(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/107 20060101AFI20241025BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G08B17/107 A
G08B17/107 C
G08B17/10 H
(21)【出願番号】P 2023198098
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2022167803の分割
【原出願日】2019-03-19
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恭拓
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-57835(JP,A)
【文献】特開昭56-22933(JP,A)
【文献】特開2015-191462(JP,A)
【文献】特開平6-138031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0046935(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109427170(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁により側方から囲まれた検煙部と、
発光素子と、
受光素子と、を備え、
前記発光素子から送出した照射光が前記検煙部の中の煙に照射された際の後方散乱光を前記受光素子が受光する位置に、前記発光素子が配置され、
前記周壁において、煙がない前記検煙部に前記照射光が照射された際に前記発光素子が送出した前記照射光が反射する一次反射領域は、前記照射光が入光した方向とは異なる方向へ反射する偏向反射壁とし、
前記受光素子は受光素子収容壁に収容され、
前記照射光は前記偏向反射壁で反射して、前記受光素子収容壁の前記発光素子とは反対側の側方に導かれることを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記偏向反射壁は、前記受光素子に近い部分が外方へ突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱光により煙を感知する光電式の煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
光電式スポット型の煙感知器は、光の散乱を利用して煙を感知する。この煙感知器は、発光素子の光軸からずれた位置に受光素子を配置している。そして、光軸の周辺の検煙部に煙があると散乱光が生じて受光素子に入り、煙を感知する。特許文献1には、前方散乱光や後方散乱光により煙を感知する煙感知器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
散乱光を検出する検煙部を囲む光学台は、黒色樹脂等で形成されている。これは、外光が光学台を通過しないようにするためと、迷光などが光学台の内面に反射して受光素子に入らないように、光学台の内側を黒色として光の吸収を高め、誤検出を防止するためである。
一方、発光素子と受光素子が正常に機能しているか検出するため、発光素子からの照射光が光学台の内側で吸収されずに反射した反射光を用いる技術がある。この場合には、光学台の内部における反射光が少なすぎても多すぎても正常に機能しない。
本発明は、光学台の内部における反射光を適切な量とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、周壁により側方から囲まれた検煙部と、発光素子と、受光素子と、を備え、前記発光素子から送出した照射光が前記検煙部の中の煙に照射された際の後方散乱光を前記受光素子が受光する位置に、前記発光素子が配置され、前記周壁において、煙がない前記検煙部に前記照射光が照射された際に前記発光素子が送出した前記照射光が反射する一次反射領域は、前記照射光が入光した方向とは異なる方向へ反射する偏向反射壁とし、前記受光素子は受光素子収容壁に収容され、前記照射光は前記偏向反射壁で反射して、前記受光素子収容壁の前記発光素子とは反対側の側方に導かれることを特徴とする煙感知器である。
本発明により、検煙部に煙がないときにおける受光素子に入光する反射光を減少させ、SN比の向上により煙感知を高精度化、高品質化することができる。
【0006】
(1)また本発明は、煙導入部と、前記煙導入部の上方に設けられて周壁により側方から囲まれた検煙部と、第1発光素子と、受光素子と、を備え、前記第1発光素子から送出した第1照射光が前記検煙部の中の煙に照射された際の前方散乱光を前記受光素子が受光する位置に、前記受光素子と前記第1発光素子が配置され、前記周壁の内側において、煙がない前記検煙部に前記第1照射光が照射された際に二次反射光を形成する二次反射板を前記第1発光素子の側方に設け、前記二次反射板は前記第1照射光が前記周壁で反射した一次反射光を受けて反射し、生じた前記二次反射光を前記受光素子に入光させることを特徴とする煙感知器である。
本発明により、検煙部に煙がないときにおける受光素子に入光する反射光を増加させ、第1発光素子と受光素子の障害を検査することができる。
【0007】
(2)また、本発明は、第2発光素子から送出した第2照射光が前記検煙部の中の煙に照射された際の後方散乱光を前記受光素子が受光する位置に、前記第2発光素子が配置され、前記周壁において、煙がない前記検煙部に前記第2照射光が照射された際に前記第2発光素子が送出した前記第2照射光が反射する一次反射領域は、前記第2照射光が入光した方向とは異なる方向へ反射する偏向反射壁とし、前記受光素子は前記周壁において内側に突出した受光素子収容壁に収容され、前記第2照射光は前記偏向反射壁で反射して、前記受光素子収容壁の前記第2発光素子とは反対側の側方に導かれることを特徴とする(1)の煙感知器である。ここで、「受光素子は前記周壁において内側に突出した受光素子収容壁に収容され」とは、受光素子収容壁が周壁以外の部分において受光素子を囲っていないものも含む。
【0008】
本発明により、検煙部に煙がないときにおける受光素子に入光する反射光を減少させ、SN比の向上により煙感知を高精度化、高品質化することができる。
【0009】
(3)また、本発明は、前記偏向反射壁は、前記受光素子に近い部分が外方へ突出して設けられていることを特徴とする(2)の煙感知器である。
【0010】
本発明により、検煙部を狭めることなく、反射光を受光素子に入光しない位置へ誘導することができる。
【0011】
(4)また、本発明は、前記第1発光素子と前記第2発光素子の間に遮光板を有し、前記遮光板は、前記第2発光素子が向いている方向に沿って平面が設けられていることを特徴とする(2)または(3)の煙感知器である。
【0012】
本発明により、検煙部への照射光の照射と受光部への散乱光の入光の障害とならずに、第1発光素子からの照射光が直接的に受光部へ入光することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
受光素子に入光する反射光の量を適切なものとすることにより、発光素子と受光素子が正常に機能しているか検出することができる。さらに、過剰な反射光が受光素子に入光しないようにして、SN比の向上により煙感知を高精度化、高品質化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における煙感知器1の分解斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態における煙感知器1の断面説明のための図。
【
図3】本発明の一実施形態における前方散乱を説明するための図。
【
図4】本発明の一実施形態における発光量と受光量を示す図。
【
図5】本発明の一実施形態における光学台71を示す図。
【
図6】本発明の一実施形態における感知器ベース2を斜め下方から見た図。
【
図7】本発明の一実施形態における後方散乱を説明するための図。
【
図8】本発明の一実施形態における発光量と前方散乱光、後方散乱光による受光量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の発明を実施するための形態を記載する。なお、上下方向は煙感知器1の水平な天井への設置状態での上下で示す。水平方向及び垂直方向も同様である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における煙感知器1の分解斜視図である。煙感知器1を分解して斜め下方から見た状態を示す。煙感知器1は光電式スポット型であり、煙に照射された照射光の散乱光を捉えて煙を感知する。煙感知器1は、感知器ベース2、第1光学台カバー3、第2光学台カバー4,カバー本体5からなる。感知器ベース2では、裏板6の下に光学台プレート7が固定され、裏板6と光学台プレート7の間に回路基板8(
図2(b)参照)が挟まれている。光学台プレート7は、光学台71とその周囲のプレート部72が黒色樹脂により一体成形されている。光学台71には、上方に上面板710が設けられ、水平方向に側壁711、第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714等からなる周壁が設けられている。周壁と第1発光素子収容壁712、受光素子収容壁714の外側にはスナップ凸部715が設けられている。第1発光素子収容壁712には第1発光素子91が収容され、第2発光素子収容壁713には第2発光素子92が収容され、受光素子収容壁714には受光素子93が収容されている。プレート部72にはネジ孔721(
図2ではネジ731に覆われている)、透光孔722、位置決め円筒部723が設けられている。透光孔722は、回路基板8に設けられた確認灯81からの光が透光する。
【0017】
第1光学台カバー3には、水平に設けられたカバーディスク31、下方へ向かって設けられた煙導入フィン32、側方に突出した位置決め脚33、スナップ片34が設けられている。カバーディスク31の中心は開口してカバー開口35が設けられ、カバー開口35の外側におけるカバーディスク31は内側ほど下がって肉厚な厚肉部36となっている。
第1光学台カバー3は、位置決め脚33を位置決め円筒部723に差し込んだ状態でスナップ片34にスナップ凸部715が3箇所で嵌まり、感知器ベース2に係止される。
【0018】
第2光学台カバー4は環状に凹凸となっている底部41、側方の通気口42と接続柱43、その上の環状部44、環状部44に接続された係止片45を備える。底部41は6つの接続柱43により環状部44に接続し、環状部44は2つの係止片45を介してカバー本体5に係止される。通気口42と接続柱43の内側には環状の防虫網(図示せず)が嵌め込まれている。
【0019】
カバー本体5は、環状のカバー外環部51の下に6つの支柱52が立設され、その下に保護板53が接続されている。そして、カバー外環部51、支柱52、保護板53に囲まれて開口する開口部54が6個所に設けられている。また、透明な樹脂が嵌め込まれた確認灯窓55がカバー外環部51に設けられている。第1光学台カバ-3の煙導入フィン32、第2光学台カバー4の接続柱43、カバー本体5の支柱52は同じ位置に配置されている。
【0020】
煙感知機構は、第1光学台カバー3と第2光学台カバー4の間で外光を遮断しながら煙を導入する煙導入部の下層と、検煙部10を備え光学台71と第1光学台カバー3の間で煙を感知する上層の2層構造となっている。上層と下層は第1光学台カバー3で隔てられ、上層と下層の間はカバー開口35によりつながっている。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態における煙感知器1の断面説明のための図である。
図2(a)は、煙感知器1を下方から見た図であり、
図2(a)のA-A線での断面を
図2(b)に示す。光学台プレート7の上には回路基板8が設けられている。回路基板8には煙感知のための回路、受信機との通信のための回路(図示せず)のほか、確認灯81が備えられ、プレート部72の透光孔722を介して、カバー本体5の確認灯窓55から点灯が確認される(
図1参照)。第1光学台カバー3は、光学台プレート7と第2光学台カバー4の間に設けられ、中央にカバー開口35が開口している。第2光学台カバー4は、環状の凸部を備えた底部41と、底部41の中心に、上方から見て十字状に突出した十字突出板46を有する。
【0022】
図2(b)は、図面右側から煙が検煙部10に進入する状況を示している。矢印は煙の進行を表す。煙は、カバー本体5の開口部54、第2光学台カバー4の通気口42、第1光学台カバー3と第2光学台カバー4の間の煙導入部をとおる。そして、十字突出板46に遮られて第1光学台カバー3のカバー開口35をとおり、検煙部10に至る。検煙部10では、第1発光素子91、第2発光素子92からの照射光が煙に照射され、散乱光が受光素子93で受光される。煙導入部は外光を遮光するために上下に円環状の凸部を備え、煙は上昇してから下降し、再び上昇してカバー開口35から上層に入って検煙部10に至る。
【0023】
光学台プレート7、第1光学台カバー3、第2光学台カバー4は黒色樹脂で形成される。そして、外光は、主に第2光学台カバー4の底部41、第1光学台カバー3のカバーディスク31、光学台プレート7の光学台71により遮られて、検煙部10には達しない。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態における前方散乱を説明するための図である。
図3,5~7では、
図2より拡大した図を示す。
図3は、第1発光素子91、第2発光素子92、受光素子93が取り付けられた光学台プレート7の下面図である。光学台プレート7の光学台71では、上面板710の下方から側壁711が垂下している。第1発光素子91、第2発光素子92、受光素子93は、それぞれ第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714に収容され、光学台プレート7に設けられた小孔を介して回路基板8に接続されている。第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714は弧状の側壁711の位置から内側と外側にわたって配置されている。この内側に配置されている部分は周壁の一部を構成する。また、略円周状の側壁711の円周上から外側に向けて偏向反射壁717が設けられている。偏向反射壁717は、受光素子93に近い部分が外方へ突出しており、突出した端部が側壁711と接続壁718で接続されている。側壁711、第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714、偏向反射壁717、接続壁718により、光学台71の周壁が形成されている。側壁711は円弧状であり、一部は内方に複数の小凸部を備えている。第1発光素子91からは照射光である第1照射光が、第2発光素子92からは照射光である第2照射光が、検煙部10に向かって送出される。第1発光素子収容壁712は、第1発光素子91の水平方向において、前方、両側方、後方の側壁からなり、前方の側壁は透光のために開口を有する。そして、両側方の側壁の一部と前方の側壁は周壁の一部を形成する。第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714についても同様である。
光学台71の上面板710とプレート部72の垂直方向の位置は同じである。第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714において、周壁以外の部分はプレート部72からの突出量が小さい。上面板710及びプレート部72から周壁の下端までの長さは一定である。
【0025】
第1発光素子収容壁712の発光側には、上面板710から下方に上面遮光板719が突出している。上面遮光板719は第1発光素子91の光軸である第1光軸911には達しない。また、第2発光素子収容壁713からは遮光板7131が突出している。遮光板7131は、第2発光素子92が向いている方向に沿って平面が設けられており、第1発光素子91から受光素子93に直接的に第1照射光が達しないように遮光している。
【0026】
第1発光素子91の光軸である第1光軸911と受光素子93の光軸である受光軸931は検煙部10の領域で
図3のφ1のように鈍角に交わる。そのため、検煙部10に煙がある場合には、受光素子93では第1発光素子91の前方散乱光が捉えられる。位置関係としては、第1発光素子91から送出した第1照射光が検煙部10の中の煙に照射された際の前方散乱光を受光素子93が受光する位置に、受光素子93と第1発光素子91が配置されている。
【0027】
検煙部10に煙がない場合には、前方散乱は起こらないが、光学台71の周壁の内面で第1照射光が複数回反射して、最終的に受光素子93で受光される。そのため、少ない受光量の非障害受光量(いわゆるノイズ)が検出される。光学台71は黒色樹脂により形成されているが、第1照射光を完全には吸収せず、一部を反射する。本願では、この反射光を利用して第1発光素子91と受光素子93が正常に機能しているか検査を行う。発光や受光に障害が生じると、非障害受光量が検出されないため、障害を検知することができる。検煙部10に煙がない通常の状態で発光と受光は常に行われており、このような障害が発生すると遅滞なく検知することができる。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態における発光量と受光量を示す図である。縦軸は発光量、受光量を示し、横軸は時間を示す。
図4(a)は第1発光素子91による発光量を、
図4(b)は受光素子93による受光量を示す。第1発光素子91は
図4(a)に示すように一定時間毎に発光する。それに伴い、受光素子93では
図4(b)に示すように一定時間毎に受光が生じる。
図4において、左方に示す期間の2パルスでは検煙部10に煙がなく、前方散乱光が生じずに
図4(b)のように受光量が少なくなっている。一方右方に示す期間の2パルスでは検煙部10に十分な煙があり、前方散乱光が生じて受光量が多い。
図4(b)において、受光量が閾値b1を超える場合には、前方散乱光による煙の感知となる。そして、発光のタイミングにおいて、受光量が閾値b1と閾値b2の間の非障害受光量である場合には、煙がない状態であり、且つ、発光と受光に障害が生じていないことが検知される。また、受光量が閾値b2に至らない障害受光量である場合には障害が生じていることが検知される。
【0029】
ところで、光学台71は光の吸収率が高い黒色であり、
図3に示すように第1発光素子91の第1光軸911は受光素子93の受光軸931と方向がずれている。第1照射光は光学台71の内面で複数回反射してから受光素子93に達することから、第1照射光から得られる非障害受光量は小さい。そのため閾値b2の値を小さくしなくてはならないが、閾値b2を小さくするためには少ない光量を検出できる受光素子93を使用しなければならない。そこで、本発明では光学台71の構造により非障害受光量が、煙が発生したときの受光量と比較できる程度に差が出る範囲内で大きくなるようにした。
【0030】
図3により、非障害受光量を増大させる構造について説明する。煙がない検煙部10に第1発光素子91からの第1照射光が照射された際に、第1照射光が側壁711に当たって反射が生じる。側壁711は黒色であるが、第1照射光を完全に吸収することはできずに反射する。第1照射光は第1光軸911を中心として広がり、側壁711に到達すると
図3のようにある程度の大きさの反射領域である一次反射領域912が生じる。一次反射領域912は側壁711の表面の領域であるが、
図3では便宜的に下面からみた楕円で表す。そして、一次反射領域912では一次反射軸913の方向に反射する。一次反射軸913の方向には二次反射板716が設けられている。二次反射板716の位置は、周壁の内側であって、第1発光素子91における受光素子93から遠い側の側方である。また、受光素子93からみて、二次反射板716後方の側壁711には小凸部が設けられている。二次反射板716は、光学台71の内方に突出した第1発光素子収容壁712の周壁の部分における受光素子収容壁714から遠い側の側方に設けられている。二次反射板716は、一次反射光を受光素子93の方向へ反射する面を備えている。そのため、一次反射光は二次反射板716により二次反射軸914の方向に反射して、二次反射光となって受光素子93に入光する。二次反射板716により、第1発光素子91の二次反射光を増大させ、非障害光量が大きくなる。
【0031】
図5は、本発明の一実施形態における光学台71を示す図である。
図5(a)は下方から見た光学台71を示す。B-B線での断面が
図5(b)である。B-B線は、第1発光素子収容壁712と第2発光素子収容壁713の間、上面遮光板719、偏向反射壁717を通っている。
図5(b)は下方が天井側の上に相当する。
図5(b)において、上面板710からは、短く上面遮光板719が突出しており、その奥に側壁711等の周壁の約60%の高さとなる突出量で二次反射板716が突出している。この二次反射板716の上面側からの突出量を適宜設定することにより、二次反射光の強度を調節することができるが、周壁の30から90%の高さとすることが好ましい。上面遮光板719は第1発光素子収容壁712に収容された第1発光素子91の第1光軸911 よりも下方に位置し、第1発光素子91から上面板710へ向かう照射光を遮光している。
【0032】
図6は、本発明の一実施形態における感知器ベース2を斜め下方から見た図である。
図1の感知器ベース2とは異なった方向である。第1発光素子収容壁712と第2発光素子収容壁713には、検煙部10の方向に照射光が通る開口が設けられている。
図6では示されていないが、受光素子収容壁714にも開口が設けられている。光学台71の内側には二次反射板716と上面遮光板719が設けられている。上面遮光板719は第1発光素子収容壁712と第2発光素子収容壁713の開口の検煙部10の側に1つずつ設けられている。
【0033】
なお、一次反射光の一部は二次反射板716に到達するが、他の一部は二次反射板716の下側や側部(
図3、5では右側)を通過して小凸部でほぼ吸収される。このことにより、第1発光素子91が発光するか判断するために十分な光量が受光素子93に入光する一方で、火災認定時の前方散乱光の光量よりは十分に小さな光量として光量に差を確保することができる。そして、SN比が大きくなり精度のよい煙感知器が得られる。
【0034】
図7は、本発明の一実施形態における後方散乱を説明するための図である。
図7は、
図3と同様に第1発光素子91、第2発光素子92、受光素子93が取り付けられた光学台プレート7の下面図である。第2発光素子92の光軸である第2光軸921と受光素子93の光軸である受光軸931は検煙部10の領域で
図6のφ2のように鋭角に交わる。そのため、受光素子93では、第2発光素子92による第2照射光の後方散乱光が捉えられる。位置関係としては、第2発光素子92から送出した第2照射光が検煙部10の中の煙に照射された際の後方散乱光を受光素子93が受光する位置に、第2発光素子92が配置されている。後方散乱についても、前方散乱と同様に非障害受光量を受光素子93で受光して、第2発光素子92と受光素子93に障害がないことを検知する。発光量と受光量については、
図4において前方散乱光について説明したとおりであり、
図4(a)が第2発光素子92による発光量を示すこととなる。後方散乱では、第2発光素子92と受光素子93が略同じ方向を向いている。そのため、第2発光素子92の一次反射光が受光素子93に入りやすく、受光素子93が受光する非障害光量が大きくなる。そのため、
図4(b)において、受光素子93が煙の感知となる閾値b1と非障害光量の値が近くなる。よって、煙の有無による受光量の差(SN比)が小さくなってしまい、煙感知器の精度が下がってしまう。
【0035】
本発明では、
図7に示すように、光学台71の周壁の一部は偏向反射壁717となっている。偏向反射壁717は、内面の垂直軸が第2光軸921からずれるように形成されている。第2光軸921から垂直軸のずれ角θは15~30°であることが好ましく、20~25°であることがさらに好ましい。本実施形態では、偏向反射壁717は内面が平面である。
【0036】
図7において、第2発光素子92からの第2照射光は、偏向反射壁717の一次反射領域922に達して反射する。反射により生じた一次反射光は、第2照射光が入光した方向とは異なる一次反射軸923の方向へ向かい、二次反射領域924に達して反射する。一次反射領域922及び二次反射領域924は周壁の表面の領域であるが、
図7では
図3と同様に、便宜的に下面からみた楕円で表す。反射により生じた二次反射光は二次反射軸925の方向へ向かい、受光素子収容壁714の第2発光素子92とは反対側の側方に導かれる。したがって、少なくとも二次反射光までは受光素子93で受光しない。反射光は反射する毎に黒色の光学台71で吸収されるため、三次反射以降の反射光は極めて弱くなり、煙の有無による受光量の差(SN比)を十分に得ることができる。
【0037】
上述のように、本発明では受光素子93に対して第1発光素子91の単独発光、第2発光素子92の単独発光により、火災検出等ができる。その場合、各々第2発光素子92、第1発光素子91は不要となる。一方で、第1発光素子91と第2発光素子92の双方を用いた煙検出を行うことができる。第1発光素子91と第2発光素子92から発する光は受光素子93に入光する散乱光の角度が異なる。そして、第1発光素子91の光による前方散乱光と第2発光素子92による後方散乱光の比率により、白煙か黒煙かが判断される。黒煙の場合には散乱光が少ないため、前方散乱光の値を増幅して火災であるか否かを判断することができる。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態における発光量と前方散乱光、後方散乱光による受光量を示す図である。
図8(a)は、第1発光素子91の発光、
図8(b)は第2発光素子92の発光、
図8(c)は受光素子93の受光を示す。
図8(a)(b)のように、第1発光素子91と第2発光素子92は発光の位相をずらしている。受光素子93の受光出力は各発光素子の発光タイミングにより第1発光素子91と第2発光素子92のどちらの光が入光したのか区別される。
【0039】
前方散乱を検出するための第1光軸911と受光軸931の間の角φ1は鈍角であるが、110~130°であることが好ましい。また、後方散乱を検出するための第2光軸921と受光軸931間の角φ2は鋭角であるが、50~70°であることが好ましい。本実施形態では、第1発光素子収容壁712、第2発光素子収容壁713、受光素子収容壁714は、第1発光素子91等を囲む構成であるが、遮光性が得られれば周壁以外の部分に壁がない構成としても良い。偏向反射壁717は、水平方向の内面の角度により効果を奏するものであり、外面の形状はどのようなものでもよい。また、側壁711は円弧状でなくてもよい。
【0040】
二次反射光が受光素子壁の側面の方向に誘導されれば、偏向反射壁717は内面が緩い凹面状となっていてもよい。上記では前方散乱と後方散乱の両方を用いる実施形態を記載したが、どちらか一方だけの実施とすることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 煙感知器、2 感知器ベース、3 第1光学台カバー、4 第2光学台カバー、5 カバー本体、6 裏板、7 光学台プレート、8 回路基板、10 検煙部、31 カバーディスク、32 煙導入フィン、33 脚、34 スナップ片、35 カバー開口、36 厚肉部、41 底部、42 通気口、43 接続柱、44 環状部、45 係止片、46 十字突出板、51 カバー外環部、52 支柱、53 保護板、54 開口部、55 確認灯窓、71 光学台、72 プレート部、81 確認灯、91 第1発光素子、92 第2発光素子、93 受光素子、710 上面板、711 側壁、712 第1発光素子収容壁、713 第2発光素子収容壁、7131 遮光板、714 受光素子収容壁、715 スナップ凸部、716 二次反射板、717 偏向反射壁、718 接続壁、719 上面遮光板、721 ネジ孔、722 透光孔、723 円筒部、731 ネジ、911 第1光軸、912 一次反射領域、913 一次反射軸、914 二次反射軸、921 第2光軸、922 一次反射領域、923 一次反射軸、924 二次反射領域、925 二次反射軸、931 受光軸