(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】配管検査プローブ
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2023183631
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236104
【氏名又は名称】MHIソリューションテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 友
(72)【発明者】
【氏名】浅井 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】立井 一男
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-352113(JP,A)
【文献】特開昭59-126946(JP,A)
【文献】特開昭53-108489(JP,A)
【文献】特開2003-172732(JP,A)
【文献】特開昭63-024152(JP,A)
【文献】特開昭48-092088(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1784359(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部から前記配管を検査するための配管検査プローブであって、
超音波の発信および受信が可能な複数の第1センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第1のセンサホルダと、
超音波の発信および受信が可能な複数の第2センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第2のセンサホルダと、
前記第1のセンサホルダと前記第2のセンサホルダとを前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続する所定のねじり剛性を有する
コイルバネ部材と、を備え
、
前記コイルバネ部材は、該コイルバネ部材を形成する線材の断面形状が、前記配管検査プローブの径方向に沿って長手形状である、
配管検査プローブ。
【請求項2】
前記線材の断面形状は、前記配管検査プローブの軸線方向に沿って短手形状である、
請求項1に記載の配管検査プローブ。
【請求項3】
前記第1のセンサホルダの前記配管検査プローブの径方向の長さをL1、前記第1のセンサホルダの前記配管検査プローブの軸線方向の長さをL2とすると、L1≦L2≦1.2L1を満たす、
請求項
1または2に記載の配管検査プローブ。
【請求項4】
前記複数の第1センサおよび前記複数の第2センサは、前記配管検査プローブの周方向において互いにずれている、
請求項
1または2に記載の配管検査プローブ。
【請求項5】
前記複数の第1センサは、2つの第1センサであり、
前記複数の第2センサは、2つの第2センサであり、
超音波の発信および受信が可能な2つの第3センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第3のセンサホルダと、
超音波の発信および受信が可能な2つの第4センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第4のセンサホルダと、をさらに備え、
前記2つの第1センサ、前記2つの第2センサ、前記2つの第3センサ、および前記2つの第4センサは、前記配管検査プローブの周方向において互いにずれて配置され、
前記第1のセンサホルダ、前記第2のセンサホルダ、前記第3のセンサホルダ、および前記第4のセンサホルダのそれぞれは、前記
コイルバネ部材によって前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続されている、
請求項
1または2に記載の配管検査プローブ。
【請求項6】
前記複数の第1センサは、4つの第1センサであり、
前記複数の第2センサは、4つの第2センサであり、
超音波の発信および受信が可能な4つの第3センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第3のセンサホルダと、
超音波の発信および受信が可能な4つの第4センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第4のセンサホルダと、をさらに備え、
前記4つの第1センサ、前記4つの第2センサ、前記4つの第3センサ、および前記4つの第4センサは、前記配管検査プローブの周方向において互いにずれて配置され、
前記第1のセンサホルダ、前記第2のセンサホルダ、前記第3のセンサホルダ、および前記第4のセンサホルダのそれぞれは、前記
コイルバネ部材によって前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続されている、
請求項
1または2に記載の配管検査プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管の内部から配管を検査するための配管検査プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボイラの伝熱管などの配管における減肉や疲労割れなどの損傷の有無を非破壊で検査する方法として、超音波探傷方法や渦電流探傷方法などが知られている。これらの方法では、配管検査プローブをケーブルなどの前端に取り付け、このケーブルを配管の内部に押し込むことで、配管検査プローブを配管の内部に挿入する。特許文献1には、配管の内部へのケーブルの挿入性を向上させるために、回転可能に支持されたローラを含むケーブルガイドをケーブルに設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、配管検査プローブのセンサ部を回転させる必要があり、装置が複雑化し検査時間も長くなってしまう。また、特許文献1に記載の技術では、センサ部を回転させなくて良いように、周方向にずれて配置されたセンサを備える複数のセンサ部を回転軸で連結することも開示されるが、小径かつ曲げ半径が小さい湾曲部を有する配管では、センサ部の全長が長く、回転軸が対応できる曲げ半径の範囲が狭いため、湾曲部で配管検査プローブがつかえてしまう。仮に、配管検査プローブが湾曲部を通過しやすいように、センサ部同士を回転軸によらずに連結したとしても、フレキシブルシャフトがねじれてセンサ部同士が相対回転してしまい、配管の周方向の一部が探傷範囲から外れてしまう虞がある。尚、ここで小径とは配管の内径が20~40mm程度、曲げ半径が小さいとは、配管の曲げ半径Rが35mm以下のものを指す。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、小径かつ曲げ半径が小さな配管の内部への挿入性を向上させることができる配管検査プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る配管検査プローブは、配管の内部から前記配管を検査するための配管検査プローブであって、超音波の発信および受信が可能な複数の第1センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第1のセンサホルダと、超音波の発信および受信が可能な複数の第2センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第2のセンサホルダと、前記第1のセンサホルダと前記第2のセンサホルダとを前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続する所定のねじり剛性を有する可撓性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の配管検査プローブによれば、小径かつ曲げ半径が小さな配管の内部への挿入性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る配管検査プローブの構成を概略的に示す図である。
【
図2A】一実施形態に係る第1センサのレイアウトを説明するための図である。
【
図2B】一実施形態に係る第2センサのレイアウトを説明するための図である。
【
図2C】一実施形態に係る第3センサのレイアウトを説明するための図である。
【
図2D】一実施形態に係る第4センサのレイアウトを説明するための図である。
【
図3】一実施形態に係る可撓性部材の断面形状を示す図である。
【
図4A】幾つかの実施形態に係る可撓性部材の断面形状を示す図である。
【
図4B】幾つかの実施形態に係る可撓性部材の断面形状を示す図である。
【
図4C】幾つかの実施形態に係る可撓性部材の断面形状を示す図である。
【
図5】別の一実施形態に係る配管検査プローブの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による配管検査プローブについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(構成)
図1は、一実施形態に係る配管検査プローブ1の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、配管検査プローブ1は、細長い形状を有している。そして、一実施形態では、配管検査プローブ1は、ジョイナー102を介して、ケーブルやチューブのような長尺状部材104の一端に接続されている。長尺状部材104は、検査対象である配管50の内部に挿入可能に構成されている。このような長尺状部材104の外径は、配管50の内径よりも小さい。長尺状部材104は、例えば、金属や樹脂などによって形成されており、全長に亘って配管50の管路の形状に応じて屈曲可能に構成されている。
【0011】
この長尺状部材104は、他端が配管50の外に配置される搬送装置106に接続されている。この搬送装置106は、例えば、長尺状部材104を人力や機械によって配管50の内部に押し込むプッシャー式搬送装置である。このプッシャー式搬送装置によって、長尺状部材104を配管50の内部に押し込むことで、長尺状部材104を配管50の内部に挿入し、配管検査プローブ1を配管50の内部に搬送することができる。尚、搬送装置106は、プッシャー式搬送装置以外であってもよく、例えば、配管50の内部に水流を送り出す水圧式搬送装置であってもよい。
【0012】
本開示では、配管検査プローブ1の軸線Oが延びる方向を配管検査プローブ1の軸線方向(以下、軸線方向D1)とする。そして、軸線方向D1のうちジョイナー102に接続される配管検査プローブ1の一端を基端11aとして、この基端11aから先端11bに向かう方向を軸線方向D1の一方とする。また、軸線Oを始点として軸線Oと直交する方向を配管検査プローブ1の径方向(以下、径方向D2)とする。軸線Oを中心として回転することで描かれる円形状の軌跡が延びる方向を配管検査プローブ1の周方向(以下、周方向D3)とする。
【0013】
図1に示すように、配管検査プローブ1は、第1のセンサホルダ2と、第2のセンサホルダ4と、所定のねじり剛性を有する可撓性部材10と、を含む。所定のねじり剛性は、後述する8つのセンサ3の探傷範囲に基づいて決定され、例えば、周方向D3において互いに隣接するセンサ3の探傷範囲が非重複となるように決定される。
図1に例示する形態では、配管検査プローブ1は、第3のセンサホルダ6と、第4のセンサホルダ8と、先端ガイド12と、調心治具14と、をさらに含む。配管検査プローブ1には、軸線方向D1の一方側から順に、先端ガイド12、第1のセンサホルダ2、第2のセンサホルダ4、第3のセンサホルダ6、および第4のセンサホルダ8が配置されている。先端ガイド12は、球形状を有しており、棒状の先端側シャフト13を介して、第1のセンサホルダ2と接続されている。この先端ガイド12は、配管検査プローブ1の先端11bを含んでいる。第4のセンサホルダ8は、棒状の基端側シャフト18を介して、ジョイナー102と接続されている。この基端側シャフト18は、配管検査プローブ1の基端11aを含んでいる。先端側シャフト13および基端側シャフト18のそれぞれは、特に限定されないが、例えば、スプリングシャフトである。
【0014】
一実施形態では、第1のセンサホルダ2の径方向D2の長さをL1、第1のセンサホルダ2の軸線方向D1の長さをL2とすると、L1≦L2≦1.2L1を満たす。第2のセンサホルダ4、第3のセンサホルダ6、および第4のセンサホルダ8のそれぞれは、第1のセンサホルダ2と同程度の寸法を有している。
【0015】
一実施形態では、配管検査プローブ1は、超音波の発信および受信が可能な8つのセンサ3を含んでいる。センサ3は、配管50の肉厚に関する物理量(発信した超音波がセンサ3に戻ってくるまでの時間)を測定データとして取得可能に構成されている。この測定データに基づいて、配管50の内面51の減肉が検出される。第1のセンサホルダ2、第2のセンサホルダ4、第3のセンサホルダ6、および第4のセンサホルダ8のそれぞれは、8つのセンサのうち2つのセンサ3を支持している(
図2A~
図2Dを参照)。
【0016】
以下では、第1のセンサホルダ2によって支持されるセンサ3を第1センサ23(3)とし、第2のセンサホルダ4によって支持されるセンサ3を第2センサ43(3)とし、第3のセンサホルダ6によって支持されるセンサ3を第3センサ63(3)とし、第4のセンサホルダ8によって支持されるセンサ3を第4センサ83(3)としている。
【0017】
図1に示すように、2つの第1センサ23は、1つのセンサ列に配置されている。本開示において、「1つのセンサ列に配置されている」とは、2つのセンサ3が軸線方向D1において、少なくとも一部が互いに重なり合っていることを意味する。
図1に例示する形態では、2つの第1センサ23は、軸線方向D1において、大部分または全体が互いに重なりあっている。同様に、2つの第2センサ43、2つの第3センサ63、および2つの第4センサ83のそれぞれも1つのセンサ列に配置されている。
【0018】
図2Aは、一実施形態に係る第1センサ23のレイアウトを説明するための図であって、軸線方向D1から視ている図である。
図2Bは、一実施形態に係る第2センサ43のレイアウトを説明するための図であって、軸線方向D1から視ている図である。
図2Cは、一実施形態に係る第3センサ63のレイアウトを説明するための図であって、軸線方向D1から視ている図である。
図2Dは、一実施形態に係る第4センサ83のレイアウトを説明するための図であって、軸線方向D1から視ている図である。
【0019】
図2Aに示すように、2つの第1センサ23のそれぞれは、第1のセンサホルダ2の周方向(つまりは、周方向D3)に互いに間隔を空けて配置されている。
図2Bに示すように、2つの第2センサ43のそれぞれは、第2のセンサホルダ4の周方向(つまりは、周方向D3)に互いに間隔を空けて配置されている。
図2Cに示すように、2つの第3センサ63のそれぞれは、第3のセンサホルダ6の周方向(つまりは、周方向D3)に互いに間隔を空けて配置されている。
図2Dに示すように、2つの第4センサ83のそれぞれは、第4のセンサホルダ8の周方向(つまりは、周方向D3)に互いに間隔を空けて配置されている。
【0020】
図2Aに示すように、軸線Oから一方の第1センサ23の中心位置を通過するように延在する仮想線Xの角度位置θを0度とする。そして、この角度位置θは軸線Oを回転中心として周方向D3の一方(
図2Aの紙面において右回り)に回転するにつれて増加し、仮想線Xが1回転したときの角度位置θを360度とする。
【0021】
図2Aに示すように、一実施形態では、2つの第1センサ23は、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置している。一方の第1センサ23は、0度の角度位置θに位置するように第1のセンサホルダ2に配置されている。他方の第1センサ23は、180度の角度位置θに位置するように、第1のセンサホルダ2に配置されている。より具体的には、一方の第1センサ23の中心位置が0度の角度位置θに位置し、他方の第1センサ23の中心位置が180度の角度位置θに位置している。尚、本開示は、第1センサ23のレイアウトを
図2Aに例示する形態に限定するものではない。例えば、一方の第1センサ23は0度の角度位置θに位置し、他方の第1センサ23は90度の角度位置θに位置してもよい。
【0022】
図2Bに示すように、2つの第2センサ43は、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置している。一方の第2センサ43は、45度の角度位置θに位置するように第2のセンサホルダ4に配置されている。他方の第2センサ43は、225度の角度位置θに位置するように、第2のセンサホルダ4に配置されている。より具体的には、一方の第2センサ43の中心位置が45度の角度位置θに位置し、他方の第2センサ43の中心位置が225度の角度位置θに位置している。尚、本開示は、第2センサ43のレイアウトを
図2Bに例示する形態に限定するものではない。
【0023】
図2Cに示すように、2つの第3センサ63は、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置している。一方の第3センサ63は、90度の角度位置θに位置するように第3のセンサホルダ6に配置されている。他方の第3センサ63は、270度の角度位置θに位置するように、第3のセンサホルダ6に配置されている。より具体的には、一方の第3センサ63の中心位置が90度の角度位置θに位置し、他方の第3センサ63の中心位置が270度の角度位置θに位置している。尚、本開示は、第3センサ63のレイアウトを
図2Cに例示する形態に限定するものではない。
【0024】
図2Dに示すように、2つの第4センサ83は、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置している。一方の第4センサ83は、135度の角度位置θに位置するように第4のセンサホルダ8に配置されている。他方の第4センサ83は、315度の角度位置θに位置するように、第4のセンサホルダ8に配置されている。より具体的には、一方の第4センサ83の中心位置が135度の角度位置θに位置し、他方の第4センサ83の中心位置が315度の角度位置θに位置している。尚、本開示は、第4センサ83のレイアウトを
図2Dに例示する形態に限定するものではない。
【0025】
図2Aおよび
図2Bに示すように、一実施形態では、2つの第1センサ23および2つの第2センサ43は、周方向D3において互いにずれている。さらに、
図2Aから
図2Dに示すように、2つの第1センサ23、2つの第2センサ43、2つの第3センサ63、および2つの第4センサ83(つまりは、8つのセンサ3)は、周方向D3において互いにずれている。
【0026】
図1に例示するように、一実施形態では、可撓性部材10は、第1の可撓性部材15(10)、第2の可撓性部材16(10)、第3の可撓性部材17(10)を含む。第1の可撓性部材15は、第1のセンサホルダ2と第2のセンサホルダ4とを軸線方向D1において並ぶように接続する。第2の可撓性部材16は、第2のセンサホルダ4と第3のセンサホルダ6とを軸線方向D1において並ぶように接続する。第3の可撓性部材17は、第3のセンサホルダ6と第4のセンサホルダ8とを軸線方向D1において並ぶように接続する。尚、第1の可撓性部材15、第2の可撓性部材16、および第3の可撓性部材17のそれぞれは、互いに別体であってもよいし、一体的に構成されてもよい。尚、第1の可撓性部材15、第2の可撓性部材16、および第3の可撓性部材17のそれぞれは、互いに同程度のねじり剛性を有していてもよいし、互いに異なるねじり剛性を有していてもよい。
【0027】
一実施形態では、可撓性部材10は、角線バネである。
図3は、一実施形態に係る可撓性部材10(角線バネ)の断面形状を示す図である。
図3に示すように、角線バネは、断面形状が径方向D2に沿って長手形状を有し、且つ軸線方向D1に沿って短手形状を有する矩形状である。一実施形態では、可撓性部材10の断面形状の軸線方向D1の長さをL3とし、可撓性部材10の断面形状の径方向D2の長さをL4とすると、L3<L4<2×L3を満たす。
【0028】
調心治具14は、配管50の内部に搬送された配管検査プローブ1を配管50の略中央に位置させるための治具である。
図1に例示する形態では、配管検査プローブ1は、複数の調心治具14を含んでいる。複数の調心治具14は、先端側シャフト13に設けられる調心治具14、基端側シャフト18に設けられる調心治具14、第1の可撓性部材15に設けられる調心治具14、第2の可撓性部材16に設けられる調心治具14、および第3の可撓性部材17に設けられる調心治具14を含む。
【0029】
第1の可撓性部材15に設けられる調心治具14を例にして、調心治具14の具体的な構成例について説明する。調心治具14は、第1の可撓性部材15によって支持される本体部30と、本体部30の外周面から径方向D2の外側に延びるブラシ32と、を含む。
【0030】
(作用・効果)
一実施形態に係る配管検査プローブ1の作用・効果について説明する。一実施形態によれば、8つのセンサ3を第1のセンサホルダ2~第4のセンサホルダ8のそれぞれに2つずつ分配している。このため、8つのセンサ3がまとめて配置される1つのセンサホルダと比較して、第1のセンサホルダ2~第4のセンサホルダ8のそれぞれの寸法を小さくすることができる。また、センサ3を小型化せずに済むので、センサ3の探傷範囲を縮小させない点においても有利である。
【0031】
さらに、一実施形態によれば、第1のセンサホルダ2は、2つの第1センサ23が1つのセンサ列に配置されることで、軸線方向D1の寸法が短くなっている。同様に、第2のセンサホルダ4~第4のセンサホルダ8も、2つのセンサ3が1つのセンサ列に配置されることで、軸線方向D1の寸法が短くなっている。このため、第1のセンサホルダ2~第4のセンサホルダ8が曲げ半径の小さな湾曲部であっても通過することができ、配管50の内部への配管検査プローブ1の挿入性を向上させることができる。
【0032】
一実施形態によれば、第1のセンサホルダ2は、L2≦1.2L1(L1:径方向の長さ、L2:軸線方向の長さ)を満たすように構成されるので、従来のセンサホルダと比較して、軸線方向D1の長さを短くし、配管50の内部への配管検査プローブ1の挿入性を向上させることができる。
【0033】
配管検査プローブ1が配管50の湾曲部を通過するためには、可撓性部材10はある程度の曲がりやすさを有することが望ましい。また、配管検査プローブの挿入に際し、可撓性部材10が捻れて第1のセンサホルダ2から第4のセンサホルダ8までの少なくとも2つが相互に回転し、8つのセンサ3の周方向D3の探傷範囲に抜け・漏れが生じることを抑制するため、可撓性部材10はある程度の捻じれ難さ(ねじり剛性)を有することが望ましい。
【0034】
本発明者らの知見によれば、可撓性部材10として角線バネを適用することで、可撓性部材10はある程度の曲がりやすさ、および捻じれ難さを有することができる。このため、一実施形態によれば、角線バネを可撓性部材10として適用しているので、配管50の内部への挿入性が向上し、且つ周方向D3において幅広く配管50を検査できる配管検査プローブ1を提供することができる。幾つかの実施形態では、可撓性部材10は、周方向D3への変形量(いわゆる捻じれ角)が15度以内となるように設計されている。
【0035】
尚、一実施形態では、可撓性部材10は、角線バネであったが、本開示はこの形態に限定されない。
図4A-
図4Cのそれぞれは、幾つかの実施形態に係る可撓性部材10の断面形状を示す図である。幾つかの実施形態では、可撓性部材10は、バネ部材である。
図4Aに例示する可撓性部材10は、断面形状が径方向D2に沿って長手形状を有する台形状である。この台形状の断面形状は、径方向D2の外側に長辺を有し、径方向D2の内側に短辺を有している。
図4Bに例示する可撓性部材10は、断面形状が径方向D2に沿って長手形状を有する楕円形状である。この楕円形状の断面形状は、径方向D2に沿って延びる長軸を有している。
図4Cに例示する可撓性部材10は、断面形状が円形状である。
【0036】
バネ部材の捻じれ難さ(ねじり剛性)は、断面二次モーメントの影響を受ける。幾つかの実施形態によれば、バネ部材を捻じれ難くすることで、複数のセンサ3の位置が周方向D3にずれることを抑制する。つまり、複数のセンサ3の探傷範囲に抜け・漏れが生じることを抑制する。このため、配管検査プローブ1は、配管50の内部から周方向D3において幅広く配管50を検査することができる。ところで、断面形状が長方形状であるバネ部材は、断面形状が正方形状であるバネ部材よりも捻じれ難い。同様に、断面形状が楕円形状であるバネ部材は、断面形状が円形状であるバネ部材よりも捻じれ難い。このため、
図4Aおよび
図4Bに例示する形態によれば、所望の捻じれ剛性を有するバネ部材を容易に準備できる。
【0037】
一実施形態によれば、8つのセンサ3のそれぞれが周方向D3において互いにずれているので、周方向D3において互いに異なる探傷範囲を有することができる。このため、周方向D3において幅広く配管50を検査できる。
【0038】
一実施形態によれば、8つのセンサ3(8チャンネル)を有する配管検査プローブ1であって、配管50の内部への挿入性を向上させた配管検査プローブ1を提供することができる。この配管検査プローブ1は、20mm以上105mm以下の内径を有する配管50の内部に挿入可能となっている。さらに、この配管検査プローブ1は、35mm以下の曲率半径を有する配管50の湾曲部を通過可能となっている。尚、配管検査プローブ1は8チャンネルに限定されず、任意の数のチャンネルを有する。
【0039】
別の一実施形態に係る配管検査プローブ1について説明する。別の一実施形態において、上述した一実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図5は、別の一実施形態に係る配管検査プローブ1の構成を概略的に示す図である。別の一実施形態では、配管検査プローブ1は、16のセンサ3(16チャンネル)を有している。そして、第1のセンサホルダ2は、16のセンサのうち4つの第1センサ23を支持している。第2のセンサホルダ4は、16のセンサのうち4つの第2センサ43を支持している。第3のセンサホルダ6は、16のセンサのうち4つの第3センサ63を支持している。第4のセンサホルダ8は、16のセンサのうち4つの第4センサ83を支持している。4つの第1センサ23、4つの第2センサ43、4つの第3センサ63、および4つの第4センサ83のそれぞれは、周方向D3に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置されている。
【0040】
別の一実施形態では、4つの第1センサ23は、角度位置θが90度ずつずれるように配置されている。4つの第2センサ43は、角度位置θが90度ずつずれるように配置されている。4つの第3センサ63は、角度位置θが90度ずつずれるように配置されている。4つの第4センサ83は、角度位置θが90度ずつずれるように配置されている。そして、4つの第1センサ23、4つの第2センサ43、4つの第3センサ63、および4つの第4センサ83(つまりは、16のセンサ3)は、周方向D3において互いにずれている。
【0041】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0042】
[1]本開示に係る配管検査プローブ(1)は、
配管(50)の内部から前記配管を検査するための配管検査プローブであって、
超音波の発信および受信が可能な複数の第1センサ(23)が周方向(D3)に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第1のセンサホルダ(2)と、
超音波の発信および受信が可能な複数の第2センサ(43)が周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第2のセンサホルダ(4)と、
前記第1のセンサホルダと前記第2のセンサホルダとを前記配管検査プローブの軸線方向(D1)において並ぶように接続する所定のねじり剛性を有する可撓性部材(10)と、を備える。
【0043】
上記[1]に記載の構成によれば、複数の第1センサが第1のセンサホルダに分配され、複数の第2センサが第2のセンサホルダに分配されている。このため、複数の第1センサおよび複数の第2センサがまとめて配置される1つのセンサホルダの寸法と比較して、第1のセンサホルダ、および第2のセンサホルダのそれぞれの寸法を小さくすることができる。さらに、第1のセンサホルダは、複数の第1センサが1つのセンサ列に配置されることで、配管検査プローブの軸線方向の寸法が短くなっている。同様に、第2のセンサホルダは、複数の第2センサが1つのセンサ列に配置されることで、配管検査プローブの軸線方向の寸法が短くなっている。このため、第1のセンサホルダや第2のセンサホルダが曲げ半径の小さな湾曲部を有する配管であっても通過することができ、小径かつ曲げ半径が小さな配管の内部への配管検査プローブの挿入性を向上させることができる。
【0044】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記可撓性部材は、バネ部材であり、断面形状が一方向に沿って長手形状を有する。
【0045】
バネ部材の捻じれ難さ(ねじり剛性)は、断面二次モーメントの影響を受ける。このため、断面形状が長方形状であるバネ部材は、断面形状が正方形状であるバネ部材よりも捻じれ難い。同様に、断面形状が楕円形状であるバネ部材は、断面形状が円形状であるバネ部材よりも捻じれ難い。上記[2]に記載の構成によれば、バネ部材を捻じれ難くすることで、複数の第1センサのそれぞれの位置が周方向にずれること、および複数の第2センサのそれぞれの位置が周方向にずれることを抑制する。つまり、複数の第1センサの探傷範囲および複数の第2センサの探傷範囲に抜け・漏れが生じることを抑制する。このため、配管検査プローブは、配管の内部から配管検査プローブの周方向において幅広く配管を検査することができる。
【0046】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記バネ部材は、角線バネであり、断面形状が前記配管検査プローブの径方向に沿って長手形状を有し、且つ前記配管検査プローブの軸線方向に沿って短手形状を有する。
【0047】
配管検査プローブが配管の湾曲部を通過するためには、バネ部材はある程度の曲がりやすさを有することが望ましい。また、配管検査プローブの挿入に際し、バネ部材が捻れて第1のセンサホルダや第2のセンサホルダが相互に回転し、複数の第1センサおよび複数の第2センサの周方向の探傷範囲に抜け・漏れが生じることを抑制するため、バネ部材はある程度の捻じれ難さ(ねじり剛性)を有することが望ましい。本発明者らの知見によれば、バネ部材として角線バネを適用することで、バネ部材はある程度の曲がりやすさ、および捻じれ難さを有することができる。このため、上記[3]に記載の構成によれば、配管の内部への挿入性が向上し、且つ配管検査プローブの周方向において幅広く配管を検査できる配管検査プローブを提供することができる。
【0048】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1のセンサホルダの前記配管検査プローブの径方向の長さをL1、前記第1のセンサホルダの前記配管検査プローブの軸線方向の長さをL2とすると、L2≦1.2L1を満たす。
【0049】
上記[4]に記載の構成によれば、従来と比較して、第1のセンサホルダの配管検査配管検査プローブの軸線方向の長さを短くし、配管の内部への配管検査プローブの挿入性を向上させることができる。
【0050】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記複数の第1センサおよび前記複数の第2センサは、前記配管検査プローブの周方向において互いにずれている。
【0051】
上記[5]に記載の構成によれば、複数の第1センサおよび複数の第2センサのそれぞれは、配管検査プローブの周方向において互いに異なる探傷範囲を有することができる。このため、配管検査プローブの周方向において幅広く配管を検査できる。
【0052】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記複数の第1センサは、2つの第1センサであり、
前記複数の第2センサは、2つの第2センサであり、
超音波の発信および受信が可能な2つの第3センサ(63)が周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第3のセンサホルダ(6)と、
超音波の発信および受信が可能な2つの第4センサ(83)が周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第4のセンサホルダ(8)と、をさらに備え、
前記第1のセンサホルダ、前記第2のセンサホルダ、前記第3のセンサホルダ、および前記第4のセンサホルダのそれぞれは、前記可撓性部材によって前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続されている。
【0053】
上記[6]に記載の構成によれば、8個のセンサ(8チャンネル)を有し、配管の内部への挿入性を向上させた配管検査プローブを提供することができる。
【0054】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記複数の第1センサは、4つの第1センサであり、
前記複数の第2センサは、4つの第2センサであり、
超音波の発信および受信が可能な4つの第3センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第3のセンサホルダと、
超音波の発信および受信が可能な4つの第4センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第4のセンサホルダと、をさらに備え、
前記第1のセンサホルダ、前記第2のセンサホルダ、前記第3のセンサホルダ、および前記第4のセンサホルダのそれぞれは、前記可撓性部材によって前記配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続されている。
【0055】
上記[7]に記載の構成によれば、16個のセンサ(16チャンネル)を有し、配管の内部への挿入性を向上させた配管検査プローブを提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 配管検査プローブ
2 第1のセンサホルダ
3 センサ
4 第2のセンサホルダ
6 第3のセンサホルダ
8 第4のセンサホルダ
10 可撓性部材
11a 基端
11b 先端
12 先端ガイド
13 先端側シャフト
14 調心治具
18 基端側シャフト
23 第1センサ
30 本体部
32 ブラシ
43 第2センサ
50 配管
51 内面
63 第3センサ
83 第4センサ
102 ジョイナー
104 長尺状部材
106 搬送装置
D1 軸線方向
D2 径方向
D3 周方向
O 軸線
X 仮想線
【要約】
【課題】小径かつ曲げ半径が小さな配管の内部への挿入性を向上させることができる。
【解決手段】配管の内部から配管を検査するための配管検査プローブは、超音波の発信および受信が可能な複数の第1センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第1のセンサホルダと、超音波の発信および受信が可能な複数の第2センサが周方向に互いに間隔を空けて1つのセンサ列に配置された第2のセンサホルダと、第1のセンサホルダと第2のセンサホルダとを配管検査プローブの軸線方向において並ぶように接続する所定のねじり剛性を有する可撓性部材と、を備える。
【選択図】
図1