IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7577091自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステム
<>
  • 特許-自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステム 図1
  • 特許-自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステム 図2
  • 特許-自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステム
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/65 20180101AFI20241025BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20241025BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20241025BHJP
【FI】
F21S41/65
F21S41/153
F21W102:13
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093790
(22)【出願日】2022-06-09
(65)【公開番号】P2022189796
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】10 2021 115 179.1
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン フンメル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス グラボウスキ
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-221634(JP,A)
【文献】特開2014-102960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/65
F21S 41/153
F21W 102/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のためのヘッドランプであって、
前記自動車の前方における車線領域内の広い表面(18)を照明するための第1の投影デバイス(12)と、
前記広い表面(18)内に位置する狭い表面(20)を照明するための、前記第1の投影デバイス(12)に対して横方向にオフセットした第2の投影デバイス(14)と、
を有し、
前記第1の投影デバイス(12)によって放射される光の強度プロファイル(22)及び前記第2の投影デバイス(14)によって放射される光の強度プロファイル(24)は、前記狭い表面(20)の少なくとも1つの横方向周辺領域内において、前記狭い表面(20)の外部の前記広い表面(18)内の強度へと段階的遷移が生じ、及び、前記狭い表面(20)内において、前記狭い表面(20)の前記横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が生じるような仕方で、横方向において互いに調和されており、
前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)の前記強度プロファイル(22、24)は、前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)のために指定された投影距離よりも短い距離に設計され、
前記横方向のオフセットは、自然対流による前記第1の投影デバイスおよび前記第2の投影デバイスが有する発光要素の冷却を考慮した量であり、
前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)は、別個に制御可能な、多数の前記発光要素を各々有し、前記発光要素の発光期間及び/又は前記発光要素の発光開始が、前記強度プロファイル(22、24)を設定するために互いに対して設定可能であることを特徴とする、
ヘッドランプ。
【請求項2】
前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)の前記強度プロファイル(22、24)が、測定変数に応じて、前記横方向に移動させられ得るよう、及び/又は前記横方向に拡大可能であるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項3】
前記ヘッドランプ(10)を有する自動車の走行速度が測定変数として提供され、及び/又は測定された実際の投影距離が測定変数として提供されることを特徴とする、請求項2に記載のヘッドランプ。
【請求項4】
前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)は、集束光学ユニット以外が、同じ部品で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項5】
前記第1の投影デバイス(12)に面する前記第2の投影デバイス(14)の周辺部に対する、前記第2の投影デバイス(14)に面する前記第1の投影デバイス(12)の周辺部の横方向オフセットvが、2.0cm≦v≦20.0cm、又は、5.0cm≦v≦15.0cm、又は、v=10.0cm±1.0cmであることを特徴とする、請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項6】
請求項1に記載の左側ヘッドランプ及び請求項1に記載の右側ヘッドランプを有する自動車のためのヘッドランプシステムであって、前記左側ヘッドランプ及び前記右側ヘッドランプの、前記広い表面(18)、或いは前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)が指定投影距離において重なり合い、
前記左側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイル(22、24)及び前記右側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイル(22、24)が、前記それぞれの狭い表面(20)の少なくとも1つの横方向周辺領域内においては、前記狭い表面(20)の外部の前記広い表面(18)内の強度へと段階的遷移が生じ、及び、前記狭い表面(20)内においては、前記それぞれの狭い表面(20)の、相互に外側にある横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が生じるような仕方で、横方向において互いに調和されており、
前記左側ヘッドランプ及び前記右側ヘッドランプの前記強度プロファイル(22、24)が、前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)のために指定された投影距離よりも短い距離のために設計されている、ヘッドランプシステム。
【請求項7】
自動車のためのヘッドランプシステムであって、
左側ヘッドランプと、
右側ヘッドランプと、
を有し、
前記左側ヘッドランプ及び前記右側ヘッドランプは、前記自動車の前方における車線領域内の広い表面(18)を照明するための第1の投影デバイス(12)と、前記広い表面内に位置する狭い表面(20)を照明するための、前記第1の投影デバイス(12)に対して横方向にオフセットした、第2の投影デバイス(14)と、を各々有し、
前記左側ヘッドランプ及び前記右側ヘッドランプの、前記広い表面(18)、或いは前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)は、指定投影距離において重なり合い、
前記左側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイル及び前記右側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイルは、前記それぞれの狭い表面(20)の少なくとも1つの横方向周辺領域内において、前記狭い表面(20)の外部の前記広い表面(18)内の強度へと段階的遷移が生じ、及び、前記狭い表面(20)内において、前記それぞれの狭い表面(20)の、相互に外側にある横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が生じるような仕方で、横方向において互いに調和されており、
前記左側ヘッドランプ及び前記右側ヘッドランプの前記強度プロファイルは、前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)のために指定された投影距離よりも短い距離に設計されており、
前記横方向のオフセットは、自然対流による前記第1の投影デバイスおよび前記第2の
投影デバイスが有する発光要素の冷却を考慮した量であり、
前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)は、別個に制御可能な、多数の前記発光要素を各々有し、前記発光要素の発光期間及び/又は前記発光要素の発光開始が、前記強度プロファイルを設定するために互いに対して設定可能であることを特徴とする、
ヘッドランプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のためのヘッドランプ及びヘッドランプシステムであって、その助けにより自動車の前方の照明領域が良好に照光され得る、ヘッドランプ及びヘッドランプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)から、2つの異なる光点源を有するヘッドランプにおいて、非常に鮮明で高コントラストの記号を投影することができるようにするために、投影面上で他の光点源の光点と重なり合わないであろうそれぞれの光点源の光点のスイッチを切ることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102017114903A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の前方の照明領域を良好に照光することが絶えず求められている。
【0005】
本発明の目的は、自動車の前方における良好に照光された照明領域を可能にする方策を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従って、請求項1の特徴を有するヘッドランプ、請求項9の特徴を有するヘッドランプシステム、及び請求項10の特徴を有するヘッドランプシステムによって達成される。本発明の好ましい精密化が従属請求項及び以下の説明において特定される。これらは、いずれの場合にも、個々に又は組み合わせて本発明の一態様を表現し得る。
【0007】
本発明の一態様は、自動車のためのヘッドランプであって、広い表面(18)を照明するための第1の投影デバイス(12)と、前記広い表面(18)内に位置する狭い表面(20)を照明するための、前記第1の投影デバイス(12)に対して横方向にオフセットした第2の投影デバイス(14)と、を有し、前記第1の投影デバイス(12)によって放射される光の強度プロファイル(22)及び前記第2の投影デバイス(14)によって放射される光の強度プロファイル(24)は、前記狭い表面(20)の少なくとも1つの横方向周辺領域内において、前記狭い表面(20)の外部の前記広い表面(18)内の強度へと段階的遷移が生じ、及び、前記狭い表面(20)内において、前記狭い表面(20)の前記横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が生じるような仕方で、横方向において互いに調和されており、前記第1の投影デバイス(12)及び前記第2の投影デバイス(14)の前記強度プロファイル(22、24)は、前記広い表面(18)及び前記狭い表面(20)のために指定された投影距離よりも短い距離に設計されている、ヘッドランプに関する。
【0008】
特に、共通ヘッドランプハウジング内に提供される投影デバイスは、ロービーム及び/又はハイビームのために意図された照明領域の少なくとも部分を生成するために提供され得る。ロービーム及び/又はハイビームの照明領域の照明の、形状、及び強度、特に、ルクス単位による照度は、概して、一連の規則における法律規定によって規制されている。ヘッドランプの助けにより、ロービーム及び/又はハイビームのために意図された照明領域を映すことができるようにするために、それぞれのヘッドランプの投影デバイスは特定の強度、特に、カンデラ単位による光度の可視光を放射し、放射光を、好適な手段、例えば、ベゼルを用いることによって、照明領域の指定形状をもって放射することができる。それぞれの投影デバイスは、好ましくは、マトリックスの形態で行及び列状に配列された、特に、LEDとして構成された、多数の発光要素を有する。この結果、それぞれの発光要素を適切に制御することによって、照明領域のための所望の形状及び/又は所望の強度を達成することが可能である。
【0009】
例えば、自動車の前方における車線領域内の照明領域は、一連の規則に従って許容される範囲内でできるだけ明るく照光されるべきであり、その一方で、それに隣接した領域内では、例えば、対向車線の領域内では、又は路側では、他の人々の目をくらませないよう、より低強度の明るさが所望される。この目的のために、第1の投影デバイスの助けにより、広い表面を照明することが可能であり、この広い表面は横方向に、及び/又は高さ方向に、或いは走行方向に、より少量の明るさのために照明される領域までも包含され得るほど広がることができる。第2の投影デバイスは比較的狭い表面を照明することができ、そこでは、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスによって放射された可視光の強度が重畳され得る。狭い表面内の二重に照明される領域が過度の照度に達しないことを確実にするために、特に、制御デバイスの助けによりそれぞれの投影デバイスの発光要素を対応して制御することによって、それぞれの投影デバイスの光度を互いに適切に適合させることができる。同時に、すでに提供されている制御デバイスの助けにより、狭い表面と、狭い表面の外部に位置する広い表面の部分との間の、激しい明/暗カットオフ及び急な強度ジャンプを回避することも可能であり、これは、照明領域のより暗い領域内における自動車の運転者の視知覚を改善する。
【0010】
しかし、自動車のすぐ前方の至近範囲内では、第2の投影デバイスに対する第1の投影デバイスの横方向オフセット及び特定のもののために指定された照明領域の投影距離に起因する、有害光学効果が生じ得ることが見出された。コーナリング及び/又は上り坂の走行中に、自動車のヘッドランプによって生成される照明領域が、水平面のために設計された指定投影距離ではなく、それよりも著しく短い距離において地面に当たった場合には、指定投影距離のために設計された、投影デバイスの強度プロファイルが、もはや意図されたとおりに正しく重畳されなくなるため、特別に明るい及び特別に暗い縞が照明領域内に生じ得る。
【0011】
しかし、これらの有害光学効果を回避することができるようにするために、投影デバイスの強度プロファイルは、指定投影距離における水平面の場合に生じる照明領域のために特別に設計されるのではなく、指定投影距離と比べてより短い距離において生じる照明領域のために設計される。照明領域が、指定投影距離から逸脱して、より短い距離において投影される場合には、有害光学効果が回避され、その結果、運転者の視知覚は、このような状況であっても、良好な状態を保ち、生じるいかなる視覚効果による障害も受けない。これは暗闇の中での走行安全性を改善する。
【0012】
ここでは、指定投影距離における非最適な強度分布が意図的に受け入れられる。これは、所望の強度分布のいかなる障害も、距離が増大するにつれて重みが次第に小さくなっていき、距離が増大するにつれて、投影デバイスの横方向オフセットは次第に横ばいになり、重要でなくなることを見出したことに基づく。加えて、距離が増大するにつれて、自動車の運転者は細部にあまり気付くことができなくなり、その結果、より遠く離れた照明領域の領域内における障害のある強度分布は運転者にとってあまり重要でなくなる。対照的に、運転者は、とりわけ安全性の理由のために、自動車のすぐ前方で生じ、ヘッドランプによって照明される状況については、状況を迅速に正しく評価し、適切に反応するために、非常に良好な視認性を有するべきである。強度プロファイルを、実際には過度に短い距離のために設計することによって、指定投影距離における強度プロファイルの障害を実質的にほとんど伴わず、安全上非常に重要な至近範囲内の視知覚を著しく改善することが可能であり、その結果、非常に大きい距離領域にわたって自動車の前方における良好に照光された照明領域が可能となる。
【0013】
ロービームについては、乗用自動車における照明領域の範囲は、設置されたときのヘッドランプの設置高さのものの概ね100倍である。したがって、指定投影距離は自動車におけるヘッドランプの設置高さの実質的に100倍に対応する。65cmの設置高さでは、それゆえ、照明範囲は65mに及び、指定投影距離は65mである。
【0014】
特に、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスの強度プロファイルが設計される距離dについて、ロービームのための投影距離Sに対して、0.40≦d/S≦0.95、特に、0.50≦d/S≦0.90、好ましくは、0.60≦d/S≦0.85、及び特に好ましくは、0.70≦d/S≦0.80である。ロービームのための公称指定投影距離Sに対する照明領域の最適強度プロファイルのための距離dの走行方向におけるこのような移動によって、運転者の光学的知覚に障害を及ぼすことになる大きな有害光学効果は、指定投影距離において予期されなくなるであろう。同時に、自動車の前方における安全上重要な至近範囲を、大きな有害光学効果を伴うことなく十分良好に照光することができる。
【0015】
好ましくは、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスの強度プロファイルは、測定変数に応じて、横方向に移動させられ得るよう、及び/又は横方向に拡大可能であるように構成されている。これは、測定変数の助けにより、照明領域の良好な照光が、有害光学効果をできるだけ伴わずに、指定投影距離から逸脱した特定の距離において有利になる特定の状況を識別することを可能にする。ここでは、第1の投影デバイス及び/又は第2の投影デバイスの発光要素を制御する発光デバイスの助けにより、強度プロファイルのプロファイルが横方向に移動させられ、及び/又は比例的に拡大されることですでに十分であり得る。これにより、照明領域の強度プロファイル及び照光を可変状況に動的に適合させることができ、有害光学効果を伴わない良好な照光を達成することができる。
【0016】
測定変数として、ヘッドランプを有する自動車の走行速度、及び/又は、測定変数として、測定された実際の投影距離を提供することが特に好ましい。高い走行速度においては、例えば、自動車専用道路上で走行している際には、突然出現する物体は自動車に対して遠距離からすでに認識可能になっているため、自動車の前方の至近範囲内では予想されず、その結果、遠距離における、すなわち指定投影距離の、又は場合によっては、よりいっそう遠く離れた領域内における、良好な強度プロファイルが有利である。低い走行速度においては、安全上の理由から、運転者が非常に短い制動距離を可能にすることを望むであろうことが予想されるべきであり、したがって、走行速度に対応する、指定投影距離よりも著しく短い距離における照明領域の、良好な強度プロファイルが有利である。好ましくは、例えば、距離センサの助けにより、自動車の前方の3次元領域をサンプリングすることができ、その結果、指定投影距離から逸脱した実際の投影距離を測定することができ、強度プロファイルを実際の投影距離に動的に適合させることができる。これにより、照明領域内における有害光学効果を最小限に抑えることができる。
【0017】
具体的には、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスは、多数の別個に制御可能な発光要素を各々有し、それぞれの発光要素の発光期間及び/又は様々な発光要素の発光開始が、強度プロファイルを設定するために互いに対して設定可能である。各々の個々の発光要素の個別制御を介して、ほぼ任意の仕方で照明領域の形状及び強度を設定し、これによってまた、それらを可変状況に適合させることが可能である。
【0018】
好ましくは、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスは、実質的に同じ種類のものであるように、特に同一の部品として、構成されており、第1の投影デバイス及び第2の投影デバイスのために、異なる集束光学ユニットが提供されている。これにより、生産コストを低く維持することができる。異なる集束光学ユニットについては、例えば、それぞれの投影デバイスのビーム経路内に配置された、異なる焦点距離の異なるレンズを提供することが可能である。
【0019】
特に好ましくは、広い表面Aと狭い表面Aとの比について、1.5≦A/A≦8.0、特に、2.0≦A/A≦6.0、及び好ましくは、A/A=4.0±0.5である。このような比を有することで、照明領域のための一連の規則において規定された照度を容易に維持することができ、狭い表面内、及び狭い表面の外部に提供された広い表面の部分内の両方における十分な明るさを達成することができる。
【0020】
特に、第1の投影デバイスに面する第2の投影デバイスの周辺部に対する、第2の投影デバイスに面する第1の投影デバイスの周辺部の横方向オフセットvは、2.0cm≦v≦20.0cm、特に、5.0cm≦v≦15.0cm、好ましくは、v=10.0cm±1.0cmである。このようなオフセットについては、設置空間を小さく保ちつつ、投影デバイスの発光要素の十分な冷却が達成され得る。具体的には、横方向オフセットを、自然対流による発光要素の冷却で事足りる量のものになるように選択することが可能である。より短い距離のための強度プロファイルの設計のおかげで、対応して大きなオフセットによって生じる大きな有害光学効果を心配する必要はない。
【0021】
本発明のさらなる態様は、自動車のためのヘッドランプシステムであって、上述されたように構成及び発展され得る、左側ヘッドランプを有し、上述されたように構成及び発展され得る、右側ヘッドランプを有し、左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの、広い表面、或いは広い表面及び狭い表面が指定投影距離において重なり合い、左側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイル及び右側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイルが、それぞれの狭い表面の少なくとも1つの横方向周辺領域内においては、狭い表面の外部の広い表面内の強度への段階的遷移が得られ、狭い表面内においては、それぞれの狭い表面の、相互に外側にある横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が得られるような仕方で、横方向において互いに調和されており、左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの強度プロファイルが、広い表面及び狭い表面のために指定された投影距離よりも短い距離のために設計されている、ヘッドランプシステムに関する。左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの照明領域が重なり合うときでも、強度プロファイルを、実際には過度に短い距離のために設計することによって、指定投影距離における強度プロファイルの障害を実質的にほとんど伴わず、安全上非常に重要な至近範囲内の視知覚を著しく改善することが可能であり、その結果、非常に大きい距離領域にわたって自動車の前方における良好に照光された照明領域が可能となる。
【0022】
本発明の独立した態様は、自動車のためのヘッドランプシステムであって、左側ヘッドランプと、右側ヘッドランプと、を有し、左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプが、広い表面を照明するための第1の投影デバイスと、広い表面内に位置する狭い表面を照明するための、第1の投影デバイスに対して横方向にオフセットした、第2の投影デバイスと、を各々有し、左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの、広い表面、或いは広い表面及び狭い表面が指定投影距離において重なり合い、左側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイル及び右側ヘッドランプによって放射される光の強度プロファイルが、それぞれの狭い表面の少なくとも1つの横方向周辺領域内においては、狭い表面の外部の広い表面内の強度へと段階的遷移が生じ、及び、狭い表面内においては、それぞれの狭い表面の、相互に外側にある横方向周辺領域の間に実質的に一定の強度が生じるような仕方で、横方向において互いに調和されており、左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの強度プロファイルが、広い表面及び狭い表面のために指定された投影距離よりも短い距離のために設計されている、ヘッドランプシステムに関する。
【0023】
それぞれのヘッドランプ内の投影デバイスの強度プロファイルが指定投影デバイスのために設計されている場合であっても、それぞれのヘッドランプの照明領域の強度プロファイルを全体として適合させることによって、個々のヘッドランプ内の上述されたそれぞれの投影デバイスの強度プロファイルの適合と類似的に、同等の効果を達成することが可能である。この点についてそれぞれの投影デバイスに関して上述された説明は、左側及び右側ヘッドランプに類似的に当てはまる。左側ヘッドランプ及び右側ヘッドランプの照明領域が重なり合うときでも、実際には過度に短い距離のために強度プロファイルを設計することによって、指定投影距離における強度プロファイルの障害を実質的にほとんど伴わず、安全上非常に重要な至近範囲内の視知覚を著しく改善することが可能であり、その結果、非常に大きい距離領域にわたって、自動車の前方における良好に照光された照明領域が可能となる。
【0024】
本発明は、以下において、好ましい例示的な実施形態に基づく添付の図面を参照して、例として説明される。以下に提示される特徴は、いずれの場合にも、個々に又は組み合わせて、本発明の一態様を表現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、指定投影距離におけるヘッドランプの投影デバイスの、指定投影距離のために設計された強度プロファイルの概略図を示す。
図2図2は、指定投影距離におけるヘッドランプの投影デバイスの、指定投影距離よりも短い距離のために設計された強度プロファイルの概略図を示す。
図3図3は、より短い距離におけるヘッドランプの投影デバイスの、指定投影距離よりも短い距離のために設計された強度プロファイルの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において部分的にのみ示されるヘッドランプ10は、自動車の前方の照明領域を、特に、ロービーム又はハイビームの形態で、照明するための自動車の左側又は右側ヘッドランプとして用いることができる。ヘッドランプ10は、LEDとして構成されており、マトリックスの形態で配置された複数の発光要素を有する、第1の投影デバイス12と、LEDとして構成されており、マトリックスの形態で配置された複数の発光要素を有する第2の投影デバイス14とを有し、これらの投影デバイスは、ヘッドランプ10の共通ヘッドランプハウジング16内に互いに横方向に離間されて配置されている。第1の投影デバイス12は広い表面18を照明し、その一方で、第2の投影デバイス14は、広い表面18内に完全に位置する狭い表面20を照明し、その結果、狭い表面20は、狭い表面20の外部に位置する広い表面18の部分よりも明るく照明される。それぞれの投影デバイス12、14の発光要素を適切に制御することによって、走行方向を横断する投影デバイス12、14の強度、特に、照度及び/又は光度は、狭い表面20の横方向周辺部における激しい明るさのジャンプが回避されるようになったプロファイルを有することができる。この目的のために、第1の投影デバイス12の強度は外側から内方へ減少することができ、その一方で、第2の投影デバイス14の強度は増大し、その結果、強度が狭い表面20の横方向周辺領域内で対応して重なり合ったときに自動車の運転者の視知覚にあまり強く影響を及ぼさない段階的な強度遷移が生じる。
【0027】
しかし、第1の投影デバイス12の第1の強度プロファイル22及び第2の投影デバイス14の第2の強度プロファイル24が、図1に示されるように、例えば、ロービームのために提供された指定投影距離のために設計されている場合には、投影デバイス12、14によって照明される照明領域が、障害物、上り坂の走行、又は他の状況のゆえに、指定投影距離よりも短い距離のみに及ぶ場合には、投影デバイス12、14の横方向オフセットのゆえに、有害光学効果、特に、暗い及び明るい、垂直の縞が生じる。
【0028】
このような有害光学効果を回避するために、投影デバイス12、14の強度プロファイル22、24は、例えば、図2に示されるように、強度プロファイル22、24が表面18、20の中心に向けて若干移動させられることによって、より短い距離のために意図的に設計される。投影デバイス12、14が、指定投影距離よりも短い距離にわたってのみ照明領域を生成し、その結果、広い表面18及び狭い表面20がより短い距離にわたって投影される場合には、より小さい表面が広い表面18及び狭い表面20のために生じる。しかし、これに対して、より短い距離のために意図的に設計された強度プロファイル22、24は、互いに対する投影デバイス12、14の横方向オフセットをそのままにしながら、最適な照明をもたらす。
【0029】
図2に示される指定投影距離の場合、強度プロファイル22、24のこの設計を用いることで、有害光学効果は運転者によって実質的に知覚できない。加えて、指定投影距離のための、ことによると最適でない照明と最適な照明とのいかなる差も運転者にはほとんど気付かれない。なぜなら、運転者は、比較的広い指定投影距離のためのこのような差をほとんど知覚することができないからである。強度プロファイル22、24を、実際には過度に短い距離のために設計することによって、指定投影距離における強度プロファイルの障害を実質的にほとんど伴わず、安全上非常に重要な至近範囲内の視知覚を著しく改善することが可能であり、その結果、非常に大きい距離領域にわたって自動車の前方における良好に照光された照明領域が可能となる。
【符号の説明】
【0030】
12 第1の投影デバイス
14 第2の投影デバイス
18 広い表面
20 狭い表面
22、24 強度プロファイル
図1
図2
図3