(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241025BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241025BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241025BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241025BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 658J
H01L29/78 655F
H01L29/78 652Q
(21)【出願番号】P 2022576249
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2021001636
(87)【国際公開番号】W WO2022157823
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠也
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170813(WO,A1)
【文献】特表2008-518445(JP,A)
【文献】特開2019-091731(JP,A)
【文献】特開2020-013923(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078799(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が設けられたセル部と、平面視において前記セル部の周囲に設けられた終端部とを有する半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極上の前記セル部に相当する位置に設けられた第2電極と、
前記第1電極上の前記セル部および前記終端部に相当する位置に設けられた層間膜と、
前記層間膜上の前記セル部および前記終端部に相当する位置に設けられた保護膜と、
を備え
、
前記第2電極は、前記層間膜に隣接して設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記層間膜は、前記セル部に相当する位置から前記終端部に相当する位置に渡って設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記層間膜は、前記セル部のみに相当する位置に設けられた第1層間膜と、前記セル部に相当する位置から前記終端部に相当する位置に渡って設けられた第2層間膜とを含み、
前記第1層間膜と前記第2層間膜との間には離間部が設けられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記保護膜は、前記第2層間膜上から前記第1電極上の前記離間部に渡って設けられている、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護膜は、前記第2層間膜上に設けられた第1保護膜と、前記第1電極上の前記離間部に設けられた第2保護膜とを含み、
前記第1保護膜と前記第2保護膜とは離間している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記層間膜および前記保護膜は、平面視において前記第2電極に隣接しかつ交互に配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記層間膜は、前記保護膜よりも膜厚が薄い、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子は、トレンチゲート構造を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
モジュール基板と、
前記モジュール基板上に加圧接合された請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置を封止したモールド樹脂と、
を備える、半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および当該半導体装置を備える半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面電極上に終端部を保護するための保護膜を設け、当該保護膜をマスクとして用いることによってめっき電極を形成した半導体装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている半導体装置は、保護膜の表面が最上部に位置している。従って、当該半導体装置をモジュール基板上に加圧接合する際に半導体装置の上方から加圧すると、保護膜に応力が集中して保護膜下の内部構造にダメージが生じ、半導体装置の特性変動が発生するという問題がある。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、上方からの加圧に起因する特性変動を抑制することが可能な半導体装置および半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による半導体装置は、半導体素子が設けられたセル部と、平面視においてセル部の周囲に設けられた終端部とを有する半導体基板と、半導体基板上に設けられた第1電極と、第1電極上のセル部に相当する位置に設けられた第2電極と、第1電極上のセル部および終端部に相当する位置に設けられた層間膜と、層間膜上のセル部および終端部に相当する位置に設けられた保護膜とを備え、第2電極は、層間膜に隣接して設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、上方からの加圧に起因する特性変動を抑制することが可能となる。
【0008】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1による半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施の形態2による半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図3】実施の形態3による半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態4による半導体装置の構成を示す平面図である。
【
図5】実施の形態5による半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1による半導体装置の構成を示す断面図である。なお、
図1では、半導体装置の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成を示している。
【0011】
半導体基板1は、半導体素子であるMOSFETが設けられたセル部32と、平面視においてセル部32の周囲に設けられた終端部31とを有している。半導体基板1は、例えば、シリコンまたは炭化珪素などで構成されている。
【0012】
半導体基板1のセル部32には、N型半導体領域6と、P型半導体領域7と、N+型半導体領域8と、裏面側半導体領域9とが形成されている。また、半導体基板1の表面からN+型半導体領域8およびP型半導体領域7を貫通してN型半導体領域6に達するようにトレンチゲート10が形成されている。すなわち、半導体素子は、トレンチゲート構造を有する。
【0013】
半導体基板1のセル部32の表面であってN+型半導体領域8の一部とトレンチゲート10を覆うように酸化膜11が形成されている。
【0014】
半導体基板1の表面には表面電極2(第1電極)が設けられ、半導体基板1の裏面には裏面電極3が設けられている。表面電極2は、例えば、AlSiなどで構成されている。
図1に示すように半導体素子がMOSFETである場合、表面電極2はソース電極として機能し、裏面電極3はドレイン電極として機能する。
【0015】
半導体基板1の終端部31には、P+型ガードリング領域12が形成されている。P+型ガードリング領域12は、P型半導体領域7よりも深くなるように形成されている。終端部31とセル部32との境界は、P型半導体領域7とP+型ガードリング領域12とが接する位置である。
【0016】
半導体基板1の終端部31の表面であってP+型ガードリング領域12を覆うように絶縁膜13が形成されている。
【0017】
層間膜4は、表面電極2上のセル部32に相当する位置から終端部31に相当する位置に渡って設けられている。換言すれば、層間膜4は、終端部31からセル部32に渡って設けられている。また、層間膜4の張出し部は、電極22を形成するための開口領域を形成している。ここで、層間膜4の張出し部とは、層間膜4のうち保護膜5で覆われていない部分(保護膜5から張出している部分)のことをいう。層間膜4は、保護膜5および電極22よりも膜厚が薄い。
【0018】
電極22(第2電極)は、表面電極2上のセル部32に相当する位置であって、層間膜4に隣接して設けられている。電極22は、層間膜4をマスクとして用いることによって、層間膜4の開口領域に形成されている。電極22を形成する際に層間膜4をマスクとして用いることによって、製造プロセスの工程を削減することができる。
【0019】
保護膜5は、層間膜4上の終端部31およびセル部32に相当する位置に設けられている。換言すれば、保護膜5は、終端部31からセル部32に渡って設けられている。保護膜5は、例えば、ポリイミドなどで構成されている。保護膜5は、セル部32におけるトレンチゲート10および酸化膜11の直上には設けられていない。
【0020】
なお、
図1では、半導体素子がMOSFETである場合における半導体装置を示しているが、半導体素子はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。半導体素子がIGBTである場合、表面電極2はエミッタ電極として機能し、裏面電極3はドレイン電極として機能し、N+型半導体領域8に代えてP+型半導体領域となる。
【0021】
上記では、層間膜4の張出し部で電極22を形成するための開口領域を形成しているが、当該張り出し部は保護膜5よりも膜厚が薄いことを条件として別材料の膜(層間膜4とは異なる膜)に変更してもよい。
【0022】
図1では、終端部31の構造として周知のガードリング構造を例示しているが、終端部31が層間膜4および保護膜5を有していればガードリング構造以外の構造であってもよい。また、終端部31とセル部32との間にゲート配線等の配線部を設けてもよい。
【0023】
上記のように構成した半導体装置は、半導体装置の上方から加圧されて保護膜5が応力を受けても、表面電極2を介してセル部32に形成されたトレンチゲート10および酸化膜11まで伝達する応力成分を、従来よりも低減することができる。従って、上方からの加圧に起因するゲート不良および耐圧不良などの特性変動を抑制することができる。
【0024】
周知のとおり、層間膜4および保護膜5は、終端部31における応力緩和および電気的保護を目的として設けられている。上記のように構成した半導体装置は、終端部31を保護するために設けられた層間膜4および保護膜5をセル部32に延伸して設けることによって、製造工程を追加することなく上記効果を得ることができる。
【0025】
<実施の形態2>
図2は、実施の形態2による半導体装置の構成を示す断面図である。
図2に示すように、実施の形態2では、層間膜41と層間膜42とが離間して設けられていることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0026】
層間膜41(第2層間膜)は、表面電極2上のセル部32に相当する位置から終端部31に相当する位置に渡って設けられている。層間膜42(第1層間膜)は、表面電極2上のセル部32のみに相当する位置に設けられている。層間膜42は、電極22を形成するための開口領域を形成している。層間膜41,42は、保護膜5よりも膜厚が薄い。
【0027】
層間膜41と層間膜42との間には離間部が設けられている。保護膜5は、層間膜41上から層間膜41と層間膜42との間の離間部に渡って設けられている。具体的には、保護膜5は、層間膜41と層間膜42との間の離間部に電極22が形成されないように、当該離間部を充填するように設けられている。
【0028】
なお、層間膜41,42は同一材料で形成してもよいが、保護膜5よりも膜厚が薄いことを条件として層間膜42を別材料の膜(層間膜41とは異なる膜)に変更してもよい。
【0029】
層間膜41,42にガラスコートを用いる場合、層間膜41,42をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によって成膜すると、層間膜41,42の中に多数の水素イオンが存在するため、層間膜41,42から表面電極2を経由して酸化膜11に水素イオンが移動する。これにより、界面電荷密度Qssが増加し、ゲート閾値電圧などの特性が変動する可能性がある。これについて、実施の形態2による半導体装置は、層間膜41,42が表面電極2上を被覆する面積を減らしているため、特性変動を低減することができる。また、実施の形態1と同様の効果も得られる。
【0030】
<実施の形態3>
図3は、実施の形態3による半導体装置の構成を示す断面図である。
図3に示すように、実施の形態3では、保護膜51と保護膜52とが離間して設けられていることを特徴としている。その他の構成は、実施の形態2と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
保護膜51(第1保護膜)は、層間膜41上に設けられている。保護膜52(第2保護膜)は、表面電極2上であって層間膜41と層間膜42との間には離間部に設けられている。具体的には、保護膜52は、層間膜41と層間膜42との間の離間部に電極22が形成されないように、当該離間部を充填するように設けられている。保護膜51と保護膜52とは離間している。
【0032】
なお、保護膜51,52は同一材料で形成してもよいが、保護膜52を別材料の膜(保護膜51とは異なる膜)に変更してもよい。また、層間膜41と層間膜42との間の離間部に電極22が形成されても問題ない場合は、保護膜52を設けなくてもよい。
【0033】
実施の形態3による半導体装置は、保護膜51と保護膜52とを離間して設けている。従って、保護膜51と保護膜52との間に保護膜51,52が変形する余地が生じるため、半導体装置の上方から加圧されて保護膜51,52が応力を受けても当該応力を緩和しやすくなり、実施の形態2によりも効果的にゲート不良および耐圧不良などの特性変動を抑制することができる。
【0034】
<実施の形態4>
図4は、実施の形態4による半導体装置の構成を示す平面図である。
【0035】
図4に示すように、実施の形態4では、実施の形態1~3のいずれかの構造(
図1~3参照)が形成された領域61と、従来構造が形成された領域62とが交互に配置されている。ここで、従来構造とは、例えば特許文献1に開示されている半導体装置のように、電極(本開示の電極22の相当)を形成するために保護膜をマスクとして用いる構造のことをいう。
【0036】
領域61において、実施の形態1で説明した層間膜4(
図1参照)、または実施の形態2,3で説明した層間膜42(
図2,3参照)は、電極22に隣接している。また、領域62において、保護膜5は電極22に隣接している。そして、層間膜4,42と保護膜5とは交互に配置されている。
【0037】
上記のような構成とすることによって、実施の形態2,3よりも特性変動を抑制することができる。
【0038】
<実施の形態5>
図5は、実施の形態5による半導体モジュールの構成を示す断面図である。
【0039】
半導体モジュールは、モジュール基板71と、半導体装置72と、リード部材74,76と、モールド樹脂77とを備えている。半導体装置72は、実施の形態1~4で説明したいずれかの半導体装置に相当する。半導体装置72は、加圧接合によって、はんだ等の接合材料73を介してモジュール基板71上に実装されている。リード部材74は、はんだ等の接合材料75を介して電極22と電気的に接続されている。リード部材76は、モジュール基板71と電気的に接続されている。モールド樹脂77は、リード部材74,76の一部が突出するように半導体装置72を封止している。
【0040】
上記のような構成とすることによって、半導体モジュールにおけるゲート不良および耐圧不良などの特性変動を抑制することができる。
【0041】
なお、本開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0042】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体基板、2 表面電極、3 裏面電極、4 層間膜、5 保護膜、6 N型半導体領域、7 P型半導体領域、8 N+型半導体領域、9 裏面側半導体領域、10 トレンチゲート、11 酸化膜、12 P+型ガードリング領域、13 絶縁膜、22 電極、31 終端部、32 セル部、41,42 層間膜、51,52 保護膜、61,62 領域、71 モジュール基板、72 半導体装置、73 接合材料、74 リード部材、75 接合材料、76 リード部材、77 モールド樹脂。