(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】波形測定器、波形情報処理システム、波形情報処理装置、波形情報処理プログラム、及び波形情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
G01R13/20 M
G01R13/20 R
G01R13/20 U
(21)【出願番号】P 2021146469
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】中山 悦郎
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-169888(JP,A)
【文献】特開2002-207050(JP,A)
【文献】特開2018-164159(JP,A)
【文献】特開2020-154699(JP,A)
【文献】特開2011-174802(JP,A)
【文献】特開2022-082531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 13/00-13/42、
G01D 9/00-9/42、
15/00-15/34、
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mを2以上の整数としたとき、入力されたアナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに書き込む波形測定器であって、
Nを1以上かつM未満の整数とし
、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数とし、各サンプリング区間をL/N個のサブ区間に分割したとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する
第1圧縮データとして生成するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を算出
し、各サブ区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サブ区間に対応する第2圧縮データとして生成する
とともに、各サブ区間を識別するサブ識別値を算出し、前記複数のサンプリング区間の各々のL/N個のサブ区間の各々について、前記第2圧縮データと前記サブ識別値とを前記ストレージに書き込む制御部と、
前記複数のサンプリング区間の各々について、前記制御部により生成された
第1圧縮データと、前記制御部により算出された識別値とを外部装置に送
信する通信部と、
を備え、
前記通信部により、少なくとも1つの識別値を含む第1要求が前記外部装置から受信された場合、
前記制御部は、前記複数のサンプリング区間のうち、前記
第1要求に含まれる識別値で識別される少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを前記ストレージから読み出し、
前記通信部は、前記制御部により読み出されたデジタル信号データを前記外部装置に送信
し、
前記通信部により、前記複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々を識別するサブ識別値を含む第2要求が前記外部装置から受信された場合、
前記制御部は、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、前記第2要求に含まれるサブ識別値で識別されるサブ区間に対応する第2圧縮データを前記ストレージから読み出し、
前記通信部は、前記制御部により読み出された第2圧縮データを前記外部装置に送信する波形測定器。
【請求項2】
前記制御部は、各
サブ識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサ
ブ区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出
して前記ストレージに書き込む請求項1に記載の波形測定器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の波形測定器と、
各サンプリング区間に対応する前記
第1圧縮データと、各識別値とを受信し、前記複数のサンプリング区間について、受信した
第1圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示させ、前記第1波形の、前記少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する
第1操作
を受け付けた場合、前記少なくとも1つの識別値を含む前記
第1要求を送信し、前記
第1要求に応じて送信されたデジタル信号データを受信し、前記少なくとも1つのサンプリング区間について、受信したデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させ
、前記第1波形の、前記1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を前記第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作を受け付けた場合、前記1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値に基づいて、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々を識別するサブ識別値を算出し、算出したサブ識別値を含む前記第2要求を送信し、前記第2要求に応じて送信された第2圧縮データを受信し、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、受信した第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させる波形情報処理装置と、
を備える波形情報処理システム。
【請求項4】
Mを2以上の整数とし、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する
第1圧縮データとして外部装置から受信するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を前記外部装置から受信する通信部と、
前記複数のサンプリング区間について、前記通信部により受信された
第1圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示さ
せる制御部と、
を備え、
前記制御部により、前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する第1操作がユーザから受け付けられた場合、
前記制御部は、前記通信部により受信された、前記少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む第1要求を生成し、
前記通信部は、前記
第1要求を前記外部装置に送信し、前記少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを前記外部装置から受信し、
前記制御部は、前記少なくとも1つのサンプリング区間について、前記通信部により受信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させ
、
前記制御部により、前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を前記第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作が前記ユーザから受け付けられた場合、
前記制御部は、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数とし、各サンプリング区間をL/N個のサブ区間に分割したとき、前記通信部により受信された、前記1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値に基づいて、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々を識別するサブ識別値を算出し、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、前記サブ識別値を含む第2要求を生成し、
前記通信部は、前記第2要求を前記外部装置に送信し、前記1つ以上のサンプリング区間の各サブ区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サブ区間に対応する第2圧縮データとして前記外部装置から受信し、
前記制御部は、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、前記通信部により受信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させる波形情報処理装置。
【請求項5】
前記通信部は、各
サブ識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサ
ブ区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出して得られた値を受信する請求項
4に記載の波形情報処理装置。
【請求項6】
Mを2以上の整数とし、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する
第1圧縮データとして外部装置から受信するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を前記外部装置から受信することと、
前記複数のサンプリング区間について、前記外部装置から受信された
第1圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示さ
せることと、
前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する第1操作がユーザから受け付けられた場合、
受信された、前記少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む第1要求を生成することと、
前記
第1要求を前記外部装置に送信し、前記少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを前記外部装置から受信することと、
前記少なくとも1つのサンプリング区間について、受信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させることと、
前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を前記第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作が前記ユーザから受け付けられた場合、
LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数とし、各サンプリング区間をL/N個のサブ区間に分割したとき、受信された、前記1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値に基づいて、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々を識別するサブ識別値を算出し、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、前記サブ識別値を含む第2要求を生成することと、
前記第2要求を前記外部装置に送信し、前記1つ以上のサンプリング区間の各サブ区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サブ区間に対応する第2圧縮データとして前記外部装置から受信することと、
前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、受信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を前記表示部又は前記端末装置に表示させることと、
を含む動作をコンピュータに実行させる波形情報処理プログラム。
【請求項7】
Mを2以上の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換することと、
各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに書き込むことと、
Nを1以上かつM未満の整数とし
、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数とし、各サンプリング区間をL/N個のサブ区間に分割したとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する
第1圧縮データとして生成することと、
各サンプリング区間を識別する識別値を算出することと、
各サブ区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サブ区間に対応する第2圧縮データとして生成することと、
各サブ区間を識別するサブ識別値を算出することと、
前記複数のサンプリング区間の各々のL/N個のサブ区間の各々について、前記第2圧縮データと前記サブ識別値とを前記ストレージに書き込むことと、
前記複数のサンプリング区間の各々について、生成された
第1圧縮データと、算出された識別値とを第1装置から第2装置に送信することと、
前記複数のサンプリング区間について、前記
第1圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示することと、
前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する
第1操作
を受け付けた場合、
前記少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む
第1要求を前記第2装置から前記第1装置に送信することと、
前記複数のサンプリング区間のうち、前記
第1要求に含まれる識別値で識別される少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを前記ストレージから読み出すことと、
読み出されたデジタル信号データを前記第1装置から第2装置に送信することと、
前記少なくとも1つのサンプリング区間について、送信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を表示することと、
前記第1波形の、前記複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を前記第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作を受け付けた場合、
前記1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値に基づいて、前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々を識別するサブ識別値を算出することと、
算出されたサブ識別値を含む第2要求を前記第2装置から前記第1装置に送信することと、
前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、前記第2要求に含まれるサブ識別値で識別されるサブ区間に対応する第2圧縮データを前記ストレージから読み出すことと、
読み出された第2圧縮データを前記第1装置から第2装置に送信することと、
前記1つ以上のサンプリング区間のL/N個のサブ区間の各々について、送信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を表示することと、
を含む波形情報処理方法。
【請求項8】
各サブ区間を識別するサブ識別値を算出することは、各
サブ識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサ
ブ区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出することを含む請求項
7に記載の波形情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波形測定器、波形情報処理システム、波形情報処理装置、波形情報処理プログラム、及び波形情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び非特許文献1には、取り込んだデータのリアルタイム演算を行う波形測定器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】中山悦郎,外1名,「スコープコーダDL850 リアルタイム演算機能」,横河技報,Vol.55,No.1(2012),pp.9~14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波形測定器で取得されたデータを圧縮して外部装置に送信することが考えられる。その場合、波形測定器と外部装置との間のデータ通信量を抑制することが望ましい。特にサンプリング速度が速い場合は、波形測定器と外部装置との間で膨大なデータが送受信され、通信の遮断が生じるおそれがあるため、データ通信量を抑制することが求められる。
【0006】
本開示の目的は、データ通信量を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る波形測定器は、Mを2以上の整数としたとき、入力されたアナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに書き込む波形測定器であって、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして生成するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を算出する制御部と、複数のサンプリング区間の各々について、制御部により生成された圧縮データと、制御部により算出された識別値とを外部装置に送信し、少なくとも1つの識別値を含む要求を外部装置から受信する通信部と、を備え、制御部は、複数のサンプリング区間のうち、通信部により受信された要求に含まれる識別値で識別される少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージから読み出し、通信部は、制御部により読み出されたデジタル信号データを外部装置に送信する。このような波形測定器においては、外部装置から要求がなければ、波形測定器と外部装置との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、外部装置から要求があったときに、要求されたデジタル信号データ(以下、「生データ」ともいう)が送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0008】
一実施形態に係る波形測定器において、制御部は、各識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出する。このような実施形態によれば、デジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出しておくだけで、外部装置の要求する少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを簡易に識別することができる。
【0009】
一実施形態に係る波形測定器において、制御部は、圧縮データである第1圧縮データを生成するだけでなく、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数としたとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでL個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データとして生成し、通信部は、要求である第1要求の代わりに、1つ以上の識別値を含み、当該1つ以上の識別値で識別される1つ以上のサンプリング区間に対応する第2圧縮データを要求する第2要求を受信すると、要求された第2圧縮データを外部装置に送信する。このような実施形態によれば、外部装置には、第1圧縮データだけでなく、第2要求に応じて第2圧縮データも送信される。L>Nより、第2圧縮データは、第1圧縮データよりも多くの代表値を含む。つまり、波形生成のためにプロットされる代表値が多い。したがって、第2圧縮データを使用すれば、第1圧縮データに比べてアナログ信号の波形をより忠実に表すことができる。よって、例えば、第1圧縮データを使用した波形からズームアップするときに、第2圧縮データを使用した波形を提示することで波形の観察ニーズが満たされれば、デジタル信号データを送受信する必要がなくなる。その結果、外部装置からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【0010】
幾つかの実施形態に係る波形情報処理システムは、上記の幾つかの実施形態に係る波形測定器と、各サンプリング区間に対応する圧縮データと、各識別値とを受信し、複数のサンプリング区間について、受信した圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示させ、第1波形の、少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する操作に応じて、少なくとも1つの識別値を含む要求を送信し、要求に応じて送信されたデジタル信号データを受信し、少なくとも1つのサンプリング区間について、受信したデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を表示部又は端末装置に表示させる波形情報処理装置と、を備える。このような波形情報処理システムにおいては、波形情報処理装置から要求がなければ、波形測定器と波形情報処理装置との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理装置から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0011】
幾つかの実施形態に係る波形情報処理装置は、Mを2以上の整数とし、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして外部装置から受信するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を外部装置から受信する通信部と、複数のサンプリング区間について、通信部により受信された圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示させ、第1波形の、複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する操作をユーザから受け付けると、通信部により受信された、当該少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む要求を生成する制御部と、を備え、通信部は、制御部により生成された要求を外部装置に送信し、少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを外部装置から受信し、制御部は、少なくとも1つのサンプリング区間について、通信部により受信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を表示部又は端末装置に表示させる。このような波形情報処理装置においては、波形情報処理装置から要求がなければ、波形情報処理装置と外部装置との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理装置から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0012】
一実施形態に係る波形情報処理装置において、通信部は、各識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出して得られた値を受信する。このような実施形態によれば、デジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出して得られた値から、外部装置の要求する少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを簡易に識別することができる。
【0013】
一実施形態に係る波形情報処理装置において、制御部は、操作である第1操作の代わりに、第1波形の、複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作をユーザから受け付けると、要求である第1要求の代わりに、通信部により受信された、当該1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値を含む第2要求を生成し、通信部は、制御部により生成された第2要求を外部装置に送信し、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数としたとき、圧縮データである第1圧縮データの代わりに、1つ以上のサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、L個の代表値を含むデータを1つ以上のサンプリング区間に対応する第2圧縮データとして外部装置から受信し、制御部は、1つ以上のサンプリング区間について、通信部により受信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を表示部又は端末装置に表示させる。このような実施形態によれば、波形情報処理装置には、第1圧縮データだけでなく、第2要求に応じて第2圧縮データも送信される。L>Nより、第2圧縮データは、第1圧縮データよりも多くの代表値を含む。つまり、波形生成のためにプロットされる代表値が多い。したがって、第2圧縮データを使用すれば、第1圧縮データに比べてアナログ信号の波形をより忠実に表すことができる。よって、例えば、第1圧縮データを使用した波形からズームアップするときに、第2圧縮データを使用した波形を提示することで波形の観察ニーズが満たされれば、デジタル信号データを送受信する必要がなくなる。その結果、波形情報処理装置からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【0014】
幾つかの実施形態に係る波形情報処理プログラムは、Mを2以上の整数とし、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換し各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することで生成された、N個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして外部装置から受信するとともに、各サンプリング区間を識別する識別値を外部装置から受信することと、複数のサンプリング区間について、外部装置から受信された圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示部又は端末装置に表示させ、第1波形の、複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の拡大を要求する操作をユーザから受け付けると、外部装置から受信された、当該少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む要求を生成することと、少なくとも1つの識別値を含む要求を外部装置に送信し、少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを外部装置から受信することと、少なくとも1つのサンプリング区間について、受信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を表示部又は端末装置に表示させることと、を含む動作をコンピュータに実行させる。このような波形情報処理プログラムにおいては、波形情報処理プログラムから要求がなければ、圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理プログラムから要求があったときに、その要求に係るデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0015】
幾つかの実施形態に係る波形情報処理方法は、Mを2以上の整数としたとき、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間の各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換することと、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに書き込むことと、Nを1以上かつM未満の整数としたとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして生成することと、各サンプリング区間を識別する識別値を算出することと、複数のサンプリング区間の各々について、生成された圧縮データと、算出された識別値とを第1装置から第2装置に送信することと、複数のサンプリング区間について、圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形を表示することと、第1波形の、複数のサンプリング区間のうち少なくとも1つのサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を要求する操作に応じて、当該少なくとも1つのサンプリング区間を識別する少なくとも1つの識別値を含む要求を第2装置から第1装置に送信することと、複数のサンプリング区間のうち、要求に含まれる識別値で識別される少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージから読み出すことと、読み出されたデジタル信号データを第1装置から第2装置に送信することと、少なくとも1つのサンプリング区間について、送信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形を表示することと、を含む。このような波形情報処理方法によれば、第2装置から要求がなければ、第1装置と第2装置との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、第2装置から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0016】
一実施形態に係る波形情報処理方法において、算出することは、各識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出することを含む。このような実施形態によれば、デジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出しておくだけで、第2装置の要求する少なくとも1つのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを簡易に識別することができる。
【0017】
一実施形態に係る波形情報処理方法は、圧縮データである第1圧縮データだけでなく、LをNよりも大きく、かつMよりも小さい整数としたとき、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでL個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データとして生成することと、操作である第1操作の代わりに、第1波形の、複数のサンプリング区間のうち1つ以上のサンプリング区間に対応する部分の表示の拡大を第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作に応じて、要求である第1要求の代わりに、当該1つ以上のサンプリング区間を識別する1つ以上の識別値を含む第2要求を第2装置から第1装置に送信することと、複数のサンプリング区間のうち、第2要求に含まれる識別値で識別される1つ以上のサンプリング区間に対応する第2圧縮データを第1装置から第2装置に送信することと、1つ以上のサンプリング区間について、送信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形を表示することと、を更に含む。このような実施形態によれば、第2装置は、第1圧縮データだけでなく第2圧縮データも取得する。L>Nより、第2圧縮データは、第1圧縮データよりも多くの代表値を含む。つまり、波形生成のためにプロットされる代表値が多い。したがって、第2圧縮データは、第1圧縮データよりもアナログ信号の波形を忠実に表す。したがって、第2圧縮データを使用すれば、第1圧縮データに比べてアナログ信号の波形をより忠実に表すことができる。よって、例えば、第1圧縮データを使用した波形からズームアップするときに、第2圧縮データを使用した波形を提示することで波形の観察ニーズが満たされれば、デジタル信号データを送受信する必要がなくなる。その結果、第2装置からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、データ通信量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】比較例に係る波形情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】比較例に係る波形測定器の詳細構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る波形情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る波形測定器の詳細構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係るサンプリング区間、サンプル値、PPデータ、及び識別値の対応関係を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る波形情報処理システムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る波形情報処理システムで送受信されるデータ及び要求を示す図である。
【
図8】波形情報処理装置における波形表示処理の例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る波形情報処理システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係る波形情報処理システムの動作の別の例を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態に係る波形測定器の詳細構成を示すブロック図である。
【
図12】第2実施形態に係る波形情報処理システムの動作を示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係るサンプリング区間、サンプル値、PPデータ、及び識別値の対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に比較例について説明する。
【0021】
図1は、比較例に係る波形情報処理システム10の構成を示す。波形情報処理システム10は、波形測定器11と、インターネット等のネットワークを介して波形測定器11に接続されるクラウドサーバ12と、インターネット等のネットワークを介してクラウドサーバ12に接続されるローカルPC13とを備える。「PC」は、personal computerの略語である。
【0022】
波形測定器11は、アナログ信号の波形をデジタル信号データに変換してクラウドサーバ12に送信する。クラウドサーバ12は、波形測定器11から受信したデジタル信号データをローカルPC13に送信する。ローカルPC13は、クラウドサーバ12から送信されたデジタル信号データからアナログ信号の擬似的な波形を生成し、表示する。
【0023】
図2を参照して、波形測定器11の構成について説明する。
【0024】
波形測定器11では、
図2に示すように、観測されるアナログ入力チャンネルCH1のアナログ信号が入力増幅器101で正規化され、A/D変換器102に入力される。「A/D」は、analog to digitalの略語である。アナログ入力チャンネルCH1と同時に観測されるアナログ入力チャンネルCH2のアナログ信号は、入力増幅器104で正規化され、A/D変換器105に入力される。データを取り込むタイミングは、サンプルタイミング発生回路111により制御される。A/D変換器102、105は、サンプルタイミング発生回路111により生成されるタイミング信号に応じてA/D変換を行う。変換されたデータは、インターフェース回路103、106を通じてメモリコントローラ112に送られ、波形メモリ121に順次格納される。波形メモリ121に格納されたデータは、必要に応じてCPU113を用いて、表示波形作成回路131でパルスに変換され、波形表示器132に波形として表示される。「CPU」は、central processing unitの略語である。波形メモリ121に格納されたデータは、一定量が溜まったところで、CPU113により、通信回路141を通じて、外部のクラウドサーバ12に送信される。クラウドサーバ12上のデータは、ローカルPC13により適宜読み出され、波形又は数値データに変換されて、ローカルPC13上に表示され、観察される。
【0025】
このような波形情報処理システム10では、波形測定器11のサンプルタイミングが遅く、例えば1msであり、かつチャンネル数が少ない場合は、クラウドサーバ12への転送データ量が大きくはならないので、リアルタイムでデータを転送することができる。しかしながら、波形測定器11のサンプルタイミングが速い場合は、以下の事態を招く。すなわち、波形測定器11のサンプルタイミングが速くなるに従って、波形測定器11とクラウドサーバ12との間のデータ通信量が多くなり、通信の遮断が生じる。例えば、サンプリング周期1kHz、2チャンネルで、各チャンネルデータ長が16ビットである場合は、データ量は4kbyte/sである。この場合は、ネットワークに対する負荷は大きくない。一方、サンプリング周期10MHz、8チャンネルで、各チャンネルデータ長が16ビットである場合は、データ量は160Mbyte/sとなる。この場合は、少なくとも1.28Gbpsの通信速度を確保しなければならず、ネットワークに対する負荷は大きい。リアルタイムでデータを転送するには専用通信網等が必要となり、LTE等の公衆通信網を使用することは不可能である。「LTE」は、Long Term Evolutionの略語である。つまり、波形測定器11のサンプルタイミングが速くなるとクラウドサーバ12に保存するデータ量が多くなる。サンプルタイミングが速くなると短時間でもデータ量は膨大となり、通信の遮断が生じる。なお、クラウドサーバ12上に確保するデータ容量は一般に従量課金であるので、データ容量が大きくなるにつれてコストも大きくなる。
【0026】
よって、特に高速サンプリング時にはデータ通信量を抑制し、通信の遮断を防止する必要がある。
【0027】
以下、本開示の幾つかの実施形態について、図を参照して説明する。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0028】
本開示の一実施形態である第1実施形態について説明する。
【0029】
図3を参照して、本実施形態に係る波形情報処理システム20の構成を説明する。
【0030】
波形情報処理システム20は、
図3に示すように、第1装置である波形測定器21と、第2装置である波形情報処理装置22と、第3装置である端末装置23とを備える。
【0031】
波形測定器21は、入力されたアナログ信号の波形をデジタル信号データに変換する装置である。波形測定器21は、波形情報処理装置22からの要求に応じてデジタル信号データを波形情報処理装置22に送信する。波形測定器21は、
図3に示すように、入力部200と、制御部210と、記憶部220と、表示部230と、通信部240とを備える。
【0032】
波形情報処理装置22は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバコンピュータ等のサーバ装置である。波形情報処理装置22は、波形測定器21から取得したデータに含まれる値をプロットして得られる波形を端末装置23に表示させる。別法として、波形情報処理装置22は、波形を表示する現場に設置されるデスクトップコンピュータ、又はラップトップコンピュータ等の端末装置であってもよい。その場合、端末装置である波形情報処理装置22は、端末装置23の代わりに、波形測定器21から取得したデータに含まれる値をプロットして得られる波形を表示部に表示させる。よって、第3装置である端末装置23を省略することができる。波形情報処理装置22は、
図3に示すように、制御部310と、通信部340とを備える。
【0033】
端末装置23は、波形を表示する現場に設置されるデスクトップコンピュータ、又はラップトップコンピュータ等である。端末装置23は、
図3に示すように、入力部400と、制御部410と、表示部430と、通信部440とを備える。
【0034】
波形情報処理装置22の機能は、本実施形態に係る波形情報処理プログラムを、制御部310に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、波形情報処理装置22の機能は、ソフトウェアにより実現される。波形情報処理プログラムは、波形情報処理装置22の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、当該ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、波形情報処理プログラムは、コンピュータを波形情報処理装置22として機能させるためのプログラムである。
【0035】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD又はCD-ROMなどの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワーク25を介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0036】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、メモリに格納する。そして、コンピュータは、メモリに格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0037】
波形情報処理装置22の一部又は全ての機能が、制御部310に含まれるプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、波形情報処理装置22の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0038】
【0039】
波形測定器21は、入力されたアナログ信号の波形を複数のサンプリング区間SI1~SInの各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換する。サンプリング区間SIの数nは、2以上の整数である。サンプル値の数Mは、2以上の整数である。波形測定器21は、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに書き込む。ストレージは、波形測定器21の記憶部220であっても波形測定器21の外部の記憶装置であってもよい。波形測定器21は、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして生成する。代表値の数Nは、1以上かつM未満の整数である。波形測定器21は、各サンプリング区間を識別する識別値を算出する。波形測定器21は、複数のサンプリング区間SI1~SInの各々について、生成された圧縮データと、算出された識別値とを波形情報処理装置22に送信する。
【0040】
波形情報処理装置22は、複数のサンプリング区間SI1~SInについて、圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形W1を端末装置23に表示させる。波形情報処理装置22は、第1波形W1の、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち少なくとも1つのサンプリング区間SIxに対応する部分の表示の拡大を要求する操作OPをユーザから受け付けると、少なくとも1つのサンプリング区間SIxを識別する少なくとも1つの識別値IDxを含む要求Rを波形測定器21に送信する。
【0041】
波形測定器21は、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち、要求Rに含まれる識別値IDxで識別される少なくとも1つのサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データをストレージから読み出す。波形測定器21は、読み出されたデジタル信号データを波形情報処理装置22に送信する。
【0042】
波形情報処理装置22は、少なくとも1つのサンプリング区間SIxについて、送信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形W2を端末装置23に表示させる。
【0043】
本実施形態によれば、波形情報処理装置22から要求がなければ、波形測定器21と波形情報処理装置22との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理装置22から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0044】
波形測定器21は、各識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出してもよい。この場合、デジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出しておくだけで、波形情報処理装置22の要求する少なくとも1つのサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データを簡易に識別することができる。
【0045】
本実施形態の一変形例である第2実施形態として、波形測定器21は、圧縮データである第1圧縮データだけでなく、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでL個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データとして生成してもよい。代表値の数Lは、Nよりも大きく、かつMよりも小さい整数である。その場合、波形情報処理装置22は、操作OPである第1操作の代わりに、第1波形W1の、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち1つ以上のサンプリング区間SIy、・・・に対応する部分の表示の拡大を第1操作よりも小さい拡大率で要求する第2操作に応じて、要求Rである第1要求R1の代わりに、当該1つ以上のサンプリング区間SIy、・・・を識別する1つ以上の識別値IDy、・・・を含む第2要求R2を波形測定器21に送信する。波形測定器21は、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち、第2要求R2に含まれる識別値IDy、・・・で識別される1つ以上のサンプリング区間SIy、・・・に対応する第2圧縮データを波形情報処理装置22に送信する。波形情報処理装置22は、1つ以上のサンプリング区間SIy、・・・について、送信された第2圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第3波形W3を端末装置23に表示させる。
【0046】
第2実施形態によれば、波形情報処理装置22には、第1圧縮データだけでなく、第2要求に応じて第2圧縮データも送信される。L>Nより、第2圧縮データは、第1圧縮データよりも多くの代表値を含む。つまり、波形生成のためにプロットされる代表値が多い。したがって、第2圧縮データを使用すれば、第1圧縮データに比べてアナログ信号の波形をより忠実に表すことができる。よって、例えば、第1圧縮データを使用した波形からズームアップするときに、第2圧縮データを使用した波形を提示することで波形の観察ニーズが満たされれば、生データを送受信する必要がなくなる。その結果、波形情報処理装置22からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【0047】
次に、
図3及び
図4を参照して、第1実施形態に係る波形情報処理システム20の構成を詳細に説明する。
【0048】
波形情報処理システム20は、上述したとおり、波形測定器21と、波形情報処理装置22とを備える。
【0049】
波形測定器21は、上述したとおり、入力部200と、制御部210と、記憶部220と、表示部230と、通信部240とを備える。
【0050】
入力部200は、各チャンネルのデータを波形測定器21に取り込むインターフェースである。入力部200は、
図4に示すように、入力増幅器201と、A/D変換器202と、インターフェース回路203と、入力増幅器204と、A/D変換器205と、インターフェース回路206とを含む。
【0051】
図4に示すように、観察されるチャンネル1(以下、CH1ともいう)のアナログ信号は、入力増幅器201で正規化され、A/D変換器202に入力される。ここで正規化とは、アナログ入力信号の振幅を、A/D変換器の入力仕様に対し適切な範囲になるように調整することである。また、同時に観測されるチャンネル2(以下、CH2ともいう)のアナログ信号は、入力増幅器204で正規化され、A/D変換器205に入力される。
【0052】
制御部210は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPU(graphics processing unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。プログラマブル回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)である。専用回路は、例えば、ASIC(application specific integrated circuit)である。制御部210は、波形測定器21の各部を制御しながら、波形測定器21の動作に関わる処理を実行する。制御部210は、
図4に示すように、サンプルタイミング発生回路211と、メモリコントローラ212と、CPU213と、PP圧縮器214と、メモリコントローラ215と、データ個数計数回路216と、メモリコントローラ217とを含む。「PP」は、peak to peakの略語である。
【0053】
記憶部220は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。記憶部220は、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)であってもよい。記憶部220は、
図4に示すように、波形メモリ221と、PP波形メモリ222と、データ個数メモリ223とを含む。
【0054】
波形メモリ221には、制御部210のメモリコントローラ212より、サンプルタイミング発生回路211で生成したタイミング信号に応じて、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データが書き込まれる。
【0055】
PP波形メモリ222には、制御部210のメモリコントローラ215により、サンプルタイミング発生回路211で生成したタイミング信号に応じてPP圧縮器214から出力された圧縮データ(以下、「PPデータ」ともいう)が書き込まれる。
【0056】
データ個数メモリ223には、制御部210のメモリコントローラ217により、PPデータがPP波形メモリ222に書き込まれるタイミングに同期して、データ個数計数回路216で計数されたサンプル値の総数が書き込まれる。
【0057】
表示部230は、
図4に示すように、表示波形作成回路231と、波形表示器232とを含む。
【0058】
表示波形作成回路231は、GPU等の汎用プロセッサ、波形表示処理に特化した専用プロセッサ、FPGA等のプログラマブル回路、又はASIC等の専用回路である。表示波形作成回路231は、波形メモリ221に格納されたデジタル信号データを、必要に応じてCPU213から命令されてパルスに変換する。表示波形作成回路231は、必要に応じて、パルスを波形として波形表示器232に表示する。
【0059】
波形表示器232には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescent)ディスプレイである。波形表示器232は、波形測定器21の動作によって得られるデータを出力する。波形表示器232は、ユーザからの入力を受付可能なタッチパネルと一体的に設けられてもよい。波形表示器232は、表示波形作成回路231の制御に基づき、波形表示データを表示する。
【0060】
通信部240は、
図4に示すように、通信回路241を備える。通信回路241は、1つ以上の通信ICである。「IC」は、integrated circuitの略語である。通信ICは、例えば、LAN通信ICである。「LAN」は、local area networkの略語である。通信回路241は、PCIネットワークアダプタ、USBネットワークアダプタ、又はEthernet(登録商標)アダプタであってもよい。「PCI」は、Peripheral Component Interconnectの略語である。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。
【0061】
図5は、サンプリング区間、生データのサンプル値、PPデータ、及び識別値の対応関係を示す。
図5に示した例では、サンプリング1000回のそれぞれに対して、PPデータに含まれる代表値である最大値と最小値との1ペアが作成される。具体的には、時刻T
0でサンプリングが開始される。
図5において、サンプリング区間SI
1は、サンプル値t
0からt
999の1000個のサンプル値が取得される区間であり、サンプリング区間SI
2以降も同様に、各サンプリング区間あたり1000個のサンプル値が取得される。これらのサンプル値を含むデジタル信号データは、本実施形態における複数のサンプリング区間SI
1~SI
nの各々において1000個のサンプル値を含むデジタル信号データに相当する。サンプリング区間SI
1については、時刻T
1000において、サンプル値t
0からt
999のうちの最小値であるサンプル値t
0と最大値であるサンプル値t
3とのペアが、PPデータPP
1に含まれる2個の代表値としてPP波形メモリ222に書き込まれる。また、サンプリング開始時点である時刻T
0から、サンプル値t
999が取得される時刻T
999までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数は、1000個である。したがって、データ個数メモリ223に識別値ID
1として「1000」が書き込まれる。同様に、サンプリング区間SI
2については、時刻T
2000で、サンプル値t
1002とt
1999とのペアが、PPデータPP
2に含まれる2個の代表値としてPP波形メモリ222に書き込まれる。時刻T
2000では、時刻T
0からのサンプル値の総数「2000」が、データ個数メモリ223に識別値ID
2として書き込まれる。以下同様に、時刻T
3000では、サンプル値t
2400とt
2905とのペアがPPデータPP
3に含まれる2個の代表値としてPP波形メモリ222に、識別値ID
3として「3000」がデータ個数メモリ223に書き込まれる。PPデータPP
1、PP
2、及びPP
3等は、本実施形態におけるN個の代表値を含むデータ、すなわち各サンプリング区間に対応する圧縮データに相当する。識別値「1000」、「2000」、及び「3000」等は、本実施形態における各サンプリング区間を識別する識別値に相当する。
【0062】
波形情報処理装置22は、上述したとおり、制御部310と、通信部340とを備える。
【0063】
制御部310は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。専用回路は、例えば、ASICである。制御部310は、波形情報処理装置22の各部を制御しながら、波形情報処理装置22の動作に関わる処理を実行する。
【0064】
通信部340は、1つ以上の通信ICである。通信ICは、例えば、LAN通信ICである。通信部340は、PCIネットワークアダプタ、USBネットワークアダプタ、又はEthernet(登録商標)アダプタであってもよい。通信部340は、波形情報処理装置22の動作に用いられる情報をネットワーク25経由で受信し、また波形情報処理装置22の動作によって得られる情報をネットワーク25経由で送信する。
【0065】
端末装置23は、上述したとおり、入力部400と、制御部410と、表示部430と、通信部440とを備える。
【0066】
入力部400は、少なくとも1つの入力用インターフェースを含む。入力用インターフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、又はマイクロフォンである。入力部400は、端末装置23の動作に用いられるデータを入力する操作を受け付ける。入力部400は、端末装置23に備えられる代わりに、外部の入力機器として端末装置23に接続されてもよい。
【0067】
制御部410は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組み合わせを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。専用回路は、例えば、ASICである。制御部410は、端末装置23の各部を制御しながら、端末装置23の動作に関わる処理を実行する。
【0068】
表示部430には、少なくとも1つの出力用インターフェースが含まれる。出力用インターフェースは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。表示部430は、端末装置23の動作によって得られるデータを出力する。表示部430は、ユーザからの入力を受付可能なタッチパネルと一体的に設けられてもよい。表示部430は、制御部410の制御に基づき、波形表示データを表示する。
【0069】
通信部440は、1つ以上の通信ICである。通信ICは、例えば、LAN通信ICである。通信部440は、PCIネットワークアダプタ、USBネットワークアダプタ、又はEthernet(登録商標)アダプタであってもよい。通信部440は、端末装置23の動作に用いられる情報をネットワーク25経由で受信し、また端末装置23の動作によって得られる情報をネットワーク25経由で送信する。
【0070】
次に、
図6から
図8を参照して、本実施形態に係る波形情報処理システム20の動作について説明する。
図6は、波形情報処理システム20の動作を示す。
図6の動作は、本実施形態に係る波形情報処理方法に相当する。例えば、波形を表示する端末装置23は、地理的に離れた複数の事業所に配置され、各々異なるネットワークに接続された複数の端末装置であり得る。この場合は、波形測定器21からの圧縮データ、識別値、及びデジタル信号データを、波形情報処理装置22を介して各端末装置に分配することができる。一変形例として、波形情報処理装置22は、波形測定器21と同一の事業所に配置され、同一のネットワークに接続された少なくとも1つの端末装置であってもよい。この場合は、波形測定器21からの圧縮データ、識別値、及びデジタル信号データを、端末装置である波形情報処理装置22が直接受信してもよい。いずれの場合も、波形測定器21と、波形情報処理装置22及び端末装置23とは、互いからみて外部装置に相当する。
図7は、波形測定器21、波形情報処理装置22、及び端末装置23の間で送受信されるデータ及び要求を示す。
【0071】
ステップS101において、波形測定器21は、アナログ信号の波形を複数のサンプリング区間SI1~SInの各々においてM個のサンプル値を含むデジタル信号データに変換する。具体的には、入力部200のA/D変換器202は、サンプリング区間SI1において、サンプル値t0~t999を含むデジタル信号データを生成する。A/D変換器202は、サンプリング区間SI2において、サンプル値t1000~t1999を含むデジタル信号データを生成する。以下同様に、サンプリング区間SI1~SInの各々において1000個のサンプル値を含むデジタル信号データを生成する。A/D変換器205でもA/D変換器202と同様の変換処理が行われる。
【0072】
ステップS102において、波形測定器21は、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データをストレージに相当する記憶部220に書き込む。ストレージは、波形測定器21の外部の記憶装置であってもよい。その場合、波形測定器21は、ネットワーク25を介して外部の記憶装置にデジタル信号データをアップロードしてもよい。本実施形態では、具体的には、サンプルタイミング発生回路211で生成したタイミング信号に応じて、サンプルタイミング発生回路211で生成したタイミング信号に応じて、サンプリング区間SI1~SInの各々において1000個のサンプル値を含むデジタル信号データが、記憶部220の波形メモリ221に書き込まれる。例えば、1MHzでデータの書き込みを行いたい場合は、サンプルタイミング発生回路211で1MHzのタイミング信号を発生させ、1MHzごとに波形メモリ221にデジタル信号データを書き込めばよい。タイミング信号は、入力部200のA/D変換器202、インターフェース回路203、A/D変換器205、及びインターフェース回路206にも入力される。デジタル信号データの書き込みは、制御部210のメモリコントローラ212が実行する。
【0073】
ステップS103において、波形測定器21は、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでN個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する圧縮データとして生成する。圧縮方法としては、任意の方法が用いられてよいが、本実施形態ではPP方式が用いられる。すなわち、本実施形態では、圧縮データとして、PPデータが生成される。具体的には、サンプルタイミング発生回路211は、タイミング信号と同時に、PP圧縮器214に入力される、デジタル信号データの圧縮を行うトリガとなる圧縮タイミング信号を発生させる。PP圧縮器214では、圧縮タイミング信号に応じて、デジタル信号データの圧縮の結果、すなわち各サンプリング区間のPPデータを出力する。例えば、サンプル値1000個あたり1回、圧縮を行う場合、サンプルタイミングが1MHzであれば、サンプルタイミング発生回路211は、1MHzの1/1000、すなわち1kHzの圧縮タイミング信号を生成し、PP圧縮器214に入力する。PP方式では、各サンプリング区間に取得されるサンプル値のうちの最大値と最小値とが代表値として選択される。すなわち、Mは1000であり、Nは2である。
図5に示す例では、サンプリング区間SI
1において、最大値であるサンプル値t
3と最小値であるサンプル値t
0とが代表値として選択される。なお、PP方式とは別の圧縮方法として、各サンプリング区間に取得されるサンプル値の平均値が代表値として選択されてもよい。更に別の圧縮方法として、各サンプリング区間に取得されるサンプル値のうちから1つ以上の代表値がランダムに選択されてもよい。
図5に示す例において、Nは、上述したように2である。例えば、サンプリング区間の数nを10000とする場合、PP圧縮器214は、サンプリング区間SI
1~SI
10000の各々に取得されたデジタル信号データを圧縮することで2個の代表値を含むPPデータPP
1~PP
10000をサンプリング区間SI
1~SI
10000の各々に対応する圧縮データとして生成する。以下では、このようなデジタル信号データの圧縮処理を「PP圧縮」ともいう。説明の便宜上、サンプリング区間SI
1~SI
nの全てについてステップS101及びステップS102の処理が完了してからステップS103の処理が実行されるかのように記述しており、またそのような実装も可能ではあるが、実際には、ステップS103の処理はステップS101及びステップS102の処理と並行して実行される。例えば、サンプリング区間ごとにデジタル信号データの書き込みとPP圧縮とが略同時に行われてもよい。
【0074】
ステップS104において、波形測定器21は、サンプリング区間SI
1~SI
nを1対1で識別する識別値ID
1~ID
nを算出する。具体的には、上述したサンプルタイミング発生回路211からのタイミング信号は、データ個数計数回路216にも入力される。データ個数計数回路216は、サンプルタイミング発生回路211からのタイミング信号に応じて、識別値ID
1~ID
nを算出する。データ個数計数回路216は、各識別値として、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数を算出する。
図5に示す例において、nを10000とする場合、データ個数計数回路216は、サンプリング区間SI
1を識別する識別値ID
1として「1000」を、サンプリング区間SI
2を識別する識別値ID
2として「2000」を、以下同様に、サンプリング区間SI
3~SI
10000を識別する識別値ID
3~ID
10000を算出する。
図5に示す例において、識別値ID
10000は、「10000000」となる。説明の便宜上、サンプリング区間SI
1~SI
nの全てについてステップS103の処理が完了してからステップS104の処理が実行されるかのように記述しており、またそのような実装も可能ではあるが、実際には、ステップS104の処理はステップS103の処理と並行して実行される。例えば、サンプリング区間ごとにPP圧縮と識別値の算出とが略同時に行われてもよい。
【0075】
ステップS105において、波形測定器21は、複数のサンプリング区間SI
1~SI
nの各々について、生成された圧縮データと、算出された識別値とを波形測定器21から波形情報処理装置22に送信する。具体的には、波形測定器21の通信部240の通信回路241が、制御部210のPP圧縮器214によって生成されたPPデータPP
1~PP
nと、データ個数計数回路216によって算出された識別値ID
1~ID
nとを、ネットワーク25を介して波形情報処理装置22に送信する。波形情報処理装置22の通信部340は、波形測定器21から送信されたPPデータPP
1~PP
nと識別値ID
1~ID
nとを、ネットワーク25を介して受信する。
図5に示す例において、nを10000とする場合、通信回路241は、制御部210のPP圧縮器214によって生成されたPPデータPP
1~PP
10000と、データ個数計数回路216によって算出された識別値ID
1~ID
10000とを、波形情報処理装置22に送信する。
【0076】
ステップS106において、波形情報処理装置22は、複数のサンプリング区間SI
1~SI
nについて、圧縮データに含まれる代表値をプロットして得られる第1波形W1を端末装置23に表示させる。具体的には、波形情報処理装置22の通信部340が、ステップS105で受信したPPデータPP
1~PP
nと識別値ID
1~ID
nとを、ネットワーク25を介して端末装置23に送信する。端末装置23の制御部410は、通信部440を介して受信したPPデータPP
1~PP
Nに含まれる代表値をプロットして第1波形W1を生成し表示部430に表示させる。
図5に示す例において、nを10000とする場合、波形情報処理装置22の通信部340は、PPデータPP
1~PP
10000と識別値ID
1~ID
10000とを、ネットワーク25を介して端末装置23に送信する。端末装置23の制御部410は、通信部440を介して受信したPPデータPP
1~PP
10000に含まれる代表値をプロットして
図8の上段に示すような第1波形W1を生成し表示部430に表示させる。例えば、制御部410は、入力部400を介して入力されたユーザによる操作に応じて、
図8の破線で示すような指定範囲の始点の識別値「305000」及び終点の識別値「325000」を選択する。識別値「305000」及び識別値「325000」は各々、サンプリング開始時点から、対応するサンプリング区間までに取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値の総数である。制御部410は、識別値「305000」及び識別値「325000」と対応付けられた、第2波形W2を表示するのに必要なデジタル信号データ(以下、「必要な生データ」ともいう)が取得されたサンプリング区間SI
305及びSI
325を算出する。
【0077】
ステップS107において、波形情報処理装置22は、第1波形W1の、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち少なくとも1つのサンプリング区間SIxに対応する部分の表示の拡大を要求する操作OPをユーザから受け付けると、通信部340により受信された、当該少なくとも1つのサンプリング区間SIxを識別する少なくとも1つの識別値IDxを含む要求Rを波形測定器21に送信する。具体的には、端末装置23の制御部410が、入力部400を介して操作OPを受け付けると、ステップS106で通信部440を介して受信した識別値ID1~IDnの中から、操作OPで指定されたサンプリング区間SIxを識別する識別値IDxを選択する。端末装置23の制御部410は、通信部440を介して、選択した識別値IDxを含む要求Rを波形情報処理装置22に送信する。波形情報処理装置22の通信部340は、要求Rを、ネットワーク25を介して受信する。波形情報処理装置22の制御部310は、通信部340により要求Rが受信されると、操作OPが行われたと判断し、間接的に操作OPを受け付ける。波形情報処理装置22の制御部310は、通信部340に要求Rを転送させる。波形情報処理装置22の通信部340は、要求Rを、ネットワーク25を介して波形測定器21に送信する。例えば、波形情報処理装置22は、第1波形W1の、サンプリング区間SI305~SI325に対応する部分の表示の拡大を要求する操作を操作OPとしてユーザから受け付けると、サンプリング区間SI305及びSI525を識別する識別値ID305「305000」及び識別値ID325「325000」を含む要求を要求Rとして波形測定器21に送信する。
【0078】
ステップS108において、波形測定器21は、複数のサンプリング区間SI1~SInのうち、要求Rに含まれる識別値IDxで識別される少なくとも1つのサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データを記憶部220から読み出す。具体的には、波形測定器21の通信部240は、波形情報処理装置22からネットワーク25を介して送信された要求Rを受信する。波形測定器21の制御部210は、通信部240により受信された要求Rに含まれる識別値IDxで識別されるサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データを記憶部220から読み出す。例えば、波形測定器21の制御部210は、要求Rに識別値ID305「305000」及び識別値ID325「325000」が含まれている場合、これらの識別値で識別されるサンプリング区間SI305~SI325に取得されたデジタル信号データを記憶部220から読み出す。この場合、デジタル信号データに含まれるサンプル値は、t305000~t325999、合計21000個のサンプル値である。この例では、要求対象であるサンプリング区間の始点と終点のサンプリング区間に対応するサンプリング区間のみが指定されているが、全てのサンプリング区間に取得されたデジタル信号データを読み出すようにしてもよい。
【0079】
ステップS109において、波形測定器21は、読み出したデジタル信号データを波形情報処理装置22に送信する。具体的には、波形測定器21の通信部240は、制御部210により記憶部220から読み出された、識別値IDxで識別されるサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データを波形情報処理装置22に送信する。例えば、通信部240は、識別値ID305「305000」及び識別値ID325「325000」で識別されるサンプリング区間SI305~SI325に取得されたデジタル信号データを波形情報処理装置22に送信する。
【0080】
ステップS110において、波形情報処理装置22は、少なくとも1つのサンプリング区間SI
xについて、送信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形W2を端末装置23に表示させる。具体的には、波形情報処理装置22の通信部340は、波形測定器21から送信された、識別値ID
xで識別されるサンプリング区間SI
xに取得されたデジタル信号データを受信する。波形情報処理装置22の制御部310は、通信部340により受信されたデジタル信号データを端末装置23に送信する。端末装置23の通信部440は、波形情報処理装置22から送信されたデジタル信号データを受信する。端末装置23の制御部410は、通信部440により受信されたデジタル信号データに含まれるサンプル値をプロットして
図8の下段に示すような第2波形W2を生成し表示部430に表示させる。例えば、第2波形W2は、識別値ID
305「305000」及び識別値ID
325「325000」で識別されるサンプリング区間SI
305~SI
325に取得されたデジタル信号データに含まれるサンプル値t
305000~t
325999、合計21000個のサンプル値をプロットして得られる波形である。これに対し、第1波形W1の、サンプリング区間SI
305~SI
325に対応する部分は、PPデータPP
305~PP
325に含まれる42個の代表値をプロットして得られる。したがって、第2波形W2は、第1波形W1の対応する部分に比べて500倍、表示分解能が高いといえる。
【0081】
本実施形態によれば、波形情報処理装置22から要求がなければ、波形測定器21と波形情報処理装置22との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理装置22から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0082】
本実施形態では、端末装置23では、第1波形W1を表示して波形全体を素早く表示しつつ、波形表示の拡大操作があったときは、識別値によって識別されるサンプリング区間に取得された必要な生データを使用して、詳細な第2波形W2を表示することができる。つまり、波形の観察ニーズに応じて波形を切り替えることができる。第2波形W2のもとになる必要な生データは、波形測定器21側に保存されている。したがって、端末装置23において第2波形W2を表示する必要が生じたときにだけ、波形情報処理装置22から波形測定器21に必要な生データを要求すればよい。例えば、必要な生データの送受信は、波形測定器21から波形情報処理装置22への圧縮データの転送を行っていない時間を利用して行ってもよい。この場合、通信トラフィックの少ない時間帯に必要な生データの送受信が行われるので、全ての生データが送受信される従来技術に比べて、端末装置23から見たレスポンス時間を短縮することができる。
【0083】
図9を参照して、波形情報処理システム20の動作の具体例を説明する。
【0084】
ステップS201において、端末装置23の制御部410は、PPデータ及び識別値を取得する。この処理の詳細については、ステップS101からS105として説明したとおりである。
【0085】
ステップS202において、端末装置23は、表示部430に第1波形W1を表示する。この処理の詳細については、ステップS106として説明したとおりである。
【0086】
ステップS203において、端末装置23の入力部400は、端末装置23のユーザによるズーム操作を受け付ける。これに応じて、端末装置23の表示部430に表示されている第1波形W1の波形表示倍率が変更される。具体的には、ズーム操作には、ズームダウン操作と、ズームアップ操作とが含まれる。ズームダウン操作は、PPデータよりも高い分解能を必要としない。ズームアップ操作は、PPデータよりも高い分解能を必要とする。
【0087】
ステップS204において、端末装置23の制御部410は、ズーム操作がズームダウン操作とズームアップ操作のいずれに該当するかを判定する。ズーム操作がズームダウン操作であると判定された場合は、制御部410は、ステップS205に進む。ステップS205では、PPデータを利用して第1波形W1の表示を継続する。その後、ステップS212に進んで、ユーザにより波形表示が終了されたかどうかを判定する。具体的には、制御部410は、ユーザによるPPデータを利用した波形表示の完了操作が入力部400を介して受け付けられたときに、波形表示が終了されたものと判定し、処理を終了する。ユーザによる波形表示が終了されない場合は、ステップS203に戻って処理を継続する。
【0088】
一方、ステップS204において、ズーム操作がズームアップ操作であると判定された場合は、端末装置23の制御部410は、ステップS206に進む。ステップS206において、制御部410は、ズームアップ操作で指定された少なくとも1つの識別値IDxにより識別される少なくとも1つのサンプリング区間SIxを特定する。具体的には、制御部410は、第1波形W1のうち、ユーザによるズームアップ操作で指定された部分の少なくとも1つの識別値IDxを選択して、識別値IDxにより識別されるサンプリング区間SIxを必要な生データが取得されたサンプリング区間として特定する。
【0089】
ステップS207において、端末装置23の制御部410は、ユーザによるズームアップ操作に応じて、サンプリング区間SIxを識別する識別値IDxを含む要求Rを、通信部440を介して波形情報処理装置22に送信する。
【0090】
ステップS208において、波形情報処理装置22の通信部340は、ネットワーク25を介して要求Rを波形測定器21に転送して、波形測定器21に必要な生データを要求する。
【0091】
ステップS209において、波形測定器21の制御部210は、要求Rに含まれる識別値IDxで識別されるサンプリング区間SIxに取得されたデジタル信号データに相当する必要な生データを記憶部220から読み出し、ネットワーク25を介して波形情報処理装置22に必要な生データを送信する。
【0092】
ステップS210において、波形情報処理装置22は、波形測定器21から送信された必要な生データを端末装置23に転送し、端末装置23は、波形情報処理装置22から必要な生データを取得する。
【0093】
ステップS211において、端末装置23の制御部410は、通信部440により受信された生データに含まれるサンプル値をプロットして得られる第2波形W2を表示部430に表示させる。
【0094】
ステップS212において、端末装置23の制御部410は、ユーザにより波形表示が終了されたかどうかを判定する。波形表示が終了された場合は、処理を終了する。波形表示が終了されない場合は、ステップS203に戻って処理を継続する。
【0095】
図10を参照して、波形情報処理システム20の動作のうち、ステップS201の具体例を説明する。
【0096】
図10の例において、波形測定器21は、一定量の圧縮データ及び識別値が記憶部220のPP波形メモリ222及びデータ個数メモリ223に溜まったときに、波形情報処理装置22に圧縮データ及び識別値を送信する。例えば、波形測定器21は、デジタル信号データに含まれる代表値が100対溜まったときに、CPU213及び通信回路241を介して波形情報処理装置22に圧縮データ及び識別値を送信する。この場合、サンプリング周波数が1MHzであれば、PPデータの作成レートは、1MHz/1000=1kHzとなる。つまり、送信レートは、10Hzとなる。
【0097】
ステップS301において、波形測定器21の制御部210は、記憶部220にデータを取り込むトリガとなるタイミング信号を生成する。同時に、制御部210は、PP圧縮を行うトリガとなる圧縮タイミング信号を生成する。
【0098】
ステップS302において、波形測定器21の制御部210は、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを記憶部220に書き込む。
【0099】
ステップS303において、波形測定器21の制御部210は、圧縮タイミング信号に応じて、PP圧縮を実行し、PP圧縮の結果、すなわち圧縮データを出力する。これと同時に、制御部210は、各サンプリング区間を識別する識別値を算出する。
【0100】
ステップS304において、波形測定器21の制御部210は、PP圧縮の実行回数が「PP圧縮回数」に達したかどうかを判定する。「PP圧縮回数」は、1回以上であれば任意の回数でよい。例えば、「PP圧縮回数」は、圧縮データの代表値の作成周期及びサンプルタイミングに応じて任意に選択可能である。ステップS304において、PP圧縮の実行回数が「PP圧縮回数」に達していないと判定された場合は、制御部210は、ステップS308に進んでサンプリングを終了するかどうかを判定する。サンプリングを終了する場合は、処理を終了する。サンプリングを終了しない場合は、ステップS301に戻って処理を継続する。
【0101】
一方、ステップS304において、PP圧縮の実行回数が「PP圧縮回数」に達したと判定された場合は、制御部210は、ステップS305に進む。ステップS305において、制御部210は、それまでにPP圧縮を実行した圧縮データ及び識別値を記憶部220に書き込む。例えば、サンプルタイミングが1MHzであり、「PP圧縮回数」が1000回に設定された場合、1MHzの1/1000、すなわち1kHzごとに、制御部210は、1対の代表値を含む圧縮データ及び1個の識別値を記憶部220に書き込む。
【0102】
ステップS306において、波形測定器21の制御部210は、圧縮データの代表値の個数(以下、「PPデータ個数」ともいう)が一定値に達したかどうかを判定する。「PPデータ個数」が一定値に達していないと判定された場合は、制御部210は、ステップS308に進んでサンプリングを終了するかどうかを判定する。サンプリングを終了する場合は、処理を終了する。サンプリングを終了しない場合は、ステップS301に戻って処理を継続する。
【0103】
一方、ステップS306において、「PPデータ個数」が一定値に達したと判定された場合は、制御部210は、ステップS307に進む。ステップS307において、波形測定器21の通信部240は、圧縮データ及び識別値を波形情報処理装置22に送信する。具体的には、「PPデータ個数」は、1個以上であれば任意の個数でよい。例えば、「PPデータ個数」の一定値は、圧縮データの代表値の作成周期及びサンプルタイミングに応じて任意に選択可能である。例えば、サンプルタイミングが1MHz、「PP圧縮回数」が10回である場合に、PPデータ個数を100個に設定することにより、1MHzの1/100000、すなわち1/10秒ごとに100個の代表値を含む圧縮データが、識別値とともに、波形測定器21の通信部240から波形情報処理装置22に送信されるようにしてもよい。
【0104】
ステップS308において、波形測定器21の制御部210は、サンプリングを終了するかどうかを判定する。サンプリングを終了する場合は、処理を終了する。サンプリングを終了しない場合は、ステップS301に戻って処理を継続する。
【0105】
本実施形態によれば、波形情報処理装置22から要求がなければ、波形測定器21と波形情報処理装置22との間で圧縮データ及び識別値が送受信され、波形情報処理装置22から要求があったときに、要求されたデジタル信号データが送受信される。よって、データ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0106】
次に、
図11を参照して、本実施形態の一変形例である第2実施形態に係る波形情報処理システム20の詳細構成を説明する。
【0107】
上述の第1実施形態に係る波形測定器21は、PP圧縮器214、メモリコントローラ215、及びPP波形メモリ222と、データ個数計数回路216、メモリコントローラ217、及びデータ個数メモリ223とを備える。つまり、PP圧縮器、メモリコントローラ、及びPP波形メモリの系統、並びに、データ個数計数回路、メモリコントローラ、及びデータ個数メモリの系統は、各々1段である。これに対し、第2実施形態に係る波形測定器21’は、PP圧縮器214、214’、メモリコントローラ215、215’、及びPP波形メモリ222、222’と、データ個数計数回路216、216’、メモリコントローラ217、217’、及びデータ個数メモリ223、223’とを備える。つまり、本実施形態は、PP圧縮器、メモリコントローラ、及びPP波形メモリ、並びに、データ個数計数回路、メモリコントローラ、及びデータ個数メモリの系統が各々2段である点で、第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下では主に第1実施形態との差異について説明する。
【0108】
波形測定器21’の制御部210は、圧縮データである第1圧縮データを生成するだけでなく、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでL個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データとして生成する。Lは、Nよりも大きく、かつMよりも小さい整数である。
【0109】
波形測定器21’の通信部240は、要求Rである第1要求の代わりに、1つ以上の識別値を含み、当該1つ以上の識別値で識別される1つ以上のサンプリング区間に対応する第2圧縮データを要求する第2要求を受信すると、要求された第2圧縮データを波形情報処理装置22に送信する。
【0110】
本実施形態によれば、波形のズーム率により異なった系統の圧縮データを選択して使用することにより、波形情報処理装置22からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【0111】
図12を参照して、本実施形態に係る波形情報処理システム20の動作について説明する。
図12の動作は、本実施形態に係る波形情報処理方法に相当する。以下では、本実施形態について、第1実施形態との差異について説明する。
【0112】
ステップS401からS402の動作は、上述の第1実施形態に係るステップS101~S102と同様であるので説明を省略する。
【0113】
ステップS403において、波形測定器21は、N個の代表値を含む圧縮データである第1圧縮データCD1だけでなく、各サンプリング区間に取得されたデジタル信号データを圧縮することでL個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データCD2として生成する。Lは、Nよりも大きく、かつMよりも小さい整数である。具体的には、波形測定器21の制御部210のPP圧縮器214’が、サンプルタイミング発生回路211からのタイミング信号に応じて、L個の代表値を含むデータを各サンプリング区間に対応する第2圧縮データCD2として生成する。サンプルタイミング発生回路211で生成したタイミング信号に応じてPP圧縮器214’から出力された第2圧縮データCD2は、メモリコントローラ215’により、記憶部220のPP波形メモリ222’に書き込まれる。データ個数メモリ223’には、メモリコントローラ217’により、第2圧縮データCD2がPP波形メモリ222’に書き込まれるタイミングに同期して、データ個数計数回路216’で計数されたサンプル値の総数が書き込まれる。圧縮方法としては、任意の方法が用いられてよいが、本実施形態ではPP方式が用いられる。すなわち、本実施形態では、第2圧縮データCD2として、PPデータが生成される。PPデータを取得するためのPP圧縮は、第1実施形態では、上述したとおり、サンプリング区間ごとに1回行われる。本実施形態では更に、各サンプリング区間を複数のサブ区間に分割し、サブ区間ごとに1回PP圧縮を行い、第2圧縮データCD2が生成される。例えば、各サンプリング区間を5つのサブ区間に分割する場合、各サンプリング区間あたり5回、PPデータの生成が行われる。本実施形態では、これら5回分のPPデータが、各サンプリング区間に対応する第2圧縮データCD2に相当する。各サブ区間に取得されるサンプル値の総数は、5/1000、すなわち200個である。生成される第2圧縮データCD2は、サブ区間ごとのサンプル値の最大値と最小値とのペアを代表値として含む。各サンプリング区間あたり、合計5対の代表値を含む第2圧縮データCD2が生成される。つまり、L=10となる。第2圧縮データCD2とともに生成される識別値としては、各サンプリング区間あたり、サブ区間を1対1で識別する、合計5つのサブ識別値が生成される。本実施形態では、サブ区間と同じ数だけ生成されるサブ識別値が識別値に相当する。
図13に示す例では、サンプリング区間SI
1を識別する識別値として、当該サンプリング区間に含まれる5つのサブ区間を識別するサブ識別値「200」、「400」、「600」、「800」、及び「1000」が生成され、データ個数メモリ223’に書き込まれる。なお、PP方式とは別の圧縮方法として、各サブ区間に取得されるサンプル値の平均値が各サブ区間の代表値として選択されてもよい。更に別の圧縮方法として、各サブ区間に取得されるサンプル値のうちから1つ以上の代表値がランダムに選択されてもよい。説明の便宜上、サンプリング区間SI
1~SI
nの全てについてステップS401及びステップS402の処理が完了してからステップS403の処理が実行されるかのように記述しており、またそのような実装も可能ではあるが、実際には、ステップS403の処理はステップS401及びステップS402の処理と並行して実行される。例えば、サンプリング区間ごとにデジタル信号データの書き込みとPP圧縮とが略同時に行われてもよい。
【0114】
ステップS404において、操作OPである第1操作OP1の代わりに、第1波形W1の、複数のサンプリング区間SI
1~SI
nのうち1つ以上のサンプリング区間SI
y、・・・に対応する部分の表示の拡大を第1操作OP1よりも小さい拡大率で要求する第2操作OP2に応じて、要求Rである第1要求R1の代わりに、当該1つ以上のサンプリング区間SI
y、・・・を識別する1つ以上の識別値を含む第2要求R2を波形情報処理装置22から波形測定器21に送信する。
図13に示す例において、波形情報処理装置22は、第1波形W1の、サンプリング区間SI
2からSI
3に対応する部分の表示の拡大を5倍の拡大率で要求する第2操作OP2に応じて、サンプリング区間SI
2を識別する識別値に相当するサブ識別値「1200」、「1400」、「1600」、「1800」、及び「2000」と、サンプリング区間SI
3を識別する識別値に相当するサブ識別値「2200」、「2400」、「2600」、「2800」、及び「3000」とを含む第2要求R2を波形測定器21に送信する。
【0115】
ステップS405において、複数のサンプリング区間SI
1~SI
nのうち、第2要求R2に含まれる識別値
yで識別される1つ以上のサンプリング区間SI
y、・・・に対応する第2圧縮データCD2を波形測定器21から波形情報処理装置22に送信する。
図13に示す例において、波形測定器21は、第2要求R2に含まれる識別値「1200」、「1400」、・・・、「2800」、「3000」で識別されるサンプリング区間SI
2からSI
3に対応する第2圧縮データCD2を波形情報処理装置22に送信する。
【0116】
ステップS406において、1つ以上のサンプリング区間SI
y、・・・について、送信された第2圧縮データCD2に含まれるL個の代表値をプロットして得られる第3波形W3を表示する。
図13に示す例において、第3波形W3は、サンプリング区間SI
2からSI
3の各々について送信された第2圧縮データCD2に含まれる合計20個の代表値をプロットして得られる波形となる。
【0117】
本実施形態によれば、第2圧縮データCD2を使用して、第1圧縮データCD1に比べてアナログ信号の波形をより忠実に表すことができる。よって、例えば、第1圧縮データCD1を使用した第1波形W1からズームアップするときに、第2圧縮データCD2を使用した第3波形W3を提示することで波形の観察ニーズが満たされれば、デジタル信号データを送受信する必要がなくなる。その結果、波形情報処理装置22からのデジタル信号データの要求頻度を下げることができる。よって、データ通信量を更に抑制することができる。その結果、通信の遮断が更に防止しやすくなる。
【0118】
上述の実施形態によれば、高速サンプリング時でも、波形測定器21と波形情報処理装置22との間でPPデータ及び識別値だけが送受信される。したがって、波形測定器21と波形情報処理装置22との間の通信に波形測定器21側のサンプリング速度に応じた全データ転送を保証する通信手段を用意する必要がなくなる。このため、高速サンプリング時でも、デジタル信号データの保存及び波形のリアルタイム観測が可能になる。波形測定器21と波形情報処理装置22との間の通信速度は、最低限、PP圧縮データがリアルタイムに送受信されるだけの帯域を確保すればよい。例えば、サンプリング速度が1MHzであっても、PP圧縮の圧縮レートを1/1000とすれば、PPデータ及び識別値はそれぞれ1kHzにすぎず、大幅にデータ通信量が削減される。また、端末装置23側で詳細に波形を見たいときは、ズームアップしたいところの生データだけを、波形測定器21から波形情報処理装置22に相当する制御装置24経由で端末装置23に転送し、波形表示を行えばよい。なお、制御装置24側にサンプリング速度に応じたデータ容量を確保する必要がなくなるので、高速サンプリング時でも制御装置24の管理コストを削減することもできる。
【0119】
よって、上述の実施形態によれば、波形測定器21と波形情報処理装置22との間のデータ通信量を抑制することができる。その結果、通信の遮断を防止しやすくなる。
【0120】
ただし、本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0121】
例えば、上述の実施形態の一変形例では、波形測定器21で取得した生データを、リアルタイムで記憶部220に書き込む代わりに、測定終了時にまとめて波形情報処理装置22としてのサーバ装置に転送し、当該サーバ装置側で管理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
10 波形情報処理システム
11 波形測定器
12 クラウドサーバ
13 ローカルPC
101,104 入力増幅器
102,105 A/D変換器
103,106 インターフェース回路
111 サンプルタイミング発生回路
112 メモリコントローラ
113 CPU
121 波形メモリ
131 表示波形作成回路
132 波形表示器
141 通信回路
20 波形情報処理システム
21,21’ 波形測定器
22 波形情報処理装置
23 端末装置
25 ネットワーク
200,400 入力部
201,204 入力増幅器
202,205 A/D変換器
203,206 インターフェース回路
210,310,410 制御部
211 サンプルタイミング発生回路
212 メモリコントローラ
213 CPU
214,214’ PP圧縮器
215,215’ メモリコントローラ
216,216’ データ個数計数回路
217,217’ メモリコントローラ
220 記憶部
221 波形メモリ
222,222’ PP波形メモリ
223,223’ データ個数メモリ
230,430 表示部
231 表示波形作成回路
232 波形表示器
240,340,440 通信部
241 通信回路