ロッドのストロークを変更することなく、形状適合型連結装置の係合が解除された状態で表示装置が移動可能であるということにより達成される。形状適合型連結装置の係合を解除することによって、調整装置は表示装置から分離されるので、キャリブレーション装置を用いて表示装置を移動させることによって、上部停止部の位置が変化しない。調整装置とキャリブレーション装置との間の連結装置が形状適合型連結装置であるため、係合が解除された状態の上部停止部に表示装置の移動が伝わらないことが保証される。この目的ため、外側から導入されるツールを使用して保持したり閉鎖したりするなどのさらなる処置によって、上部停止部またはストローク・システムを固定する必要がない。また、表示装置の移動中に連結装置に摩耗が起こらない。表示装置が重力測定の結果に直接設定することができるという点でキャリブレーションが容易になり、その結果、反復的アプローチに関連する時間が大幅に節約される。さらに、本発明によって、表示装置と上部停止部の位置を互いに独立して調整することが可能となる。この目的のために、連結装置の係合が解除されている状態では、表示装置を移動させることができ、かつ、それに関係なく、調整装置を用いて上部停止部の位置を変更することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によると、連結装置はハウジングの外側から連結を解除したり連結したりできるように設計されている。このことによって、ピペットを開口したり分解したりすることなくキャリブレーションすることが可能となる。しかしながら、本発明はまた、ハウジングが開口している場合やピペットが分解された場合にのみ連結装置を連結し連結を解除することができるように、連結装置が設計されている実施形態に関する。この目的のために、ピペットの構成部品は、たとえばハウジングに装着されていてもよく、かつ、ハウジングは複数のハウジング部品からなっていてもよく、その一部はキャリブレーションのために取り外しが可能であり、かつ/または、ピペットの一部または全部の部品は、キャリブレーションのためにハウジングから取り外すことができる、ピペットのシャーシ(フレーム)に装着されている。
【0015】
別の実施形態によると、ハウジングの外側からハウジング内にキャリブレーション・ツールを挿入することによって、連結装置の連結および連結の解除を行うことができるように設計されている。キャリブレーション・ツールを使用することにより、連結装置の連結および連結の解除が容易になり、意図しない連結および連結の解除が防止される。別の実施形態によると、連結装置が、ハウジングの外側から機械的に作動可能なスイッチまたは他の作動装置に連結されるので、作動装置を作動させることによって連結装置の連結および連結の解除を行うことができる。
【0016】
別の実施形態によると、ピペットは、連結装置の連結が解除された場合に表示装置の設定を変更するように設計されたキャリブレーション装置を備える。キャリブレーション装置を用いることで、表示装置の調整が簡単になる。この目的のために、別の実施形態によれば、キャリブレーション装置が、ハウジングの外側から表示装置の設定を変更することができるように設計されている。代替の実施形態では、表示装置を直接調整することによって、表示装置の設定を連結装置の連結が解除された状態で変更することができる。これは、たとえば表示装置が(ローラ)カウンタとして設計されている場合に可能である。この目的のために、たとえば、(ローラ)カウンタの駆動ピニオンまたは入力ローラを手動やツールを使用して移動させることが可能となり得る。好ましくは、この目的のために、ハウジングを部分的に除去することができるか、またはピペットの構成部品を有するシャーシをハウジングから取り出すことができる。
【0017】
別の実施形態によると、キャリブレーション装置は、連結装置の連結が解除された場合に、表示装置の設定をハウジングの外側からキャリブレーション・ツールによって変更できるように設計されている。その結果、表示装置の調整が単純化され、意図せず起こらなくなる。別の実施形態では、キャリブレーション装置は、ハウジングの外側から移動稼働な調整ホイールまたは別の調整部材に連結されるので、ハウジングの外側から調整部材を移動させることによって表示装置が調整可能である。
【0018】
別の実施形態によると、連結装置およびキャリブレーション装置は、同じキャリブレーション・ツールを使用して、調整装置を表示装置との連結および連結の解除を行うことができ、表示装置の設定を変更することができるように設計されている。別の実施形態によると、この目的のために、同じキャリブレーション装置を、同じハウジング開口部を通ってハウジングの外側からハウジング内に導入することができる。
【0019】
別の実施形態によると、連結装置およびキャリブレーション装置は、ハウジング内にキャリブレーション・ツールを挿入することによって、連結装置の連結を最初に解除することができ、その後、キャリブレーション・ツールをさらにハウジングに挿入し、ついでキャリブレーション・ツールを回転させることによって、表示装置の設定を変更することができるように設計されている。これにより、ピペットのキャリブレーションがさらに簡単になる。
【0020】
別の実施形態によると、形状適合型連結装置は、歯のカップリングまたは爪のカップリングである。
【0021】
別の実施形態によると、形状適合型連結装置は、調整装置に連結され回転軸を中心に回転可能となるように装着されている第1の駆動歯車と、回転軸の方向に並進して変位可能となるようにハウジングの第1の軸受に取り付けられ第1の駆動歯車を担持するシャフトと、第1の駆動歯車と噛合する表示装置の第2の従動歯車と、シャフトによって支えられている第1の機構要素およびハウジング内に固定的に配置されている第2の機構要素を有するカム機構と、それと共に回転するための第1の機構要素に接続されている回転レバーとを備え、第1の駆動歯車がシャフト上を上方へ移動しないようにシャフトに保持されており、第1の機構要素がシャフト上を下方へ移動しないようにシャフトに保持されており、調整装置の連結を表示装置から解除するために、回転レバーを旋回させることによって、シャフトがカム機構を介して並進して変位することができ、第1の駆動歯車が第2の従動歯車から係合が解除されることが可能である。この実施形態は、容易な操作性と高信頼性の機能を兼ね備えている。
【0022】
別の実施形態によると、シャフトの端部は、その中に解除可能に保持される固定リングを有する凹部および/または溝を有し、第1の歯車は、その中に保持された固定リングを有する凹部または溝によってシャフト上を上方へ移動するのを防止し、第1の機構要素は、その中に保持された別の固定リングを有する別の凹部または別の溝によって下方へ移動するのを防止する。別の実施形態によると、このシャフトは回転可能に装着されたシャフトであり、第1の歯車はそれと共に回転するためのシャフトおよび第1の機構要素に接続され、回転レバーはシャフトを中心に回転できるようにシャフトに装着されているか、あるいは、第1の歯車がシャフトを中心に回転できるようにシャフトに装着され、第1の機構要素と回転レバーとがそれと共に回転するようにシャフトに接続されている。別の実施形態によると、回転レバーは、ハウジングの外側からアクセス可能である。回転レバーは特にキャリブレーション・ツールや手動によって旋回してもよい。別の実施形態によると、回転レバーは、ハウジングの開口部にキャリブレーション・ツールを導入することによって旋回することができる。
【0023】
別の実施形態によると、第1の機構要素が第1のカムであり、かつ/または、第2の機構要素が第2のカムである。代替の実施形態では、2つの機構要素のうちの1つのみがカムであり、もう一方の機構要素はカムをトレースするトレース要素である。
【0024】
別の実施形態によると、第1のばね装置がシャフトとハウジング内で固定されて配置されているカウンタ・ベアリングとの間に配置されており、第1のばね装置は、シャフトを第2の従動歯車と噛合する位置まで第1の駆動歯車で押圧し、第1の駆動歯車は第1のばね装置の効果に反して第2の従動歯車から係合を解除することができる。好ましくは、第1の駆動歯車が第2の従動歯車と噛合するとき、第1のばね装置に予め負荷がかけられる。この実施形態では、連結装置の連結が解除されると、第1のばね装置に予め負荷が(さらに)かけられ、回転レバーが解除されると、第1の駆動歯車が第2の従動歯車と噛合する位置まで第1のばね装置がシャフトを押圧する。したがって、連結装置は、回転レバーが解除された後に自動的に再び係合し、このことによって操作がより簡素化される。
【0025】
別の実施形態によると、キャリブレーション装置は、回転軸を中心に回転可能であるように、かつ回転軸の方向に並進して変位可能であるようにハウジング内の第2の軸受に装着されており、第2の従動ホイールに接触するまで並進して変位可能な第1の駆動ホイールを備え、第2の従動ホイールは、第1の駆動ホイールを回転させることによって第2の従動ホイールを回転させ、かつ表示装置の設定を変更するために、表示装置に連結されている。これにより、表示装置の調整が容易となる。別の実施形態によると、第1の駆動ホイールの回転軸は第2の従動ホイールの回転軸に垂直に向いている。別の実施形態によると、第1の駆動ホイールは、ハウジングの外側から並進して変位させ回転することが可能である。この実施形態は、特に、ハウジングの外側からアクセス可能な回転レバーを備える上述の形状適合型連結装置と組み合わされるのに適している。
【0026】
別の実施形態によると、第1の駆動ホイールはこの第1の駆動ホイールに配置されたキャリブレーション・ツールを用いて第2の従動ホイールまで変位可能であり、第1の駆動ホイールのツール係合部に挿入されているキャリブレーション・ツールを回転させることによって第1の駆動ホイールが回転可能であり、第1の駆動ホイールを用いて第2の従動ホイールが回転可能である。
【0027】
別の実施形態によると、第1の駆動ホイールおよび第2の従動ホイールは、摩擦駆動装置の摩擦ホイールである。別の実施形態によると、第1の駆動ホイールおよび第2の従動ホイールは、歯車であり、たとえば互いに垂直に向いている回転軸を有するベベル歯車である。
【0028】
別の実施形態によると、第1のばね装置が、シャフトおよび解除された回転レバーを介して、第1の駆動ホイールが第2の軸受に接触するまで第1の駆動ホイールを第2の従動ホイールから押し離す。その結果、回転レバーが解除されると、第1の駆動ホイールは自動的に第2のホイールと接触していない位置にあることになる。
【0029】
別の実施形態によると、第2のばね装置が、第1の駆動ホイールとハウジング内で固定されて配置されている第2のカウンタ・ベアリングとの間に配置されており、第2のばね装置は第1の駆動ホイールを第2の従動ホイールから押し離し、第1の駆動ホイールが第2の従動ホイールに接触するまで、第1の駆動ホイールは第2のばね装置の効果に反して変位可能である。別の実施形態によると、第2のばね装置は、第1の駆動ホイールが停止要素に接触するまで第2の従動ホイールから押し離されると予め負荷がかけられる。第2の従動ホイールに接触するまで第1の駆動ホイールを変位させることによって、第2のばね装置に予め負荷が(さらに)かけられるので、第1の駆動ホイールが解除後に停止要素に接触して自動的にその定位置に戻る。このことによって、操作がさらに簡素化される。
【0030】
別の実施形態によると、回転レバーをハウジングの開口部に導入されているシャフトによって回転させるために、第1のホイールと共に回転するために接続部に入るために、さらに挿入されているシャフトを用いて第1のホイールを第2のホイールと摩擦接続させるために、かつ回転しているキャリブレーション・ツールを用いて第1のホイールによって第2のホイールを回転させるために、連結装置およびキャリブレーション装置が、第1のホイールのツール係合部に適合した輪郭を有するシャフトと、シャフトに非回転式に接続されているハンドルとを有するキャリブレーション・ツールを用いて、作動可能に設計されている。
【0031】
別の実施形態は、ハウジングに固定式に配置されているオーバーストロークばねを備え、これを介してストローク・ロッドの外周にある停止要素によって下方へ移動することに反して下部停止部が支持されている。その結果、変位装置を用いてピペット・チップから残留試料液を吹き出すオーバーストロークが可能となる。
【0032】
別の実施形態によると、ピペットが、下端部に上部停止部が形成されストローク・ロッドが案内される通路チャネルを備える、ねじ付きスピンドルを備える。上部停止部を有するねじ付きスピンドルをスピンドル・ナットの下端部に配置すると、調整可能な上部停止部が形成される。
【0033】
別の実施形態によると、調整装置が調整スリーブを備え、調整スリーブは、ハウジングに回転可能に装着されており、ハウジングの外側からアクセス可能であって伝達機を介して上部停止部に連結される調整要素を含む。別の実施形態によると、伝達機が、調整スリーブの内周に軸方向に延びる溝を有し、その中にねじ付きスピンドルの上端部にある径方向凸部が係合する。その結果、ハウジングから上方に突出する調整スリーブの端部を回転させることによって、ねじ付きスピンドルが容易に前進することができる。
【0034】
好ましい実施形態によると、表示装置は(ローラ)カウンタである。
【0035】
このようなオーバーストローク装置、スピンドル・ナットを有するねじ付きスピンドル、調整装置、および表示装置の例示的実施形態は、欧州特許第0649678B1号、欧州特許第1743701B1号、および欧州特許第2633915B1号に記載されている。この点に関して、欧州特許第0649678B1号、欧州特許第1743701B1号、および欧州特許第2633915B1号の文献を参照し、これによってその内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0036】
最後に、本発明は、請求項1から17のいずれか一項、または上述のさらなる実施形態に記載のピペットとキャリブレーション・ツールとを備えるセットに関し、回転レバーをハウジングの開口部に導入されているシャフトによって回転させるために、第1のホイールと共に回転するために接続部に入るために、さらに挿入されているシャフトを用いて第1のホイールを第2のホイールと摩擦接続させるために、かつ回転しているキャリブレーション・ツールを用いて第1のホイールによって第2のホイールを回転させるために、キャリブレーション・ツールが、第1のホイールのツール係合部に適合した輪郭を有するシャフトと、シャフトに非回転式に接続されているハンドルとを有する。
【0037】
本発明を、図面における例示的実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明によるピペットを左側から見た縦断面図である。
図2図2は、同じピペットの右側から見た縦断面図である。
図3図3.1から図3.4は、同じピペットの調整機構を右側からみた拡大側面図(図3.1)、正面図(図3.2)、左側からみた側面図(図3.3)、および背面図(図3.4)である。
図4図4.1から図4.4は、同じ調整機構を異なる移動段階に移動させた、右側からみた拡大側面図(図4.1)、正面図(図4.2)、左側からみた側面図(図4.3)、および背面図(図4.4)である。
図5図5.1から図5.4は、同じ調整機構を分解した、右側からみた拡大側面図(図5.1)、正面図(図5.2)、左側からみた側面図(図5.3)、および背面図(図5.4)である。
図6図6は、連結装置、キャリブレーション装置、およびカウンタを備えたアセンブリの側面図である。
図7図7は、同じ配置のカム機構を下からおよび横から斜めに見た斜視図である。
図8図8は、同じ配置のキャリブレーション・ツールが前面に配置されている底面図である。
図9図9は、同じ配置のキャリブレーション・ツールが連結装置の連結を解除するために部分的に挿入されている底面図である。
図10図10は、同じ状態にある同じ配置の正面図である。
図11図11は、同じ配置のキャリブレーション・ツールがカウンタを調整するために完全に挿入されている底面図である。
図12図12は、同じ状態にある同じ配置の上から斜めにみた斜視図である。
【0039】
本出願では、「上部」、「下部」、「上」、「下」、「平面図」、および「底面図」という用語や、これらに由来する「底面」および「上面」、ならびに「水平」および「垂直」などの用語は、シートを備えたハウジングが垂直方向下方に位置合わせされているピペットの配列に関する。この配列では、シートに取り付けられているピペット・チップを、液体を吸い上げたり注入したりするために、その下に配置された容器に向けていてもよい。
【0040】
図1および図2によると、本発明によるピペット1が、下部ハウジング部3と上部ハウジング部4とを有するロッド状ハウジング2を有する。上部には、下部ハウジング部3は、ピペット・チップ8を装着するためのシート7を下部に有する、スリムで筒状の、わずかに円錐状のアタッチメント6がそこから下方へ突出している円錐形の底を備えた管状本体部5を有する。このアタッチメント6では、変位チャンバ9がシリンダの形をして形成されている。変位チャンバ9はシート7の底面にある開口部11に接続チャネル10によって接続されている。
【0041】
さらに、下部ハウジング部3は、底の上面にあるシール・システム13によってシリンダ11に案内される変位装置のプランジャの形をした変位要素12を含む。変位要素12は、上端部にプレート14を有し、プレート14は上面に中央ドーム型の凹部を有する。第1のばね装置15が、板14と底の上面との間にコイルばねの形で配置されている。第1のばね装置15は、本体部5に接続されたシール・キャップ16に反してプレート14を下から押圧し、プレート14が上からアクセス可能な通路を中央に有する。
【0042】
上部ハウジング部4は、プレート14の上面に当接するストローク・ロッド17を含む。ストローク・ロッド17の下端部は、プレート14の凹部に係合する。コントロール・ボタン18が、ストローク・ロッド17に上部で固定され、ハウジング2の上端部から外側に突出している。
【0043】
ストローク・ロッド17は、上部ハウジング部4に配置されているねじ付きスピンドル20の中央スピンドル孔19を通って案内される。ねじ付きスピンドル20は、外側に雄ねじ21を有し、上部ハウジング部4の第1の保持具24の底部に保持されているストローク本体23の雌ねじ22にねじ留め可能である。ストローク本体23は、スピンドル・ナットを形成する。
【0044】
ねじ付きスピンドル20の下面は、ストローク・ロッド17の外周に環状ビーズの形をした停止要素26用の上部停止部25である。
【0045】
ねじ付きスピンドル20は、上端部で接続され、径方向外側に突出しているリブ28(図5参照)を用いて係合してキャッチ・スリーブ30の軸方向の溝29に入るキャッチ27と共に回転する。キャッチ・スリーブ30は、ねじ付きスピンドル20に同心円状に配置され、ストローク本体23の外周に回転可能に装着される。キャッチ・スリーブ30は、外周の下縁部に周囲を取り巻く第1の歯31を有する。これは、特に図3から図5に示されている。
【0046】
調整スリーブ32がキャッチ・スリーブ30に押し込まれる。調整スリーブ32は、キャッチ・スリーブ30の外周に回転可能に装着され、キャッチ・スリーブ30にある2つの仕切り部間を軸方向に変位可能に案内される。調整スリーブ32の上端部は、ハウジング2の上端部から外方へ突出している。ここでは、調整スリーブ32は、外周に波形を呈する調整リング33を有する。
【0047】
調整スリーブ32は、下縁部に外周を囲む第2の歯34と、外周をやや上に向けてさらに囲む第3の歯35とを有する。第1の歯31と第2の歯34は、同じ直径と同じ歯数とを有する。第3の歯35は、第2の歯34よりも直径が大きく歯数が多い。
【0048】
第2の歯34は上面が閉口されており、第3の歯35は中間ディスク36によって底面が閉口されている。ディスク36の底面は下部仕切り部37を形成し、ディスク36の上面は調整スリーブ32を変位させるための上部仕切り部38を形成する。
【0049】
第1の支持部24に、伝達シャフト39がキャッチ・スリーブ30と調整スリーブ32に隣接して回転可能に装着されている。伝達シャフト39は、下部に第4の歯の40を有し、その上に第5の歯41を有し、その上に第6の歯42を有して設けられている。第4の歯40および第5の歯41は、同じ直径と同じ歯数を有し、組み合わさって単一の歯43となる。第6の歯42は、第5の歯41からある距離だけ離れて配置されている。第6の歯42は第5の歯の41よりも直径が小さく歯数が少ない。
【0050】
伝達シャフト39は、上部ハウジング部4に固定されている第2の保持具44において上部が回転可能に装着されている。
【0051】
また、ローラ・カウンタの形をしたカウンタ45が、第1の保持具24と第2の保持具44との間に保持されている。ローラ・カウンタのカウンタ・ローラ・シャフト46が、下部で第1の保持具24に、上部で第2の保持具44に装着されている。上部では、第2の保持具44がハウジング内の凸部に当接している。さらに、駆動歯車47が第1の保持具24のシャフトに回転可能に装着されており、この駆動歯車は、共に回転するために相互接続され、直径が異なる2つの平歯車48、49を備える。直径の小さな平歯車48はキャッチ・スリーブ30の第1の歯31と噛合し、直径の大きな平歯車49は、ローラ・カウンタの初期ローラで駆動ピニオン50と噛合する。
【0052】
平歯車49とシャフトは、形状適合型連結装置の構成部品であり、以下でさらに説明する。
【0053】
カウンタ45のナンバー・ホイール51は、上部ハウジング部4にあり透明カバー53を有する窓52を通してハウジング2の外側から見える(図2)。
【0054】
上部ハウジング部4では、鉢状のホルダ54がストローク本体23の下に配置されている。ホルダ54は、ハウジング2内に締着された第3の保持具57の雌ねじ56にねじ留めされている雄ねじ55を有する。
【0055】
ホルダ54は、ホルダ54の下向きに曲がった上縁部59の下に保持されているキャップ状の下部停止部58を含む。ホルダ54の底61に当接するコイルばねの形をしたオーバーストロークばね60は、下部停止部58を上縁部59に押圧する。ストローク・ロッド17は、下部停止部58の中央通路を通って案内され、ホルダ54の底61にあるオーバーストロークばね60と中央通路を通って案内される。
【0056】
調整スリーブ32は駆動シャフトであり、キャッチ・スリーブ30は従動軸であり、伝達シャフト39は、平歯車箱62として設計された歯車箱63の中間シャフトである。調整スリーブ32を図3および図4に示す下部移動位置(微調整位置)に軸方向に移動させ、図4に示す上部移動位置(クイック調整位置)に軸方向に移動させることによって、さまざまな段の間を移動することができる。図3の微調整位置では、調整スリーブ32は、第5の歯41の上面にある下部仕切り部37に接触するまで可能な限り下方へ移動し、かつ、クイック調整位置では、調整スリーブ32は第6の歯42の底面にある上部仕切り部38に接触するまで上方に移動する。調整スリーブ32は、したがって、同時に歯車箱の移動装置64であり、ここでは、調整リング33は移動装置64の移動要素65である。
【0057】
例示的実施形態では、歯車箱63には任意の優先的な位置がないので、歯車箱が常に直近の設定された移動段階を保持する。本発明は、たとえば第2のばね装置を用いて実現される歯車箱の優先位置を備えた他のタイプの実施形態を含む。
【0058】
調整スリーブ32が回転すると、設定された移動段階に応じてキャッチ・スリーブ30も回転する。キャッチ・スリーブ30を用いて、ねじ付きスピンドル20は、ハウジングに対して固定された雌ねじ22にねじ留めされ、上部停止部25は回転方向に応じて上下に進む。このことによって、分注量を決定する上部停止部25と下部停止部58との距離が変動する。この設定された分注量は、キャッチ・スリーブ30によって駆動歯車47を介して駆動されるカウンタ45から読み取ることができる。
【0059】
エジェクタ・ロッド67上のエジェクタ・ボタン66が、上部ハウジング部4の上縁領域において調整スリーブ32の隣に載置されている。エジェクタ・ロッド67は、上部ハウジング部4を通ってストローク・ロッド17に平行に走る。その下部は、アタッチメント6に可動に配置されているエジェクタ・スリーブ69の側方締着ショルダ68に接続されている。
【0060】
コイルばねとして設計されているエジェクタばね70が上部ハウジング部4に配置され、一端がハウジング2内に当たり、他端がエジェクタ・ロッド67に接触している。エジェクタばね70はエジェクタ・ロッド67を上方に押圧するのでエジェクタ・スリーブ67がアタッチメント6に当接する。
【0061】
下部ハウジング部3と上部ハウジング部4は、スナップ接続部71によって互いに接続されている。
【0062】
ピペット操作前に、ユーザは所望の分注量を調整することができる。このことを達成するために、ユーザは、所望の分注量がカウンタ45によって表示されるまで調整リング33を回転させる。分注量を調整するには、ユーザは2つの速度レベルから選択可能である。特に、直近の設定分注量がこれから設定する分注量より大きく逸脱した場合、ユーザはまずクイック移動段階を選択できる。歯車箱がクイック移動段階に設定されていない場合、ユーザは調整リング33を把持し、調整スリーブ32を図3のハウジング2内の微調整位置からもう少し引き出して、図4に示すクイック調整位置にする。
【0063】
第1のクイック調整位置では、キャッチ・スリーブ30の第1の歯31が伝達シャフト39の第4の歯の40と係合し、調整スリーブ32の第3の歯35が伝達シャフト39の第6の歯42と係合する。これにより、調整スリーブ32の回転速度をキャッチ・スリーブ30のより速い回転速度に変換するので、ユーザが分注量をこれから設定する分注量に近いように素早く調整することができる。
【0064】
所望の分注量を正確に設定するために、ユーザはスロー移動段階を選択することができる。このことを達成するために、ユーザは調整リング33の調整スリーブ32を押下してハウジング2に入れ、図3に示す微調整位置にする。この位置において、第1の歯31は第4の歯40と係合し、第2の歯34は第5の歯の41と係合する。したがって、調整スリーブ32を一定の回転速度で回転させると、キャッチ・スリーブ30は、クイック移動段階よりも遅い速度で回転する。例示的実施形態の歯では、調整スリーブ32の回転速度は、キャッチ・スリーブ30の回転速度と同じである。というのも、第1の歯31および第2の歯34ならびに第4の歯40および第5の歯41がそれぞれ対応する歯数および直径を有するためである。
【0065】
分注量を正確に設定する前後に、ユーザは、ピペット1をピペット・チップ8の上部開口部72にシート7で押し込むことによって、ピペット・チップ8をピペット1に固締することができる。ピペット操作のために、停止要素26が上部停止部25によって下部停止部58に対して変位するように、ユーザはまずコントロール・ボタン18を押し下げる。そうすることで、ストローク・ロッド17が変位要素12を押し下げ、第1のばね装置15に予め負荷がかけられる。次に、ユーザは、ピペット・チップ8をその下部開口部73によって試料液に浸漬し、コントロール・ボタン18を解除する。したがって、第1のばね要素15は、停止要素26が上部停止部25に当接するまで、変位要素12とストローク・ロッド17とを押し上げる。そうすることで、設定された分注量に相当する液体量がピペット・チップ8に注入される。
【0066】
液体量を排出するために、ユーザは、ピペット・チップ8を下部開口部73で別の容器の上に保持し、コントロール・ボタン18を再び押し下げる。下部停止部58に達した後、ユーザは、ピペット・チップ8から液体の残留量を排出するために、オーバーストロークばね60の抵抗を解消しながらコントロール・ボタン18を深く押すことができる。
【0067】
次に、ユーザは同じように液体の追加量をピペット操作することができ、または、試料液を変更するために、エジェクタ・ボタン66を押圧することによってピペット・チップ8を下方へ排出することができる。そうすることで、エジェクタ・スリーブ69は、ピペット・チップ8をシート7から除去する。エジェクタ・ボタン66が解除された後、エジェクタばね70は示された定位置にエジェクタ・ロッド67を戻す。
【0068】
次に、同じ設定の分注量で、または新しく設定する分注量で、さらなるピペット操作を行うことができ、上述のように調整を行うことができる。
【0069】
連結装置74とキャリブレーション装置75は、単純化するために図1から図5からは省かれているが、図6から図12に基づいて以下により詳細に説明する。
【0070】
連結装置74は、2つの平歯車48、49が回転軸77を中心に回転可能に取り付けられているシャフト76を備える。シャフト76は、第1の保持具24と第2の保持具44に形成されている第1の軸受78に、回転軸77の方向に並進して変位可能なように装着されている。直径の大きな平歯車49は、これと共に回転する直径の小さな平歯車78に接続されており、連結装置74の第1の駆動歯車79を形成する。平歯車49との噛合する駆動ピニオン50は、カウンタ45を駆動するための第2の従動歯車80を形成する。
【0071】
さらに、連結装置74は、シャフト76に回転可能に装着されている第1のカム83の形をした第1の機構要素82と、第1の保持具24の底面に固定式にハウジング7に形成された第2のカム85の形をした第2の機構要素84を含むカム機構81を備える。
【0072】
第1の機構要素82は、共に回転する回転レバー86に底部に接続されており、この回転レバーはカム状の端部87を備える。シャフト76に案内されるコイルばね89の形をした第1のばね装置88が、下部で第1の保持具24に上部で平歯車49の底面に当接する。第1の保持具24は、第1のばね装置88のカウンタ・ベアリング90を形成する。第1のばね装置88は、平歯車49を駆動ピニオン50と噛合する位置にまで押し込む(図6を参照)。
【0073】
平歯車49は、第1のばね装置88の効果に反してシャフト76を下方へ移動させることによって、駆動ピニオン50から外すことができる。
【0074】
キャリブレーション装置75は、軸受本体92の形をした第2の軸受91を備え、第2の軸受91は、水平断面がU字形の断面を有し、ベース94に円形の第1の貫通孔93を備える。軸受本体92は、第1の保持具24の側面に取り付けられている。キャリブレーション装置75の第1のホイール95が、回転可能かつ軸方向に変位可能となるように、軸受本体92に装着されている。第1のホイール95は、回転可能かつ並進して変位可能となるように軸受本体92の第1の貫通孔93に装着された突出した中空シリンダ96を外側に含み、中空シリンダ96は軸受本体92の外側から外方へ突出している。ツール係合部97が、中空シリンダ96内に形成されている。ツール係合部97は、円の弦の形状をした周縁部を有する円形の第2の貫通孔98の形状を有する。
【0075】
第1のホイール95は、摩擦駆動装置100の第1の摩擦ホイール99であり、たとえば金属やプラスチックから構成される。
【0076】
さらに、キャリブレーション装置75は、第2のホイール101を備え、これは、ナンバー・ホイール51の下に共に回転するカウンタ45の初期ローラに接続されている。第2のホイール101は、摩擦駆動装置100の第2の摩擦ホイール102である。第2のホイール101は、たとえばゴムからなるリングによって形成される。
【0077】
ピペット1のハウジング2は、第1および第2の貫通孔93、98と中央が位置合わせされているハウジング開口部103を備える。
【0078】
キャリブレーション・ツール104は、第1のホイール95のツール係合部97に適合した輪郭を有するシャフト105を備える。この目的のために、シャフト105を通る断面では、シャフト105は円の弦の形状をした部分を備えた円形輪郭を有する。ハンドル106がシャフト105の外端に接続されている。
【0079】
図8は、ピペット1に挿入する前のキャリブレーション・ツールを示す。平歯車49は、駆動ピニオン50と噛合し、シャフト76ができるだけ遠くに上方へ移動し、第1のばね装置88によってこの配置で保持される。回転レバー86は、第1のホイール95の内側を押圧し、この第1のホイールが軸受本体92のベース94の内側を押圧する位置までカム機構81によって回転する。
【0080】
図6および図9によると、シャフト105が第1のホイール95のツール係合部97に係合するように、キャリブレーション・ツール104はピペット1のハウジング開口部103に側面から挿入される。シャフト105とツール係合部97は、適合する輪郭に基づいて、共に回転するために相互接続することができる。シャフト105が挿入されると、回転レバー86を旋回させる。その結果、カム機構81の第1のカム83が第2のカム85を介して変位し、シャフト76はわずかに上方に並進して移動する(図7を参照)。その結果、平歯車49は、駆動ピニオン50から外れてしまう(図10を参照)。
【0081】
最後に、キャリブレーション・ツール104をさらにピペット1にスライドさせることにより、ハンドル106は中空シリンダ96に衝突し、第1のホイール95はさらに内側に変位して軸受本体92に入る。回転レバー86は、この工程中にさらに旋回可能である(図11を参照)。この工程では、第1のホイール95は第2のホイール101に接触するようになり、キャリブレーション・ツール104を回転させることによって、カウンタ43の設定が変更可能である(図12参照)。
【0082】
カウンタ45は調整スリーブ32および上部停止部25から連結が外れているため、ピペット1のストローク・システムは移動しない。しかし、カウンタ45の調整装置からの連結解除は、調整スリーブ32を移動させることによってストローク・システムを移動させることにも使用可能である。
【0083】
キャリブレーション・ツール104が引き出された後、平歯車49は、第1のばね装置88を用いて駆動ピニオン50とふたたび係合するようになり、回転レバー86および第1のホイール95は、カム機構81を用いて図8による位置まで変位する。ここでピペット1は再度キャリブレーションが完了し、ピペット操作に使用可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 ピペット
2 ハウジング
3 下部ハウジング部
4 上部ハウジング部
5 本体部
6 アタッチメント
7 シート
8 ピペット・チップ
9 変位チャンバ
10 接続チャネル
11 開口部
12 変位要素
13 シール・システム
14 プレート
15 ばね装置
16 シール・キャップ
17 ストローク・ロッド
18 コントロール・ボタン
19 スピンドル孔
20 ねじ付きスピンドル
21 雄ねじ
22 雌ねじ
23 ストローク本体
24 第1の保持具
25 上部停止部
26 停止要素
27 キャッチ
28 リブ
29 溝
30 キャッチ・スリーブ
31 歯
32 調整スリーブ
33 調整リング
34 第2の歯
35 第3の歯
36 ディスク
37 下部仕切り部
38 上部仕切り部
39 伝達シャフト
40 第4の歯
41 第5の歯
42 第6の歯
43 歯
44 第2の保持具
45 カウンタ
46 カウンタ・ローラ・シャフト
47 駆動歯車
48,49 平歯車
50 駆動ピニオン
51 ナンバー・ホイール
52 窓
53 カバー
54 ホルダ
55 雄ねじ
56 雌ねじ
57 第3の保持具
58 下部停止部
59 上縁部
60 オーバーストロークばね
61 底
62 平歯車箱
63 歯車箱
64 移動装置
65 移動要素
66 エジェクタ・ボタン
67 エジェクタ・ロッド
68 締着ショルダ
69 エジェクタ・スリーブ
70 エジェクタばね
71 スナップ接続
72 上部開口部
73 下部開口部
74 連結装置
75 キャリブレーション装置
76 シャフト
77 回転軸
78 第1の軸受
79 第1の歯車
80 第2の歯車
81 カム機構
82 第1の機構要素
83 第1のカム
84 第2の機構要素
85 第2のカム
86 回転レバー
87 カム状の端部
88 第1のばね装置
89 コイルばね
90 カウンタ・ベアリング
91 第2の軸受
92 軸受本体
93 第1の貫通孔
94 ベース
95 第1のホイール
96 中空シリンダ
97 ツール係合部
98 第2の貫通孔
99 第1の摩擦ホイール
100 摩擦駆動装置
101 第2のホイール
102 第2の摩擦ホイール
103 ハウジング開口部
104 キャリブレーション・ツール
105 シャフト
106 ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12