(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】向上した組成物送達のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241025BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20241025BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
(21)【出願番号】P 2023146728
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2019521067の分割
【原出願日】2017-10-20
【審査請求日】2023-10-10
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515233661
【氏名又は名称】レトロバスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オガタ ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】グ シャン イアン
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー スティーブン
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-502806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0300610(US,A1)
【文献】特開平10-230017(JP,A)
【文献】特表2002-538932(JP,A)
【文献】特表2010-501260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための装置(10)であって、
近位端(20)と遠位端(22)との間に少なくとも1つの管腔(19)が延びている、前記近位端と前記遠位端とを備える第1の長手方向部材(12)、
前記長手方向部材の前記遠位端に配置された組成物送達要素(18)であって、その外側表面(25)上に前記組成物(24)が配置されている、前記組成物送達要素、及び
前記組成物送達要素内に配置されるように前記第1の長手方向部材の前記管腔に挿入されるように構成された第2の長手方向部材(13)に配置された、少なくとも2つの電極(14(1),14(2))であって、高周波源(16)に、前記高周波源からの高周波エネルギーを受容するように連結され、かつ前記身体領域への前記組成物の送達を向上させるために電場を発生させることができるように絶縁され
、前記高周波源は、高周波エネルギーの変調パルスのパケットであって、それぞれに少なくとも2つの前記変調パルスが含まれる、前記変調パルスの前記パケットを提供する、前記少なくとも2つの電極
を備える前記装置。
【請求項2】
前記組成物送達要素がバルーンを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記バルーンが多孔質表面を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記組成物送達要素が拡張可能なリブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極がバルーンマーカーである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記組成物が治療薬または医薬化合物である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記治療薬または医薬化合物が、血栓溶解薬、線維素溶解酵素、トロンビン阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗再狭窄薬、または抗がん薬である、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年10月20日に出願された米国仮特許出願第62/410,685号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、向上した組成物送達のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
体内(血管または移植片内)の閉塞部を治療するための現在の方法及び装置は、血管の内側に薬物を送達するためにバルーンカテーテルまたはステントを用いることを採用している。薬物溶出ステントは、薬物溶出プロファイルを変えることによって数週間または数ヶ月間薬物の送達を延長するように装置を設計することができるという利点をもたらすが、ほとんどの場合金属の足場を残す。薬物コーテッドバルーンは、何も後に残さないという利点をもたらすが、薬物が送達されている間、血管がバルーンによって閉塞されるという事実のために、薬物が送達される期間はより短い。
【0004】
両方の装置において、送達の主なメカニズムは血管壁内へ薬物を単純に拡散させることであり、流動条件下にある間は、薬物の流出を被る。さらに、単純な拡散が送達の主なメカニズムであるので、両者の装置において、薬物は血管壁の表面に送達される。
【発明の概要】
【0005】
概要
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための方法は、高周波エネルギー源に連結された第1の電極及び第2の電極を、身体領域に近接した位置へ導くことを含む。組成物の送達を向上させるように構成された送達条件を提供するために、高周波エネルギーを、高周波エネルギー源からの変調パルスで、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも1つから身体領域に供給する。組成物は、組成物送達要素を用いて身体領域に近接するよう送達される。
【0006】
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための装置は、近位端と遠位端との間に少なくとも1つの管腔が延びている、近位端と遠位端とを備える第1の長手方向部材を含む。組成物送達要素は、長手方向部材の遠位端に配置されている。組成物送達要素は、その外側表面上に組成物がコーティングされている。少なくとも2つの電極が高周波源に連結されており、かつ組成物送達要素内に配置されている。電極は、少なくとも2つの電極が身体領域への組成物の送達を向上させるために電場を発生させることができるように、絶縁されている。
【0007】
本技術は、組成物を身体領域に送達するためのより効率的かつ効果的な装置及び方法を提供することを含むいくつかの利点をもたらす。本技術の装置及び方法は、組成物が長期間にわたって身体領域部位内に留まることを可能にして、治療の向上をもたらす。特に、高周波エネルギーまたは他のエネルギー源によって生成されるキャビテーション、衝撃波、エレクトロポレーションなどを使用することは、組成物の送達を補助する。本技術は、有利にも、何も後に残すことなくより長期間にわたって薬物が標的部位内に留まるように薬物を血管壁または閉塞部の中に送達するための向上した方法を提供する。標的部位内での薬物の持続的な作用は、転帰の改善(例えば、再閉塞、再狭窄、または血管再生率の低下)をもたらし得る。
[本発明1001]
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための方法であって、
高周波エネルギー源に連結された第1の電極及び第2の電極を、前記身体領域に近接した位置へ導くこと、
前記組成物の送達を向上させるように構成された送達条件を提供するために、高周波エネルギーを、前記高周波エネルギー源からの変調パルスで、前記第1の電極及び前記第2の電極のうちの少なくとも1つから前記身体領域に供給すること、及び
組成物送達要素を用いて前記身体領域に近接するよう前記組成物を送達すること
を含む前記方法。
[本発明1002]
前記組成物が治療薬または医薬化合物である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記治療薬または医薬化合物が、血栓溶解薬、線維素溶解酵素、トロンビン阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗再狭窄薬、または抗がん薬である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記身体領域が管、移植片、または導管である、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記身体領域が、その中に位置する閉塞部を含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記身体領域が腺、器官、または前記身体領域内に位置する腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記組成物送達要素がバルーン、ステント、マイクロバブル、リブ、またはカテーテルである、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記バルーン、リブ、または前記カテーテルが拡張可能である、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記組成物送達要素が、前記組成物でコーティングされたまたは前記組成物が埋め込まれた表面を有する、本発明1007の方法。
[本発明1010]
前記組成物送達要素が前記組成物で充填されたマイクロバブルである、本発明1007の方法。
[本発明1011]
前記送達条件が、キャビテーション、マイクロジェット、衝撃波、電気刺激、または化学反応のうちの1つである、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記送達条件が、0.1MPa~20MPaの瞬間的な大きさを有する衝撃波である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記送達条件が、1um~10mmの直径を有するキャビテーション気泡の少なくとも1つの領域である、本発明1011の方法。
[本発明1014]
前記高周波エネルギーを送達することが、前記身体領域内での前記組成物の長期の送達及び埋め込みを提供する、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記高周波エネルギーの送達に基づいて1つ以上のインピーダンス測定値を決定すること、及び
前記1つ以上のインピーダンス測定値に基づいて前記高周波の前記送達を最適化すること
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記第1の電極及び前記第2の電極が、低強度のプラズマ放電を実施するための誘電体バリアを有する、本発明1001の方法。
[本発明1017]
前記変調パルスが、約0.05~約500マイクロ秒のパルス幅を有する、本発明1001の方法。
[本発明1018]
前記変調パルスが、約500マイクロ秒~1秒のパルス幅を有する、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記変調パルスが、0.05マイクロ秒未満のパルス幅を有する、本発明1001の方法。
[本発明1020]
高周波エネルギーの前記変調パルスが、前記身体から得られるECGまたは他の波形信号を用いてゲート制御される、本発明1001の方法。
[本発明1021]
前記変調パルスが、100ms~1sのバースト幅と1ms~100msの各バースト間の間隔とを有するバーストにグループ分けされる、本発明1001の方法。
[本発明1022]
高周波エネルギーの電圧が400V~4000Vである、本発明1001の方法。
[本発明1023]
高周波エネルギーの電圧が400V未満である、本発明1001の方法。
[本発明1024]
前記高周波エネルギーの入射強度が、1平方ミリメートル当たり約0.1~5ジュールである、本発明1001の方法。
[本発明1025]
電気的な限界に達するまで前記高周波エネルギーを送達することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1026]
前記電気的な限界が100オーム未満である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記高周波エネルギーの送達が、前記組成物の送達を向上させるために前記身体領域内への前記組成物の拡散を向上させるための機械的な力を提供する、本発明1001の方法。
[本発明1028]
前記高周波エネルギーの送達が、前記組成物の前記送達を向上させるために血管拡張、細胞透過性の増加、または可逆的エレクトロポレーションを生じさせる、本発明1001の方法。
[本発明1029]
前記組成物が、前記高周波エネルギーの送達の前に前記身体領域に送達される、本発明1001の方法。
[本発明1030]
前記第1の電極及び前記第2の電極が単一の長手方向部材上にて送達される、本発明1001の方法。
[本発明1031]
前記単一の長手方向部材がカテーテルまたはガイドワイヤである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記第1の電極が第1の長手方向部材上にて送達され、前記第2の電極が第2の長手方向部材上にて送達される、本発明1001の方法。
[本発明1033]
前記第1の長手方向部材及び前記第2の長手方向部材が、独立した重ならないガイドワイヤまたはカテーテルである、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記送達が、前記第1の長手方向部材及び前記第2の長手方向部材を同じ方向で前記身体領域に送達することを含む、本発明1032の方法。
[本発明1035]
前記送達が、前記第1の長手方向部材及び前記第2の長手方向部材を反対方向から前記身体領域に送達することを含む、本発明1032の方法。
[本発明1036]
前記第1の電極または前記第2の電極の一方が、前記身体領域の外側に置かれたパッチ上に配置されている、本発明1001の方法。
[本発明1037]
前記身体領域の外側に置かれたパッチ上に配置された第3の電極を提供することであって、第3の電極が前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に連結されている、こと
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1038]
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための装置であって、
近位端と遠位端との間に少なくとも1つの管腔が延びている、前記近位端と前記遠位端とを備える第1の長手方向部材、
前記長手方向部材の前記遠位端に配置された組成物送達要素であって、その外側表面上に前記組成物が配置されている、前記組成物送達要素、及び
高周波源に連結され、かつ前記組成物送達要素内に配置された少なくとも2つの電極であって、前記身体領域への前記組成物の送達を向上させるために電場を発生させることができる、前記少なくとも2つの電極
を備える前記装置。
[本発明1039]
前記組成物送達要素がバルーンを含む、本発明1038の装置。
[本発明1040]
前記バルーンが多孔質表面を有する、本発明1039の装置。
[本発明1041]
前記組成物送達要素が、前記身体領域に引っかき傷を付けるように構成された1つまたは複数の隆起要素をさらに含む、本発明1038の装置。
[本発明1042]
前記隆起要素が長手方向要素または円周方向要素である、本発明1041の装置。
[本発明1043]
前記隆起要素が円形の断面を有する、本発明1041の装置。
[本発明1044]
前記隆起要素が三角形の断面を有する、本発明1041の装置。
[本発明1045]
前記隆起要素が金属またはポリマーで構築されている、本発明1041の装置。
[本発明1046]
前記組成物が前記隆起要素上に配置されている、本発明1041の装置。
[本発明1047]
前記組成物送達要素が拡張可能なリブを含む、本発明1038の装置。
[本発明1048]
前記少なくとも2つの電極が、それぞれ、第2の長手方向部材及び第3の長手方向部材上に配置されており、前記第2の長手方向部材及び前記第3の長手方向部材が、前記第1の長手方向部材の前記管腔の中に挿入されるように構成されている、本発明1038の装置。
[本発明1049]
前記第2の長手方向部材及び前記第3の長手方向部材がガイドワイヤである、本発明1048の装置。
[本発明1050]
前記第2の長手方向部材が、前記第3の長手方向部材内に配置されるように構成されている、本発明1049の装置。
[本発明1051]
前記少なくとも2つの電極が、前記第1の長手方向部材の前記管腔の中に挿入されるように構成された第2の長手方向部材上に配置されている、本発明1038の装置。
[本発明1052]
前記少なくとも2つの電極がバルーンマーカーである、本発明1038の装置。
[本発明1053]
前記少なくとも2つの電極が、前記少なくとも2つの電極の周囲のプラズマ放電の発生に耐えることができる様式で絶縁されている、本発明1038の装置。
[本発明1054]
前記少なくとも2つの電極が、前記第1の長手方向部材の周りに少なくとも部分的に巻かれている、本発明1038の装置。
[本発明1055]
前記組成物が治療薬または医薬化合物である、本発明1038の装置。
[本発明1056]
前記治療薬または医薬化合物が、血栓溶解薬、線維素溶解酵素、トロンビン阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗再狭窄薬、または抗がん薬である、本発明1053の装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本技術の高周波エネルギーを使用した組成物送達のための例示的な装置の概略図である。
【
図2】閉塞部を有する身体領域中に配置された、本技術の高周波エネルギーを使用した組成物送達のための別の例示的な装置の概略図である。
【
図3】閉塞部を有する身体領域中に配置された、本技術の高周波エネルギーを使用した組成物送達のためのさらなる例示的な装置の概略図である。
【
図4】
図3に示している組成物送達のための装置の代替例の概略図である。
【
図5】電極と高周波エネルギー源との間の例示的な連結を示す、
図1に示す高周波エネルギーを使用した組成物送達のための例示的な装置の概略図である。
【
図6】2つの連結された絶縁電極を備える
図5の長手方向部材の概略端面図である。
【
図7】別の例示的な組成物送達要素を用いた組成物送達のための例示的な装置の概略図である。
【
図8】本技術の組成物送達装置で使用することができる、例示的な組成物送達要素に例示的な隆起要素を固定するための構成の概略図である。
【
図9】
図9A~
図9Cは、高周波エネルギーを使用した向上した組成物送達のための例示的な方法を図示する。
【
図10】多孔質表面を有する組成物送達要素を備える別の例示的な組成物送達装置の概略図を図示する
。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための例示的な組成物送達装置10を
図1及び
図5に示す。高周波エネルギーが説明されているが、他のエネルギーモダリティ、例として、超音波またはレーザーエネルギーなどを利用することができる。組成物送達装置10は、電極14(1)及び14(2)を含む第1の長手方向部材12、高周波エネルギー源16、ならびに組成物送達要素18を含むが、組成物送達装置10は、他の構成における他の種類及び/または数の要素、構成要素、及び/または装置、例えば追加の電極及び/または長手方向部材を含み得る。この例示的な技術は、患者の体内の領域へのより効率的かつ効果的な組成物送達を提供することを含むいくつかの利点をもたらす。
【0010】
より詳細に
図1を参照すると、組成物送達装置10は、患者の体内へと進められて患者の身体領域の近くに配置されるように構成された、第1の長手方向部材12を含む。身体領域は、器官、身体管腔または体腔、例えば様々な導管もしくは管、血管、移植片、腺などの、身体の様々な領域であり得る。一例で、身体領域は、治療を必要とする閉塞部または腫瘍を含む身体内の区域であり得る。その例では、第1の長手方向部材12は、第1の長手方向部材12の近位端20と遠位端22との間に延びる管腔19を含むが、長手方向部材12はさらなる管腔を含み得る。管腔19は、単なる例として、ガイドワイヤ、カテーテル、マイクロカテーテル、またはプローブなどの追加の長手方向部材を受容するように構成される。
【0011】
この例では、長手方向部材12は、電極14(1)及び14(2)の双極配置を提供するように電極14(1)及び14(2)が上に配置されるが、電極14(1)及び電極14(2)は、双極配置を提供するために他の構成の他の要素上に配置してもよい。
【0012】
別の例では、
図2に示しているように、組成物送達装置10はさらに、第1の長手方向部材12の管腔19の中に挿入されて患者の身体領域に近接するよう送達されるように構成されている第2の長手方向部材13を含む。この例では、第2の長手方向部材13は、双極配置を提供するために電極14(1)及び14(2)が上に配置されているガイドワイヤまたはカテーテルである。
【0013】
さらに別の例では、
図3に示すように、組成物送達装置10は、第1の長手方向部材の管腔19の中に挿入されるように構成されている第3の長手方向部材23をさらに含む。単なる例として、第3の長手方向部材23は、ガイドワイヤまたはカテーテルであり得る。独立した重ならないガイドワイヤまたはカテーテルである第2の長手方向部材13及び第3の長手方向部材23は、以下に記載されるように同じ方向または反対方向で身体領域に送達され得る。
【0014】
さらなる例では、電極14(1)または14(2)のうちの一方は、治療すべき患者の身体領域に近接した患者の皮膚上に置かれ得るパッチ上に配置される。パッチは、電極14(1)と14(2)との間の双極配置を可能にするために、身体領域にごく接近して置かれる。
【0015】
次に
図4を参照すると、一例では、第1の長手方向部材12の管腔19は、第2の長手方向部材13と第3の長手方向部材23とを別々に身体領域に送達するための複数の管腔部分を含む。さらに別の例では、第2の長手方向部材13は、第3の長手方向部材23が第2の長手方向部材13内に配置されるように、第3の長手方向部材23を受容するように構成できる。
図3を再度参照すると、この例では、双極配置を提供するために、第2の長手方向部材13及び第3の長手方向部材23上にそれぞれ電極14(1)及び14(2)が配置されている。
【0016】
一例で、電極14(1)及び14(2)はバルーンマーカーとすることができるが、他の種類の電極を利用することもできる。
図5を参照すると、電極14(1)及び14(2)は、ワイヤ17(1)及び17(2)を介して高周波エネルギー源16に連結されている。ワイヤ17(1)及び17(2)は、第1の長手方向部材12の周りにらせん構成で巻かれている。ワイヤ17(1)及び17(2)は身体領域に高周波エネルギーを供給するために高周波エネルギーを高周波エネルギー源16から送達するが、他のエネルギーモダリティを与えるように構成された他のエネルギー源を使用してもよい。
【0017】
次に
図6を参照すると、電極14(1)及び14(2)が誘電体バリアなどで絶縁されており、2つの電極14(1)及び14(2)が身体領域において電場を発生させることができるようにしている。さらに、電極14(1)及び14(2)が電極14(1)及び14(2)の周囲でのプラズマ放電の発生に耐えることができるようにするために、絶縁が選択されている。電極14(1)及び14(2)はさらに、プラズマの発生に耐えるのをさらに補助するために、電極14(1)及び14(2)の露出部分に誘電体バリアを配置することができる。
【0018】
さらに詳細に
図1及び
図5を再度参照すると、高周波エネルギー源16は、電極14(1)及び14(2)を介して身体領域に送達される高周波エネルギーの供給源を提供するが、他のエネルギーモダリティを採用してもよい。一例では、高周波エネルギー源16は、高周波エネルギーの変調パルスを電極14(1)及び14(2)に供給する。一例では、高周波エネルギー源16は、約0.05~約500マイクロ秒のパルス幅を有する変調パルスを供給するように構成されるが、0.05マイクロ秒未満または500マイクロ秒~1秒のパルス幅を有する変調パルスを採用してもよい。高周波エネルギー源16はさらに、変調パルスをパケットで供給するように構成してもよい。単なる例として、変調パルスの各パケットは、2~10パルスを有することができる。別の例では、変調パルスは、単なる例として、100ms~1sのバースト幅及び1ms~100msの各バースト間の間隔を有するバーストにグループ分けされる。
【0019】
高周波エネルギー源16は、400V~4000Vの電圧で高周波エネルギーを供給するが、いくつかの例では400V未満の電圧を利用することができる。高周波エネルギー源16は、キャビテーション、マイクロジェット、衝撃波、電気刺激、または化学反応などの、組成物の送達を向上させる送達条件を身体領域中に提供するレベルで、高周波エネルギーを供給することができる。一例では、高周波エネルギー源16は、0.1MPa~20MPaの瞬間的な大きさを有する衝撃波を発生させるエネルギーを供給する。別の例では、高周波エネルギー源16は、1μm~10mmの直径を有するキャビテーション気泡の1つまたは複数の領域を身体領域中に生成するエネルギーを供給する。キャビテーション気泡は、組成物送達装置10を用いて身体領域に送達される組成物から形成することができる。
【0020】
さらに詳細に
図1及び
図5を再度参照すると、組成物送達装置10は、第1の長手方向部材12の遠位端22に配置された組成物送達要素18をさらに含む。組成物送達要素18は、組成物送達要素18の表面25上に配置される、身体領域に送達される組成物の組成物層24を含む。組成物層24は、組成物送達要素18の表面25上にコーティングされ、かつ/または組成物送達要素18の表面25内に埋め込まれる。単なる例として、組成物層24を適用する方法は、スプレー、浸漬被覆、蒸着、プラズマ蒸着、化学結合の使用、または電気結合の使用を含むことができる。
【0021】
別の例では、組成物は、組成物送達要素の外側に置かれるのではなく、組成物送達要素18の内側に注入される。組成物送達要素18は孔50を含み、この孔50により、組成物が孔50を通って出て、
図10に示すような閉塞部または血管壁などの身体領域内に送達されることが可能になる。組成物のこの送達は、以下にさらに記載しているように、高周波エネルギーの活性化によって向上する。別の例では、組成物を、荷電している化合物として組成物送達要素上に配置する。次いで、高周波エネルギーが同様の電荷で送達され、組成物が組成物送達要素18から組織内へとはじかれるようにする。追加的または代替的に、電気的に中性の治療薬は、荷電部分を加えることによって改変することができ、そのため荷電部分を含む改変された治療薬がエネルギー場の影響をより受けやすくなるようにし得る。さらに、治療薬を導電性流体に浸すかまたは溶解させることができ、それによって、上述のようなエネルギー場の影響下の導電性流体経路は、治療領域への治療薬の送達を促す媒体として機能する。例として、貧血を治療するための薬物を使用することができる。
【0022】
組成物は治療薬または医薬化合物である。組成物送達装置で利用され得る組成物の非限定的な例としては、血栓溶解薬、線維素溶解酵素、トロンビン阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗再狭窄薬、または抗がん薬が挙げられるが、組成物送達装置10を使用して他の治療薬または医薬化合物を送達してもよい。組成物は、標的身体領域に影響を及ぼし得る薬物、気体、または液体であり得る。例として、組成物は、パクリタキセル、またはリムス系の薬物から取得された薬物とすることができ、閉塞している血管本体に送達されてそのような血管が再閉塞または再狭窄する可能性を低減するために使用することができる。
【0023】
本実施形態は、他の治療薬または他の生物活性物質、例えば非限定的に、アミノ酸、同化剤、鎮痛剤及び拮抗剤、麻酔剤、駆虫剤、抗アドレナリン薬、抗喘息薬、抗アテローム性動脈硬化薬、抗菌薬、抗コレステロール薬、抗凝固薬、抗うつ薬、解毒薬、制吐薬、抗てんかん薬、抗線溶薬、抗炎症薬、降圧薬、代謝拮抗薬、抗片頭痛薬、抗真菌薬、抗嘔吐薬、抗悪性腫瘍薬、抗肥満薬、抗パーキンソン薬、抗原虫薬、抗精神病薬、抗リウマチ薬、消毒薬、抗眩暈薬、抗ウイルス薬、細菌ワクチン、ビオフラボノイド、カルシウムチャネル遮断薬、毛細血管強化薬、凝固剤、コルチコステロイド、細胞増殖抑制治療のための解毒剤、コントラスト剤(造影剤、放射性同位元素、その他の診断薬のようなもの)、電解質、酵素、酵素阻害剤、ガングリオシド及びガングリオシド誘導体、止血薬、ホルモン、ホルモン拮抗薬、催眠薬、免疫調節薬、免疫刺激薬、免疫抑制薬、ミネラル、筋弛緩薬、神経修飾物質、神経伝達物質及び向知性薬、浸透圧利尿薬、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、ペプチド、タンパク質、呼吸刺激薬、平滑筋弛緩薬、交感神経遮断薬、交感神経興奮薬、血管拡張薬、血管保護薬、遺伝子治療用ベクター、ウイルスワクチン、ウイルス、ビタミンなどを送達するために使用できることが企図される。
【0024】
この例では、組成物送達要素18は、組成物層24が適用される多孔質表面25を有する拡張可能なバルーンであるが、拡張可能なカテーテル、またはステントなどの他の組成物送達要素を利用してもよい。別の例では、組成物送達要素18は、例として、第1の長手方向部材12の管腔19を通って身体領域に送達される、組成物で充填されたマイクロバブルであり得る。別の例では、
図7に示すように、組成物送達要素18は、上に組成物が配置された複数の拡張可能なリブを含む。
【0025】
ここでさらに詳細に
図1及び
図5を再度参照すると、バルーンなどの組成物送達要素18は、その表面25上に配置される1つまたは複数の隆起要素28を含む。隆起要素28は、組成物送達要素18を挿入する区域内に組成物がより容易に拡散できるように、並行して閉塞部などの身体領域に引っかき傷を付けるまたはそれを切るように構成される。隆起要素28は、組成物送達要素18上に配置された長手方向要素または円周方向要素を含み得る。一例では、隆起要素28は三角形の断面を有するが、他の構成も利用され得る。隆起要素28は、例として、金属またはポリマーで構築されているが、他の材料を利用することもできる。組成物層24は、組成物送達要素18の隆起要素28に直接適用することができる。この例では、隆起要素28は組成物送達要素12に直接連結されている。あるいは、ここで
図8を参照すると、隆起要素28は、第1の長手方向部材12に直接連結させることができるが、他の構成を利用してもよい。
【0026】
高周波エネルギーを利用した患者の身体領域への組成物の向上した送達のための方法の例を、
図1~
図8を参照して次に説明する。最初に、表面25上に組成物層24を配置した組成物送達要素18を含む長手方向部材12が、治療すべき患者の身体領域に送達される。身体領域は、器官、身体管腔または体腔、例えば様々な導管もしくは管、血管、移植片、腺などの身体内の様々な領域であり得る。一例では、身体領域は、治療を必要とする閉塞部または腫瘍を含む身体内の区域であり得る。組成物層24は、組成物送達要素18の表面25上にコーティングするかまたは埋め込むことができるが、他の例では、組成物層24は、拡張可能なバルーンなどの組成物送達要素18の表面25から突出する隆起要素上に配置することができる。
【0027】
身体領域中に配置されると、組成物送達要素18を拡張させて組成物層24を身体領域に適用することができる。組成物は治療薬または医薬化合物である。組成物送達装置で利用され得る組成物の非限定的な例としては、血栓溶解薬、線維素溶解酵素、トロンビン阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬、抗再狭窄薬、または抗がん薬が挙げられるが、他の治療薬または医薬化合物を、組成物送達装置10を用いて送達してもよい。
【0028】
次に、高周波エネルギー源16に連結させた第1の電極14(1)及び第2の電極14(2)が、身体領域に近接した位置へ導かれる。一例では、長手方向部材12は、
図1及び
図5に示すように、電極14(1)及び14(2)が長手方向部材12と同時に送達されるように電極14(1)及び14(2)がその上に配置されている。
【0029】
別の例では、
図2に示しているように、電極14(1)及び14(2)は、第1の長手方向部材12の管腔19の中に挿入されて患者の身体領域に近接するよう送達されるように構成されている第2の長手方向部材13上にて送達される。この例では、電極14(1)及び14(2)は、組成物送達要素18の送達後に身体領域へ導かれる。
【0030】
さらに別の例では、
図3に示すように、電極14(1)及び14(2)は、それぞれ独立した重ならないガイドワイヤまたはカテーテルである第2の長手方向部材13及び第3の長手方向部材23上にて、第1の長手方向部材12の管腔19を通って身体領域へ別々に導かれる。この例では、第2の長手方向部材13及び第3の長手方向部材23は、その開示が全体において参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,561,073号に記載されているように、順行/逆行アプローチを使用して、同じ方向または反対方向で身体に送達され得る。
【0031】
その全体が本明細書に組み込まれる、同じ発明者による米国特許第7,918,859号に開示されているように、制御式順行性及び逆行性追跡(controlled antegrade and retrograde tracking(CART))技法において、逆行アプローチは冠状動脈間通路を利用する。そのような通路は、心外膜通路、心房間通路、中隔間通路(中隔側枝とも呼ばれる)、またはバイパス移植片であり得る。CART技法の基本概念は、順行と逆行の双方で閉塞部に接近することによって、好ましくは限定された切開で、閉塞部を通る通路を形成することである。
【0032】
さらなる例では、電極14(1)または14(2)のうちの一方を含むパッチが、治療すべき患者の身体領域に近接した患者の皮膚上に置かれている。パッチは、電極14(1)と14(2)との間の双極配置を可能にするために、身体領域にごく接近して置かれる。
【0033】
次に、高周波エネルギーが変調パルスで高周波エネルギー源16から電極14(1)及び14(2)に送達される。一例では、高周波エネルギー源16は、約0.05~約500マイクロ秒のパルス幅を有する変調パルスを供給するが、0.05マイクロ秒未満、または500マイクロ秒~1秒のパルス幅を有する変調パルスを使用してもよい。高周波エネルギー源16はさらに、単なる例として、2~10パルスを有するパケットで変調パルスを供給することができる。別の例では、変調パルスは、単なる例として、100ms~1sのバースト幅と1ms~100msの各バースト間の間隔とを有するバーストにグループ分けされる。
【0034】
変調パルスの送達は、心電図(ECG)または患者の身体から得られる他の波形信号を用いて、ゲート制御してもよい。一例では、電極を含む第3のパッチを身体領域の外側に置き、電極14(1)及び14(2)に電気的に結合させることができる。さらに別の例では、高周波エネルギーの送達に基づいてインピーダンスを測定するために、身体領域の近くに第3の電極を配置することができる。次に、インピーダンス測定値を利用して高周波エネルギーの送達を最適化することができる。
【0035】
高周波エネルギー源16は、400V~4000Vの電圧で高周波エネルギーを供給するが、いくつかの例では400V未満の電圧が利用され得る。一例では、身体領域における高周波エネルギーの入射強度は、1平方ミリメートル当たり約0.1ジュール~5ジュールである。一例では、100オームなどの電気的な限界に達するまで高周波エネルギーを送達するが、他の電気的な限界を採用することもできる。
【0036】
高周波エネルギー源16は、キャビテーション、マイクロジェット、衝撃波、電気刺激、または化学反応などの組成物の送達を向上させる送達条件を身体領域中に提供するレベルで、高周波エネルギーを供給する。一例では、高周波エネルギー源16は、0.1MPa~20MPaの瞬間的な大きさを有する衝撃波を発生させるエネルギーを供給する。別の例では、高周波エネルギー源16は、1μm~10mmの直径を有するキャビテーション気泡の1つまたは複数の領域を身体領域中に生成するためのエネルギーを供給する。キャビテーション気泡は、組成物送達装置10を用いて身体領域に送達された組成物から形成することができる。
【0037】
高周波エネルギーの送達は、組成物の長期の送達及び身体領域内への組成物の埋め込みを提供して、治療の向上をもたらす。高周波信号は、パルスの持続時間を短縮または延長する、あるいはパルス周期を調整することなどによって、パルスに対するいくつかの修正を使用して調整することができる。例として、パルスの持続時間をマイクロ秒またはナノ秒範囲に短縮することによって、より強力な機械的な効果を得て、身体領域内への組成物のより強い機械的な効果(すなわち、より深部への注入または埋め込み)を誘発することができる。組成物をより深部へ埋め込むと、身体領域内での組成物のより長い持続時間がもたらされ、組成物からのより持続的な効果が可能になる見込みがある。
【0038】
例として、高周波エネルギーの送達を利用して、身体領域内への組成物の拡散を向上させる機械的な力を提供することができる。あるいは、高周波エネルギーを用いて、身体領域への組成物の送達の有効性を高める、血管拡張、細胞透過性の増加、または可逆的エレクトロポレーションなどの、身体領域自体への影響を生じさせることができる。
【0039】
例として、方法は、閉塞時に治療するために利用できる。高周波エネルギーを2つの電極14(1)と14(2)の間に印加してプラズマを発生させ、キャビテーションまたは衝撃波のようなプラズマ発生の効果を利用して、周囲のプラークまたは閉塞部または血管壁を改変する。組成物は閉塞部に送達されるが、これは今やプラズマ発生の効果に起因して組成物の拡散または送達をより受けやすくなっており、したがって血管壁への組成物の送達を向上させる。血管壁または閉塞部への高周波エネルギーの送達は、血管拡張を誘導して、細胞透過性を変更して、またはエレクトロポレーションなどで、組成物の送達を向上させることができる。高周波信号を調整することによって、組成物を血管壁内のより深部に送達することができ、それにより組成物を血管壁内に長期間留まらせることができ、血管系内での組成物の永続性を改善することができる。
【0040】
別の例では、電極14(1)及び14(2)は組成物と同じ装置上に置かれ、そのことにより、周囲組織の改変と組成物の送達を向上させる高周波エネルギーの送達とを同時に生じさせることが可能になる。この例では、バルーンカテーテルなどの組成物送達要素18は、バルーンの外側表面25上に組成物層24が置かれている。電極14(1)及び14(2)は、
図1に示しているように第1の長手方向部材12へ取り付けるものとして組成物送達要素18の内側に配置されるか、または
図2及び
図3に示しているように、第1の長手方向部材12の管腔19を通して送達される。次いで、高周波エネルギーが送達され、高周波エネルギーの効果が、バルーンなどの組成物送達要素18を介して組成物層24及び血管壁に伝えられ、血管壁への組成物の送達が向上する。
【0041】
高周波エネルギーを利用した、閉塞部などの患者の身体領域への組成物の向上した送達のための別の例示的な方法を、
図9A~
図9Cを参照しながら説明する。この例では、電極14(1)及び14(2)は、
図9Aに示すように、身体区域に組成物を送達する前に、第2の長手方向部材13及び第3の長手方向部材23上にて、血管内の閉塞区域へ導かれる。
【0042】
次に、上述のように高周波エネルギーを印加する。
図9Bに示すように、高周波エネルギーの印加はプラズマを発生させ、キャビテーションまたは衝撃波などのプラズマ発生の効果を利用して、周囲のプラークまたは閉塞部または血管壁を改変する。その後、電極14(1)及び14(2)を身体領域から取り出す。
【0043】
次に、
図9Cに示すように、組成物送達要素18を用いて組成物を閉塞部に送達する。閉塞部は、プラズマ発生の効果に起因して、組成物の拡散または送達をより受けやすくなっており、したがって血管壁内への組成物の送達を向上させる。血管壁または閉塞部への高周波エネルギーの送達は、血管拡張を誘導して、細胞透過性を変更して、またはエレクトロポレーションなどで、組成物の送達を向上させることができる。高周波信号を調整することによって、組成物を血管壁のより深部に送達することができ、それにより組成物を血管壁内に長期間留まらせることができ、血管系内での組成物の永続性を改善することができる。
【実施例】
【0044】
臨床前研究(
図11)は、非常に高い電圧では、閉塞のない血管内で高周波エネルギーを用いたプラズマ媒介アブレーションの効果が、血管壁内に伝播する効果をもたらすことができることを示した。特に、中膜の切開及び/または血管周囲での出血は、外側血管壁の方へと生じ得る。しかし、高周波送達の設定を変更することによって、これらの効果が有害な効果を生み出すことなく血管壁または閉塞部への組成物の送達を向上させるように、これらの効果を制御することができる。変更の例としては、電圧または電流レベルを下げること、パルス周期を修正すること、パルスの持続時間を修正すること、または高周波の送達中に送達されるパルス数を修正することが挙げられる。
【0045】
例として、血管壁中の閉塞部の場合、1200V~2000Vの範囲の電圧を使用することで、非常に短い期間で組織を切除し、閉塞部を通る通路を形成することができることが示されている。目的が通路を形成することではなく血管壁への薬物の送達を向上させることであるため、薬物または他の組成物の送達は、より少ないエネルギーまたはより低い電圧を必要とすることが見込まれる。同様に、非常に短いパルス(ナノ秒のオーダー)は一般に、より長いパルスよりも大きな機械的な力(例えば衝撃波)を生み出すことが示されている。壁自体への損傷を生じることなく血管壁内への薬物または組成物の送達を向上させるのに十分な機械的な力を送達することが好ましい。
【0046】
したがって、本明細書の例により図示及び説明されているように、この技術は、組成物を身体領域に送達するためのより効率的かつ効果的な装置及び方法を提供する。この技術の装置及び方法は、組成物が長期間にわたって身体領域部位内に留まることを可能にして、治療の向上をもたらす。特に、高周波エネルギーまたは他のエネルギー源によって生成されるキャビテーション、衝撃波、エレクトロポレーションなどの使用は、組成物の送達を補助する。この技術はまた、有利にも、何も後に残すことなく長期間にわたって薬物が標的部位内に留まるように薬物を血管壁または閉塞部内に送達するための向上した方法を提供する。標的部位内での薬物の持続的な作用は、転帰の改善(例えば、再閉塞、再狭窄、または血管再生率の低下)をもたらし得る。
【0047】
本発明の基本概念をこのように説明してきたが、前述の詳細な開示は単なる例として提示することを意図しており、限定するものではないということは、当業者にとってかなり明白である。様々な変更、改善、及び修正が行われ、それらは当業者が意図するものであるが、本明細書では明示的に述べていない。これらの変更、改善、及び修正は、本明細書により示唆されることを意図しており、本発明の趣旨及び範囲内にある。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定される。