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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021169093
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023059145
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅之
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-137355(JP,A)
【文献】特開2010-042048(JP,A)
【文献】特開2009-136626(JP,A)
【文献】特表2020-508168(JP,A)
【文献】特表2019-534110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、
前記撮像素子から出力する撮像信号を処理して、撮像画像を生成する画像処理部を有する撮像画像用プロセッサと、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、前記エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域を検出する周波数帯域検出部と、検出した前記周波数帯域の信号が減衰するように前記エコー信号に対するフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、を有する超音波画像用プロセッサと、
を備え、
前記超音波画像用プロセッサは、前記超音波プローブによって前記生体組織に付与する超音波のパルス持続時間を調整する調整部を有し、
前記フィルタ処理部は、前記調整部によって調整されたパルス持続時間に基づいて前記フィルタ処理に対するフィルタ設定を行う、電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記超音波画像用プロセッサは、前記エコー信号のうち所定の周波数以上の周波数成分の信号を減衰させるローパスフィルタを有し、
前記フィルタ処理部は、前記エコー信号のうち前記所定の周波数より低い周波数以上の周波数成分の信号を減衰させるように前記フィルタ処理を行う、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記エコー信号は、基本周波数の信号成分と、前記基本周波数のN倍(N:2以上の整数)の周波数である2以上の高調波成分と、を含み、
前記超音波画像処理部は、前記2以上の高調波成分に基づいて前記超音波画像を生成し、
前記フィルタ処理部は、前記基本周波数のN倍の周波数以外の信号が減衰するように前記エコー信号に対するフィルタ処理を行う、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記超音波画像用プロセッサは、前記周波数帯域検出部によって検出された前記ノイズ成分の周波数帯域と重複しないように、前記超音波プローブによって前記生体組織に付与する超音波の周波数を変更する周波数変更部を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記超音波画像処理部は、前記ノイズ成分に対応する前記超音波画像中のノイズ画素と前記ノイズ画素以外の画素との間で増幅ゲイン値が変更するように、ゲイン変更処理を行う、
請求項1からのいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記超音波画像処理部は、前記ノイズ成分に対応する前記超音波画像中のノイズ画素位置における画素値を、前記ノイズ画素位置の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて生成した補間画素値に置換する、
請求項1からのいずれか一項に記載された電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内部の生体組織の観察や治療に電子内視鏡システムが使用されている。電子内視鏡システムは、生体組織の画像として、撮像素子を用いて被検体の光学観察像を取得することに加えて、超音波プローブを備える超音波内視鏡では、超音波画像(超音波断層像)を得ることができる。超音波内視鏡と接続したプロセッサは、超音波診断装置として機能して、検査や診断を行う。以下、撮像素子及び超音波プローブを備える内視鏡を超音波内視鏡(あるいは電子内視鏡)という。
【0003】
超音波内視鏡は、撮像素子と超音波プローブを備え、超音波内視鏡からプロセッサに延びる可撓管内には、挿入部の先端に設けた撮像素子と、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する撮像信号用伝送線が配設され、撮像信号用伝送線を通じて撮像信号が伝送される。また、上記可撓管内には、挿入部の先端に設けた超音波プローブと、プロセッサに接続するコネクタとの間を接続する超音波信号用伝送線が配設され、超音波信号線を通じて超音波信号が伝送される。
【0004】
超音波による検査や診断を行う際には、プロセッサから超音波プローブに電力供給を行い、超音波プローブは生体組織に超音波を送信して反射波を受信する。超音波プローブで受信した反射波は、エコー信号に信号化され、エコー信号は、超音波信号用伝送線を通じてプロセッサに送られ、プロセッサで信号処理を行って超音波画像となる。
【0005】
プロセッサは、超音波内視鏡からの送信信号(超音波信号、撮像信号)を用いてデータ処理を行う信号処理部、画像表示を制御する制御部等の他、スイッチング電源を備える。スイッチング電源は、超音波内視鏡及びプロセッサ内の各構成デバイスを動作させるための必要な電圧を生成し供給する。プロセッサは、撮像画像や超音波画像を表示するためのモニタと接続される。
【0006】
超音波プローブのエコー信号に基づいて得られモニタに表示される超音波画像には、超音波内視鏡あるいはプロセッサ内で発生するノイズやAC電源に重畳されて外部から進入するノイズがノイズ成分として混入する場合がある。このノイズ成分は、例えば、スイッチング電源のスイッチングに起因したノイズ成分、あるいは、上記伝送線間の相互干渉に起因したノイズ成分を含む。例えば、可撓管内では、撮像信号用伝送線と超音波信号用伝送線とが近接して設けられているため、伝送線間の静電結合あるいは電磁結合が強くなり、撮像素子を制御するパルス制御信号等が、超音波プローブや超音波信号用伝送線に干渉してエコー信号にノイズ成分が混入する。
【0007】
さらに、超音波画像には、アーチファクト(実際には存在しない虚像)と呼ばれる超音波特有のノイズが発生する場合もある。超音波を発生させて、生体内から反射したエコーを受信してエコー信号を得るが、サイドロープアーチファクト、グレーティングローブや多重反射等の原因により虚像、即ちアーチファクトがノイズとなって発生する。また、スイッチング電源で発生する高周波ノイズが超音波信号の受信信号に重畳することで、超音波診断画像で生成される超音波画像にアーチファクトが表れる場合もある。
【0008】
これらの超音波画像内のノイズ成分に対して、特許文献1ではDC/DCコンバータの動作に起因する周期的なノイズを除去できる超音波画像用プロセッサを開示している。電源入力部から電源を入力し、定電圧の電源を出力する主コンバータと、この定電圧の電源を入力し、超音波画像用プロセッサを構成する回路に電源を出力する複数の従コンバータとを備え、主コンバータ及び従コンバータのスイッチング動作を同期させることにより、スパイクノイズを減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-003801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述した従来の超音波画像用プロセッサでは、周期的なノイズを除去することはできるものの、意図しないノイズを低減することができない。
例えば、AC電源に重畳する意図しないノイズが超音波診断装置に侵入することがある。また、複数の装置が動作する場合には、意図しないノイズが超音波診断装置に侵入することがある。例えば、超音波内視鏡システムのように内視鏡と超音波診断装置が同時に動作する場合、内視鏡が動作することに伴う電磁波が超音波プローブに誘導されてノイズが生ずる。
このように意図しないノイズが超音波システムに混入する場合、当該ノイズを効果的に除去することができないという課題がある。
【0011】
そこで本発明は、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれるノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、超音波画像を取得する電子内視鏡システムであって、
生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、
前記撮像素子から出力する撮像信号を処理して、撮像画像を生成する画像処理部を有する撮像画像用プロセッサと、
前記超音波プローブから出力する前記エコー信号を処理して超音波画像を生成する超音波画像処理部と、前記エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域を検出する周波数帯域検出部と、検出した前記周波数帯域の信号が減衰するように前記エコー信号に対するフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、を有する超音波画像用プロセッサと、
を備え、
前記超音波画像用プロセッサは、前記超音波プローブによって前記生体組織に付与する超音波のパルス持続時間を調整する調整部を有し、
前記フィルタ処理部は、前記調整部によって調整されたパルス持続時間に基づいて前記フィルタ処理に対するフィルタ設定を行うことを特徴とする。
【0013】
前記超音波画像用プロセッサは、前記エコー信号のうち所定の周波数以上の周波数成分の信号を減衰させるローパスフィルタを有し、
前記フィルタ処理部は、前記エコー信号のうち前記所定の周波数より低い周波数以上の周波数成分の信号を減衰させるように前記フィルタ処理を行ってもよい。
【0014】
前記エコー信号は、基本周波数の信号成分と、前記基本周波数のN倍(N:2以上の整数)の周波数である2以上の高調波成分と、を含み、
前記超音波画像処理部は、前記2以上の高調波成分に基づいて前記超音波画像を生成し、
前記フィルタ処理部は、前記基本周波数のN倍の周波数以外の信号が減衰するように前記エコー信号に対するフィルタ処理を行ってもよい。
【0016】
前記超音波画像用プロセッサは、前記周波数帯域検出部によって検出された前記ノイズ成分の周波数帯域と重複しないように、前記超音波プローブによって前記生体組織に付与する超音波の周波数を変更する周波数変更部を有してもよい。
【0017】
前記超音波画像処理部は、前記ノイズ成分に対応する前記超音波画像中のノイズ画素と前記ノイズ画素以外の画素との間で増幅ゲイン値が変更するように、ゲイン変更処理を行ってもよい。
【0018】
前記超音波画像処理部は、前記ノイズ成分に対応する前記超音波画像中のノイズ画素位置における画素値を、前記ノイズ画素位置の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて生成した補間画素値に置換してもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述の電子内視鏡システムによれば、超音波プローブを用いて超音波画像を取得する際、超音波画像に含まれるノイズ成分を抑制し、精度の高い超音波画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
図3】一実施形態の電子内視鏡システムにおける超音波画像の画像形成原理を説明する図である。
図4】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、超音波画像を取得する際のエコー信号がBモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。
図5】エコー信号に対して適用されるフィルタ特性の例を説明する図である。
図6】エコー信号に対して適用されるフィルタ特性の例を説明する図である。
図7】エコー信号に対して適用されるフィルタ特性の例を説明する図である。
図8】エコー信号に対して適用されるフィルタ特性の例を説明する図である。
図9】一実施形態の電子内視鏡システムで得られる周期的に発生するノイズを含むエコー信号が帯域制限フィルタを通過した後のデジタルエコー信号と輝度の例を示す図である。
図10】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて、超音波画像を取得する際のエコー信号がBモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。
図11】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて行うノイズ補正の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一実施形態の電子内視鏡システムは、撮像画像用プロセッサと超音波画像用プロセッサとを備える。
撮像画像用プロセッサは、生体組織を撮像する撮像素子と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブと、を先端部に有する電子内視鏡と、撮像素子から出力する撮像信号を処理して撮像画像を生成する画像処理部とを有する。超音波画像用プロセッサは超音波画像処理部を備え、超音波プローブから出力するエコー信号を処理して超音波画像を生成する。
ここで、超音波プローブから出力するエコー信号には、電子内視鏡システムを動作させるAC電源に重畳する意図しないノイズが含まれ得る。また、エコー信号には、電子内視鏡が動作することに伴う電磁波が超音波プローブに誘導されてノイズが生じ得る。このような意図しないノイズは、生成される超音波画像に現れ、画像の精度を劣化させる場合がある。
そこで、一実施形態の電子内視鏡システムでは、意図しないノイズを効果的に抑制するために、超音波画像用プロセッサが周波数帯域検出部とフィルタ処理部とを備える。
周波数検出部は、エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域を検出する。フィルタ処理部は、周波数帯域検出部によって検出された周波数帯域の信号が減衰するようにエコー信号に対するフィルタ処理を行う。すなわち、フィルタ処理部は、検出したノイズ成分の周波数帯域を考慮してエコー信号に対するフィルタ処理を行うため、意図しないノイズを効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
なお、以下の説明では、エコー信号においてノイズを含まない信号を「超音波信号」という。つまり、本開示において、超音波信号とは、駆動信号に従って送信された超音波のみに起因して、被検体からの反射波(エコー信号)に含まれる信号である。実際には、エコー信号には、超音波信号にノイズが加わったものとなる。
【0023】
(電子内視鏡システムの全体構成)
図1は、一実施形態の電子内視鏡システムの全体構成を示すブロック図である。超音波画像を取得する電子内視鏡システム10は、電子内視鏡12と、撮像画像用プロセッサ22と、超音波画像用プロセッサ30と、を備える。
【0024】
(電子内視鏡12)
電子内視鏡12は、生体組織を照射する照明部14と、生体組織を撮像する撮像素子16と、撮像素子16で撮像された信号を前処理するドライバ信号処理部18と、生体組織に超音波を付与してエコー信号を得る超音波プローブ20と、メモリ92とを備える。超音波プローブ20は、超音波を出力する複数のプローブ要素が所定の方向に配列した各プローブ要素が所定の時間差をもって超音波を出力することにより、種々の方向に沿ったエコー信号を取得することができるフェーズドアレイ方式のプローブである。
【0025】
ドライバ信号処理部18には、生体組織の画像信号が撮像素子16より所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22の撮像画像処理部26へ出力する。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0026】
ドライバ信号処理部18はまた、メモリ92にアクセスして電子内視鏡12の固有情報を読み出す。メモリ92に記録される電子内視鏡12の固有情報には、例えば、撮像素子16の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。
【0027】
(撮像画像用プロセッサ22)
撮像画像用プロセッサ22は、照明部14に光源を伝送する光源部24と、撮像素子16から出力される撮像信号を処理して撮像画像を生成する撮像画像処理部26を備える。
【0028】
光源部24は、ライトガイド94を通して、電子内視鏡12の照明部14へ照明光を伝送する。光源には、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが用いられる。光源より伝送された照明光は、図示されない集光レンズによって集光され、絞りを介して適正な光量に制限される。絞りには、図示されないアームやギヤ等の伝達機構を介してモータが機械的に連結している。絞りは、図示しない撮像画像表示部の表示画面に表示される映像を適正な明るさにするため、開度が変えられる。
光源部24の光源は、白色光を射出する白色光源に替えて、所定の波長域の光を発光する発光ダイオードやレーザーダイオードの半導体発光素子を用いてもよい。
【0029】
撮像画像処理部26には、前段信号処理回路が設けられており、ドライバ信号処理部18よりフレーム周期で入力されるR、G、Bの各画像信号に対してデモザイク処理を施す。具体的には、Rの各画像信号についてG、Bの周辺画素による補間処理が施され、Gの各画像信号についてR、Bの周辺画素による補間処理が施され、Bの各画像信号についてR、Gの周辺画素による補間処理が施される。これにより、画像信号が全て、R、G、Bの3つの色成分の情報を持つ画像データに変換される。さらに、前段信号処理回路は、色補正、マトリックス演算、及びホワイトバランス補正等の周知の処理を施す。
撮像画像処理部26は、後段信号処理回路を備えてもよい。後段信号処理回路は、画像データに所定の信号処理を施して動画データを生成し、所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、表示部46で動画の表示のために用いられる。これにより、生体組織の動画が表示画面に表示される。
【0030】
(超音波画像用プロセッサ30)
超音波画像用プロセッサ30は、送受信部38と、超音波画像処理部32と、ノイズ周波数検出部34と、信号処理部36と、制御部40と、を備える。
送受信部38は、超音波プローブ20への駆動信号を送信し、エコー波(エコー信号)を受信する。信号処理部36は、送受信部38によって受信されたエコー信号に対して2値化処理を含む所定の信号処理を施す。超音波画像処理部32は、信号処理部36によって処理がなされたエコー信号を基に超音波画像を生成する。
【0031】
ノイズ周波数検出部34は、信号処理部36によって所定の信号処理が施されたエコー信号に含まれるノイズの周波数を検出する。ノイズ周波数検出部34及び信号処理部36の詳細な構成については後述する。
制御部40は、マイクロプロセッサを主体として構成され、超音波画像用プロセッサ30内の各部を制御する。
【0032】
超音波画像処理部32は、デジタルエコー信号に基づいて、例えば輝度変調により濃淡画像データとして所定の演算が施され、一方向に沿った一次元のBモード画像を生成する。さらに、超音波画像処理部32は、フェーズドアレイ方式の超音波プローブ20から得られるエコー信号に基づいて生成される複数の方向に沿った一次元のBモード画像を、フェーズドアレイの走査に合わせて所定の方位方向に沿って配置することにより、1つの二次元のBモード画像を作成する。さらに、作成された画像にゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた画像処理をおこなうとともに、表示部46における画像の表示レンジに対応した階調処理を行う。
【0033】
超音波画像用プロセッサ30は、生成した超音波画像の表示とタッチパネル方式で入力可能な入力機能とを有する表示部46を備えている。さらに、超音波画像用プロセッサ30は、超音波画像用プロセッサ30の操作を行う入力部42と、電源部44と、AC電源入力部48を備える。
【0034】
入力部42は、キーボード、マウス、タッチパネル等を用いて、各種情報の入力を受け付ける。表示部46は、生成された超音波画像を含む各種情報を表示する。
電源部44は、AC電源入力部48から入力するAC電源に基づいて、超音波画像用プロセッサ30の他、電子内視鏡12と撮像画像用プロセッサ22を駆動するための電力を供給する。電源部44は、例えば、スイッチング電源であるDC/DCコンバータを構成デバイスとして備え、DC/DCコンバータにおけるスイッチング周波数により直流電圧を生成している。DC/DCコンバータは複数個備えられており、入力の直流電圧を各DC/DCコンバータで所望の直流電圧に変換し、各デバイスに電力を供給する。
【0035】
(電子内視鏡12の構造)
図2は、一実施形態の電子内視鏡システムで用いる超音波プローブを備えた電子内視鏡の一例を説明する図である。
【0036】
電子内視鏡12は、操作部52と、先端部56及び主に内部に軟性部58を備えた挿入部54と、ライトガイドケーブルを内部に備えた可撓性ケーブル60と、スキャナコネクタケーブル62と、コネクタ64と、スキャナコネクタ66と、を備える。
【0037】
先端部56は、生体組織を検査するセンサであり、撮像素子部68、射出端面70及び超音波プローブ20を備える。超音波プローブ20には、プローブ要素として複数の超音波振動子、例えば圧電素子をアレイ状に配列した振動子アレイを有している。これらの振動子は、それぞれ駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの反射波を受信してアナログの受信信号を出力する。各振動子は、例えば、圧電セラミックであるPZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)や、高分子圧電素子であるPVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子を用いて構成される。
【0038】
先端部56の撮像素子部68には、対物レンズと撮像素子16が設けられている。対物レンズは、照明光により照射された生体組織からの戻り光を、撮像素子16の受光面上で結像させる。撮像素子16は、例えば、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。単板式カラーCCDイメージセンサは、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の色成分に対応した画像信号を生成して出力する。撮像素子16は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置を用いることもできる。撮像素子16はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0039】
照明部14の照明光は、配光レンズを通して先端部56にある射出端面70より射出される。射出端面70からは、入射された照明光が、配光レンズを通して射出される。照明光は、ライトガイド94を介して、電子内視鏡12の照明部14に入射される。
【0040】
先端部56の外側部分は硬質樹脂で構成されている。撮像素子部68には、撮像素子16と撮像素子16による撮像のための対物レンズや照明レンズ等(図示略)が設けられている。
【0041】
さらに、先端部56は、液体あるいは気体を吐出するあるいは吸引する送気・送水ノズル72を備える。送気・送水ノズル72は、撮像素子16に付随した対物レンズ及び照明レンズの表面を洗浄する水等の液体を吐出したり、対物レンズ及び照明レンズの表面に残存する液体や異物を除去するために空気等の気体を吐出したりする。また、先端部56には、液体を充填して生体組織に接触させて超音波診断を行うために用いるバルーン(図示略)が装着されるようになっており、バルーン注水口88とバルーン吸水口90が設けられている。さらに、先端部56には、可撓性を有する穿刺針(図示略)を生体組織に接触させるための鉗子起上台76が設けられ、この鉗子起上台76を通して生体組織上の液体や気体の吸引を行なう開口も設けられている。
【0042】
挿入部54には、上下方向及び左右方向に湾曲する湾曲部78が設けられている。湾曲部78より基端側(操作部52の側)の部分は自重や施術者の操作に追従して屈曲することができる可撓性のある軟性部58となっている。
【0043】
軟性部58は、湾曲部78と操作部52の間に設けられ、先端部56に設けられるセンサの信号線、及び、上記開口から気体あるいは流体が流れる複数の個別流路がその内部に設けられている。これらの個別流路は、管、チューブ、あるいは長孔により形成されている。
【0044】
操作部52と先端部56の側には、可撓性を備え、穿刺針を挿入するための処置具挿入口突起80と鉗子起上ワイヤ洗浄口74が突設している。処置具挿入口突起80の端部開口にはキャップが着脱可能に取り付けてある。挿入部54の内部には、処置具挿入口突起80から先端部56側に向かって延び、かつ可撓性を有する処置具挿通兼吸引管が設けられている。処置具挿通兼吸引管は、鉗子起上台76で開口している。処置具挿入口突起80から処置具挿通兼吸引管に挿入された穿刺針は、鉗子起上台76にある処置具挿通兼吸引管の先端開口から外側に突出可能であり、先端開口から突出させて生体組織を触診するために用いられる。
【0045】
操作部52は、流路切換スイッチの複数の操作ボタン84を備え、コネクタ64から可撓性ケーブル60内を延びる、流体が流れる共通流路がその内部に設けられている。湾曲操作レバー82は、湾曲部78を、上下方向及び左右方向に湾曲させるために、術者が操作するレバーである。湾曲操作レバー82の回転操作に応じて湾曲部78が上下方向及び左右方向に湾曲する。
【0046】
可撓性ケーブル60は、撮像画像用プロセッサ22に接続するコネクタ64と操作部52を接続する。コネクタ64には、流体の供給あるいは吸引を行うための共通流路の開口ポートも設けられている。
【0047】
コネクタ64は、光源差込部86を有し、撮像画像用プロセッサ22に接続される。撮像画像用プロセッサ22にある光源ユニットで生成された照明光は、コネクタ64から、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内のライトガイドケーブル内を通り先端部56に向けて伝送される。さらに、コネクタ6からは、撮像画像用プロセッサ22から可撓性ケーブル60内の信号線を介して撮像素子16へ駆動信号が送られる。撮像素子16で撮像した画像信号は、可撓性ケーブル60、操作部52、及び挿入部54内の信号線を介して撮像画像用プロセッサ22へ送られる。
【0048】
スキャナコネクタ66は、超音波画像用プロセッサ30に接続され、超音波プローブ20でスキャンしたエコー信号を、スキャナコネクタケーブル62を介して超音波画像処理部32に送る。超音波画像処理部32は、エコー信号を処理して、検査対象の生体組織の診断用画像を生成し、生成した画像を表示部46に表示する。さらに、スキャナコネクタケーブル62は、超音波画像用プロセッサ30から、超音波プローブ20の駆動信号を、超音波プローブ20の圧電素子へ送信する。圧電素子は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換でき、電圧変化による伸縮で超音波を発生する。
【0049】
コネクタ64は、ドライバ信号処理部18に接続される。ドライバ信号処理部18には、撮像素子16より生体組織の画像信号が所定のフレーム周期で入力され、撮像画像用プロセッサ22のシステムコントローラや撮像画像処理部26へ出力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒、1/60秒である。
【0050】
(超音波画像の画像形成原理)
次に、図3を参照すると、一実施形態の電子内視鏡システムにおける超音波画像の画像形成原理が示される。
超音波を利用した画像形成は、超音波パルス反射法を基礎にしている。図3は、生体内で超音波プローブ20から超音波ビームを発生している状態である。超音波ビームは、超音波プローブ20から、例えば10MHz前後の超音波をパルス状に生体内に放射される。放射された超音波は、生体内での体内組織の音響インピーダンスの差により反射波となり、再度超音波プローブ20で受信される。この反射波がエコー信号となる。
【0051】
電子内視鏡12での超音波ビームのスキャンは、フェーズドアレイ方式によるセクタスキャンであり、このセクタスキャンにより、所定の方向に沿ったエコー信号を得ることができる。図3には、Aモードの表示によるエコー信号の一例が示されている。Aモードでは、横軸に時間、縦軸に反射強度(振幅)を採り、エコー信号が表示される。時間は生体深度を表し、体内組織及び体内組織間の距離となる。
【0052】
このAモードのエコー信号の波形を、図3に示すように、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換し、輝度により断層像を濃淡画像として表わすのがBモードである。超音波画像用プロセッサ30の撮影モードは、この他に、周知のMモード、ドプラモードを含んでもよい。
【0053】
(超音波画像用プロセッサ30の信号処理)
次に、図4を参照して、一実施形態の超音波画像用プロセッサ30において行われる信号処理について、より詳細に説明する。
図4は、一実施形態の超音波画像用プロセッサ30において、超音波画像を取得する際のエコー信号が、Bモードの超音波画像として表示されるまでの信号処理の一例を説明する図である。
【0054】
図4に示すように、信号処理部36は、増幅回路120、積分回路122、A/D変換器124、デジタルフィルタ設定部125、及び、帯域制限フィルタ126を含む。
超音波プローブ20で得られるエコー信号は、増幅回路120で増幅され、積分回路122で積分され高調波ノイズが除去される。増幅回路120と積分回路122は、一体化した反転増幅型積分回路により、増幅機能とローパスフィルタ機能を備えてもよい。次に、アナログ信号であるエコー信号は、A/D変換器124でクロック信号によるサンプリング周期でデジタル化(2値化)され、デジタルエコー信号となる。
一実施形態では、帯域制限フィルタ126(フィルタ処理部の一例)は、デジタルフィルタ設定部125によって設定されたデジタルフィルタ設定値に基づいて、デジタルエコー信号に対する帯域制限を行う。帯域制限フィルタ126は、例えば、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタである。帯域制限フィルタ126がローパスフィルタである場合の遮断周波数、又は、帯域制限フィルタ126がバンドパスフィルタである場合の高周波数側の遮断周波数は、積分回路122による遮断周波数よりも低いものとなる。
【0055】
図4に示すように、超音波画像処理部32は、輝度変調部128、超音波画像生成部130、及び、D/A変換器132を含む。
信号処理部36から出力されるデジタルエコー信号は、輝度変調部128で、反射強度に応じて輝度変調して輝度に変換される。輝度に変換されたデジタルエコー信号は、超音波画像生成部130において画像処理され二次元のBモードの断層像となる。このデジタル画像信号をD/A変換器132でアナログ信号に変換し、表示部46でBモードの断層像として表示される。
【0056】
ノイズ周波数検出部34(周波数帯域検出部の一例)は、エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域を検出する。
すなわち、ノイズを含まないエコー信号(超音波受信信号)の周波数成分は既知であるため、FFT(Fast Fourier Transform)を利用した周波数分析を行うことにより、超音波信号の周波数成分を除く帯域から、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域が特定される。ノイズの少ない周波数帯域も含めて広帯域の周波数特性を把握するためにA/D変換器124のサンプリングレートを高くすることが好ましい。
【0057】
信号処理部36のデジタルフィルタ設定部125は、ノイズ周波数検出部34により検出された周波数帯域の信号が減衰するようにエコー信号に対するフィルタ設定(つまり、帯域制限フィルタ126におけるフィルタ設定)を行う。
【0058】
(フィルタ処理の内容)
次に、信号処理部36において、デジタルフィルタ設定部125及び帯域制限フィルタ126によって行われるフィルタ処理の内容について、図5図8を参照して説明する。
【0059】
一実施形態の帯域制限フィルタ126は、エコー信号のうち、ノイズ周波数検出部34で検出されたノイズ成分の周波数帯域を含む所定の周波数以上の周波数成分の信号を、減衰させるローパスフィルタである。図5を参照すると、図5(a)は、エコー信号に含まれる超音波信号のスペクトルと、信号処理部36の積分回路122によって規定されるローパスフィルタのフィルタ特性と、を示している。ここで、ノイズ周波数検出部34で検出されたノイズの周波数帯域が、図5(b)のエコー信号のスペクトルに示すように、超音波信号よりも高い周波数帯である場合には、検出された周波数帯域のノイズが減衰するようなローパスフィルタ(図5(b)のフィルタ特性)が設定される。図5(b)のフィルタ特性では、遮断周波数が図5(a)のフィルタ特性(積分回路122によるもの)よりも低く設定され、ノイズが効果的に除去されるようになっている。
図5(c)に示すように、ノイズ周波数検出部34で検出されたノイズ成分の周波数帯域が、超音波信号の周波数帯域よりも低い帯域と高い帯域の両方が存在する場合には、帯域制限フィルタ126としてバンドパスフィルタを設定することが好ましい。
【0060】
一実施形態の帯域制限フィルタ126は、超音波画像処理部32がTHI(tissue harmonic imaging)に対応した画像を生成する場合、THIに適したフィルタ特性を有する。THIは、伝搬に伴う超音波波形の歪みにより発生する、基本周波数のN倍(N:2以上の整数)の周波数である2以上の高調波成分に基づいて、超音波画像を生成するイメージング法として知られており、一般に分解能の向上やアーチファクトの低減の効果がある。
【0061】
図6(a)を参照すると、エコー信号のスペクトルとして、基本周波数fを中心周波数とする信号成分と、基本周波数のN倍(N:2以上の整数)の周波数2f,3f、4f,…を中心周波数とする2次成分、3次成分、4次成分、…の高調波成分とが含まれる。この場合、周波数2f,3f、4f,…は既知であるため、ノイズ周波数検出部34は、周波数2f,3f、4f,…を中心周波数とする周波数帯域を除く帯域から、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域を特定(検出)する。そして、デジタルフィルタ設定部125は、ノイズ周波数検出部34により検出された周波数帯域の信号が減衰するように(つまり、基本周波数のN倍の周波数以外の信号が減衰するように)エコー信号に対するフィルタ設定を行う。その結果、帯域制限フィルタ126のフィルタ特性は、例えば、図6(b)に示すようなバンドパスフィルタの特性とすることができる。
【0062】
一実施形態では、超音波プローブから生体組織に送信される超音波パルスのパルス持続時間を長くすることも有効である。超音波パルスのパルス持続時間を長くすることで、エコー信号に含まれる超音波信号の帯域幅が狭くなるため、ノイズを効果的に除去できるようにフィルタ特性を設定することができる。
そこで、制御部40(図4参照)は、超音波プローブによって生体組織に付与する超音波パルスのパルス持続時間を調整するように送受信部38を制御する調整部として機能してもよい。その場合、デジタルフィルタ設定部125は、制御部40によって調整されたパルス持続時間に基づいて帯域制限フィルタ126に対するフィルタ設定を行う。
【0063】
図7を参照すると、図7(a)は変更前の超音波パルス(パルス持続時間Tp1)を示し、図7(b)は変更後の超音波パルス(パルス持続時間Tp2;但し、Tp2>Tp1)を示す。この場合、図7(c)のエコー信号のスペクトルに見られるように、変更後の超音波パルスによって受信する超音波信号は、変更前(鎖線で示す)と比べて狭帯域となる。そのため、例えば図7(c)に示すように、変更前の超音波パルスによって受信する超音波信号とノイズの周波数帯域が重複しているような場合であっても、超音波パルスの変更後には、超音波信号とノイズの周波数帯域が区別可能となる。そのため、図7(d)に示すように、帯域制限フィルタ126のフィルタ特性として、検出されるノイズの周波数帯域の信号が減衰するようにバンドパスフィルタを設定することで、ノイズ成分のみを効果的に減衰させることができるようになる。
【0064】
ノイズ周波数検出部34で検出された比較的大きなノイズ成分の周波数帯域と、超音波信号の周波数帯域とが重複するか、若しくは近い場合には、超音波信号の周波数帯域をシフトさせることで、超音波信号の信号レベルを減衰させることなく、ノイズレベルを効果的に減衰させることができる。
そこで、一実施形態では、超音波画像用プロセッサ30の制御部40は、ノイズ周波数検出部34によって検出されたノイズ成分の周波数帯域と重複しないように、超音波プローブによって生体組織に付与する超音波の周波数を変更する周波数変更部として機能する。
例えば、図8(a)に示す超音波信号のスペクトルを想定した場合、ノイズ周波数検出部34によって検出されたノイズ成分の周波数帯域と重複する場合には、ノイズ成分の周波数帯域に応じて超音波信号の周波数帯域を低い方向にシフトさせるか(図8(b)の場合)、あるいは高い方向にシフトさせる(図8(c)の場合)。この場合も、検出された周波数帯域のノイズが効果的に減衰するように、帯域制限フィルタ126のフィルタ特性を設定することができる。
【0065】
以上説明したように、デジタルフィルタ設定部125及び帯域制限フィルタ126は、ノイズ周波数検出部34によって検出されたノイズ成分の周波数帯域を考慮して、受信したエコー信号に対するフィルタ処理を行うため、意図しないノイズを効果的に抑制することが可能となる。
以上説明したフィルタ処理の内容のいずれか、又は組合せによってもノイズが除去されない場合には、ノイズが一定間隔で(つまり周期的に)発生する場合が多いことを考慮して、この周期的に発生するノイズを除去する手法を採ることが考えられる。このような周期的なノイズは、例えば、複数の構成デバイスで用いるクロック信号の周波数あるいは複数の構成デバイスのスイッチング信号の周波数の整数倍の周波数が同期することにより、発生するノイズ成分、スイッチング電源で発生するノイズ成分、電子内視鏡12の挿入部54で発生するノイズ成分等がある。周期的に発生するノイズ成分の抑制には、エコー信号に含まれる周期的なノイズ成分を抑制する方法と、ノイズ成分を含んだエコー信号から得られる二次元のBモード画像に対して画像処理をして、ノイズ画素を無くす方法がある。
【0066】
(ノイズ成分の増幅ゲイン抑制)
上述したように、エコー信号に含まれる周期的なノイズ成分を抑制する方法として、一実施形態では、超音波画像処理部32は、ノイズ成分に対応する超音波画像中のノイズ画素とノイズ画素以外の画素との間で増幅ゲイン値が変更するように、ゲイン変更処理を行ってもよい。
この場合、超音波画像処理部32は、予めノイズレベルの閾値を設定し、帯域制限フィルタ126から得られるデジタルエコー信号(輝度変調部128の処理を施す前のエコー信号)のうち、設定した閾値以上の信号をノイズ成分と判定する。ノイズ成分として検出されたデジタルエコー信号の周期(例えば、T1,T2,T3,…)を測定する。周期は、例えば、Aモード表示のデジタルエコー信号の波形から、デジタルエコー信号のFFTを利用した周波数分析により得られるパワースペクトルのピーク周波数から算出する周期を利用して、ノイズ成分の複数の発生時点を特定し、発生時点間の時間間隔を算出することで、周期(T1,T2,T3,…)を求めることができる。
【0067】
測定された周期(T1,T2,T3,…)は、一定の範囲内で変動しており、超音波画像処理部32で、バラツキの幅と周期の最大値Tmax及び周期の最大値Tminを求める。デジタルフィルタ設定部125では、超音波画像処理部32で検出された周期幅を周波数領域の帯域幅として、最小周波数1/Tmaxと最大周波数1/Tminの周波数帯域を除去する帯域制限フィルタ126を設計する(除去帯域を設定する)。この帯域制限フィルタ126にデジタルエコー信号を通すことにより、エコー信号に周期的にノイズ成分が発生しても、このノイズ成分の振幅を抑制することができ、Bモード画像における周期性のあるノイズ成分を抑制することができる。
【0068】
図9は、一実施形態の電子内視鏡システムで得られる周期的に発生するノイズを含むエコー信号が帯域除去フィルタを通過した後のデジタルエコー信号の例を示す図である。積分回路122により高調波ノイズが抑圧され、さらに、帯域制限フィルタ126通過後のデジタルエコー信号も抑圧されている。これにより、輝度変調部128で得られる輝度信号では周期的に発生するノイズ成分が抑制される。
【0069】
(ノイズ画素値の補間処理)
上述したように、エコー信号に含まれる周期的なノイズ成分を抑制する方法として、一実施形態では、ノイズ成分を含んだエコー信号から得られる二次元のBモード画像に対して画像処理をして、ノイズ画素を無くす方法を採ることができる。この場合の超音波画像用プロセッサ30の構成を図10に示す。図10は、図4と比較して、超音波画像処理部32Aが異なる。超音波画像処理部32Aは、超音波画像処理部32に対して画像補間部160が追加されている。画像補間部160は、ノイズ成分に対応する超音波画像中のノイズ画素位置における画素値を、ノイズ画素位置の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて生成した補間画素値に置換する。
【0070】
画像補間部160は、例えば、ノイズ画素の4辺に隣接する4つの周辺画素を用いて画素補間する。ノイズ画素の画素値は、隣接する4つの周辺画素の画素値を用いて画素補間される。例えば、4つの周辺画素の画素値の平均値をノイズ画素の画素値とする。この補間方法は、双一次補間(バイリニア補間)と呼ばれる方法であるが、補間方法は他の方法でもよく、例えば、双三次補間(バイキュビック補間)が用いられる。ノイズ画素が隣接している場合、ノイズ画素に隣接する非ノイズ画素が見いだされるまで、画像補間部160は、ノイズ画素に対して隣接する画素を探索し、ノイズ画素の領域を囲む複数の非ノイズ画素の画素値を用いて画素補間を行う。
【0071】
このように、信号処理部36は、検出したノイズ成分の超音波画像中のノイズ画素位置における画素値を、ノイズ画素位置の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて生成した補間画素値に置換する補正処理を行うので、エコー信号において周期的にノイズ成分が発生しても、Bモード画像においてノイズ成分を抑制することができる。
【0072】
(ノイズ抑制のフロー)
図11は、ノイズ補正の例示的な動作フローを示す図である。
先ず、ステップS2において、受信したエコー信号に含まれるノイズの周波数帯域を検出する。例えば、エコー信号に含まれ、予め設定した閾値レベル以上のノイズ成分の周波数帯域が検出される。次いで、ステップS4で、検出された周波数帯域の信号が減衰するようにエコー信号に対するフィルタ処理を行う。フィルタ処理の結果、予め設定した閾値レベル以上のノイズが検出されなかった場合には(ステップS6:NO)、終了する。
ステップS6でノイズが検出された場合、ステップS4のフィルタ処理ではノイズ抑制に対して十分ではなかったことを意味する。そこで、超音波の駆動方式を変更し(ステップS8)、超音波パルスのパルス持続時間を長くし、エコー信号に含まれる超音波信号の帯域幅を狭くするとともに、狭帯域となった超音波信号に対応したフィルタ設定とする。ステップS8ではまた、超音波信号の周波数帯域をシフトさせ、シフト後の周波数帯域に対応したフィルタ設定としてもよい。そして、再度、予め設定した閾値レベル以上のノイズが検出されるか否か判定を行い、検出されなかった場合には(ステップS10:NO)、終了する。
ステップS10でノイズが検出された場合、ステップS8の超音波の駆動方式の変更が有効ではなかったことを意味する。そこで、ステップS12では、ノイズ成分を含んだエコー信号から得られる二次元のBモード画像の補正を行う。画像補正では、ノイズ成分に対応する超音波画像中のノイズ画素位置における画素値を、ノイズ画素位置の周辺に位置する周辺画素の画素値に基づいて生成した補間画素値に置換する。そして、再度、予め設定した閾値レベル以上のノイズが検出されるか否か判定を行い、検出されなかった場合には(ステップS14:NO)、終了する。
ステップS14でノイズが検出された場合、ステップS16で警告出力を行い終了する。警告出力は、表示部46に表示することにより行う。この場合は、ノイズがあることを術者に知らせ、超音波画像での診断に影響がないようにする。
【0073】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0074】
10…電子内視鏡システム
12…電子内視鏡
14…照明部
16…撮像素子
18…ドライバ信号処理部
20…超音波プローブ
92…メモリ
22…撮像画像用プロセッサ
24…光源部
26…撮像画像処理部
28…撮像画像表示部
30…超音波画像用プロセッサ
32,32A…超音波画像処理部
128…輝度変調部
130…超音波画像生成部
132…D/A変換器
160…画像補間部
34…ノイズ周波数検出部
36…信号処理部
120…増幅回路
122…積分回路
124…A/D変換器
125…デジタルフィルタ設定部
126…帯域制限フィルタ
38…送受信部
40…制御部
42…入力部
44…電源部
46…超音波画像表示部
48…AC電源入力部
52…操作部
54…挿入部
56…先端部
58…軟性部
60…可撓性ケーブル
62…スキャナコネクタケーブル
64…コネクタ
66…スキャナコネクタ
68…撮像素子部
70…射出端面
72…送気・送水ノズル
74…鉗子起上ワイヤ洗浄口
76…鉗子起上台
78…湾曲部
80…処置具挿入口突起
82…湾曲操作レバー
84…操作ボタン
86…光源差込部
88…バルーン注水口
90…バルーン吸水口
94…ライトガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11