(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】ハイドロフルオロオレフィン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 21/18 20060101AFI20241025BHJP
C07C 23/08 20060101ALI20241025BHJP
C07C 23/10 20060101ALI20241025BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20241025BHJP
C11D 7/30 20060101ALI20241025BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C07C21/18 CSP
C07C23/08
C07C23/10
C09K5/04 F
C11D7/30
C11D7/50
(21)【出願番号】P 2021548189
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2020051153
(87)【国際公開番号】W WO2020170080
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-10
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】トーソー,ニコラス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリンスキー,マイケル ジェイ.
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/057134(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02684870(EP,A1)
【文献】特公昭45-028977(JP,B1)
【文献】特開平06-179894(JP,A)
【文献】特表2009-523859(JP,A)
【文献】特表2013-516742(JP,A)
【文献】J. D. LAZERTE et al.,The Free-radical Catalyzed Addition of Alcohols and Aldehydes to Perfluoroolefins,Journal of the American Chemical Society,Vol. 77, No. 4,1995年02月,p.910-914
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 21/18
C07C 23/08
C07C 23/10
C09K 5/04
C11D 7/30
C11D 7/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】
[式中、R
Hは、水素原子又はCH
3であり、
(i)R
F1は、1~10個の炭素原子を有
する、
直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、R
F2は、
1~8個の炭素原子を有
する、
直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であ
るか、又は
(ii)R
F1及びR
F2は、共に結合して、
5~
6個の炭素原子を有
する環状構造を形成する]
で表される、ハイドロフルオロオレフィン化合物。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロオレフィン化合物が、0より大きい溶解度係数を有する、請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
【請求項3】
請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体であって、前記ハイドロフルオロオレフィン化合物が、前記作動流体中に、前記作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、作動流体。
【請求項4】
組成物であって、
請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と、
式C
n
H
2n+2
[式中、nは5超である]で表される長鎖炭化水素アルカンである汚染物質と、を含み、
前記ハイドロフルオロオレフィン化合物が、前記組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、組成物。
【請求項5】
洗浄組成物であって、
請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と、
共溶媒と、を含む、洗浄組成物。
【請求項6】
前記ハイドロフルオロオレフィン化合物の量が、前記ハイドロフルオロオレフィン化合物及び前記共溶媒の総重量に基づいて、前記洗浄組成物の50重量%を超える、請求項5に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記共溶媒が、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
洗浄組成物であって、
請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と、
界面活性剤と、を含む、洗浄組成物。
【請求項9】
熱伝達のための装置であって、
デバイスと、
前記デバイスへ又は前記デバイスから熱を伝達するための機構と、を備え、前記機構が、請求項1又は2に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体を備える、装置。
【請求項10】
バッテリーパックのための熱管理システムであって、
バッテリーパックと、
前記バッテリーパックと熱連通している作動流体と、を備え、
前記作動流体が、請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む、システム。
【請求項11】
基材から汚染物質を除去するためのプロセスであって、
基材を請求項1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と接触させる工程を含み、
前記汚染物質が
式C
n
H
2n+2
[式中、nは5超である]で表される長鎖炭化水素アルカン
である、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイドロフルオロオレフィン並びにその製造方法及び使用方法に関し、また、ハイドロフルオロオレフィンを含む作動流体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なハイドロフルオロオレフィン化合物が、例えば、米国特許出願公開第2006/0106263号及びロシア特許第2245319号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロオレフィンが提供される。ハイドロフルオロオレフィンは、以下の一般式(I):
【化1】
[式中、R
Hは、水素原子又はCH
3であり、
(i)R
F1は、1~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、R
F2は、フッ素原子であるか、若しくは1~8個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、だたし、R
F2がフッ素原子である場合、R
F1は少なくとも2個の炭素原子を含むか、又は
(ii)R
F1及びR
F2は、共に結合して、4~8個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、環状構造を形成する]
で表される。
【0004】
上記の本開示の概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
絶えず増加する信頼性への要請、継続的な小型化、及びクリーンでないプロセスにおいて製造された電子部品の不具合数の増加の全てが相まって、電子機器製造において、洗浄溶媒の使用がますます注目されている。産業用並びに消費者用電子製品の急速な需要の増加によって、電子産業は急成長してきた。洗浄溶媒は、このような産業用及び消費者用電子製品の生産に使用される一般的な製造用グリース及び油(例えば式CnH2n+2を有する炭化水素)を高い信頼性で溶解するように、特別に設計される。フッ素化洗浄溶媒は高レベルの炭化水素溶解度を示すが、部分的には、低い燃焼性、高い密度、低い粘度、低い表面張力、及び使用後の部品からの素早い蒸発をもたらす高い蒸気圧により、このような用途に好適である。更に、炭化水素溶媒とははっきりと対照的に、フッ素化洗浄溶媒は、洗浄後の部品に残る残留物の量を最小限に抑える。
【0006】
現在、このようなグリース及び油(すなわち、長鎖炭化水素)又は他の有機物を溶解させ、表面から除去するために使用される流体は、例えば、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン(TCA)、トリクロロエチレン、及びジクロロメタンを含む流体ブレンドを含有する。このような流体ブレンドに関して、このアプローチに対する1つの欠点は、洗浄流体の寿命にわたって組成比が変化する傾向である。この組成比の変化は、ひいては安全性の懸念を生じ、洗浄流体の性能を損なう。そのため、毒性がなく、不燃性であり、かつ炭化水素溶解度が高い単一組成の洗浄流体は、電子機器の洗浄産業にとって有意に有益であろう。更に、現在用いられている材料のうちのいくつかは、オゾン層破壊物質としてモントリオール議定書によって規制されているか、又は毒性の懸念を有する。
【0007】
環境に配慮した低毒性の化学化合物に対する需要の増加の観点で、強力な洗浄能力に加えて、環境への影響が小さく毒性が低い、新しい長鎖炭化水素アルカン洗浄流体が必要とされている。最後に、このような洗浄流体は、費用対効果の高い方法を使用して製造できるべきである。
【0008】
概して、本開示は、洗浄流体(又は洗浄流体の構成成分)として有用な、新たな分類の化合物を提供する。化合物は、既存の洗浄流体に、より良好な洗浄特性及び物理的特性をもたらすばかりでなく、大気寿命がより短く、地球温暖化係数がより低く、毒性がより低く、より許容される環境プロファイルをもたらす、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)である。更に、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、高い費用対効果で製造することができる。
【0009】
本明細書で使用する場合、「連結されたヘテロ原子」は、炭素鎖(直鎖若しくは分枝鎖又は環内)の少なくとも2個の炭素原子に結合して炭素-ヘテロ原子-炭素リンケージを形成する、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン化」(例えば、「ハロゲン化HFO」の場合などの化合物又は分子に関して)は、炭素に結合した少なくとも1個のハロゲン原子が存在することを意味する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「フルオロ」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」若しくは「フルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」は、(i)部分的にフッ素化されており、炭素に結合した少なくとも1個の水素原子が存在すること、又は(ii)ペルフルオロ化されていることを意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」若しくは「ペルフルオロアルキル」若しくは「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「ペルフルオロ化」は、完全にフッ素化されており、別段の指示をされている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な、炭素に結合した水素原子が存在しないことを意味する。
【0013】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施形態で使用する場合、用語「又は」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で用いる。
【0014】
本明細書で使用する場合、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0015】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、以下の構造式(I):
【化2】
[式中、R
Hは、水素原子又はCH
3であり、
(i)R
F1は、1~10個、1~8個、1~6個、若しくは1~4個の炭素原子を含有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、R
F2は、フッ素原子(F)であるか、又は1~8個、1~6個、若しくは1~4個の炭素原子を含有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であるか、又は
(ii)R
F1及びR
F2は、共に結合して、4~8個若しくは4~6個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、環状構造を形成する]
で表される、ハイドロフルオロオレフィンに関する。
【0017】
いくつかの実施形態では、RF2がFである場合、RF1は少なくとも2個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、RF2がFである場合、RF1は2個の炭素を含み、RHはCH3ではない。
【0018】
いくつかの実施形態では、上述の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Oが2個の炭素原子に結合した第二級Oヘテロ原子であってもよい。いくつかの実施形態では、上述の連結されたヘテロ原子のいずれかは、Nが3個のペルフルオロ炭素原子に結合した第三級Nヘテロ原子であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、洗浄溶媒として使用するのに非常に好適となる、優れた炭化水素溶解度を有し得る。この点に関して、いくつかの実施形態では、上記ハイドロフルオロオレフィンのいずれかは、以下のように定義される溶解度係数:
溶解度係数(Solubility Factor、SF)=((LSH/14)-1)-3.5((T-70)/70)2+0.643
[式中、LSHは、本開示の実施例の最大可溶性炭化水素試験に従って決定され、Tは(摂氏度における)流体の標準沸点である]を有し得る。いくつかの実施形態では、(室温における)LSHは、非負整数で増加し、14~25、17~23、又は17~21で変化し得る。いくつかの実施形態では、上記化合物のいずれかは、0超、0.1超、0.2超、0.5超、1.0超、1.1超、又は1.2超の溶解度係数(SF)を有し得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物のフッ素含有量は、化合物をASTM D-3278-96 e-1試験法(「Flash Point of Liquids by Small Scale Closed Cup Apparatus」)による不燃とするのに十分であり得る。
【0021】
様々な実施形態において、一般式(I)の化合物の代表例には、以下が挙げられる。
【化3】
【化4】
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、広い動作温度範囲にわたって有用であり得る。この点に関して、いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、摂氏30、40、又は50度以上、且つ摂氏130、120、110、100、90、又は80度以下の沸点を有し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィンは、疎水性であり、比較的化学反応性に乏しく、熱的に安定であり得る。ハイドロフルオロオレフィン化合物は、環境への影響が少ない場合がある。この点に関して、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、500未満、300未満、200未満、100未満、10未満、又は1未満の地球温暖化係数(GWP)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO
2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
【0024】
この式中、aiは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、?は化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象化合物である。通例許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物iの濃度は、擬一次速度論(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定される。同じ時間間隔のCO2の濃度は、大気からのCO2の交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、フッ素化オレフィンを炭化水素アルコールにフリーラジカル付加し、続いてアセチル化及びアセテートの熱分解を介した二段階正味脱水によって生成され得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は更に、上記のハイドロフルオロオレフィン化合物を主要構成成分として含む作動流体に関する。例えば、作動流体は、上記のハイドロフルオロオレフィン化合物を、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%含んでもよい。作動流体は、ハイドロフルオロオレフィン化合物に加えて、次の構成成分:アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、スルホン、ペルフルオロスルホン、又はこれらの混合物のうちの1種以上を、作動流体の総重量に基づいて合計で最大75重量%、最大50重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、又は最大5重量%含んでもよい。このような追加構成成分は、組成物の特性を、特定の用途向けに改変又は強化するために選択できる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む洗浄組成物に関する。使用時に、洗浄組成物は、基材の表面から汚染物質を除去する(例えば、溶解する)働きをすることができる。この点に関して、本開示は更に、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物、及び1種以上の汚染物質(例えば、ハイドロフルオロオレフィン化合物により基材から除去された汚染物質)を含む組成物を対象とする。このような組成物では、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも25重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、汚染物質は長鎖炭化水素アルカン(例えば、式CnH2n+2[式中、nは5、10、15、又は20を超える]を有する)を含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示の洗浄組成物は、1種以上の共溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ハイドロフルオロオレフィン化合物は洗浄組成物中に、ハイドロフルオロオレフィン化合物と共溶媒との総重量に基づいて、50重量%より大きい、60重量%より大きい、70重量%より大きい、80重量%より大きい、90重量%より大きい、又は95重量%より大きい量で存在し得る。
【0029】
例示的な実施形態において、共溶媒としては、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物を挙げることができる。洗浄組成物に使用できる共溶媒の代表例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール、メチルt-ブチルエーテル、メチルt-アミルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、シクロヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-デカン、テルペン(例えば、a-ピネン、カンフェン、及びリモネン)、トランス-1,2-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、メチルシクロペンタン、デカリン、デカン酸メチル、酢酸t-ブチル、酢酸エチル、フタル酸ジエチル、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ナフタレン、トルエン、p-クロロベンゾトリフルオリド、トリフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロ-N-メチルモルホリン、ペルフルオロ-2-ブチルオキサシクロペンタン、塩化メチレン、クロロシクロヘキサン、1-クロロブタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジクロロエタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、2,3-ジヒドロペルフルオロペンタン、1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン、1-トリフルオロメチル-1,2,2-トリフルオロシクロブタン、3-メチル-1,1,2,2-テトラフルオロシクロブタン、1-ヒドロペンタデカフルオロヘプタン、又はこれらの混合物を挙げることができる。このような共溶媒は、例えば、特定の用途向けに洗浄組成物の溶解特性を改変又は強化するように選択でき、得られる組成物が引火点を持たないような比(共溶媒とハイドロフルオロオレフィン化合物との比)で利用することができる。
【0030】
様々な実施形態では、洗浄組成物は、1種以上の界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤としては、フッ素化オレフィンに十分に可溶性であり、汚染物質を溶解、分散又は排除することによって、汚染物質の除去を促進する界面活性剤が挙げられる。1つの有用な分類の界面活性剤は、約14未満の親水性-親油性バランス(hydrophilic-lipophilic balance、HLB)値を有する非イオン性界面活性剤である。例としては、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、アルキルアリー(alkylary)スルホネート、グリセロールエステル、エトキシ化フルオロアルコール、及びフッ素化スルホンアミドが挙げられる。ある界面活性剤が油性汚染物質の除去を促進するために洗浄組成物に添加され、別の界面活性剤が水溶性汚染物質の除去を促進するために添加された、相補的特性を有する界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、使用する場合、汚染物質の除去を促進するのに十分な量で添加することができる。典型的には、界面活性剤は、界面活性剤とハイドロフルオロオレフィン化合物との総重量に基づいて、0.1~5.0重量%の量、又は約0.2~2.0重量%の量で添加される。
【0031】
いくつかの実施形態では、特定の用途に望ましい場合、洗浄組成物は、1種以上の溶解若しくは分散された気体、液体又は固体添加剤(例えば、二酸化炭素ガス、安定剤、酸化防止剤、又は活性炭)を更に含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は更に、洗浄後の状態の上記洗浄組成物を対象とする。この点に関して、本開示は、溶解、分散、又は他の方法で中に含有される1種以上の汚染物質を含む、上記洗浄組成物のいずれかを対象とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、汚染物質としては、軽質炭化水素汚染物質;鉱油及びグリースなどの高分子量炭化水素汚染物質;ペルフルオロポリエーテル、ブロモトリフルオロエチレンオリゴマー(ジャイロスコープ流体)、及びクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(油圧油、潤滑剤)などのフルオロカーボン汚染物質;シリコーン油及びグリース;はんだフラックス;微粒子;水;並びに、精密、電子、金属、及び医療機器の洗浄で遭遇するその他の汚染物質を挙げることができ、これらを除去することができる。いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物は、長鎖炭化水素アルカン汚染物質(例えば、式CnH2n+2[式中、nは9超である]を有する炭化水素)を除去するのに特に適する場合がある。
【0034】
いくつかの実施形態では、汚染物質は、洗浄後組成物中のハイドロフルオロオレフィン及び汚染物質の総重量に基づいて、0.0001%~0.1重量%、0.1~10重量%、若しくは10~20重量%、又は少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、若しくは少なくとも20重量%の量で、洗浄後の洗浄組成物中に(個別に又は集合的に)存在し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示の洗浄組成物は、気体状態若しくは液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための公知技法又は将来の技法のいずれかを利用することができる。例えば、液体洗浄組成物を基材上に噴霧若しくははけ塗りすることができ、気体洗浄組成物を基材全体に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかにさらすことができる。高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を使用して、洗浄を促進することができる。様々な異なる溶媒洗浄技法が、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、B.N.EllisによってCleaning and Contamination of Electronics Components and Assemblies,Electrochemical Publications Limited,Ayr,Scotland,182~94(1986)に記載されている。
【0036】
有機基材及び無機基材の両方を本開示のプロセスによって洗浄することができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維との混紡を含む布地、並びに先述の材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態では、このプロセスは、電子部品(例えば回路基板)、光媒体若しくは磁気媒体、又は医療機器の精密洗浄に使用され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、基材を洗浄するためのプロセスに関する。洗浄プロセスは、汚染された基材を上述の洗浄組成物と接触させることによって、行うことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物(又はそれを含有する作動流体若しくは熱伝達流体)は、様々な用途において、熱伝達剤として使用することができる(例えば、ドライエッチャー、集積回路試験器、フォトリソグラフィ露光工具(ステッパー)、アッシャー、化学蒸着設備、自動試験設備(プローバー)、物理蒸着設備(例えば、スパッタリング装置)、並びに気相はんだ付け流体及び熱衝撃流体などを含めた、半導体産業における集積回路用工具の冷却又は加熱のため)。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は更に、デバイスと、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達するための機構と、を備える、熱伝達のための装置を対象とする。熱を伝達する機構は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む熱伝達流体又は作動流体を含み得る。
【0040】
提供される熱伝達のための装置はデバイスを含んでもよい。デバイスとは、冷却、加熱又は所定の温度若しくは温度範囲に維持される構成要素、加工対象物、アセンブリ等であってもよい。このようなデバイスには、電気構成要素、機械構成要素及び光学構成要素が含まれる。本開示のデバイスの例としては、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するために使用されるウエハ、電力制御半導体、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージ化された及びパッケージ化されていない半導体デバイス、レーザー、化学反応器、燃料電池、熱交換器、並びに電気化学セルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、デバイスは、冷却器、加熱器、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
更に他の実施形態において、デバイスは、マイクロプロセッサを含めたプロセッサのような、電子デバイスを含み得る。これらの電子デバイスはより強力になるにつれて、単位時間当たりに発生する熱量が増加する。したがって、熱伝達の機構は、プロセッサの性能において重要な役割を果たす。熱伝達流体は、典型的には、良好な熱伝達性能、良好な電気的適合性(冷却板を採用するものなどの「間接接触」用途で使用する場合であっても)、並びに低い毒性、低い燃焼性(又は不燃性)、及び小さい環境影響を有する。良好な電気的適合性には、熱伝達流体候補が、高誘電強度、高体積抵抗率、及び極性物質に対する乏しい溶解性を示すことを要する。加えて、熱伝達流体は、良好な機械的適合性を示すべきであり、すなわち、典型的な構成材料に悪影響を及ぼすべきではなく、低温動作中の流動性を維持するために低い流動点及び低い粘度を有するべきである。
【0042】
提供される装置は、熱を伝達するための機構を含んでもよい。その機構は、熱伝達流体を含んでもよい。熱伝達流体は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィン化合物を含んでもよい。デバイスと熱接触するように熱伝達機構を配置することによって、熱を伝達し得る。熱伝達機構は、デバイスと熱接触するように配置されるとき、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決定される。
【0043】
熱伝達機構としては、これらに限定されるものではないが、ポンプ、弁、流体収納システム、圧力制御システム、凝縮器、熱交換器、熱源、ヒートシンク、冷却システム、能動型温度制御システム及び受動型温度制御システムを含む、熱伝達流体を管理するための設備を挙げることができる。好適な熱伝達機構の例としては、プラズマ化学蒸着(PECVD)ツールの温度制御ウエハチャック、ダイ性能試験のための温度制御試験ヘッド、半導体プロセス装置内の温度制御作動領域、熱衝撃試験槽液体収容容器及び恒温槽が挙げられるが、これらに限定されない。エッチャー、アッシャー、PECVDチャンバ、気相はんだ付けデバイス、及び熱衝撃試験器などの一部のシステムでは、所望の動作温度の上限は、170℃の高温、200℃の高温、又は更には230℃の高温であり得る。
【0044】
デバイスと熱連通するように熱伝達機構を配置することによって、熱を伝達し得る。熱伝達機構は、デバイスと熱連通するように配置されるとき、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決定される。提供される装置として、冷蔵システム、冷却システム、試験装置及び機械加工装置も挙げることができる。いくつかの実施形態において、提供される装置は、恒温槽又は熱衝撃試験槽であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、バッテリーパック(例えば、リチウムイオンバッテリーパック)のための熱管理システムを対象とする。システムは、バッテリーパックと、バッテリーパックと熱連通している作動流体とを含み得る。作動流体は、1種以上の本開示のハイドロフルオロオレフィンを含んでもよい。
【0046】
実施形態のリスト
1.以下の一般式(I):
【化5】
[式中、R
Hは、水素原子又はCH
3であり、
(i)R
F1は、1~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、R
F2は、フッ素原子であるか、若しくは1~8個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、直鎖若しくは分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、だたし、R
F2がフッ素原子である場合、R
F1は少なくとも2個の炭素原子を含むか、又は
(ii)R
F1及びR
F2は、共に結合して、4~8個の炭素原子を有し、任意選択的に1個以上の連結されたヘテロ原子を含む、環状構造を形成する]
で表される、ハイドロフルオロオレフィン化合物。
2.ハイドロフルオロオレフィン化合物が、0より大きい溶解度係数を有する、実施形態1に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
3.ハイドロフルオロオレフィン化合物が、ASTM D-3278-96 e-1試験法に従って不燃性である、実施形態1又は2に記載のハイドロフルオロオレフィン化合物。
4.実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィンを含む作動流体であって、ハイドロフルオロオレフィンが、作動流体中に、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、作動流体。
5.組成物であって、
実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と、
汚染物質とを含み、
ハイドロフルオロオレフィンが、組成物中に、組成物の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、組成物。
6.汚染物質が長鎖炭化水素アルカンを含む、実施形態5に記載の組成物。
7.洗浄組成物であって、
実施形態1~4のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物又は作動流体と、
共溶媒と、を含む、洗浄組成物。
8.上記ハイドロフルオロオレフィン化合物が、ハイドロフルオロオレフィン化合物及び共溶媒の総重量に基づいて、上記洗浄組成物の50重量%を超える、実施形態7に記載の洗浄組成物。
9.上記共溶媒が、アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、ハロ芳香族、シロキサン、ハイドロクロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物を含む、実施形態7又は8に記載の組成物。
10.洗浄組成物であって、
実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と、
界面活性剤と、を含む、洗浄組成物。
11.洗浄組成物が、ハイドロフルオロオレフィン化合物及び界面活性剤の総重量に基づいて、0.1~5重量%の界面活性剤を含む、実施形態10に記載の組成物。
12.界面活性剤が、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、アルキルアリールスルホネート、グリセロールエステル、エトキシ化フルオロアルコール、フッ素化スルホンアミド、又はこれらの混合物を含む非イオン性界面活性剤を含む、実施形態10又は11に記載の組成物。
13.熱伝達のための装置であって、
デバイスと、
デバイスへ又はデバイスから熱を伝達するための機構と、を備え、機構が、実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む作動流体を備える、装置。
14.デバイスが、マイクロプロセッサ、半導体デバイスを製造するために使用される半導体ウエハ、電力制御半導体、電気化学セル、バッテリーパック、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージ化された又はパッケージ化されていない半導体デバイス、燃料電池、及びレーザーから選択される、実施形態13に記載の熱伝達のための装置。
15.熱を伝達するための機構が、電子デバイスの温度又は温度範囲を維持するためのシステム内の構成要素である、実施形態13に記載の熱伝達のための装置。
16.熱を伝達する方法であって、
デバイスを提供することと、
実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む熱伝達流体を用いて、デバイスへ又はデバイスから熱を伝達することと、
を含む、方法。
17.バッテリーパックのための熱管理システムであって、
バッテリーパックと、
バッテリーパックと熱連通している作動流体と、を備え、
作動流体が、実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物を含む、システム。
18.基材から汚染物質を除去するためのプロセスであって、
基材を実施形態1~3のいずれか1つに記載のハイドロフルオロオレフィン化合物と接触させる工程を含み、
汚染物質が長鎖炭化水素アルカンを含む、プロセス。
【実施例】
【0047】
本開示の目的及び利点を、以下の例示的な実施例によって更に例示する。特に注記がない限り、実施例及び明細書の残りの箇所における全ての部、百分率、比等は重量基準であり、実施例において用いられる全ての試薬は、例えば、Sigma-Aldrich Corp.(Saint Louis,MO,US)又はAlfa Aesar(Haverhill,MA,US)などの一般化学品供給業者から入手したもの、若しくは入手可能なものであるか、又は従来の方法によって合成することができる。
【0048】
以下の略語が本明細書で使用される:mL=ミリリットル、mol=モル、g=グラム、℃=摂氏度。「室温」は、およそ20~25℃の周囲温度を指し、典型的な平均は23℃である。
【0049】
【0050】
試験方法
最大可溶性炭化水素(LSH):各ハイドロフルオロオレフィン化合物のLSHは、室温(25℃)及び50℃において、約1:1~1:2のハイドロフルオロオレフィン:炭化水素の重量比で化合物を様々な分子量の炭化水素(CnH2n+2[式中、n=9~24である])と混合することによって決定した。LSH値は、肉眼でヘイズを示すことなくハイドロフルオロオレフィンと相溶性であった最も長い炭化水素についての式CnH2n+2のnの値として報告した。本明細書では、nの値が大きいほど、ハイドロフルオロオレフィンの炭化水素を洗浄する能力が高いことを示すものとして解釈する。
【0051】
引火点:引火点は、ASTM D-3278-96 e-1「Standard Test Methods for Flash Point of Liquids by Small Scale Closed-Cup Apparatus」に概説されている手順に従って測定した。引火点を示さない材料は、ASTM試験法に従って不燃性であると見なした。
【0052】
試料調製
実施例1:3,4,5,5,5-ペンタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンタ-1-エン
【化6】
600mLのパール(Parr)社製反応器に、エタノール(185g、4mol)及びt-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(22g、0.05mol)を充填し、次いで密閉し、-78℃に冷却し、10torrまで真空引きした。ペルフルオロ-2-ブテン(200g、1mol)をシリンダーから充填し、系を密閉し、72時間撹拌しながら70℃に加熱した。反応器を冷却し、混合物を水で2回洗浄し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で1回洗浄した。フルオロケミカル相を分離し、244gの生成物を回収した。試料をシリカゲル上で乾燥させ、更に精製をすることなく次の反応に使用した。
【0053】
1000mLの丸底三口フラスコに、オーバーヘッド撹拌機、滴下漏斗、冷水冷却管、及び熱電対を取り付け、次いで、3,4,5,5,5-ペンタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール(244g、0.99mol)及びモンモリロナイトK10(1g)を充填した。無水酢酸(212g、2.08mol)を、急速撹拌しながら滴下漏斗を介して添加した。わずかな発熱が止まった後、混合物を60℃で一晩撹拌した。フラスコを室温まで冷却し、希釈重炭酸ナトリウム溶液を滴下漏斗を介してゆっくりと添加した。室温で1時間撹拌した後、混合物を分液漏斗に注いだ。水相の試験結果が酸性であったため、プロセスを繰り返した。フルオロカーボン相を分離し、水洗し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥させた。218gの生成物を得た。
【0054】
アセテートを熱分解し、表題生成物を分別蒸留により分離した。構造は、GC-MS及びNMRにより確認した。試料は、ASTM法D7236-96 e-1に従って引火点分析を実施し、引火点は特定されなかった。
【0055】
実施例2:1,1,2,2,3,3,4,4,5,6-デカフルオロ-5-イソプロペニル-シクロヘキサンの調製
【化7】
600mLのパール(Parr)社製反応器に、イソプロパノール(69g、1.15mol)、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(2g、0.01mol)、及びペルフルオロシクロヘキセン(75g、0.29mol)を充填し、次いで密閉して、一晩激しく撹拌しながら70℃に加熱した。反応器を室温まで冷却し、反応器の内容物を分液漏斗に移した。フルオロケミカル相を水で2回洗浄した後、蒸留ヘッド及び磁気撹拌器を取り付けた100mLのフラスコに入れた。ポット温度が110℃に上昇するまでフラスコ内容物を蒸留した。32.6gの材料を回収し、更に精製することなく次の反応に使用した。
【0056】
実施例1と類似の方法により、ポリフッ素化アルコール中間体をアシル化し、熱分解して表題化合物を生成した。生成物をGC-MSで確認した。
【0057】
実施例3:1,1,2,2,3,3,4,4,5,6-デカフルオロ-5-ビニル-シクロヘキサンの調製
【化8】
600mLのパール(Parr)社製反応器に、エタノール(53g、1.15mol)、ペルフルオロシクロヘキセン(75g、0.29mol)、及びt-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(2g、0.01mol)を充填し、密閉し、次いで一晩激しく撹拌しながら70℃に加熱した。反応器を冷却し、混合物を水で2回洗浄し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で1回洗浄した。粗生成物をシリカゲル上で乾燥させ、濾過し、次いで、120℃のポット温度まで蒸留した。残りの反応器の内容物を回収し、更に精製することなく次の反応に使用した。
【0058】
実施例1と類似の方法により、ポリフッ素化アルコール中間体をアシル化し、熱分解して表題化合物を生成した。生成物をGC-MSで確認した。
【0059】
実施例4:1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロ-5-イソプロペニル-シクロペンタンの調製
【化9】
600mLのパール(Parr)社製反応器に、イソプロパノール(85g、1.4mol)及びt-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(3.5g、0.02mol)を充填し、次いで密閉し、-78℃に冷却し、10torrまで真空引きした。ペルフルオロシクロペンテン(100g、0.47mol)をシリンダーから充填した。系を密閉し、一晩激しく撹拌しながら70℃に加熱した。反応器を冷却し、混合物を水で2回洗浄し、飽和重炭酸塩溶液で1回洗浄した。生成物をシリカゲル上で乾燥させ、GC-FIDで分析した。試料を濾過し、110℃のポット温度まで蒸留した。ポット内容物を回収し、純粋な生成物をGC-FIDで確認した。
【0060】
実施例1と類似の方法により、ポリフッ素化アルコール中間体をアシル化し、熱分解して表題化合物を生成した。構造は、GC-MS及びNMRにより確認した。
【0061】
実施例5:1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロ-5-ビニル-シクロペンタンの調製
【化10】
600mLのパール(Parr)社製反応器に、エタノール(85g、1.85mol)及びt-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(3.5g、0.02mol)を充填し、次いで密閉し、-78℃に冷却し、10torrまで真空引きした。ペルフルオロシクロペンテン(100g、0.47mol)をシリンダーから充填した。系を密閉し、一晩激しく撹拌しながら70℃に加熱した。反応器を冷却し、混合物を水で2回洗浄し、飽和重炭酸塩溶液で1回洗浄した。ポット温度が100℃超に上昇するまで、未反応のF-シクロペンテン及びエタノールを留去した。ポット内容物を回収し、123.7gの純粋な生成物を得た。
【0062】
実施例1と類似の方法により、ポリフッ素化アルコール中間体をアシル化し、熱分解して表題化合物を生成した。生成物をGC-MSで確認した。
【0063】
実施例6:3,4,5,6,6,6-ヘキサフルオロ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ヘキサ-1-エンの調製
【化11】
実施例1~5と類似の方法により、ペルフルオロ-4-メチル-2-ペンテンをエタノールと反応させて、ポリフッ素化アルコール中間体を得た。この中間体をアシル化し、熱分解して表題化合物を生成した。生成物をGC-MSで確認した。
【0064】
結果
表2に、実施例1及び4の最大可溶性炭化水素(LSH)試験の結果をまとめる。表2に示される結果は、本発明のハイドロフルオロオレフィンが、洗浄用途に非常に好適な流体であることを示す。
【0065】
【0066】
実施例1は、引火点を示さなかった。実施例4は、直接炎に曝露された時に、開放パン内で燃焼することは観察されなかった。
【0067】
当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。本開示に引用される参照文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。