(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電子ペン及び電子ペン本体部
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
(21)【出願番号】P 2022530056
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016701
(87)【国際公開番号】W WO2021251019
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020102328
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】菅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄太
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0285775(US,A1)
【文献】特開2014-26553(JP,A)
【文献】特開2007-73082(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者によって把持される筒状体の外側筐体に対して、差し替えが可能なカートリッジ式の電子ペン本体部を装着することにより構成される電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
棒状に形成された芯体と、
押しボタンスイッチが搭載された回路基板と、
前記芯体と前記回路基板とを収納する筒状体であって、ペン先側に前記芯体のペン先を突出させるペン先開口部を有し、側面の前記回路基板の前記押しボタンスイッチの対応する位置には、側面開口部が設けられた本体部筐体と、
前記本体部筐体の前記側面開口部に設けられる部材であって、前記押しボタンスイッチ上に配置されると共に、前記本体部筐体の側面から外側に突出しないようにする係止部を有する押下部材と
を備え、
前記外側筐体は、
前記電子ペン本体部を装着するためにペン先側に設けられた開口部と、
定位置に前記電子ペン本体部を装着した場合に、側面の前記電子ペン本体部の前記押下部材に対応する位置に設けられた操作子用開口部と、
前記操作子用開口部に対して、前記押下部材に対向する面が前記外側筐体の内壁面から内側に突出しないように設けられた操作子と、
を備え、
前記外側筐体の前記操作子が押下操作された場合に、前記電子ペン本体部の前記押下部材を介して、前記電子ペン本体部の前記押しボタンスイッチが操作される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記電子ペン本体部の前記押下部材の前記係止部は、前記押下部材の長手方向の両端に設けられたツメ部である
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記電子ペン本体部の前記押下部材は、外側の面が前記本体部筐体の側面と同一面上に位置するようにされており、
前記外側筐体の前記操作子は、前記押下部材に対向する内側の面が前記外側筐体の内壁面と同一面上に位置するようにされている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記外側筐体には、装着された前記電子ペン本体部の後端側に、前記電子ペン本体部の後端面に接して緩衝機構部が搭載される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項5】
請求項4に記載の電子ペンであって、
前記緩衝機構部は、シリンダ部と、ピストン部と、前記シリンダ部と前記ピストン部とに作用する弾性部材とを備えて一体に構成され、
前記外側筐体に装着された前記電子ペン本体部の前記芯体に対して所定値以上の圧力が加えられた場合に、前記弾性部材が収縮して前記シリンダ部内に前記ピストン部が入り込み、前記電子ペン本体部を前記外側筐体内に摺動移動させる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項6】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記外側筐体の内壁面の少なくとも1箇所に、前端面から軸心に沿って溝部が形成されており、
前記本体部筐体の外壁面の少なくとも後端部分には、前記外側筐体の前記溝部に嵌合する、凸部が設けられている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記外側筐体の内壁面の少なくとも前端部分の少なくとも1箇所に、凸部が形成されており、
前記本体部筐体の外壁面には、前記外側筐体の前記凸部に嵌合する溝部が、後端面から軸心に沿って設けられている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
使用者によって把持される筒状体の外側筐体に対して、差し替えが可能なカートリッジ式の電子ペン本体部を装着することにより構成される電子ペンの前記電子ペン本体部であって、
前記外側筐体は、前記電子ペン本体部を装着するためにペン先側に設けられた開口部と、定位置に前記電子ペン本体部を装着した場合に、側面の前記電子ペン本体部の押下部材に対応する位置に設けられた操作子用開口部と、前記操作子用開口部に対して、前記押下部材に対向する面が前記外側筐体の内壁面から内側に突出しないように設けられた操作子とを備えるものであり、
棒状に形成された芯体と、
押しボタンスイッチが搭載された回路基板と、
前記芯体と前記回路基板とを収納する筒状体であって、ペン先側に前記芯体のペン先を突出させるペン先開口部を有し、側面の前記回路基板の前記押しボタンスイッチの対応する位置には、側面開口部が設けられた本体部筐体と、
前記本体部筐体の前記側面開口部に設けられる部材であって、前記押しボタンスイッチ上に配置されると共に、前記本体部筐体の側面から外側に突出しないようにする係止部を有する押下部材と
を備え、
前記外側筐体に装着された場合に、前記外側筐体の前記操作子が押下操作されることにより、前記押下部材を介して、前記押しボタンスイッチが操作される
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タブレットPC(Personal Computer)、高機能電話端末、ペンタブレットといった位置検出センサを搭載した種々の電子機器に対して、座標を指示することにより情報の入力を行うようにする電子ペン及び電子ペン本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出センサを搭載した種々の電子機器の登場により、電子ペンも広く利用されるようになった。しかし、位置検出センサを搭載した電子機器に専用の電子ペンではなく、使いなれた例えばボールペンなどの筆記具の筐体に、電子ペン機能が搭載された替え芯(リフィル)を装着して使用したいとする要求があった。そこで、電子ペン機能が搭載されたカートリッジ式の替え芯(電子ペンカートリッジ)を、既存の筆記具の筐体に装着して使用する電子ペンが考えられた。
【0003】
電子ペンは電子機器に対して情報を入力するための機能を担っているため、PC(Personal Compute)のポインティングデバイスであるいわゆるマウスと同様の使い方ができることが求められる。いわゆるマウスには、クリックボタンが設けられており、クリックボタンの押下操作に応じて、PCにおいて種々の機能が実行可能になっている。そのため、電子ペンの側面には、いわゆるマウスのクリックボタンに対応するサイドスイッチが設けられているものがある。
【0004】
しかし、電子ペンカートリッジの場合には、筆記具の筐体に収納されて使用されるものである。このため、後に記す特許文献1に開示されているように、電子ペンカートリッジのカートリッジ筐体に例えば2つの接点を設け、この2つの接点を筆記具筐体の操作部を操作して短絡することにより、スイッチとして機能させることが考えられる。或いは、電子ペンカートリッジに押しボタンスイッチを設け、これを筆記筐体に設けられた操作孔を介して操作することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明の場合には、筆記具筐体と電子ペンカートリッジとの位置関係や筆記具筐体に設けられた操作部に対する操作の仕方によっては、接点間の短絡が不安定になる可能性があると考えられる。また、電子ペンカートリッジに押しボタンスイッチを設ける場合にも、いくつかの問題が生じる場合あり、これに対処する必要が生じる。電子ペンカートリッジに押しボタンスイッチを設ける場合には、カートリッジ筐体にもボタンスイッチを操作するための開口部を設けなければならず、電子ペンカートリッジの強度を低下させる原因になる。このため、電子ペンカートリッジに大きな筆圧などの圧力がかかる場合には、これを適切に吸収し、電子ペンカートリッジ自体に大きな負荷がかからないようにする必要が生じる。
【0007】
また、電子ペンカートリッジに押しボタンスイッチを設ける場合には、カートリッジ筐体からボタンスイッチやその操作部が突出する構成となる場合があり、筆記具筐体への装着時に邪魔になる。更に、電子ペンカートリッジに設けられたボタンスイッチを操作するための操作孔を筆記具筐体に設ける必要がある。この場合には、当該操作孔に使用者の指が引っ掛かるなどして、違和感を生じさせてしまう使用者もいると考えられる。
【0008】
以上のことに鑑み、この発明は、筆記具筐体に電子ペンカートリッジを装着して構成する電子ペンに関し、上記問題点を一掃し、適切かつ確実に操作が可能なサイドスイッチを備えた電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
使用者によって把持される筒状体の外側筐体に対して、差し替えが可能なカートリッジ式の電子ペン本体部を装着することにより構成される電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
棒状に形成された芯体と、
押しボタンスイッチが搭載された回路基板と、
前記芯体と前記回路基板とを収納する筒状体であって、ペン先側に前記芯体のペン先を突出させるペン先開口部を有し、側面の前記回路基板の前記押しボタンスイッチの対応する位置には、側面開口部が設けられた本体部筐体と、
前記本体部筐体の前記側面開口部に設けられる部材であって、前記押しボタンスイッチ上に配置されると共に、前記本体部筐体の側面から外側に突出しないようにする係止部を有する押下部材と
を備え、
前記外側筐体は、
前記電子ペン本体部を装着するためにペン先側に設けられた開口部と、
定位置に前記電子ペン本体部を装着した場合に、側面の前記電子ペン本体部の前記押下部材に対応する位置に設けられた操作子用開口部と、
前記操作子用開口部に対して、前記押下部材に対向する面が前記外側筐体の内壁面から内側に突出しないように設けられた操作子と、
を備え、
前記外側筐体の前記操作子が押下操作された場合に、前記電子ペン本体部の前記押下部材を介して、前記電子ペン本体部の前記押しボタンスイッチが操作される
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0010】
この電子ペンによれば、外側筐体に対して、カートリッジ式の電子ペン本体部を装着することにより当該電子ペンが構成される。電子ペン本体部は、芯体と、回路基板と、本体部筐体と、押下部材とを備える。本体部筐体には、棒状に形成された芯体と押しボタンスイッチが搭載された回路基板が収納され、ペン先側には芯体のペン先を突出させるペン先開口部が設けられ、側面の回路基板の押しボタンスイッチの対応する位置には、側面開口部が設けられる。本体部筐体の操子用作開口部には、押下部材が設けられる。当該押下部材は、係止部によって本体部筐体の側面から突出しないようにして、押しボタンスイッチ上に設けられることになる。
【0011】
外側筐体には、ペン先側に電子ペン本体部を装填するための開口部が設けられる。また、外部筐体には、定位置に電子ペン本体部が装着された場合に、電子ペン本体部の押下部材上に位置し、当該押下部材に対向する面が外側筐体の内壁面から内側に突出しないようにして操作子が設けられる。当該操作子が押下操作されることにより、電子ペン本体部の押下部材を介して、電子ペン本体部の押しボタンスイッチが操作される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の電子ペン本体部の構成例を説明するための図である。
【
図2】実施の形態の電子ペン本体部に搭載される回路基板の構成例を説明するための図である。
【
図3】実施の形態の電子ペン本体部が装着されて構成される電子ペンの構成例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態の電子ペンに設けられる緩衝機構部の構成例を説明するための図である。
【
図5】実施の形態の電子ペンの等価回路について説明するための図である。
【
図6】実施の形態の電子ペンの外側筐体と電子ペン本体部との位置決めのための構成部について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、この発明による電子ペン及び電子ペン本体部の一実施の形態について説明する。なお、電子ペン及び位置検出センサの位置検出方式には、例えば、電磁誘導方式や静電容量方式などがある。電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance)方式)は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数のループコイルを配設したセンサ部を位置検出装置が備える。当該センサ部の複数のループコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける。対応する電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、当該センサ部からの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させ、この信号に筆圧情報を含めて位置検出センサに送信する。これを受信期間において位置検出装置が受信して、電子ペンによる指示位置と筆圧を検出する。
【0014】
静電容量方式は、X軸方向とY軸方向とのそれぞれに複数の線状導体(ライン電極)を配設したセンサ部を位置検出装置が備える。当該センサ部は、指や静電ペンが近づけられることによって、線状導体に生じる静電容量(電荷)の変化に応じて指示位置を検出する。なお、静電ペンには、導電性を有するペン型の位置指示器、あるいはバッテリで駆動され、信号を送出するいわゆるアクティブ静電ペン(AES(Active Electrostatic)方式)がある。アクティブ静電ペンを用いるアクティブ静電結合方式の場合には、電子ペンは、電子ペンに搭載された発振回路からの信号に筆圧情報をも含めて送信し、これを位置検出装置で受信して、指示位置と筆圧を検出する。
【0015】
この発明の電子ペン及び電子ペン本体部は、電磁誘導方式の電子ペンにも、また、アクティブ静電結合方式の電子ペン(アクティブ静電ペン)にも適用可能なものである。すなわち、この発明の電子ペン及び電子ペン本体部は、いわゆるサイドスイッチを設けた種々の電子ペン及び電子ペン本体部に適用可能である。以下に説明する実施の形態においては、説明を簡単にするため、電磁誘導方式の電子ペン及び電子ペン本体部に用いる場合を例にして説明する。
【0016】
また、以下に説明する実施の形態の電子ペンは、例えば、市販の鉛筆やボールペンなどと外形サイズがほぼ同じで、内側が円柱状の空洞となった外側筐体に対して、カートリッジ式の電子ペン本体部を装着することにより構成される。「カートリッジ式」との文言は、機器の部品で、差し替えが自由にできるものを意味する。従って、カートリッジ式の電子ペン本体部は、例えば、ボールペンの替え芯(リフィル)と同様の外形を有し、電子ペン機能を実現する替え芯(リフィル)に相当する。以下においては、まず、カートリッジ式の電子ペン本体部について説明し、その後に当該電子ペンカートリッジが装着される外側筐体を含む電子ペンについて説明する。
【0017】
[電子ペン本体部1の構成例]
図1は、実施の形態の電子ペン本体部1の構成例を説明するための図である。また、
図2は、電子ペン本体部1に搭載される回路基板18の構成例を説明するための図である。
図1(A)は、電子ペン本体部1の外観を示している。電子ペン本体部1は、筒状の本体部筐体11aを有する。本体部筐体11aは、ペン先側が先端に向かって徐々に先が細くなるテーパー形状になっている。本体部筐体11aのペン先側の先端部にはペン先開口部11FHが設けられており、
図1(A)に示すように、本体部筐体11aの内部に取り付けられる芯体12のペン先部が当該ペン先開口部11FHから突出する。
【0018】
本体部筐体11aの側面には、本体部筐体11aに搭載される回路基板に設けられているサイドスイッチ(押しボタンスイッチ)に対応する位置に、側面開口部11SHが設けられ、ここに押下部材としてのサイドスイッチノブ11bが設けられる。サイドスイッチノブ11bは、後述するサイドスイッチに作用する可動部であって、側面開口部11SHを塞ぐカバー部として機能する。従って、サイドスイッチノブ11bは、側面開口部11SHが存在することにより生じる本体部筐体11aの脆弱となっている部分を塞ぎ(補い)、本体部筐体11aの強度が弱くならないようにする機能をも有する。また、本体部筐体11aの後端には、後述する回路基板等の部品を搭載するための後端開口部11BHが設けられている。この後端開口部11BHは、リアキャップ11cにより閉じられ、電子ペン機能が搭載された電子ペン本体部1を構成する。
【0019】
なお、この実施の形態の電子ペン本体部1は、
図1(A)に示したように、直径が例えば3.8mmとされ、長手方向の全長が、例えば65.65mmとされている。このように、電子ペン本体部1は、ボールペンの一般的な替え芯(リフィル)とほぼ同様のサイズで構成されたものである。また、芯体12のペン先からサイドスイッチノブ11bの中央までの長さが例えば31.54mmとされている。これにより、当該電子ペン本体部1が装着されて構成された電子ペンにおいて、これを把持している使用者の手の例えば人差し指によって簡単に操作可能な位置に、いわゆるサイドスイッチを設けることが可能になる。
【0020】
図1(B)は、
図1(A)に示した状態の電子ペン本体部1を長手方向に半分に切断し、前側部分を取り除いた場合の断面図である。
図1(B)に示すように、本体部筐体11aの内部のペン先側には、フロントコアキャップ14aとリアコアキャップ14bとに挟まれたフェライトコア及びコイル部13が設けられている。フェライトコア及びコイル部13は、貫通孔を有する筒状のフェライトコアの両端部分を除く部分に、導電線を巻回させることにより、コイルを配設して構成したものである。
【0021】
リアコアキャップ14bの後段には、基板等フォルダ17が設けられる。基板等フォルダ17は、ペン先側に先端筒状部17aを備え、先端筒状部17aの厚みを有する底面部17bの後端面より板状部17cが後端側に延伸されて形成されたものである。板状部17cの後端には後端底面部17dが形成され、この後端底面部17dの後端面の中心部分には、嵌合突起17eが設けられている。なお、底面部17bと後端底面部17dとは、本体部筐体11aの内径よりもやや短い直径を有する円形平板状に形成された部分である。
【0022】
フロントコアキャップ14aは、ペン先に向かって細くなるテーパー形状を有する筒状体であり、その先端部分と側面が、本体部筐体11aの内壁面に接して配置される。フロントコアキャップ14aには、後端側よりフェライトコア及びコイル部13のフェライトコアの先端側が嵌め込まれる。リアコアキャップ14bは、直径の異なる2つの筒状部が連結された形状の筒状体である。リアコアキャップ14bは、直径が長い筒状部の側面が、本体部筐体11aの内壁面に接し、直径が短い筒状部が、基板等フォルダ17の先端筒状部17aに対してペン先側の開口部から嵌め込まれる。また、リアコアキャップ14bに対しては、ペン先側よりフェライトコア及びコイル部13のフェライトコアの後端側が嵌め込まれる。
【0023】
リアコアキャップ14bの後段には、キャップ状の押し子部材15が設けられる。この押し子部材15には、後述もするが、芯体12の後端部が装着され、芯体12を本体部筐体11内に保持するようにする。押し子部材15の後端側には、この押し子部材15と基板等フォルダ17の先端筒状部17aの底面部17bとによって挟まれるようにして、筆圧検出部16が設けられる。筆圧検出部16は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサの構成とされたものである。筆圧検出部16は、芯体12及び押し子部材15によって押圧されることにより、芯体12にかけられた筆圧を例えば静電容量の変化として検出する。なお、押し子部材15の外側側面(外壁面)の一部の周囲には、コイルバネ15aが設けられており、芯体12にかかっている筆圧が解除された場合には、コイルバネ15aの復帰力により、芯体12を元の位置に押し戻す構成を備えている。
【0024】
図1(B)において、基板等フォルダ17の上面には、回路基板18が載置されて固定される。回路基板18上には、
図2(A)の回路基板18の側面図に示すように、主要な構成部品として、サイドスイッチ18a、制御IC(Integrated Circuit)18b、コンデンサ18cなどの種々の回路部品が搭載されて回路部が構成されている。サイドスイッチ18aは、上述もしたように、押しボタンスイッチの構成とされたものである。
図1(B)にも示し、
図2にも示すように、回路基板18のペン先側には、筆圧検出部16に接続される電極18dが設けられ、この電極18dと回路基板18上に形成された回路部とが、導電部18eによって電気的に接続される。
【0025】
更に、
図2(A)、(B)に示すように、回路基板18には、サイドスイッチ18aの近傍であってペン先側に、厚み方向に回路基板18を貫通する固定孔18fが設けられている。当該固定孔18fには、
図1(B)に示したように、回路基板18が基板等フォルダ17の定位置に載置された場合に、基板等フォルダ17に設けられた固定突起17fが嵌合する。これにより、基板等フォルダ17上における回路基板18の位置を固定する。なお、
図2(B)に示したように、回路基板18の電極18dと導電部18eを除いた部分の全長は34.25mmであり、横幅は2.6mmである。
【0026】
このような構成の回路基板18が、
図1(B)に示したように、基板等フォルダ17の定位置にセットされた場合において、これらが搭載される本体部筐体11aの側面のサイドスイッチ18aに対向する位置に側面開口部11SHが設けられている。この側面開口部11SHに対して、サイドスイッチ18a上に、この実施の形態ではサイドスイッチ18aによって押し上げられるようにして、サイドスイッチノブ11bが設けられる。サイドスイッチノブ11bは、サイドスイッチ18a側の長手方向(軸心方向)の両端に係止部11baを備える。当該係止部11baは、長手方向に張り出したツメ部を構成している。これらの係止部11baが、本体部筐体11aの内壁面と係合し、サイドスイッチノブ11bが、本体部筐体11aの外側に外れることがないようにしている。
【0027】
すなわち、サイドスイッチノブ11bは、回路基板18に設けられたサイドスイッチ18aと、本体部筐体11aの内壁面とに挟まれて、側面開口部11SHの部分に固定される。また、サイドスイッチノブ11bの外側側面が、本体部筐体11aの側面から突出しないようにされている。この実施の形態においては、
図1(A)、(B)に示したように、サイドスイッチノブ11bの外側側面(使用者により操作される面)と、本体部筐体11aの側面とは、同一平面に属するようにされている。
【0028】
基板等フォルダ17の後端底面部17dの後端面に対向して、リング状の緩衝部材19が設けられる。上述したように、本体部筐体11aの後端開口部11BHに対してリアキャップ11cが嵌め込まれる。リアキャップ11cは、後端開口部11BHに嵌め込まれる部分の直径は、本体部筐体11aの内径よりやや長くされ、また、リアキャップ11cの底面の直径は本体部筐体11aの外径と同じにされた円柱状の凹部を備えるカップ形状のものである。
【0029】
これにより、リアキャップ11cは、本体部筐体11aの後端開口部11BHに嵌め込まれると共に、基板等フォルダ17の嵌合突起17eがリアキャップ11cの凹部に嵌まり込み、本体部筐体11aに対して、容易に外れることがないように取り付けられる。この場合、基板等フォルダ17の嵌合突起17eの直径は、リアキャップ11cの凹部の直径よりもやや長くなるようにされている。また、リアキャップ11cのペン先側の端面は、緩衝部材19を介して基板等フォルダ17の後端底面部17dをペン先側に押圧する。
【0030】
これにより、
図1(B)に示したように、フロントコアキャップ14a、フェライトコア及びコイル部13、リアコアキャップ14b、押し子部材15、筆圧検出部16、基板等フォルダ17、回路基板18が、本体部筐体11a内に封入される。更に、
図1(B)に示したように、本体部筐体11aのペン先開口部11FHより、芯体12が差し込まれて、フロントコアキャップ14a、フェライトコア及びリアコアキャップ14bを貫通して、押し子部材15の凹部に嵌め込まれる。
【0031】
芯体12は、
図1(B)に示したように、ペン先部12aと軸部12bとからなる。軸部12bの直径は、押し子部材15のカップ部の
内径よりもやや長くされている。これにより、
図1(A)、(B)に示したように、芯体12のペン先部12aを、本体部筐体11aより突出させた態様で、芯体12を、押し子部材15を介して本体部筐体11aの内部に取り付けることができる。また、芯体12を押し子部材15から引き抜けば、本体部筐体11a内から取り外すことができる。すなわち、芯体12は、本体部筐体11aに対して、着脱可能になる。このようにして、電子ペン本体部1が構成されている。
【0032】
[電子ペン3の全体構成]
図3は、電子ペン本体部1が装着されて構成される電子ペン3の構成例を説明するための図である。
図3(A)は、電子ペン3の外観を示している。電子ペン3は、筒状の外側筐体31を有する。外側筐体31は、ペン先側が先端に向かって徐々に先が細くなるテーパー形状になっている。外側筐体31のペン先側の先端部には先端開口部31FHが設けられており、この先端開口部31FHを通じて、
図1を用いて説明した電子ペン本体部1の挿抜が可能になっている。外側筐体31に電子ペン本体部1が装着されると、
図3(A)に示すように、電子ペン本体部1の本体部筐体11aのペン先側のテーパー形状になった部分が突出し、電子ペン本体部1の芯体12も突出した状態になって、電子ペンとして利用できるようになる。
【0033】
また、電子ペン3の外側筐体31の側面には、装着された電子ペン本体部1の側面に設けられているサイドスイッチノブ11bに対応する位置に、軸心方向に細長の操作子用開口部31SHが設けられており、ここに操作子32が取り付けられる。当該操作子32を押下操作することにより、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bを介して、電子ペン本体部1の回路基板18に設けられた押しボタンスイッチの構成とされたサイドスイッチ18aを押下操作できる。なお、
図3(A)に示すように、電子ペン3は、芯体12の先端から後端部までの全長が150mmで、直径が7mmのものである。これは、JIS規格の鉛筆よりも全長は20mm程度短いが、ほぼJIS規格の鉛筆の同様のサイズのものであり、市販されている一般的なシャープペンシルやボールペンと同様のサイズのものとなる。
【0034】
図3(B)は、
図3(A)に示した状態の電子ペン3の外側筐体31及び操作子32の部分を長手方向に半分に切断し前側部分を取り除いた場合の断面図である。従って、外側筐体31内に搭載された電子ペン本体部1及び緩衝機構部2については、断面ではなく外側筐体31内に搭載された状態の外観を示している。
図3(B)に示すように、外側筐体31の内部の中空部分には、電子ペン本体部1と緩衝機構部(ショックアブソーバ)2とが長手方向に直列して装着される。電子ペン本体部1は、
図1、
図2を用いて説明した構成を有し、電子ペン機能を実現する部分である。緩衝機構部2は、電子ペン本体部1のペン先部分から軸心方向にかかる負荷を吸収して和らげるものである。緩衝機構部2の詳細については後述する。
【0035】
この実施の形態の電子ペン3の場合には、
図3(B)に示すように、外側筐体31に設けられた操作子用開口部31SH内の軸心方向の後端側には、軸心方向と交差する方向の厚みが薄くなった保持壁31HWが設けられている。また、保持壁31HWには、保持用孔31RHが設けられている。従って、保持壁31HWのペン先側が操作子用開口部31SHの大きな貫通孔になっている。操作子32の上面は、
図3(A)に示したように、操作子用開口部31SHの形状と相似形に形成されたものであり、操作子用開口部31SHよりやや小さく形成されたものである。
図3(A)に示したように、操作子32は、保持壁31HW部分を含む操作子用開口部31SHの全体を塞ぐようにして、外側筐体31に対して取り付けられることになる。
【0036】
操作子32は、
図3(B)にその断面を示したように、板状体32aに対して、取り付け用突起32bと押圧部32cとを有する。
図3(B)に示したように、操作子32の板状体32aと取り付け用突起32bとを合わせた部分の厚みが、外側筐体31の厚みと同じ厚みになっている。また、取り付け用突起32bだけの厚みは、保持壁31HWの厚みと同じになっている。このため、板状体32aの取り付け用突起32bが設けられていない部分の厚みは、外側筐体31の厚みより薄くなっており、その厚みは、
図3(B)に示すように、外側筐体31の側面から保持壁31HWの上面までの深さとほぼ同じになっている。
【0037】
図3(B)に示すように、操作子32は、後端側の取り付け用突起32bが保持壁31HWの保持用孔31RHに嵌め込まれて、操作子用開口部31SHに取り付けられる。操作子32の取り付け用突起32bは、保持用孔31RHと同一形状で、保持用孔31RHよりやや大きくされている。これにより、保持用孔31RHに、取り付け用突起32bを押し込むことによって、保持用孔31RHに対して取り付け用突起32bが固く嵌合し、外側筐体31の操作子用開口部31SHの部分に操作子32を強固に固定できる。なお、上述したように、取り付け用突起32bだけの厚み(取り付け用突起32bの高さ)は、保持壁31HWの厚みと同じになっているので、取り付け用突起32bが、外側筐体31の内壁面から突出することはない。
【0038】
一方、操作子32の押圧部32cは、板状体32aの下側(電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bに対向する側)に張り出した部分と、上側(使用者によって操作される側)に張り出した部分を備えている。押圧部32cの下側に張り出した部分の厚みは、保持壁31HWと同じ厚みとされ、外側筐体31の内壁面から突出することがないようにされている。従って、操作子32の押圧部32cの下側に張り出した部分と、上述の取り付け用突起32bとは、操作子32を外側筐体31に対して取り付けただけの状態の時には、外側筐体31の内壁面から突出することがないようにされる。従って、外側筐体31への電子ペン本体部1の装着時において、押圧部32cの下側に張り出した部分や取り付け用突起32bが邪魔になることがない。
【0039】
また、押圧部32cの上側に張り出した部分は、
図3(B)に示すように、外側筐体31の側面からやや張り出すようになっている。これにより、電子ペン3の使用者は、操作子32の位置を、いちいち目で見て確認する必要はない。使用者は、操作子32の押圧部32cの外側に張り出した張り出し部を指で触って確認することによって、操作子32の押圧部32cの位置を把握でき、操作子32を適切に操作できる。
【0040】
図3(A)、(B)を用いて説明した電子ペン3において、操作子32の押圧部32cを押下操作したとする。この場合には、上述もしたように、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bを通じて、電子ペン本体部1に搭載された回路基板のサイドスイッチ18aを押下操作することができる。また、操作子32の押圧部32cに対する押下操作をやめれば、操作子32の復帰力により、操作子32は、元の位置状態(
図3(B))に示した状態に戻る。同時に、サイドスイッチ18aの復帰力により、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bも押し戻されて、元の位置に復帰する。すなわち、サイドスイッチ18aが押下されていない状態の位置(押圧操作されていない状態の時に取る位置)に復帰する。
【0041】
[緩衝機構部(ショックアブソーバ)の構成]
図3(B)に示したように、外側筐体31内には、電子ペン本体部1の後端側に緩衝機構部2が配置される。緩衝機構部2は、上述もしたように、電子ペン本体部1のペン先部分から軸心方向にかかる負荷を吸収して和らげるものである。例えば、電子ペン3の使用者が近隣の人に押されるなどして、使用者が意図せずに電子ペン本体部1の芯体12に対して急激に強い筆圧が掛かってしまう場合がある。また、机上にあった電子ペン3がペン先から床等に落下して、電子ペン本体部1に対して芯体12側から強い衝撃が加わってしまう場合がある。このような場合に、緩衝機構部2は、電子ペン本体部1を軸心後端方向に摺動移動させて、電子ペン本体部1にかかった強い外力を吸収し、電子ペン本体部1を保護する。もちろん、電子ペン3が使用中であった場合には、電子ペン3の芯体12を通じて電子機器の操作面にかかる圧力を低下させ、当該電子機器の操作面をも保護することが可能である。
【0042】
図4は、電子ペン3に設けられる緩衝機構部2の構成例を説明するための図であり、緩衝機構部2を、その長手方向に半分に切断し前側部分を取り除いた場合の断面図である。緩衝機構部2は、シリンダ部21と、ピストン部22と、コイルバネ23とからなる。シリンダ部21は、ペン先とは反対側(
図4の右側)の端部が端部開口となった穴部21aを備えることにより、円筒状に形成されたものである。シリンダ部21の後端側端面から所定分だけペン先側(
図4の左側)にずれた位置であって、
図4の上と下の側面には、穴部21aまで貫通した窓部21w1、21w2が設けられる。窓部21w1、21w2は、後述するピストン部22の突起部22b1、22b2の移動を妨げないようにするためのものである。窓部21w1、21w2の後端側は、筒状の係止部21bとなっている。
【0043】
ピストン部22は、円柱状に形成された部材であり、ペン先側(
図4の左側)より嵌合部22a、突起部22b1、22b2、バネ保持部22c、後端張り出し部22dの4つの部分からなる。嵌合部22aとバネ保持部22cとは、シリンダ部21の穴部21aの直径よりやや短い直径となっている部分である。嵌合部22aとバネ保持部22cとの間であって、シリンダ部21の窓部21w1、21w2に対応する位置には、窓部21w1、21w2内を移動する突起部22b1、22b2が設けられる。突起部22b1、22b2は、シリンダ部21の後端側の係止部21bのペン先側の端面と係合する。また、バネ保持部22cの後端側には、後端張り出し部22dが設けられる。シリンダ部21の直径と、ピストン部22の後端張り出し部22dの直径は同じである。
【0044】
ピストン部22の嵌合部22aは、
図4に示したように、円筒状に形成されたシリンダ部21の穴部21aに対して嵌り込む。この場合、ピストン部22の突起部22b1、22b2のそれぞれは、シリンダ部21の窓部21w1、21w2内に位置するようにされる。バネ保持部22cは、
図4に示すように、その周囲にコイルバネ23が設けられる部分である。コイルバネ23は、シリンダ部21の係止部21bの後端面と、ピストン部22の後端張り出し部22dの前端面とによって挟み込まれて保持される。コイルバネ23は、シリンダ部21とピストン部22とを離れさせるように作用している。しかし、ピストン部22の突起部22b1、22b2が、シリンダ部21の係止部21bと係合することにより、
図4に示した初期状態を維持する。
【0045】
このように形成された緩衝機構部2が、
図3(B)に示したように、外側筐体31の後端側に固定される。この実施の形態においては、外側筐体31の内側後端部分に接着剤が塗布され、外側筐体31の後端側内壁面と接着されて固定される。この実施の形態において、コイルバネ23は、450gf(グラム重)以上の荷重がかかった場合に縮み(撓み)はじめるものである。従って、
図3(B)に示したように、前段にある電子ペン本体部1の芯体12に対して、軸心方向に450gf未満の荷重がかかっている場合には、コイルバネ23は縮まないので、電子ペン本体部1の位置は維持され、変わらない。
【0046】
しかし、電子ペン本体部1の芯体12に対して、軸心方向に450gf以上の荷重がかかった場合には、コイルバネ23が縮むので、
図4に示したシリンダ部21が、矢印を付加して示した隙間を縮めるように後端側に移動する。これにより、電子ペン本体部1もまた、外側筐体31の内部において、後端側に摺動移動することによって、電子ペン本体部1の芯体12にかかる負荷が吸収される。なお、電子ペン本体部1の芯体12にかかっている負荷が解除されれば、コイルバネ23の復帰力により、シリンダ部21はペン先側に押し戻されるので、これに応じて電子ペン本体部1も元の位置に復帰する。このような構成の緩衝機構部2が、電子ペン本体部1の芯体12を通じて受ける過度の圧力を軽減するように作用する。
【0047】
[電子ペン3の等価回路]
図5は、電子ペン3の等価回路について説明するための図である。この実施の形態の電子ペン3の電子ペンとしての機能は電子ペン本体部1によって実現される。すなわち、この実施形態の電子ペン3は、コイル(インダクタ)と、コンデンサ(キャパシタ)Cfと、可変容量コンデンサCvと、周波数変更用のコンデンサC1及びサイドスイッチ18aとが並列に接続された構成を有する。コイルは、フェライトコア及びコイル部13のコイルである。コンデンサCfは、回路基板18に設けられた例えばコンデンサ18cである。可変容量コンデンサCvは、筆圧検出部16に相当する。コンデンサC1は、図示しないが、回路基板18に搭載されたものである。
【0048】
押しボタンスイッチは、回路基板18に設けられた押しボタン方式のサイドスイッチ18aである。このサイドスイッチ18aが、上述もしたように、本体部筐体11aに対して設けられるサイドスイッチノブ11bを介して、外側筐体31に設けられる操作子32を通じて押下操作が可能にされる。サイドスイッチ18aが押されていない状態では、フェライトコア及びコイル部13のコイルとコンデンサCfとによって共振回路を構成し、電磁誘導方式の位置検出センサからの信号を受信して送信用の信号を形成し、これを位置検出センサに送信して位置を指示することが可能になる。
【0049】
また、筆圧検出部16である可変容量コンデンサCvを備えることにより、電子ペン3から送信する送信信号に、筆圧を示す情報を例えば送信信号の位相の変化として含めることができる。更に、サイドスイッチ18aのオン/オフにより、コンデンサC1の接続/非接続を切り替えて、送信信号の周波数を変化させることができる。これにより、サイドスイッチ18aのオン/オフの状態も、電磁誘導方式の位置検出センサに対して通知できる。このような電子ペンとしての基本的な機能を、電子ペン3に搭載される電子ペン本体部1が実現する。
【0050】
[電子ペン本体部1の外側筐体31への装着時の位置決め]
上述したように、外側筐体31に装着された電子ペン本体部1のサイドスイッチ18aは、外側筐体31に設けられる操作子32を押下操作することにより、サイドスイッチノブ11bを介して操作される。このため、外側筐体31に対して電子ペン本体部1を装着した場合に、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bの位置と外側筐体31の操作子32の位置とが正確に対応している必要がある。そこで、この実施の形態の電子ペン3においては、外側筐体31と電子ペン本体部1との位置決めのための構成を設けている。
【0051】
図6は、電子ペン3の外側筐体31と電子ペン本体部1との位置決めのための構成部について説明するための図である。具体的に、
図6は、操作子32の押圧部32cが設けられている位置で、軸心と交差する方向に、電子ペン3を切断した場合の断面図である。なお、説明を簡単にするため、電子ペン本体部1の本体部筐体11a内に収納されるサイドスイッチノブ11b以外の収納物についての記載は省略している。
【0052】
図6に示すように、この実施の形態においては、外側筐体31においては、押圧部32cの中心から外側筐体31の外周を180度回転した位置の内壁面に、ペン先側の端部から緩衝機構部2の前端面まで溝部33を設ける。また、本体部筐体11aにおいては、サイドスイッチノブ11bの中心から本体部筐体11aの外周を180度回転した位置の外壁面(側面)に突起11dを設ける。外側筐体31の内壁に設けた溝部33には、本体部筐体11aの外壁面に設けた突起11dが嵌合して、
図6に示した外側筐体31と、本体部筐体11aとの位置関係を維持しながら、外側筐体31内に電子ペン本体部1を装着することができる。
【0053】
この場合、本体部筐体11aの外壁面に設けられる突起(凸部)11dは、本体部筐体11aの後端部分にのみ設けてもよいし、本体部筐体11aの後端部分からペン先側のテーパー形状になる直前の位置までの間に飛び飛びに複数個の突起11dを設けてもよい。また、本体部筐体11aの外壁面に設けられる突起11dは、本体部筐体11aの後端部分からペン先側のテーパー形状になる直前の位置まで、線状に(連続して)設けてもよい。
【0054】
また、逆に、外側筐体31においては、押圧部32cの中心から外側筐体31の外周を180度回転した位置の内壁面に突起(凸部)を設ける。この突起は、外側筐体31の前端部分にのみ設けてもよいし、外側筐体31の前端から緩衝機構部2の前端までの間に、飛び飛びに設けてもよい。もちろん、当該突起は、外側筐体31の前端から緩衝機構部2の前端までの間に線状に(連続して)設けてもよい。一方、本体部筐体11aには、サイドスイッチノブ11bの中心から本体部筐体11aの外周を180度回転した位置の外壁面(側面)に溝部を設ける。当該溝部は、本体部筐体11aの後端部分からペン先側のテーパー形状になる直前の位置まで、線状に(連続して)設ける。
【0055】
これにより、本体部筐体11aの外壁に設けた溝部には、外側筐体の内壁に設けた突起が嵌合して、
図6に示したように、外側筐体31と、本体部筐体11aとの位置関係を維持しながら、外側筐体31内に電子ペン本体部1を装着することができる。このように、外側筐体31の内壁面の少なくとも1箇所に、前端面から軸心に沿って溝部が形成し、本体部筐体11aの外壁面の少なくとも後端部分には、外側筐体31の溝部に嵌合する、凸部を設ける。或いは、外側筐体31の内壁面の少なくとも前端部分の少なくとも1箇所に凸部を形成し、本体部筐体11aの外壁面には、外側筐体31の凸部に嵌合する溝部を後端面から軸心に沿って設ける。
【0056】
これにより、両者を嵌合させることにより、外側筐体31と電子ペン本体部1との位置決めを適切に行うことができる。従って、外側筐体31に対して、電子ペン本体部1を装着した場合に、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bと、外側筐体31に取り付けられる操作子32とが確実に対応するように装着できる。
【0057】
なお、ここでは、対応する溝部と突起(凸部)とを1箇所設ける場合について説明したが、これに限るものではない。対応する溝部と突起(凸部)とを複数箇所設けるようにしてももちろんよい。例えば、外側筐体31の内壁と本体部筐体11aの外壁であって、電子ペン3の中心軸を挟んで対向する位置に、溝部と突起とを設けるようにするなどのことが可能である。この場合、1の箇所には、外側筐体31の内壁に溝部、本体部筐体11aの外壁には凸部を設け、他の箇所には、外側筐体31の内壁に凸部、本体部筐体11aの外壁には溝部を設けるといったことも可能である。
【0058】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の電子ペン3においては、外側筐体31に対して、電子ペン本体部1と、緩衝機構部2とを装着するだけで、電子ペン3が実現できる。電子ペン本体部1は、ボールペンの替え芯(リフィル)と同定の大きさのものであるが、本体部筐体11a内に搭載された回路基板にサイドスイッチ18aを備えるものである。このサイドスイッチ18aを押下操作するための側面開口部11SHが設けられるが、この側面開口部11SHには、押下操作可能なサイドスイッチノブ11bが設けられて塞がれる。従って、側面開口部11SHが設けられることにより弱くなる本体部筐体11aの部分を補強することができる。しかも、サイドスイッチノブ11bの上面部分は、本体部筐体11aの側面から突出することが無いようにされるので、電子ペン本体部1の外側筐体への着脱時に邪魔になることもない。
【0059】
また、外側筐体31には、装着された電子ペン本体部1の本体部筐体11aに設けられたサイドスイッチノブ11bの対応する位置に操作子32が設けられる。この操作子32を押下操作することで、電子ペン本体部1の本体部筐体11aに設けられたサイドスイッチノブ11bを介して、回路基板18上のサイドスイッチ18aを適切に操作することができる。しかも、外側筐体31に設けられる操作子32は、外側筐体の内壁面から突出することはないので、電子ペン本体部1や緩衝機構部2の装着時に邪魔になることもない。
【0060】
また、外側筐体31には、後端側に緩衝機構部2が装着され、その前側に電子ペン本体部1が装着される構成になっている。これにより、電子ペン本体部1の芯体12に過剰な圧力がかかった場合でもこれを緩衝機構部2が吸収して、電子ペン本体部1を保護することができる。この場合、電子ペン3が、位置検出センサ上の操作面上にあって使用中の場合には、当該操作面に対して、電子ペン本体部1の芯体12が過剰な負荷をかけないようにすることができるので、操作面に対する保護もできる。また、外側筐体31と本体部筐体11aの対応する位置に、溝部と凸部或いは凸部と溝部とを備えることにより、外側筐体31に対して、電子ペン本体部1を常に適切な位置に装着することが可能になる。すなわち、本体部筐体11aのサイドスイッチノブと、外側筐体31の操作子32との位置がずれることがないようにできる。
【0061】
[変形例]
上述した実施の形態では、外側筐体31と本体部筐体11aとは、共に円筒状のものであるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、外側筐体31の側面は、鉛筆のように六角形にし、内側に円柱状の穴部を設けるなどのことも可能である。また、外側筐体31の内側の穴部を断面が多角形になる角柱状に形成し、これに対応するように、本体部筐体11aの形状を合わせるようにしてもよい。この場合には、装着時の位置合わせのための機構(凸部と溝部)を形成しなくてもよい。
【0062】
なお、外側筐体31と本体部筐体11aとの形状は、これらに限るものではなく、種々の形状とすることが可能である。この場合に重要なことは、電子ペン本体部1のサイドスイッチノブ11bと外側筐体31の操作子32との位置を適切に合わせることができるようになっていればよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、
図1(A)、(B)に示したように、サイドスイッチノブ11bの外側側面(使用者により操作される面)と、本体部筐体11aの側面とは、同一平面に属するようにしていた。しかし、これに限るものではない。少なくとも、サイドスイッチノブ11bの外側側面(使用者により操作される面)と、本体部筐体11aの側面から外側に突出しないようにすればよい。外側筐体31への装着時に邪魔にならないようにするためである。
【0064】
また、操作子32の取り付け用突起32bや押圧部32cの下側に張り出した部分は、外側筐体の内壁面から内側に突出しないようにしておけばよい。従って、操作子32の取り付け用突起32bや押圧部32cの下側に張り出した部分は、外側筐体31に対して操作子32を取り付けた場合に、外側筐体の内壁面からやや引っ込んだ状態になるようにしてももちろんよい。この場合であっても、操作子32を外側筐体31に対して強固にとりつけられ、また、押圧部32cを押下操作した場合に、適切にサイドスイッチノブ11bを介して、サイドスイッチ18aを押下操作できるようにしておけばよい。
【0065】
また、本体部筐体11a、基板等フォルダ17、リアキャップ11c、芯体12、外側筐体31、シリンダ部21、ピストン部22などは、POM(Polyoxymethylene又はPolyacetal)樹脂やABS(Acrylonitrile、Butadiene、Styrene)樹脂などにより形成可能である。また、電子ペン本体部1の基板等フォルダ17の後端底面部17dの後端に配置される緩衝部材19は、エラストマー(elastomer)により形成されている。これらの材料は一例であり、同様に形成でき、同様の強度を保てるものであれば、種々の材料を用いることができる。
【0066】
また、回路基板18は、FPC(Flexible Printed Circuits)として形成されたものである。しかし、これに限るものではなく、柔軟性のない絶縁体基材を用いて形成したリジット回路基板や硬質な材料と薄く柔軟性のある材料とを複合して形成したリジッドフレキシブル回路基板として形成したものを用いるようにすることもできる。
【0067】
上述の実施の形態では、回路基板18には、1つのサイドスイッチ(押しボタンスイッチ)18aを設け場合を例にして説明したがこれに限るものではない。例えば、回路基板8上において、長手方向に前後して2つのサイドスイッチを設け、これらの2つのサイドスイッチに対応して別々に作用するサイドスイッチノブを設ける。これに対応して、外側筐体31には、例えばシーソー式の操作子を設けることにより、前後に設けたサイドスイッチのそれぞれを個別に操作することが可能になる。
【0068】
また、上述した実施の形態では、電磁誘導方式の電子ペンに対して、サイドスイッチを設ける場合を例にして説明したが、これに限るものではない。例えば、アクティブ静電容量方式の電子ペンに対しても、同様に、サイドスイッチに対応して本体部筐体にサイドスイッチノブを設け、これに対応して外側筐体に操作子を設ける3層構造を形成する。このようにすれば、外側筐体側から電子ペン本体部に内蔵されたサイドスイッチの操作が可能なアクティブ静電容量方式の電子ペンが実現できる。また、アクティブ静電容量方式の電子ペンの場合にも、電子ペン本体部の後段に緩衝機構部を設けることにより、電子ペン本体部の保護もできる。
【符号の説明】
【0069】
1…電子ペン本体部、11a…本体部筐体、11b…サイドスイッチノブ、11ba…係止部(ツメ部)、11c…リアキャップ、11d…突起、11FH…ペン先開口部、11SH…側面開口部、11BH…後端開口部、12…芯体、12a…ペン先部、12b…軸部、13…フェライトコア及びコイル部、14a…フロントコアキャップ、14b…リアコアキャップ、15…押し子部材、15a…コイルバネ、16…筆圧検出部、17…基板等フォルダ、17a…先端筒状部、17b…底面部、17c…板状部、17d…後端底面部、17e…嵌合突起、17f…固定突起、18…回路基板、18a…サイドスイッチ、18b…制御IC、18c…コンデンサ、18d…電極、18e…導電部、18f…固定孔、19…緩衝部材、2…緩衝機構部、21…シリンダ部、21a…穴部、21w1、21w2…窓部、21b…係止部、22…ピストン部、22a…嵌合部、22b1、22b2…突起部、22c…バネ保持部、22d…後端張り出し部、23…コイルバネ、3…電子ペン、31…外側筐体、31FH…先端開口部、31SH…操作子用開口部、31RH…保持用孔、31HW…保持壁、32…操作子、32a…板状体、32b…取り付け用突起、32c…押圧部