(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーデバイス及び使用の方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20241025BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241025BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20241025BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/00 A
C12N7/02
C12N15/10 112Z
C12N15/10 120Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064859
(22)【出願日】2023-04-12
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523138552
【氏名又は名称】サイティバ ユーエス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Cytiva US LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カヴァラ, アイディン
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01321176(EP,A1)
【文献】特表2018-501222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0025818(US,A1)
【文献】特表2015-522019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンベロープウイルスを精製するためのクロマトグラフィーデバイスであって、
(a)注入口及び排出口を有し、前記注入口と前記排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体;
(b)前記流体流路を横切って前記フィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、前記多孔性フィルタが、
(i)第1の多孔性フィルタ要素;及び
(ii)前記第1のフィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、前記第2の多孔性フィルタ要素が、前記第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、前記第1のフィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)
膜を含み、前記第2のフィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)
膜を含む、
クロマトグラフィーデバイス。
【請求項2】
前記エンベロープウイルスがレンチウイルスである、請求項1に記載のクロマトグラフィーデバイス。
【請求項3】
前記AEX
膜及び前記HIC
膜が、平面膜である、請求項1に記載のクロマトグラフィーデバイス。
【請求項4】
前記多孔性フィルタが、中空円筒状フィルタを含み、前記AEX
膜が前記HIC
膜を囲む、請求項1に記載のクロマトグラフィーデバイス。
【請求項5】
前記多孔性フィルタが、2つ以上のAEX
膜及び2つ以上のHIC
膜を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のクロマトグラフィーデバイス。
【請求項6】
エンベロープウイルスを精製するための方法であって:
(a)注入口及び排出口を有し、前記注入口と前記排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体;前記流体流路を横切って前記フィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、前記多孔性フィルタが、第1の多孔性フィルタ要素;及び前記第1のフィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、前記第2の多孔性フィルタ要素が、前記第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、前記第1のフィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)
膜を含み、前記第2のフィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)
膜を含む、クロマトグラフィーデバイスに、
エンベロープウイルスを含む流体を通すステップと、
(b)前記少なくとも1つのAEX
膜に前記
エンベロープウイルスを結合させるステップと;
(c)前記少なくとも1つのAEX
膜から高塩濃度中に前記
エンベロープウイルスを溶出させるステップと;
(d)前記少なくとも1つのHIC
膜に前記
エンベロープウイルスを結合させるステップと;
(e)前記少なくとも1つのHIC
膜から低塩濃度緩衝液中に前記
エンベロープウイルスを溶出させるステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記エンベロープウイルスがレンチウイルスである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
[0001]RNA(例えば、レンチウイルスRNA)及びDNA(例えば、プラスミドDNA)精製は、異なるクロマトグラフィーデバイスの使用及び高塩濃度を低伝導率緩衝液へ希釈することを一般に必要とする。
【0002】
[0002]精製のクロマトグラフィーデバイス及び方法を改善する必要性がある。
【0003】
[0003]本発明は、先行技術の短所の少なくとも一部の改良を提供する。本発明のこれら及び他の優位性は、下記の説明から明らかになる。
【0004】
[発明の簡単な概要]
[0004]本発明の一態様は、(a)注入口及び排出口を有し、注入口と排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体と;(b)流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、多孔性フィルタが、(i)第1の多孔性フィルタ要素;及び(ii)第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含む、クロマトグラフィーデバイスを提供する。
【0005】
[0005]本発明の別の態様は、核酸を精製する方法であって、(a)注入口及び排出口を有し、注入口と排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体と;(b)流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、多孔性フィルタが、(i)第1の多孔性フィルタ要素;及び(ii)第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含む、クロマトグラフィーデバイスに、核酸を含む流体を通すステップと;少なくとも1つのAEX層に核酸を結合させるステップと;少なくとも1つのAEX層から高塩濃度中に核酸を溶出させるステップと;少なくとも1つのHIC層に核酸を結合させるステップと;低塩濃度緩衝液中に核酸を溶出させるステップとを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1A及び
図1Bは、筐体並びに筐体と係合している環状排出口部を有する組み立てられたクロマトグラフィーデバイスの上部及び底部の斜視図をそれぞれ示す。
【
図1B】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1A及び
図1Bは、筐体並びに筐体と係合している環状排出口部を有する組み立てられたクロマトグラフィーデバイスの上部及び底部の斜視図をそれぞれ示す。
【
図1C】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Cは、
図1Aに示される組み立てられたデバイスの断面図を示し、環状注入口プレート及びフィルタも示す。
【
図1D】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1E】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1F】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1G】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1H】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1I】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1I、
図1J及び
図1Kは、
図1Bに示される環状排出口部の上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1J】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1I、
図1J及び
図1Kは、
図1Bに示される環状排出口部の上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図1K】本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1I、
図1J及び
図1Kは、
図1Bに示される環状排出口部の上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【
図2A】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2Aは、組み立てられたクロマトグラフィーデバイスの上部斜視図を示す。
【
図2B】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2B及び
図2Cは、
図2Aに示されるデバイスの異なる断面図を示す。
【
図2C】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2B及び
図2Cは、
図2Aに示されるデバイスの異なる断面図を示す。
【
図2D】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2Dは、デバイスの前後の分解斜視図を示す。
【
図2E】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2E及び
図2Fは、デバイスの注入口部の底部斜視図及び断面図をそれぞれ示し、
図2G及び
図2Hは、デバイスの排出口部の側面図及び断面図をそれぞれ示す。
【
図2F】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2E及び
図2Fは、デバイスの注入口部の底部斜視図及び断面図をそれぞれ示し、
図2G及び
図2Hは、デバイスの排出口部の側面図及び断面図をそれぞれ示す。
【
図2G】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2E及び
図2Fは、デバイスの注入口部の底部斜視図及び断面図をそれぞれ示し、
図2G及び
図2Hは、デバイスの排出口部の側面図及び断面図をそれぞれ示す。
【
図2H】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2E及び
図2Fは、デバイスの注入口部の底部斜視図及び断面図をそれぞれ示し、
図2G及び
図2Hは、デバイスの排出口部の側面図及び断面図をそれぞれ示す。
【
図2I】円筒状中空フィルタ構成を有する本発明の別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの図面である。
図2Iは、組み立てられたデバイスの上部の部分的破断図を示す図面である。
【
図3】本発明別の態様に記載のクロマトグラフィーデバイスの斜視図を示す図面である。
【0007】
[発明の詳細な説明]
[0009]本発明の一態様によると、(a)注入口及び排出口を有し、注入口と排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体と;(b)流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、多孔性フィルタが、(i)第1の多孔性フィルタ要素;及び(ii)第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含む、クロマトグラフィーデバイスが提供される。
【0008】
[0010]クロマトグラフィーデバイスの一態様において、AEX層(複数可)及びHIC層(複数可)は、平面膜である。
【0009】
[0011]クロマトグラフィーデバイスの別の態様において、AEX層(複数可)及びHIC層(複数可)は、例えば、放射状流が可能になるように中空円筒状フィルタを形成するように配置され、AEX層はHIC層を囲む。
【0010】
[0012]クロマトグラフィーデバイスの典型的な態様は、少なくとも2つのAEX層、及び少なくとも2つのHIC層を含む。
【0011】
[0013]別の態様において、核酸を精製するための方法であって、(a)注入口及び排出口を有し、注入口と排出口の間の流体流路を画定するフィルタ筐体と;流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、多孔性フィルタが、第1の多孔性フィルタ要素;及び第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、第1の多孔性フィルタ要素の下流に配置されており、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含む、クロマトグラフィーデバイスに核酸を含む流体を通すステップと;(b)少なくとも1つのAEX層に核酸を結合させるステップと;(c)少なくとも1つのAEX層から高塩濃度中に核酸を溶出させるステップと;(d)少なくとも1つのHIC層に核酸を結合させるステップと;(e)少なくとも1つのHIC層から低塩濃度緩衝液中に核酸を溶出させるステップとを含む、方法が提供される。
【0012】
[0014]有利には、単一のクロマトグラフィーデバイスが使用されえ、精製するための方法は、従来の方法より複雑でなく、緩衝液の消費を減少させる。例えば、2つの精製行為が、高流速(10膜容積/分)で1つの操作で実行される。レンチウイルス及びAAVは、その安定性を助ける低伝導率緩衝液で疎水性相互作用媒体から溶出されうる。
【0013】
[0015]次に、本発明の構成要素のそれぞれについて、以下でより詳細に記載されることになり、同様の構成要素は、同様の参照番号を有する。
【0014】
[0016]
図1A~
図1Kは、本発明の一態様に記載の、平面フィルタ構成を有するクロマトグラフィーデバイスの一態様を示す図面である。
図1A及び1Bは、筐体及び筐体と係合している環状排出口部を有する組み立てられたデバイスの上部及び底部の斜視図をそれぞれ示す;
図1Cは、
図1Aに示される組み立てられたデバイスの断面図を示し、環状注入口プレート及びフィルタも示す;
図1Dは、デバイスの分解図を示し、
図1F、
図1G及び
図1Hは、環状注入口プレートの上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す;
図1I、
図1J及び
図1Kは、
図1Bに示される環状排出口部の上部斜視図、底部斜視図及び部分的破断図をそれぞれ示す。
【0015】
[0017]
図1A~
図1Kは、(環状排出口部12のねじ切りされた外壁12’との螺合可能な係合のための)ねじ切りされた内側壁10’に囲まれている環状内径D、底面1004近くでより小さい内径d1を有する内方に面する部分1025も含む側壁、環状突出リング1015及び(環状注入口プレートの突出部を受けるための)開口部1010の基部を囲む環状肩部1020を含む底面1004を有するフィルタ筐体10;内側にねじ山1102を任意選択で備える注入口11Aを含む突出部1101、上面1103、注入口チャンバ11B(フィルタに向かって広くなるように、一般に凹状構成で示される)を提供する環状突出リング1115を含む下面1104を有する環状注入口プレート11;並びにねじ切りされた外壁12’に囲まれている環状外径D2を有する環状排出口部12Aを備え、排出口部が、o-リングなど弾性のある要素71を含む溝75A及び内部溝75Bを含む内面1204を含み、排出口チャンバ12B(フィルタに向かって広くなるように、一般に凹状構成で示される)を提供する環状突出リング1215、及び内側にねじ山1202がある排出口12Aを含み、デバイスが、注入口と排出口の間の流体流路13を画定し、流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタ150(平面構成を有して示される)を含み、フィルタが、第1の多孔性フィルタ要素151(少なくとも2つの層を有しうる)及び第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素152(少なくとも2つの層を有しうる)を含み、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含み、第1の多孔性フィルタ要素151は、第2の多孔性フィルタ要素152の上流に配置されるクロマトグラフィーデバイス100の一態様を示す。好ましくは、メッシュ又はスクリーンなどの任意選択の支持要素160が、多孔性フィルタ要素の下流に配置され、例えば支持要素160は、第2の多孔性フィルタ要素152の下流表面に接触している。別法として又は更に、支持要素、又は別の支持要素が、多孔性フィルタ要素の上流に配置されてもよく、例えば、支持要素は、第1の多孔性フィルタ要素151の上流表面に接触している。
【0016】
[0018]この図解された態様は、(例えば、ねじ切りされた端部又は接続金具を有する導管と接続するための)ねじ切りされた注入口及び排出口を示すが、本発明の態様は、そのように限定されるものではなく、他の接続(例えば、トリクランプ/サニタリーフランジ接続)は、当業者の技術範囲内である(o-リングなど弾性のあるメンバーを受けるための環状溝との接続面をそれぞれ有する注入口及び排出口を示す
図2A~
図2H並びに
図3も参照のこと)。
【0017】
[0019]
図2A~
図2Iは、注入口21Aを持ち、(排出口部22のねじ切りされた外壁22’との螺合可能な係合のための)ねじ切りされた内側壁20’に囲まれている環状内径D3を有する注入口チャンバ21Bを有し、側壁は底面2004近くでより小さい内径d3を有する内方に面する部分2025も含む、注入口部21;並びに底面25’を持つ下端25(注入及び排出口部が完全に係合された場合に、注入口部の内方に面する部分2025の上面に接触することになる)、(注入口部のねじ切りされた内壁20’と螺合可能な係合のために)ねじ切りされた外側壁22’に囲まれている環状外径D3、及び内側壁24’に囲まれた環状内径D4を有し、上部壁26’を有するフィルタチャンバ22B、及びフィルタカートリッジ270の排出口273を受けるためのフィルタカートリッジ排出口チャンバ28B(フィルタチャンバ22Bの上/下流)を提供する排出口22Aを持つ排出口部22を有するフィルタ筐体20を備えるクロマトグラフィーデバイス200の別の態様を示す図面である(
図2Aは斜視図を示し、
図2B及び
図2Cは組み立てられたデバイスの異なる断面図を示す)。この図解された態様において(
図2G及び
図2Hを参照のこと)、下端25の近くの側壁22’のねじ切りされていない部分は、(例えば、注入口と排出口部の間の流体の厳密な密封を改善するための)o-リングなど弾性のある要素を受けるための溝27を含み;
図2Iは、デバイスの上部の部分的破断図を示す図面である。
【0018】
[0020]デバイス200は、中空円筒状多孔性フィルタ250(
図2Iを参照のこと)を含むフィルタカートリッジ270で注入口と排出口の間の流体流路23(
図2Bを参照のこと)を画定し、フィルタカートリッジ及びフィルタが、流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置され、中空円筒状多孔性フィルタが、第1の多孔性フィルタ要素251及び第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素252を含み、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含み、第1の多孔性フィルタ要素251が、第2の多孔性フィルタ要素252の上流及びそれを囲んで配置される(中空円筒状構成を有する各多孔性フィルタ;
図2Iは、レイドオーバープリーツ状のフィルタ要素251及び252を含むフィルタ250を示す)。図解されるフィルタカートリッジは、閉鎖されている下端キャップ271[(流れを外側に向けるための)溝272を有する下面271A及び上面271Bを有する]及び中空伸長カートリッジ排出口273を含む開口上端キャップ272(o-リングなど弾性のある要素を受けるための2本の溝274A、274Bで示される少なくとも1つの溝を有する外壁を有する)及び第1の端部260A及び第2の端部260Bを有する内部コア260など任意選択の支持要素(それぞれの開口チャンバ262A、262Bを有する端部、その間に中実部263)及び第2の端部260B近くに、開口チャンバへと側壁を通過する穿孔264がある側壁(図解される内部コアは、側壁の外面に、第1の端部から第2の端部へ連続的な角度で配置されることが示されるリブ266と溝267を有し、排出口に向かう液体の流れを改善することができる)、並びに外側のメッシュ又はケージ261を有する。
【0019】
[0021]一部の態様において、第1の多孔性フィルタ要素251は、プリーツ状の要素であり、レイドオーバープリーツ要素でありうる。一部の態様において、第2の多孔性フィルタ要素252は、プリーツ状の要素であり、レイドオーバープリーツ要素でありうる。例えば、第1及び第2の多孔性要素は、両方ともプリーツ状要素でありうる(例えば、
図2Iに示す)。別法として、第2の多孔性要素は、第1の多孔性要素に巻きつくことができる。
【0020】
[0022]好ましくは、デバイス200は、ベントを含み、注入口部21は、ねじ切りされたベントポート290及びねじ切りされたベント弁291を含み、排出口部22は、ねじ切りされたベントポート292及びねじ切りされたベント弁293を含む。
【0021】
[0023]デバイスがベントを含む態様において、デバイスは、デバイスから効率的に空気を置き換えるために、ベント(複数可)を開放して上方への流れで操作されるべきである。従って、空気がデバイスから置き換えられうるように、デバイスの注入口側を下に向けて、フィルタを通る一様な流体流れを確立するべきである。この手順に従わないと、圧力が増大し、クロマトグラフィー成績が低下する可能性があり、そのため、デバイス注入口の上流に圧力計を接続し、圧力を監視することが望ましい場合がある。ベント(複数可)は、液体の流れが最初に確立される際に開かれ、空気の全てが液体に置き換えられた際に閉じられるべきである。デバイスの注入口側をその後上に向け、液体をデバイスに通すべきである。
【0022】
[0024]
図3は、注入口321Aを持つ注入口部321及び(注入口部と螺合可能に係合できる)排出口部322を有するフィルタ筐体320を備え、ねじ切りされたベント弁391及び393を持つ本発明によるクロマトグラフィーデバイス300の別の態様の斜視図を示す図面である。注入口部321及び排出口部322の長さ[及び内部要素(フィルタカートリッジ、注入口チャンバ、フィルタチャンバ及びフィルタカートリッジ排出口チャンバ、等を含む要素など)の対応する長さ]並びに注入口321A及び排出口322Aの接続の直径(直径は、デバイス300においてより大きい)を除いて、デバイス300の構造及び操作は、デバイス200のそれと基本的に対応する。
【0023】
陰イオン交換層
[0025]一般に、陰イオン交換(AEX)層は、固定された正に荷電した(陽イオン性)官能基を含む基材及び負に荷電した(陰イオン性)種の選択透過性を可能にする移動陰イオン(対イオン)を含む任意の半透膜である。基材は、任意の適切な材料、好ましくはポリエーテルスルホン(PES)、セルロース、メタクリレート、親水性ポリマーなどの親水性材料、又はその任意の組合せである。
【0024】
[0026]一部の態様において、AEX層における基材は、親水性であるポリエーテルスルホン基材を含み、架橋されたコーティングを含んでもよく又は含まなくてもよい。本発明の好ましい態様において、ポリエーテルスルホン基材は、ペンダント陽イオン性基、特に第4級アンモニウム基を含む架橋されたコーティングを有する。
【0025】
[0027]架橋されたコーティングは、ポリアミン、ジアリルアミンコポリマー(例えば、エポキシ基を持つジアリルアミンコポリマー)及び/又はアクリルコポリマーを一般に含み、これら構成要素のうち1つ若しくは複数は、ポリマーの骨格に直接又は間接的に結合したペンダント陽イオン性基を含む。必要に応じて、ジアリルアミンコポリマーは、エピクロルヒドリンと反応されて、エポキシ部位を提供することができる。ポリアミンは、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン又はポリエチレンイミンでありうる。
【0026】
[0028]例えば、架橋されたコーティングは、ペンダント陽イオン性基(例えば、第4級アンモニウム基)を持つポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン)、任意選択でポリアルキレングリコールポリグリシジルエーテルの反応産物を含むことができる。別の例において、架橋されたコーティングは、ジアリルアミン、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド、陽イオン性基(例えば、第4級アンモニウム基)を有するアクリル単量体、及び架橋剤を含む組成物を架橋することによって調製される。別の例において、架橋されたコーティングは、エポキシ基及びペンダント陽イオン性基を有するジアリルアミンコポリマー、ポリエチレンイミン、並びに陽イオン性基を有するアミン反応性化合物(例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド)を含む組成物を架橋することによって調製される。別の例において、架橋されたコーティングは、ジアリルアミンコポリマー、第4級アンモニウム基を有するアクリル単量体、及び架橋剤[例えば、N-(アルコキシメチル)アクリルアミド]を含む。別の例において、架橋されたコーティングは、ジアリルアミンコポリマー、第4級アンモニウム基を有するアクリル単量体(例えば、アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウムハライド又はアクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド)及び架橋剤を含む。別の例において、架橋されたコーティングは、ペンダント陽イオン性基を有し、グリシジルアルキルアクリラート、メタクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド及びメタクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される重合された単量体を含むアクリルコポリマーを含む。別の例において、架橋されたコーティングは、ペンダント陽イオン性基を有し、ペンタエチレンヘキサミンに連結されたアクリルコポリマーを含む。
【0027】
[0029]コーティングは、任意の適切な方法及び/又は架橋剤を使用して架橋されうる。架橋剤は、尿素、ハロ、エポキシ、イソシアナート、カルボキシル又は酸クロリドなど、コーティング中のポリマーの1つ又は複数の骨格内の基(例えば、アミノ)と反応性がある官能基を持つ多官能性薬剤である。好ましい架橋剤は、ポリグリシジル化合物である。適切なポリグリシジル化合物の例は、ポリアルキレングリコールポリグリシジルエーテルである。架橋剤の例には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン及びその組合せがある。架橋は、水、少なくとも1つの有機溶媒、又はその混合物を含む溶媒中で起こりうる。必要に応じて、強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)などの触媒が、使用されうる。
【0028】
[0030]好ましい態様において、コーティング溶液は、ジアリルアミン、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド、陽イオン性基(例えば、第4級アンモニウム基)を有するアクリル単量体のコポリマー、及び架橋剤を含む。
【0029】
[0031]コーティング組成物は、適切な溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール及びプロパノールなどのアルコール並びにその組合せ)中に単量体(例えば、ポリアミン)を例えば溶解することによって調製されうる。溶媒は、コーティング組成物の質量に対して約40%~約99%の量、好ましくは約90%~約99%の量で存在しうる。単量体は、コーティング組成物の質量に対して約1%~約5%の量、好ましくは約1%~約2.5%の量で存在しうる。コーティング溶液を、任意の適切な技術(例えば、浸漬塗装、吹付け塗装、等)を使用して基材に一旦塗布したら、AEX層が形成されるように溶液を硬化させて、基材上に架橋されたコーティングを形成することができる。
【0030】
[0032]架橋されたコーティングを含むPES基材については、例えば、米国特許第6,780,327号に更に記載される。
【0031】
[0033]一部の態様において、AEX層中の基材は、セルロースを含む。適切なセルロースポリマーには、セルロース、再生セルロース、セルロースエステル(例えば、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースブチラート、酢酸酪酸セルロース)、硝酸セルロース(ニトロセルロースとしても公知である)、メチルセルロース、エチルセルロース、及びその組合せ(例えば、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物)がある。
【0032】
[0034]一部の態様において、AEX層中の基材は、メタクリレートポリマーを含む。メタクリレートポリマーの例には、ポリメタクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルコポリマーがある。
【0033】
[0035]一部の態様において、AEX層中の基材は、親水性ポリマーを含む。適切な親水性ポリマーの例には、ポリアミド、ポリイミド、ポリアルキレンオキシド、親水性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びポリビニルアルコールがある。ポリアミドの例には、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11及び/又はナイロン12などのナイロンがある。ポリイミドの例には、脂肪族ポリイミド、芳香族ポリイミド、又はポリ(アミド酸)塩前駆体から得られるポリイミドなどその混合物がある。ポリアルキレンオキシドの例には、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドなどのC1~C10ポリアルキレンオキシドがある。別法として、親水性ポリマーは、親水性官能基(例えば、ヒドロキシ、アミノ、アルデヒド、カルボキシ、チオ、ホスファト、等)を有するように修飾された疎水ポリマーでありうる。そのような疎水ポリマーには、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)がある。
【0034】
[0036]ペンダント陽イオン性官能基は、基材(又はその上に架橋されたコーティング)に固定され(例えば、共有結合)、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム又はその組合せなど、任意の適切な陽イオン性基を含む。一部の実施形態において、陽イオン性官能基は、窒素が、基材及び他の3つの部分に結合している第4級アンモニウム基である。一般に、第4級アンモニウム基は、構造-NR3
+を有し、Rの各例は、同一又は異なっており、水素、C1~10アルキル、C3~8シクロアルキル若しくはアリールである。好ましくは、第4級アンモニウム基は、トリアルキルアンモニウムである。
【0035】
[0037]陽イオン性官能基の対陰イオンは、対陰イオンが可動性であり、処理される試料の透過性に影響を及ぼさないので限定されない。例えば、対陰イオンは、水素化物、ハロゲン化物(例えば、F-、Cl-、Br-、又はI-)、アジド、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、水酸化物、シアン化物、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、チオ硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩又はその組合せでありうる。好ましい態様において、対陰イオンは、ハロゲン化物である。
【0036】
[0038]一部の実施形態において、固定される陽イオン性官能基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基又はその組合せを含むことができ、クロマトグラフィーデバイスの使用により陽イオン性基を形成することができる。これらの基は、唯一のペンダント官能基である、又はペンダント陽イオン性官能基に加えうる。
【0037】
[0039]ペンダント陽イオン性官能基は、基材に直接又は間接的に結合している。直接的に結合しているとは、結合が、基材(又はその上に架橋されたコーティング)とペンダント陽イオン性官能基の間に存在することを意味する。間接的に結合しているとは、スペーサーが、基材(又はその上に架橋されたコーティング)とペンダント陽イオン性官能基の間に存在することを意味する。スペーサーは、任意の適切な長さ又は構造(例えば、直鎖状又は分枝状)でありえ、1つ若しくは複数のアルキレン(-CH2-)基、任意選択でヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、エステル、尿素、ウレタンから選択される1つ若しくは複数の官能基及びその組合せを一般に含むことになる。スペーサー基は、任意の適切な長さのものでありうる。例えば、スペーサー基は、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)原子(例えば、炭素原子)を有する基でありうる。一態様において、スペーサー基は、長さ約2~6(即ち、1、2、3、4、5又は6)原子、好ましくは長さ3炭素原子でありうる。
【0038】
[0040]一部の態様において、基材(又はその上に架橋されたコーティング)が重合され、形成された場合に基材が陽イオン性官能基を既に含むように、単量体のうちの少なくとも1つが陽イオン性官能基を含む。他の態様において、基材(又はその上に架橋されたコーティング)は、本明細書に記載の通り、その初期合成後に修飾されて直接又は間接的のいずれかで結合される1つ若しくは複数の陽イオン性官能基を付加される。一例において、基材は、ペンダントアンモニウム基を形成するために4級化されるペンダントアミノ基を含む。
【0039】
[0041]AEX層は、任意の適切な細孔構造、例えば、細孔サイズ(例えば、泡立ち点によって、若しくは例えば、米国特許第4,340,479号に記載されるKLによって証明される、又は毛管凝縮フローポロメトリによって証明される)、平均流量孔(MFP)サイズ[例えば、ポロメータを使用して特徴付けられる場合、例えば、ポールベアポロメータ(Porvair Porometer)(Porvair社、Norfolk、英国)又は商標ポロラックス(POROLUX)(Porometer.com;ベルギー)で利用可能なポロメータ]、細孔定格、細孔直径(例えば、米国特許第4,925,572号に記載される修飾OSU F2試験を使用して例えば特徴付けられる場合)、又は除去定格媒体を有しうる。使用される細孔構造は、利用される粒子のサイズ、処理される流体の組成物、及び処理される液体の所望の流出レベルによって決まる。
【0040】
[0042]例えば、AEX層は、例えば、平均細孔直径約0.01μm~約10μmを有することができる。例えば、平均細孔サイズは、0.01μm又はより大きい(例えば、0.01μm若しくはより大きい、0.02μm若しくはより大きい、0.05μm若しくはより大きい、0.1μm若しくはより大きい、0.2μm若しくはより大きい、0.3μm若しくはより大きい、0.5μm若しくはより大きい、0.8μm若しくはより大きい、1μm若しくはより大きい、2μm若しくはより大きい、又は5μm若しくはより大きい)。別法として又は組み合わせて、平均細孔サイズは、10μm又はより小さい(例えば、8μm若しくはより小さい、5μm若しくはより小さい、2μm若しくはより小さい、1μm若しくはより小さい、0.8μm若しくはより小さい、0.5μm若しくはより小さい、0.3μm若しくはより小さい、0.2μm若しくはより小さい、0.1μm若しくはより小さい、0.08μm若しくはより小さい、0.05μm若しくはより小さい、又は0.02μm若しくはより小さい)。前述の終点の任意の2つは、閉じた範囲を定義するために使用されえ、又は1つの終点は、無制限の範囲を定義するために使用されうる。一部の態様において、平均細孔サイズは、約0.1μm~約5μm、約0.1μm~約2μm、0.2μm~約5μm、0.2μm~約1μm、約0.1μm~約0.2μm、約0.5μm~約2μm、約0.05μm~約0.3μm、0.1μm、2μm又は0.45μmである。
【0041】
[0043]AEX層は、約50μm~約300μmなど任意の適切な厚さを有することができる。例えば、平均厚さは、50μm又はより大きくてもよい(例えば、60μm若しくはより大きい、70μm若しくはより大きい、80μm若しくはより大きい、100μm若しくはより大きい、120μm若しくはより大きい、140μm若しくはより大きい、160μm若しくはより大きい、180μm若しくはより大きい、200μm若しくはより大きい、220μm若しくはより大きい、240μm若しくはより大きい、260μm若しくはより大きい又は280μm若しくはより大きい)。別法として又は組み合わせて、平均厚さは、300μm又はより小さい(例えば、280μm若しくはより小さい、260μm若しくはより小さい、240μm若しくはより小さい、220μm若しくはより小さい、200μm若しくはより小さい、180μm若しくはより小さい、160μm若しくはより小さい、140μm若しくはより小さい、120μm若しくはより小さい、100μm若しくはより小さい、80μm若しくはより小さい、70μm若しくはより小さい又は60μm若しくはより小さい)。前述の終点の任意の2つは、閉じた範囲を定義するために使用されえ、又は1つの終点は、無制限の範囲を定義するために使用されうる。一部の態様において、平均細孔サイズは、約60μm~約200μm、約80μm~約170μm、90μm~約160μm、100μm~約200μm、又は約100μm~約200μmである。
【0042】
疎水性相互作用層
[0044]一般に、疎水性相互作用(HIC)層は、固定化されたアルキル及び/又はフェニル含有基を含む基材を含む任意の半透膜である。基材は、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロース、メタクリレート、親水性ポリマー又はその任意の組合せなど、任意の適切な材料である。
【0043】
[0045]一部の態様において、HIC層の基材は、架橋されたコーティングを含んでも又は含まなくてもよいポリエーテルスルホン基材を含む。架橋されたコーティングは、AEX層に関して記載したのと同じでありえ、1つ若しくは複数の単量体が、アルキル及び/若しくはフェニル含有基を含む、又は架橋されたコーティングが後に修飾されてアルキル及び/若しくはフェニル含有基を含む。
【0044】
[0046]一部の態様において、HIC層の基材は、セルロースを含む。適切なセルロースポリマーは、セルロース、再生セルロース、セルロースエステル(例えば、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースブチラート、酢酸酪酸セルロース)、加水分解セルロースエステル、硝酸セルロース(ニトロセルロースとしても公知である)、メチルセルロース、エチルセルロース、及びその組合せ(例えば、酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物)がある。
【0045】
[0047]本発明の好ましい態様において、HIC層は、固定されたアルキル及び/又はフェニル含有基、好ましくはフェニル基を含む加水分解された酢酸セルロースを含む。この態様の一部の実施形態において、酢酸セルロースは、セルロース(例えば、再生セルロース)を含む例えば線維で補強されている。
【0046】
[0048]一例において、基材は、セルロースエステル基材を膨潤させる及び/又はエステル基を水酸基へ加水分解して、セルロース水和物(加水分解された酢酸セルロース)基材を形成する溶液と接触されるセルロースエステル(例えば、酢酸セルロース)を含む。溶液は、水、アルコール(例えば、エタノール)など1つ若しくは複数の有機溶媒、又はその組合せを含む。セルロースエステルを同時に膨潤及び加水分解するには、溶液は、水、任意選択で有機溶媒を必要とする。さもなければ、膨潤及び加水分解は、段階的に実行されうる。溶液は、酸(例えば、酢酸)、酸の塩(例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、等など、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、等の第1又は第2族塩)及びその組合せなど、1つ若しくは複数の添加物を更に含みうる。必要に応じて、セルロース水和物基材は、本明細書に記載の通り、1つ若しくは複数の架橋剤、溶媒、及び/又は触媒と架橋されうる。
【0047】
[0049]一部の態様において、HIC層の基材は、メタクリレートポリマーを含む。メタクリレートポリマーの例には、ポリメタクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルコポリマーがある。
【0048】
[0050]一部の態様において、HIC層の基材は、親水性ポリマーを含む。適切な親水性ポリマーの例には、ポリアミド、ポリイミド、ポリアルキレンオキシド、親水性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びポリビニルアルコールがある。ポリアミドの例には、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11及び/又はナイロン12などのナイロンがある。ポリイミドの例には、脂肪族ポリイミド、芳香族ポリイミド、又はポリ(アミド酸)塩前駆体から得られるポリイミドなどその混合物がある。ポリアルキレンオキシドの例には、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドなどのC1~C10ポリアルキレンオキシドがある。
【0049】
[0051]ペンダントアルキル及び/又はフェニル含有基は、基材(又はその上に架橋されたコーティング)に固定される(例えば、共有結合)。
【0050】
[0052]一般に、アルキル含有基のアルキル部分は、直鎖又は分枝状のC1~10アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9又はC10アルキル)である。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、neo-ペンチル、t-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルがある。アルキル含有基は、無置換であってもよく、又はC3~8シクロアルキル(C3、C4、C5、C6、C7又はC8シクロアルキル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl及び/又はI)、ハロ-C1~C10アルキル、ニトロ、C2~6アルケニル、アリール(例えば、フェニル、ナフチル)及びその組合せなど、1つ若しくは複数(例えば、1、2、3、4、5又は6個)の置換基で置換されてもよい。置換基は、同一でも又は異なってもよいが、好ましくは、同一である。一部の実施形態において、アルキル含有基は、n-ブチル、ヘキシル又はオクチルである。
【0051】
[0053]一般に、フェニル含有基のフェニル部分は、無置換である、又はC1~10アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9又はC10アルキル)、C3~8シクロアルキル(C3、C4、C5、C6、C7又はC8シクロアルキル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl及び/又はI)、ニトロ、C2~6アルケニル、アリール(例えば、フェニル、ナフチル)及びその組合せなど、1つ若しくは複数(例えば、1、2、3、4、5又は6個)の置換基で置換される。置換基は、同一でも又は異なってもよいが、好ましくは、同一である。フェニルが置換基で置換される場合、芳香環水素は、置換基と置き換えられ、これは、有効な水素、例えば、2、3、4、5及び/又は6位のいずれかで起こりえ、1位は、直接又は間接的な、基材に対するフェニル基の結合点である。一部の実施形態において、フェニル含有基は、フェニルである。
【0052】
[0054]上の態様のいずれかにおいて、構造中の原子の数の範囲が示される(例えば、C1~10、C1~8、C1~6、C1~4、等)ときはいつも、表示される範囲に含まれる炭素原子の任意の部分的範囲又は個別の数も使用されうることが、特に企図される。従って、例えば本明細書に参照される任意の化学基(例えば、アルキル、シクロアルキル、等)に関して使用される1~8炭素原子(例えば、C1~C8)、1~6炭素原子(例えば、C1~C6)、1~4炭素原子(例えば、C1~C4)、1~3炭素原子(例えば、C1~C3)、又は2~8炭素原子(例えば、C2~C8)の範囲の説明は、必要に応じて、1、2、3、4、5、6、7及び/又は8炭素原子、並びに任意の部分的範囲(必要に応じて、例えば、1~2炭素原子、1~3炭素原子、1~4炭素原子、1~5炭素原子、1~6炭素原子、1~7炭素原子、1~8炭素原子、2~3炭素原子、2~4炭素原子、2~5炭素原子、2~6炭素原子、2~7炭素原子、2~8炭素原子、3~4炭素原子、3~5炭素原子、3~6炭素原子、3~7炭素原子、3~8炭素原子、4~5炭素原子、4~6炭素原子、4~7炭素原子、4~8炭素原子、等)を包含し、特に記載する。
【0053】
[0055]ペンダントアルキル及び/又はフェニル含有基は、基材(又はその上に架橋されたコーティング)に直接又は間接的に結合している。直接的に結合しているとは、結合が、基材(又はその上に架橋されたコーティング)とペンダントアルキル及び/又はフェニル含有基の間に存在することを意味する。間接的に結合しているとは、スペーサーが、基材(又はその上に架橋されたコーティング)とペンダントアルキル及び/又はフェニル含有基の間に存在することを意味する。スペーサーは、任意の適切な長さ又は構造(例えば、直鎖状又は分枝状)でありえ、1つ若しくは複数のアルキレン(-CH2-)基、任意選択でヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、エステル、尿素、ウレタンなどの官能基の1つ若しくは複数、及びその組合せを一般に含むことになる。スペーサー基は、任意の適切な長さのものでありうる。例えば、スペーサー基は、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)原子(例えば、炭素原子)を有する基でありうる。一態様において、スペーサー基は、長さ約2~6(即ち、1、2、3、4、5又は6)原子、好ましくは長さ3炭素原子でありうる。
【0054】
[0056]一部の態様において、基材(又はその上に架橋されたコーティング)が重合され、形成された場合に基材(又はその上に架橋されたコーティング)がアルキル及び/又はフェニル含有基を既に含むように、単量体のうち少なくとも1つがアルキル及び/又はフェニル含有基を含む。他の態様において、基材(又はその上に架橋されたコーティング)は、本明細書に記載の通り、その初期合成後に修飾されて直接又は間接的のいずれかで結合される1つ若しくは複数のアルキル及び/又はフェニル含有基を付加される。一例において、基材は、ヒドロキシル、エポキシド及び/又はアルデヒド基など1つ若しくは複数の官能基を含み、アルキル及び/又はフェニル含有基を付加するために、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アルキルアミン(例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン)、フェニルグリシジルエーテル若しくはアニリンを使用して修飾されうる。
【0055】
[0057]HIC層は、任意の適切な細孔構造、例えば、細孔サイズ(例えば、泡立ち点によって、若しくは例えば、米国特許第4,340,479号に記載されるKLによって証明される、又は毛管凝縮フローポロメトリによって証明される)、平均流量孔(MFP)サイズ[例えば、ポロメータを使用して特徴付けられる場合、例えば、ポールベアポロメータ(Porvair社、Norfolk、英国)又は商標ポロラックス(Porometer.com;ベルギー)で利用可能なポロメータ]、細孔定格、細孔直径(例えば、米国特許第4,925,572号に記載される修飾OSU F2試験を使用して例えば特徴付けられる場合)、又は除去定格媒体を有しうる。使用される細孔構造は、利用される粒子のサイズ、処理される流体の組成物、及び処理される液体の所望の流出レベルによって決まる。
【0056】
[0058]例えば、HIC層は、例えば、平均細孔直径約0.1μm~約20μmを有することができる。例えば、平均細孔サイズは、0.1μm又はより大きい(例えば、0.2μm若しくはより大きい、0.3μm若しくはより大きい、0.5μm若しくはより大きい、0.8μm若しくはより大きい、1μm若しくはより大きい、2μm若しくはより大きい、3μm若しくはより大きい、5μm若しくはより大きい、8μm若しくはより大きい、10μm若しくはより大きい、12μm若しくはより大きい、15μm若しくはより大きい、又は18μm若しくはより大きい)。別法として又は組み合わせて、平均細孔サイズは、20μm又はより小さい(例えば、18μm若しくはより小さい、15μm若しくはより小さい、12μm若しくはより小さい、10μm若しくはより小さい、8μm若しくはより小さい、5μm若しくはより小さい、3μm若しくはより小さい、2μm若しくはより小さい、1μm若しくはより小さい、0.8μm若しくはより小さい、0.5μm若しくはより小さい、0.3μm若しくはより小さい、又は0.2μm若しくはより小さい)。前述の終点の任意の2つは、閉じた範囲を定義するために使用されえ、又は1つの終点は、無制限の範囲を定義するために使用されうる。一部の態様において、平均細孔サイズは、約0.1μm~約15μm、約0.1μm~約10μm、0.2μm~約5μm、0.2μm~約1μm、約1μm~約5μm、約2μm~約4μm、3μm又は0.45μmである。
【0057】
[0059]HIC層は、約50μm~約400μmなど任意の適切な厚さを有することができる。例えば、平均厚さは、50μm又はより大きい(例えば、60μm若しくはより大きい、70μm若しくはより大きい、80μm若しくはより大きい、100μm若しくはより大きい、120μm若しくはより大きい、140μm若しくはより大きい、160μm若しくはより大きい、180μm若しくはより大きい、200μm若しくはより大きい、220μm若しくはより大きい、240μm若しくはより大きい、260μm若しくはより大きい、280μm若しくはより大きい、300μm若しくはより大きい、320μm若しくはより大きい、340μm若しくはより大きい、360μm若しくはより大きい、又は380μm若しくはより大きい)ことができる。別法として又は組み合わせて、平均厚さは、400μm又はより小さい(例えば、380μm若しくはより小さい、360μm若しくはより小さい、340μm若しくはより小さい、320μm若しくはより小さい、300μm若しくはより小さい、280μm若しくはより小さい、260μm若しくはより小さい、240μm若しくはより小さい、220μm若しくはより小さい、200μm若しくはより小さい、180μm若しくはより小さい、160μm若しくはより小さい、140μm若しくはより小さい、120μm若しくはより小さい、100μm若しくはより小さい、80μm若しくはより小さい、70μm若しくはより小さい又は60μm若しくはより小さい)。前述の終点の任意の2つは、閉じた範囲を定義するために使用されえ、又は1つの終点は、無制限の範囲を定義するために使用されうる。一部の態様において、平均細孔サイズは、約60μm~約300μm、約80μm~約270μm、90μm~約260μm、100μm~約250μm、又は約250μmである。
【0058】
AEXとHIC層の両方
[0060]AEX及びHIC膜は、商業的に購入する又は当業者に公知の方法を使用して合成するなど、任意の適切な方法によって準備されうる。例えば、市販のAEX膜には、ムスタング(MUSTANG)(商標)Qシリーズ(Pall社、Port Washington、NY)及びザルトバインド(SARTOBIND)Q(商標)又はザルトバインドSTIC(商標)(Satorius AG社、Goettingen、ドイツ)がある。市販のHIC膜には、ザルトバインド(商標)フェニル(Phenyl)(Sartorius AG社、Goettingen、ドイツ)がある。
【0059】
[0061]基材又は層を形成しているポリマーの親水性及び疎水性は、必要に応じて、任意の適切な方法によって測定されうる。例えば、少量の水が、ポリマーのフィルム又は押圧されたペレット上に置かれてもよく、水滴の側面図の接触角(即ち、固体表面と接触している液体の角度)が、例えば、接触角測角器を使用して測定されうる。液滴測定は、接触角を測定する最も一般的な方法である。一般に、90°未満の接触角は、親水性材料と見なされ、90°より大きい接触角は、疎水性材料と見なされる。
【0060】
[0062]別法として、層は、任意の所望の臨界ぬれ表面張力(CWST、例えば、米国特許第4,925,572号に定義される)を有することができる。多孔性膜は、任意の所望の臨界ぬれ表面張力(CWST、例えば、米国特許第4,925,572号に定義される)を有することができる。CWSTは、例えば、当技術分野で公知であるように、例えば、米国特許第5,152,905号、第5,443,743号、第5,472,621号及び第6,074,869号に更に開示されるように選択されうる。
【0061】
クロマトグラフィーデバイス
[0063]好ましい態様において、クロマトグラフィーデバイス100、200は、ペンダント第4級アンモニウム基を含む架橋されたコーティングを持つポリエーテルスルホン基材を含む少なくとも1つのAEX層を含む上流の第1の多孔性フィルタ膜151、251、及びペンダントフェニル基を含む架橋されたセルロース水和物を含む少なくとも1つのHIC層を含む下流の第2の多孔性フィルタ膜152、252を含む多孔性フィルタ150(平面構成)、250(放射状構成)を備える。
【0062】
[0064]本発明の態様によるクロマトグラフィーデバイスは、任意の数のAEX層及び任意の数のHIC層を有することができる。一般に、デバイスは少なくとも2つのAEX層及び2つのHIC層を有し;一部の態様において、例えば、3、4、5、6、7、8、9、又はより多くのAEX層、及び3、4、5、6、7、8、9、又はより多くのHIC層を有する。本発明の態様によるクロマトグラフィーデバイスは、HIC層と比較して異なる数のAEX層、例えば、HIC層より多数のAEX層、又はその逆を有することもできる。
【0063】
[0065]クロマトグラフィーデバイスは、追加の要素、層若しくは構成要素を含むことができ、異なる構造並びに/又は機能、例えば:前ろ過、支持、排液、間隔及び緩衝のうちのいずれか1つ若しくは複数のうち少なくとも1つを有しうる。実例として、フィルタは、メッシュ及び/又はスクリーンなど少なくとも1つの追加の要素を含むこともできる。好ましい態様において、デバイスは、下流の支持要素160、260を含む。
【0064】
[0066]本発明の態様によると、フィルタ及びフィルタ要素は、平面(例えば、
図1に示す)、プリーツ及び中空円筒状(例えば、
図2A、
図2B及び
図2Iに示す)を含めた様々な構成を有することができる。
【0065】
[0067]クロマトグラフィーデバイスは、滅菌可能でありうる。適切な形状であり、少なくとも1つの注入口及び少なくとも1つの排出口を提供する任意のフィルタ筐体が、利用されうる。フィルタ筐体は、処理される流体に適合する任意の不浸透性の熱可塑性材料を含めた、任意の適切な剛体不浸透性材料から製造されうる。好ましい態様において、筐体は、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリカーボネート樹脂などのポリマーから製造される。
【0066】
精製する方法
[0068]一態様において、精製する方法は、(a)注入口及び排出口を有し、注入口と排出口との間の流体流路を画定するフィルタ筐体;流体流路を横切ってフィルタ筐体中に配置された多孔性フィルタを備えるクロマトグラフィーデバイスであって、多孔性フィルタが、第1の多孔性フィルタ要素;及び第1の多孔性フィルタ要素と接触する第2の多孔性フィルタ要素を含み、第1の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの陰イオン交換(AEX)層を含み、第2の多孔性フィルタ要素が、少なくとも1つの疎水性相互作用(HIC)層を含む、クロマトグラフィーデバイスに核酸を含む流体を通すステップと;(b)AEX層に核酸を結合させるステップと;(c)AEX層から高塩濃度中に核酸を溶出させるステップと;(d)HIC層に核酸を結合させるステップと;(e)HIC層から低塩濃度緩衝液中に核酸を溶出させるステップとを含む。
【0067】
[0069]例えば、核酸は、結合条件(等電点より高いpH及び結合に必要な伝導率未満)下でAEX層に捕捉される。膜は、結合緩衝液で洗浄され、塩溶液(クエン酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムなど)を用いてAEX層から溶出され、HIC層上に結合される。HIC膜は、塩緩衝液で洗浄され、AEX結合緩衝液(HIC溶出緩衝液)で溶出される。
【0068】
[0070]レンチウイルスなどのエンベロープを持ったウイルスを精製するために、対象となる生体分子は、等電点より高いpH(従って負に荷電している)及びAEX層からの溶出に必要な伝導率より低い伝導率を有する緩衝液に溶解され、生体分子がAEX層に結合するように、流速10膜容積/分でクロマトグラフィーデバイスに通された。結合緩衝液による洗浄が実行され、生体分子を溶出し(平衡化によって脱離を引き起こす-溶出緩衝液)、HIC層に生体分子を結合させるのに十分高い伝導率の緩衝液を使用して、生体分子が、AEX層から溶出される。生体分子と結合したHIC層は、溶出緩衝液で洗浄され、生体分子の等電点より高いpH、及び低い伝導率を有する緩衝液で溶出される。
【0069】
[0071]例えば、MES、HEPES、MOPS、TAPSO、BES、PIPES、ACESのような代わりの緩衝液が、使用されうる。クエン酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムの代わりに、最低1.5Mの濃度で塩化ナトリウム、塩化マグネシウムが使用されうる。
【0070】
[0072]以下の例は、本発明を更に例示するが、当然ながら、その範囲をどんな形であれ限定するものと解釈されるべきでない。
【0071】
実施例1
[0073]この例は、本発明の一態様に記載のクロマトグラフィーデバイスを使用するレンチウイルス精製を実証する。
【0072】
[0074]クロマトグラフィーデバイスは、一般に
図1Cに示されるように提供される。クロマトグラフィーデバイスは、注入口(上流)側にAEX膜及び排出口(下流)側にHIC膜を持つフィルタホルダーに組み込まれた直径最少0.1cmで4層のAEX膜及び4層のHIC膜を含み、1M NaOH溶液10mLで洗浄し、その後25mMトリスpH8、100mM NaCl(DI水950mLに添加された1Mトリス25mL及び5M NaCl 25mLから調製される)25mLで平衡化される。
【0073】
[0075]伝導率約15mS/cmのおよそ1.6×106個ベクター/mLを含有するHEK293細胞から回収した清澄なレンチウイルス10mLを、流速1~10膜容積/分の範囲でクロマトグラフィーデバイスに通過させる。膜を、AEX平衡緩衝液(25mMトリスpH8 100mM NaCl)4mLで洗浄し、1.5Mクエン酸ナトリウムpH8.0(DI水合計1L中にクエン酸ナトリウム二水和物441.15g及び1MトリスpH8 25mLを添加して調製される)4mLでAEX媒体から溶出し/HIC媒体に結合させる。デバイスを、溶出緩衝液4mLで洗浄する。HIC膜を、DNA及び宿主細胞タンパク質を含まないおよそ8.3×105個ベクター/mLを含有するように、AEX平衡緩衝液(25mMトリス、pH8、100mM NaCl)(低塩濃度緩衝液)4mLで溶出する(2サイクルの凍結融解後の機能的力価アッセイによって測定される収量15%)。溶出されたレンチウイルス回収物の伝導率は、約40mS/cmである。
【0074】
[0076]レンチウイルスは高純度で回収され、宿主細胞タンパク質及びDNAを含まず、緩衝液希釈を必要としない。
【0075】
実施例2
[0077]この例は、本発明の一態様に記載のクロマトグラフィーデバイスを使用するレンチウイルス精製を実証し、実施例1とは対照的に、収量は、凍結融解なしに測定される。
【0076】
[0078]実施例1に要約される手順は、収量を、レンチウイルス力価決定用のジャイロラブ(Gyrolab)(登録商標)p24キット(2021;Gyros Protein Technologies)を使用するために製造業者の指示に従って測定すること以外は、一般に従う。
【0077】
[0079]収量(遊離表面p24タンパク質を測定するELISAアッセイを使用する)は、30%を超える。
【0078】
実施例3
[0080]この例は、本発明の別の態様によるクロマトグラフィーデバイスについて記載する。
【0079】
[0081]クロマトグラフィーデバイスは、一般に
図2B及び
図2Iに示されるように提供される。クロマトグラフィーデバイスは、8層のAEXプリーツ状膜及び8層のプリーツ状HIC膜を含み、AEX膜は、HIC膜に巻きつき、注入口(上流)側にAEX膜がある筐体に組み込まれる。
【0080】
[0082]一態様において、DNA及び宿主細胞タンパク質を含まず、緩衝液の希釈を必要としない溶出されたレンチウイルスを、凍結融解後に蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使用する形質導入単位(TU)アッセイにより分析して、レンチウイルス回収率(ベクター/mL)を決定する。
【0081】
[0083]本明細書に引用される刊行物、特許出願及び特許を含めた全ての参照は、あたかも各参照が、参照により組み込まれるために個別且つ特別に示され、本明細書においてその全体が説明されるかのように同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
[0084]本明細書において指示される又は文脈によって明らかに否定されない限り、本発明について記載する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)において、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに類似の指示対象の使用は、単数と複数の両方を網羅するものと解釈される。本明細書において指示される又は文脈によって明らかに否定されない限り、1つ又は複数の項目のリストに続く用語「少なくとも1つ」(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)の使用は、挙げた項目(A又はB)又は挙げた項目(A及びB)の2つ以上の任意の組合せから選択される1項目を意味するものと解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特に明記しない限り、無制限の用語と解釈される(即ち、「を含むがそれに限定されない」を意味する)。本明細書における値の範囲の説明は、範囲内にある各別々の値を個々に参照する略記法として用いられることを単に意図するものであり、本明細書において指示されない限り、各別々の値は、あたかも本明細書において個々に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記述される全ての方法は、本明細書において指示される又は文脈によって明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で実行されうる。本明細書に提供されるあらゆる例又は典型的な文言(例えば、「など」)の使用は、本発明を単により良く明らかにすることを意図するものであり、特に主張しない限り、本発明の範囲に対する限定をもたらさない。本明細書中のいかなる文言も、請求されていないあらゆる要素を本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきでない。
【0083】
[0085]本発明の好ましい態様が、本発明を実施するために本発明者らに公知の最良の様式を含めて、本明細書に記載される。それらの好ましい態様の変形は、前述の説明を読むことにより当分野の技術者にとって明らかになりうる。本発明者らは、当業者が、必要に応じてそのような変形を利用することを予想しており、本発明者らは、本発明が、本明細書に特に記載される以外の場合に実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法によって許可される本文書に添付される特許請求の範囲内で詳述される主題の全ての修飾及び同等物を含む。更に、その考え得る変形の全てにおける上記要素の任意の組合せは、本明細書において指示される又は文脈によって明らかに否定されない限り、本発明に包含される。