(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】ルキソリチニブの徐放性投薬形態
(51)【国際特許分類】
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A61P 43/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
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A61K9/48
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A61K47/12
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A61P37/08
A61P43/00 105
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023017676
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2021069078の分割
【原出願日】2013-11-14
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2012-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515311132
【氏名又は名称】インサイト・ホールディングス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE HOLDINGS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ニー
(72)【発明者】
【氏名】バブニシュ・パリク
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナスワミー・イェレスワラム
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・エリクソン-バイタネン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ブイ・ウィリアムス
【審査官】関 景輔
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
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A61P 37/06
A61P 37/08
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルキソリチニブ
リン酸塩と、前記ルキソリチニブリン酸塩の徐放のための手段を含む、
経口徐放性投薬形態であって、
前記ルキソリチニブ
リン酸塩は、遊離塩基に基づき
、10
~60mgの量で前記投薬形態中に存在
し、
前記投薬形態は、経口投与に適しており、
ヒトへ前記投薬形態の投与は、10以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C
12h
)に対する平均ピーク血漿濃度(C
max
)の比をもたらし、そして
ヒトへの前記投薬形態の投与は、3.5時間~11時間の平均半減期(t
1/2
)をもたらす、
経口徐放性投薬形態。
【請求項2】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、10mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項3】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、12.5mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項4】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、20mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項5】
前記ルキソリチニブ
リン酸塩は、遊離塩基に基づき
、25mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の
経口徐放性投薬形態。
【請求項6】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、30mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項7】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、37.5mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項8】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、40mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項9】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、50mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項10】
前記ルキソリチニブリン酸塩は、遊離塩基に基づき、60mgの量で前記投薬形態中に存在する、請求項1に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項11】
ヒトへの前記投薬形態の投与は、1~10のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C
12h)に対する平均ピーク血漿濃度(C
max)の比をもたらす、請求項1~
10のいずれか1項に記載の
経口徐放性投薬形態。
【請求項12】
ヒトへの前記投薬形態の投与は、
2~7のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C
12h)に対する平均ピーク血漿濃度(C
max)の比をもたらす、請求項1~
11のいずれか1項に記載の
経口徐放性投薬形態。
【請求項13】
ヒトへの前記投薬形態の投与は、約4時間~約8時間の平均半減期(t
1/2)をもたらす、請求項1~
12のいずれか1項に記載の
経口徐放性投薬形態。
【請求項14】
前記投薬形態は、ヒトにおいて、同量のルキソリチニブリン酸塩を含む速放性製剤と比較して、65%~110%のAUCに基づく平均相対バイオアベイラビリティを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項15】
錠
剤の形態である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の
経口徐放性投薬形態。
【請求項16】
カプセルの形態である、請求項1~14のいずれか1項に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項17】
ヒトへの前記投薬形態の投与は、1.5時間~5時間のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(T
max
)をもたらす、請求項1~16のいずれか1項に記載の経口徐放性投薬形態。
【請求項18】
骨髄線維症、真性赤血球増加症、および移植片対宿主病から選択される疾患の治療を必要としている患者において、それを行う
ための医薬であって、
請求項1~
17のいずれか1項に記載の
経口徐放性投薬形態を
含み、
前記患者に前記投薬形態
が1日1回投与される、
医薬。
【請求項19】
前記疾患は、骨髄線維症である、請求項18に記載の医薬。
【請求項20】
前記
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)、
または本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF
)である、請求項
19に記載の
医薬。
【請求項21】
前記疾患は、真性赤血球増加症である、請求項18に記載の医薬。
【請求項22】
前記疾患は、移植片対宿主病である、請求項18に記載の医薬。
【請求項23】
ヒト患者への前記投薬形態の投与は、速放性投与計画と比較して、血小板減少症および貧血の低減をもたらす、請求項18に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄増殖性疾患などのヤヌスキナーゼ関連疾患の治療に有用である、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩の徐放性製剤および投薬形態に関する。
【背景技術】
【0002】
ルキソリチニブ((3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル)は、初のFDAに許可されたヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であり、骨髄線維症の治療に現在許可されている唯一の薬物である。Mascarenhas,J.らのClin Cancer Res.2012 Jun 1;18(11):3008-14.Epub 2012 Apr 2(非特許文献1)。化合物は、骨髄線維症患者において効果的に脾臓体積を低減し、総症状スコアを改善することが、臨床において示されている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Verstovsek,S.らの“A double-blind,placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1:366(9):799-807(非特許文献2)を参照されたく、それは、骨髄線維症に対するルキソリチニブの第3相臨床試験(COMFORT-I試験)の結果を報告している。また、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、COMFORT-II試験の第3相臨床試験結果を報告している、Harrison,C.らの“JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1;366(9):787-98(非特許文献3)も参照されたい。
【0003】
これまで、ルキソリチニブに関する全ての公開されたヒト臨床データは、速放性製剤の投与に関する。しかしながら、ルキソリチニブは、迅速な経口吸収および約3時間の短い半減期のBCSクラスI分子である。ShiらのJ.Clin.Pharmacol.2012 Jun;52(6):809-18.Epub 2011 May 20(非特許文献4)を参照されたい。これらの特性は、最適治療のために複数回の1日用量をもたらし、患者コンプライアンスに関する問題および望ましくない副作用に潜在的に寄与する、ヒト対象中の最高/最低血漿濃度比をもたらす。
【0004】
ルキソリチニブ療法は多くの場合、血小板減少症(低い血小板数)および貧血(低いヘモグロビン)の有害事象に関連する。血小板減少症は用量依存的であり、用量制限毒性効果と見なされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mascarenhas,J.らのClin Cancer Res.2012 Jun 1;18(11):3008-14.Epub 2012 Apr 2
【文献】Verstovsek,S.らの“A double-blind,placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1:366(9):799-807
【文献】Harrison,C.らの“JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1;366(9):787-98
【文献】ShiらのJ.Clin.Pharmacol.2012 Jun;52(6):809-18.Epub 2011 May 20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、患者における有害な副作用を軽減するだけではなく、なおも治療効果を得、さらに治療効果を得るために必要とされる投与回数を低減することなどによって、薬物の投与を促進する、ルキソリチニブの新しく改善された製剤の必要性がある。本明細書に提供される徐放性製剤は、これらおよび他の必要性を満たすのに役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩である少なくとも1つの活性成分を含む、徐放性投薬形態に関し、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、遊離塩基に基づき、約10~約60mgの量で投薬形態中に存在する。
【0008】
本発明はさらに、JAK活性に関連する疾患の治療を必要としている患者において、それを行う方法に関し、上記の患者に本発明の徐放性投薬形態を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】絶食した健康なヒト対象における、単回投与の25mg速放性または25mg徐放性製剤のいずれかの投与後の、ルキソリチニブの血漿濃度を比較するグラフである。
【
図2】COMFORT-I速放性製剤試験および徐放性試験における脾臓体積応答者を比較するグラフである。
【
図3】COMFORT-I速放性製剤試験および徐放性試験における総症状スコアを比較するグラフである。
【
図4】25mg速放性または25mg徐放性製剤が投与されたMF患者における、ルキソリチニブ定常状態血漿濃度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
徐放性投薬形態
本発明はとりわけ、活性成分として、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む経口徐放性投薬形態を提供する。投薬形態は、遊離塩基に基づき、約10~約60mg、約10~約40mg、約20~約40mg、または約20~約30mgの量でルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含有することができる。いくつかの実施形態では、投薬形態は、遊離塩基に基づき、約10mg、約12.5mg、約20mg、約25mg、約30mg、約37.5mg、約40mg、約50mg、または約60mgを含有する。いくつかの実施形態では、投薬形態は、遊離塩基に基づき、約25mgのルキソリチニブを含有する。語句「遊離塩基に基づき」は、投薬形態中のルキソリチニブまたはその塩の量が、実際の活性成分が遊離塩基とは異なる分子量を有するルキソリチニブの塩である場合でさえ、ルキソリチニブ遊離塩基の分子量のみに基づき測定されることを示す。例えば、ルキソリチニブリン酸塩の遊離塩基への換算係数は、0.7575である。
【0011】
ルキソリチニブおよびその薬学的に許容される塩の構造、調製、および特徴付けは、例えば、米国特許第7,598,257号および米国特許出願公開第2008/0312259号に記載され、それらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、活性成分は、マレイン酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩など、ルキソリチニブの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、活性成分は、ルキソリチニブリン酸塩(すなわち、ルキソリチニブのリン酸塩)である。
【0012】
本発明の投薬形態は、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩の徐放性製剤を含む。本明細書で使用される場合、「徐放性」は、当該技術分野において概して理解されるように使用され、経口投与後に患者中に活性成分をゆっくり放出し、約8~約24時間またはそれ以上など、比較的長い期間にわたって活性成分の本質的に一定の治療上有効な血漿中濃度を維持するように設計される、製剤を指す。
【0013】
本発明の投薬形態は、徐放性マトリクス形成剤を含む。例示的な徐放性マトリクス形成剤としては、高粘度ポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、ヒプロメロース)などのセルロースエーテルが挙げられる。本発明の徐放性投薬形態は、例えば、約10~約30重量%、約15~約25重量%、または約18~約24重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(複数を含む)を含むことができる。いくつかの実施形態では、製剤は、約20重量%の1つ以上のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。さらなる実施形態では、製剤は、約22重量%の1つ以上のヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する。例示的なヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、Methocel K15M、Methocel K4M、およびMethocel K100LVが挙げられる。
【0014】
本発明の徐放性投薬形態はさらに、不活性成分として、1つ以上の充填剤、流動促進剤、崩壊剤、結合剤、または潤滑剤を含むことができる。充填剤は、0~約85重量%の量で製剤中に存在することができる。いくつかの実施形態では、製剤は、約50~約80重量%、約55~約75重量%、または約60~約70重量%の充填剤を有する。充填剤の限定されない例としては、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、スターチ1500、および無水ラクトース、またはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、充填剤は、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、または両方を含む。
【0015】
潤滑剤は、0~約5重量%の量で本発明の投薬形態中に存在することができる。潤滑剤の限定されない例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸(ステアリン)、硬化油、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、およびベヘン酸グリセリルが挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、または両方を含む。
【0016】
流動促進剤は、0~約5重量%の量で本発明の投薬形態中に存在することができる。流動促進剤の限定されない例としては、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、およびコーンスターチが挙げられる。いくつかの実施形態では、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素である。
【0017】
崩壊剤は、0~約10重量%の量で本発明の投薬形態中に存在することができる。崩壊剤の限定されない例としては、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、スターチ、セルロース、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。クロスカルメロースナトリウムは、好ましい崩壊剤である。
【0018】
フィルムコーティング剤は、0~約5重量%の量で存在することができる。フィルムコーティング剤の限定されない例示的な例としては、いくつかの市販の完全なコーティング系中に、二酸化チタン、タルク、および任意に着色剤を有する、ヒプロメロースまたはポリビニルアルコール系コーティングが挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、全て重量で、約12.2%のルキソリチニブリン酸塩、約20%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約64.3%の充填剤、約2.5%の潤滑剤、および約1%の流動促進剤を含む、徐放性製剤を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、全て重量で、約12.2%のルキソリチニブリン酸塩、約22%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約62.3%の充填剤、約2.5%の潤滑剤、および約1%の流動促進剤を含む、徐放性製剤を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、以下に記載される徐放性製剤を含む。
【表1】
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、以下に記載される徐放性製剤を含む。
【表2】
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、以下に記載される徐放性製剤を含む。
【表3】
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「投薬形態」は、患者に投与される本発明の徐放性製剤の物理的に個別の単位を指すよう意図される。例示的な投薬形態は、本明細書に記載される徐放性製剤のいずれかを含有する、錠剤、カプレット、カプセルなどを含む。投薬形態はさらに、薬学的に許容されるコーティング、顔料、または染料を含むことができる。
【0025】
本発明の投薬形態は、速放性製剤のものとは異なる特定の薬物動態パラメータを特徴とする、いったん投与されるとルキソリチニブの比較的遅い放出をもたらす、徐放性製剤を含有する。本発明の徐放性投薬形態は、速放性製剤と関連する薬物血漿濃度の潜在的に有害な急上昇を最小限に抑えることができ、薬物の連続的、一定、および治療上有効な血漿中濃度を提供するのに役立つことができる。本発明の投薬形態は、例えば、1日1回、治療される疾患に対する治療効果のために必要に応じて、ヒト患者に投与され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の投薬形態は、絶食患者に投与される。本明細書で使用される場合、「絶食した」は、ヒト患者または対象に関して、患者または対象が投与前少なくとも3時間にわたって食物または飲料(水を除く)を摂取していないことを意味する。いくつかの実施形態では、患者は、投与前少なくとも10時間にわたって絶食している。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明の投薬形態は、非絶食ヒト患者または対象に投与される。ルキソリチニブのバイオアベイラビリティは高く(例えば、約70~80%)、速放性投薬形態において食物の影響は認められていない。したがって、徐放性投薬形態として投与されるルキソリチニブの薬物動態は、絶食および非絶食患者において有意に異ならないと考えられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約700nM以下のルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0029】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約600nM以下のルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約500nM以下のルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0031】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約400nM以下のルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約200~約700nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約200~約600nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約300~約500nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0035】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約300~約400nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす。
【0036】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約1.5時間以上のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす。
【0037】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約1.5時間~約5時間のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約2時間~約4時間のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす。
【0039】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約10以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約6以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約5以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0042】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約4以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0043】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約1~10のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約2~7のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約3.5時間~約11時間の平均半減期(t1/2)をもたらす。
【0046】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約4時間~約8時間の平均半減期(t1/2)をもたらす。
【0047】
いくつかの実施形態では、ヒトへの単回投与の本発明の徐放性投薬形態の投与は、少なくとも約3000nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす。
【0048】
いくつかの実施形態では、ヒトへの単回投与の本発明の徐放性投薬形態の投与は、少なくとも約3500nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす。
【0049】
いくつかの実施形態では、ヒトへの単回投与の本発明の徐放性投薬形態の投与は、約3000~約4000nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす。
【0050】
いくつかの実施形態では、ヒトへの単回投与の本発明の徐放性投薬形態の投与は、約3100~約3800nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の徐放性投薬形態は、患者において、同量のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む速放性製剤と比較して、約65%~約110%または約75%~約95%のAUCに基づく平均相対バイオアベイラビリティを有する。AUCは、例えば、AUC0-∞(例えば、単回投与に対して)またはAUC0-tであってもよく、tは指定された時間である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「平均」は、薬物動態値の前に置かれるとき(例えば、平均Cmax)、特別の定めのない限り、患者の集団から取られる薬物動態値の算術平均値を表す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「Cmax」は、最大の観察された血漿濃度を意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「C12h」は、投与から12時間の時点で測定された血漿濃度を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「Tmax」は、最大血漿濃度が観察される時点を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「T1/2」は、血漿濃度が観察された最大値の半分である時点を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「AUC」は、総バイオアベイラビリティの基準である、血漿濃度-時間曲線下面積を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「AUC0-∞」は、無限大時間まで外挿した血漿濃度-時間曲線下面積を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「AUC0-t」は、時間0から定量化可能な血漿濃度を有する最後の時点まで、通常、約12~36時間の血漿濃度-時間曲線下面積を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「AUC0-τ」は、時間0から次の投与時間までの血漿濃度-時間曲線下面積を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「Cl/F」は、経口クリアランスを指す。
【0062】
本発明の徐放性投薬形態は、速放性投薬形態よりもある特定の利点を有する。本発明の徐放性投薬形態によって提供されるルキソリチニブの一定の治療上有効な血漿中濃度の維持は、速放性形態に対する2回以上とは対照的に、1日1回のみの投与など、低減された投与を可能にする。低減された投与は、患者の治療計画における患者コンプライアンスに役立つことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18、または少なくとも約24時間にわたって、ルキソリチニブの治療上有効な血漿中濃度をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明の徐放性投薬形態は、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約18時間にわたって、約75~約500nMの間の血漿中濃度を維持する。いくつかの実施形態では、本発明の徐放性投薬形態は、少なくとも約6時間または少なくとも約8時間にわたって、約100~約400nMの間の血漿中濃度を維持する。
【0064】
徐放性投薬形態(例えば、遊離塩基に基づき25mgのルキソリチニブリン酸塩を含有する)のさらなる利点は、速放性投与計画、例えば、1日2回、15mgまたは20mgと同程度の治療効果を維持しながらの、血小板減少症および貧血に関連する望ましくない副作用の低減を含む。ルキソリチニブの徐放性製剤が治療効果を維持すること、および血小板減少症または減少したヘモグロビンレベルに関連した望ましくない副作用を有意に低減することの両方が可能であることは、予測可能ではなかった。徐放性および速放性投与の両方に対する骨髄線維症患者における有効性および副作用に関連する臨床データが、実施例において比較される。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも16週間にわたる1日1回のヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約100×109/L以下、約80×109/L以下、約60×109/L以下、または約40×109/L以下の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす。
【0066】
いくつかの実施形態では、少なくとも16週間にわたる1日1回のヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約0×109/L~約100×109/Lの間、約30×109/L~約80×109/Lの間、または約50×109/L~約70×109/Lの間の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす。
【0067】
いくつかの実施形態では、少なくとも16週間にわたる1日1回のヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約15g/L以下、約10g/L以下、約8g/L以下、または約6g/L以下の平均ベースラインヘモグロビン(Hgb)の平均減少をもたらす。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも16週間にわたる1日1回のヒトへの本発明の徐放性投薬形態の投与は、約0~約15g/L、約5~約15g/L、約2~約12g/L、または約5~約12g/Lの平均ベースラインヘモグロビン(Hgb)の平均減少をもたらす。
【0069】
いくつかの実施形態では、血小板数およびヘモグロビンレベルは、治療期間中に輸血を受けていない患者において測定される。
【0070】
平均ベースライン血小板数および平均ベースラインヘモグロビンレベルは、典型的には治療開始前に測定される。
【0071】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載される本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される(実施形態があたかも多重従属形式で書かれているかのように組み合わされるよう意図される一方で)。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の種々の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的組み合わせで提供され得る。
【0072】
方法
本発明の別の態様は、JAK関連疾患または障害の治療を必要としている個人に本発明の徐放性投薬形態を投与することによって、個人(例えば、患者)においてそれを行う方法に関する。JAK関連疾患は、過剰発現および/または異常活動レベルを含む、JAKの発現または活性に直接または間接的につながりがある任意の疾患、障害、または状態を含み得る。JAK関連疾患はまた、JAK活性を調節することによって予防、改善、または治癒され得る任意の疾患、障害、または状態を含み得る。
【0073】
JAK関連疾患の例としては、例えば、臓器移植拒否反応(例えば、同種移植拒絶反応および移植片対宿主病)を含む、免疫系に関する疾患が挙げられる。
【0074】
JAK関連疾患のさらなる例としては、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、若年性関節炎、乾癬性関節炎、1型糖尿病、狼瘡、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、自己免疫甲状腺障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの自己免疫疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、尋常性天疱瘡(PV)または水疱性類天疱瘡(BP)などの自己免疫性水疱性皮膚障害である。
【0075】
JAK関連疾患のさらなる例としては、喘息、食物アレルギー、湿疹性皮膚炎(eszematous dermatitis)、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎(アトピー性湿疹(atropic eczema))、および鼻炎などのアレルギー状態が挙げられる。JAK関連疾患のさらなる例としては、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV 1、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、およびヒト・パピローマウイルス(HPV)などのウイルス性疾患が挙げられる。
【0076】
JAK関連疾患のさらなる例としては、軟骨代謝回転と関連する疾患、例えば、痛風性関節炎、敗血症性または感染性関節炎、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、疼痛性ジストロフィー、ティーツェ症候群、肋骨関節症(athropathy)、地方病性変形性骨関節炎、ムセレニ病、ハンディゴデュ病、線維筋痛に起因する変性、全身性エリテマトーデス、強皮症、または強直性脊椎炎が挙げられる。
【0077】
JAK関連疾患のさらなる例としては、遺伝性軟骨融解(hereditary chrondrolysis)、軟骨異形成(chrondrodysplasia)、ならびに偽軟骨異形成(pseudochrondrodysplasia)(例えば、小耳症、無耳症(enotia)、および骨幹端軟骨形成不全(metaphyseal chrondrodysplasia))を含む、先天性軟骨奇形が挙げられる。
【0078】
JAK関連疾患または状態のさらなる例としては、乾癬(例えば、尋常性乾癬)、アトピー性皮膚炎、皮膚発疹、皮膚の刺激、皮膚感作(例えば、接触皮膚炎またはアレルギー性接触皮膚炎)などの皮膚障害が挙げられる。例えば、局所的に適用されるときのいくつかの薬剤を含むある特定の物質は、皮膚感作を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態では、望ましくない感作を引き起こす薬剤との本発明の少なくとも1つのJAK阻害剤の同時投与または連続投与は、そのような望ましくない感作または皮膚炎の治療に有用であり得る。いくつかの実施形態では、皮膚障害は、本発明の少なくとも1つのJAK阻害剤の局所投与によって治療される。
【0079】
さらなる実施形態では、JAK関連疾患は、固形腫瘍(例えば、前立腺癌、腎癌、肝癌、膵癌、胃癌、乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膠芽腫、カポジ肉腫、キャッスルマン病、子宮平滑筋肉腫、黒色腫など)、血液癌(例えば、リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、または多発性骨髄腫などの白血病)、ならびに皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)および皮膚B細胞性リンパ腫などの皮膚癌を特徴とする癌を含む、癌である。例示的なCTCLとしては、セザリー症候群および菌状息肉腫が挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/637,545号で報告されるような、他のJAK阻害剤と組み合わせた、JAK阻害剤は、炎症関連癌を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、癌は、炎症性腸疾患と関連している。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、クローン病である。いくつかの実施形態では、炎症関連癌は、大腸炎関連癌である。いくつかの実施形態では、炎症関連癌は、結腸癌または大腸癌である。いくつかの実施形態では、癌は、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、腺癌、小腸癌、または直腸癌である。
【0081】
JAK関連疾患としてはさらに、偽キナーゼドメインにおける少なくとも1つの突然変異を有するものなどのJAK2突然変異体(例えば、JAK2V617F);偽キナーゼドメイン以外の少なくとも1つの突然変異を有する、JAK2突然変異体;JAK1突然変異体;JAK3突然変異体;エリスロポエチン受容体(EPOR)突然変異体;またはCRLF2の無秩序な発現を特徴とするものが挙げられ得る。
【0082】
JAK関連疾患としてはさらに、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、好酸球増加症候群(HES)、全身性肥満細胞疾患(SMCD)などの骨髄増殖性疾患(MPD)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、骨髄増殖性疾患は、骨髄線維症(例えば、原発性骨髄線維症(PMF)または真性赤血球増加症/本態性血小板血症後骨髄線維症(PV/ET後MF))である。いくつかの実施形態では、骨髄増殖性疾患は、本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)である。いくつかの実施形態では、骨髄増殖性疾患は、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)である。
【0083】
本発明はさらに、本発明の化合物を含有する局所製剤の投与によって、乾癬または他の皮膚障害を治療する方法を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される徐放性製剤および投薬形態は、肺動脈高血圧を治療するために使用され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される徐放性製剤および投薬形態は、肥満細胞活性化症候群を治療するために使用され得る。
【0086】
本発明はさらに、本発明の徐放性投薬形態の投与によって他の製剤の皮膚副作用を治療する方法を提供する。例えば、多数の医薬品は、座瘡様発疹または関連皮膚炎として現れる可能性がある、望ましくないアレルギー反応をもたらす。そのような望ましくない副作用を有する例示的な医薬品としては、ゲフィチニブ、セツキシマブ、エルロチニブなどの抗癌剤が挙げられる。本発明の投薬形態は、望ましくない皮膚副作用を有する医薬品と組み合わせて(例えば、同時または連続的に)投与され得る。
【0087】
さらなるJAK関連疾患としては、炎症および炎症性疾患が挙げられる。例示的な炎症性疾患としては、サルコイドーシス、炎症性眼疾患(例えば、虹彩炎、ブドウ膜炎、強膜炎、結膜炎、または関連疾患)、炎症性気道疾患(例えば、鼻炎もしくは副鼻腔炎などの鼻および副鼻腔を含む上気道、または気管支炎、慢性閉塞性肺疾患などを含む下気道)、心筋炎などの炎症性筋疾患、ならびに他の炎症性疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、炎症性眼疾患は、眼瞼炎である。
【0088】
本明細書の徐放性投薬形態はさらに、脳卒中または心停止などの炎症性虚血性事象に関連した虚血再かん流損傷または疾患もしくは状態を治療するために使用され得る。本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、エンドトキシン駆動性病状(例えば、バイパス術後の合併症または慢性心不全に寄与する慢性エンドトキシン状態)を治療するために使用され得る。本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、癌に起因または関連するものなどの拒食症、悪液質、または疲労を治療するために使用され得る。本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、再狭窄、硬化性皮膚炎(sclerodermitis)、または線維症を治療するために使用され得る。本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、例えば、糖尿病性網膜症、癌、または神経変性など、低酸素またはアストログリオーシスと関連する状態を治療するために使用され得る。例えば、両方とも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Dudley,A.C.らのBiochem.J.2005,390(Pt 2):427-36およびSriram,K.らのJ.Biol.Chem.2004,279(19):19936-47.Epub 2004 Mar 2を参照されたい。本明細書に記載される徐放性投薬形態は、アルツハイマー病を治療するために使用され得る。
【0089】
本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、全身性炎症反応症候群(SIRS)および敗血性ショックなどの他の炎症性疾患を治療するために使用され得る。
【0090】
本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、例えば、良性前立腺肥大症または良性前立腺過形成による痛風および前立腺の大きさの増大を治療するために使用され得る。
【0091】
さらなるJAK関連疾患としては、骨粗鬆症、変形性関節炎などの骨吸収性疾患が挙げられる。骨吸収はまた、ホルモンの不均衡および/もしくはホルモン療法、自己免疫疾患(例えば、骨サルコイドーシス)、または癌(例えば、骨髄腫)などの他の状態と関連し得る。JAK阻害剤による骨吸収の減少は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される徐放性投薬形態はさらに、ドライアイ障害を治療するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「ドライアイ障害」は、ドライアイワークショップ(DEWS)の最近の公式報告で要約される病状を包含するよう意図され、それは、ドライアイを「眼表面の損傷の可能性がある不快感、視覚障害、および涙液膜不安定の症状をもたらす、涙および眼表面の多因子疾患。これは、涙液膜の浸透圧の増大および眼表面の炎症を伴う。」と定義する。Lemp,“The Definition and Classification of Dry Eye Disease:Report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop”,The Ocular Surface,5(2),75-92 April 2007(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ドライアイ障害は、涙液欠乏性ドライアイ(ADDE)もしくは蒸発亢進型ドライアイ障害、またはこれらの適切な組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、ドライアイ障害は、シェーグレン症候群ドライアイ(SSDE)である。いくつかの実施形態では、ドライアイ障害は、非シェーグレン症候群ドライアイ(NSSDE)である。
【0093】
さらなる態様では、本発明は、結膜炎、ブドウ膜炎(慢性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(chorioditis,)、網膜炎、毛様体炎、強膜炎(sclieritis)、上強膜炎、または虹彩炎を治療する;角膜移植、LASIK(レーザー角膜切削形成術)、レーザー屈折矯正角膜切除術、またはLASEK(レーザー上皮細胞屈折矯正術)に関連する炎症または疼痛を治療する;角膜移植、LASIK、レーザー屈折矯正角膜切除術、またはLASEKに関連する視力低下を阻止する;または移植を必要としている患者における移植拒絶反応を阻止する方法を提供し、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0094】
加えて、本発明の徐放性投薬形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/637,545号に報告されるような他のJAK阻害剤と任意に組み合わせて、インフルエンザおよび重症急性呼吸器症候群などのウイルス感染と関連した呼吸器疾患または不全を治療するために使用され得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「個人」、「対象」、または「患者」は、本発明の投薬形態が投与されるときに絶食していても、または絶食していなくてもよい、ヒトを指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、および他の問題のある合併症なしで人との接触に好適な正しい医学的判断の範囲内で、妥当なリスク対効果比に見合った化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は、(1)疾患を予防すること、例えば、疾患、状態、または障害にかかりやすい可能性があるが、疾患の病理または兆候をまだ経験していない、または示していない個人において疾患、状態、または障害を予防すること、(2)疾患を阻止すること、例えば、疾患、状態、または障害の病理または兆候を経験している、または示している個人において疾患、状態、または障害を阻止すること(すなわち、病理および/または兆候のさらなる発達を停止させること)、ならびに(3)疾患を改善すること、例えば、疾患の重症度を低減することなど、疾患、状態、または障害の病理または兆候を経験している、または示している個人において疾患、状態、または障害を改善すること(すなわち、病理および/または兆候を回復させること)のうちの1つ以上を指す。
【0098】
併用療法
例えば、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、免疫抑制剤、ならびにBcr-Abl、Flt-3、RAF、およびFAKキナーゼ阻害剤、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2006/056399号に記載されるもの、または他の薬剤などの1つ以上のさらなる医薬品が、JAK関連疾患、障害、または状態の治療のために、本明細書に記載される徐放性投薬形態と組み合わせて使用され得る。1つ以上のさらなる医薬品が、同時または連続的に患者に投与され得る。
【0099】
例示的な化学療法剤としては、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、サリドマイド、レブリミド、およびDNA損傷剤、例えば、メルファラン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、エトポシド、カルムスチンなどが挙げられる。
【0100】
例示的なステロイドとしては、デキサメタゾンまたはプレドニゾンなどのコリチコステロイド(coriticosteroid)が挙げられる。
【0101】
例示的なBcr-Abl阻害剤としては、全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,521,184号、国際公開第04/005281号、および米国特許出願第60/578,491号に開示される属および種の化合物およびその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0102】
例示的な好適なFlt-3阻害剤としては、全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第03/037347号、同第03/099771号、および同第04/046120号に開示される、化合物およびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0103】
例示的な好適なRAF阻害剤としては、両方とも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第00/09495号および同第05/028444号に開示される、化合物およびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0104】
例示的な好適なFAK阻害剤としては、全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第04/080980号、同第04/056786号、同第03/024967号、同第01/064655号、同第00/053595号、および同第01/014402号に開示される、化合物およびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物のうちの1つ以上は、特にイマチニブまたは他のキナーゼ阻害剤に耐性を示す患者を治療するために、イマチニブを含む1つ以上の他のキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の1つ以上のJAK阻害剤は、多発性骨髄腫などの癌の治療において化学療法剤と組み合わせて使用され得、その毒作用の憎悪なしで、化学療法剤単独への反応と比較して、治療反応を改善し得る。多発性骨髄腫の治療で使用されるさらなる医薬品の例としては、例えば、メルファラン、メルファラン+プレドニゾン[MP]、ドキソルビシン、デキサメタゾン、およびベルケイド(ボルテゾミブ)が挙げられ得るが、これらに限定されない。多発性骨髄腫の治療で使用されるさらなる追加の薬剤としては、Bcr-Abl、Flt-3、RAF、およびFAKキナーゼ阻害剤が挙げられる。相加または相乗効果は、本発明のJAK阻害剤を追加の薬剤と組み合わせることの望ましい結果である。さらに、多発性骨髄腫細胞のデキサメタゾンなどの薬剤への耐性は、本発明のJAK阻害剤による治療で回復可能であり得る。薬剤は、単独または連続投薬形態で本化合物と組み合わされてもよく、または薬剤は、別々の投薬形態として同時または連続的に投与され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンなどのコルチコステロイドは、少なくとも1つのJAK阻害剤と組み合わせて患者に投与され、ここで、デキサメタゾンは、連続的とは対照的に断続的に投与される。
【0108】
いくつかのさらなる実施形態では、徐放性投薬形態の他の治療薬との組み合わせは、骨髄移植または幹細胞移植の前、最中、および/または後に患者に投与され得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、フルオシノロンアセトニド(Retisert(登録商標))またはリメキソロン(AL-2178、Vexol、Alcon)である。
【0110】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、シクロスポリン(Restasis(登録商標))である。
【0111】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、コルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロンである。
【0112】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、Dehydrex(商標)(Holles Labs)、Civamide(Opko)、ヒアルロン酸ナトリウム(Vismed、Lantibio/TRB Chemedia)、シクロスポリン(ST-603、Sirion Therapeutics)、ARG101(T)(テストステロン、Argentis)、AGR1012(P)(Argentis)、エカベトナトリウム(Senju-Ista)、ゲファルナート(Santen)、15-(s)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15(S)-HETE)、セビレミン(cevilemine)、ドキシサイクリン(ALTY-0501、Alacrity)、ミノサイクリン、iDestrin(商標)(NP50301、Nascent Pharmaceuticals)、シクロスポリンA(Nova22007、Novagali)、オキシテトラサイクリン(Duramycin、MOLI1901、Lantibio)、CF101(2S,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[6-[(3-ヨードフェニル)メチルアミノ]プリン-9-イル]-N-メチル-オキソラン-2-カルバミル、Can-Fite Biopharma)、ボクロスポリン(LX212またはLX214、Lux Biosciences)、ARG103(Agentis)、RX-10045(合成レゾルビン類似体、Resolvyx)、DYN15(Dyanmis Therapeutics)、リボグリタゾン(DE011、Daiichi Sanko)、TB4(RegeneRx)、OPH-01(Ophtalmis Monaco)、PCS101(Pericor Science)、REV1-31(Evolutec)、Lacritin(Senju)、レバミピド(Otsuka-Novartis)、OT-551(Othera)、PAI-2(University of PennsylvaniaおよびTemple University)、ピロカルピン、タクロリムス、ピメクロリムス(AMS981、Novartis)、エタボン酸ロテプレドノール、リツキシマブ、ジクアホソル四ナトリウム(INS365、Inspire)、KLS-0611(Kissei Pharmaceuticals)、デヒドロエピアンドロステロン、アナキンラ、エファリズマブ、ミコフェノール酸ナトリウム、エタネルセプト(Embrel(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、NGX267(TorreyPines Therapeutics)、アクテムラ、ゲムシタビン、オキサリプラチン、L-アスパラギナーゼ、またはサリドマイドから選択される。
【0113】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、血管新生阻害剤、コリン作動薬、TRP-1受容体モジュレータ、カルシウムチャネル遮断薬、ムチン分泌促進剤、MUC1刺激剤、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、P2Y2受容体作動薬、ムスカリン受容体作動薬、mTOR阻害剤、別のJAK阻害剤、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、Flt-3キナーゼ阻害剤、RAFキナーゼ阻害剤、およびFAKキナーゼ阻害剤、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2006/056399号に記載されるものなどである。いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、テトラサイクリン誘導体(例えば、ミノサイクリンまたはドキシクリン(doxycline))である。いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、FKBP12に結合する。
【0114】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、アルキル化剤もしくはDNA架橋剤;代謝拮抗剤/脱メチル化剤(例えば、5-フルオロウラシル(flurouracil)、カペシタビン、もしくはアザシチジン);抗ホルモン療法(例えば、ホルモン受容体拮抗薬、SERM、もしくはアロマターゼ(aromotase)阻害剤);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンもしくはパクリタキセル);トポイソメラーゼ(IもしくはII)阻害剤(例えば、ミトキサントロンおよびイリノテカン);アポトーシス誘導物質(例えば、ABT-737);核酸療法(例えば、アンチセンスもしくはRNAi);核内受容体リガンド(例えば、作動薬および/または拮抗薬:オールトランス型レチノイン酸もしくはベキサロテン);ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)、低メチル化剤(例えば、デシタビン)などのエピジェネティック標的薬;Hsp90阻害剤、ユビキチンおよび/もしくはユビキチン様共役もしくは脱共役分子などのタンパク質安定性調節剤;またはEGFR阻害剤(エルロチニブ)である。
【0115】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬(複数を含む)は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、またはカルボキシメチルセルロースを含有する組成物が挙げられるがこれらに限定されない、鎮痛点眼剤(「人工涙液」としても既知)である。人工涙液は、減少した水分を補い、涙液膜の能力を潤滑にすることによって、ドライアイの治療に有用であり得る。いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は、ムコタンパク質と相互作用し、したがって、涙液膜の粘度を減少させることができる、N-アセチル-システインなどの粘液溶解薬である。
【0116】
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬としては、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、麻酔剤、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬を含む抗炎症剤、ならびに抗アレルギー剤が挙げられる。好適な薬剤の例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、およびカナマイシンなどのアミノグリコシド;シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、およびエノキサシンなどのフルオロキノロン;ナフチリジン;スルホンアミド;ポリミキシン;クロラムフェニコール;ネオマイシン;パラモマイシン(paramomycin);コリスチメタート;バシトラシン;バンコマイシン;テトラサイクリン;リファンピンおよびその誘導体(「リファンピン類」);サイクロセリン;β-ラクタム;セファロスポリン;アンフォテリシン;フルコナゾール;フルシトシン;ナタマイシン;ミコナゾール;ケトコナゾール;コルチコステロイド;ジクロフェナク;フルルビプロフェン;ケトロラク;スプロフェン;クロモリン;ロドキサミド;レボカバスチン;ナファゾリン;アンタゾリン;フェニラミン;またはアザライド抗生物質が挙げられる。
【0117】
本発明は、特定の実施例によってより詳細に記載される。以下の実施例は、例示目的で提供され、いかなる方法によっても本発明を制限することを意図していない。当業者は、本質的に同一の結果をもたらすように変更または修正され得る種々の重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
実施例
【実施例1】
【0118】
ルキソリチニブリン酸塩の徐放性および速放性製剤
製剤SR-2
以下のプロトコルに従って、ルキソリチニブリン酸塩の25mg徐放性製剤を調製した。製剤構成成分は、表1aに提供される。パーセンテージは重量による。
【表4】
【0119】
プロトコル
ステップ1. 微結晶セルロース、ルキソリチニブリン酸塩、ラクトース一水和物、およびヒプロメロースを好適なブレンダーに添加し、混合する。
ステップ2. ステップ1からの混合物を好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ3. 混合しながら精製水を添加する。
ステップ4. ステップ3からの湿潤顆粒をふるいにかける。
ステップ5. ステップ4からの顆粒を好適な乾燥機中に移し、LODが3%以下になるまで乾燥させる。
ステップ6. ステップ5からの顆粒をふるいにかける。
ステップ7. 好適なブレンダー中でコロイド状二酸化ケイ素をステップ6の顆粒と混合する。
ステップ8. ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムをステップ7の混合物と混合し、ブレンドし続ける。
ステップ9. 好適な回転式タブレットプレス上でステップ8の最終混合物を圧縮する。
【0120】
製剤SR-1
代替のルキソリチニブリン酸塩の25mg徐放性製剤を、以下に記載されるように調製した。製剤構成成分は、表1bに提供される。パーセンテージは重量による。
【表5】
【0121】
プロトコル
ステップ1. 微結晶セルロース、ルキソリチニブリン酸塩、ラクトース一水和物、およびヒプロメロースを好適なブレンダーに添加し、混合する。
ステップ2. ステップ1からの混合物を好適な造粒機に移し、混合する。
ステップ3. 混合しながら精製水を添加する。
ステップ4. ステップ3からの湿潤顆粒をふるいにかける。
ステップ5. ステップ4からの顆粒を好適な乾燥機中に移し、LODが3%以下になるまで乾燥させる。
ステップ6. ステップ5からの顆粒をふるいにかける。
ステップ7. 好適なブレンダー中でコロイド状二酸化ケイ素をステップ6の顆粒と混合する。
ステップ8. ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムをステップ7の混合物と混合し、ブレンドし続ける。
ステップ9. 好適な回転式タブレットプレス上でステップ8の最終混合物を圧縮する。
【0122】
製剤C-速放性
ルキソリチニブリン酸塩の速放性投薬形態は、薬物製品Jakafi(登録商標)(ルキソリチニブリン酸塩(錠剤))(NDA番号N202192)として、5、10、15、20、および25mgの用量で商業的に得られる。市販の投薬形態は、第III相COMFORT-1およびCOMFORT-II試験で使用されるものと同一である。
【実施例2】
【0123】
徐放性製剤のバイオアベイラビリティ試験
健康な成人志願者に、ルキソリチニブリン酸塩の徐放性および速放性製剤の相対バイオアベイラビリティ試験を実施した。絶食状態の対象は、速放性製剤の単回経口投与(25mg、実施例1を参照されたい)または徐放性製剤の単回経口投与(25mg、実施例1を参照されたい)を受けた。ルキソリチニブの血漿濃度を測定し、
図1で比較される。表2aは、比較薬物動態(PK)データを提供する。
【表6】
【0124】
バイオアベイラビリティ試験の説明
ルキソリチニブリン酸塩速放性(IR)錠剤と比較した、2つのルキソリチニブリン酸塩徐放性(SR)製剤の薬物動態性能を評価するために、本試験を実施した。試験を3期間試験として実施し、全員絶食状態で、各対象がIR錠剤、SR-1錠剤、およびSR-2錠剤を服用した。全ての治療を一錠剤の単回投与として投与した。本試験に参加した9名の健康な対象は、第1期間中にIR錠剤を服用し、試験を継続した8名の対象を、第2および第3期間中にSR-1およびSR-2錠剤を服用するために、2つの順序に無作為に分けた。
【0125】
本試験に参加した9名の対象は、ランダム化スケジュールに従って、単回投与のIR錠剤、SR-1錠剤、およびSR-2錠剤を服用した(表2bを参照されたい)。投与量を少なくとも10時間の一晩絶食後に経口投与し、投与の約3時間後に標準化した食事を提供した。治療期間の間に、7日間(5日間以上)の洗い出し期間を設けた。
【0126】
ラベンダートップ(K2EDTA)Vacutainer(登録商標)チューブを使用して、投与0、0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、12、16、24、および36時間後に、ルキソリチニブの血漿濃度の決定のために血液試料を採取した。ルキソリチニブの尿中濃度の決定のために試料は採取しなかった。
【表7】
【0127】
ルキソリチニブ濃度の決定のために、血漿および尿試料をIncyte Corporationに送った。1~1000nMの線形範囲を有する有効なGLP、LC/MS/MS方法によって、血漿試料を分析した。
【0128】
全てのPK血液試料をそれらの予定時間の5分以内に採取し、したがって、投与量の投与の時間に対するスケジュール時間を全ての薬物動態分析に使用した。
【0129】
Phoenix WinNonlinバージョン6.0(Pharsight Corporation(Mountain View,CA))を使用して、ルキソリチニブ血漿濃度データを分析するために、標準的なノンコンパートメント薬物動態方法を使用した。したがって、CmaxおよびTmaxを観察された血漿濃度データから直接取った。吸収遅延時間(Tlag)を、最初の測定可能な(非ゼロの)濃度に対応する時間直前のサンプリング時間として定義した。終末体内動態相における濃度データの対数線形回帰を使用して、終末相消失速度定数(λz)を推定し、t1/2をln(2)/λzとして推定した。増加している濃度については線形台形公式、および減少している濃度については対数台形公式を使用して、AUC0-tを推定し、総AUC0-∞をAUC0-t+Ct/λzとして計算した。経口投与クリアランス(Cl/F)をDose/AUC0-∞として推定し、終末相分布体積(Vz/F)をDose/[AUC0-∞*λz]として推定した。
【0130】
治療に対する固定要因および対象に対する変量要因を用いた二要因ANOVAを使用して、対数変換薬物動態パラメータを治療間で比較した。ANOVAからの調節された平均(最小二乗平均)から計算された、Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞に対する幾何平均相対バイオアベイラビリティおよび90%信頼区間を使用して、IR錠剤の絶食投与(基準治療)と比較したSR製剤の絶食投与(試験治療)の相対バイオアベイラビリティを推定した。全ての統計分析をSASバージョン9.1(SAS Institute,Inc.,Cary,NC)を使用して実施した。
【実施例3】
【0131】
徐放性臨床試験
骨髄線維症(MF)患者において、第2相臨床試験を実施した。合計で41名の対象が参加し、脾臓体積および総症状スコアをベースライン時に得た。徐放性製剤SR-2の錠剤(実施例1を参照されたい)を絶食患者に投与した。全患者を8週間にわたって25mg1日1回で処置した。8週間後、臨床反応に応じて、治験責任医師は(a)同投与量のSR-2を維持すること、(b)投与量を50mg1日1回に増加させること、(c)投与量を、1日1回投与される25mgおよび50mgの交互の投与量に増加させること、または(d)速放性製剤での治療に切り替えることが許可された。
【0132】
脾臓体積および総症状スコアに関するデータは、患者が速放性製剤のみを投与されたCOMFORT-1試験からの比較データと併せて、
図2および3に提供される。COMFORT-1試験の詳細に関して、以下の実施例Aを参照されたい。
図2および3から分かるように、25mg徐放性製剤での治療は、COMFORT-I試験における速放性製剤とほぼ同じくらい有効であった。
図2に示されるCOMFORT-1の脾臓体積応答者のパーセンテージは、12週目および24週目のそれぞれで39.4%および43.9%であった。16週目の徐放性試験の脾臓体積応答者のパーセンテージは、28.9%であった。同様に、
図3に示されるCOMFORT-1の総症状スコア応答者のパーセンテージは、12週目および24週目のそれぞれで46.3%および45.9%であった。
図3に示される徐放性試験の総症状スコア応答者のパーセンテージは、36.8%であった。
【0133】
平均血小板数および平均ヘモグロビンレベル(Hgb)に関するデータは、COMFORT-I試験からの比較データと併せて以下の表3に示される。データから分かるように、SR患者におけるベースライン血小板数からの平均的変化は、COMFORT-Iで観察されたものの約半分であった。同様の結果がヘモグロビンレベルに対して見られた。データは、平均±SDとして示される。
【表8】
【実施例4】
【0134】
MF患者におけるSRおよびIR製剤間のルキソリチニブの定常状態血漿濃度の比較
25mgの投与量を反復投与されている骨髄線維症(MF)患者におけるルキソリチニブの定常状態血漿濃度が、徐放性(SR)および速放性(IR)製剤間で、
図4中で比較される。比較薬物動態パラメータは、以下の表4aに提供される。
【表9】
【0135】
MF患者における非盲検試験の説明
概要
これは、原発性骨髄線維症(PMF)および真性赤血球増加症/本態性血小板血症後骨髄線維症(PV/ET後MF)患者に経口投与される、ルキソリチニブの安全性、忍容性、および有効性を調査する非盲検試験であった。試験は、3つのパートからなった:パート1-投与量漸増および拡大、1日2回投与、パート2-代替投与スケジュール(A、B、およびC)、ならびにパート3-3つの独立した患者群(I、II、およびIII群)。8つの投与計画を3つのパートで評価した。パート1は、25mg1日2回および50mg1日2回の2つの投与量レベルを評価し、パート2は、10mg1日2回、25mg1日2回、25mg1日1回、50mg1日1回、および100mg1日1回の5つの投与計画を試験し、パート3は、10mg1日2回、15mg1日2回、25mg1日2回、50mg1日1回、100mg1日1回、および200mg1日1回の6つの投与計画を評価した。合計で154名の対象が参加し、32名の対象がパート1に、29名の対象がパート2に、93名の対象がパート3に参加した。表4bを参照されたい(qd=1日1回、bid=1日2回)。
【0136】
パート1において、サイクル1の1日目および15日目の投与前および投与0.5、1、1.5、2、4、6、および9時間後に、ならびにサイクル2および3の1日目の投与前に、ラベンダートップ(K3EDTA)Vacutainer(登録商標)チューブを使用して、薬物動態血液試料を採取した。パート2において、サイクル1の15日目の投与前および投与0.5、1、1.5、2、4、6、および9時間後に、ならびにサイクル2および3の1日目の投与前に、薬物動態試料を採取した。パート3において、サイクル1の15日目ならびにサイクル2および3の1日目の投与前および朝の投与量のルキソリチニブの投与2時間後に、薬物動態試料を採取した。
【0137】
パート1および2における対象に対するサイクル1からの血漿濃度データをノンコンパートメント分析に使用した一方で、全ての血漿濃度データを母集団PK分析に使用した。
【0138】
ルキソリチニブリン酸塩錠剤の断食、経口、初回投与または複数回投与の後、薬物は迅速に吸収され、典型的には全対象において投与後0.3~2時間以内にピーク血漿濃度に達した。血漿濃度は続いて一段階または二段階で減少した。
【0139】
平均CmaxおよびAUCは、10mg~100mgの投与量にほぼ線形比例して増加した。MF患者におけるルキソリチニブの薬物動態は、健康な志願者におけるものと同様であった。
【0140】
臨床試験の詳細な説明
Protocol INCB 18424-251に従って、M.D.Anderson Cancer Center(Houston,TX)およびMayo Clinic(Rochester,MN)によって、この多施設、非盲検、非無作為化、投与量漸増臨床試験を実施し、154名のPMFまたはPV/ET後MF患者が参加し、表4bの試験計画に従って少なくとも1回の単回投与を受けた。試験は3つのパートからなった:パート1-投与量漸増および拡大コホート、1日2回投与、パート2-代替投与スケジュール(A、B、およびC)、ならびにパート3-3つの独立した患者群(I、II、およびIII群)。パート2のスケジュールA、B、およびCはそれぞれ、1日1回(qd)の投与計画、10mg1日2回の低投与量、および誘導/維持計画であった。パート3は、選択された開始投与量レベルの安全性および有効性をさらに評価するために、かつ必要に応じて、個々の患者基準での投与修正を調査するために、3つの別々の患者群において試験した。保持された投与量および安全性のための中止は、血小板数および絶対好中球数(ANC)の観点から定義され、一方で、投与量増加のための条件は、脾臓の大きさの変化によって定義される不十分な有効性に基づき提供された。
【0141】
ルキソリチニブリン酸塩錠剤(5および25mg)を、外来患者の設定において水と一緒の経口投与として投与した。投与量は、10mg1日2回~50mg1日2回、および25mg1日1回~200mg1日1回に及んだ。個々の患者の参加は、約12~24か月になると予測された。患者は、中止基準のいずれかに満たず、疾患の進行がなく、何らかの臨床的利点を得ている場合、無期限に療法を継続し得る。
【0142】
パート1において、サイクル1の1日目および15日目の投与前および投与0.5、1、1.5、2、4、6、および9時間後に、ならびにサイクル2および3の1日目の投与前に、ラベンダートップ(K3EDTA)Vacutainer(登録商標)チューブを使用して、薬物動態血液試料を採取した。パート2において、サイクル1の15日目の投与前および投与0.5、1、1.5、2、4、6、および9時間後に、ならびにサイクル2および3の1日目の投与前に、薬物動態試料を採取した。パート3において、サイクル1の15日目ならびにサイクル2および3の1日目の投与前および朝の投与量の投与2時間後に、薬物動態試料を採取した。
【表10】
【0143】
血漿試料をIncyte Corporationに送り、1~1000nMの線形範囲および1nMの定量限界を有する有効なGLP、LC/MS/MS方法によって分析した。
【0144】
概して、投与後の実際の時間を薬物動態分析に使用した。しかしながら、パート2の患者およびパート1の3名の追加の患者に関するサイクル1、15日目の投与情報は収集されなかった。これらの患者に対する薬物動態分析のために、公称時間を使用した。4名の追加の患者に関するサイクル1、15日目の投与情報は疑わしかった。したがって、これらの患者に対しても公称時間を使用した。定常状態AUC0-τを計算するために、サイクル1、15日目の1日2回に対する投与後12時間または1日1回に対する投与後24時間の血漿濃度は、サイクル1、15日目の投与前の試料によって帰属した。
【0145】
WinNonlinバージョン6.0(Pharsight Corporation(Mountain View,CA))を使用して、ルキソリチニブ血漿濃度データを分析するために、標準的なノンコンパートメント薬物動態方法を使用した。したがって、CmaxおよびTmaxを観察された血漿濃度データから直接取った。単回投与に対して、終末消失相における濃度データの対数線形回帰を使用して、終末相消失速度定数(λz)を推定し、t1/2をln(2)/λzとして推定した。増加している濃度については線形台形公式、および減少している濃度については対数台形公式を使用して、AUC0-tを推定し、総AUC0-∞をAUC0-t+Ct/λzとして計算した。経口投与クリアランス(Cl/F)をDose/AUC0-∞として推定し、終末相分布体積(Vz/F)をDose/[AUC0-∞*λz]として推定した。
【0146】
複数回投与データに対して、終末消失相における濃度データの対数線形回帰を使用して、λzを推定し、t1/2をln(2)/λzとして推定した。増加している濃度については線形台形公式、および減少している濃度については対数台形公式を使用して、一投与間隔にわたったAUC(12時間毎の投与に対してAUC0-12hまたは24時間毎の投与に対してAUC0-24h)を推定した。Cl/FをDose/AUCとして推定し、Vz/FをDose/[AUC*λz]として推定した。加えて、CminおよびAUC0-t(時間ゼロから最後の試料が得られた時間までの定常状態血漿濃度-時間曲線下面積)を複数回投与データに対して計算した。
【0147】
記述統計学を使用して、各投与群に対してルキソリチニブのPKパラメータを要約し、一要因分散分析を使用して、投与群間で対数変換ルキソリチニブPKパラメータを比較した。べき関数回帰モデル(例えば、Cmax=α・Doseβ)を使用して、CmaxおよびAUCの用量比例性を評価した。
【0148】
MF患者におけるルキソリチニブの薬物動態は、健康な志願者におけるものと同様であった。
【実施例5】
【0149】
徐放性および速放性製剤の比較有効性
肥大した脾臓は骨髄線維症の一般的で顕著な症状である。脾臓体積の減少は、所与の治療の有効性を評価するための基準としての機能を果たす。表5aが、治療の16週目の徐放性試験(実施例3を参照されたい)に参加したMF患者における脾臓体積の平均減少を報告する一方で、表5bは、治療の24週目のCOMFORT-I試験(速放性、比較例Aを参照されたい)に参加したMF患者における脾臓体積の平均減少を報告する。データから分かるように、徐放性および速放性治療計画の両方が脾臓体積の減少に有効であった。
【表11】
【表12】
【0150】
MF患者における治療計画の有効性はまた、総症状スコアによっても評価され得る。総症状スコアの計算において、対象が携帯端末でMF症状に関する質問への答えを報告した症状日誌(修正されたMFSAF v2.0日誌)を使用して、MFの症状を評価した。評価された症状は、迅速にお腹が満たされること/早期の満腹、腹部不快感、腹痛、不活発、寝汗、かゆみ、および骨/筋肉痛を含んだ。
【0151】
表5cが、徐放性試験(実施例3を参照されたい)の総症状スコア結果を報告する一方で、表5dは、24週目のCOMFORT-I試験(速放性、比較例Aを参照されたい)の総症状スコア結果を報告する。データから分かるように、SRおよびIR投与計画の両方が患者におけるMFの治療に有効であった。
【表13】
【表14】
【実施例6】
【0152】
徐放性試験およびCOMFORT-I(速放性)試験に参加した患者における有害事象の比較
貧血、血小板減少症、好中球減少症、および全てのグレード3以上の有害事象に関連する有害事象に関するデータが、表6a中で、徐放性およびCOMFORT-I(速放性)試験(試験の説明のために実施例3および比較例Aを参照されたい)に対して比較される。有害事象は、ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/ctc.htmまたはevs.nci.nih.gov/ftp1/CTCAE/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_5x7.pdfで、オンラインで見ることができるCTCAE基準に従って、グレード分けされる。グレード3の有害事象は概して、重症または医学的に有意ではあるが、すぐには命に関わらない反応に対応し、入院または入院の延長が指示され、反応は、セルフケアを制限する程度まで障害を引き起こしている。より高いグレードは、4(命に関わり、緊急介入を必要とする)および5(死亡)である。貧血に対して、グレード3は、Hgb<8.0g/dL;<4.9ミリモル/L;<80g/Lに対応し、輸血が指示される。血小板減少症(血小板数減少)に対して、グレード3は、<50,000~25,000/mm3;<50.0~25.0x109/Lに対応する。16週間にわたって患者に対する徐放性データを評価した。COMFORT-Iにおけるルキソリチニブへの曝露の平均継続時間は、約242日間であった。典型的には、血液学的有害事象の大部分は、COMFORT-I試験で観察されたように、療法の最初の数ヶ月以内に生じる。
【0153】
表6aのデータから分かるように、グレード3以上と見なされた貧血、血小板減少症、好中球減少症、および全ての事象に関連する有害事象は、COMFORT-I速放性試験と比較して徐放性試験においてそれほど頻繁には生じなかった。
【表15】
【0154】
血液に関連する有害事象の発生は、貧血および血小板減少症を含むある特定の反応を示す試験における患者の数およびパーセンテージを報告する、表6bおよび6c中でさらに比較される。16週間にわたって、患者に対する徐放性データを評価した。COMFORT-I試験におけるルキソリチニブへの曝露の平均継続時間は、約242日間であった。血液学的有害事象の大部分は、COMFORT-I試験で観察されたように、療法の最初の数ヶ月以内に生じる。表中のデータから分かるように、血液に関連する有害事象を示す患者の数およびパーセンテージは、徐放性試験においてより低い。加えて、有害事象の重症度は、徐放性 試験においてより軽い。
【表16】
【表17】
【0155】
比較例A
COMFORT I臨床試験-速放性製剤
第3相臨床試験が完了し、骨髄線維症患者におけるルキソリチニブの有効性を示した。この二重盲検試験において、中等度-2または高リスクの骨髄線維症患者を、1日2回経口、速放性(実施例1を参照されたい)のルキソリチニブ(155名の患者)またはプラシーボ(154名の患者)に無作為に割り当てた。ルキソリチニブの開始投与量は、ベースライン血小板数によって決まった:1リットル当たり100×109~200×109の血小板数に対して15mgを1日2回、および1リットル当たり200×109を超えた数に対して20mgを1日2回。投与量を有効性の欠如または過剰な毒性に対して調節した。主要エンドポイントは、磁気共鳴画像法を用いて評価される、24週目に脾臓体積が35%以上減少した患者の割合であった。二次エンドポイントは、効果の持続性、症状の負荷の変化(総症状スコアによって評価される)、および全生存率を含んだ。
【0156】
24週目に脾臓体積が35%以上減少した患者の割合(主要エンドポイント)は、プラシーボ群の0.7%と比較して、ルキソリチニブ群では41.9%であった。予め指定された二次エンドポイントである、ベースラインから24週目までに総症状スコアが50%以上減少した患者の割合は、プラシーボ群よりもルキソリチニブ群において有意に高かった(45.9%対5.3%;オッズ比、15.3;95%信頼区間、6.9~33.7;P<0.001)。
【0157】
試験は、ルキソリチニブが、脾腫および骨髄線維症の顕著な徴候である症状の減少と関連し、全生存率の改善と関連しているように思われることを示した。加えて、貧血および血小板減少症の最も一般的な毒作用は、概して、投与量修正によって管理された。本試験に関する詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Verstovsek,S.らの“A double-blind,placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1:366(9):799-807に提供される。
【0158】
比較例B
COMFORT II臨床試験-速放性製剤
第3相臨床試験が完了し、利用可能な最善の療法と比較して、骨髄線維症患者におけるルキソリチニブ治療の優位性を示した。利用可能な最善の療法と比較した連続的なルキソリチニブ療法は、脾腫および疾病に関連する症状の著しく持続的な減少、日常役割機能および生活の質の改善、ならびにわずかな毒作用と関連した。
【0159】
ルキソリチニブ、または任意の市販の薬剤を含むか(単剤療法として、もしくは組み合わせて)、もしくは療法を全く含まず、かつ治療段階中に変更され得る、利用可能な最善の療法を受けるように、骨髄線維症患者を2:1の比率で無作為に割り当てた。ルキソリチニブ錠剤の開始投与量は、ベースライン血小板数が1リットル当たり200×109以下の場合、速放性製剤(実施例1を参照されたい)を15mg1日2回、およびベースライン血小板数が1リットル当たり200×109よりも大きい場合、20mg経口で1日2回であった。
【0160】
主要エンドポイントは、48週目のベースラインからの35%以上の脾臓体積の減少であった。48週目に、ルキソリチニブ群の患者の大部分は、脾臓体積が減少した。ルキソリチニブ群の患者のみが、48週目のベースラインからの少なくとも35%の脾臓体積の減少である、主要エンドポイントの基準を満たした(28%、利用可能な最善の療法を受けた群における0%に対して;P<0.001)。利用可能な最善の療法を受けた患者と比較したルキソリチニブ群の患者は、生活の質および日常役割機能が改善した。48週目に、ルキソリチニブを投与された患者は、食欲喪失、呼吸困難、疲労、不眠症、および疼痛を含む、骨髄線維症と関連する症状が著しく減少した一方で、利用可能な最善の療法を受けた患者は、症状が悪化した。
【0161】
血小板減少症および貧血は、利用可能な最善の療法を受けた患者よりも、ルキソリチニブを投与された患者においてより頻繁に発生したが、これらの事象は概して、投与量修正、濃厚赤血球輸血、または両方によって管理可能であった。試験のさらなる詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Harrison,C.らの“JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis,”N.Eng.J.Med.,2012,Mar 1;366(9):787-98に提供される。
【0162】
本明細書に記載されるものに加えて、本発明の種々の修正が、上記の説明から当業者には明らかになるであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲内に入るよう意図される。本願に引用される全ての特許、特許出願、および出版物を含む各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明には、以下の態様が含まれる:
[1] ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩である少なくとも1つの活性成分を含む、徐放性投薬形態であって、前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、遊離塩基に基づき、約10~約60mgの量で前記投薬形態中に存在する、徐放性投薬形態。
[2] 前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、遊離塩基に基づき、約25mgの量で前記投薬形態中に存在する、[1]に記載の徐放性投薬形態。
[3] 前記活性成分は、ルキソリチニブリン酸塩である、[1]または[2]に記載の徐放性投薬形態。
[4] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約700nM以下のルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす、[1]~[3]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[5] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約200~約700nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす、[1]~[3]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[6] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約300~約400nMのルキソリチニブの平均ピーク血漿濃度(Cmax)をもたらす、[1]~[3]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[7] ヒト状態への前記投薬形態の投与は、約1.5時間以上のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす、[1]~[6]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[8] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約1.5時間~約5時間のルキソリチニブのピーク血漿濃度までの平均時間(Tmax)をもたらす、[1]~[6]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[9] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約10以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす、[1]~[8]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[10] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約4以下のルキソリチニブの平均12時間血漿濃度(C12h)に対する平均ピーク血漿濃度(Cmax)の比をもたらす、[1]~[8]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[11] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約3.5時間~約11時間の平均半減期(t1/2)をもたらす、[1]~[10]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[12] ヒトへの前記投薬形態の投与は、約4時間~約8時間の平均半減期(t1/2)をもたらす、[1]~[10]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[13] ヒトへの単回投与の前記投薬形態の投与は、約3000~約4000nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす、[1]~[12]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[14] ヒトへの単回投与の前記投薬形態の投与は、約3100~約3800nM*hのルキソリチニブの平均バイオアベイラビリティ(AUC0-∞)をもたらす、[1]~[12]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[15] 1つ以上のセルロースエーテルを含む、[1]~[12]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[16] ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、[15]に記載の徐放性投薬形態。
[17] 約10重量%~約30重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、[15]に記載の徐放性投薬形態。
[18] 錠剤またはカプセルの形態である、[1]~[17]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[19] 遊離塩基に基づき、25mgのルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含み、患者への投与は、少なくとも約8時間にわたって、約75~約500nMの平均ルキソリチニブ血漿中濃度をもたらす、[1]~[18]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[20] 遊離塩基に基づき、12~13重量%のルキソリチニブリン酸塩と、19~23重量%の1つ以上のヒプロメロースとを含む、[19]に記載の徐放性投薬形態。
[21] 遊離塩基に基づき、12.2重量%のルキソリチニブリン酸塩と、20重量%または22重量%の1つ以上のヒプロメロースとを含む、[19]に記載の徐放性投薬形態。
[22] 患者への投与は、少なくとも約8時間にわたって、約75~約500nMのルキソリチニブ血漿中濃度をもたらす、[19]~21]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[23] 患者への投与は、少なくとも約12時間にわたって、約75~約500nMのルキソリチニブ血漿中濃度をもたらす、[19]~21]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[24] 遊離塩基に基づき、25mgのルキソリチニブリン酸塩を含み、少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約100×109/L以下の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす、[1]~[23]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[25] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約80×109/L以下の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす、[24]に記載の徐放性投薬形態。
[26] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約60×109/L以下の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす、[24]に記載の徐放性投薬形態。
[27] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約40×109/L以下の平均ベース血小板数の平均減少をもたらす、[24]に記載の徐放性投薬形態。
[28] 遊離塩基に基づき、25mgのルキソリチニブリン酸塩を含み、少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約15g/L以下の平均ヘモグロビンの平均減少をもたらす、[1]~[27]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[29] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約10g/L以下の平均ヘモグロビンの平均減少をもたらす、[28]に記載の徐放性投薬形態。
[30] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約8g/L以下の平均ヘモグロビンの平均減少をもたらす、[28]に記載の徐放性投薬形態。
[31] 少なくとも16週間にわたる患者への前記投薬形態の投与は、約6g/L以下の平均ヘモグロビンの平均減少をもたらす、[28]に記載の徐放性投薬形態。
[32](1)ルキソリチニブリン酸塩またはその薬学的に許容される塩と、(2)微結晶セルロースと、(3)ヒプロメロースと、(4)ラクトース一水和物と、(5)コロイド状二酸化ケイ素と、(6)ステアリン酸マグネシウムと、(7)ステアリン酸とを含む、[1]~[31]のいずれか1項に記載の徐放性投薬形態。
[33] JAK活性に関連する疾患の治療を必要としている患者において、それを行う方法であって、前記患者に[1]~[32]のいずれか1項に記載の投薬形態を投与することを含み、前記疾患は、自己免疫疾患、皮膚障害、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、若年性関節炎、I型糖尿病、狼瘡、炎症性腸疾患、クローン病、重症筋無力症、免疫グロブリン腎症、心筋炎、自己免疫甲状腺障害、ウイルス性疾患、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV 1、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒト・パピローマウイルス(HPV)、癌、骨髄増殖性疾患、炎症性疾患、炎症性眼疾患、虹彩炎、ブドウ膜炎、強膜炎、結膜炎、炎症性気道疾患、炎症性上気道疾患、炎症性下気道疾患、炎症性筋疾患、心筋炎、虚血再かん流もしくは虚血性事象に関連する疾患、癌に起因もしくは関連する拒食症もしくは悪液質、癌に起因もしくは関連する疲労、骨吸収性疾患、または肥満細胞活性化症候群から選択される、方法。
[34] 前記自己免疫疾患は、水疱性皮膚障害である、[33]に記載の方法。
[35] 前記水疱性皮膚障害は、尋常性天疱瘡(PV)または水疱性類天疱瘡(BP)である、[34]に記載の方法。
[36] 前記皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚感作、皮膚の刺激、皮膚発疹、接触皮膚炎、またはアレルギー性接触感作である、[33]に記載の方法。
[37] 前記皮膚障害は、乾癬である、[36]に記載の方法。
[38] 前記骨髄増殖性疾患(MPD)は、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、好酸球増加症候群(HES)、または全身性肥満細胞疾患(SMCD)である、[33]に記載の方法。
[39] 前記疾患は、原発性骨髄線維症(PMF)、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)、真性赤血球増加症(PV)、または本態性血小板血症(ET)である、[38]に記載の方法。
[40] 前記疾患は、原発性骨髄線維症(PMF)、真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)、または本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)である、[38]に記載の方法。
[41] 前記癌は、固形腫瘍、骨髄腫、前立腺癌、腎癌、肝癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌、カポジ肉腫、キャッスルマン病、膵癌、血液癌、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、皮膚癌、皮膚T細胞性リンパ腫、または皮膚B細胞性リンパ腫である、[33]に記載の方法。
[42] 前記骨吸収性疾患は、骨粗鬆症、変形性関節炎、ホルモンの不均衡に関連する骨吸収、ホルモン療法に関連する骨吸収、自己免疫疾患に関連する骨吸収、または癌に関連する骨吸収である、[33]に記載の方法。
[43] 前記経口投薬形態は、1日1回投与される、[33]に記載の方法。