(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】一酸化炭素耐性アノードを備える水素ポンピングセルを有しシフト反応器を統合した固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241025BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20241025BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20241025BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20241025BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241025BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04014
H01M8/04 J
H01M8/0606
C01B3/26
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2021556763
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 US2020023089
(87)【国際公開番号】W WO2020197842
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-14
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルプパイア,チョッカリンガム
(72)【発明者】
【氏名】ガスダ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ティーエー,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ケケリス,カイル
(72)【発明者】
【氏名】ランガナサン,スリカント
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0266923(US,A1)
【文献】特開2009-087809(JP,A)
【文献】特表2009-503790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0177554(US,A1)
【文献】特表2009-524208(JP,A)
【文献】特表2009-503789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックの空気入口に空気を供給するように構成された空気吸入導管と、
前記燃料電池スタックの燃料入口に燃料を供給するように構成された燃料吸入導管と、
電解質、カソード、及
びアノードを含む電気化学式ポンプセパレータと、
前記燃料電池スタックの燃料排気出口を前記電気化学式ポンプセパレータのアノード入口に動作可能に接続している燃料排気導管と、
前記電気化学式ポンプセパレータのカソード出口を前記燃料吸入導管に動作可能に接続している生成物導管と
、
前記燃料排気導管及び前記空気吸入導管に動作可能に接続された空気予熱熱交換器であって、前記空気吸入導管内の前記空気を用いて前記燃料排気を冷却するように構成された前記空気予熱熱交換器と、
前記燃料吸入導管及び前記燃料排気導管に動作可能に接続された燃料熱交換器であって、前記燃料排気導管内の前記燃料排気を用いて前記燃料吸入導管内の前記燃料を加熱するように構成された前記燃料熱交換器と、
前記燃料排気を酸化するように構成されたアノードテールガス酸化器(ATO)と、
前記燃料排気の流れ方向に関して、前記燃料熱交換器の下流側かつ前記空気予熱熱交換器の上流側に配置され、前記燃料排気導管に動作可能に接続され、前記燃料排気の一部を前記ATOに回すように構成されたスプリッタと
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記アノードは
PtRu合金を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アノードは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、又はそれらの任意の組み合わせを含む純金属又は金属合金
の水性ガスシフト(WGS)触媒を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アノードは結合剤をさらに含み、
前記燃料排気導管は、前記燃料電池スタックの前記燃料排気出口から排出される燃料排気を、前記電気化学式ポンプセパレータの前記アノード入口に供給するように構成されており、
前記生成物導管は、前記電気化学式ポンプセパレータの前記カソード出口から排出される水素を、前記燃料吸入導管に供給するように構成されている、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記燃料排気導管を通る前記燃料排気の流れ方向に関して前記電気化学式ポンプセパレータの上流側の前記燃料吸入導管に、動作可能に接続された水性ガスシフト(WGS)反応器をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記生成物導管及び前記空気吸入導管に動作可能に接続された水素冷却熱交換器をさらに備え、前記水素冷却熱交換器が、前記空気吸入導管内の前記空気を用いて前記生成物導管内の前記水素を冷却するように構成された、請求項
1に記載のシステム。
【請求項7】
前記燃料電池スタックから排出される空気排気を受け入れるように構成された空気排気導管と、
前記空気排気導管及び前記空気吸入導管に動作可能に接続された空気熱交換器であって、前記空気排気導管内の前記空気排気を用いて前記空気吸入導管内の前記空気を加熱するように構成された前記空気熱交換器と
をさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項8】
前記燃料排気に曝される前記燃料熱交換器の表面が、水性ガスシフト(WGS)触媒で被覆された、請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記空気予熱熱交換器を通って延在したセパレータ排気導管をさらに備え、前記セパレータ排気導管が、前記電気化学式ポンプセパレータのアノード出口から排出される燃料排気を前記ATOへ供給するように構成された、請求項
1に記載のシステム。
【請求項10】
前記燃料排気に曝される前記空気予熱熱交換器の表面が、水性ガスシフト(WGS)触媒で被覆された、請求項
1に記載のシステム。
【請求項11】
水性ガスシフト(WGS)触媒を含有する改質器をさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項12】
ホットボックスを更に備え、
前記燃料電池スタック、前記空気予熱熱交換器、前記燃料熱交換器、前記ATO、及び前記スプリッタは、前記ホットボックス内に配置され、
前記電気化学式ポンプセパレータ及び前記WGS反応器は
、前記ホットボックスの外側に配置されている、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して燃料電池システムに関し、より具体的には、電気化学的燃料排気燃料リカバリを備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料に蓄えられたエネルギーを高効率で電気エネルギーに変換できる電気化学装置である。高温型の燃料電池には、固体酸化物形燃料電池と溶融炭酸塩形燃料電池が含まれる。これらの燃料電池は、水素及び/又は炭化水素燃料を使用して作動することができる。固体酸化物形再生燃料電池など、逆の作動も可能な燃料電池の部類があり、供給電気エネルギーを使用して、酸化された燃料を未酸化燃料に還元できる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の1つの実施形態によると、燃料電池システムは、燃料電池スタック、燃料電池スタックの燃料入口に燃料を供給するように構成された燃料吸入導管、電解質と、カソードと、一酸化炭素耐性アノードとを含む電気化学式ポンプセパレータ、燃料電池スタックの燃料排気出口を電気化学式ポンプセパレータのアノード入口に動作可能に接続している燃料排気導管、及び、電気化学式ポンプセパレータのカソード出口を燃料吸入導管に動作可能に接続している生成物導管を含む。
【0004】
本開示の別の実施形態によると、燃料電池システムの作動方法は、燃料電池スタックの燃料入口に燃料吸入流を供給するステップ、燃料排気を燃料電池スタックの燃料排気出口から、電解質と、カソードと、一酸化炭素耐性アノードとを含む電気化学式ポンプセパレータのアノード入口へ供給するステップ、及び、電気化学式ポンプセパレータのカソード出口から排出される水素を燃料吸入流に供給するステップを含む。
【0005】
本開示の1つの実施形態によると、燃料電池システムは、燃料電池スタック、電気化学式ポンプセパレータ、電気化学式ポンプセパレータと統合された水性ガスシフト(WGS)触媒、燃料電池スタックの燃料排気出口を電気化学式ポンプセパレータのアノード入口に動作可能に接続している燃料排気導管、及び、電気化学式ポンプセパレータのカソード出口を、燃料電池スタックの燃料入口に燃料を供給するように構成された燃料吸入導管に動作可能に接続している生成物導管を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の第2の実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の第3の実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の第3の実施形態による燃料電池システムの中央カラムの断面斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の第4の実施形態による、燃料電池システムの概略図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の第4の実施形態による燃料電池システムの変更した中央カラムの断面斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の様々な実施形態による、空気予熱熱交換器から排出された燃料排気を処理するように構成され得るWGS反応器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第1及び第2の実施形態は、電気化学式ポンプセパレータが、固体酸化物形燃料電池システム等の燃料電池システムとともに、どのように使用されるかを示す。他の燃料電池システムも使用できることに留意されたい。
【0008】
第1の実施形態のシステムでは、燃料電池スタックに供給される燃料吸入流を加湿するために、燃料加湿器が用いられる。第2の実施形態のシステムでは、燃料加湿器を省いてもよい。燃料電池スタックの燃料排気流の一部が、燃料吸入流を加湿するために燃料吸入流へと直接リサイクルされる。燃料電池スタックの燃料排気流の別の部分はセパレータに供給され、その後、分離された水素が燃料吸入流に供給される。
【0009】
図1は、本開示の第1の実施形態による燃料電池システム100を概略的に示したものである。システム100は、固体酸化物形燃料電池スタックなどの燃料電池スタック101を含む(イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック電解質、ニッケル-YSZサーメットなどのアノード電極、及びランタンストロンチウムマンガナイトなどのカソード電極を含むスタックの1つの固体酸化物形燃料電池を表すように概略的に示される)。
【0010】
システム100は、また、燃料排気流から水素を電気化学的に分離する電気化学式ポンプセパレータ150を含む。ポンプセパレータ150は、高分子電解質154を含む、任意の適切なプロトン交換膜装置を備えることができる。水素は、電解質の両側に配置されたアノード電極とカソード電極の間に電位差が与えられた状態で、高分子電解質を通って拡散する。好ましくは、ポンプセパレータ150は、高温低水和イオン交換膜セルのスタックなど、一酸化炭素耐性電気化学的セルのスタックを含む。このタイプのセルは、例えば、アノード電極155とカソード電極156の間に配置された、ポリベンゾイミダゾール(PBI)膜などの非フッ素化イオン交換アイオノマー膜を含む。膜には、硫酸やリン酸などの酸がドープされる。このようなセルの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国公開出願US2003/0196893 A1に開示されている。これらのセルは、一般的には、摂氏約100度~約200度の温度範囲で作動する。したがって、システム100内の熱交換器は、燃料排気流を、摂氏約120度~約200度の温度、例えば摂氏約160度~約190度に維持することが好ましい。
【0011】
システム100は、また、燃料電池スタック101の燃料排気出口103をポンプセパレータ150のアノード入口151に動作可能に(すなわち流体的に)接続している第1の燃料排気導管153を含む。システム100は、また、ポンプセパレータ150のカソード出口158を、スタック101の燃料入口105を外部燃料源に動作可能に(すなわち流体的に)接続している燃料吸入導管111に動作可能に(すなわち流体的に)接続している生成物導管157を含む。システム100は、また、ポンプセパレータ150のアノード出口152をアノードテールガス酸化器(ATO)140又は大気ベントに動作可能に(すなわち流体的に)接続しているセパレータ排気導管159を含む。
【0012】
システム100は、燃料吸入導管111とセパレータ排気導管159とに動作可能に接続される燃料加湿器119をさらに含む。作動中、燃料加湿器119は、セパレータ排気導管159に排出されたセパレータ排気に含まれる水蒸気を用いて、リサイクルされた水素を含む燃料導管111内の燃料を加湿する。燃料加湿器119は、例えば、ともにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,106,964号及び米国出願シリアル番号10/368,425に記載されるように、Nafion(登録商標)膜加湿器等の高分子膜加湿器、エンタルピーホイール、又は複数の水吸着床を含むことができる。例えば、1つの好適なタイプの加湿器は、Perma Pure LLCから入手可能な、水蒸気及びエンタルピー移動のNafion(登録商標)系透水性膜を含む。燃料加湿器119は、水蒸気及びエンタルピーを燃料排気流から燃料吸入流に受動的に移して、燃料吸入流中の水蒸気の炭素に対する比を2~2.5にする。燃料吸入導管111内の燃料の温度は、燃料加湿器119によって、摂氏約80度~約90度まで上昇させることができる。
【0013】
システム100は、また、燃料吸入導管111と燃料排気導管153とに動作可能に接続される伝熱式熱交換器121(例えば、アノード復熱器)を含む。熱交換器121は、燃料排気導管103内の燃料排気から取り出した熱を用いて、燃料吸入導管111内の燃料を加熱する。熱交換器121は、流入する燃料の温度上昇を促進し、燃料排気の温度を下げ、凝縮器内でさらに冷却されて、燃料加湿器119を損傷させないようにする。
【0014】
燃料電池が外部燃料改質タイプの電池である場合、システム100は燃料改質器123を含む。改質器123は、炭化水素燃料吸入流を水素及び一酸化炭素を含む燃料流へと改質し、これはその後スタック101に供給される。改質器123は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許第7,422,810号に記載されるように、燃料電池スタック101内で生成された熱によって、及び/又は、任意選択のATO140で生成された熱によって、放射的に、対流によって、及び/又は、伝導的に加熱され得る。あるいは、スタック101が内部改質タイプの電池を含み、改質が主にスタックの燃料電池(セル)内で行われる場合、外部改質器123は省くことができる。
【0015】
システム100は、また、スタック101の空気入口107に流体的に接続される空気吸入導管130を含む。任意選択で、システム100は、空気吸入導管130に動作可能に接続されるとともに、燃料排気導管153内の燃料排気から取り出した熱を用いて空気吸入導管130内の空気を予熱するように構成された空気予熱熱交換器125を含む。必要に応じて、この熱交換器125を省略してもよい。
【0016】
システム100は、また、スタック101の空気排気出口109をATO140に流体的に接続している空気排気導管132を含む。システム100は、好ましくは、空気吸入導管130と空気排気導管132とに動作可能に接続される空気熱交換器127を含む。この熱交換器127は、さらに、空気排気導管132内の燃料電池スタック空気排気(すなわち、酸化剤又はカソード排気)から取り出した熱を用いて、空気吸入導管130内の空気を加熱する。予熱式熱交換器125が省略される場合には、空気は、ブロワ又は他の空気取り入れ装置によって熱交換器127に直接供給される。
【0017】
システム100は、また、任意選択で、生成物導管157と空気吸入導管130に動作可能に接続される任意選択の水素冷却熱交換器129を含む。熱交換器129は、空気吸入導管130を通って流れる空気を使用して、ポンプセパレータ150から排出される分離された水素から熱を取り出す。
【0018】
システム100は、また、燃料排気導管153に動作可能に接続される任意選択の水性ガスシフト(WGS)反応器128を含むことができる。WGS反応器128は、燃料排気中の水の少なくとも一部を遊離水素(H2)へと変換する任意の適切な装置であってよい。例えば、WGS反応器128は、燃料排気流中の一酸化炭素と水蒸気の一部又はすべてを二酸化炭素と水素に変換する触媒を含む管又は導管を備えることができる。したがって、WGS反応器128は、燃料排気中の水素の量を増加させる。触媒は、酸化鉄又はクロム助触媒酸化鉄触媒(chromium-promoted iron oxide catalyst)などの、任意の適切な触媒であってよい。WGS反応器128は、燃料熱交換器121と空気予熱熱交換器125との間で、燃料排気導管153に動作可能に接続することができる。
【0019】
システム100は、次のように作動することができる。燃料吸入流(「燃料」又は「燃料流」とも呼ばれる)が、燃料吸入導管111を通って燃料電池スタック101に供給される。燃料は、任意の適切な炭化水素燃料を含むことができ、メタン、メタンとともに水素や他のガスを含む天然ガス、プロパン、又はその他のバイオガス、あるいは、一酸化炭素などの炭素燃料、メタノールなどの酸素化炭素含有ガス、又は、他の炭素含有ガスと、蒸気、H2ガス又はそれらの混合物等の水素含有ガスとの混合物を含むが、これらに限定されない。例えば、上記混合物は、石炭又は天然ガスの改質に由来する合成ガスを含むことができる。
【0020】
燃料流が加湿器119を通過するとき、燃料流は加湿される。次に、加湿された燃料は、燃料熱交換器121を通過し、そこで、加湿された燃料が燃料電池スタックの燃料排気によって加熱される。次に、加熱され加湿された燃料は、好ましくは外部改質器である燃料改質器123に供給される。例えば、燃料改質器123は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2004年12月2日出願の米国特許番号7,422,810に記載の改質器を含んでよい。
【0021】
燃料改質器123は、炭化水素燃料を部分的又は完全に改質して炭素含有及び遊離水素含有燃料を形成することのできる、任意の適切な装置であってよい。例えば、燃料改質器123は、炭化水素ガスを、遊離水素と炭素含有ガスとのガス混合物に改質することができる任意の適切な装置であってよい。例えば、燃料改質器123は、触媒を被覆した通路を含むことができ、そこで、天然ガスなど、加湿されたバイオガスが水蒸気-メタン改質反応を介して改質されて、遊離水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、及び任意選択で残りの量の未改質のバイオガスを形成する。次に、遊離水素及び一酸化炭素は、燃料電池スタック101の燃料(すなわち、アノード)入口105に供給される。したがって、燃料吸入導管111内の燃料の流れ方向に関して、加湿器119は熱交換器121の上流に位置し、熱交換器121は改質器123の上流に位置し、改質器123はスタック101の上流に位置する。
【0022】
空気吸入導管130を通してスタック101に供給される、空気又は他の酸素含有ガス(すなわち、酸化剤)(「空気吸入流」又は「空気流」とも呼ぶ)は、空気排気導管132内のカソード排気を使用して、空気熱交換器127によって加熱される。必要に応じて、空気吸入導管130内の空気を、空気をスタック101に供給する前に、水素冷却熱交換器129に通して、及び/又は、空気予熱熱交換器125に通して、空気流の温度をさらに上げることもできる。
【0023】
作動中、スタック101は、供給された燃料と空気を使用して電気を生成し、燃料排気と空気排気を生成する。燃料排気には、水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなどの未反応の炭化水素燃料、及びその他の反応副産物や不純物が含まれ得る。燃料排気は、スタック101に供給される燃料の約25%を含み得る。
【0024】
燃料排気は、燃料排気出口103から排出され、燃料排気導管153によってポンプセパレータ150に供給される。ポンプセパレータ150は、燃料排気に含まれた水素(H2)の少なくとも一部を電気化学的に分離する。分離された水素は、カソード出口158から排出され、生成物導管157によって燃料吸入導管111に供給され、そこで水素は、入ってくる新鮮な燃料と混合される。好ましくは、水素は、加湿器119の上流側の燃料吸入導管111に供給される。
【0025】
燃料排気導管153内の燃料排気流は、まず、熱交換器121に供給され、ここで、入ってくる燃料の温度を上げながら、自身の温度を、好ましくは200℃未満に下げる。WGS反応器128と空気予熱熱交換器125が存在する場合には、燃料排気はWGS反応器128を通って供給され、水蒸気の少なくとも一部と、残留する一酸化炭素の大部分を、二酸化炭素と水素に変換する。その後、燃料排気の温度は、熱交換器125を通過する間に、空気吸入導管130内の空気に熱を伝達することによってさらに下げられる。燃料排気の温度は、例えば、約90~110℃まで下げることができる。
【0026】
燃料排気は、その後、導管153を経て、ポンプセパレータ150のアノード入口151に供給される。セパレータ150は、例えば燃料排気流中の水素の約85%といった、燃料排気からの水素の大部分を分離するように構成することができる。特に、水素は、セパレータ150内のセルの電解質を通って拡散し、同時に、燃料排気中の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、及び残りの炭化水素ガスは、導管159によって加湿器119に供給される。
【0027】
燃料加湿器119では、燃料排気中の水蒸気の一部が、燃料を加湿するために燃料吸入導管111内の燃料に移される。燃料は80℃~90℃の露点まで加湿することができる。次に、燃料排気流の残りは、スタック101からの空気(すなわち、カソード)排気と共にATO140に供給され、そこでガスが酸化されて、低品質な熱を供給する。ATOからの排気は、ATO排気導管161に供給され得る。ATO140からの熱は、改質器123を加熱するために使用され得るか、システム100の他の部分に供給され得るか、又は、建物暖房システム等の、システム100外部の装置に供給され得る。
【0028】
ポンプセパレータ150によって分離された水素は、出口158から排出され、生成物導管157によって燃料吸入導管111に供給され、そこで、入ってくる燃料と混合される。必要に応じて、水素は、燃料吸入導管111に供給される前に、熱交換器129で冷却することができ、そこで水素流は空気吸入導管130内の空気と熱を交換する。水素の温度は、燃料吸入導管111に供給される前に、熱交換器129で下げられる。したがって、炭化水素燃料は、電気化学式水素ポンプセパレータ150を用いてアノード排気ガスから回収された周囲温度に近い低露点のリサイクル水素と混合される。
【0029】
したがって、燃料排気の流れ方向に関して、熱交換器121はWGS反応器128の上流に位置し、WGS反応器128は熱交換器125の上流に位置し、熱交換機125はポンプセパレータ150の上流に位置し、ポンプセパレータ150は加湿器119と燃料吸入導管111との上流に位置する。
【0030】
図2は、本開示の第2の実施形態による燃料電池システム200を示す概略図である。システム200は、システム100に類似しており、いくつかの構成要素を共通に含む。システム100及びシステム200の両方に共通であるこれらの構成要素には、
図1及び
図2において同じ番号を付けてあり、これ以上は説明しない。
【0031】
システム100とシステム200との間の1つの違いは、システム200には、好ましくは、加湿器119がないことであるが、必ずしもそうでなくてもよい。その代わりに、水蒸気を含むスタックの燃料排気流の一部が、直接スタック燃料吸入流へとリサイクルされる。燃料排気流中の水蒸気は、燃料吸入流を加湿するのに十分である。
【0032】
システム200は、燃料排気スプリッタ201、リサイクル導管203、ブロワ又はコンプレッサ205、及び混合器207を含むことができる。スプリッタ201は、コンピュータ又はオペレータ制御の多方弁、例えば、三方弁、又は別の流体分割装置であってよい。スプリッタ201は、燃料排気導管153及びリサイクル導管203に動作可能に接続することができる。特に、スプリッタ201は、燃料排気導管153内の燃料排気の全部又は一部をリサイクル導管203に選択的に回すように構成することができる。
【0033】
混合器207は、燃料吸入導管111、リサイクル導管203、及び生成物導管157に動作可能に接続することができる。リサイクル導管203は、スプリッタ201を混合器207に流体的に接続することができる。混合器207は、新鮮な燃料を、リサイクル導管203によって供給される燃料排気及び/又は生成物導管157によって供給される水素と混合するように構成することができる。
【0034】
ブロワ又はコンプレッサ205は、リサイクル導管203に動作可能に接続することができる。ブロワ又はコンプレッサ205は、燃料排気をリサイクル導管203を通って混合器207へと移動させるように構成することができる。作動中、ブロワ又はコンプレッサ205は、所望の量の燃料排気を、混合器207を介して燃料吸入導管111に制御可能に供給する。
【0035】
システム200を作動させる方法は、システム100を作動させる方法に類似している。1つの違いは、燃料排気が、スプリッタ201によって少なくとも2つの流れに分離されることである。第1の燃料排気流が燃料吸入流にリサイクルされる一方で、第2の流れはポンプセパレータ150へと向けられ、そこで、第2の燃料排気流に含まれる水素の少なくとも一部分を第2の燃料排気流から電気化学的に分離する。次に、第2の燃料排気流から分離された水素は、生成物導管157によって燃料吸入導管111へと供給される。燃料排気の50%から70%の間、例えば約60%等を、ブロワ又はコンプレッサ205に供給することができ、残りをポンプセパレータ150の方へと供給することができる。
【0036】
好ましくは、燃料排気は、スプリッタ201に供給される前に、熱交換器121及び125、及びWGS反応器128を通って流れる。燃料排気は、2つの流れに分割されるスプリッタ201に供給される前に、熱交換器125において、約200℃以下に、例えば約120℃~約180℃に冷却することができる。これにより、所望の量の燃料排気流を燃料吸入導管111に制御可能にリサイクルするために、低温度ブロワ205を用いることが可能となる。なぜなら、こうしたブロワは、約200℃以下の温度を有するガス流を移動させるのに適合できるからである。
【0037】
ブロワ又はコンプレッサ205はコンピュータ又はオペレータ制御することができ、以下に記載する状況に応じて燃料吸入流に供給される燃料排気流の量を変えることができる。いくつかの実施形態において、システム200は、任意選択で、生成物導管157に動作可能に接続されるセレクターバルブ210を含むことができる。セレクターバルブ210は、補助装置212、例えば、水素貯蔵装置、車両内のPEM燃料電池等の水素使用装置又は別の水素使用装置、又は水素貯蔵容器に、流体的に接続され得る。セレクターバルブ210は、生成物導管157内の選択された量の水素を補助装置212に回すように構成され得る。例えば、水素の全部又は一部を、補助装置212又は混合器207のいずれかに供給することができるか、あるいは、水素を、混合器207及び補助装置212に交互に供給することができる。
【0038】
ブロワ又はコンプレッサ205及び任意選択のセレクターバルブ210は、以下の状況の1つ又は複数に基づいてガス流を制御可能に変えるようにコンピュータ又はオペレータによって操作することができる:i)システム100の検出又は観測された状況(すなわち、燃料吸入流中の水素の量の変更を必要とする、システム作動状況の変化);ii)燃料吸入流中の水素の一時的な調整を必要とする、コンピュータに提供された事前の計算又はオペレータに知らされた状況;iii)例えば、スタックによって生成された電力の使用者による電力需要の変化、水素の価格と比較した電気又は炭化水素燃料の価格の変化など、スタック101の動作パラメーターの、望まれる将来の変化、現在起こっている変化又は最近の過去の変化;及び/又は、iv)水素使用装置などの水素使用者による水素需要の変化、電気の価格と比較した水素又は炭化水素燃料の価格の変化など。
【0039】
燃料排気(すなわちテール)ガスから分離された水素の少なくとも一部を燃料吸入導管111へとリサイクルすることによって、燃料電池システムの高効率な運転が得られると考えられる。さらに、全体的な燃料利用率が増加する。パス当たりの燃料利用率が約75%である(すなわち、スタックを通り抜ける各パスの間に、燃料の約75%が使用される)場合、発電効率(すなわち、AC電力効率)は、第1及び第2の実施形態の方法では、約50%から約60%の間の範囲、例えば約54%から約60%の間の範囲、とすることができる。パス当たりの利用率が約75%である場合、約94%~約95%の有効な燃料利用率が得られ、燃料排気ガス水素の約85%がポンプセパレータ150によって燃料電池スタックにリサイクルされる。パス当たりの燃料利用率を、例えば約76~80%など、75%より上に上げることにより、さらに高い効率を得ることができる。定常状態では、第1及び第2の実施形態の方法は、水蒸気メタン改質が燃料電池への供給ガスを生成するために用いられる際の、水蒸気の生成を不要とする。燃料排気流は、水蒸気の炭素に対する比2~2.5でスタックへの燃料吸入流を加湿するのに十分な水蒸気を含む。正味の燃料利用の増加と、水蒸気の生成に熱が必要でなくなることが、全体的な電力効率を上げる。対照的に、水素をリサイクルしない場合、AC電力効率は、スタック内の燃料利用率約75%~80%に対して約45%である。
【0040】
本開示の様々な実施形態によると、ポンプセパレータ150は、燃料排気流から水素を取り除くために、一酸化炭素耐性アノード155を含むことができる。電気化学式ポンプセパレータ150に供給される燃料排気流は、燃料として使用した天然ガスの水蒸気改質からのリフォメート等、一酸化炭素(CO)のかなりの部分を含み得る。COは多くの水素ポンプ材料にとって有害であり、ポンピング電圧(電力)を大幅に増加させる。一実施形態では、電気化学式ポンプセパレータ150は、CO耐性のアノード155を含む。
【0041】
したがって、電気化学式ポンプセパレータ150は、アノード155とカソード156との間にプロトン伝導性電解質154を配置した、任意の適切な水素ポンプを含むことができる。アノードに、燃料電池の燃料排気流などの水素含有ガス流が供給され、そこで水素がアノードの触媒材料によってプロトンと電子に解離される。電子は印加電圧によってカソードに駆動され、プロトンをカソードへと動かして純粋な水素ガスを発生する。
【0042】
好適な電解質154の材料は、任意の好適なプロトン伝導体を含み、例えば、プロトン交換膜(PEM)、又は、Nafion(登録商標)のブランド名で販売されている化学式C7HF13O5S.C2F4をもつスルホン化テトラフルオロエチレン系のフルオロポリマー共重合体等の高分子電解質膜、先の実施形態に記載のリン酸膜(ポリリン酸及びポリベンゾイミダゾールポリマーを含むPBI系のリン酸膜を含む)、プロトン伝導性酸化物としては、LaPO4等のリン酸塩、固体酸(リン酸二水素セシウム、CsH2PO4等)、及び、例えばBaCeYO(BCO)、BaZrYO(BZO)、LaSrPO、BaCaNbO(BCN)、LaCaNbO、又はLaBaGaO(LBGO)のような、ペロブスカイト型のセラート、ニオブ酸塩、リン酸塩、没食子酸塩又はジルコン酸塩等、特定のペロブスカイト(ABO3)材料、その全体を参照により本明細書に援用するChem.Soc.Rev.,2010,39,4370-4387に記載のものが含まれる。
【0043】
好ましい実施形態では、電気化学式ポンプセパレータ150のアノード155は、PtRu合金等の触媒を含む。別の実施形態では、電気化学式ポンプセパレータ150のアノードは、別のCO耐性触媒を含むことができ、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、亜鉛(Zn)、又はそれらの任意の組み合わせを含む元素金属又は合金が含まれるが、これに限定されない。例えば、アノード触媒には、Pt-Ru、Cu-Zn、Cu-Zn-Al、Pt-Ni、Fe-Cr、又はFe-Cr-Cuを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、アノード155は、任意選択で、アノード触媒を電解質154に固定するための結合剤を含む。適切な結合剤には、アイオノマー(例えば、Nafion)又はポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が含まれる。アノード触媒は、担持されても、又は担持されなくてもよい。例えば、アノード触媒は、カーボンブラック(例えば、Vulcan XC 72Rカーボンパウダー又はケッチェンブラックパウダー)等の炭素系材料、カーバイド材料、又は、酸化タングステン(WOx)等の非炭素系材料に担持され得る。アノード155は、触媒、結合剤、及び担体の任意の組み合わせに関して、単層、二層、多層、又は勾配触媒構造を含み得る。
【0045】
図3Aは、本開示の第3の実施形態による燃料電池システム300の概略図である。システム300は、第1及び第2の実施形態のシステム100及びシステム200に関して前述した構成要素と同様のいくつかの構成要素を含むことができ、これらには、
図1及び
図2と同じ番号を付し、詳細には説明しない。
【0046】
図3Bは、本開示の第3の実施形態による、燃料電池システム300の中央カラム301の断面斜視図である。あるいは、中央カラム301は、第1及び第2の実施形態のシステム100,200のいずれかに含まれ得る。したがって、中央カラム301は、システム100,200に関して前述した構成要素と同様のいくつかの構成要素を含むことができ、これらには、
図1及び
図2と同じ番号を付し、詳細には説明しない。
【0047】
第1及び第2の実施形態に関して説明した構成要素に加えて、システム300では、カラム301はホットボックス302の内側に配置され、接触部分酸化(CPOx)反応器170、CPOxブロワ180(例えば、空気ブロワ)、システムブロワ182(例えば、空気ブロワ)、アノードリサイクルブロワ205、及び混合器207は、ホットボックス302の外側に配置することができる。しかしながら、本開示は、ホットボックス302に対する構成要素それぞれについての特定の配置に限定されない。
【0048】
図3Aを参照すると、CPOx反応器170は、燃料入口から燃料吸入流を受け入れる。燃料入口は、CPOx反応器170に供給される燃料の量を制御するための弁を含む、ユーティリティガスラインであってもよい。CPOxブロワ180は、システム300の起動時、CPOx反応器170に空気を供給し、その後、燃料電池スタック101が、例えば750~900℃等の、700℃を超える定常動作温度に達すると、定常動作モード中は止めることができる。定常状態での燃料及び/又は起動時の燃料及び空気の混合物は、燃料吸入導管111によって混合器207に供給することができる。
【0049】
メイン空気ブロワ182は、空気吸入導管130を通して、空気予熱熱交換器125に空気流(例えば空気吸入流)を供給するように構成することができる。ATO排気流は、ATO140から空気熱交換器(例えば、カソード復熱装置)127へ、ATO排気導管161を通って流れる。排気は、空気熱交換器127から蒸気発生器160へとATO排気導管161を通って流れる。排気は、蒸気発生器160からホットボックス302の外側へATO排気導管161を通って流れる。
【0050】
水は、水タンク又は水道管等の水源190から、導水管163を通って蒸気発生器160へと流れる。蒸気発生器160は、ATO排気導管161によって供給されるATO排気からの熱を用いて、水を水蒸気に変える。水蒸気は、蒸気発生器160から導水管163を通って混合器207に供給される。あるいは、必要に応じて、水蒸気を、燃料吸入流に直接供給することができる、及び/又は、アノード排気流を直接燃料吸入流に供給し、続けて、合わさった燃料流を加湿することができる。
【0051】
システム300は、システム300の様々な要素(例えば、ブロワ182,184,205及び燃料制御弁)を制御するように構成されたシステム制御器225をさらに含むことができる。制御器225は、保存された命令を実行するように構成された中央処理ユニットを含むことができる。例えば、制御器225は、燃料組成データに従って、システム300を通る燃料及び/又は空気の流れを制御するように構成することができる。
【0052】
図3Bを参照すると、中央カラムは、1又は複数の燃料電池スタック101を上に配置することのできるベース310から延在することができる。燃料吸入導管111と燃料排気導管153は、スタック101から、ベース310を通ってカラム301へと延在することができる。
【0053】
カラム301は、円筒形の外壁及び内壁を含むことができ、これらは、ATO140を少なくとも部分的に画定する。燃料熱交換器121は改質器123の周りに配置することができる。燃料熱交換器121及び/又は改質器123にWGS触媒を設けることにより、燃料熱交換器121及び/又は改質器123に、任意選択の第1の追加のWGS反応器128Aを組み込むことができる。ATO140は、燃料熱交換器121を包囲することができる。燃料電池スタック101はATO140を包囲することができ、空気熱交換器127(
図3Aに示される)は、ホットボックス302内で燃料電池スタック101を包囲することができる。
【0054】
WGS反応器128は、燃料熱交換器121の上方に配置されている。空気予熱熱交換器125は、WGS反応器128の上方に配置されている。任意選択の第2の追加のWGS反応器128Bは、空気予熱熱交換器125にWGS触媒を設けることによって、空気予熱熱交換器125に組み込むことができる。
【0055】
燃料排気導管153は、燃料電池スタック101、燃料熱交換器121、WGS反応器128、及び空気予熱器125を流体的に接続することができる。したがって、スタック101から排出される燃料排気流は、カラム301の底部に流れ込み、燃料熱交換器121の外面に沿って流れ、その後、カラム301の頂部を出ていくまでに、WGS反応器128及び空気予熱熱交換器125の内部を流れることができる。
【0056】
燃料吸入導管111は、スタック101、燃料熱交換器121、及び燃料改質器123を燃料入口に流体的に接続することができる。したがって、燃料吸入流は、カラム301の頂部に流れ込み、次いで、燃料熱交換器121及び燃料改質器123に供給されてから、カラム301の底部を出てスタック101に供給される。
【0057】
例えば、燃料熱交換器121は、燃料吸入流を燃料排気流から分離するように構成された波形セパレータ含むことができる。いくつかの実施形態では、燃料熱交換器121の、燃料排気に接触する表面をWGS触媒で被覆して、燃料熱交換器121が、燃料熱交換器121とWGS反応器128Aの複合器として作動できるようにすることもできる。言い換えれば、燃料熱交換器121は、燃料吸入流と燃料排気流との間で熱を移動させること、並びに、燃料排気中の水及び一酸化炭素を遊離水素及び二酸化炭素へ変換することの両方のために働くことができる。したがって、WGSの反応性を高めるために、カラム301の追加の容積をWGS反応専用にしてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、カラム301は、燃料排気流の一部をATO140へと回すように構成されたスプリッタ201を含むことができる。燃料排気流の残りは、任意のさらなる処理に適合できる温度まで、空気予熱熱交換器125内で冷却することができる。さらなる一酸化炭素含有量の削減及び水素への水の変換が望まれる場合、燃料排気流を運ぶ空気予熱熱交換器125の導管は、熱交換器125が任意選択の第2の追加のWGS反応器128Bとして働けるように、任意選択で、WGS触媒で被覆されてもよい。
【0059】
図3Aに示される他の任意選択の実施形態は、第3の追加のWGS反応器128C触媒を組み込んだ、電気化学式ポンプセパレータ150を含む。この任意選択の実施形態の一つの態様では、上述したアノード触媒もまたWGS触媒である。この任意選択の実施形態の別の態様では、WGS触媒は、電気化学式ポンプセパレータ150のアノード全体に、又は、電気化学式ポンプセパレータ150のアノードの一部分に被覆されてもよい。この任意選択の別の実施形態の別の態様では、WGS触媒は、電気化学式ポンプセパレータ150と同じハウジング内に配置されているので、電気化学式ポンプセパレータ150とWGS触媒との間に空気予熱器125が配置されない。例えば、燃料排気流が、電気化学式ポンプセパレータ150のアノードに到達する前に、WGS反応器触媒を通過するように、WGS触媒を、電気化学式ポンプセパレータ150を含むハウジングのアノード室の表面に被覆することができる。WGS反応器128C触媒は、PtRu、Cu、Cu-Zn、Cu-Zn-Al、Pt、Pt-Ni、Ni、Fe-Cr、又はFe-Cr-Cuを含むことができる。WGS反応器触媒は、約200~450℃、例えば200~250℃の動作温度を有していてもよく、この温度は、一酸化炭素及び水の、利用可能な水素(さらに廃物の二酸化炭素)への変換を最大にするために望ましい。
【0060】
図4Aは、本開示の第4の実施形態による燃料電池システム400の概略図である。システム400は、システム300と類似しているので、それらの間の違いのみを詳細に説明する。
図4Bは、本開示の様々な実施形態による、変更した中央カラム401の断面斜視図である。カラム401はカラム301に類似しているので、それらの間の違いのみを詳細に説明する。
【0061】
第4の実施形態では、空気予熱熱交換器125の変形が、反応性を高め、燃料排気流の温度を上昇させるためになされている。さらに、第4の実施形態では、燃料排気流はATO140に供給されない。代わりに、スタック101の空気排気流に加えて、新鮮な燃料及び/又はポンプセパレータ150の排出物がATO140に供給される。したがって、第4の実施形態では、燃料排気流の一部が分割されてATO140に供給されることはなく、新たな燃料、及び/又は、さらに後処理された排気燃料を、ポンプセパレータ150から直接ATO140に送ることができる。
【0062】
図4Bを参照すると、カラム401は、内部フィンを含まない、空気予熱熱交換器125Aを含む。したがって、熱交換器125Aを出ていく燃料排気流の温度は、燃料排気と入ってくる空気との間での熱移動を高めるためのフィン(例えば波形)を含む、
図3Bの熱交換器125に比べて高くなる。このより高い温度は、燃料排気の後処理や触媒の必要条件に、より好適な場合もある。フィンを取り外すことで、反応性向上のための、熱交換器内部の触媒に利用できる体積も増える。
【0063】
加えて、カラム401は、ATO140に燃料排気流の一部を供給するように構成されていない。代わりに、新鮮な燃料を含有する燃料吸入流、又はポンプセパレータ500の排出物、あるいはこれらの混合物が、ATO140に供給され得る。言い換えれば、カラム401は、ATO140に供給される燃料と、燃料排気流との混合を防ぐように構成することができ、燃料排気のすべてを、ポンプセパレータ500内での下流側処理のために、カラム401の外へ向かわせることができる。
【0064】
水素リッチ流はポンプセパレータ500のカソード156側出口158から、生成物導管157を通って燃料吸入導管111へと供給される。ポンプセパレータ500のアノード155側出口152からの残りの排出物は、セパレータ排気導管159を通ってATO140へと供給され、ATO燃料として用いられる。セパレータ排気導管159は、空気予熱熱交換器125を通り抜け、そこで、燃料排気流と熱交換することができる。セパレータ排気導管159は、スプリッタ201で終端し、スプリッタは、セパレータ排気導管159から供給された流れをATO140内の空気排気流へと噴射するインジェクタとして機能する。
【0065】
図3A及び4Aに示すいくつかの実施形態において、燃料電池システム300又は400は、追加の熱交換器及び/又はホットボックス302の外側のWGS反応器500触媒を含むことができ、中央カラム(例えば、カラム301、401)から排出される燃料排気をさらに処理することができる。
【0066】
図5は、本開示の様々な実施形態による、中央カラムから排出される燃料排気を処理するように構成され得るWGS反応器500の斜視図である。
図5を参照すると、WGS反応器500は、反応器ハウジング502、入口504、出口506、WGS触媒508、及び任意選択の検出ポート510を含み得る。
【0067】
入口504は、空気予熱熱交換器から排出される(例えば、中央カラムから排出される)燃料排気を受け入れるように構成された燃料排気導管153からの燃料排気を受け入れるように構成することができる。次に、燃料排気は、出口506を通ってハウジング502を出て燃料排気導管153に戻される前に、ハウジング502内に配置されたWGS触媒508に供給され得る。
【0068】
WGS触媒508は、分離された触媒パックの形態であってもよい。検出ポート510は、燃料排気がWGS反応器500を通り抜けるときに、燃料排気の組成を検出するように構成された燃料排気及び/又はガスサンプリング装置の温度を検出するための熱電対を受け入れるように構成することができる。
【0069】
WGS反応器500から排出される燃料排気は、特定の燃料電池システムの運転ニーズに応じて、燃料吸入導管111内の燃料吸入流、水素ポンプセパレータ150、又は追加の熱交換器に供給することができる。いくつかの実施形態において、WGS反応器500は、WGS触媒508が作動前の事前調整が必要である場合には、バルブと対になった追加の入口/出口を含むことができる。
【0070】
本明細書に記載される燃料電池システムは、必要に応じて、他の実施形態及び構成を有してもよい。必要に応じて、他の構成要素を追加してもよい。さらに、本明細書のいずれかの実施形態で説明され、及び/又はいずれかの図に示されるいずれかのシステム要素又は方法ステップは、そのような使用が明示的に説明されていない場合でも、上記の他の適切な実施形態のシステム及び/又は方法でも使用できることを理解されたい。
【0071】
本発明の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。それは、網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、修正及び変形は、上記の教示に照らして可能であるか、又は本発明の実施から取得することができる。本明細書の記載は、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの等価物によって明記されるものとする。