(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】蝶ねじ回転治具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/48 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
B25B13/48 G
(21)【出願番号】P 2021081458
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】針谷 咲貴子
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105058286(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に設けられ、蝶ねじの第1羽部が挿入される第1溝が形成された第1掴み部と、
前記基部に設けられ、前記蝶ねじの第2羽部が挿入される第2溝が形成された第2掴み部と、
前記基部に設けられた柄部と、
前記柄部に沿って配置される収納位置と前記柄部に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動するストッパと、
を備え、
前記第1掴み部および前記第2掴み部の少なくとも一方は、前記第1溝と前記第2溝との間の距離が調節可能となるように、前記基部に対してスライド可能となって
おり、
前記ストッパの位置が前記回転制限位置である場合に、前記蝶ねじが取り付けられている取付対象物に前記ストッパが接触することによって、前記蝶ねじの回転が制限される蝶ねじ回転治具。
【請求項2】
基部と、
前記基部に設けられ、蝶ねじの第1羽部が挿入される第1溝が形成された第1掴み部と、
前記基部に設けられ、前記蝶ねじの第2羽部が挿入される第2溝が形成された第2掴み部と、
前記基部に設けられた柄部と、
前記柄部に沿って配置される収納位置と前記柄部に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動するストッパと、
前記蝶ねじが取り付けられた取付対象物に設けられる回転制限補助部材と、
を備え、
前記第1掴み部および前記第2掴み部の少なくとも一方は、前記第1溝と前記第2溝との間の距離が調節可能となるように、前記基部に対してスライド可能となって
おり、
前記ストッパの位置が前記回転制限位置である場合に、前記回転制限補助部材に前記ストッパが接触することによって、前記蝶ねじの回転が制限される蝶ねじ回転治具。
【請求項3】
前記第1溝は、前記第1掴み部における前記第2掴み部に対向する面に形成されており、
前記第2溝は、前記第2掴み部における前記第1掴み部に対向する面に形成されている請求項1
または請求項2に記載の蝶ねじ回転治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蝶ねじ回転治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蝶ねじの第1羽部が挿入される第1溝および蝶ねじの第2羽部が挿入される第2溝が形成された蝶ねじ回転治具が知られている。第1溝と第2溝との間の距離は一定となっている。第1羽部が第1溝に挿入され、第2羽部が第2溝に挿入された状態で、保守点検作業者が蝶ねじ回転治具を蝶ねじの周方向に回転させることによって、蝶ねじが回転する。蝶ねじが回転することによって、蝶ねじが取付対象物に着脱される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蝶ねじには、複数の種類の蝶ねじがある。種類が互いに異なる蝶ねじの間では、第1羽部と第2羽部との間の距離が互いに異なる。したがって、複数の種類の蝶ねじのそれぞれを回転させる際には、複数の種類の蝶ねじのそれぞれに対応する複数の種類の蝶ねじ回転治具を使用しなければならないという問題点があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の種類の蝶ねじのそれぞれの回転に使用することができる蝶ねじ回転治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る蝶ねじ回転治具は、基部と、基部に設けられ、蝶ねじの第1羽部が挿入される第1溝が形成された第1掴み部と、基部に設けられ、蝶ねじの第2羽部が挿入される第2溝が形成された第2掴み部と、基部に設けられた柄部と、柄部に沿って配置される収納位置と柄部に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動するストッパと、を備え、第1掴み部および第2掴み部の少なくとも一方は、第1溝と第2溝との間の距離が調節可能となるように、基部に対してスライド可能となっており、ストッパの位置が回転制限位置である場合に、蝶ねじが取り付けられている取付対象物にストッパが接触することによって、蝶ねじの回転が制限される。
本開示に係る蝶ねじ回転治具は、基部と、基部に設けられ、蝶ねじの第1羽部が挿入される第1溝が形成された第1掴み部と、基部に設けられ、蝶ねじの第2羽部が挿入される第2溝が形成された第2掴み部と、基部に設けられた柄部と、柄部に沿って配置される収納位置と柄部に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動するストッパと、蝶ねじが取り付けられた取付対象物に設けられる回転制限補助部材と、を備え、第1掴み部および第2掴み部の少なくとも一方は、第1溝と第2溝との間の距離が調節可能となるように、基部に対してスライド可能となっており、ストッパの位置が回転制限位置である場合に、回転制限補助部材にストッパが接触することによって、蝶ねじの回転が制限される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る蝶ねじ回転治具によれば、複数の種類の蝶ねじのそれぞれの回転に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具を示す正面図である。
【
図3】
図1のストッパが回転した状態を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具を用いて操作されるかご上手摺安全スイッチ装置を示す正面図である。
【
図7】
図6のかご上手摺安全スイッチ装置を示す平面図である。
【
図8】実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具がかご上手摺安全スイッチ装置に取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図9】
図8の蝶ねじ回転治具およびかご上手摺安全スイッチ装置を示す平面図である。
【
図10】
図8の蝶ねじ回転治具が回転した状態を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具がかご上手摺安全スイッチ装置に取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図12】
図11の蝶ねじ回転治具が回転した状態を示す図である。
【
図13】実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具がかご上手摺安全スイッチ装置に取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図14】
図13のストッパが回転制限補助部材に接触した状態を示す図である。
【
図15】実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具を示す正面図である。
【
図16】
図14のXVI-XVI線に沿って視た矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具を示す正面図である。
図2は、
図1の蝶ねじ回転治具を示す平面図である。実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1は、基部101と、第1掴み部102と、第2掴み部103と、柄部104と、ストッパ105と、を備えている。
【0010】
基部101は、長尺部材から構成されている。基部101の長手方向Aの寸法は、複数の種類の蝶ねじのうちの最も大きい種類の蝶ねじにおける径方向の寸法よりも大きい寸法となっている。基部101には、基部101の長手方向Aの寸法を測定するための図示しない目盛が付けられている。
【0011】
第1掴み部102は、基部101に設けられている。第1掴み部102は、基部101に対して固定されている。第1掴み部102は、基部101における長手方向Aの一端部側に配置されている。第1掴み部102には、第1溝106が形成されている。第1掴み部102は、磁化されている。言い換えれば、第1掴み部102は、磁石から構成された磁石部を有している。
【0012】
第2掴み部103は、基部101に設けられている。第2掴み部103は、基部101に対してスライド可能となっている。第2掴み部103のスライド方向は、基部101の長手方向Aとなっている。第2掴み部103が基部101に対してスライドすることによって、第1掴み部102と第2掴み部103との間の距離が変化する。第2掴み部103には、第2溝107が形成されている。第2掴み部103は、磁化されている。言い換えれば、第2掴み部103は、磁石から構成された磁石部を有している。
【0013】
第2掴み部103には、基部101に対して第2掴み部103を固定するための図示しない締結具が設けられている。締結具としては、例えば、ねじが挙げられる。締結具が基部101に接触することによって、基部101に対して第2掴み部103が固定される。一方、締結具が基部101から離れることによって、基部101に対して第2掴み部103がスライド可能となる。
【0014】
第1溝106と第2溝107との間の寸法は、基部101に付けられている目盛を用いて測定することができる。保守点検作業者は、基部101に付けられている目盛を用いて、第1溝106と第2溝107との間の寸法が求められた寸法となるように、第2掴み部103を基部101に対してスライドさせる。
【0015】
第1掴み部102および第2掴み部103は、基部101から互いに同一の方向に延びて配置されている。したがって、第1掴み部102および第2掴み部103は、基部101の長手方向Aに互いに対向して配置されている。また、第1掴み部102および第2掴み部103は、後述する蝶ねじ204の軸方向に延びて配置されている。
【0016】
柄部104は、基部101に設けられている。柄部104は、基部101の長手方向Aの他端部に設けられている。言い換えれば、柄部104は、基部101における第1掴み部102が設けられている部分に対して基部101の長手方向Aにおける反対側の端部に設けられている。柄部104は、基部101の長手方向Aに延びて配置されている。したがって、柄部104は、第2掴み部103のスライド方向に延びて配置されている。
【0017】
柄部104の外周面には、図示しない滑り止め部材が設けられている。柄部104の外周面に設けられた滑り止め部材は、例えば、ゴムから構成されている。柄部104の外周面に滑り止め部材が設けられていることによって、保守点検作業者の手に対して柄部104が滑ることが抑制される。
【0018】
ストッパ105は、柄部104に設けられている。ストッパ105は、長尺部材から構成されている。ストッパ105の長手方向の一端部は、柄部104に回転可能に接続されている。したがって、ストッパ105の長手方向の他端部は、ストッパ105の長手方向の一端部を中心に回転可能となっている。
【0019】
図3は、
図1のストッパ105が回転した状態を示す図である。
図2および
図3に示すように、ストッパ105が柄部104に対して回転することによって、ストッパ105は、柄部104に沿って配置される収納位置と、柄部104に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動する。ストッパ105の位置が収納位置である場合に、ストッパ105は、第2掴み部103のスライド方向に延びて配置される。この例では、ストッパ105の位置が回転制限位置である場合に、ストッパ105は、柄部104に沿った直線に対して垂直に配置される。言い換えれば、ストッパ105の位置が回転制限位置である場合に、ストッパ105は、後述する蝶ねじ204の軸方向に延びて配置される。したがって、ストッパ105の位置が回転制限位置である場合に、ストッパ105は、第1掴み部102および第2掴み部103が基部101から延びる方向と同一の方向に延びて配置される。
【0020】
ストッパ105には、柄部104に対してストッパ105を固定するための図示しない締結具が設けられている。締結具としては、例えば、ねじが挙げられる。締結具が柄部104に接触することによって、柄部104に対してストッパ105が固定される。一方、締結具が柄部104から離れることによって、柄部104に対してストッパ105が回転可能となる。
【0021】
図4は、
図1の第1掴み部102を示す側面図である。第1掴み部102は、基部101の長手方向Aに直交する方向に基部101から延びている。第1溝106は、第1掴み部102の長手方向Bにおける第1掴み部102の基部101とは反対側の面に形成されている。言い換えれば、第1溝106は、第1掴み部102の長手方向Bにおける基部101とは反対側の空間に開口している。第1溝106の幅方向の寸法は、後述する蝶ねじ204の第1羽部209の厚さ方向の寸法よりも大きくなっている。
【0022】
蝶ねじ回転治具1は、第1掴み部102の第1溝106の内壁面に設けられた第1滑り止め部108を備えている。第1滑り止め部108は、例えば、ゴムから構成されている。第1溝106の内壁面に第1滑り止め部108が設けられていることによって、第1溝106に蝶ねじ204の第1羽部209が挿入された場合に、第1掴み部102に対して第1羽部209が滑ることが抑制される。
【0023】
図5は、
図1の第2掴み部103を示す側面図である。第2掴み部103は、基部101の長手方向Aに直交する方向に基部101から延びている。第2溝107は、第2掴み部103の長手方向Cにおける第2掴み部103の基部101とは反対側の面に形成されている。言い換えれば、第2溝107は、第2掴み部103の長手方向Cにおける基部101とは反対側の空間に開口している。第1掴み部102の長手方向Bおよび第2掴み部103の長手方向Cは、互いに同一の方向となっている。第2溝107の幅方向の寸法は、後述する蝶ねじ204の第2羽部210の厚さ方向の寸法よりも大きくなっている。
【0024】
蝶ねじ回転治具1は、第2掴み部103の第2溝107の内壁面に設けられた第2滑り止め部109を備えている。第2滑り止め部109は、例えば、ゴムから構成されている。第2溝107の内壁面に第2滑り止め部109が設けられていることによって、第2溝107に蝶ねじ204の第2羽部210が挿入された場合に、第2掴み部103に対して第2羽部210が滑ることが抑制される。
【0025】
図6は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具を用いて操作されるかご上手摺安全スイッチ装置を示す正面図である。
図7は、
図6のかご上手摺安全スイッチ装置を示す平面図である。かご上手摺安全スイッチ装置2は、固定板201と、安全スイッチ202と、移動板203と、蝶ねじ204と、を備えている。
【0026】
かご上手摺安全スイッチ装置2は、保守点検作業者がエレベーターのかごの上部で作業を行う際に保守点検作業者によって操作される。具体的には、図示しないかご上手摺が組み立てられる場合およびかご上手摺が解体される場合に、保守点検作業者によってかご上手摺安全スイッチ装置2が操作される。
【0027】
かご上手摺安全スイッチ装置2が操作されることによって、エレベーターの自動運転が可能な状態とエレベーターの自動運転が停止される状態との間で、エレベーターの状態が変化する。具体的には、かご上手摺が組み立てられた場合に、エレベーターの状態は、エレベーターの自動運転が停止される状態となり、かご上手摺が解体された場合に、エレベーターの状態は、エレベーターの自動運転が可能な状態となる。
【0028】
固定板201は、図示しないかご上手摺に固定されている。固定板201には、蝶ねじ204が挿入されるねじ穴205が形成されている。
【0029】
安全スイッチ202は、固定板201に取り付けられている。安全スイッチ202は、移動板203によって操作されるスイッチ本体206を有している。スイッチ本体206が操作されることによって、スイッチ本体206の操作情報が図示しないエレベーター制御盤に入力される。エレベーター制御盤は、スイッチ本体206の操作情報を用いて、エレベーターの状態を変化させる。
【0030】
移動板203は、蝶ねじ204を用いて固定板201に取り付けられている。移動板203には、蝶ねじ204が挿入される図示しない貫通孔が形成されている。蝶ねじ204が移動板203の貫通孔に挿入された状態で、蝶ねじ204が固定板201のねじ穴205に挿入されることによって、蝶ねじ204が移動板203を固定板201に締め付ける。蝶ねじ204が移動板203を固定板201に締め付けることによって、スイッチ本体206の状態がオン状態となる。蝶ねじ204による固定板201への移動板203の締め付けが解除されることによって、スイッチ本体206の状態がオフ状態となる。スイッチ本体206の状態を示す情報は、スイッチ本体206の操作情報として、エレベーター制御盤に入力される。
【0031】
蝶ねじ204は、ねじ本体207と、頭部208と、第1羽部209と、第2羽部210と、を有している。
【0032】
ねじ本体207は、円柱形状に形成されている。ねじ本体207の外周面には、ねじ溝が形成されている。ねじ本体207は、移動板203の貫通孔および固定板201のねじ穴205に挿入される。
【0033】
頭部208は、ねじ本体207の長手方向の一端部に配置されている。第1羽部209および第2羽部210のそれぞれは、頭部208に配置されている。第1羽部209および第2羽部210は、ねじ本体207の径方向に互いに離れて配置されている。また、第1羽部209および第2羽部210は、ねじ本体207の軸方向に視た場合に、ねじ本体207から径方向の外側に延びるように配置されている。
【0034】
次に、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順について説明する。まず、スイッチ本体206の状態がオン状態からオフ状態となるように、蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順について説明する。
図8は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1がかご上手摺安全スイッチ装置2に取り付けられた状態を示す正面図である。
図9は、
図8の蝶ねじ回転治具1およびかご上手摺安全スイッチ装置2を示す平面図である。
【0035】
まず、保守点検作業者は、蝶ねじ204における第1羽部209と第2羽部210との間の寸法に対応して、第1掴み部102の第1溝106と第2掴み部103の第2溝107との間の寸法を調節する。第1溝106と第2溝107との間の寸法は、基部101に付けられた目盛を用いて、調節される。
【0036】
第1掴み部102と第2掴み部103との間の寸法は、蝶ねじ204の頭部208の径方向の寸法よりも大きくする。これにより、第1掴み部102と第2掴み部103との間に蝶ねじ204の頭部208が挿入可能となる。
【0037】
その後、保守点検作業者は、蝶ねじ204の第1羽部209を第1掴み部102の第1溝106に挿入し、蝶ねじ204の第2羽部210を第2掴み部103の第2溝107に挿入する。この時、第1掴み部102と第2掴み部103との間に蝶ねじ204の頭部208が挿入された状態で、第1溝106に第1羽部209が挿入され、第2溝107に第2羽部210が挿入される。これにより、第1羽部209における第1溝106に挿入されている領域が大きくなり、第2羽部210における第2溝107に挿入されている領域が大きくなる。その結果、第1羽部209が第1溝106から外れにくくなり、第2羽部210が第2溝107から外れにくくなる。
【0038】
その後、保守点検作業者は、柄部104を掴み、蝶ねじ204のねじ本体207の周方向に基部101を回転させる。この時、保守点検作業者は、ストッパ105の位置を収納位置にする。
図10は、
図8の蝶ねじ回転治具1が回転した状態を示す図である。基部101が回転することによって、第1掴み部102および第2掴み部103が蝶ねじ204のねじ本体207を中心に回転する。これにより、蝶ねじ204が回転する。
【0039】
蝶ねじ204が回転することによって、蝶ねじ204による固定板201への移動板203の締め付けが解除される。これにより、スイッチ本体206の状態がオフ状態となる。
【0040】
次に、スイッチ本体206の状態がオフ状態からオン状態になるように、蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順について説明する。
図11は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1がかご上手摺安全スイッチ装置2に取り付けられた状態を示す正面図である。
【0041】
まず、保守点検作業者は、蝶ねじ204における第1羽部209と第2羽部210との間の寸法に対応して、第1掴み部102の第1溝106と第2掴み部103の第2溝107との間の寸法を調節する。第1溝106と第2溝107との間の寸法は、基部101に付けられた目盛を用いて、調節される。
【0042】
第1掴み部102と第2掴み部103との間の寸法は、蝶ねじ204の頭部208の径方向の寸法よりも大きくする。これにより、第1掴み部102と第2掴み部103との間に蝶ねじ204の頭部208が挿入可能となる。
【0043】
その後、保守点検作業者は、蝶ねじ204の第1羽部209を第1掴み部102の第1溝106に挿入し、蝶ねじ204の第2羽部210を第2掴み部103の第2溝107に挿入する。この時、第1掴み部102と第2掴み部103との間に蝶ねじ204の頭部208が挿入された状態で、第1溝106に第1羽部209が挿入され、第2溝107に第2羽部210が挿入される。これにより、第1羽部209における第1溝106に挿入されている領域が大きくなり、第2羽部210における第2溝107に挿入されている領域が大きくなる。その結果、第1羽部209が第1溝106から外れにくくなり、第2羽部210が第2溝107から外れにくくなる。
【0044】
その後、保守点検作業者は、ストッパ105の位置を収納位置から回転制限位置に移動させる。
【0045】
その後、保守点検作業者は、柄部104を掴み、蝶ねじ204のねじ本体207の周方向に基部101を回転させる。
図12は、
図11の蝶ねじ回転治具1が回転した状態を示す図である。基部101が回転することによって、第1掴み部102および第2掴み部103が蝶ねじ204のねじ本体207を中心に回転する。これにより、蝶ねじ204が回転する。
【0046】
蝶ねじ204が回転することによって、蝶ねじ204によって固定板201に移動板203が締め付けられる。これにより、スイッチ本体206の状態がオン状態となる。
【0047】
また、基部101が回転することによって、ストッパ105は、固定板201に接触する。ストッパ105が固定板201に接触することによって、基部101の回転が制限される。基部101の回転が制限されることによって、蝶ねじ204の回転が制限される。蝶ねじ204の回転が制限されることによって、蝶ねじ204による固定板201への移動板203の締付力が制限される。
【0048】
以上説明したように、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1は、基部101と、第1掴み部102と、第2掴み部103と、を備えている。第1掴み部102は、基部101に設けられており、蝶ねじ204の第1羽部209が挿入される第1溝106が形成されている。第2掴み部103は、基部101に設けられており、蝶ねじ204の第2羽部210が挿入される第2溝107が形成されている。第2掴み部103は、第1溝106と第2溝107との間の距離が調節可能となるように、基部101に対してスライド可能となっている。この構成によれば、複数の種類の蝶ねじ204のそれぞれに対応して、第1溝106と第2溝107との間の距離を調節することができる。これにより、複数の種類の蝶ねじ204のそれぞれの回転に蝶ねじ回転治具1が使用可能となる。
【0049】
また、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1は、基部101に設けられ、第2掴み部103のスライド方向に延びた柄部104をさらに備えている。この構成によれば、作業者は、柄部104を掴んで、第1掴み部102および第2掴み部103を回転させることができる。これにより、保守点検作業者は、より小さな力で蝶ねじ204を回転させることができる。
【0050】
また、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1は、柄部104に設けられたストッパ105を備えている。ストッパ105は、第2掴み部103のスライド方向に延びて配置される収納位置と、柄部104に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動する。ストッパ105の位置が回転制限位置である場合に、蝶ねじ204が取り付けられた取付対象物である固定板201にストッパ105が接触することによって、蝶ねじ204の回転が制限される。この構成によれば、スイッチ本体206の状態がオン状態となるように蝶ねじ204を回転させる場合に、蝶ねじ204の回転量が制限される。これにより、蝶ねじ204による固定板201への移動板203の締付力が制限される。
【0051】
実施の形態2.
図13は、実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具がかご上手摺安全スイッチ装置に取り付けられた状態を示す正面図である。実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具1は、蝶ねじ204が取り付けられた取付対象物に設けられる回転制限補助部材110をさらに備えている。この例では、回転制限補助部材110が設けられる取付対象物は、固定板201となっている。
【0052】
回転制限補助部材110は、磁力を用いて、固定板201に固定されている。これにより、保守点検作業者は、回転制限補助部材110を固定板201に対して容易に着脱することができる。実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具におけるその他の構成は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具の構成と同様である。
【0053】
スイッチ本体206の状態がオン状態からオフ状態になるように、蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順と同様である。
【0054】
スイッチ本体206の状態がオフ状態からオン状態になるように、蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順は、実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順と異なる。
図14は、
図13のストッパ105が回転制限補助部材110に接触した状態を示す図である。基部101が回転することによって、第1掴み部102および第2掴み部103がねじ本体207を中心に回転する。これにより、蝶ねじ204が回転する。
【0055】
蝶ねじ204が回転することによって、蝶ねじ204によって固定板201に移動板203が締め付けられる。これにより、スイッチ本体206の状態がオン状態となる。
【0056】
また、基部101が回転することによって、ストッパ105は、回転制限補助部材110に接触する。ストッパ105が回転制限補助部材110に接触することによって、蝶ねじ204の回転が制限される。実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作するその他の手順は、実施の形態1に係る蝶ねじ回転治具1を用いてかご上手摺安全スイッチ装置2を操作する手順と同様である。
【0057】
以上説明したように、実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具1は、ストッパ105と、回転制限補助部材110と、を備えている。ストッパ105は、柄部104に設けられている。また、ストッパ105は、第2掴み部103のスライド方向に延びて配置される収納位置と、柄部104に沿った直線に対して交差するように配置される回転制限位置との間で移動する。回転制限補助部材110は、蝶ねじ204が取り付けられた固定板201に設けられている。ストッパ105の位置が回転制限位置である場合に、回転制限補助部材110にストッパ105が接触することによって、蝶ねじ204の回転が制限される。この構成によれば、スイッチ本体206の状態がオン状態となるように蝶ねじ204を回転させる場合に、蝶ねじ204の回転量が制限される。これにより、蝶ねじ204による固定板201への移動板203の締付力が制限される。
【0058】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具を示す正面図である。
図16は、
図15のXVI-XVI線に沿って視た矢視断面図である。実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具1では、第1溝106は、第1掴み部102における第2掴み部103に対向する面に形成されている。言い換えれば、第1溝106は、第1掴み部102と第2掴み部103との間の空間に開口している。第1掴み部102は、基部101の長手方向Aにおける第2掴み部103とは反対側の部分に第1壁111を有している。
【0059】
第1溝106に蝶ねじ204の第1羽部209が挿入された場合に、第1羽部209が第1壁111に接触する。第1羽部209が第1壁111に接触することによって、第1掴み部102が第2羽部210に近づくことが制限される。
【0060】
また、実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具1では、第2溝107は、第2掴み部103における第1掴み部102に対向する面に形成されている。言い換えれば、第2溝107は、第1掴み部102と第2掴み部103との間の空間に開口している。第2掴み部103は、基部101の長手方向Aにおける第1掴み部102とは反対側の部分に第2壁112を有している。
【0061】
第2溝107に蝶ねじ204の第2羽部210が挿入された場合に、第2羽部210が第2壁112に接触する。第2羽部210が第2壁112に接触することによって、第2掴み部103が第1羽部209に近づくことが制限される。
【0062】
第1溝106に蝶ねじ204の第1羽部209が挿入され、第2溝107に蝶ねじ204の第2羽部210が挿入されることによって、蝶ねじ204に対する蝶ねじ回転治具1の基部101の長手方向Aへの移動が制限される。
【0063】
実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具1におけるその他の構成は、実施の形態1または実施の形態2に係る蝶ねじ回転治具1の構成と同様である。
【0064】
以上説明したように、実施の形態3に係る蝶ねじ回転治具1では、第1溝106は、第1掴み部102における第2掴み部103に対向する面に形成されており、第2溝107は、第2掴み部103における第1掴み部102に対向する面に形成されている。この構成によれば、第1溝106に蝶ねじ204の第1羽部209が挿入され、第2溝107に蝶ねじ204の第2羽部210が挿入されることによって、蝶ねじ204に対する蝶ねじ回転治具1の基部101の長手方向Aへの移動が制限される。これにより、保守点検作業者は、蝶ねじ回転治具1による蝶ねじ204の回転をより容易に行うことができる。
【0065】
なお、各実施の形態では、第1掴み部102が基部101に対して固定され、第2掴み部103が基部101に対してスライド可能となっている構成について説明した。しかしながら、第1掴み部102が基部101に対してスライド可能となっており、第2掴み部103が基部101に対して固定された構成であってもよい。また、第1掴み部102および第2掴み部103のそれぞれが基部101に対してスライド可能となっている構成であってもよい。言い換えれば、第1掴み部102および第2掴み部103の少なくとも一方が、基部101に対してスライド可能となっている構成であればよい。
【0066】
また、各実施の形態では、かご上手摺安全スイッチ装置2における蝶ねじ204を操作する蝶ねじ回転治具1の構成について説明した。しかしながら、かご上手摺安全スイッチ装置2に限らず、例えば、かご上手摺装置における蝶ねじを操作する蝶ねじ回転治具1の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 蝶ねじ回転治具、2 かご上手摺安全スイッチ装置、101 基部、102 第1掴み部、103 第2掴み部、104 柄部、105 ストッパ、106 第1溝、107 第2溝、108 第1滑り止め部、109 第2滑り止め部、110 回転制限補助部材、111 第1壁、112 第2壁、201 固定板、202 安全スイッチ、203 移動板、204 蝶ねじ、205 ねじ穴、206 スイッチ本体、207 ねじ本体、208 頭部、209 第1羽部、210 第2羽部。