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特許7577143バッテリーシステムおよび半導体プリチャージャーモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】バッテリーシステムおよび半導体プリチャージャーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241025BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20241025BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241025BHJP
   H03K 17/78 20060101ALI20241025BHJP
   H03K 17/691 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H02M1/08 301
H02M1/00 C
H02M1/08 301A
H02M1/08 301B
H02M7/48 M
H03K17/78 Z
H03K17/691
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023005005
(22)【出願日】2023-01-17
(65)【公開番号】P2023104916
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007325
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0152343
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】596099882
【氏名又は名称】エレクトロニクス アンド テレコミュニケーションズ リサーチ インスチチュート
【氏名又は名称原語表記】ELECTRONICS AND TELECOMMUNICATIONS RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク クン シク
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ジョン イル
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒョン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ドヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ジョン-ウォン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-211761(JP,A)
【文献】特開2006-262586(JP,A)
【文献】特開昭63-220762(JP,A)
【文献】特開昭53-063855(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014202504(DE,A1)
【文献】特開2020-137334(JP,A)
【文献】特開2018-128433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 1/00
H02M 7/48
H03K 17/78
H03K 17/691
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの電圧をキャパシタ及び負荷に供給したり遮断するメインスイッチ;
前記バッテリーの電圧を前記キャパシタ及び前記負荷に供給したり遮断する半導体スイッチと、前記半導体スイッチを駆動するためのパルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含む、前記メインスイッチと並列で連結される半導体プリチャージャーモジュール;および
前記メインスイッチおよび前記半導体プリチャージャーモジュールを制御するための制御信号を生成する制御器を含み、
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチ駆動部は、前記制御器および前記バッテリーの電圧を電気的に絶縁する絶縁素子を含み
前記制御器は、
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせる前に、前記半導体プリチャージャーモジュールの故障診断のために電流をセンシングして、電流が流れないことを先に確認し、
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせ、
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせた後に、前記半導体プリチャージャーモジュールの電流をセンシングして前記半導体プリチャージャーモジュールの故障の有無を確認し、
電圧センシングを通じて前記バッテリーの電圧と前記キャパシタの電圧の電圧差がシステムの仕様に満足されると、前記メインスイッチをターンオンさせた後に前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオフさせるように構成される、
バッテリーシステム。
【請求項2】
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチ駆動部から出力されるパルス信号のパルスピークが、
(+)のときに前記半導体スイッチが前記負荷に前記バッテリーの電圧を供給し、
(-)のときに前記半導体スイッチが前記負荷への前記バッテリーの電圧供給を遮断する、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項3】
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチはMOS駆動サイリスタ(MCT: Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor)を含む、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項4】
前記バッテリーの電圧を降圧して生成された電圧を前記制御器に供給するDC/DCコンバータをさらに含む、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項5】
前記半導体プリチャージャーモジュールおよび前記バッテリーシステムのうち少なくとも一つの故障を診断するために電圧と電流をセンシングする電圧/電流感知部をさらに含む、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項6】
前記半導体スイッチ駆動部の前記絶縁素子は光カプラである、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項7】
前記光カプラの発光部は前記制御器に連結され、受光部は前記半導体スイッチのゲートに連結される、
請求項6に記載のバッテリーシステム。
【請求項8】
前記半導体スイッチ駆動部の前記絶縁素子は1次側と2次側が電気的に絶縁されて電磁気誘導作用によって信号の伝達がなされるトランスフォーマーである、
請求項1に記載のバッテリーシステム。
【請求項9】
外部制御信号によりバッテリーの電圧をキャパシタ及び負荷に供給したり遮断する半導体スイッチ;および
前記半導体スイッチを駆動するためのパルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含み、
前記半導体スイッチ駆動部は前記外部制御信号および前記バッテリーの電圧を電気的に絶縁する絶縁素子を含み、
前記半導体スイッチは、前記負荷に電圧を供給できるメインスイッチと並列で連結され、
前記外部制御信号は
前記半導体スイッチをターンオンさせる前に、故障診断のために電流をセンシングして、電流が流れないことを先に確認させ、
前記半導体スイッチをターンオンさせ
前記半導体スイッチをターンオンさせた後に、電流をセンシングして故障の有無を確認させ、
電圧センシングを通じて前記バッテリーの電圧と前記キャパシタの電圧の電圧差がシステムの仕様に満足されると、前記メインスイッチをターンオンさせた後に前記半導体スイッチをターンオフさせる、
半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項10】
前記半導体スイッチ駆動部から出力されるパルス信号のパルスピークが
(+)のときに前記半導体スイッチが前記負荷に前記バッテリーの電圧を供給し、
(-)のときに前記半導体スイッチが前記負荷への前記バッテリーの電圧供給を遮断する、
請求項9に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項11】
前記半導体スイッチはMOS駆動サイリスタ(MCT: Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor)を含む、
請求項9に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項12】
前記故障を診断するために電圧と電流をセンシングする電圧/電流感知部をさらに含む、
請求項9に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項13】
前記半導体スイッチ駆動部の前記絶縁素子は光カプラである、
請求項9に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項14】
前記光カプラの発光部は前記外部制御信号により点滅され、受光部は前記半導体スイッチのゲートに連結される、
請求項13に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項15】
前記半導体スイッチ駆動部の前記絶縁素子は1次側と2次側が電気的に絶縁されて電磁気誘導作用によって信号の伝達がなされるトランスフォーマーである、
請求項9に記載の半導体プリチャージャーモジュール。
【請求項16】
バッテリーの電圧をキャパシタ及び負荷に供給したり遮断するメインスイッチ; および
前記バッテリーの電圧を前記キャパシタ及び前記負荷に供給したり遮断する半導体スイッチと、前記半導体スイッチを駆動するためのパルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含み、前記メインスイッチと並列で連結される半導体プリチャージャーモジュールを含むバッテリーシステムを制御する方法であって、
前記バッテリーシステムが始まると前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせ;
電圧センシングを通じて前記バッテリーの電圧と前記キャパシタの電圧の電圧差がシステムの仕様を満足すると、前記メインスイッチをターンオンさせた後に前記半導体スイッチをターンオフさせることを含み
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせる前に、前記半導体プリチャージャーモジュールの故障診断のために電流をセンシングして、電流が流れないことを先に確認することをさらに含む、
バッテリーシステム制御方法。
【請求項17】
バッテリーの電圧をキャパシタ及び負荷に供給したり遮断するメインスイッチ;および前記バッテリーの電圧を前記キャパシタ及び前記負荷に供給したり遮断する半導体スイッチと、
前記半導体スイッチを駆動するためのパルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含み、前記メインスイッチと並列で連結される半導体プリチャージャーモジュールを含むバッテリーシステムを制御する方法であって、
前記バッテリーシステムが始まると前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせ;
電圧センシングを通じて前記バッテリーの電圧と前記キャパシタの電圧の電圧差がシステムの仕様を満足すると、前記メインスイッチをターンオンさせた後に前記半導体スイッチをターンオフさせることを含み
前記半導体プリチャージャーモジュールの前記半導体スイッチをターンオンさせた後に、前記半導体プリチャージャーモジュールの電流をセンシングして前記半導体プリチャージャーモジュールの故障の有無を確認することをさらに含む、
バッテリーシステム制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーシステムに関し、具体的には、バッテリーを使う電気自動車をはじめとする多くの機器でシステムが始まる時、突入電流によるシステムの損傷を防止し、システムの高信頼性、小型、軽量、高効率化のための半導体プリチャージャーモジュールとこれが含まれたバッテリーシステムに関する。
【0002】
図1は従来のバッテリーシステムの概略回路図であって、電気自動車のモータ(M)を駆動するシステムを例として示している。バッテリーシステムが開始(すなわち、自動車始動ON)される時にバッテリー(Battery)の電圧がスイッチ1(メインスイッチ)を経てC(ラインキャパシタ)とすぐに接続される場合、両者間の電圧差によって突入電流(in-rush current)が流れてシステムに損傷を与えることになる。これを防止するために一般的にスイッチ2(プリチャージスイッチ)とR(プリチャージ抵抗)を直列で接続した経路をスイッチ1に並列で接続するが、これをプリチャージ経路(Pre-charge path)という。バッテリーとCの間の電圧差が一定の水準に達する時までスイッチ2をオンにして電流がプリチャージ経路を通じて流れるようにし、その後にスイッチ1をオンにして再びスイッチ2をオフにする過程を経てインバータ(Inverter)を通じてモータを駆動してシステムの安定性を図って電力損失を最小化する。
【0003】
一般的に、スイッチ1とスイッチ2としては高電圧および高電流性能が優秀なリレー(Relay)を使っている。しかし、リレーは機械的接触方式であるため、リレーの互いに異なる二つの金属が接触(短絡)する瞬間、二つの金属の間で振動と熱が発生し、また、長時間使用時に高い熱を発生させ、この熱と共に振動により溶着されて回路短絡が発生するなど、概して寿命が短く、重くて体積が大きい。またプリチャージスイッチはシステムの仕様により数百μsec水準の短い時間の間に安全に動作することが非常に重要であるが、Relayはターンオン時間が数msecと長いという短所がある。
【0004】
最近リレーが有する問題点を解決するために、既存に使っていたリレーをSi MOSFET(Silicon Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、SiC MOSFET(Silicon Carbide MOSFET)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で代替する研究が進行されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はバッテリーシステムで、漏洩電流が小さくゲートターンオン電圧が低く、特に、単一パルス(Single pulse)で駆動が可能な半導体基盤のプリチャージャーモジュールでバッテリーシステムの高信頼性、小型、軽量、高効率化を達成しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明ではプリチャージャースイッチとして使われてきた既存リレーおよび最近提起されているMOSFETとIGBTが有する問題点を克服するために、MOS制御サイリスタ(Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor、MCT)を活用した高信頼、小型、軽量、高効率の半導体プリチャージャーモジュールそして、これを適用したバッテリーシステムを提供する。
【0007】
具体的には、本発明の一特徴によると、制御器;前記制御器によって制御されて前記バッテリーの電圧を前記負荷に供給したり遮断するメインスイッチ;および前記メインスイッチと並列で連結され、前記制御器から出力される制御信号により前記バッテリーの電圧を前記負荷に供給したり遮断する半導体スイッチと、前記制御器からの制御信号を受信して前記半導体スイッチを駆動するための単一パルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含む半導体プリチャージャーモジュールを含むバッテリーシステムが提供される。ここで、前記半導体プリチャージャーモジュールの半導体スイッチ駆動部は前記制御器および前記バッテリー電圧を電気的に絶縁する絶縁素子を含み、前記半導体プリチャージャーモジュールの半導体スイッチはMOS制御サイリスタ(MCT:Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor)であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の特徴によると、制御器によって制御されてバッテリーの電圧を負荷に供給したり遮断するメインスイッチを含むバッテリーシステムでプリチャージ機能をする半導体プリチャージャーモジュールが提供される。この半導体プリチャージャーモジュールはバッテリーシステムのメインスイッチと並列で連結され、制御器から出力される制御信号により前記バッテリーの電圧を前記負荷に供給したり遮断する半導体スイッチ;制御器からの制御信号を受信して前記半導体スイッチを駆動するための単一パルス信号を出力して前記半導体スイッチをターンオンおよびターンオフする半導体スイッチ駆動部を含む。ここで、前記半導体スイッチ駆動部は前記制御器および前記バッテリー電圧を電気的に絶縁する絶縁素子を含み、前記半導体スイッチはMOS制御サイリスタ(MCT:Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor)であることを特徴とする。
【0009】
ここで、MCTは、MGT(MOS gated thyristor)、BRT(Base resistance controlled thyristor)、EST(Emitter switched thyristor)、ETO(Emitter turn off thyristor)等で指称されるMOS gateがあるサイリスタを意味する。
【0010】
本発明の構成と作用は、以下で図面と共に説明する具体的な実施例を通じてさらに明確となるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、機械的接触方式によって寿命が短かった既存のリレーの短所を克服することができ、最近提起されているMOSFETまたはIGBTを適用したプリチャージャー対比駆動回路が簡単であるので、半導体プリチャージャーモジュールの高信頼性、小型、軽量、高効率化を達成できる。本発明の半導体プリチャージャーモジュールは、電気自動車をはじめとするエネルギー貯蔵装置などのバッテリーを使うすべての機器に必須の部品であり、市場規模が非常に大きく、今後も持続的に拡大する可能性が高く商用化の可能性が非常に高いものと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一般的なバッテリーシステムの構成図である。
図2】半導体の電流-電圧曲線である。
図3】本発明のバッテリーシステムである。
図4】プリチャージ半導体スイッチゲート駆動信号および電流の例示である。
図5】MCTの漏洩電流および降伏電圧特性である。
図6】MCTを絶縁駆動するために光カプラを使った回路の例示である。
図7】MCTを絶縁駆動するためにトランスフォーマーを使った回路の例示である。
図8】半導体プリチャージャーモジュールの動作タイミングである。
図9】半導体プリチャージャーモジュールの制御方法である。
図10】制御器を具現するために活用できるコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明で使われた用語は本発明の好ましい実施例を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書で、単数型は特に言及しない限り複数型も含む。また、明細書に使われた「含む(comprise、comprisingなど)」という用語は、言及された構成要素、段階、動作、および/または素子以外の一つ以上の他の構成要素、段階、動作、および/または素子の存在または追加を排除しない意味で使われたものである。
【0014】
前記にて言及した通り、本発明で提案するバッテリーシステムは、既存にプリチャージスイッチとして使われてきたRelayおよび最近提起されているMOSFETとIGBTが有する問題点を克服するために、MOS制御サイリスタ(Metal-oxide-semiconductor controlled thyristor、MCT)を活用した高信頼、小型、軽量、高効率の半導体プリチャージャーモジュールを含む。
【0015】
本発明で提案するバッテリーシステムの実施例を説明する前に、IGBTとMOSFETについて、そして本発明で使うMCTについて簡単に紹介する。
【0016】
Si MOSFETは、降伏電圧が一般的に650Vであるので400V級以下のバッテリーを使うハイブリッド自動車には適用が可能であったが、最近バッテリー電圧が800Vまで高くなっている電気自動車をはじめとする400V以上の高電圧バッテリーシステムには使用が不可である。IGBTは1200V以上の降伏電圧特性を有しているが、ゲートが0Vであるターンオフ状態でも数十μA以上の大きい漏洩電流が発生するため、システムがオフにされた状態でも持続的にバッテリーを放電させるという問題がある。SiC MOSFETは1200V以上の降伏電圧特性を有しており、IGBTに比べては相対的に低いが数μA水準の漏洩電流特性を有している。その上、IGBTとSiC MOSFETは正常動作のために約15V以上の高いゲート電圧を必要とする。また、図2のように、IGBTまたはMOSFETの場合、コレクタ-エミッタ間電圧(VCE)またはドレイン-ソース間電圧(VDS)が増加しても電流が増加しない一定の領域が存在する。特に、正常動作をするためのしきい電圧(Threshold voltage、Vth)が約3~6Vであるため、この電圧以上が供給されるまで非常に大きな電力が素子にかかっているので、非常に致命的であり得る。反面、本発明で使おうとするMCTの場合には、ダイオードと類似する動作特性を示すため素子に大きな電力がかからず、ゲート-カソード間動作電圧(VGK)が5V以下と他の半導体素子に比べて低いので、駆動回路を簡単にすることができるという長所がある。
【0017】
以下、具体的に本発明に係るバッテリーシステムについて説明する。図3は本発明に係るバッテリーシステムのブロックダイアグラムを示す。
【0018】
バッテリー管理システム(Battery Management System、BMS)を含んだバッテリー11は、絶縁型メインスイッチ13と絶縁型半導体プリチャージャーモジュール15を通じて、キャパシタ17、負荷駆動部19、および負荷21に連結される。これらブロックの両端には、図3で太線で表記しているように相対的に高い電圧がかかることになる。制御器23は絶縁型DC/DCコンバータ25を通じてバッテリーの高い電圧を降圧して得た低い電圧26の供給を受け、半導体プリチャージャーモジュール15とメインスイッチ13そして、電圧/電流感知部27を駆動および制御する。ここで、絶縁型~の意味は、相対的に高いバッテリー電圧と相対的に低い電圧の制御信号乃至は駆動信号間で電気的に絶縁(Isolation)されるという意味である。
【0019】
電圧/電流感知部27でセンシングした電圧と電流28は、制御器(Controller)23に入力されてバッテリーシステムの故障診断をするのに使われる。DC/DCコンバータ25、メインスイッチ13、半導体プリチャージャーモジュール15、および電圧/電流感知部27はいずれもバッテリー11の高電圧経路(太線)に対して絶縁状態を維持する。半導体プリチャージャーモジュール15はメインスイッチ13と並列で連結されるが、図3の構成のように、バッテリーの(+)端子にのみあってもよく、システムによりバッテリーの(-)端子にのみあってもよく、バッテリーの(+)端子と(-)端子すべてにあってもよい。
【0020】
本発明で半導体プリチャージャーモジュール15に使われるプリチャージ半導体スイッチング素子は、1000V以上の降伏電圧、nA水準の低い漏洩電流特性を有するMOS制御サイリスタ(MOS Controlled Thyristor、MCT)である。
【0021】
半導体スイッチであるMCTのゲートを駆動するにおいて、ゲート駆動信号とMCT電流の関係を図4に示している。IGBTまたはSiC MOSFETではゲートに15V以上の駆動信号が長期間印加される(c)と、コレクタ-エミッタ間またはドレインソース間に電流が流れる(d)が、MCTでは5Vの単一パルス(single pulse)の駆動信号がゲートに印加される(a)と、アノード-カソード間に電流が流れる(b)。 前記半導体スイッチ駆動の単一パルス信号の幅はμsec単位である。
【0022】
このように、低い電圧の単一パルスで動作するMCTのゲートに駆動信号を印加するために、駆動信号はバッテリーの相対的高電圧経路と絶縁されなければならない。このために単一パルス絶縁駆動回路(Single pulse isolated drive circuit)が構成されなければならない。特に、本発明の半導体プリチャージャーモジュールの半導体スイッチ駆動部でMCTはnA水準に漏洩電流が非常に小さく、ゲート動作電圧も5Vと他のMOSFETやIGBTに比べて低いので、半導体スイッチ駆動部の回路が非常に単純となり得る。
【0023】
図5は、韓国電子通信研究所で開発したMCTの漏洩電流(Leakage current、I)と降伏電圧(Breakdown Voltage、BV)の特性グラフである。MCTのゲートGとカソードK間の電圧VGKが0Vであるとき、MCTのアノードAとカソードK間に流れる漏洩電流I_Lは5nA以下であり、降伏電圧BVは1760V以上を有する。
【0024】
半導体プリチャージャーモジュール15は、図6図7を参照すると、バッテリー11の電圧を負荷21に供給および供給遮断する半導体スイッチ35と、制御器23から出力される駆動信号または制御信号を受信して半導体スイッチ35のターンオン、ターンオフを駆動するための半導体スイッチ駆動部30で構成されている。
【0025】
前述した通り、半導体プリチャージャーモジュール15を構成する半導体スイッチ駆動部30は、高電圧部(すなわち、バッテリー電圧経路)から制御関連部(例えば、制御器23)を絶縁する絶縁素子が含まれなければならない。
【0026】
絶縁素子の一例として、図6に光カプラ(Optocoupler、またはOptoisolator、またはPhotoVoltaic)29を使った半導体スイッチ駆動部30の一例を示した。図6の回路で光カプラ29の発光部は制御器23に連結されて制御信号により点滅され、発光部と電気的に絶縁されて光信号を受信する受光部のアノード出力端31はMCT35のカソードと連結され、カソード出力端33はMCT35のゲートに連結される。一般的に光カプラの出力電流は数十μA水準と小さいので、15V以上のゲート電圧を必要とするSiC MOSFETとIGBTを駆動させるには長い時間が要求され、ドレイン-ソース間またはエミッタ-コレクタ間に高い電圧がかかっている状態で電流が流れる時間が存在するので、これによる高いエネルギーを半導体が耐えずに破壊され得る。しかし、MCTの場合、nA水準の漏洩電流と5Vのゲート電圧を必要とし、しきい電圧を越える瞬間アノード-カソード間に低い電圧がかかるとともに大きな電流が流れるので半導体に高いエネルギーがかからないため、破壊される心配がない。また、半導体スイッチ駆動部を単純化するのが容易であり、これからシステムの小型・軽量化が可能であるという長所がある。
【0027】
また、プリチャージスイッチは数百msecの間動作しなければならないため、MOSFETまたはIGBTをプリチャージスイッチとして使う場合には、そのゲートに数百msecの間15V以上の電圧を印加しなければならないが、MCTはゲートに5Vの単一パルス信号が印加される瞬間電流が流れ始めてゲートに―5Vの単一パルス信号が印加されるまでは電圧を印加せずともその電流が継続して維持される。
【0028】
MCTのこのような長所は、図7のように絶縁素子をトランスフォーマー37として使う半導体プリチャージャーモジュール15の設計にも大きな長所となる。図7でトランスフォーマー37の1次側と2次側が電気的に絶縁されて電磁気誘導作用によって信号の伝達がなされる。トランスフォーマーが伝達できる信号のON-timeは一般的に数十μsecであるため、MOSFETまたはIGBT駆動時に数百msecの間ゲート電圧を維持させるためには、複数のパルス信号を伝達してこれを整流して使わなければならない。しかし、単一パルスで動作するMCTを駆動する場合には整流回路が不要であるため、図7のように半導体スイッチ駆動部30の回路が単純化されてシステムの小型/軽量化が可能であるという大きな長所がある。
【0029】
図8は、本発明のメインスイッチ13と半導体プリチャージャーモジュール15の動作タイミングの例示を示している。プリチャージ半導体スイッチ35に制御信号が印加される(a)と、半導体スイッチが数百msecの間動作を持続する(b)。この時、半導体スイッチ35のターンオンとターンオフは半導体スイッチ駆動部30からの制御信号の単一パルス39、41により制御される。プリチャージ半導体、すなわち、MCT35がターンオフされる直前に(ほぼ同時に)制御器23からメインスイッチ制御信号がメインスイッチ13に印加され(c)、以後メインスイッチ13に電流が流れてバッテリーシステムの動作が維持される(d)。このタイミングは以下の図9を参照して補充説明する。
【0030】
図9は、本発明の半導体プリチャージャーモジュールの制御方法を示している。システムが開始(110)されると(例えば、自動車の始動ON)、半導体プリチャージャーモジュールの故障診断のために電流をセンシングする(120)。もしプリチャージ半導体やプリチャージ抵抗が短絡されているのであれば電流が流れるはずであるので(故障)、電流が流れないことを先に確認した(120)後、プリチャージ半導体スイッチをターンオンさせる(130)。半導体プリチャージャーモジュールがターンオンされた後に、半導体プリチャージャーモジュールに電流が流れるかを、再び電流をセンシングしてその故障の有無を確認する(140)。半導体プリチャージャーモジュールが故障でないことを確認した後に、電圧を測定してバッテリーとキャパシタ間の両端の電圧差がシステムの仕様を満足すれば(150)、その時、メインスイッチをターンオン(160)させた後、プリチャージスイッチ、すなわち、半導体プリチャージャーモジュールをターンオフ(170)させる。
【0031】
前述した制御器23および図8図9に示した制御プロセスは、コンピュータおよびソフトウェアプログラムで具現することができる。図10は、このために活用できるコンピュータシステムのブロック図を例示する。
【0032】
図10に示したコンピュータシステム(computer system)は、共通バス(common bus)を通じて通信するプロセッサ(processor)、メモリ(memory)、入力インターフェース装置(input interface device)、出力インターフェース装置(output interface device)、および保存装置(storage device)のうち少なくとも一つを含むことができる。コンピュータシステムはまた、ネットワークに連結される通信装置(communication device)を含むことができる。プロセッサはCPU(central processing unit)であるか、またはメモリまたは保存装置に保存された命令を遂行する半導体装置であり得る。通信装置は有線信号または無線信号を送信または受信することができる。メモリおよび保存装置は多様な形態の揮発性または不揮発性保存媒体を含むことができる。そして、メモリはROM(read only memory)およびRAM(random access memory)を含むことができる。メモリはプロセッサの内部または外部に位置することができ、公知の多様な手段を通じてプロセッサと連結され得る。
【0033】
したがって、本発明はコンピュータに具現された方法で具現されるか、コンピュータ実行可能命令が保存された非一時的コンピュータ読み取り可能媒体で具現され得る。一実施例において、プロセッサによって実行される時、コンピュータ読み取り可能命令は本明細書に記載された少なくとも一つの様態に係る方法を遂行できる。
【0034】
また、本発明に係る方法は多様なコンピュータ手段を通じて遂行され得るプログラム命令の形態で具現され、コンピュータ読み取り可能媒体に記録され得る。前記コンピュータ読み取り可能媒体はプログラム命令、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて含むことができる。前記コンピュータ読み取り可能媒体に記録されるプログラム命令は、本発明の実施例のために特別に設計されて構成されたものであるか、コンピュータソフトウェア分野の通常の技術者に公知になっている使用可能なものであってもよい。コンピュータ読み取り可能記録媒体はプログラム命令を保存し遂行するように構成されたハードウェア装置を含むことができる。例えば、コンピュータ読み取り可能記録媒体はハードディスク、フロッピーディスクおよび磁気テープのような磁気媒体(magnetic media)、CD-ROM、DVDのような光気録媒体(optical media)、フロプティカルディスク(floptical disk)のような磁気光媒体(magneto-optical media)、ロム(ROM)、ラム(RAM)、フラッシュメモリなどであり得る。プログラム命令はコンパイラによって作られるような機械語コードだけでなく、インタープリタ等を通じてコンピュータによって実行され得る高級言語コードを含むことができる。
【0035】
以上、本発明の思想を具体的に実現した実施例を説明した。しかし、本発明の技術的範囲は以上で説明した実施例および図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の合理的解釈によって定められるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10