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特許7577151保護コーティングを備えた製品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】保護コーティングを備えた製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20241025BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 302L
B05D7/24 302Z
B05D7/24 301E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023060017
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2021578104の分割
【原出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2023082147
(43)【公開日】2023-06-13
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】201910589171.5
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520212624
【氏名又は名称】昆山聯滔電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】Lanto Electronic Limited
【住所又は居所原語表記】No.399,Baisheng Road,Jinxi Town,Kunshan City,Jiangsu Province,215324,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ホン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,スーケオン
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525376(JP,A)
【文献】特表2015-527436(JP,A)
【文献】特表2010-502784(JP,A)
【文献】特表2007-501708(JP,A)
【文献】特表2007-515498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護コーティングを備えた製品を製造する方法であって、
第1前駆体分散液を調製し、前記第1前駆体分散液は第1活性有機前駆体を含み、前記第1活性有機前駆体はフッ素無含有モノマーであり、
第2前駆体分散液を調製し、前記第2前駆体分散液は第2活性有機前駆体を含み、前記第2活性有機前駆体はフッ素含有モノマーであり、
前記第1前駆体分散液を製品本体に適用し、適用された前記第1前駆体分散液を乾燥させて第1乾燥層を形成し、
前記第2前駆体分散液を前記第1乾燥層に適用して前記第1乾燥層を覆い、適用された前記第2前駆体分散液を乾燥させて第2乾燥層を形成し、
前記第1活性有機前駆体および前記第2活性有機前駆体をインサイツ重合により前記保護コーティングを備えた製品を得て、
ここで、前記第1前駆体分散液中には、0.5~1.5重量%の接着性樹脂、0.01~0.1重量%の蛍光剤、0.1~5重量%のイソシアネート硬化剤、0.01~1重量%の触媒を含み、溶媒はハイドロフルオロエーテルであり、
前記第2前駆体分散液中には、0.05~0.1重量%の蛍光剤、3.2~5重量%のイソシアネート硬化剤、0.4~0.8重量%の触媒を含み、溶媒はハイドロフルオロエーテルであり、
前記第1活性有機前駆体は、アルコキシシランであり、前記第2活性有機前駆体は、ペルフルオロカーボンオルガノシロキサンであり、
前記第1前駆体分散液中のアルコキシシランの含有量は、9.7~24.3重量%であり、前記第2前駆体分散液中のペルフルオロカーボンオルガノシロキサンの含有量は、17.8~24.9重量%である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、製品上に形成されるポリマー保護コーティングの技術分野、特に保護コーティングを備えた製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者はますます電子製品の信頼性を要求しているので、電子製品の電子部品の保護コーティングに関する研究がますます増えている。例えば、電子製品のプリント回路基板などの電子部品には、通常、防水性能と塩水噴霧腐食に対する耐性を向上させるために保護コーティングが設けられている。
【0003】
一般に、パリレン保護コーティングは、原料としてパラキシレンを使用する蒸着によって電子デバイス上に形成できた。しかしながら、膜形成の速度は遅く、効率は低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願の実施の形態は、電子製品の保護コーティングが細孔を有する単層材料のみを使用できるという問題を解決するために、また、遅い膜形成速度と低い効率とを解決するために、保護コーティングを備えた製品およびその製造方法を開示する。
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本出願は以下のように実施される。
【0006】
本出願は、保護コーティングを備えた製品を製造する方法を提供し、当該方法は、第1活性有機前駆体を含む第1前駆体分散液を調製し、第1活性有機前駆体はフッ素無含有モノマーであり、第2活性有機前駆体を含む第2前駆体分散液を調製し、第2活性有機前駆体はフッ素含有モノマーであり、第1前駆体分散液を製品本体に適用して、適用した第1前駆体分散液を乾燥させて第1乾燥層を形成し、第2前駆体分散液を第1乾燥層に適用して第1乾燥層を覆って、適用した第2前駆体分散液を乾燥させて第2乾燥層を形成し、第1活性有機前駆体および第2活性有機前駆体を重合して、保護コーティングを備えた製品を得るようにする。
【0007】
本出願の製造方法によれば、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液は、基材として使用される製品本体に直接適用されるので、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液の適用効率を著しく向上できる。したがって、皮膜形成効率を著しく向上できる。特定の実施の形態では、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を、異なる製品の製造パラメータに応じて、噴霧、ドットコーティング、ブラッシング、浸漬、または噴霧吹付けによって適用できる。
【0008】
本出願の別の態様によれば、上記の製造方法を使用する保護コーティングを備えた製品は、製品本体と、製品本体の表面に形成されたポリマー保護コーティングとからなる。ポリマー保護コーティングは、インサイツ重合によって形成され、ポリマー保護コーティングは、製品本体と接触する内側ポリマー層と、内側ポリマー層の外面を覆う外側ポリマー層とからなる。外側のポリマー層は、インサイツ重合によって形成されたフッ素含有ポリマー層であり、内側のポリマー層は、インサイツ重合によって形成されたフッ素無含有ポリマー層である。
【0009】
本出願のいくつかの実施の形態では、ポリマー保護コーティングは、製品本体と接触する内側ポリマー層と、内側ポリマー層の外面を覆う外側ポリマー層とからなる。外側ポリマー層は、フッ素含有ポリマー層であり、内側ポリマー層は、フッ素無含有ポリマー層である。したがって、ポリマー保護コーティングまたは製品本体の防水性能、および、耐紫外線経年劣化およびセルフクリーニング機能の能力は、疎水性を十分に活用することによって改善され、外側のポリマー層として使用されるフッ素含有物における接触へのべた付きがなく、紫外線放射に対する耐性がある。加えて、インサイツ重合によって形成された内側ポリマー層と外側ポリマー層は、一緒にポリマー保護コーティングを形成するので、内側ポリマー層と外側ポリマー層は、構造において互いを埋め合わせて、高密度の保護コーティングを形成することができる。さらに、ポリマー保護コーティングと製品本体とにおける防水性能と塩水噴霧腐食に対する耐性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に記載の図は、本出願のさらなる理解を提供し、本出願の一部を構成するために使用される。以下において、本出願の例示的な実施の形態および説明は、本出願を図示するために使用され、本出願を限定するものではない。
図1】本出願における、保護コーティングを備えた製品の構造の概略図である。
図2】保護コーティングの一例の断面のSEM画像である。
図3】本出願における、保護コーティングを備えた製品の製造方法の第1の実施の形態のフローチャートである。
図4】本出願における、保護コーティングを備えた製品の製造方法の第2の実施の形態のフローチャートである。
図5】本出願における、保護コーティングを備えた製品の製造方法の第3の実施の形態のフローチャートである。
図6】本出願における、保護コーティングを備えた製品の製造方法の第4の実施の形態のフローチャートである。
図7】本出願における、保護コーティングを備えた製品の製造方法の第5の実施の形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、本出願の技術的解決策は、特定の実施の形態と本出願の図とを併せて明確かつ完全に説明されるだろう。明らかに、説明された実施の形態は、すべての実施の形態というよりも、本出願の実施の形態の一部にすぎない。本出願の実施の形態に基づいて、当業者によって創造的な作業なしに得られた他のすべての実施の形態は、本開示の保護範囲に収まる。
【0012】
本出願の保護コーティングを備えた製品の構造の概略図である図1を参照されたい。保護コーティングを備えた製品10は、製品本体11と、インサイツ重合によって製品本体11の表面に形成されたポリマー保護コーティング12とを含む。換言すれば、ポリマー保護コーティング12は、製品本体11全体を覆う。ポリマー保護コーティング12は、製品本体11と接触する内側ポリマー層121と、内側ポリマー層121の外面を覆う外側ポリマー層122とを含む。外側ポリマー層122は、フッ素含有ポリマー層であり、内側ポリマー層121は、フッ素無含有ポリマー層である。なお、製品本体11全体を覆うポリマー保護コーティング12は次のように理解できる。すなわち、ポリマー保護コーティング12は製品本体11の外面および/または内面に形成され、ポリマー保護コーティング12を製品本体11の表面全体に形成でき、または、製品本体11の表面の一部に選択的に形成できるように理解できる。ここで、フッ素含有ポリマー層は、パルフルオロカーボン・オルガノシロキサン・ポリマー層であり、フッ素無含有ポリマー層は、アルコキシシランポリマー層、エポキシ樹脂ポリマー層、ポリウレタンポリマー層、およびアクリレートポリマー層のうちの1つまたは複数を含む。アルコキシシランポリマー層は両親媒性であり、その有機末端は外層と類似して適合性があり、そのシラン末端は製品本体11に十分に付着することができ(例えば、製品本体は金属からできている)、その結果、良好な疎水性を有しながら、製品本体11のわずかな粗さを改善する(すなわち、表面の細孔を補償するために)。したがって、ポリマー保護コーティング12は、本明細書に開示される材料の組み合わせを使用することにより、優れた防水性能と塩水噴霧腐食に対する耐性とを有することができる。フッ素含有ポリマー層は、良好な防水性能を持ち、触るとべたつかず、紫外線に対する耐性を有する。このように、外側ポリマー層としてフッ素含有ポリマー層を適用(塗布)することにより、保護コーティングを備えた製品10の防水性能を大幅に向上させることができ、紫外線経年老化およびセルフクリーニングの能力も向上させることができる。保護コーティング層を備えた製品10の品質を改善できる。さらに、製品本体11の表面の粗さは、内側ポリマー層121によって補償することができるので、外側ポリマー層122は、微細孔のない高密度の膜を形成することができる。ポリマー保護コーティング12は、全体として高密度の膜層を形成するので、その保護性能が向上される。換言すれば、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、構造の点で相互に補償するので、ポリマー保護コーティング12がより高密度であり、防水性能と製品10の塩水噴霧腐食に対する耐性とにより保護コーティングが向上される。要するに、本出願のポリマー保護コーティング12は、製品本体11との良好な接着、防水性能、および塩水噴霧腐食に対する耐性を有することができる。
【0013】
図2で示されるように、それは、保護コーティングの一例の断面のSEM画像である。内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、化学的に架橋されている。内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、それらの間に良好な層間結合力を有し、層間剥離のない単一の膜構造を形成することさえある。ポリマー保護コーティング12は、より高密度であるので、保護コーティング10を備えた製品の防水性能および塩水噴霧腐食に対する耐性がさらに保証される。
【0014】
製品本体11は、一般に、携帯電話(例えば、スマートフォンまたはページャー)のプリント回路基板、音響およびオーディオデバイス(例えば、ラジオまたはパーソナルオーディオ装置)、ヘッドセット(例えば、ワイヤレスイヤホン、Bluetoothイヤホン、アンチノイズイヤホン)、ビデオデバイス(TV、DVDプレーヤー、ポータブルDVDプレーヤー、ビデオレコーダー、仮想現実デバイス、オーグティッド(拡張)現実感デバイス、エクステンディッド(拡張)現実感デバイス)、通信デバイス(例えば、デジタルおよびその他のセットトップボックス、コンピューターおよび関連コンポーネント、ゲームコントロールパネル、またはアンテナ)、時計(例えば、電子時計またはスマート時計)、データ記憶デバイス、照明デバイス、およびパワーバンクなどのようなプリント回路基板であることがある。確かに、他の電子部品も本明細書の製品本体11として使用することができる。
【0015】
図1は、2層構造、すなわち、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122を有するポリマー保護コーティング12のみを示しているが、ポリマー保護コーティング12はまた、実際には2層より多い層を有する多層構造を有することもできることを、理解するべきである。例えば、ポリマー保護コーティング12は、2層、3層、またはそれ以上の内側ポリマー層121(すなわち、複数の内側ポリマー副層)および1つの外側ポリマー層122を有することができる。ポリマー保護コーティング12はまた、2層、3層、またはそれ以上の内側ポリマー層121(すなわち、複数の内側ポリマー副層)および2層、3層、またはそれ以上の外側ポリマー層122(すなわち、複数の外側ポリマー副層)を有することができる。ポリマー保護コーティング12はまた、1層の内側ポリマー層121と、2層、3層、またはそれ以上の外側ポリマー層122(すなわち、複数の外側ポリマー副層)を有することができる。多層の内側ポリマー層121は、製品本体11の表面の粗さをよりよく補償することができ、これにより、ポリマー保護コーティング12をより高密度にする。製品本体11の表面の粗さはまた、多層の外側ポリマー層122によって補償することができるので、保護コーティングを備えた製品10の防水性能、および、耐紫外線経年劣化とセルフクリーニングとの能力をさらに向上できる。その結果として、異なる構造を有するポリマー保護コーティング12は、異なる製品に従って使用することができる。さらに、ユーザは、内側ポリマー副層121および/または外側ポリマー副層122を異なる特性と組み合わせて、要件に応じて最高の相乗的保護効果を達成することができる。
【0016】
一実施の形態では、内側ポリマー層121(すなわち、フッ素無含有ポリマー層)は、アルコキシシランポリマー層であり、外側ポリマー層122(すなわち、フッ素含有ポリマー層)は、ペルフルオロカーボンシリコーンオキシアンポリマー層である。アルコキシシランポリマーは、良好なフィルム形成特性、製品本体11への良好な接着、および疎水性を有し、その結果、内側ポリマー層121として特に適している。ペルフルオロカーボンオルガノシロキサンポリマーは、優れた疎水性を有し、触ってもべた付かず、紫外線照射耐性を有し、その結果、外側ポリマー層122として特に適している。したがって、ポリマー保護コーティング12は、優れた防水性能および塩水噴霧腐食に対する耐性を有するであろう。さらに、ポリマー保護コーティング12は、蛍光剤を含む。蛍光剤は、外部添加蛍光剤または内部添加蛍光剤である。ここで、外部添加蛍光剤は、スチルベン型蛍光剤、クマリン型蛍光剤、ピラゾリン型蛍光剤、ベンゾオキサゾール型蛍光剤、ジメチルイミド型蛍光剤のうちの1つまたは2つ以上を含む。ここで、内部添加蛍光剤は、エポキシ樹脂基、不飽和三重結合、不飽和二重結合、シリコーン、-COONH、-OH、-COOH、-NH2、および-SHの1つまたは2つ以上を介して外側ポリマー層および/または内側ポリマー層に接続する。詳細には、内側ポリマー層121または外側ポリマー層122は、蛍光剤を含み、または、外側ポリマー層122および内側ポリマー層121の両方が蛍光剤を含む。ここで、外側ポリマー層122の蛍光剤は、内側ポリマー層121の蛍光剤と同じまたは異なっていてもよい。本出願のいくつかの実施の形態では、外側ポリマー層122の蛍光剤は、内側ポリマー層121の蛍光剤と同じであるので、ポリマー保護コーティング12は、明らかな表示効果を有する。したがって、ポリマー保護コーティング12の状態をいつでもよりよく調べることができ、その後、ポリマー保護コーティング12を時間内に修理することができる。本出願のいくつかの実施の形態では、外側ポリマー層122の蛍光剤は、内側ポリマー層121の蛍光剤とは異なる。例えば、外側ポリマー層122の蛍光剤および内側ポリマー層の蛍光剤は、紫外線下で異なる色の蛍光を示すことができる。こうして、外側ポリマー層122および内側ポリマー層121のそれぞれの状態を明確に観察することができる。したがって、それぞれの層のメンテナンスを行うことができる。さらに、いくつかの実施の形態では、内側ポリマー層121および/または外側ポリマー層122は、複数の層を含み、内側ポリマー層121のそれぞれおよび/または外側ポリマー層122のそれぞれは、蛍光剤を含み、または、内側ポリマー層121および/または外側ポリマー層122の一部のみは、蛍光剤を含む。本出願のいくつかの実施の形態では、内側ポリマー層121のそれぞれおよび/またはポリマー層122のそれぞれは、蛍光剤を含み、内側ポリマー層121の各副層中の蛍光剤および/または外側ポリマー層122の各副層の蛍光剤は、同じまたは異なる。例えば、内側ポリマー層121の各副層の蛍光剤が、外側ポリマー層122の各副層の蛍光剤と同じである場合、内側ポリマー層121の各副層および外側ポリマー層122の各副層は、同じ蛍光色を示すことができる。したがって、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、明らかな表示効果を有し、それにより、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122の状態をいつでもよりよく調べることができる。内側ポリマー層121の各副層の蛍光剤が、外側ポリマー層122の各副層の蛍光剤と異なる場合、内側ポリマー層121の各副層および外側のポリマー層122の各副層は、異なる蛍光色を示すことができる。したがって、各副層のそれぞれの状態を明確に観察することができるので、それぞれの層のメンテナンスを行うことができる。
【0017】
この実施の形態およびいくつかの実施の形態では、内側ポリマー層121は、接着性樹脂を含む。接着性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、および、ポリエステル樹脂よりなるグループから選択される。接着性樹脂は、製品本体11によく付着することができる。したがって、保護コーティングの製品本体11への接着性がさらに改善され、コーティングが製品本体11から剥がれるリスクが低減される。図1に示すように、外側ポリマー層122の厚さは、内側ポリマー層121の厚さ以上である。例えば、外側ポリマー層122の内側ポリマー層121に対する厚さ比は、1:(0.1~1)にできる。特に、厚さ比は、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1などにすることができる。保護コーティングの厚さは、電子部品の熱放散に影響を与えるほど厚くはない。フレキシブル保護コーティングは、一般的には、フレキシブルPCB(プリント回路基板)と折りたたむ位置とのために必要とされる。したがって、より薄い内部厚さを有する内側ポリマー層121を選択することができる。一例では、保護コーティングの全体的な厚さを減らすことができる。他の例では、製品本体11のわずかな粗さを十分に改善することができる。したがって、内側ポリマー層121上に高密度の外側ポリマー層122を形成することができる。それにより、高密度のポリマー保護コーティング12は、内側ポリマー層121と外側ポリマー層122との間の良好な補償のおかげで形成することができる。外側ポリマー層122の厚さは0.5~10μmであり、内側ポリマー層121の厚さは0.1~2μmである。この実施の形態およびいくつかの実施の形態では、外側ポリマー層122の厚さは1~5μmであり、内側ポリマー層121の厚さは0.5~1μmである。1~5μmの厚さの外側ポリマー層122と0.5~1μmの厚さの内側ポリマー層121との組み合わせは、ポリマー保護コーティング12の厚さを著しく増加させることなく、高密度のポリマー保護コーティング12を形成することができる。したがって、形成されたフレキシブルなコーティングは柔軟性があり、形成されたフレキシブルなコーティングは、より高い光透過率を必要とする特定の部品に対して優れた保護を与える。さらに、保護コーティングを備えた製品10の放熱性能が向上される。
【0018】
以下は、保護コーティングを備えた製品10の製造方法をさらに説明する。図1および図3を参照すると、図3は、本出願の保護コーティングを備えた製品の製造方法の第1の実施の形態のフローチャートである。ステップS10に示されるように、第1前駆体分散液が調製される。すなわち、アルコキシシラン、シリコーン樹脂、スチルベン型蛍光剤、アルキルチタン触媒、およびイソシアネート硬化剤をハイドロフルオロエーテル溶媒に分散させて、第1前駆体分散液を得る。第1前駆体分散液において、アルコキシシランの含有量は24.3重量%であり、接着樹脂の含有量は1.4重量%であり、蛍光剤の含有量は0.08重量%であり、触媒の含有量は0.05重量%であり、イソシアネート硬化剤の含有量は4.2重量%であり、残りはハイドロフルオロエーテル溶剤と避けられない不純物である。ステップS12に示されるように、第2前駆体分散液が調製される。すなわち、ペルフルオロカーボンオルガノシロキサン、スチルベン型蛍光剤、アルキルチタン触媒、およびイソシアネート硬化剤をハイドロフルオロエーテル溶媒に分散させて、第2前駆体分散液を得る。第2前駆体分散液において、ペルフルオロカーボンオルガノシロキサンの含有量は22.8重量%、触媒の含有量は0.8重量%、蛍光剤の含有量は0.1重量%、イソシアネート硬化剤の含有量は3.2重量%であり、残りはハイドロフルオロエーテル溶媒と避けられない不純物である。接着性樹脂はシリコーン樹脂であるが、本出願はそれに限定されない。他の実施の形態では、接着性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂よりなるグループから選択することができる。すなわち、接着性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリエステル樹脂のうちの1つまたは2つ以上であり得る。一の実施の形態では、触媒はアルキルチタン触媒であるが、本出願はそれに限定されない。他の実施の形態では、触媒は、アルキルチタン触媒、アルキルアルミニウム触媒、およびアルキルスズ触媒よりなるグループから選択される。すなわち、触媒は、アルキルチタン触媒、アルキルアルミニウム触媒、およびアルキルスズ触媒のうちの1つまたは2つ以上であり得る。第1前駆体分散液を製品本体11に適用(塗布)するステップの前に、この方法は、製品本体11の表面に前処理を実行して、表面を洗浄および/または活性化するステップをさらに含む。より詳細には、前処理は、プラズマ処理、放電処理、サンドブラスト処理、研磨処理、火炎処理、およびプライマー処理のうちの1つまたは2つ以上を含む。それにより、第1前駆体分散液は、製品本体11によりよく付着することができる。
【0019】
ステップS14に示されるように、第1前駆体分散液は、製品本体11(プリント回路基板など)に適用され、次いで、室温で1~10分間乾燥される。ここで、室温は、20~25℃の間に当てはまる。この実施の形態では、適用された第1前駆体分散液は、ヒドロフルオロエーテル溶媒を除去するために、20℃で1分間乾燥される。それにより、第1乾燥層が形成される。第1前駆体分散液中の溶媒は、乾燥条件下で完全に蒸発することができ、それは、第1活性有機前駆体が予想よりも早く重合されるのを防ぐことができる。第1乾燥層は、内側ポリマー層121に当てはまる。ステップS16に示されるように、第2前駆体分散液は、第1乾燥層に適用されて、第1乾燥層を覆う。適用された第2前駆体分散液は、室温で1~10分間乾燥される。この実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、20℃で1分間乾燥される。次に、適用された第2前駆体分散液を70~90℃で1~10分間乾燥させる。この実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、ヒドロフルオロエーテル溶媒を除去するために、80℃で2分間乾燥される。これにより、第1乾燥層を覆う第2乾燥層が形成される。溶媒を蒸発させるために、室温での予備乾燥プロセスが実行されるので、より厚い第2乾燥層が予備的に形成される。溶媒を迅速に蒸発させるために、80℃で2分間の乾燥プロセスが実行され、その乾燥プロセスは、第2活性有機前駆体が予想よりも早く重合されるのを防ぐことができる。第2乾燥層は、外側ポリマー層122に当たる。なお、第2前駆体分散液の適用量は、第1前駆体分散液の適用量よりも大きいので、第2乾燥層の厚さは、第1乾燥層の厚さより大きい。最後に、ステップS18に示されるように、第1活性有機前駆体および第2活性有機前駆体が重合されて、保護コーティングを備えた製品10が得られる。詳細には、試料111、すなわち、保護コーティングを備えた製品10は、製品本体11上の第2乾燥層および第1乾燥層を23℃、湿度50%で24時間重合することによって得られる。なお、上記の実施の形態では、より厚い第2乾燥層は、2段階の乾燥プロセスによって形成することができるので、第2活性有機前駆体が予想よりも早く重合するのを防ぐことができる。重合ステップの重合条件が容易に実行されるので、第1活性有機前駆体および第2活性有機前駆体が著しく重合される。このため、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、それぞれ重合することができ、化学的架橋は、2つの層の界面で起こる。したがって、内側ポリマー層121を外側ポリマー層122と統合でき、保護コーティングが高密度であることを確実にしている。その結果、ポリマー保護コーティング12または製品本体11の防水性能および塩水噴霧腐食に対する耐性がさらに確実にされる。第1乾燥層は、内側ポリマー層121に変形され、第2乾燥層は、外側ポリマー層122に変形される。なおまた、上記の説明において、内側ポリマー層121および外側ポリマー層122は、製品本体11上で第1乾燥層および第2乾燥層をインサイツ重合することにより形成される。ここで、ポリマー保護コーティング12を形成するための初期条件は、水分硬化、熱硬化、UV硬化、または電子ビーム硬化であり得るが、本出願はそれに限定されない。
【0020】
上記のように、図2は、試料111のSEM画像である。図2は、内側ポリマー層121と外側ポリマー層122が互いに密に結合していることを示しており、したがって、高密度のポリマー保護コーティング12が形成される。具体的には、内側ポリマー層121と外側ポリマー層122との間に他の層はなく、各層は、均一に重合された単一の膜構造を有する。構造内にはピンホールや欠陥はない。試料111の内側ポリマー層121の厚さおよび外側ポリマー層122の厚さが試験される。ポリマー保護コーティング12の静的水接触角(WCA)が試験される(試験の環境パラメータ:25℃/50%)。接着試験は、GBT9286-1998規格に従って実施される。塩水噴霧腐食試験に対する耐性は、GB6458-86塩水噴霧試験の国家規格に従って、35℃±1℃で5%(質量)NaCl溶液(pH値:6.5~7.2)で実行される。屈曲抵抗試験が実施される。光透過率試験は、GB-T2410-2008規格に従って実施される。
【0021】
塩水噴霧腐食に対する耐性については、実施例の塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例が0%のさび面積を有する場合、レベル0として定義される。実施例のサンプルの塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例の面積の1%未満がさびの面積である場合、レベル1として定義される。実施例の塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例の面積の5%未満がさび面積である場合、レベル2として定義される。実施例の塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例の面積の10%未満がさびの面積である場合、レベル3として定義される。実施例の塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例の面積の20%未満がさび面積である場合、レベル4として定義される。実施例の塩水噴霧腐食に対する耐性のレベルは、実施例の面積の20より大きい面積がさびの面積である場合、レベル5として定義される。
【0022】
屈曲抵抗試験は、以下の方法に従って実施される:ポリイミド(PI)膜上にポリマー保護コーティングを順番に適用し、完全に硬化した後、ポリイミド膜を180度曲げ、そして結果を決定する。レベル0:しわがない、または、わずかなしわがある。レベル1:多数の亀裂が現れるが、コーティングは剥がれていない。レベル2:多数の亀裂が現れ、コーティングが剥がれている。レベル3:コーティングが損傷して剥がれている。
【0023】
上記の実験および試験は、異なる材料で繰り返される。異なる実施の形態の組成を表1に示し、試験結果を表2に示す。
【0024】
なお、試料333が調製されるとき、2種類の第1前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマー層121を形成し、1種類の第2前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマー層121を形成する。したがって、内側ポリマー層121は2つの副層を有し、外側ポリマー層122は単一の層である。
【0025】
試料444が調製されるとき、1種類の第1前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマー層121を形成し、2種類の第2前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマー層121を形成する。したがって、内側ポリマー層121は単層であり、外側ポリマー層122は2つの副層を有する。
【0026】
試料555が調製されるとき、2つの第1前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマー層121を形成し、2つの第2前駆体分散液(表1に示される)を使って、内側ポリマーを形成する。したがって、内側ポリマー層121は2つの副層を有し、外側ポリマー層122も2つの副層を有する。
【0027】
比較例1
通常の方法を用いて、製品本体11としてのプリント回路基板上に保護コーティングを調整する。したがって、試験666を形成する。
【0028】
試料666の保護コーティングの厚さを試験する。保護コーティングの静的水接触角(WCA)を試験する(試験の環境パラメータ:25℃/50%)。接着試験はGBT9286-1998規格に従って実施される。塩水噴霧腐食に対する耐性試験は、GB6458-86塩水噴霧試験の国家規格に従って、35±1℃で5%(質量)NaCl溶液(pH値:6.5~7.2)で実施される。屈曲抵抗試験を実施する。光透過率試験はGB-T2410-2008規格に従って実施され、試験結果を表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表2は、試料111および試料122のポリマー保護コーティング12の厚さ、ならびに、試料666のポリマー保護コーティング12の厚さの差は小さいが、試料111および試料222の塩水噴霧腐食に対する耐性は、試料666の塩水噴霧腐食に対する耐性よりも優れていることを示している。加えて、試料111、試料222、試料333、試料444および試料555の静的水接触角(WCA)は、試料666の静的水接触角(WCA)よりも高く、それにより、試料111、試料222、試料333、試料444、および試料555が、より高い防水性能を有することが実現され得る。本出願の方法に従って製造された保護コーティングを備えた製品10は、良好な防水性能および塩水噴霧腐食に対する耐性を有することが実現され得る。一方、本出願のポリマー保護コーティング12は、少なくとも89%の透過率で、優れた防水性能および塩水噴霧腐食に対する耐性を有することができる。
【0032】
本出願の製造方法によれば、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液は、基材として使用される製品本体11に直接適用され、それにより、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用する効率を著しく改善することができる。したがって、膜形成速度が大幅に向上される。
【0033】
この実施の形態および他のいくつかの実施の形態では、適用された第1前駆体分散液を乾燥して第1乾燥層を形成するステップの前に、この方法は、製品本体11をマスキングするステップをさらに含む。適用された第1前駆体分散液を乾燥して第1乾燥層を形成するステップの後に、この方法は、製品本体11をデマスキングする(マスクを外す)ステップをさらに含む。これらのステップは、製造方法の条件に基づいて調整することができ、本出願はそれに限定されない。本出願は、さまざまな変更や変形を有することができる。ポリマー保護コーティング12は、上記のマスキング/デマスキングのステップを通じて、敏感な構成要素(マイクロフォン、センサーなど)を用いて製品本体11上に形成することができる。
【0034】
本出願の実施の形態では、本明細書に記載のポリマー保護コーティング12を形成するために、噴霧によって製品本体11の表面上に分散液を形成することができる。詳細には、液体が、霧化され、製品の表面に対して適用される。霧化された噴霧は、コーティングのより広い領域(面積)を形成するのに有益である。例えば、大面積の製品を、高精度のスプレーバルブ、大面積の霧化スプレーバルブ、またはウォーターカーテンスプレーバルブを介して完全かつ迅速に保護できる。なお、コーティングが噴霧によって形成される場合、分散液は適切な接着性を持たなければならない。例えば、分散液の粘度は、2000cps未満でなければならない。本出願のいくつかの実施の形態では、分散液の粘度は、1000cps未満であり得る。本出願は、分散液の粘度に限定されない。
【0035】
本出願の開示によれば、部分的な場所に対する選択的保護を実行することができ、より具体的には、製品の特定の場所に対する対象を定めた保護を実行することができる。例えば、本出願の一実施の形態では、本明細書に記載のコーティングは、ブラッシングによって形成することができる。コーティングのエッジは、ブラッシングに対して移動しやすいので、制御下で十分に形成することができるため、ポリマー保護コーティング12は、製品本体11上にきちんとした境界を形成することができる。他方、製品本体11の表面構造がより複雑である場合、例えば、製品本体11に凹凸構造がある場合、表面に噴霧することによって均一なポリマー保護コーティング12を形成することは困難である。これらの実施の形態では、均一なポリマー保護コーティング12は、製品本体11の凹部および凸部をそれぞれブラッシングすることによって、製品本体11の凹凸表面上に効果的に形成することができる。なお、ブラッシングによってポリマー保護コーティング12が形成される場合、分散液の適切な接着が必要である。たとえば、分散液の粘度は1000cps未満であるべきである。本出願のいくつかの実施の形態では、分散液の粘度は500cps未満であり得る。ここで、本出願は、分散液の粘度に限定されない。
【0036】
本出願の実施の形態では、本明細書に記載のポリマー保護コーティング12は、より複雑および/またはより微細な構造上にポリマー保護コーティング12を形成するように、ドットコーティングによって形成することができる。加えて、形成されたポリマー保護コーティング12を備えた製品本体11は、ドットコーティングによって改善することができる。例えば、ポリマー保護コーティング12のスリットを補強することができる。さらに、ポリマー保護コーティング12がドットコーティングによって形成される場合、分散液の粘度にはより多くの選択肢がある。例えば、分散液の粘度は、1000cps以下であり得ることがあり、または、分散液の粘度は、1000cps~2000cpsであり得ることがある。分散液の粘度も2000cpsより大きくすることがある。
【0037】
本開示は、噴霧、ブラッシング、またはドットコーティングによってコーティングを形成する上記の方法に限定されない。他の実施の形態では、分散液はまた、浸漬、霧化された噴霧などによって製品本体11の表面上に形成することができる。
【0038】
コーティングは、様々な場合に応じて、噴霧、ブラッシング、ドットコーティング、およびそれらの上記の他の組み合わせによって形成することができる。すなわち、対応するポリマー保護コーティング12は、異なる製品本体11の特性に従って形成することができる。例示的な説明のために、様々な実施の形態が以下に与えられる。
【0039】
例えば、製造方法は、高精度なスプレーバルブまたは大面積の霧化スプレーバルブまたはウォーターカーテンスプレーバルブを使用することによって、大面積の製品本体11の表面全体を保護するために使用することができる。図1および図4を参照されたい。図4は、本出願の保護コーティングを備えた製品の製造方法の第2の実施の形態のフローチャートである。以下の説明では、ポリマー保護コーティング12は、製品本体11の2つの表面上に形成される。したがって、2つの表面を処理する必要があり、ポリマー保護コーティング12がそれぞれその上に形成される。詳細には、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用するステップの前に、表面を洗浄および/または活性化するために、製品本体の2つの表面に対して前処理が行われる。より詳細には、前処理は、プラズマ処理、放電処理、サンドブラスト処理、研磨処理、火炎処理、およびプライマー処理のうちの1つまたは2つ以上を含む。この実施の形態では、プラズマ処理が例として取り上げられている。ステップS20に示されるように、第1前駆体分散液は、製品本体11(プリント回路基板など)に噴霧され、第1前駆体分散液は、製品本体11を回転させた後に再び噴霧される、すなわち、第1前駆体分散液は、製品本体11の2つの表面を覆うように、完全に噴霧される。次に、ステップS22に示されるように、適用された第1前駆体は、噴霧後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。一実施の形態では、適用された第1前駆体は、第1乾燥層、すなわち、内側ポリマー層121を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥される。ステップS24に示されるように、第2前駆体分散液は、第1乾燥層上でブラッシングされ、第2前駆体分散液は、製品本体11を回転させた後に再び噴霧される。すなわち、第2前駆体分散液は、第1乾燥層を覆うように、完全にブラッシングされる。次に、ステップS26に示されるように、適用された第2前駆体分散液は、ブラッシング後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。一実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、第2乾燥層、すなわち、外側ポリマー層122を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥される。最後に、ステップS28に示されるように、適用された第1前駆体分散液と適用された第2前駆体分散液とが重合されて、保護コーティングを備えた製品10を得る。噴霧によって製品本体11の表面に形成される第1前駆体分散液およびブラッシングによって製品本体11の表面に形成される第2前駆体分散液は、大きくて平坦な領域に適しており、液面平準化に優れ、均一な被膜をもたらす。なお、ブラッシングは、ポリマー保護コーティング12に対してより破壊的であるので、第1前駆体分散液は、第2前駆体分散液をブラッシングする前に、第1乾燥層を形成するため、または、表面乾燥状態に到達するために乾燥されることを必要とする。(すなわち、表面に触れると、表面が乾燥していることを感じることができる)。
【0040】
図1および図5を参照すると、図5は、本出願の保護コーティングを備えた製品の製造方法の第3の実施の形態のフローチャートである。以下の説明では、ポリマー保護コーティング12は、製品本体11の2つの表面上に形成される。したがって、2つの表面を処理する必要があり、ポリマー保護コーティング12がそれぞれその上に形成される。この実施の形態は、その表面の一部に頑丈な部品および/またはスリットを有する製品に適している。したがって、内側ポリマー層121は、第1の噴霧プロセスの後に完全には覆われていない領域を覆うように2回適用される。すなわち、この実施の形態は、ドットコーティングによって凹凸のある表面を持つ製品本体11上にコーティングを形成するため、または、噴霧から生成されるスリットを補償するために使用される(すなわち、表面は噴霧によって完全に覆われていない)。詳細には、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用するステップの前に、表面を洗浄および/または活性化するために、製品本体の2つの表面に前処理が行われる。より詳細には、前処理は、プラズマ処理、放電処理、サンドブラスト処理、研磨処理、火炎処理、およびプライマー処理のうちの1つまたは2つ以上を含む。この実施の形態における例として、プラズマ処理が取り上げられている。ステップS30に示されるように、第1前駆体分散液は、製品本体11(プリント回路基板など)に噴霧され、第1前駆体分散液は、製品本体11を裏返した後に再び噴霧される、すなわち、第1前駆体分散液は、製品本体11の2つの表面を覆うように完全に噴霧される。次に、ステップS31に示されるように、適用された第1前駆体は、噴霧後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。一実施の形態では、適用された第1前駆体は、80℃の温度で3分間乾燥される。次に、ステップS32に示されるように、第1前駆体分散液は、噴霧によって覆われていない製品本体11の領域にドットコーティングされ、第1前駆体分散液は、製品本体を裏返した後にスプレーすることによって覆われていない製品本体の領域に再びドットコーティングされる。次に、ステップS33に示すように、適用された第1前駆体分散液は、第1乾燥層、すなわち、内側ポリマー層121を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥させる。ポリマー保護コーティング12の均一性および信頼性は、コーティングの2つのステップで増大することができる。頑丈な部品およびスリットを有する部分的な領域のコーティング問題が解決された後に、ステップS34に示すように、第2前駆体分散液が第1乾燥層に噴霧され、第2前駆体分散液が、製品本体11を裏返しにした後に、第1乾燥層に再び噴霧される。すなわち、第2前駆体分散液は、第1乾燥層を覆うように完全に噴霧される。次に、ステップS35に示されるように、適用された第2前駆体分散液は、噴霧後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。一実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、第2乾燥層、すなわち、外側ポリマー層122を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥される。最後に、ステップS36に示されるように、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を重合して、保護コーティングを備えた製品10を得る。
【0041】
図1および図6を参照すると、図6は、本出願の保護コーティングを備えた製品の製造方法の第4の実施の形態のフローチャートである。以下の説明では、ポリマー保護コーティング12は、製品本体11の2つの表面上に形成される。したがって、2つの表面を処理する必要があり、ポリマー保護コーティング12をそれぞれその上に形成する。詳細には、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用するステップの前に、表面を洗浄および/または活性化するために、製品本体の2つの表面に前処理が行われる。より詳細には、前処理は、プラズマ処理、放電処理、サンドブラスト処理、研磨処理、火炎処理、およびプライマー処理のうちの1つまたは2つ以上を含む。ステップS40に示されるように、第1前駆体分散液は、製品本体11(プリント回路基板など)に噴霧され、第1前駆体分散液は、製品本体11を裏返した後に再び噴霧される。すなわち、第1前駆体分散液は、製品本体11の2つの表面を覆うように完全に噴霧される。次に、ステップS42において、適用された第1前駆体分散液は、室温で1~10分間乾燥され、ここで、室温は20~25℃に当たる。この実施の形態では、適用された第1前駆体分散液は、第1乾燥層、すなわち、内側ポリマー層121を形成するために、20℃の温度で2分間乾燥される。なお、この実施の形態の乾燥条件は、残留表面応力の要件が高いこれらの製品本体11と、上層と下層との間の結合力の要件が高いこれらの用途に適している。したがって、第1前駆体分散液は、残留応力を低減するために室温で乾燥させることができる。さらに、ステップS44に示されるように、第2前駆体分散液は、第1乾燥層に対してブランシングされ、第2前駆体分散液は、製品本体11を回転させた後に再び噴霧される。すなわち、第2前駆体分散液は、第1乾燥層を覆うように完全に噴霧される。次に、ステップS46に示されるように、適用された第2前駆体分散液は、ブラッシング後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。この実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、第2乾燥層、すなわち、外側ポリマー層122を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥される。最後に、ステップS48に示されるように、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を重合して、保護コーティングを備えた製品10を得る。このステップでは、この方法は、プラズマ活性化処理も含む。したがって、フッ素含有材料の表面エネルギーを改善して、後続の材料の結合および使用を容易にすることができる。
【0042】
ポリマー保護コーティング12は、製品本体11の表面全体だけでなく、製品本体11の表面の一部にも形成することができるので、マイクまたはセンサなどの、マスキングを必要とする敏感な構成要素の位置に適している。図7は、本出願の保護コーティングを備えた製品の製造方法の第5の実施の形態のフローチャートである。ステップS50に示されるように、マスキング要素は、製品本体11の敏感な構成要素(マイク、センサなど)の位置をマスキングするために使用される。第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用するステップの前に、表面を洗浄および/または活性化するために、製品本体の2つの表面に対して前処理が行われる。より詳細には、前処理は、プラズマ処理、放電処理、サンドブラスト処理、研磨処理、火炎処理、およびプライマー処理のうちの1つまたは2つ以上を含む。ステップS51に示されるように、第1前駆体分散液は、製品本体11(プリント回路基板など)に噴霧され、第1前駆体分散液は、製品本体11を裏返した後に再び噴霧される。すなわち、第1前駆体分散液は、製品本体11の2つの表面を覆うように完全に噴霧される(マスクされた敏感な構成要素の位置を除く)。次に、ステップS52に示されるように、適用された第1前駆体分散液は、室温で1~10分間乾燥され、ここで、室温は、20~25℃に当たる。この実施の形態では、適用された第1前駆体分散液は、第1乾燥層、すなわち、内側ポリマー層121を形成するために、20℃の温度で2分間乾燥される。ステップS53に示されるように、第2前駆体分散液は、第1乾燥層に対してブラッシングされ、第2前駆体分散液は、製品本体11を回転させた後に再び噴霧される。すなわち、第2前駆体分散液は、第1乾燥層を覆うために全体に噴霧される。次に、ステップS54に示されるように、適用された第2前駆体分散液は、ブラッシング後に、70~90℃の温度で1~10分間乾燥される。この実施の形態では、適用された第2前駆体分散液は、第2乾燥層、すなわち、外側ポリマー層122を形成するために、80℃の温度で3分間乾燥される。ステップS55では、レーザー切断プロセスを行って、製品本体11の不要な部分を切り取って除去する。ステップS56において、敏感な要素上に配置されたマスキング要素が除去される。最後に、ステップS57に示されるように、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液が重合されて、保護コーティングを備えた製品10を得る。
【0043】
上記の説明によれば、本出願の利点は、ポリマー保護コーティングが、製品本体と接触する内側ポリマー層と、内側ポリマー層の外面を覆う外側ポリマー層とを含むことである。外側ポリマー層はフルオロポリマー層であり、内側ポリマー層は非フルオロポリマー層である。したがって、ポリマー保護コーティングまたは製品本体の防水性能、および、耐紫外線経年劣化およびセルフクリーニング機能の能力は、疎水性を十分に活用することによって改善される。外側ポリマー層として使用されるフッ素含有物における接触へのべた付きがなく、紫外線放射に対する耐性がある。加えて、インサイツ重合によって形成された内側ポリマー層と外側ポリマー層は、一緒にポリマー保護コーティングを形成するので、内側ポリマー層と外側ポリマー層は、構造において互いを埋め合わせて、高密度の保護コーティングを形成することができる。さらに、ポリマー保護コーティングと製品本体とにおける防水性能と耐塩水噴霧腐食性が向上される。さらに、本出願において、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液は、異なる製品の製造パラメータに従って、噴霧、ドットコーティング、ブラッシング、浸漬、または霧化された噴霧の異なる組み合わせによって適用することができるので、第1前駆体分散液および第2前駆体分散液を適用する効率が改善することができ、膜形成速度が大幅に改善される。
【0044】
上記の説明は、本出願の単なる例であり、本出願を制限することを意図するものではない。この開示は、当業者に対して様々な変更および変形を有してもよい。本出願の趣旨および原則の範囲内で行われたいかなる変更、同等の交換、改善なども、本開示の請求項の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7