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▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】電子回路モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241025BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241025BHJP
   H01L 23/538 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/52 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023507430
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2021070585
(87)【国際公開番号】W WO2022028915
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102020209752.6
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フェルスター
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホモス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ゾンターク
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3547359(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008040906(DE,A1)
【文献】特開2002-299775(JP,A)
【文献】特開2010-62566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/52―23/538
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導及び/又は熱伝導のために、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する、構造化された無機基板層(22)から成る多層LTCC回路担体(20)と、前記LTCC回路担体(20)の第1の面(20.1)及び/又は反対側の第2の面(20.2)に配置されている少なくとも1つの電子部品(5)と、少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)とを有する電子回路モジュール(1)において、
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)は、前記多層LTCC回路担体(20)に埋め込まれており、少なくとも3つの面が、前記多層LTCC回路担体(20)によって取り囲まれており、
前記SiCパワー半導体(7)の接続コンタクトは、前記LTCC回路担体(20)の電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と接触接続されており、
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)が、少なくとも1つの無機基板層(22)に導入されている対応する切欠き(24)を占有しており、これにより、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)は、自身の上面又は自身の下面において、電気的に及び/又は熱的に、対応する電気的に伝導性の輪郭及び/又は熱的に伝導性の輪郭と接触接続されている、
ことを特徴とする電子回路モジュール(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の第1の面(7.1)が、前記多層LTCC回路担体(20)の第1の面(20.1)に向けられており、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の第2の面(7.2)が、前記多層LTCC回路担体(20)の第2の面(20.2)に向けられている、請求項1に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の前記第1の面(7.1)又は前記第2の面(7.2)における少なくとも1つの接続コンタクトが、ビア(26)を介して、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第1の面(20.1)又は前記第2の面(20.2)に配置されている接続コンタクトと電気的に接続されており、又は、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第1の面(20.1)又は前記第2の面(20.2)に配置されている電子部品(5)と電気的に接続されている、請求項1又は2に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項4】
高電流導体路(28A,28B)が、前記多層LTCC回路担体(20)内に埋め込まれており、少なくとも1つの第1のビア(27.1)を介して、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第1の面(20.1)又は前記第2の面(20.2)における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項5】
前記高電流導体路(28A)は、少なくとも1つの第2のビア(27.2)を介して、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の前記第1の面(7.1)又は前記第2の面(7.2)における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている、請求項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項6】
前記高電流導体路(28B)は、コンタクト面(27.3)を介して、面状に、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の前記第1の面(7.1)又は前記第2の面(7.2)における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている、請求項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項7】
前記第1の面(7.1)は、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第1の面(20.1)と面一に終端し、又は、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の前記第2の面(7.2)は、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第2の面(20.2)と面一に終端する、請求項2乃至のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)の前記第1の面(7.1)又は前記第2の面(7.2)における接続コンタクトが、面状に、熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分又は熱的かつ電気的に伝導性の印刷された厚層構造体(29)と接触接続されており、
前記挿入部分又は前記厚層構造体(29)は、前記多層LTCC回路担体(20)の前記第1の面(20.1)又は前記第2の面(20.2)と面一に終端する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)は、4つの面全てにおいて、前記多層LTCC回路担体(20)によって取り囲まれている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)は、MOSFETパワースイッチとして構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子回路モジュール(1)として構成される電子回路モジュール(1)用の多層LTCC回路担体(20)を製造する方法であって、
電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する少なくとも1つの生基板層(12)に、対応するSiCパワー半導体(7)用の少なくとも1つの切欠き(14)を導入し、
複数の生基板層(12)を積層し、少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)を前記少なくとも1つの切欠き(14)に挿入し、
前記SiCパワー半導体(7)を備える前記生基板積層体(10)を、圧力及び温度下でラミネートし、
ラミネートされた前記生基板積層体(10A)を、圧力支援された焼結プロセスにおいて、埋め込まれた前記SiCパワー半導体(7)を備える前記多層LTCC回路担体(20)へと収縮させ、
前記SiCパワー半導体(7)の接続コンタクトを、前記圧力支援された焼結プロセスによって電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を備える前記生基板層(12)から生成される無機基板層(22)の前記電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と、前記圧力支援された焼結プロセスによって接触接続させ
前記生基板層(12)の前記積層の前に、少なくとも1つの別の切欠きを少なくとも1つの生基板層(12)に導入し、前記生基板層(12)に、前記積層の間又は前記積層の後に少なくとも1つのビア(26,27.1,27.2)及び/又は少なくとも1つの高電流導体路(28A,28B)及び/又は少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分を、付加的な電気的な伝導構造体として挿入し、及び/又は、少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の厚層構造体(29)を、付加的な電気的な伝導構造体として印刷する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記圧力支援された焼結プロセスによって、前記生基板層(12)を厚さにおいて収縮させ、これによって、生成された前記基板層(22)を、前記生基板層(12)よりも薄くする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の生基板層(12)のうちの少なくとも1つの生基板層(12)に導入される切欠き(14)の高さを、前記SiCパワー半導体(7)よりも高く構成し、
前記少なくとも1つの収縮した基板層(22)における収縮した切欠き(24)の高さが、前記SiCパワー半導体(7)の高さに相当し、前記少なくとも1つのSiCパワー半導体(7)が、対応する前記収縮した切欠き(24)を占有するように、前記少なくとも1つの生基板層(12)における前記切欠き(14)の高さを選択する、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載の電子回路モジュールに基づく。また、本発明の対象は、このような電子回路モジュール用の多層LTCC回路担体を製造する方法でもある。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、パワーモジュールが公知であり、ここでは、炭化ケイ素パワー半導体(SiCパワー半導体)がMOSFETパワースイッチとして構成されており、最初に銀焼結によってAMB基板(AMB: Active Metal Brazed)に取り付けられる。ここでは銀焼結は、300℃未満の低い焼結温度を伴う特別なAVTプロセス(AVT: Aufbau- und Verbindungstechnik)である。次いで、SiCパワー半導体上には同様に、銀焼結によって小型はんだプレートが焼結される。このような小型はんだプレート上に同様にはんだが被着され、次いでこれは、多層のLTCC多層基板の面とのはんだ付けに用いられる。即ち、SiCパワー半導体がAMB基板上に焼結された後に、LTCC多層基板の接続を含めて、さらに4つのプロセスステップが続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有する電子回路モジュールは、少なくとも1つの炭化ケイ素パワー半導体(SiCパワー半導体)が、既にLTCC回路担体の製造時に、LTCC回路担体に埋め込まれる又は集積されるという利点を有する。SiCパワー半導体をLTCC回路担体に埋め込むことによって、少なくとも1つのSiCパワー半導体の接触接続がLTCC回路担体の内部において実現され、これによって外部の影響に対して保護される。これによって、SiCパワー半導体の接続コンタクトを、SiCパワー半導体の前面及び/又は後面において、より容易かつ格段に低コストに形成することができる。さらに、SiCパワー半導体の空間的ポジショニングを、格段に正確に実行することができる。構造変形例に応じて、半導体は、LTCC回路担体の下面若しくは上面と正確に面一に終端しており、又は、LTCC回路担体の内部に完全に埋め込まれている。下又は上への所定の突出部も可能である。900℃の高い焼結温度によって、LTCC回路担体内の電気的な接続及び/又は熱的な接続は、比較的低い温度で実現されるはんだ付け接続及び/又は銀焼結接続よりも広い温度耐性を有する。LTCC回路担体及び少なくとも1つのSiCパワー半導体は、セラミック材料から形成されているので、これらはほぼ同等の膨張係数を有する。これによって、少なくとも1つのSiCパワー半導体の上述の集積が、直に、LTCC回路担体の製造プロセスにおいて実現可能となる。これによって、相応に大きい節約電位を伴う、金属製の機能端子及び後続のプロセスチェーンの最適な調整が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、電気伝導及び/又は熱伝導のために、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する、構造化された無機基板層から成る多層LTCC回路担体と、LTCC回路担体の第1の面及び/又は反対側の第2の面に配置されている少なくとも1つの電子部品と、少なくとも1つのSiCパワー半導体とを有する電子回路モジュールを提供する。ここでは、少なくとも1つのSiCパワー半導体は、多層LTCC回路担体に埋め込まれており、少なくとも3つの面が、多層LTCC回路担体によって取り囲まれており、SiCパワー半導体の接続コンタクトは、LTCC回路担体の電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と接触接続されている。
【0005】
さらに、このような電子回路モジュール用の多層LTCC回路担体を製造する方法が提案される。ここでは、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する少なくとも1つの生基板層に、対応するSiCパワー半導体用の少なくとも1つの切欠きが導入され、複数の生基板層が積層され、少なくとも1つのSiCパワー半導体が少なくとも1つの切欠きに挿入される。SiCパワー半導体を備える生基板積層体は、圧力及び温度下でラミネートされる。ラミネートされた生基板積層体は、圧力支援された焼結プロセスにおいて、埋め込まれたSiCパワー半導体を備える多層LTCC回路担体へと収縮され、ここではSiCパワー半導体の接続コンタクトは、圧力支援された焼結プロセスによって電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を備える生基板層から生成される無機基板層の電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と、圧力支援された焼結プロセスによって接触接続される。
【0006】
従属請求項に記載した措置及び発展形態によって、独立請求項1に記載した電子回路モジュールと、独立請求項12に記載した、このような電子回路モジュール用の多層回路担体を製造する方法との有利な改良が可能となる。
【0007】
特に有利には、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面が、多層LTCC回路担体の第1の面に向けられているものとしてよく、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第2の面が、多層LTCC回路担体の第2の面に向けられているものとしてよい。したがって、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面は、少なくとも1つのSiCパワー半導体の上面に相当し、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第2の面は、少なくとも1つのSiCパワー半導体の後面に相当し得る。同様に、多層LTCC回路担体の第1の面は、多層LTCC回路担体の上面に相当し、多層LTCC回路担体の第2の面は、多層LTCC回路担体の下面に相当し得る。
【0008】
電子回路モジュールの有利な構成においては、少なくとも1つのSiCパワー半導体が、少なくとも1つの無機基板層に導入されている対応する切欠きを占有するものとしてよい。これによって、少なくとも1つのSiCパワー半導体は、自身の上面においても自身の下面においても容易に、電気的に及び/又は熱的に、相応する電気的に伝導性の輪郭及び/又は熱的に伝導性の輪郭と接触接続可能であり、これらの輪郭は、少なくとも1つのSiCパワー半導体の直上に配置されている基板層の下面に、又は、少なくとも1つのSiCパワー半導体の直下に配置されている基板層の上面に形成されている。
【0009】
電子回路モジュールの他の有利な構成においては、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面又は第2の面における少なくとも1つの接続コンタクトが、ビアを介して、多層LTCC回路担体の第1の面又は第2の面に配置されている接続コンタクトと電気的に接続可能であり、又は、多層LTCC回路担体の第1の面又は第2の面に配置されている電子部品と電気的に接続可能である。即ち、少なくとも1つのSiCパワー半導体は、ビアを介して、たとえば、論理回路として構成されている電子部品と電気的に接触接続可能であり、及び/又は、別個の部品として構成されている電子部品と電気的に接触接続可能であり、これらの電子部品は、LTCC回路担体の上面又は下面に配置されている。ここでは、別個の部品は、たとえば、オーム抵抗、電気コイル又は電気的なコンデンサであるものとしてよい。
【0010】
電子回路モジュールの他の有利な構成においては、高電流導体路を、多層LTCC回路担体内に埋め込み、少なくとも1つの第1のビアを介して、多層回路担体の第1の面又は第2の面における対応する接続コンタクトと電気的に接続することができる。さらに高電流導体路を、少なくとも1つの第2のビアを介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面又は第2の面における対応する接続コンタクトと電気的に接続することができる。選択的に、高電流導体路を、コンタクト面を介して、面状に、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面又は第2の面における対応する接続コンタクトと電気的に接続することができる。高電流導体路によって、LTCC回路担体の内部で20Aを大幅に上回る大電流も転送可能である。これによって、本発明に係る回路担体の実施形態を、車両又は定置の設備において、集積されたロジックを備える電気的なパワー出力段のために使用することが可能になる。
【0011】
電子回路モジュールの他の有利な構成においては、第1の面又は上面は、多層LTCC回路担体の第1の面又は上面と面一に終端し得る。選択的に、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第2の面又は後面は、多層LTCC回路担体の第2の面又は後面と面一に終端し得る。これによって、少なくとも1つのSiCパワー半導体と、外部の構造グループ又は装置との容易な電気的な接触接続及び/又は熱的な接触接続が可能になる。したがって、たとえば制御装置又は電気負荷、たとえば電気モータは、少なくとも1つのSiCパワー半導体の相応の接続コンタクトと直接的に接触接続され得る。付加的に、冷却装置、たとえば冷却体が、伝熱が良好であるが電気絶縁性の絶縁層を介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体の相応の接続コンタクトと接触接続され得る。
【0012】
電子回路モジュールの他の有利な構成においては、少なくとも1つのSiCパワー半導体の第1の面若しくは上面又は第2の面若しくは後面における接続コンタクトが、面状に、熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分又は熱的かつ電気的に伝導性の印刷された厚層構造体と接触接続されるものとしてよい。この場合には、挿入部分又は印刷された厚層構造体が、多層LTCC回路担体の第1の面若しくは上面又は第2の面若しくは後面と面一に終端し得る。これによって、少なくとも1つのSiCパワー半導体と、外部の構造グループ又は装置との面状の電気的及び/又は熱的な接触接続が可能になる。
【0013】
選択的に、少なくとも1つのSiCパワー半導体は、4つの面全てにおいて、多層LTCC回路担体によって取り囲まれているものとしてよい。これは、少なくとも1つのSiCパワー半導体が完全にLTCC回路担体に集積されていることを意味する。
【0014】
電子回路モジュールの他の有利な構成においては、少なくとも1つのSiCパワー半導体が、たとえば、MOSFETパワースイッチとして形成されるものとしてよい。
【0015】
方法の有利な構成においては、生基板層の積層の前に、少なくとも1つの別の切欠きを少なくとも1つの生基板層に導入することができ、この生基板層に、積層の間又は積層の後に少なくとも1つのビア及び/又は少なくとも1つの高電流導体路及び/又は少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分を、付加的な電気的な伝導構造体として挿入することができる、及び/又は、少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の厚層構造体を、付加的な電気的な伝導構造体として印刷することができる。これによって、生基板層の上面又は後面に形成された電気的に伝導性の伝導構造体及び/又は熱的に伝導性の伝導構造体は相互に接触接続可能になり、又は、LTCC回路担体の第1の面若しくは上面又は第2の面若しくは後面における接続コンタクトと接触接続可能になる。
【0016】
方法の他の有利な構成においては、圧力支援された焼結プロセスによって、生基板層が厚さにおいて収縮され得る。これによって、生成された基板層は、生基板層よりも薄くなる。さらに、複数の生基板層のうちの少なくとも1つの生基板層に導入される切欠きの高さを、SiCパワー半導体よりも高く構成することができ、この場合には、少なくとも1つの収縮した基板層における収縮した切欠きの高さが、SiCパワー半導体の高さに相当し、少なくとも1つのSiCパワー半導体が、対応する収縮した切欠きを占有するように、少なくとも1つの生基板層における切欠きの高さを選択することができる。これによって、LTCC回路担体の基板層が、少なくとも1つのSiCパワー半導体にぴったり合うように収縮する。ここでは、電気的に伝導性の伝導構造体及び/又は熱的に伝導性の伝導構造体並びに導体路及びビアは、少なくとも1つのSiCパワー半導体上に設けられている接続コンタクトと接触するので、少なくとも1つのSiCパワー半導体の接続コンタクトとの、電気的に伝導性の伝導構造体及び/又は熱的に伝導性の伝導構造体並びに導体路及びビアの焼結も生じ、オームコンタクトとの安定した電気的な接続が生じる。
【0017】
本発明の実施例を図面に示し、後続の説明においてより詳細に説明する。図面において、同一の参照符号は、同一又は類似の機能を実行するコンポーネント又は要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】様々な時点での本発明に係る電子回路モジュール用の、多層LTCC回路担体を製造する、本発明に係る方法の間のLTCC回路担体の一実施例の一部分の概略的断面図である。
図2】本発明に係る電子回路モジュールの第1の実施例の概略的断面図である。
図3】本発明に係る電子回路モジュールの第2の実施例の概略的断面図である。
図4】本発明に係る電子回路モジュールの第3の実施例の概略的断面図である。
図5】本発明に係る電子回路モジュールの第4の実施例の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の実施形態
図2乃至図4に示された、本発明に係る電子回路モジュール1,1A,1B,1C,1D用の多層LTCC回路担体20を製造する、本発明に係る方法においては、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する少なくとも1つの生基板層12に、対応するSiCパワー半導体7用の少なくとも1つの切欠き14が導入され、ここでは、複数の生基板層12が積層されて、図1a)に示されている生基板積層体10が生成される。切欠き14は、少なくとも1つのSiCパワー半導体7よりも大きく、特に高く、たとえば打抜き加工によって少なくとも1つの生基板層12に導入され得る。生基板層12は、好ましくはフィルムとして形成されており、その上面及び下面には、所定の、詳しくは示されていない電気的に伝導性の伝導構造体及び/又は熱的に伝導性の伝導構造体が被着されている。生基板積層体10の積層の間、図1b)から見て取れるように、少なくとも1つのSiCパワー半導体が、対応する切欠き14内に正しい位置で配置される。SiCパワー半導体7が挿入された生基板積層体10は圧力及び温度下でラミネートされるので、個々の生基板層12が「貼りつき合い」、図1c)に示された、ラミネートされた生基板積層体10Aが生じる。このような多層LTCC回路担体の原理に起因する構造によって、図示の実施例における少なくとも1つのSiCパワー半導体は、ラミネートされた生基板積層体10内に完全に埋め込まれ、これによって保護される。ラミネートされた生基板積層体10Aは、圧力支援された焼結プロセスにおいて収縮し、SiCパワー半導体7が埋め込まれている、図1d)に示された多層LTCC回路担体20が生成される。ここでは、SiCパワー半導体7の接続コンタクトは、圧力支援された焼結プロセスによって電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する生基板層12から生成される無機基板層22の電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と、圧力支援された焼結プロセスによって、接触接続される。
【0020】
図1からさらに見て取れるように、圧力支援された焼結プロセスによって、生基板層12は厚さ又は高さにおいて収縮し、その結果、生成された基板層22は、生基板層12よりも薄くなる。図1b)からさらに見て取れるように、複数の生基板層12のうちの少なくとも1つの生基板層12に導入されている切欠き14の高さは、SiCパワー半導体7よりも高く構成されており、この場合、少なくとも1つの生基板層12における切欠き14の高さは次のように選択される。即ち、少なくとも1つの収縮された基板層22における収縮された切欠き24の厚さ又は高さが、SiCパワー半導体7の厚さ又は高さに相当し、かつ、収縮された切欠き24を占有するように、選択される。このことは、図1d)から見て取れる。さらに、生基板層の積層の前に、少なくとも1つの別の切欠きが少なくとも1つの生基板層12に導入され、この生基板層12に、積層の間又は積層の後に少なくとも1つのビア26,27.1,27.2及び/又は少なくとも1つの高電流導体路28A,28B及び/又は少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分が、付加的な電気的な伝導構造体として挿入され、及び/又は、少なくとも1つの熱的かつ電気的に伝導性の厚層構造体29が、別の切欠き内に印刷される。
【0021】
図2乃至図5から見て取れるように、本発明に係る電子回路モジュール1の図示の実施例は、それぞれ、電気伝導及び/又は熱伝導のために、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体を有する、構造化された無機基板層22から成る多層LTCC回路担体20と、LTCC回路担体20の第1の面20.1及び/又は反対側の第2の面20.2に配置されている少なくとも1つの電子部品5と、少なくとも1つのSiCパワー半導体7とを含む。ここでは、少なくとも1つのSiCパワー半導体7は、多層LTCC回路担体20内に埋め込まれており、少なくとも3つの面が、多層LTCC回路担体20によって取り囲まれており、SiCパワー半導体7の接続コンタクトは、LTCC回路担体20の電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体と接触接続されている。多層LTCC回路担体20は、上述した方法にしたがって製造されている。
【0022】
図示の実施例においては、電子回路モジュール1,1A,1B,1C,1Dは、たとえばパワーモジュール3として構成されており、少なくとも1つのSiCパワー半導体7は、MOSFETパワースイッチとして構成されている。
【0023】
図2乃至図5からさらに見て取れるように、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1、ここでは上面が、多層LTCC回路担体20の第1の面20.1、ここでは上面に向けられており、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第2の面7.2、ここでは後面が、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2、ここでは後面に向けられている。さらに、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の太さ又は高さ若しくは厚さは、少なくとも1つの無機基板層22内の対応する切欠き24の太さ又は高さ若しくは厚さに相当する。
【0024】
図2乃至図4からさらに見て取れるように、電子回路モジュール1,1A,1B,1C,1Dの実施例の図示の一部分においては、それぞれ、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1又は上面における少なくとも1つの接続コンタクトが、ビア26を介して、多層LTCC回路担体20の第1の面20.1又は上面における接続コンタクトと電気的に接続されており、この接続コンタクトは、ボンディングワイヤ9を介して、第1の面20.1又は上面に配置され、論理回路5Aとして構成されている電子部品5と接続されている。論理回路5Aは、別のボンディングワイヤ9を介して電気的に伝導性の伝導構造体と接触接続されている。図2乃至図4からさらに見て取れるように、第1の面20.1又は上面には、さらに、別個の部品5Bとして構成されている別の電子部品5が配置されており、対応する電気的に伝導性の伝導構造体と接触接続されている。さらに、図示の実施例においては、それぞれ1つの高電流導体路28Aが多層LTCC回路担体20内に埋め込まれており、少なくとも1つの第1のビア27.1を介して、多層LTCC回路担体20の第1の面20.1若しくは上面又は第2の面20.2若しくは下面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。
【0025】
図2からさらに見て取れるように、図示されたSiCパワー半導体7は、面状の金属化部として構成されている、自身の第2の面7.2又は後面によって、LTCC回路担体20の第2の面20.2又は後面と面一に終端している。さらに、高電流導体路28Aは、電子回路モジュール1Aの図示の第1の実施例において、複数の第1のビア27.1を介して、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2又は下面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。さらに高電流導体路28Aは、複数の第2のビア27.2を介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1又は上面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。
【0026】
図3からさらに見て取れるように、図示されているSiCパワー半導体7は、4つの面全てにおいて多層LTCC回路担体20によって取り囲まれており、したがってLTCC回路担体20内に完全に集積されている。さらに、高電流導体路28Aは、電子回路モジュール1Bの図示の第2の実施例において、複数の第1のビア27.1を介して、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2又は下面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。さらに高電流導体路28Aは、複数の第2のビア27.2を介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1又は上面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。SiCパワー半導体7の、面状の金属化部として構成されている第2の面7.2又は後面は、複数のビア26を介して、LTCC回路担体20の第2の面20.2又は後面における相応する接続コンタクトと接続されている。
【0027】
図4からさらに見て取れるように、図示されているSiCパワー半導体7は、3つの面において、多層LTCC回路担体20によって取り囲まれており、ここでは、面状の金属化部として構成されている、SiCパワー半導体7の第2の面7.2又は後面は、熱的かつ電気的に伝導性の印刷された厚層構造体29と面状に接触接続されている。厚層構造体29は、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2又は後面と面一に終端する。高電流導体路28Aは、電子回路モジュール1Cの図示の第3の実施例において、複数の第1のビア27.1を介して、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2又は下面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。さらに高電流導体路28Aは、複数の第2のビア27.2を介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1又は上面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。図示されていない選択的な実施例においては、SiCパワー半導体7の第2の面7.2又は後面は、印刷された厚層構造体29の代わりに、熱的かつ電気的に伝導性の挿入部分と面状に接触接続されている。
【0028】
図5からさらに見て取れるように、図示のSiCパワー半導体7は、4つの面全てにおいて、多層LTCC回路担体20によって取り囲まれており、ここではSiCパワー半導体7の、面状の金属化部として構成されている第2の面7.2又は後面は、別の高電流導体路28Bのコンタクト面27.3と面状に接触接続されており、別の高電流導体路28Bは、複数の第1のビア27.1を介して、LTCC回路担体20の第1の面20.1又は上面における相応する接続コンタクトと接触接続されている。高電流導体路28Aは、電子回路モジュール1Cの図示の第3の実施例において、複数の第1のビア27.1を介して、多層LTCC回路担体20の第2の面20.2又は下面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。さらに高電流導体路28Aは、複数の第2のビア27.2を介して、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の第1の面7.1又は上面における対応する接続コンタクトと電気的に接続されている。
【0029】
圧力支援された焼結プロセス中の高圧によって、生基板層12の一部は、切欠き24の最後の中空空間内に流入し、その結果、図1d)及び図2乃至図5から見て取れるように、少なくとも1つのSiCパワー半導体7は、図示の実施例においては、多層LTCC回路担体20内に埋め込まれる。このような埋め込みの際に、電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体、高電流導体路28A,28B及びビア26,27.1,27.2並びに少なくとも1つのSiCパワー半導体7の接続コンタクトが相互に接触する。900℃において、LTCC回路担体20の個々の構造化された無機基板層22が焼結し、また電気的な伝導構造体及び/又は熱的な伝導構造体及び導体路及びビアのために使用される銀も焼結する。また、少なくとも1つのSiCパワー半導体7の金属コンタクトとの、銀の焼結も生じ、オームコンタクトとの安定した電気的な接続が生じる。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図2
図3
図4
図5