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特許7577110インクが適用された中間層膜を含む合わせガラス
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  • 特許-インクが適用された中間層膜を含む合わせガラス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インクが適用された中間層膜を含む合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241025BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20241025BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C03C27/12 N
C03C27/12 D
B32B17/10
B32B27/30 102
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022502943
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2020069389
(87)【国際公開番号】W WO2021008999
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】19187109.4
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】マミー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン エベリン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/038043(WO,A1)
【文献】特表2017-500271(JP,A)
【文献】特開2016-69629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/06-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAを積層することにより得られる合わせガラスであって、
フィルムAは、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域を含み、その適用前に、前記インクのpH値は7以上であり、
ィルムAは、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域を含み、その適用前に、前記インク中のカリウムイオンの濃度は20mg/l以下であり前記インク中のマグネシウムイオンの濃度は50mg/l以下であり、前記インク中のカルシウムイオンの濃度は50mg/l以下であることを特徴とする、合わせガラス。
【請求項2】
2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAと、ポリビニルアセタールPB及び少なくとも1つの可塑剤WBを含む少なくとも1つのフィルムBとを積層することにより得られ、前記インクが適用されたフィルムAの少なくとも一方の表面はフィルムBに面している、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
積層前の、
フィルムA中の可塑剤WAの量は22重量%未満であり、
フィルムB中の可塑剤WBの量は少なくとも22重量%である、
請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
積層前のフィルムA中の可塑剤WAの量は5重量%未満である、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
適用前の前記インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの合計の濃度は、50mg/l以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
適用前の前記インクのpHは、適用前に7.5超である、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
ポリビニルアセタールPA及びポリビニルアセタールPBはポリビニルブチラールである、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記インクがフィルムAの表面に適用された領域において、前記合わせガラスは不透明である、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記インクがフィルムAの表面に適用された領域において、前記合わせガラスは着色されている、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記インクは水性インクである、請求項1~のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項11】
ポリビニルアセタールPAと、任意に少なくとも1つの可塑剤WAと、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域とを含むフィルムであって、その適用前に前記インクのpH値は7以上であり、その適用前に、前記インク中のカリウムイオンの濃度は20mg/l以下であり前記インク中のマグネシウムイオンの濃度は50mg/l以下であり、前記インク中のカルシウムイオンの濃度は50mg/l以下である、フィルム。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の合わせガラスの製造方法であって、フィルムAの少なくとも一方の表面の領域にインクで印刷又はコーティングした後、第1のガラス板上に配置し、少なくとも1つのフィルムBで被覆し、第2のガラス板で被覆した後、100℃以上の温度で積層することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間層の少なくとも片面に特定のインクが適用された接着性中間層膜により結合された2つのガラス板を含む合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、耐貫通性及び破損後の破片の保持等の有利な特徴を有し、自動車産業及び建築産業における多くの用途に使用されている。ポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール(PVB)は、積層体の層間に頻繁に使用される材料である。
【0003】
建築産業では、特に装飾目的及び過剰な日光に対する遮光のために、様々な色のグレージング(glazing)がますます要求されている。現在、顔料をPVBにブレンドし、次いで共押出して着色PVBフィルムを得る。この技術にはいくつかの欠点がある。例えば、PVBフィルム製造業者は、PVB樹脂を各個々の色と別々にブレンドし、次いで個々の着色フィルムを押し出し、その後、透明フィルム又は他の色のフィルムに使用する前に、全製造ラインを洗浄して微量の顔料を除去する必要がある。多数の異なる色が可能であり、特定の色、例えば特定の企業デザインの色に対する要求が高まっているため、フィルム製造業者は、多数の異なる色を製造し、それらを販売まで(それらのほとんどを冷蔵条件で)保管しなければならない。この課題に対する解決策として、異なる基本色で押し出されたPVBフィルムのいくつかのシートを積み重ねて、特定の色の積層体を作製することが知られている。しかしながら、基本色のいくつかの層を適用すると、ガラス積層体が許容できない厚さになる可能性がある。さらに、異なる着色PVB層を積み重ねることは、望ましくない光学的歪み効果及び積層工程前の脱気プロセスにおける問題をもたらす可能性がある。
【0004】
自動車産業では、フロントガラス内の2つのガラス板のうちの少なくとも1つには、通常、フロントガラスをシャーシに機械的に接続するシーラント又は接着剤をUV放射から保護するための不透明フレームが設けられている。場合によっては、電気接続部を視界から隠すために、他のガラス板にそのような不透明フレームが設けられる。
【0005】
業界の現在の標準プロセスは、ガラス表面の1つに焼結エナメルを使用することであり、これは高い処理温度に起因するいくつかの欠点を伴う。国際公開第2019/038043号A1は、インクを使用してPVB中間層膜上にコーティング又は印刷される非透明領域を有する合わせガラスを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019/038043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、驚くべきことに、多くの市販のインクは、中間層膜への適用がガラス板と中間層との間の接着性の問題及び/又はポリビニルアセタール中間層材料との不適合性をもたらす可能性があるため、積層プロセスにおいて所定の欠点を有することが見出された。
【0008】
したがって、本発明の目的は、例えば時間及び/又はコストに関してより経済的なプロセス、より柔軟なプロセス、及び/又は改善された特性、特に改善された接着性を有する合わせガラスを使用する改善された合わせガラスであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら及び他の課題は、本発明によって解決されている。
【0010】
本発明は、2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAを積層することによって得られる合わせガラスであって、フィルムAが、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用(又は塗布)された領域を含み、その適用前に、インクのpH値が7以上である、合わせガラスに関する。好ましくは、インクのpHは7.5超、より好ましくは8.0超、更により好ましくは8.5超である。また、インクのpHは、好ましくは7~12であり、より好ましくは7.5~10であり、最も好ましくは8~9以下である。
【0011】
pH値は、標準法DIN 19268:2007-05によって決定されるものとする。
【0012】
本発明はまた、2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAを積層することによって得られる合わせガラスであって、フィルムAが、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域を含み、その適用前に、インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンが200mg/l以下である、合わせガラスを提供する。
【0013】
イオンの濃度は、EPA法3052によるマイクロ波消化による試料調製後の誘導結合プラズマ発光分光分析によって決定するものとする。
【0014】
本発明の関連では、インク中の成分の濃度は、フィルムAの表面へのインクの適用(application)前の濃度として与えられる。したがって、「適用前」という用語は、フィルムAの少なくとも1つの表面に適用される前のインクの状態を指す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、a及びbが2つのガラス板を指し、cがフィルムAを指し、dがインクが適用されたフィルムAの表面領域を指し、eが任意のフィルムBを指す、本発明の合わせガラス構造物の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましくは、合わせガラスは、2つのガラス板の間にポリビニルアセタールPB及び少なくとも1つの可塑剤WBを含む少なくとも1つのフィルムBを更に含み、インクが適用されたフィルムAの少なくとも1つの表面は、フィルムBに面している。したがって、インクとガラス表面との間の接着の問題の可能性を低減するために、インクはガラス板に直接接触しない。
【0017】
驚くべきことに、市販のインクの特定の成分が、インクが適用された表面がガラス表面と直接接触しない場合、例えば、インクが別のポリビニルアセタール表面と接触する表面に適用された場合であっても、特にインクがフィルムAとフィルムBとの間に挟まれる場合に、ポリビニルアセタール中間層とガラス表面との間の接着を妨げることが本発明者らによって見出された。理論に拘束されることを望むものではないが、接着を妨げるインクからのそれらの成分は、ポリビニルアセタールを通ってガラス表面に移動すると考えられる。そのような拡散プロセスは、可塑剤分子の加水分解によって少量で生成される特定の有機酸等の少量の分子によって促進されると考えられる。例えば、フィルムA及びフィルムBが異なる量の可塑剤を含有する場合、可塑剤の量は積層中及び積層後に平衡化する。可塑剤及びその開裂生成物のこの移動は、接着に影響を及ぼすインク成分の拡散を助けると考えられる。
【0018】
アルカリ及びアルカリ土類元素のイオン、特にカルシウム塩、マグネシウム塩及びカリウム塩は、ガラス表面とポリビニルアセタールフィルムとの接着性に大きな影響を及ぼすことが知られている。一方、多くの市販のインクは、かなり多量のアルカリ元素及び/又はアルカリ土類元素のイオンを含有する。イオンは、意図的に、例えばインクの成分の対イオンとして導入されるか、又は成分の1つの不純物として、例えば水性インクの主溶媒として使用される水のイオン負荷として意図せず導入される。
【0019】
これらのカチオンの濃度が200mg/l以下のインクを用いることで、接着性が向上する。好ましくは、インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度は、200mg/l以下、より好ましくは100mg/l以下、更により好ましくは50mg/l以下、具体的には10mg/l以下である。カリウムの場合、インク中の濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、特に2.5mg/l以下である。マグネシウムの場合、インク中の濃度は、好ましくは50mg/l以下、より好ましくは25mg/l以下、特に10mg/l以下である。カルシウムの場合、インク中の濃度は、好ましくは250mg/l以下、より好ましくは100mg/l以下、最も好ましくは50mg/l以下、特に10mg/l以下である。
【0020】
技術的に達成可能な最低濃度を除いて、インク中のこれらのイオンの濃度の下限はない。
【0021】
本発明によるインクは、液体形態又はペースト形態のいずれかであり、顔料及び/又は染料を含有する。適切な顔料及び染料としては、カーボンブラック、酸化鉄、スピネル顔料、有機着色顔料若しくは染料(ジアゾ染料、フタロシアニン、ペリレン、アントラキノン、アントラピリミジン、キノフタロン、ペリノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、モノアゾ染料、例えばThermoplastrot 454、Macrolexgelb G、Sandoplast Rot G若しくはSolvaperm Rot G等)、及び/又は無機顔料(例えばクロム酸亜鉛、硫化カドミウム、酸化クロム、ウルトラマリン顔料、金属フレーク硫酸バリウム及び酸化チタン)が挙げられる。
【0022】
本発明に係るインクは、水性インクであることが好ましい。水性印刷インクは、有機溶媒に基づく印刷インクがフィルムAを膨潤又は溶解せず、フィルム欠陥をもたらす可能性があることから、有機溶媒に基づく印刷インクよりも好ましい。
【0023】
「水性インク」という用語は、溶媒基剤として水を使用する任意のインクを指す。
【0024】
水性インクの場合、脱イオン水(DI水)、すなわち、そのイオンのほとんど全てが除去された水を用いて製造されたインクを使用することが特に好ましい。
【0025】
しかしながら、脱イオン水を用いて製造されたインクを使用すると、特にインクが高度の光吸収を提供する場合のように、特にインク含有フィルムが長期間にわたって高温にさらされると、ポリビニルアセタールフィルムの劣化をもたらす可能性がある。そのような分解は、アセタール基の加水分解をもたらし得る脱イオン水の残留酸性度によって引き起こされ得ると考えられる。蒸留水は、空気中の二酸化炭素を溶解して炭酸を形成する。例えば、二酸化炭素の吸収は、超純水のpHを4.5に低下させる可能性がある。
【0026】
そのため、インクのpHを制御することが好ましい。pH制御剤の例としては、モノ-、ジ-及びトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムが挙げられる。
【0027】
本発明による水性インクは、任意に、水溶性有機溶媒を含有することができる。水溶性有機溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール及びイソブチルアルコール等の1~4個の炭素を有するアルキルアルコール;アセトン及びジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等のエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセロール;並びに2-メチルピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドンが挙げられる。グリコールが特に好ましい。これらの有機溶媒の量は特に限定されないが、通常、1~50重量%、好ましくは2~10重量%の範囲である。
【0028】
さらに、本発明の水性インクは、任意に、水溶性樹脂(例えば、ビニルピロリドンの低縮合物)、水溶性アクリル樹脂、アルコール可溶性樹脂(例えば、フェノール樹脂等)、アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又はケトン樹脂を含有することができる。ポリビニルアセタール、特にPVB樹脂が好ましい。これらの樹脂の量は特に限定されないが、通常10~50重量%、好ましくは20~30重量%の範囲である。
【0029】
ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度が低く、またpHが7以上のインクを用いることが特に好ましい。
【0030】
特に自動車用途では、本発明によるインクは好ましくは黒色であり、合わせガラスは、インクがフィルムAの表面に適用された領域において不透明である。好ましくは、インクは黒色以外の色を有し、合わせガラスは、インクがフィルムAの表面に適用された領域において不透明である。
【0031】
特に建築用途では、インクは黒色以外の色を有し、合わせガラスは、インクがフィルムAの表面に適用された領域において透明である。或いは、インクは黒色以外の色を有し、合わせガラスは、インクがフィルムAの表面に適用された領域において不透明である。
【0032】
「色」という用語は、表面が黒色及び特定の色を表示する目的で変更されていない標準的な市販グレードのPVBの色以外の色で現れることを示すことを意図している。色は、単色又は異なる色の混合物としての可視光スペクトルの任意の可能な色から選択することができる。さらに、「色」はまた、金属効果、白色領域、又は任意の可能な濃淡の領域を指すものとする。
【0033】
「不透明」という用語は、5%以下の可視スペクトルの光透過率を有するフィルムの任意の領域を指す。「透明」という用語は、5%を超える可視スペクトルの光透過率を有するフィルムの任意の領域を指す。変形例では、「不透明領域」は透明に向かって次第に消えていってもよい。そのような変形例では、フィルムの「不透明領域」の少なくとも一部は、5%未満の可視スペクトルの光透過率を有する。
【0034】
不透明領域は、完全に不透明であり得、及び/又は部分的に中断され得、及び/又は完全に不透明な縁部から透明領域への移行領域を有し得る。中断された印刷は、斑点模様の形態で達成され得る。不透明領域は、透明から不透明な黒色又は灰色に連続的に溶明(fade-in)してもよい。
【0035】
不透明領域の形状は、長方形であってもよく、又は完成した合わせガラスの輪郭に沿っていてもよい。
【0036】
インクは、オフセット印刷、輪転式グラビア印刷、フレキソ印刷、及びスクリーン印刷等の印刷業界で一般的に知られている技術を介して適用することができ、通常は乾燥工程が続く。好ましくは、複数のインク層が互いに重ね合わされる。また、好ましくは、重ね合わせ(superimposition)は、先行するインク層を少なくとも部分的に乾燥させた後に行われる。
【0037】
乾燥工程における過度の加熱によるフィルムAのしわ及び/又は変形を回避するため、フィルムAが、DSC法によるTgとして測定可能なガラス転移温度を超える温度に曝されないことが重要である。したがって、乾燥工程中のフィルムAの温度は、フィルムのTgより少なくとも3℃、又は少なくとも5℃、又は少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は最も好ましくは若しくは少なくとも20℃低く維持されることが好ましい。
【0038】
印刷領域におけるインク層の乾燥膜厚は、印刷技術及び必要な不透明度に応じて0.5~50μmである。通常、乾燥膜厚は1~30μm、好ましくは2~20μmである。複数のインク層が重ね合わされる場合、乾燥膜厚は、重ね合わされた層の合計の厚さを指す。
【0039】
積層前の開始状態のフィルムAの厚さは、10~250μm、好ましくは20~160μm、好ましくは30~120μm、好ましくは40~100μm、最も好ましくは50~80μmである。この厚さの範囲は、フィルム上の追加のコーティング層及びインク層を含まない。上記合わせガラスでは、フィルムBから可塑剤が移行することにより、フィルムの厚みを大きくすることができる。
【0040】
フィルムAは、フィルムBとは別に製造され(例えば、押出成形又は溶媒キャスト)、可塑剤を全く含まないか、又は後続の官能化及び加工に悪影響を及ぼさないように十分に小さい割合の可塑剤を含む。
【0041】
フィルムBは、当該技術分野で既知の任意の可塑化PVBフィルムであってもよい。フィルムA及びBは、積層前の出発状態及び/又はガラス板間の積層のために調製されたスタックにおいて、単一の可塑剤、並びに異なる組成及び同一の組成の両方の可塑剤の混合物を含有し得る。「異なる組成」という用語は、混合物中の可塑剤の種類及びその割合の両方を指す。積層後のフィルムA及びフィルムB、すなわち完成した合わせガラスは、好ましくは同じ可塑剤WA及びWBを有する。しかしながら、好ましい変形例では、フィルムAは、その出発状態でいかなる可塑剤も含有せず、積層後に平衡量で可塑剤WBを含有する。
【0042】
本発明に従って使用される可塑剤含有フィルムBは、積層前の出発状態で、少なくとも22重量%、例えば22.0~45.0重量%、好ましくは25.0~32.0重量%、特に26.0~30.0重量%の可塑剤を含有する。
【0043】
本発明に従って使用されるフィルムAは、積層前の開始状態で、22重量%未満(例えば、21.9重量%)、18重量%未満、16重量%未満、12重量%未満、8重量%未満、4重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は可塑剤を含まなくてもよい(0重量%)。本発明の好ましい実施形態では、低い可塑剤含有量を有するフィルムAは、好ましくは0~8重量%、最も好ましくは0~4重量%の可塑剤を含有する。
【0044】
また好ましくは、本発明による合わせガラスは、積層の前に、フィルムA中の可塑剤WAの量が22重量%未満であり、フィルムB中の可塑剤WBの量が少なくとも22重量%である。より好ましくは、積層前に、フィルムA中の可塑剤WAの量は、5重量%未満であり、具体的には、フィルムAは、意図的に添加された可塑剤を含有しない。
【0045】
「積層前」という用語は、互いに接触する前のフィルムA及びBの状態を指す。例えば、この用語は、別々に形成され、個々のロールに別々に巻かれた各フィルムの組成物を指す。
【0046】
フィルムA又はBは、ポリ酢酸ビニル基の割合が同一又は異なって、0.1~20モル%、好ましくは0.5~3モル%又は5~8モル%であるポリビニルアセタールを含有することが好ましい。
【0047】
開始状態のフィルムBの厚さは、450~2500μm、好ましくは600~1000μm、好ましくは700~900μmである。本発明では、複数のフィルムBが互いに積み重ねられてもよく、又はフィルムAによって分離されていてもよい。
【0048】
<ポリビニルアセタール>
本発明に従って使用されるフィルムA及びBは、ポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマーのアセタール化によって製造されるポリビニルアセタールを含有する。
【0049】
フィルムは、それぞれ異なるポリビニルアルコール含有量、アセタール化度、残留酢酸塩含有量、エチレン比率、分子量及び/又はアセタール基のアルデヒドの異なる鎖長を有するポリビニルアセタールを含有することができる。
【0050】
特に、ポリビニルアセタールの製造に使用されるアルデヒド又はケト化合物は、対応する直鎖又は分岐アセタール基をもたらす2~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐(すなわち、「n」又は「イソ」型)であり得る。したがって、ポリビニルアセタールを「ポリビニル(イソ)アセタール」又は「ポリビニル(n)アセタール」とも呼ぶ。
【0051】
本発明に従って使用されるポリビニルアセタールは、特に、少なくとも1つのポリビニルアルコールと2~10個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族非分枝ケト化合物との反応から生じる。この目的のため、n-ブチルアルデヒドが好ましく使用され、ポリビニルアセタールPA及びポリビニルアセタールPBは両方ともポリビニルブチラールである。
【0052】
フィルムA又はBは、ポリ酢酸ビニル基の割合が同一又は異なって、0.1~20モル%、好ましくは0.5~3モル%又は5~8モル%であるポリビニルアセタールを含有することが好ましい。
【0053】
フィルムAに使用されるポリビニルアセタールPAのポリビニルアルコール含有量は、6~26重量%、8~24重量%、10~22重量%、12~21重量%、14~20重量%、16~19重量%、好ましくは16~21重量%又は10~16重量%であり得る。
【0054】
フィルムAとは無関係に、フィルムBに使用されるポリビニルアセタールPBのポリビニルアルコール含有量は、14~26重量%、16~24重量%、17~23重量%、好ましくは18~21重量%であり得る。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、フィルムAは、6~26重量%の割合のビニルアルコール基を有するポリビニルアセタールPAを含み、フィルムBは、14~26重量%の割合のビニルアルコール基を有するポリビニルアセタールBを含む。
【0056】
<可塑剤>
本発明に従って使用されるフィルムA及び/又はBは、可塑剤として、以下の群から選択される1つ以上の化合物を含有し得る:
-多価脂肪族又は芳香族酸のエステル、例えば、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、及びアジピン酸と脂環式エステル等のアジピン酸ジアルキル、及びエステルアルコール又はエーテル化合物を含むエステルアルコールとのアジピン酸のエステル、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸ジアルキル、また脂環式エステルアルコール又はエーテル化合物を含むエステルアルコールとのセバシン酸のエステル、フタル酸ブチルベンジル又はフタル酸ビス-2-ブトキシエチル等のフタル酸のエステル。
-多価脂肪族又は芳香族アルコール又はオリゴエーテルグリコールと1つ以上の非分枝又は分枝脂肪族又は芳香族置換基とのエステル又はエーテル、例えばグリセロール、ジグリコール、トリグリコール又はテトラグリコールと直鎖若しくは分枝脂肪族又は脂環式カルボン酸とのエステル;後者の群の例としては、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及び/又はジプロピレングリコールベンゾエートが挙げられる。
-トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート及び/又はトリクレジルホスフェート等の脂肪族又は芳香族エステルアルコールを有するホスフェート
-クエン酸、コハク酸及び/又はフマル酸のエステル。
【0057】
定義により、可塑剤は、高い沸点を有する有機液体である。このため、120℃を超える沸点を有する更なる種類の有機液体も可塑剤として使用することができる。
【0058】
開始状態のフィルムAに可塑剤WAが存在する変形例におけるフィルムA、またフィルムBは、可塑剤として1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)又はトリエチレングリコール-ビス-2-エチルヘキサノエート(3GO又は3G8)を含有することが特に好ましい。
【0059】
さらに、フィルムA及びBは、残留量の水、UV吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、蛍光増白剤又は蛍光添加剤、安定剤、着色剤、加工助剤、無機又は有機ナノ粒子、焼成ケイ酸及び/又は表面活性物質等の更なる添加剤を含有してもよい。
【0060】
<積層プロセス>
本発明はまた、上述の耐貫通性ガラス積層体を製造するための方法であって、フィルムAをガラス板上に配置し、次いで少なくとも1つのフィルムBによって被覆し、次いで第2のガラス板を適用する方法に関する。
【0061】
或いは、フィルムBをガラス板上に配置し、次いで少なくとも1つのフィルムAで被覆し、第2のガラス板を適用することが可能である。
【0062】
本発明は更に、少なくとも1つのフィルムA及び少なくとも1つのフィルムBを含むスタックが提供され、スタックを第1のガラス板上に配置し、次いで第2のガラス板を適用する、合わせガラスの製造方法に関する。
【0063】
本発明によれば、最初にフィルムAをガラス板上に全領域にわたって、又は温度の上昇によって局所的に溶融し、次いでこれをフィルムBで被覆することが可能である。或いは、フィルムA及びBを、2つのガラス板の間に一緒に配置し、高温で溶融することができる。
【0064】
合わせガラスを製造するための積層工程は、2つのガラス板の間にフィルムA及びBを配置し、調製した層状体を加圧又は減圧、及び昇温下でプレスして積層体を形成することにより行うことが好ましい。
【0065】
層状体を積層するため、当業者が精通している方法を、事前にプレラミネート(pre-laminate)を製造してもしなくても使用することができる。
【0066】
いわゆる「オートクレーブプロセス」は、約10~15バールの加圧で100~150℃の温度にて約2時間行われる。例えば欧州特許第1 235 683号B1による真空バッグ又は真空リング法は、約200ミリバール及び130~145℃で機能する。
【0067】
また、真空ラミネーターを使用してもよい。これらは、加熱及び排気することができるチャンバからなり、その中で積層グレージングを30~60分以内に積層することができる。0.01~300ミリバールの減圧、及び100~200℃、特に130~160℃の温度は、実際に価値があることが証明されている。
【0068】
最も単純な場合、合わせガラス積層体を製造するため、フィルムA又はBをガラス板上に配置し、更なるフィルムB又はAを同期して又は続いて配置する。次いで、第2のガラス板を適用し、ガラス板の積層体を製造する。次いで、当業者に既知の任意の事前積層(pre-lamination)法を用いて過剰な空気を除去することができる。ここで、層はまた、既に、最初に互いに及びガラスに軽く接着結合されている。
【0069】
次いで、ガラスフィルム積層体をオートクレーブプロセスに供してもよい。フィルムAは、好ましくは、第2のガラス板が適用される前に、第1のガラス板上に配置され、より厚いフィルムBによって被覆される。該方法は、多くの想到され得る、原則として実用的な変形形態で実施することができる。例えば、フィルムAは、適切な幅のロールから容易に除去されるが、フィルムBは、製造される合わせガラスのサイズに合わせて事前にテーラーカットされている。これは、特にウインドスクリーン及び他の自動車用グレージング部品の場合に有利である。この場合、より厚いフィルムBをテーラーカットする前に更に延伸することが特に有利である。これは、フィルムのより経済的な使用を可能にし、又はフィルムBが色味を有する場合には、その曲率を上部シート縁部に適合させることを可能にする。
【0070】
薄いフィルムAは、一般に、キャストフィルムラインを用いた押出又はインフレーションフィルムの形態で製造される。ここで、表面粗さはまた、制御された溶融破断によって、又は追加的に構造化冷却ロール及び/又は構造バックロールを使用するキャストフィルム法によって製造され得る。或いは、官能化の前にフィルムAを製造し、記載の耐貫通性ガラス積層体に使用するために、溶媒キャスト法を使用することができる。本発明に従って使用されるフィルムは、好ましくは、0~25μmの粗さRz、好ましくは1~20μmの粗さRz、特に好ましくは3~15μmの粗さRz、特に4~12μmの粗さRzを有する片側表面構造を有する。フィルムAのガラス板と接触する側の表面粗さRzは、その厚さの20%以下であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の別の態様は、ポリビニルアセタールPAと、任意に少なくとも1つの可塑剤WAと、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域とを含むフィルムであって、適用前にインクのpH値が7以上であり、適用前にインク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンの濃度が200mg/l以下である、フィルムである。
【0072】
ポリビニルアセタールフィルムの表面への印刷又はコーティングプロセスにおける、7以上のpH値及び/又は200mg/l以下のカリウム、マグネシウム若しくはカルシウムの濃度を有するインクの使用も開示される。
【0073】
本発明の態様は、フィルムAの少なくとも一方の面の領域にインクで印刷又はコーティングした後、第1のガラス板上に配置し、少なくとも1つのフィルムBで被覆し、第2のガラス板で被覆した後、100℃以上の温度で積層することを特徴とする、上に開示される本発明による合わせガラスの製造方法である。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1]2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAを積層することにより得られる合わせガラスであって、
フィルムAは、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域を含み、その適用前に、前記インクのpH値は7以上であることを特徴とする、合わせガラス。
[2]2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAを積層することにより得られる合わせガラスであって、
フィルムAは、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域を含み、その適用前に、前記インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンの濃度は200mg/l以下であることを特徴とする、合わせガラス。
[3]2つのガラス板の間に、ポリビニルアセタールPA及び任意に少なくとも1つの可塑剤WAを含む少なくとも1つのフィルムAと、ポリビニルアセタールPB及び少なくとも1つの可塑剤WBを含む少なくとも1つのフィルムBとを積層することにより得られ、前記インクが適用されたフィルムAの少なくとも一方の表面はフィルムBに面している、[1]又は[2]に記載の合わせガラス。
[4]積層前の、
フィルムA中の可塑剤WAの量は22重量%未満であり、
フィルムB中の可塑剤WBの量は少なくとも22重量%である、
[1]~[3]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[5]積層前のフィルムA中の可塑剤WAの量は5重量%未満である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[6]適用前の前記インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの濃度は、200mg/l以下、好ましくは100mg/l以下、より好ましくは50mg/l以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[7]適用前の前記インクのpHは、適用前に7.5超、好ましくは8.0超である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[8]ポリビニルアセタールPA及びポリビニルアセタールPBはポリビニルブチラールである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[9]前記インクがフィルムAの表面に適用された領域において、前記合わせガラスは不透明である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[10]前記インクがフィルムAの表面に適用された領域において、前記合わせガラスは着色されている、[1]~[9]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[11]前記インクは水性インクである、[1]~[10]のいずれか一項に記載の合わせガラス。
[12]ポリビニルアセタールPAと、任意に少なくとも1つの可塑剤WAと、少なくとも一方の表面上に、インクが表面に適用された領域とを含むフィルムであって、適用前に前記インクのpH値は7以上であり、適用前に前記インク中のカリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンの濃度は200mg/l以下である、フィルム。
[13][1]~[11]のいずれか一項に記載の合わせガラスの製造方法であって、フィルムAの少なくとも一方の表面の領域にインクで印刷又はコーティングした後、第1のガラス板上に配置し、少なくとも1つのフィルムBで被覆し、第2のガラス板で被覆した後、100℃以上の温度で積層することを特徴とする、製造方法。
【実施例
【0074】
PVB樹脂粉末(Kuraray Europe GmbHの市販グレードMowital(登録商標)B 60 H)を、共回転二軸スクリュタイプの実験室押出機の入口漏斗に供給した。酢酸カリウム及び酢酸マグネシウム四水和物の水溶液のポリマー樹脂に対して0.525重量%を同時に押出機入口ゾーンに投入し、脱気した溶融物中にそれぞれ350ppmの酢酸カリウム、175ppmの酢酸マグネシウム四水和物を生じさせた。溶融物を幅34cmのスリットダイから冷却した冷却ロール上に押し出して、厚さ約50μmで幅30cmの薄い可塑剤不含フィルムを形成し、続いて巻き取った(ACAを含むフィルムAとして使用及び評価)。
【0075】
フィルムは、フィルムと同じ長さで幅5cmの不透明な黒色ストリップを用いて印刷した。
【0076】
水分含有量(カール-フィッシャー法)及び金属含有量(イオンクロマトグラフィー)の分析判定の前に、ロールを、23℃/28%RHの一定の気候を有する調整区域に保管した。
【0077】
接着性が低下した市販の自動車グレードのPVBフィルム (Kuraray Europe GmbH製のTROSIFOL(登録商標)VG R10 0.76=フィルムBの実施例)を、試験積層体を製造する前に同じ気候で調整した。
【0078】
寸法30×30cmの試験積層体は、以下の積層順序でフィルムA及びBと共に、脱イオン水<5μSで洗浄した標準的な厚さの透明ガラス(2×Planiclear(登録商標)2.1mm)と組み合わせることによって得た。
【0079】
自動車グレードのPVBと組み合わせた接着試験及び耐貫通性について:底部ガラス(空気側)-フィルムA-インク層、存在する場合-VG R10-(スズ側)上部ガラス。
【0080】
サンドイッチを市販の平坦ガラス積層ニッパーラインに通して、プレラミネートを製造した。積層を、標準条件(140℃及び12バールでの30分間の保持時間を含む90分間)のオートクレーブを使用することによって達成した。
【0081】
更なる機械的評価の前に、積層体を23℃の周囲条件で1週間静置した。
【0082】
積層体構造物の耐貫通性を、ECE 43R(23℃の鋼球2.26kg、-20℃及び+40℃の鋼球226g)に従って試験した。積層体構成(2×2.1mm)は、フロントガラスグレージングに関するECE R43に規定されている要件を安全に満たした。
【0083】
<実施例1>
印刷を、市販のインクジェットインクを用いたデジタルインクジェット印刷によって達成した。ポリマーへのインクの攻撃を防ぐため、単一の印刷工程の色の濃さを、半透明フィルムが達成されるように選択した。必要な不透明性は、既に印刷された部分を重ね刷りし、その後、印刷インクの次の層を適用する前にフィルムを22℃で乾燥させることによって達成された。
【0084】
<比較例>
印刷は、結合剤としてのポリアクリレート及び顔料としてのカーボンブラックに基づく、フレキソ印刷に適した水性印刷インクを使用することによって達成された。同様の印刷インクは、例えば、ジークブルクのSiegwerk Druckfarben AG&Co. KGaAから市販されている。インクは、62ppmのカルシウム、8ppmのマグネシウム及び12ppmのカリウム金属を含有すると分析された。十分に高い不透明度で9μmに近い総乾燥層厚に到達するために、黒色印刷層を2回重ね刷りした(合計3つのインク層)。乾燥後、印刷領域におけるフィルムAの含水率を測定したところ、2%であった。
【0085】
フィルムBとして、接着性が低下した市販の自動車グレードのPVBフィルム(Kuraray Europe GmbH製のTROSIFOL(登録商標) VG R10 0.76)を使用した。
【0086】
記載のように得られた印刷フィルムAを含む積層体は、透明部分と不透明な黒色部分との間に良好に画定された縁部を示した。印刷領域のぼやけ又は変形は観察できなかった。不透明度は、5%の可視光透過率を明らかに下回ると測定された。
【0087】
<接着性試験>
「パンメル試験」を使用して、ガラスに対する中間層膜の接着性を試験した。この試験は当業者に周知であり、文献に記載されている。本発明の範囲内で提供されるパンメル値は、国際公開第03/033583号A1に記載されているパンメル試験によって決定された。
【0088】
PVBと内側ガラス表面との間の接着性を評価するためパンメル試験を実施した際に、以下が観察された:
印刷されていない領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は4パンメル単位の接着性を示した。
印刷された領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3.5パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は0パンメル単位の接着性を示した (ガラスは大きく剥がれた)。
【0089】
<実施例2>
印刷は、結合剤としてのポリアクリレート及び顔料としてのカーボンブラックに基づく、フレキソ印刷に適した水性印刷インクを使用することによって達成された。このインク組成物の調製には、通常の水道水の代わりに脱イオン水を使用した。インクは、3ppmのカルシウム、1ppmのマグネシウム及び8ppmのカリウム金属を含有すると分析された。十分に高い不透明度で9μmに近い総乾燥層厚に到達するために、黒色印刷層を2回重ね刷りした(合計3つのインク層)。乾燥後、印刷領域におけるフィルムAの含水率を測定したところ、2%であった。
【0090】
フィルムBとして、接着性が低下した市販の自動車グレードのPVBフィルム(Kuraray Europe GmbH製のTROSIFOL(登録商標) VG R10 0.76)を使用した。
【0091】
記載のように得られた印刷フィルムAを含む積層体は、透明部分と不透明な黒色部分との間に良好に画定された縁部を示した。印刷領域のぼやけ又は変形は観察できなかった。不透明度は、5%の可視光透過率を明らかに下回ると測定された。
【0092】
PVBと内側ガラス表面との間の接着性を評価するためパンメル試験を実施した際に、以下が観察された:
印刷されていない領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は3.5パンメル単位の接着性を示した。
印刷された領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3.5パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は2.5パンメル単位の接着性を示した。
【0093】
さらに、積層体を100℃で7日間ヒートソーク試験に供した。印刷された部分も印刷されていない部分も、気泡又は他の目に見える欠陥を示さなかった。積層体試料を、ANSI Z97.1-2009に従い、ASTM D2565に規定されている方法を使用して、Atlas Ci65 Xenon Weather-Ometerで3000時間のキセノン試験に供した。積層体を、フィルムAがキセノン放射源に面するように配向させた。黒色は3000時間経過後もほとんど変化しないままであったが、フィルムAとインク層の界面に小さな気泡を観察することができた。インク層からの微量の酸性が、酸感受性ポリビニルブチラールの部分的な分解をもたらしたと推測される。
【0094】
<実施例3>
印刷は、結合剤としてのポリアクリレート及び顔料としてのカーボンブラックに基づく、フレキソ印刷に適した水性印刷インクを使用することによって達成された。このインク組成物の調製には、通常の水道水の代わりに脱イオン水を使用した。インクは、3ppmのカルシウム、1ppmのマグネシウム及び8ppmのカリウム金属を含有すると分析された。さらに、水酸化ナトリウムの添加によってインクのpH値を8.5の値に制御した。十分に高い不透明度で9μmに近い総乾燥層厚に到達するために、黒色印刷層を2回重ね刷りした(合計3つのインク層)。乾燥後、印刷領域におけるフィルムAの含水率を測定したところ、2%であった。
【0095】
フィルムBとして、接着性が低下した市販の自動車グレードのPVBフィルム(Kuraray Europe GmbH製のTROSIFOL(登録商標) VG R10 0.76)を使用した。
【0096】
記載のように得られた印刷フィルムAを含む積層体は、透明部分と不透明な黒色部分との間に良好に画定された縁部を示した。印刷領域のぼやけ又は変形は観察できなかった。不透明度は、5%の可視光透過率を明らかに下回ると測定された。
【0097】
PVBと内側ガラス表面との間の接着性を評価するためパンメル試験を実施した際に、以下が観察された:
印刷されていない領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は3.5パンメル単位の接着性を示した。
印刷された領域では、ガラスとVG R10との間の界面は3パンメル単位の接着性を示し、フィルムAとガラスとの間の反対の界面は3.5パンメル単位の接着性を示した。
【0098】
さらに、積層体を100℃で7日間ヒートソーク試験に供した。印刷された部分も印刷されていない部分も、気泡又は他の目に見える欠陥を示さなかった。積層体試料を、ANSI Z97.1-2009に従い、ASTM D2565に規定されている方法を使用して、Atlas Ci65 Xenon Weather-Ometerで3000時間のキセノン試験に供した。積層体を、フィルムAがキセノン放射源に面するように配向させた。黒色は3000時間経過後もほとんど変化しないままであり、フィルムAとインク層との界面に気泡は今回観察されなかった。
図1