(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241025BHJP
H01F 27/40 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01F37/00 K
H01F37/00 M
H01F27/40 120
(21)【出願番号】P 2023128006
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2019166937の分割
【原出願日】2019-09-13
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍太
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-128084(JP,A)
【文献】特開2018-200965(JP,A)
【文献】特開2013-153080(JP,A)
【文献】特開2010-190788(JP,A)
【文献】特開平10-122979(JP,A)
【文献】特開2003-121269(JP,A)
【文献】特開2018-195685(JP,A)
【文献】特開2013-222813(JP,A)
【文献】特開2020-035844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体から成るコアと、
前記コアを被覆する第1の樹脂部材と、
前記第1の樹脂部材の上から前記コアに装着される
複数のコイルと、
隣り合う一対の前記コイルの間に生じる隙間と、
前記第1の樹脂部材に配置され、物理量を検出するセンサ部と、
を備え、
前記センサ部は、
物理量を検出する検出部と、
前記検出部から導出するリード線と、
前記検出部が前記隙間内に向かうように、前記リード線に対して
前記検出部の角度
を付け、前記検出部と前記リード線とを被覆して形状を固定する第2の樹脂部材と、
を有し、
前記検出部は、前記リード線が導出する後端部を除いて前記第2の樹脂部材から露出し、
前記第2の樹脂部材は、前記検出部の後端部を被覆し、前記検出部の先端部を露出させる端部を有し、
前記端部は、
前記隙間の深部に向けて窄むテーパ部を有
し、
前記検出部は、前記隙間に入り込んでいること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記第2の樹脂部材の上から前記センサ部を前記コイルと共に被覆し、前記コアと前記コイルと前記センサ部を一体化させる第3の樹脂部材を備えること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
前記第2の樹脂部材は、前記リード線が導出する前記検出部の後端部から前記リード線の屈曲部までを少なくとも被覆すること、
を特徴とする請求項1
又は2記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第2の樹脂部材は、前記リード線のストレート部を更に被覆すること、
を特徴とする請求項
3記載のリアクトル。
【請求項5】
前記検出部は、平角形状を有すること、
を特徴とする請求項1乃
至4の何れかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとコイルとセンサを一体化したリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。例えば、車載用の昇圧回路に用いられる。リアクトルとしては、リアクトル本体を金属製のケースに収容し、ケース内に充填材を流し込んで固めたケース有りのリアクトルが多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。リアクトル本体は、環状コアの周囲に配置した樹脂製のボビンにコイルを巻回して成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充填材の硬化には時間を要し、リアクトルの製造時間が増大する。また、ケースの存在によりリアクトルが大型化する。そのため、充填材及びケースを設けないケースレスのリアクトルが要望されている。ケースレスのリアクトルは、絶縁のためにコイルを被覆し、かつ、コイルをコアと一体化する必要がある。そのため、コイルを含めてリアクトル本体をモールド成形法などによりモールド樹脂で被覆することが考えられる。
【0005】
ケース有りのリアクトルであろうと、ケースレスのリアクトルであろうと、リアクトルの温度等の物理量を検出するセンサの搭載が多く要望される。このセンサは、物理量の検出に適した所望位置に出来るだけ近づけて設置されるべきである。例えば、複数のコイルを横並びにして備えるリアクトルに対し、温度を検出するセンサの所望位置は、コイル間の隙間内である。
【0006】
ケース有りのリアクトルでは、センサの検出部を精度良く所望位置に配置するために労力を要する。具体的には、環状コアの周囲に配置した樹脂製のボビンの到る所にフックを配置しておく。また、リアクトルにセンサの検出部を設置する収容部を配置しておく。そして、検出部から引き出されるリード線を各フックに引っ掛けるように引き回し、検出部を収容部に設置する。この作業ではリード線を所定のテンションで引き回さなければならない。
【0007】
また、ケースレスのリアクトルでは、モールド樹脂を射出する金型内でセンサを治具で固定することが困難である。即ち、センサの検出部及びリード線を良好に固定することが困難である。そのため、リアクトル本体をモールド樹脂で被覆する際、モールド樹脂の射出圧によってセンサが動いてしまい、所望位置にセットしてもモールド樹脂が固化するまでにセンサの位置が所望位置からズレてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、センサを所望位置に簡便に配置できるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリアクトルは、磁性体から成るコアと、前記コアを被覆する第1の樹脂部材と、前記第1の樹脂部材の上から前記コアに装着されるコイルと、前記第1の樹脂部材に配置され、物理量を検出するセンサ部と、を備え、前記センサ部は、物理量を検出する検出部と、前記検出部から導出するリード線と、前記検出部が前記リード線に対して角度が付いた方向を向くように、前記検出部と前記リード線とを被覆して形状を固定する第2の樹脂部材と、を有すること、を特徴とする。
【0010】
前記第2の樹脂部材の上から前記センサ部を前記コイルと共に被覆し、前記コアと前記コイルと前記センサ部を一体化させる第3の樹脂部材を備えるようにしてもよい。
【0011】
前記第2の樹脂部材は、前記リード線が内部を通り、当該第2の樹脂部材の胴体を細めて成る細身胴部を有するようにしてもよい。
【0012】
前記第2の樹脂部材は、前記細身胴部と並列に延びる柱状部を有するようにしてもよい。
【0013】
前記柱状部は、前記細身胴部と離間して延びるようにしてもよい。
【0014】
前記第2の樹脂部材は、凹部を有し、前記第3の樹脂部材は、前記凹部に充填されて固化しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センサ部が所望位置から位置ズレすることを抑制し、簡便にセンサ部を所望位置に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係り、各部を被覆する部材を省いて示したリアクトルの斜視図である。
【
図2】コアを被覆する樹脂部材を示す斜視図である。
【
図3】リアクトルに搭載されたセンサ部を示す斜視図である。
【
図4】リアクトル全体を被覆する樹脂部材を示す斜視図である。
【
図5】(a)はセンサ部の側面図であり、(b)はセンサ部の軸に沿った断面図である。
【
図7】センサ部の軸と直交する面に沿った切断図である。
【
図8】(a)は
図5のAA断面図、(b)は
図5のBB断面図である。
【
図9】リアクトル本体とセンサ部を一体的に被覆する樹脂部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(概略構成)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るリアクトルについて説明する。
図1は、本実施形態のリアクトルの斜視図であり、説明の都合上、各部を被覆する部材を省いて示してある。リアクトル100は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車及び燃料電池車の駆動システム等に組み込まれ、車載用の昇圧回路等に用いられる。このリアクトル100は、リアクトル本体10とセンサ部3とを備えている。リアクトル本体10は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。センサ部3は、リアクトル本体10に取り付けられる例えばサーミスタを有し、リアクトル本体10の温度を検出する。
【0018】
リアクトル本体10は、2つのコイル5,5とコア1とを備えている。コイル5は、銅線等の導電線による巻回体である。コイル5は、巻き軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に導電線を巻回することで筒状に形成される。コア1は、圧粉磁心、フェライト磁心又は積層鋼板等の磁性体である。コア1は環状形状を有する。コイル5,5は絶縁されつつコア1に横並びになって嵌まり、電流が導通する。コア1は、コイル5,5が発生させた磁束の通り道となって閉じた磁気回路を形成する。
【0019】
コイル5は、筒軸と直交する断面が概略矩形形状を有する。典型的には、コイル5は、4つの平坦面51と4つの湾曲面52とを交互に繋ぎ合わせた外形形状を有する。コア1に嵌められた2つのコイル5,5は、筒軸を平行にし、互いの一平坦面51を対面させている。そのため、コイル5,5の互いの一湾曲面52と互いの一平坦面51が向かい合って、コイル5,5間に隙間53が形成される。隙間53は、湾曲面52の対向箇所でリアクトル本体10の内部に向けて窄まり、平坦面51の対向箇所から狭い平行部に変わる。
【0020】
センサ部3は、検出部31とリード線32を備えている。検出部31は、各面が平坦な平角形のカバーによって外形が整形され、例えばサーミスタ等の温度検出素子を内包する。リード線32は、検出部31から導出し、検出部31の出力信号を外部機器へ伝送する。センサ部3は、後述するように第2の樹脂部材である樹脂部材33を更に備えており、樹脂部材33でリード線32及び検出部31が被覆されている(
図3参照)。この樹脂部材33によって、リード線32の延び形状及びリード線32に対して検出部31が向く角度が固定され、リード線32は、ストレート部321と屈曲部322とを有するように配設されている。
【0021】
ストレート部321は、コア1の環形状が現れる一平坦面の上方を直線的に延びてコイル5,5の隙間53上方に至る。屈曲部322は、ストレート部321の先で、隙間53の方向に向いて延びる。検出部31は、リード線32に対して角度が付くため、コイル5,5の隙間53に挿し込まれる。そして、検出部31は、コイル5の筒軸方向中心、且つリアクトル本体10の内部中心に未達の高さで、コイル5の平坦面51と接触又は近接する。
【0022】
コイル5の筒軸方向中心、且つリアクトル本体10の内部中心に未達の高さは、リアクトル100において最も高熱になる高熱部位であり、センサ部3が最も応答性良く温度を検出できる箇所である。尚、リアクトル100が冷却機器に設置されない場合には、リアクトル本体の内部中心の高さが高熱部位となる。樹脂部材33がリード線32を屈曲させる角度は、検出部31が高熱部位に到達できればよく、屈曲部322の位置とリアクトル100の大きさに応じて0度超90度以下である。
【0023】
このリアクトル100は、
図2乃至
図4に示すように、各部が樹脂部材2、33、4で被覆されて一体化している。各樹脂部材2、33、4は、一定の形を保持する成形品であり、絶縁性及び耐熱性を備えている。例えば、各樹脂部材2、33、4は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合が材質として用いられている。各樹脂部材2、33、4は同種の材質により成るものであってもよいし、異なる材質により成るものであってもよい。樹脂部材2、33、4に熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0024】
図2は、コア1を被覆する第1の樹脂部材である樹脂部材2を示す斜視図である。
図2に示すように、コア1は樹脂部材2によって被覆されている。コイル5,5は、樹脂部材2の上からコア1に嵌め込まれている。この樹脂部材2によってコイル5,5とコア1とは絶縁されている。
【0025】
図3は、リアクトル100に搭載されたセンサ部3を示す斜視図である。
図3に示すように、センサ部3は、検出部31とリード線32に加えて樹脂部材33を備えており、途中で折れ曲がった柱形状に成形され、検出部31がリード線32に対して角度が付けられた状態で固められている。このセンサ部3は、コア1の樹脂部材2に支持されることで、リアクトル本体10との位置関係が位置決めされている。検出部31をリード線32に対して角度が付けた状態で固めた樹脂部材33は、検出部31が高熱部位に接触又は近接した状態を良好に維持している。
【0026】
図4は、リアクトル100の全体を被覆する第3の樹脂部材である樹脂部材4を示す斜視図である。
図4に示すように、センサ部3は、リアクトル本体10と共に、樹脂部材33の上から樹脂部材4によって被覆されている。樹脂部材33と樹脂部材4は係合関係を有し、リアクトル100の使用状態においても、検出部31を高熱部位に接触又は近接した位置で良好に維持する。その他、リアクトル100では、この樹脂部材4に、コイル5,5と電気回路とを接続するための端子44が設置され、リアクトル100を設置対象に固定するための締結孔25が形成され、またセンサ部3のリード線32が引き出されている。
【0027】
(センサ部に係る構成)
センサ部3の形状及び係合構造について更に説明する。
図5は、センサ部3の詳細構造を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は断面図である。
図5に示すように、樹脂部材33は、ストレート部331と屈曲部332と端部333とを継ぎ目無く一繋ぎにして備える。樹脂部材33の断面外形形状は、4つ角が全て丸みを帯びた矩形であるが、これに限られない。
【0028】
ストレート部331は、リード線32を直線的に延ばして、当該リード線32のストレート部321を被覆している。屈曲部332は、リード線32を屈曲させて、当該リード線32の屈曲部322を被覆している。端部333は、リード線32が導出している検出部31の後端部311を被覆している。これにより、樹脂部材33は、検出部31がリード線32に対して角度が付けられた状態で、センサ部3の形状を固定している。
【0029】
更に、端部333は、先端に開口を有し、検出部31の後端部311を除き、検出部31を露出させている。検出部31の後端部311は、検出部31の固定のために被覆されている。後端部311以外は、高熱部位に対する応答性を高めるため、及び隙間53に差し入れ可能に薄肉化するために露出している。検出部31内の温度検出素子が存在する箇所が少なくとも露出していればよい。
【0030】
図6は、センサ部3の斜視図である。
図6に示すように、端部333は、テーパ部38を備えている。テーパ部38は、コイル5,5の隙間53の深部に到達可能に下方に向けて窄んでいる。ストレート部331には鍔状部34が設けられている。鍔状部34は、コア1の樹脂部材2との係合部材である。鍔状部34は、ストレート部331の延び方向と直交する平面に沿って拡大し、ストレート部331の周囲からC字状に張り出している。
【0031】
図7は、センサ部3の軸と直交する面に沿った切断図である。
図7に示すように、樹脂部材33のストレート部331には、凹部35が局所的に形成されている。換言すると、凹部35によって細くなった細身胴部36が設けられている。細身胴部36の内部には、リード線32が延びている。
【0032】
細身胴部36は、ストレート部331と直交する断面が概略長方形形状を有する。細身胴部36を画成する辺のうち、ストレート部331と直交する短辺を、単に、細身胴部36の短辺といい、ストレート部331と直交する長辺を、単に、細身胴部36の長辺という。細身胴部36の短辺方向の厚みは、リード線32の直径の1倍超2倍未満である。細身胴部36の長辺方向の幅は、リード線32の直径の2倍以上であるが、ストレート部331の径よりも短い。
【0033】
更に、樹脂部材33のストレート部331には、細身胴部36と並列に2本の柱状部371,372が延びている。柱状部371,372は、断面扇形形状を有する。柱状部371,372の周面は細身胴部36と非接続であり、柱状部371,372は細身胴部36と離間している。この柱状部371,372は、細身胴部36を当該細身胴部36の短辺方向から概略挟むように設けられている。但し、柱状部371,372は、細身胴部36の各側面とは対向せず、細身胴部36の角に設置されている。全体としては、細身胴部36と柱状部371,372はY字状に並んでいる。
【0034】
換言すると、凹部35として上側凹部351、下側凹部352及び側方凹部353が、樹脂部材33の周方向に沿って並んでいる。ここで、コア1を基準にセンサ部3が存在する方向を上といい、センサ部3とは反対の方向を下というが、上下は、リアクトル100が設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。上側凹部351は、ストレート部331の上側表面から中心に向けて、中心未達で掘り込まれている。下側凹部352は、ストレート部331の下側表面から中心に向けて、中心未達で掘り込まれている。側方凹部353は、ストレート部331の一方の側方表面から中心に向けて、中心未達で掘り込まれている。
【0035】
上側凹部351と下側凹部352は、ストレート部331を横断するように細長く拡がり、側方凹部353が未形成の他の側方表面にも開口している。つまり、上側凹部351と下側凹部352は、3方向の内側面と底面とにより画成され、2面が開口している。一方、側方凹部353は、4方向の内側面と底面とにより画成され、1面のみが開口している。上側凹部351と側方凹部353、及び下側凹部351と側方凹部353は、各々底部片隅で連通しており、この連通箇所に空隙部354,355が設けられている。
【0036】
つまり、細身胴部36は、上側凹部351の底面と下側凹部352の底面と側方凹部353の底面により3方の側面が画成されることになる。上側凹部351の底面が細身胴部36の一方の長辺となり、下側凹部352の底面が他方の長辺となり、側方凹部353の底面が一方の短辺となる。上側凹部351と下側凹部352の深さによって、短辺の長さが決定され、短辺の範囲にリード線32が収まる。
【0037】
柱状部371は、上側凹部351と側方凹部353とによって形成され、リード線32を含まず、断面扇形形状を有する。柱状部372は、下側凹部352と側方凹部353とによって形成され、リード線32を含まず、断面扇形形状を有する。そして、細身胴部36と両柱状部371,372とは、空隙部354,355によって離間する。
【0038】
細身胴部36と柱状部371,372の組は、樹脂部材33のストレート部331又はリード線32のストレート部321に沿って間隔を空けて複数形成されている。各組は、鍔状部34を挟んで、屈曲部332側にも、屈曲部332とは反対側にも分配されている。換言すると、凹部35は、樹脂部材33のストレート部331又はリード線32のストレート部321に沿って間隔を空けて複数形成され、鍔状部34を挟んで、屈曲部332側にも、屈曲部332とは反対側にも形成される。
【0039】
図8に示すように、細身胴部36と柱状部371,372の組は、細身胴部36と柱状部371,372の位置関係が異なる2種類のグループに分けられる。本実施形態では、グループは、柱状部371,372の位置が、リード線32を挟んで反対の2種類である。2種類のグループは、ストレート部351の延び方向に沿って交互に存在する。換言すれば、凹部35は、側方凹部353の形成位置がリード線32を挟んで反対の2種類が形成され、ストレート部351に沿って交互に形成されている。
【0040】
このようなセンサ部3に対応して、コア1の樹脂部材2は、
図2に示すように、センサ部3を支持する2つのU字状位置決め部21,22を備えている。2つのU字状位置決め部21,22は、コイル5,5の隙間53に沿った延長線上に離間して配置されている。離間距離は、長いセンサ部3が安定的に載置される程度である。
【0041】
第1のU字状位置決め部21は、樹脂部材2の環状孔近傍に立設され、センサ部3のストレート部331の前方及び鍔状部34を支持する。ストレート部331の前方は、屈曲部332と端部333が存在する側である。第2のU字状位置決め部22は、樹脂部材2の環状孔から離れて外縁側に立設され、センサ部3のストレート部331の後端側を支持する。
【0042】
両U字状位置決め部21,22は、コイル5,5の隙間53の延び方向に対して直交して拡がる板であり、上部がU字状に切り欠かれている。切り欠きの径は、センサ部3が有する樹脂部材33の胴回りの径と同一である。更に第1のU字状位置決め部21は、2枚の板を平行に配置して成り、板間に鍔状部34が差し入れられる鍔挿入部23が形成されている。
【0043】
また、コア1の樹脂部材2は、
図2に示すように、センサ部3を支持する長尺台部24を備えている。長尺台部24は、2つのU字状位置決め部21,22の間に延在し、端部が両U字状位置決め部21,22に接続されている。この長尺台部24は、U字状位置決め部21,22間に架け渡されたストレート部331の全体を下側から支持する。更に、長尺台部24は、樹脂部材2の環状孔から離れて外縁側に立設された第2のU字状位置決め部22を通り越して、樹脂部材2の外縁間際まで延長されている。
【0044】
更に、このようなセンサ部3に対応して、リアクトル本体10とセンサ部3を一体的に被覆する樹脂部材4は、
図9に示すように、上側凸部41、下側凸部42及び側方凸部43を備えている。上側凸部41は、上側凹部351の内部形状と一致する外形を有し、上側凹部351に嵌まり込んでセンサ部3を係止する。下側凸部42は、下側凹部352の内部形状と一致する外形を有し、上側凹部351に嵌まり込んでセンサ部3を係止する。側方凸部43は、側方凹部353の内部形状と一致する外形を有し、側方凹部353に嵌まり込んでセンサ部3を係止する。
【0045】
(作用)
このリアクトル100は、コア1を被覆する一次モールド工程、センサ部3の検出部31とリード線32を被覆する別の一次モールド工程、センサ部3をリアクトル本体10に組み付ける組み立て工程、及びリアクトル本体10とセンサ部3とを被覆して一体化する二次モールド工程により製造される。
【0046】
センサ部3に対する一次モールド工程では、樹脂モールド成形法により検出部31とリード線32とを樹脂部材33で固める。金型内では、リード線32を直線状に延ばし、途中でリード線32を屈曲させ、リード線32の屈曲により検出部31をリード線32に対して角度を付けて設置する。そして、金型内に樹脂を充填して固化させる。
【0047】
図10は、センサ部3の金型の一部を示す図である。このセンサ部3が有する樹脂部材33によれば、次のような金型を実現できる。即ち、
図10に示すように、2分割の金型のうちの下型は、空洞内に板状部200を突出させている。また、上型は空洞内に板状部200に対向させて板状部210を突出させている。板状部200,210は、凹部35の幅と同一、即ちストレート部331の軸方向に沿った長さと同一の厚みを有する。また、板状部200,210は、板面と直交する方向に複数組が離間して並ぶ。
【0048】
板状部200の端面は、矩形状の凹部201を有し、凹部201の両脇には平坦面202が拡がる。板状部210の端面は、矩形状の凸部211を有し、凸部211の両脇に円弧部212が拡がる。円弧部212は、凸部211の根元を始端として、凸部211から離れる方向に延び始め、凸部211の先端方向に滑らかに90度曲がり、曲がり終わりは凸部211の先端と面一になる。空洞内では、板状部200の凹部201と板状部210の凸部211とが対向する。凸部211は凹部201よりもパーティクルラインに沿って長く、凹部201の開口縁と凸部211の両隅は接触する。また、平坦面202と円弧部212の先端は接触する。
【0049】
上側凹部351と下側凹部352と側方凹部353によって囲まれる細身胴部36は、板状部200に凹部201を実現させ、板状部210に凸部211を実現させる。成型時には、板状部200の凹部201でリード線32のストレート部321を押さえ込むことができる。また、成型時には、板状部210の凸部211で凹部201を閉蓋して、凹部201内からリード線32が離脱しないようにしておくことができる。
【0050】
そのため、樹脂の射出圧によるリード線32の位置ズレや歪みの発生を抑制でき、リード線32のストレート部321は精度良く直線を維持する。そうすると、成型中、リード線32が引っ張られて検出部31の位置や向き角度が変わってしまったり、リード線32が引っ張られて断線したり、リード線32が引っ張られて検出部31が後述する金型の凹部から抜けてしまい、検出部31が樹脂部材33に被覆されてしまう虞が低減する。その結果、検出部31はリアクトル本体10に設置されたとき、高熱部位に精度良く位置する。
【0051】
また、細身胴部36と柱状部371,372とが独立していることにより、板状部200の凹部201と板状部210の凸部211とによって画成されるリード線配設空間と、板状部200の平坦面202と板状部210の円弧部212とによって画成されるリード線非配設空間とを断絶できる。そのため、板状部200の凹部201内に入れ込んだはずのリード線32が射出圧によって、リード線非配設空間に入り込むことはない。
【0052】
従って、柱状部371,372を細身胴部36に並列に配置したとしても、樹脂の射出圧によるリード線32の位置ズレや歪みの発生を阻止でき、リード線32のストレート部321は精度良く直線を維持する。尚、細身胴部36、柱状部371、柱状部372、上側凹部351、下側凹部352、側方凹部353、及び空隙部354、空隙部355は、リード線32に沿って複数設けられている。従って、ストレート部321の全体が精度良く直線を維持する。
【0053】
また、平角形状の検出部31は、形状が直線的な構成である。従って、金型に検出部31と一致する凹部を形成する際、その凹部は検出部31と高精度に形状及び寸法を一致させ易い。検出部31は、樹脂部材33の成型中、この凹部に挿し込んでおく。凹部は、検出部31と高精度に形状及び寸法が一致しているため、凹部に樹脂が流れ込み難い。
【0054】
そのため、端部333と検出部31の境界にバリが生じ難い。バリが発生しても、検出部31は平角形状であり、各側面は平坦であるため、容易且つ短時間でバリ取りを行うことができる。これにより、検出部31は樹脂部材33から容易に露出する。また、バリが無いか又は少ないので、検出部31を露出させていても、バリが隙間53に引っ掛からず、検出部31を隙間53に容易に挿し込める。
【0055】
センサ部3をリアクトル本体10に組み付ける組み立て工程では、ストレート部331をU字状位置決め部21,22及び長尺台部24に載置し、鍔挿入部23に鍔状部34を挿入する。鍔挿入部23と鍔状部34は、隙間53に沿った方向においてセンサ部3を位置決めする。U字状位置決め部21,22は、隙間53と直交する方向においてセンサ部3を位置決めする。これら位置決め機能のため、センサ部3をリアクトル本体10へ載置するだけで、検出部31を隙間53に挿し込める。
【0056】
そして、樹脂部材33の屈曲部332は、ストレート部331を基準にして検出部31を位置決めする。この位置決め機能によって、センサ部3をリアクトル本体10へ載置するだけで、検出部31は高熱部位に位置する。ここで、端部333にはバリが発生していないか、又は取り除かれている。また端部333はテーパ部38により窄まっている。更に検出部31は樹脂部材33から露出している。従って、検出部31は細長く、隙間53に容易に入り込み、隙間53に到達して高熱部位に達する。
【0057】
二次モールド工程では、樹脂モールド成形法により、被覆部材4を形成する。2次モールド工程では、センサ部3が設置されたリアクトル本体10を金型内に配置する。センサ部3の樹脂部材33の後端、即ち屈曲部332とは反対側は、金型の外部に露出させておく。この状態で、金型内に樹脂を充填する。
【0058】
充填された樹脂は、金型から露出させた箇所を除き、リアクトル本体10と共にセンサ部3の全体を被覆する。樹脂部材4は、センサ部3の樹脂部材33の凹部35に入り込む。細身胴部36は、樹脂部材4によって周囲が固められ、また柱状部371,372も樹脂部材4によって周囲が固められる。
【0059】
充填された樹脂は、上側凹部351内に入り込み、上側凹部351の内部空間に合わせて形取られる。その結果、上側凹部351に食い込む上側凸部41が作出される。また、充填された樹脂は、下側凹部352内に入り込み、上側凹部351の内部空間に合わせて形取られる。その結果、上側凹部351に食い込む下側凸部42が作出される。充填された樹脂は、側方凹部353内に入り込み、上側凹部351の内部空間に合わせて形取られる。その結果、上側凹部351に食い込む側方凸部43が作出される。そして、上側凹部351と上側凸部41とが密着し、下側凹部352と下側凸部42とが密着し、側方凹部353と側方凸部43とが密着する。更に、空隙部354にも樹脂が入り込み、上側凸部41と側方凸部43とが連続する。空隙部355にも樹脂が入り込み、下側凸部42と側方凸部43とが連続する。
【0060】
センサ部3のリード線32は、樹脂部材33のストレート部331によって保護されている。従って、センサ部3のリード線32は樹脂の射出圧に直接晒されない。つまり、樹脂の射出圧によるリード線32の断線は抑制されている。リード線32の屈曲部322と検出部31の後端部311は、樹脂部材33の屈曲部332及び端部333によって保護されている。従って、樹脂の射出圧によって煽られることはなく、リード線32に対する検出部31の角度が変化することが抑制される。
【0061】
更に、細身胴部36の周囲には、柱状部371,372が延びている。この柱状部371,372が細身胴部36を支持し、樹脂の射出圧によって細身胴部36が折れることが抑制される。従って、検出部31は、樹脂部材4の成型中も、隙間53に挿し込まれて高熱部位に位置した状態を保てる。
【0062】
柱状部371,372は、細身胴部36を薄肉の短辺方向から挟むように設置され、細身胴部36が射出圧によって折れることを効果的に抑制している。更に、柱状部371,372は、細身胴部36の長辺を含む側面と対面しないように、細身胴部36の長辺と重ならない位置に設けられている。換言すると、細身胴部36と柱状部371,372は全体としてY字状に並んでいる。これにより、柱状部371,372の太さの合計は、樹脂部材33のストレート部331の胴径から細身胴部36の短辺を差し引いた長さから若干細い程度にまで拡大でき、細身胴部36をより強く支持できる。従って、細身胴部36が折れる虞をより低減している。
【0063】
更に、長尺台部24は、U字状位置決め部21,22の間を延びるセンサ部3のストレート部321を全体的に支持する。従って、樹脂の射出圧によって、センサ部3がU字状位置決め部21,22間で折れることが抑制される。
【0064】
このように、これら樹脂部材4によるリード線32の保護、樹脂部材4の被覆によるリード線32に対して検出部31に付けられた角度の固定、柱状部371,372による細身胴部36の補強、及び長尺台部24によるセンサ部3の支持は、各々が検出部31を高熱部位の位置に保つように作用する。
【0065】
リアクトル100の使用過程においては、樹脂部材33がリード線32に対して付けられた検出部31の角度を維持している。そのため、検出部31は、振動及び衝撃を受けても高熱部位に位置し続ける。従って、センサ部3は温度応答性が高く、正確な温度を検出できる。また、検知部31は、樹脂部材33から露出しており、高熱部位により近づくことができる。従って、更に温度応答性が高く、正確な温度を検出している。
【0066】
使用中の振動及び衝撃は、センサ部3がリアクトル100から離脱するように作用することがある。しかし、センサ部3は、樹脂部材4で固定されている上に、凹部35を有し、凹部35によって樹脂部材4と係合している。そのため、センサ部3は、振動及び衝撃によっても樹脂部材4から抜け難くなっており、温度応答性及び温度検出精度を維持できる。
【0067】
凹部35は、上側凹部351、下側凹部352及び側方凹部353により形成されており、複雑な形状を有する。この凹部35と係合する樹脂部材4も上側凸部41、下側凸部42及び側方凸部43を有する。そのため、センサ部3は、振動及び衝撃に対して樹脂部材4から更に抜け難くなっており、温度応答性及び温度検出精度を更に維持できる。
【0068】
しかも、凹部35は、ストレート部331の軸に沿って複数設けられ、側方凹部353の位置を交互に変化させている。従って、センサ部3の全体としての凹凸形状は更に複雑になっている。そのため、センサ部3は、振動及び衝撃に対して樹脂部材4からより抜け難くなっている。
【0069】
このセンサ部3は、凹部35によって細くなった部分が生じるが、その細身胴部36と平行に柱状部371,372を備えており、細くなった部分が補強されている。そのため、センサ部3は、振動及び衝撃に対しても折れ難く、樹脂部材33は検出部31の位置を維持でき、温度応答性及び温度検出精度を維持できる。特に、柱状部371,372は、細身胴部36を短辺方向から挟むように、細身胴部36の両側に立設しているので、細身胴部36が脆弱な方向の何れから衝撃が加わっても、まず柱状部371,372が衝撃を吸収することになるので、細身胴部36に過大な力がかかり難い。
【0070】
しかも、柱状部371,372は、間隔を空けて複数配置される細身胴部36に対して、位置を交互に変化させている。センサ部3の全体としては、リアクトル100に対する多様な方向の振動及び衝撃に対して強度補強の方向がなされていることになる。そのため、リアクトル100の設置位置や向きを問わず、センサ部3は、振動及び衝撃に対しても折れ難く、樹脂部材33は検出部31の位置を維持でき、温度応答性及び温度検出精度を維持できる。
【0071】
(効果)
(1)以上のように、このリアクトル100は、磁性体から成るコア1と、コア1を被覆する樹脂部材2と、樹脂部材2の上からコア1に装着されるコイル5と、樹脂部材2に配置されるセンサ部3とを備えるようにした。そして、センサ部3は、物理量を検出する検出部31と、検出部31から導出するリード線32と、検出部31とリード線32とを被覆して形状を固定する樹脂部材33とを備えるようにし、樹脂部材33は、検出部31がリード線32に対して角度が付いた方向を向くように固めた。
【0072】
これにより、センサ部3をリアクトル本体10に置くだけで、検出部31を簡単に所望位置に近づけることができる。また、樹脂部材4で二次モールド成型する際の射出圧が原因で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0073】
尚、本実施形態では樹脂部材4で二次モールド成型することを前提にリアクトル100を説明した。但し、これに限らず、リアクトル本体10をケースに収容し、充填材を流し込んで固めたリアクトルであっても、センサ部3をリアクトル本体10に設置するだけで、検出部31を簡単に所望位置に近づけることができる。
【0074】
また、センサ部3は温度センサとしたが、リアクトル100の物理量を検出できれば、これに限定されない。即ち、センサ部3は、磁気、電気、位置、振動、湿度などの他の物理量を検出する素子が用いられてもよい。検出部31を設置する所望箇所は、検出する物理量によっても変わるため、樹脂部材33は、所望箇所の位置に合わせて検出部31がリード線32に対して角度が付いた方向を向くように、検出部31とリード線32とを被覆して形状を固定すればよい。
【0075】
(2)樹脂部材33は、検出部31がリード線32に対して角度が付いた方向を向くように、少なくとも、リード線32が導出する検出部31の後端部311からリード線32の屈曲部322までを被覆すればよい。これによって、センサ部3をリアクトル本体10に載置するだけで、検出部31を簡単に所望位置に近づけることができ、また、樹脂部材4で二次モールド成型する際、射出圧で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0076】
(3)但し、樹脂部材33は、リード線32のストレート部321も被覆するようにした。これにより、二次モールド成型によって樹脂部材4でセンサ部3を被覆する際、樹脂の射出圧でリード線32が断線してしまうことを抑制できる。
【0077】
(4)検出部31は、リード線32が導出する後端部311を除いて樹脂部材33から露出しているようにした。また、樹脂部材33は、検出部31の後端部311を被覆する端部333を有し、端部333はテーパ部38を有するようにした。これらの各々により、所望箇所に検出部31を更に近づけることができる。
【0078】
(5)尚、検出部31は平角形状とした。これにより、検出部31を樹脂部材33から容易に露出させることができ、またバリが発生していてもバリ取りが容易となる。但し、検出部31を樹脂部材33から露出させることができれば、検出部31の外形形状は如何なるものであってもよい。
【0079】
(6)更に、この樹脂部材33は、リード線32が内部を通り、樹脂部材33の胴体を細めて成る細身胴部36を有するようにした。これにより、樹脂部材33でリード線32を被覆するために、リード線32を押さえておく凹部201を金型に形成しておくことができる。従って、樹脂の射出圧が原因で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0080】
(7)また、樹脂部材33は、細身胴部36と並列に延びる柱状部371,372を有するようにした。これにより、細身胴部36によってセンサ部3が局所的に脆弱になっていても、柱状部371,372で補強することができる。従って、二次モールド成型によって樹脂部材4を形成する際、射出圧によってセンサ部3が折れてしまう虞が低減できる。また、リアクトル100の使用中においては、振動や衝撃によってセンサ部3が折れてしまう虞が低減できる。そのため、検出部31を所望位置に維持することができる。また、樹脂部材4で二次モールド成型する際の射出圧が原因で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0081】
(8)しかも、柱状部371,372は、細身胴部36を短辺方向から挟むように、細身胴部36の両側に立設させた。これにより、細身胴部36が脆弱な方向の何れから衝撃が加わっても、まず柱状部371,372が衝撃を吸収することになるので、細身胴部36に過大な力がかかり、センサ部3が折れてしまう虞を更に低減できる。
【0082】
細身胴部36に対して並列に延びる柱状部371が1本あれば、細身胴部36の補強効果は得られる。従って、柱状部371は、1本以上あれば、何本あってもよい。また、柱状部371,372は、細身胴部36と連接していても、細身胴部36の脆弱な方向で繋がっていれば、細身胴部36の補強効果は得られる。更に、柱状部371,372は、細身胴部36の脆弱な方向を補強できれば、その設置位置は細身胴部36の周囲のどこであろうとも、細身胴部36の補強効果は得られる。
【0083】
(9)但し、この柱状部371,372は、細身胴部36と離間して延びるようにすることが望ましい。これにより、細身胴部36を作出するための金型内の空間と、柱状部371,372を作出するための金型内の空間とを離し、柱状部371,372を作出するための金型内の空間にリード線32が移動することを阻止できる。従って、樹脂の射出圧が原因で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0084】
(10)また、細身胴部36は、内部を通るリード線32と直交する断面が略矩形形状を有し、柱状部371,372は、細身胴部36の各側面と対向せず、細身胴部36の角が最短距離になる位置に立設されているようにすることが望ましい。これにより、柱状部371,372を細身胴部36から離間させたとしても、柱状部371,372を太くすることができ、細身胴部36の補強効果を増大できる。
【0085】
(11)また、樹脂部材33は、複数の細身胴部36をリード線32に沿って間隔を空けて有し、細身胴部36と柱状部371,372との位置関係は、リード線32に沿って2種類以上あるようにした。これによって、センサ部3の全体としては、柱状部371,372が多様な位置に存在しているので、多様な方向からの衝撃に対して、センサ部3全体の強度を増大できる。
【0086】
本実施形態では、細身胴部36と柱状部371,372との位置関係において、柱状部371,372の位置が、リード線32を挟んで反対の2種類であり、その2種類は、ストレート部351の延び方向に沿って交互に存在するようにした。但し、位置関係は何れか一方の1種類であってもよいし、2種類の位置関係は、これに限られない。
【0087】
例えば、細身胴部36の長辺が上下方向に延び、柱状部371,372は、細身胴部36の下側に立設させてもよい。即ち、細身胴部36と柱状部371,372が全体として正立したY字を成していてもよい。更に、細身胴部36の長辺が上下方向に延び、柱状部371,372は、細身胴部36の下側に立設させ、全体として逆さまのY字を成した位置関係であってもよいし、この位置関係を種類に加えてもよい。
【0088】
(12)更に、樹脂部材33は、凹部35を有し、樹脂部材4は、凹部35に充填されて固化するようにした。固化するようにした。これにより、センサ部3は樹脂部材4から抜け難くなり、検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0089】
(13)また、樹脂部材33は、複数の凹部35を樹脂部材33の周方向に並べて有するようにした。これにより、樹脂部材33と樹脂部材4との係合関係が複雑となり、検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が更に低減できる。
【0090】
(14)また、樹脂部材33は、更に複数の凹部35をリード線32に沿って間隔を空けて有し、樹脂部材33の周方向に並ぶ複数の凹部35の位置関係は、リード線32に沿って2種類以上あるようにした。これによって、多様な方向からの衝撃や振動に対して、センサ部3が抜け難くなる。
【0091】
本実施形態では、側方凹部353がリード線32を挟んで反対の2種類があり、その2種類は、ストレート部351の延び方向に沿って交互に存在するようにした。但し、凹部35の位置関係は何れか一方の1種類であってもよいし、2種類の位置関係は、これに限られない。
【0092】
例えば、樹脂部材33は、一方向から深くなる第1の凹部35と、第1の凹部35の反対から深くなる第2の凹部35と、第1の凹部35と第2の凹部35に対して直交する方向から深くなる第3の凹部35とを有するものとする。本実施形態では、第1の凹部35は上側から深くなる上側凹部351であり、第2の凹部35は下側から深くなる下側凹部352であり、第3の凹部35は側方凹部353である。この他、第3の凹部35を上側から深くなるように形成し、第1及び第2の凹部35,35は、この第3の凹部35と直交する両側から深くなるように形成されるようにしてもよい。即ち、上側凹部351と下側凹部352と側方凹部353の位置関係を90度回転させてもよい。
【0093】
更に、第3の凹部35を下側から深くなるように形成し、第1及び第2の凹部35,35は、この第3の凹部35と直交する両側から深くなるように形成されるようにしてもよい。
【0094】
(15)そして、コア1を被覆する樹脂部材2は、間隔を隔てて設置され、隙間53と直交して拡がる板形状を有し、樹脂部材33を支持する複数のU字状位置決め部21,22と、U字状位置決め部21,22の間で延びて、U字状位置決め部21,22間の全体に亘ってセンサ部3の樹脂部材33を支持する長尺な台部である長尺台部24とを有するようにした。
【0095】
これにより、二次モールド成型によって樹脂部材4を形成中に、樹脂の射出圧で、U字状位置決め部21,22間に樹脂部材33の折れが生じる事態を抑制できる。従って、樹脂部材4で二次モールド成型する際の射出圧が原因で検出部31が所望位置から位置ズレしてしまう虞が低減できる。
【0096】
(他の実施形態)
本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
100 リアクトル
10 リアクトル本体
1 コア
2 樹脂部材
21 U字状位置決め部
22 U字状位置決め部
23 鍔挿入部
24 長尺台部
25 締結孔
3 センサ部
31 検出部
311 後端部
32 リード線
321 ストレート部
322 屈曲部
33 樹脂部材
331 ストレート部
332 屈曲部
333 端部
34 鍔状部
35 凹部
351 上側凹部
352 下側凹部
353 側方凹部
354 空隙部
355 空隙部
36 細身胴部
371 柱状部
372 柱状部
38 テーパ部
4 樹脂部材
41 上側凸部
42 下側凸部
43 側方凸部
44 端子
5 コイル
51 平坦面
52 湾曲面
53 隙間
200 板状部
201 凹部
202 平坦面
210 板状部
211 凸部
212 円弧部