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  • 特許-ゼリー入り炭酸飲料、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】ゼリー入り炭酸飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20241025BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20241025BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241025BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20241025BHJP
【FI】
A23L2/00 Z
A23L2/00 M
A23L2/00 T
A23L2/52
A23L29/20
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022117257
(22)【出願日】2022-07-22
(65)【公開番号】P2024014435
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 勇志
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103439(JP,A)
【文献】国際公開第2022/244889(WO,A1)
【文献】特開2023-006662(JP,A)
【文献】特開2022-093173(JP,A)
【文献】特開2009-055879(JP,A)
【文献】特開2007-236299(JP,A)
【文献】特開2011-115162(JP,A)
【文献】特開2009-112236(JP,A)
【文献】特開2016-195582(JP,A)
【文献】特開2006-223146(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116993(WO,A1)
【文献】特開昭61-260861(JP,A)
【文献】特開2010-68747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰めゼリー入り炭酸飲料を製造する方法であって、
カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、前記容器内で前記A液と前記B液とを混合して、ゼリー部と、液体部とを有するゼリー入り炭酸飲料を製造することを含み、
前記カチオン反応性を有するゲル化剤は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含み、
前記A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、
前記A液の殺菌処理後のpHが、2.0以上6.5未満であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記A液の殺菌処理後の粘度が、5.0mPa・s以上150mPa・s以下であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記B液の殺菌処理後の粘度が、5.0mPa・s以上50mPa・s未満である、前記製造方法。
【請求項2】
前記A液の殺菌処理前のpHが、2.0以上6.5未満である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記A液における前記カチオン反応性を有するゲル化剤の量が、0.05質量%~2.0質量%である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記A液が、さらに、カチオン反応性を有しないゲル化剤を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記A液が、さらに、ジェランガムを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記B液が、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記容器に前記A液を充填した後で、前記B液を充填する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記容器に前記B液を充填した後で、前記A液を充填する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記B液が炭酸ガスを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記B液が2.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下の炭酸ガスを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ゼリー入り炭酸飲料全体に対する前記ゼリー部の質量割合が、10質量%以上70質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記A液の色と、前記B液の色とが異なる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ゼリー部の色と、前記液体部の色とが異なる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記容器に充填する時の前記A液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項15】
前記充填後の前記A液と前記B液との混合液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項16】
前記充填後の前記A液と前記B液との混合液のガス圧が、1.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項17】
前記A液及び前記B液の合計に対する前記A液の量が70質量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ゼリー部が、炭酸ガスを包含する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー入り炭酸飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レディ・トゥ・ドリンク(RTD)飲料の市場は拡大を続けている。RTD飲料としては、単一の色を有するものが主流となっているが、液体に加えてゼリー等の固形分を含む、複数の色を有する製品も数多く上市されている。
【0003】
特許文献1には、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有する溶液と、乳成分を含有する溶液とを混合することによってゼリー入り飲料を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、多糖類溶液と金属塩を含有する溶液の混合液に、酸性溶液を添加することで、均一なサイズのゲル片を調製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-189738号公報
【文献】特開2019-054744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ゼリーを生成する方法として、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するpH6.5~8.5の溶液に、難溶性カルシウム塩を配合し、加熱殺菌によるpHの低下を利用して難溶性カルシウム塩を溶解させることで、所望のタイミングでゲル化反応を起こすことが記載されているが、難溶性カルシウム塩の性質上、溶液のpH域は中性域に制限されていた(例えば、段落[0019])。
また、特許文献2の方法で得られるゲル片は、大きさが十分ではなかった(例えば、段落[0014]、表1及び2)。
【0006】
本発明は、酸性であり、複数の色を有する新規なゼリー入り炭酸飲料、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下のゼリー入り炭酸飲料の製造方法等を提供できる。
1.容器詰めゼリー入り炭酸飲料を製造する方法であって、
カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、前記容器内で前記A液と前記B液とを混合して、ゼリー部と、液体部とを有するゼリー入り炭酸飲料を製造することを含み、
前記カチオン反応性を有するゲル化剤は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含み、
前記A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まず、
前記A液の殺菌処理後のpHが、2.0以上6.5未満であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記A液の殺菌処理後の粘度が、5.0mPa・s以上150mPa・s以下であり、
単一円筒型回転粘度計を使用して、温度25℃で測定した前記B液の殺菌処理後の粘度が、5.0mPa・s以上50mPa・s未満である、前記製造方法。
2.前記A液の殺菌処理前のpHが、2.0以上6.5未満である、1に記載の製造方法。
3.前記A液における前記カチオン反応性を有するゲル化剤の量が、0.05質量%~2.0質量%である、1又は2に記載の製造方法。
4.前記A液が、さらに、カチオン反応性を有しないゲル化剤を含む、1~3のいずれかに記載の製造方法。
5.前記A液が、さらに、ジェランガムを含む、1~4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記B液が、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む、1~5のいずれかに記載の製造方法。
7.前記容器に前記A液を充填した後で、前記B液を充填する、1~6のいずれかに記載の製造方法。
8.前記容器に前記B液を充填した後で、前記A液を充填する、1~6のいずれかに記載の製造方法。
9.前記B液が炭酸ガスを含む、1~8のいずれかに記載の製造方法。
10.前記B液が2.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下の炭酸ガスを含む、9に記載の製造方法。
11.前記ゼリー入り炭酸飲料全体に対する前記ゼリー部の質量割合が、10質量%以上70質量%以下である、1~10のいずれかに記載の製造方法。
12.前記A液の色と、前記B液の色とが異なる、1~11のいずれかに記載の製造方法。
13.前記ゼリー部の色と、前記液体部の色とが異なる、1~12のいずれかに記載の製造方法。
14.前記容器に充填する時の前記A液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、1~13のいずれかに記載の製造方法。
15.前記充填後の前記A液と前記B液との混合液の温度が、前記カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である、1~13のいずれかに記載の製造方法。
16.前記充填後の前記A液と前記B液との混合液のガス圧が、1.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下である、1~15のいずれかに記載の製造方法。
17.前記A液及び前記B液の合計に対する前記A液の量が70質量%以下である、1~16のいずれかに記載の製造方法。
18.1~17のいずれかに記載の製造方法で製造される、容器詰めゼリー入り炭酸飲料。
19.容器詰めゼリー入り炭酸飲料であって、
前記炭酸飲料中のゼリー部と、前記炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈し、かつ前記炭酸飲料全体に対する前記ゼリー部の質量割合が、10質量%以上70質量%以下である、前記炭酸飲料。
20.前記ゼリー部が、炭酸ガスを包含する、19に記載の炭酸飲料。
21.前記ゼリー部が、カチオン反応性を有するゲル化剤をゲル化してなる、19又は20に記載の炭酸飲料。
22.ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む、19~21のいずれかに記載の炭酸飲料。
23.さらに、カルシウムイオンを含む、19~22のいずれかに記載の炭酸飲料。
24.前記液体部からなる層と、前記ゼリー部からなる層とを含み、
前記液体部からなる前記層の上に、前記ゼリー部からなる前記層を有する外観を呈する、19~23のいずれかに記載の炭酸飲料。
25.ガス圧が1.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下である、19~24のいずれかに記載の炭酸飲料。
26.前記容器がPET製である、19~25のいずれかに記載の炭酸飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸性であり、複数の色を有する新規なゼリー入り炭酸飲料、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で製造した、A液及びB液を充填した直後の容器詰めゼリー入り炭酸飲料を示す写真である。
図2】実施例1で製造した、充填後12時間経過後の容器詰めゼリー入り炭酸飲料を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のゼリー入り炭酸飲料の製造方法等の実施形態について説明する。
【0011】
[ゼリー入り炭酸飲料の製造方法]
本発明の一態様に係るゼリー入り炭酸飲料の製造方法は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、同一の容器に充填し、容器内でA液とB液とを混合することを含む。
A液とB液の少なくとも一方は、炭酸ガスを含む。
殺菌処理したA液とB液の少なくとも一方には、容器への充填前に炭酸ガスを添加する。炭酸ガスは、カーボネーター等の炭酸ガス溶解装置により添加できる。
【0012】
これにより、容器内でA液とB液とを混合した際に、ゲル化剤とカチオンとが反応して初めてゲル化反応が起こり、容器内にゼリーを生成することができる。
【0013】
充填後に容器内でA液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが接触して、炭酸ガスを抱き込みながらゲル化することで、硬化したゼリーは、炭酸飲料を構成する液体中で浮き上がる。
充填直後の時点では、A液とB液との混合液は、ほぼ全体が単色である図1のような外観を呈する。その後、静置すると、ゼリー部が硬化しながら包含した炭酸ガスにより浮き上がる。こうして、A液とB液との混合液は、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する図2のような外観を呈するようになる。図2においては、白い部分が液体部であり、黒~灰色部分がゼリー部である。
【0014】
ゼリー入り炭酸飲料は、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層以外の層を含んでもよい。液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有するのであれば、例えばゼリー部からなる層とは別に、硬化したゼリーの一部が容器の底部に沈殿していてもよいし、ゼリー部からなる層より上に液体が存在していてもよい。
【0015】
一実施形態において、ゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合は、10質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上であり得、また、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下であり得る。
例えば、ゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合は、10質量%以上70質量%以下、12質量%以上60質量%以下、又は15質量%以上50質量%以下が挙げられる。
【0016】
ゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合は、ゼリー入り炭酸飲料全体の質量を測定した後、当該ゼリー入り炭酸飲料をメッシュに通して、液体部とゼリー部とに分離し、ゼリー部の質量を測定することで、算出できる。分離に使用するメッシュは、80メッシュ以上であることが好ましい。
【0017】
一実施形態において、殺菌処理は、加熱殺菌、薬剤殺菌、電子線殺菌等で行うことができる。
【0018】
従来の容器詰め飲料の製造方法においては、飲料を構成する成分のすべてを容器内に充填した後、多くの場合、加熱殺菌処理を行っていたため、容器としては殺菌温度に耐えられるもの(例えば、缶や瓶)を選択する必要があった。一方、本発明の一態様に係る容器詰めゼリー入り炭酸飲料の製造方法においては、容器内への充填前に、それぞれの成分に殺菌処理を施すことができるため、容器に耐熱性が要求されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン等のプラスチック容器(プラスチックボトル)を使用することができる。
【0019】
従来選択されていた缶等の容器では、ゼリー入り炭酸飲料のガスボリュームが高くなると加熱殺菌時に容器が耐えられず破裂する恐れがあり、炭酸飲料のガスボリュームが制限されていた。本発明の一態様に係る容器詰めゼリー入り炭酸飲料の製造方法においては、缶よりも高いガスボリュームに耐えうるプラスチック容器を使用することができるため、従来の炭酸飲料と比較して、より高いガスボリュームを実現することができる。
ここで、ガスボリューム(GV)とは、炭酸飲食品中の炭酸ガス量を表す単位であり、標準状態(1気圧、20℃)における、炭酸飲食品の体積に対する炭酸飲食品中に溶解した炭酸ガスの体積の比をいう。
【0020】
一実施形態において、容器にA液を充填した後で、B液を充填する。
一実施形態において、容器にB液を充填した後で、A液を充填する。
容器内においてA液とB液とが好適に混合される充填順を選択することができる。
【0021】
一実施形態において、A液の色と、B液の色とは異なる。
一実施形態において、ゼリー部の色と、液体部の色とは異なる。
これにより、ゼリー部と液体部それぞれの視認性がよくなり、美観にすぐれるゼリー飲料を製造できる。
【0022】
本明細書における「A液の色と、B液の色とは異なる」について説明する。A液及びB液の色は、例えば色度計により測定することができる。一実施形態において、「A液の色と、B液の色とは異なる」場合、A液及びB液の色度を反射測定したときの色差は、ΔEが1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
【0023】
本明細書における「ゼリー部の色と、液体部の色とは、異なる」について説明する。ゼリー部及び液体部の色は、例えば色度計により測定することができる。一実施形態において、「ゼリー部の色と、液体部の色とが、異なる」場合、液体部及びゼリー部の色度を反射測定したときの色差は、ΔEが1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
ゼリー入り炭酸飲料を80メッシュに通し1時間静置することで液体部とゼリー部とに分離し、メッシュを通過したものを液体部として扱い、メッシュを通過しなかったものをゼリー部として扱う。
【0024】
一実施形態において、容器に充填した後のA液とB液との混合液の温度は、カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが容器内の任意のランダムな場所で接触することを契機としてゲル化が起こり、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
【0025】
一実施形態において、容器に充填した後のA液とB液との混合液のガス圧は、1.0ガスボリューム以上、1.5ガスボリューム以上、又は2.0ガスボリューム以上であり得、また、4.0ガスボリューム以下、3.8ガスボリューム以下、又は3.6ガスボリューム以下であり得る。
例えば、容器に充填した後のA液とB液との混合液のガス圧は、1.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下、2.0ガスボリューム以上3.8ガスボリューム以下、又は2.0ガスボリューム以上3.6ガスボリューム以下が挙げられる。
容器に充填した後のA液とB液との混合液のガス圧は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0026】
以下、各液の詳細について説明する。
【0027】
[A液]
A液は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有する。
これにより、カチオンを含有するB液と混合することでゲル化反応が起こり、ゼリーを生成することができる。
【0028】
カチオン反応性を有するゲル化剤は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む。
【0029】
A液の殺菌処理後のpHは、2.0以上6.5未満であり、好ましくは2.5以上6.0以下であり、より好ましくは3.0以上5.5以下である。
これにより、ゲル化反応により得られるゼリーの強度を向上させながら、ゼリー飲料の酸味を飲料に適した範囲に抑えることができる。また、果汁等の酸性の材料を使用してゼリー飲料を製造することが可能となる。
【0030】
A液の殺菌処理後の粘度は、5.0mPa・s以上150mPa・s以下であり、好ましくは8.0mPa・s以上120mPa・s以下であり、より好ましくは12mPa・s以上100mPa・s以下である。
A液の粘度を上記範囲とし、後述の粘度を有するB液と組み合わせることで、A液とB液との混合を制御し、炭酸ガスを抱き込んで硬化したゼリーを形成しやすくなる。これにより、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
ゼリー部と液体部を別の味に分けることもでき、これにより複雑な味や質感を作り出すことができる。
【0031】
本発明において、「粘度」とは、単一円筒型回転粘度計を使用して、測定温度25℃で、測定した粘度を示す。
【0032】
殺菌処理後の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0033】
A液は、難溶性カルシウム塩を実質的に含まない。
これにより、A液の殺菌処理前のpHを6.5以下とした場合であっても、A液の粘度を所望の範囲に調整することができる。また、A液の殺菌処理後のpHを6.5以下とした場合であっても、A液の粘度を所望の範囲に調整することができる。
「実質的に含まない」とは、A液が、難溶性カルシウムを全く含まないか、又は、難溶性カルシウムの量が、A液全体に対して、好ましくは0.0003質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満であることを意味するものとする。例えば、飲料を構成する果汁等の材料に不可避不純物として含まれる難溶性カルシウムがA液に含まれてもよい。
【0034】
A液の殺菌処理前のpHは、2.0以上6.5未満であり、好ましくは2.5以上6.0以下であり、より好ましくは3.0以上5.5以下である。
【0035】
一実施形態において、A液中に含まれるカチオン反応性を有するゲル化剤の量は、適度な硬度を持つゲルを得る観点から、A液全体に対して、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であり得、また、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.6質量%以下であり得る。
例えば、A液中に含まれるカチオン反応性を有するゲル化剤の量の範囲として、A液全体に対して、0.05質量%~2.0質量%、又は0.1質量%~1.0質量%が挙げられる。
【0036】
一実施形態において、A液は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸以外のカチオン反応性を有するゲル化剤を含む。ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸以外のカチオン反応性を有するゲル化剤としては、例えば、ジェランガムが挙げられるが、カチオンと反応してゲル化する性質を有するゲル化剤であれば特に限定されない。ジェランガムとしては、脱アシル型ジェランガム及びネイティブ型ジェランガムが挙げられる。
【0037】
一実施形態において、A液は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸以外のカチオン反応性を有するゲル化剤を含まない。
一実施形態において、A液は、ジェランガムを含まない。
【0038】
カチオン反応性を有するゲル化剤は単独で使用してもよく、カチオン反応性を有しない他のゲル化剤を併用してもよい。カチオン反応性を有しない他のゲル化剤としては、これに限定されないが、増粘多糖類が挙げられる。増粘多糖類としては、寒天、グアーガム、カードラン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、ガラクトマンナン、アラビアガム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ゲル化剤は、水を加えて加熱し、溶解させてから使用してもよい。
【0040】
一実施形態において、カチオン反応性を有するゲル化剤は、1価のカチオンと反応性を有さず、2価以上のカチオンと反応性を有することが好ましい。
カチオン反応性を有するゲル化剤は、酸性条件において安定であること、及びゲル化反応の時間が比較的短いことから、LMペクチンであることがより好ましい。
LMペクチンは、ペクチンのうち、ペクチン分子を構成するガラクツロン酸メチルエステル及びガラクツロン酸の合計に対するガラクツロン酸メチルエステルの割合(エステル化度)が50%未満のものをいう。
【0041】
一実施形態において、A液に、炭酸ガスを添加する。A液を殺菌処理し、粘度を測定した後に、炭酸ガスを添加できる。
一実施形態において、A液の炭酸ガス量は、2.0ガスボリューム以上、2.2ガスボリューム以上、又は2.4ガスボリューム以上であり得、また、4.0ガスボリューム以下、3.8ガスボリューム以下、又は3.6ガスボリューム以下であり得る。
例えば、A液の炭酸ガス量は、2.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下、2.2ガスボリューム以上3.8ガスボリューム以下、又は2.4ガスボリューム以上3.6ガスボリューム以下が挙げられる。
【0042】
一実施形態において、容器に充填する時のA液の温度が、カチオン反応性を有するゲル化剤のゲル化温度以下である。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが容器内の任意のランダムな場所で接触することを契機としてゲル化が起こり、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
【0043】
一実施形態において、A液及びB液の合計に対するA液の含有量が70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
【0044】
A液は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、増粘剤、シリコーン、消泡剤等を含んでもよい。
【0045】
A液の調製方法に限定はなく、水や液糖等のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにゲル化剤及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0046】
[B液]
B液は、カチオンを含有する。
これにより、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と混合することでゲル化反応が起こり、ゼリーを生成することができる。
【0047】
B液の殺菌処理後の粘度は5.0mPa・s以上50mPa・s未満であり、好ましくは5.1mPa・s以上40mPa・s未満であり、より好ましくは5.2mPa・s以上30mPa・s未満である。
B液の粘度を上記範囲とし、前述の粘度を有するA液と組み合わせることで、A液とB液との混合を制御し、炭酸ガスを抱き込んで硬化したゼリーを形成しやすくなる。これにより、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
また、甘味料や果汁等の材料を使用する場合に、材料の風味を大きく損なうことなくゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
【0048】
殺菌処理後の粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0049】
B液の殺菌処理後のpHは、好ましくは2.0以上6.5未満であり、より好ましくは2.5以上6.0以下であり、さらにより好ましくは3.0以上5.5以下である。
これにより、ゲル化反応により得られるゼリーの強度を向上させながら、ゼリー飲料の酸味を飲料に適した範囲に抑えることができる。また、果汁等の酸性の材料を使用してゼリー飲料を製造することが可能となる。
【0050】
B液が含有するカチオンは、A液が含有するゲル化剤に応じて適切なカチオンを選択することができる。
例えば、A液が含有するゲル化剤がLMペクチンである場合、B液が含有するカチオンとしては、カルシウムイオンを選択できる。カルシウムイオンは、乳等の天然物に由来するものでもよく、乳酸カルシウムや塩化カルシウム等の形で添加してもよい。
【0051】
一実施形態において、B液は、4.5mmol/L以上のカルシウムイオンを含む。
【0052】
一実施形態において、B液に、炭酸ガスを添加する。B液を殺菌処理し、粘度を測定した後に、炭酸ガスを添加できる。
一実施形態において、B液の炭酸ガス量は、2.0ガスボリューム以上、2.2ガスボリューム以上、又は2.4ガスボリューム以上であり得、また、4.0ガスボリューム以下、3.8ガスボリューム以下、又は3.6ガスボリューム以下であり得る。
例えば、B液の炭酸ガス量は、2.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下、2.2ガスボリューム以上3.8ガスボリューム以下、又は2.4ガスボリューム以上3.6ガスボリューム以下が挙げられる。
【0053】
B液は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、油脂、脱脂粉乳、バター、脱脂濃縮乳加工品、増粘剤、シリコーン、消泡剤等を含んでもよい。
【0054】
B液の調製方法に限定はなく、水や液糖等のベースとなる材料を溶媒又は分散媒として、これにカチオン及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合し、溶解又は分散させればよい。
【0055】
[ゼリー入り炭酸飲料]
本発明の一態様に係るゼリー入り炭酸飲料は、カチオン反応性を有するゲル化剤を含有するA液と、カチオンを含有するB液とを個別に殺菌処理した後、A液とB液の少なくとも一方に炭酸ガスを添加し、容器に充填し、容器内でA液とB液とを混合することで製造できる。
これにより、A液とB液とが好適に混合され、A液中のゲル化剤とB液中のカチオンとが接触して、炭酸ガスを抱き込みながらゲル化し、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を有するゼリー入り炭酸飲料を製造できる。
【0056】
本発明の別の態様に係るゼリー入り炭酸飲料は、炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈し、かつ炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合が、10質量%以上70質量%以下である。
炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈することで、ゼリー部と液体部それぞれの視認性がよくなり、美観にすぐれたゼリー入り炭酸飲料となる。
【0057】
本明細書における「炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈する」について説明する。ゼリー部及び液体部の色は、例えば色度計により測定することができる。一実施形態において、「炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈する」場合、液体部及びゼリー部の色度を反射測定したときの色差は、ΔEが1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
80メッシュに通し1時間静置することで液体部とゼリー部とに分離し、メッシュを通過したものを液体部として扱い、メッシュを通過しなかったものをゼリー部として扱う。
【0058】
また、ゼリー部と液体部を別の味に分けることもでき、これにより複雑な味や質感を作り出すことができる。
【0059】
ゼリー入り炭酸飲料が「酸性である」とは、飲料を構成する液体が酸性であることを意味する。
【0060】
一実施形態において、飲料中のゼリー部は、炭酸ガスを包含する。
【0061】
一実施形態において、飲料中のゼリー部は、カチオン反応性を有するゲル化剤をゲル化してなるゼリーである。
カチオン反応性を有するゲル化剤としては、例えば、ペクチン、カラギーナン及びアルギン酸からなる群から選ばれる一種以上が挙げられるが、カチオンと反応してゲル化する性質を有するゲル化剤であれば特に限定されない。
【0062】
一実施形態において、ゼリー入り炭酸飲料は、ペクチン、カラギーナン、及びアルギン酸からなる群から選択される1以上を含む。
【0063】
一実施形態において、ゼリー入り炭酸飲料は、さらに、カルシウムイオンを含む。
【0064】
一実施形態において、ゼリー入り炭酸飲料は、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を呈する。
【0065】
一実施形態において、ゼリー入り炭酸飲料のガス圧は、1.0ガスボリューム以上、1.2ガスボリューム以上、又は1.4ガスボリューム以上であり得、また、4.0ガスボリューム以下、3.5ガスボリューム以下、又は3.0ガスボリューム以下であり得る。
例えば、ゼリー入り炭酸飲料のガス圧は、1.0ガスボリューム以上4.0ガスボリューム以下、1.2ガスボリューム以上3.5ガスボリューム以下、又は1.4ガスボリューム以上3.0ガスボリューム以下が挙げられる。
ゼリー入り炭酸飲料のガス圧は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0066】
ゼリー入り炭酸飲料は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、ゼリー飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、甘味料、酸味料、果汁、香料、着色料、保存料、pH調整剤、乳化剤、各種安定剤、固形物(例えば、果物、食物繊維、ナタデココ等)、酸化防止剤、栄養強化剤(ビタミン等)、乳酸菌、油脂、脱脂粉乳、バター、脱脂濃縮乳加工品、増粘剤、シリコーン、消泡剤等を含んでもよい。
【実施例
【0067】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各原料は、商業的に入手可能な一般的なものを使用した。
【0068】
実施例1として、後述する組成でA液及びB液を調製し、評価した。
【0069】
A液及びB液の各物性は以下の方法に従って測定した。
[Brix]
Brixの測定は、殺菌後の試料の液温を20℃に調整し、Density Brix計(京都電子工業株式会社製、DA-510C)を使用して行った。
[pH]
pHの測定は、殺菌後の試料の液温を20℃にした後、pHメーター(東亜ティーケーケー株式会社製、MH-25R)を使用して行った。
[粘度]
粘度の測定は、殺菌後の試料の液温を25℃に調整し、単一円筒型回転粘度計(東機産業社製、VISCOMETER TVB-15)を使用して、M1ローターを使用して、100rpmの条件で測定した。
【0070】
B液のガス圧は、以下のようにして測定した。
[GV(ガスボリューム)]
炭酸ガスボリュームの測定は、ガスボリューム測定装置GVA-500C(京都電子工業株式会社製)を用いて行った。具体的には、試料の液温を20℃に調整した炭酸飲料をガス内圧計に固定し、一度ガス内圧計活栓を開いてガスを抜き、再度活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達した時の値を読み取った。
【0071】
実施例1
[A液の調製]
水に液糖を溶解させた後、LMペクチン、グアーガムを順に添加し、完全に溶解させた後、クエン酸の溶解水を添加した。その後、リンゴ果汁、カロテン色素、酸化防止剤、シリコーン製剤、香料を順に添加し、表1の組成になるように水を加えた。表中、「残部」とは、水に溶解させた液糖に、水以外の原料をすべて添加した後、合計100質量%になるように水を加えることを意味する。A液の殺菌は、110℃で30秒間行った。殺菌後のA液について、各物性の評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
[B液の調製]
水に液糖を溶解した後、大豆多糖類とHMペクチンを添加し、溶解させた。別途、脱脂粉乳と乳調整原料を水に溶解させ、大豆多糖類とHMペクチンの溶解液に投入し、10分間撹拌した。その後、クエン酸溶解水を添加し、さらに10分間撹拌した。その後クエン酸ナトリウム及び乳酸カルシウムの溶解水を投入し、発酵乳、酸化防止剤、甘味料、シリコーン製剤、乳化剤、香料を順次添加し、表2の組成になるように水を加えた。B液中のカルシウムイオン濃度は4.7mmol/Lであった。カルシウムイオン濃度は、ICP発光分析法により分析した。この液は70℃に昇温した後、高圧ホモジナイザーにて15MPa以上の圧力で均質化後、殺菌した。B液の殺菌は、110℃で30秒間行った。また、殺菌後、冷却したB液に、カーボネーターにより3.5ガスボリュームになるように炭酸ガスを溶解させた。殺菌後のB液について、各物性の評価結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
[ゼリー入り炭酸飲料の製造]
予め殺菌しておいた380mLのPET製の容器に、15℃以下、無菌下で、180mLのA液を充填した。次に、15℃以下、無菌下で、180mLのB液を充填した。B液を充填することにより、容器中でB液とA液とが混合しながら接触して部分的にゲル化が起こり、ゼリー入り炭酸飲料が製造された。A液とB液との混合液のガス圧は、1.77ガスボリュームであった。
【0076】
[ゼリー入り炭酸飲料の評価]
A液及びB液を充填した直後と、充填後12時間経過後に外観を観察した。結果をそれぞれ図1及び図2に示す。
実施例1のゼリー入り炭酸飲料は、充填直後の時点では、ほぼ全体が単色の外観を呈していたが(図1)、充填後12時間経過後の時点では、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を呈していた(図2)。理論で括ることを意図するものではないが、脱脂粉乳のカルシウムイオンによって、LMペクチンの分子鎖中のガラクツロン酸部分と、LMペクチンの別の分子鎖中のガラクツロン酸部分とがカルシウムを介して結合してゲル化が起こったものと考えられる。このゲル化が、二液の充填に伴う液混合とともに起こり、炭酸ガスを抱き込むようにゼリー部が形成され、液体部にゼリー部が浮いている外観、即ち、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を得ることができた。
実施例1のゼリー入り炭酸飲料のガス圧は、1.77ガスボリュームであった。ガス圧は、充填後24時間経過後、容器を振ってゼリーを細かく破砕した後で測定した。ガス圧の測定は、B液のガス圧と同様の手法で測定した。
実施例1のゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合は31.9質量%であった。ゼリー部の質量割合は、実施例1のゼリー入り炭酸飲料の質量を測定した後、80メッシュに通し1時間静置することで液体部とゼリー部とに分離し、ゼリー部の質量を測定することで算出した。このとき、メッシュを通過しなかったものをゼリー部として扱った。
【0077】
実施例2
[A液の調製]
水に液糖を溶解させた後、LMペクチン、脱アシル型ジェランガム、グアーガムを順に添加し、完全に溶解させた後、クエン酸の溶解水を添加した。その後、カロテン色素、酸化防止剤、香料、乳化剤を順に添加し、表3の組成になるように水を加えた。表中、「残部」とは、水に溶解させた液糖に、水以外の原料をすべて添加した後、合計100質量%になるように水を加えることを意味する。A液の殺菌は、110℃で30秒間行った。殺菌後のA液について、各物性の評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
[B液の調製]
水に液糖を溶解した後、大豆多糖類、HMペクチンを添加し、溶解させた。別途、脱脂粉乳と乳調整原料を水に溶解させ、大豆多糖類とHMペクチンの溶解液に投入し、10分間撹拌した。その後、クエン酸溶解水を添加し、さらに10分間撹拌した。その後クエン酸ナトリウム及び乳酸カルシウムの溶解水を投入し、発酵乳、酸化防止剤、甘味料、シリコーン製剤、乳化剤、香料を順次添加し、表4の組成になるように水を加えた。B液中のカルシウムイオン濃度は4.7mmol/Lであった。カルシウムイオン濃度は、ICP発光分析法により分析した。この液は70℃に昇温した後、高圧ホモジナイザーにて15MPa以上の圧力で均質化後、殺菌した。B液の殺菌は、110℃で30秒間行った。また、殺菌後、冷却したB液に、カーボネーターにより3.2ガスボリュームになるように炭酸ガスを溶解させた。殺菌後のB液について、各物性の評価結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
[ゼリー入り炭酸飲料の製造]
予め殺菌しておいた380mLのPET製の容器に、15℃以下、無菌下で、90mlのA液を充填した。次に、15℃以下、無菌下で、270mlのB液を充填した。B液を充填することにより、容器中でB液とA液とが混合しながら接触して部分的にゲル化が起こり、ゼリー入り炭酸飲料が製造された。A液とB液との混合液のガス圧は、2.37ガスボリュームであった。
【0082】
[ゼリー入り炭酸飲料の評価]
実施例1と同様に、得られたゼリー入り炭酸飲料の外観を観察し、ガス圧及びゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合を測定した。
実施例2のゼリー入り炭酸飲料は、充填直後の時点では、ほぼ全体が単色の外観を呈していたが、充填後12時間経過後の時点では、液体部からなる層と、ゼリー部からなる層とを含み、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を呈していた。
実施例2のゼリー入り炭酸飲料のガス圧は、2.37ガスボリュームであった。
実施例2のゼリー入り炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合は31.9質量%であった。
【0083】
[色差の測定]
実施例2のゼリー入り炭酸飲料を、80メッシュに通し1時間静置することで液体部とゼリー部とに分離した。このとき、メッシュを通過したものを液体部として扱い、メッシュを通過しなかったものをゼリー部として扱った。
ゼリー部と液体部について、それぞれ色度計(分光色差計SE6000、日本電色工業社製)を用いて、反射測定で色度を測定した。ゼリー部と液体部のそれぞれの色度から、色差ΔLを算出した。得られたΔLは26.09であり、炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈していた。
【0084】
比較例1
[A液の調製]
水に液糖を溶解させた後、脱アシル型ジェランガム、グアーガムを順に添加し、完全に溶解させた後、クエン酸の溶解水を添加した。その後、リコピン色素、酸化防止剤、香料、乳化剤を順に添加し、表5の組成になるように水を加えた。表中、「残部」とは、水に溶解させた液糖に、水以外の原料をすべて添加した後、合計100質量%になるように水を加えることを意味する。A液の殺菌は、110℃で30秒間行った。殺菌後のA液について、各物性の評価結果を表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
[B液の調製]
水に液糖を溶解した後、大豆多糖類、HMペクチンを添加し、溶解させた。別途、脱脂粉乳と乳調整原料を水に溶解させ、大豆多糖類とHMペクチンの溶解液に投入し、10分間撹拌した。その後、クエン酸溶解水を添加し、さらに10分間撹拌した。その後クエン酸ナトリウム及び乳酸カルシウムの溶解水を投入し、発酵乳、酸化防止剤、甘味料、シリコーン製剤、乳化剤、香料を順次添加し、表6の組成になるように水を加えた。B液中のカルシウムイオン濃度は4.7mmol/Lであった。カルシウムイオン濃度は、ICP発光分析法により分析した。この液は70℃に昇温した後、高圧ホモジナイザーにて15MPa以上の圧力で均質化後、殺菌した。B液の殺菌は、110℃で30秒間行った。また、殺菌後、冷却したB液に、カーボネーターにより2.5ガスボリュームになるように炭酸ガスを溶解させた。殺菌後のB液について、各物性の評価結果を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
[ゼリー入り炭酸飲料の製造]
予め殺菌しておいた380mLのPET製の容器に、15℃以下、無菌下で、90mLのA液を充填した。次に、15℃以下、無菌下で、270mLのB液を充填した。B液を充填することにより、容器中でB液とA液とが混合しながら接触して部分的にゲル化が起こり、ゼリー入り炭酸飲料が製造された。
【0089】
[ゼリー入り炭酸飲料の評価]
得られたゼリー入り炭酸飲料の外観を観察したところ、全体がゲル化し、ほぼ全体が単色の外観を呈し、その後変化しなかった。
これは、脱アシル化ジェランガムは、実施例1及び2で使用したLMペクチンと比較して、ゲル化の開始までに時間がかかる特性を有するため、ゲル化の開始前にA液とB液とが十分に混合されてしまったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、酸性の溶液を使用して、複数の色を有するゼリー入り炭酸飲料を製造する方法を提供できる。本発明のゼリー入り炭酸飲料を製造する方法は、液体部からなる層の上に、ゼリー部からなる層を有する外観を呈するゼリー入り炭酸飲料を製造でき、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明のゼリー入り炭酸飲料は、炭酸飲料中のゼリー部と、炭酸飲料を構成する液体部とが、互いに異なる色を呈し、かつ炭酸飲料全体に対するゼリー部の質量割合が、10質量%以上70質量%以下であるゼリー入り炭酸飲料であり、従来のゼリー入り炭酸飲料とは異なる外観を呈するため、産業上の利用可能性が高い。
図1
図2