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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】物体検出装置および物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241025BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023527150
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2021021554
(87)【国際公開番号】W WO2022259306
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】上村 龍也
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-232408(JP,A)
【文献】特開2019-026208(JP,A)
【文献】特開2018-206328(JP,A)
【文献】特開2019-40390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から電磁波を発射し、前記電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することにより受信信号を出力するレーダと、
前記車両が通行する環境に存在する物体の位置および速度を前記受信信号に基づいて検出する物体検出器と、
前記車両が通行するルートの両わきにある障害物同士の各々の位置と前記障害物同士の距離である離間距離とを検出する障害物検出器と、
前記障害物同士の各々の位置と前記離間距離とに基づいて、前記障害物同士の各々が検出されたときの第1の覆域から前記障害物同士の間の第2の覆域へ前記レーダの水平方向における覆域を狭める制御を行うことにより、前記各障害物からの前記電磁波の反射を低減させる水平覆域制御器と、
を備えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記水平覆域制御器は、前記覆域を狭める制御によって前記障害物での前記電磁波の入射を低減させることで、前記各障害物からの前記電磁波の反射を低減させることを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記物体検出器である第1の物体検出器と、
前記車両から撮影された画像に写されている物体を認識する第2の物体検出器と、
前記第1の物体検出器によって位置および速度が検出された前記物体と前記第2の物体検出器によって認識された前記物体とが同一の物体であるか否かを判定し、前記第1の物体検出器による位置および速度の検出結果に前記第2の物体検出器による前記物体の認識結果を紐付ける同一判定器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
レーダを備える物体検出装置によって、車両が通行する環境に存在する物体を検出する物体検出方法であって、
前記レーダが、前記車両から電磁波を発射し、前記電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することにより受信信号を出力するステップと、
前記車両が通行するルートの両わきにある障害物同士の各々の位置と前記障害物同士の距離である離間距離とを検出するステップと、
前記障害物同士の各々の位置と前記離間距離とに基づいて、前記障害物同士の各々が検出されたときの第1の覆域から前記障害物同士の間の第2の覆域へ前記レーダの水平方向における覆域を狭める制御を行うことにより、前記各障害物からの前記電磁波の反射を低減させるステップと、
制御された前記覆域における前記反射波を受信することによって出力された前記受信信号に基づいて前記物体の位置および速度を検出するステップと、
を含むことを特徴とする物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両が通行する環境に存在する物体を検出する物体検出装置および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の進行方向における先方に存在する人または障害物を検出する物体検出装置と、人または障害物と車両との接触を未然に防ぐための車両制御機能または警報発生機能とを備えたシステムが知られている。物体検出装置は、レーダ、カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、または超音波センサといったセンサを有し、センサを用いて人または障害物を検出する。
【0003】
特許文献1には、レーダを用いた物体検出の結果とカメラを用いた物体検出の結果とを統合して、検出された物体が歩行者であるか否かを判定する物体検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/119860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
壁、塀または柱といった障害物で囲まれたルートを車両が通行する場合において、レーダは、障害物での電磁波の反射に起因するマルチパスまたはクラッタといった現象の影響を受けることで、人を検出する精度が低下することがある。このため、特許文献1の技術によると、通行の障害となる障害物が存在する環境において物体を検出する精度が低下する場合があるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、通行の障害となる障害物が存在する環境において物体を高精度に検出することができる物体検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる物体検出装置は、車両から電磁波を発射し、電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することにより受信信号を出力するレーダと、車両が通行する環境に存在する物体の位置および速度を受信信号に基づいて検出する物体検出器と、車両が通行するルートの両わきにある障害物同士の各々の位置と障害物同士の距離である離間距離とを検出する障害物検出器と、障害物同士の各々の位置と離間距離とに基づいて、障害物同士の各々が検出されたときの第1の覆域から障害物同士の間の第2の覆域へレーダの水平方向における覆域を狭める制御を行うことにより、各障害物からの電磁波の反射を低減させる水平覆域制御器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる物体検出装置は、通行の障害となる障害物が存在する環境において物体を高精度に検出することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる物体検出装置の構成を示す図
図2】実施の形態1にかかる物体検出装置の動作手順を示すフローチャート
図3】実施の形態1にかかる物体検出装置の障害物検出器が障害物の位置と離間距離とを検出するときの第1の覆域について説明するための図
図4】実施の形態1にかかる物体検出装置の障害物検出器による障害物の位置および離間距離の検出について説明するための図
図5】実施の形態1にかかる物体検出装置の物体検出器が物体の位置および速度を検出するときの第2の覆域について説明するための図
図6】実施の形態2にかかる物体検出装置の構成を示す図
図7】実施の形態2にかかる物体検出装置の動作手順を示すフローチャート
図8】実施の形態1または2にかかる物体検出装置が有するハードウェア構成の第1の例を示す図
図9】実施の形態1または2にかかる物体検出装置が有するハードウェア構成の第2の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる物体検出装置および物体検出方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる物体検出装置100の構成を示す図である。物体検出装置100は、車両に搭載される。車両は、物体検出装置100による物体または障害物の検出結果を基に、物体または障害物と車両との接触を未然に防ぐための車両制御機能を備える。実施の形態1において、物体検出装置100によって検出される物体は、車両と当該物体との接触を防ぐために検出が所望される物体であって、例えば人である。障害物は、車両が通行する環境における壁、塀、柱、ガードレール、棚またはシャッター等の、土地に定着している物である。
【0012】
物体検出装置100は、レーダ1と、レーダ1から入力される信号を処理する信号処理器2と、レーダ1の覆域を制御する水平覆域制御器5とを有する。信号処理器2は、車両が通行する環境に存在する物体を検出する物体検出器3と、障害物を検出する障害物検出器4とを有する。
【0013】
レーダ1は、車両から電磁波を発射する。レーダ1は、物体または障害物での電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することにより受信信号を出力する。レーダ1は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式またはFCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダである。レーダ1は、高周波半導体部品、電源半導体部品、基板、水晶デバイス、チップ部品、およびアンテナ等の部品により構成される。レーダ1からの受信信号は、物体検出器3と障害物検出器4との各々へ入力される。
【0014】
物体検出器3は、車両が通行する環境に存在する物体の位置および速度を受信信号に基づいて検出する。物体検出器3は、物体の位置を示す位置データと、物体が移動する速度を示す速度データとを生成する。物体検出器3は、生成された位置データおよび速度データを出力する。位置データと速度データとは、車両制御部6へ入力される。車両制御部6は、位置データと速度データとを利用して車両を制御する。
【0015】
障害物検出器4は、車両が通行するルートの両わきにある障害物同士の位置と離間距離とを受信信号に基づいて検出する。離間距離は、車両が通行するルートの両わきにある障害物同士の距離である。例えば、ルートと平行に延びる塀がルートの両わきに設置されている場合、ルートが延びる方向に垂直な方向であって水平面内の方向における塀と塀との間隔が、塀同士の離間距離である。障害物検出器4は、障害物の位置を示す位置データと、離間距離を示す離間距離データとを生成する。障害物検出器4は、生成された位置データと離間距離データとを出力する。
【0016】
位置データと離間距離データとは、水平覆域制御器5へ入力される。水平覆域制御器5は、障害物検出器4による検出結果である位置データと離間距離データとに基づいて水平方向における覆域を求める。水平覆域制御器5は、覆域の指示をレーダ1に送ることによって、レーダ1の水平方向における覆域を制御する。
【0017】
次に、物体検出装置100の動作について説明する。図2は、実施の形態1にかかる物体検出装置100の動作手順を示すフローチャートである。ここでは、車両が通行するルートの両わきに障害物がある場合における物体検出装置100の動作を説明する。以下の説明にて、フレームは、物体および障害物を検出する周期とする。図2には、ある1つのフレームでの物体検出装置100の動作の手順を示す。
【0018】
ステップS1において、物体検出装置100は、物体および障害物の検出を開始する。レーダ1は、電磁波を発射し、物体または障害物での電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することによって受信信号を出力する。ステップS1におけるレーダ1の覆域には、車両の進行方向先方に存在する障害物を検出可能に広角な範囲をカバーする第1の覆域が設定される。
【0019】
車両が通行するルートの両わきに障害物がある場合に、ステップS2において、物体検出装置100の障害物検出器4は、ルートの両わきにある各障害物の位置と、ルートの両わきにある障害物同士の離間距離とを、受信信号に基づいて検出する。障害物検出器4は、位置データと離間距離データとを出力する。
【0020】
ステップS3において、物体検出装置100の水平覆域制御器5は、障害物についての位置データと離間距離データとに基づいて水平方向における覆域を制御する。水平覆域制御器5は、ルートの両わきにある障害物同士の各々が検出されたときの第1の覆域から、障害物同士の間の第2の覆域へ覆域を狭める制御を行う。
【0021】
ステップS4において、物体検出装置100の物体検出器3は、覆域が第2の覆域とされてから受信された受信信号に基づいて、物体の位置および速度を検出する。すなわち、物体検出器3は、ステップS3において制御された覆域における反射波を受信することによって出力された受信信号に基づいて物体の位置および速度を検出する。物体検出器3は、位置データと速度データとを出力する。
【0022】
ステップS5において、物体検出器3は、位置データと速度データとを車両制御部6へ出力する。以上により、物体検出装置100は、図2に示す手順による動作を終了する。その後、物体検出装置100の動作は、次のフレームの動作に移行する。車両制御部6は、物体検出装置100から入力された位置データと速度データとを利用して車両を制御する。
【0023】
図3は、実施の形態1にかかる物体検出装置100の障害物検出器4が障害物の位置と離間距離とを検出するときの第1の覆域について説明するための図である。図3には、車両7と、車両7が通行するルート8と、ルート8の両わきにある障害物とを、車両7の上方から見下ろした様子を示す。
【0024】
物体検出装置100は、車両7のうち前方部分に設置されている。図3において、車両7から見てルート8の右側と左側との各々には、障害物である複数の柱9が設置されている。ルート8の右側に設置されている複数の柱9は、ルート8と平行に並んでいる。ルート8の左側に設置されている複数の柱9は、ルート8と平行に並んでいる。図3には、障害物である壁10が柱9に代えて設置される場合についても示す。図3では、ルート8と平行に延びた壁10が、ルート8の右側と左側との各々に設置されている様子を破線により表す。第1の覆域11は、ルート8の両わきにある各障害物である複数の柱9または壁10をカバーする。
【0025】
図4は、実施の形態1にかかる物体検出装置100の障害物検出器4による障害物の位置および離間距離の検出について説明するための図である。障害物検出器4は、周囲に比べて強い反射波がレーダ1にて受信されることによって障害物を検出する。図4では、障害物検出器4により障害物が検出された位置を示す検出結果の例をグラフにて表す。ここで、ルート8が延びる方向に垂直な方向であって水平面内の方向をX方向、ルート8が延びる方向をY方向とする。グラフの横軸は、X方向における位置を表す。グラフの軸は、Y方向における位置を表す。
【0026】
障害物検出器4は、図4に示す検出結果に例えばハフ変換処理を施すことによって、障害物のエッジの位置を求める。図4に示す破線13は、ルート8の左側に設置されている障害物のエッジを表す。図4に示す破線14は、ルート8の右側に設置されているエッジを表す。障害物が複数の柱9である場合、破線13,14は、各柱9のX方向におけるエッジを結んだ線を表す。障害物が壁10である場合、破線13,14は、壁10のX方向におけるエッジを表す。障害物検出器4は、破線13により表されるエッジの位置X1と破線14により表されるエッジの位置X2とを、障害物の位置と推定する。障害物検出器4は、破線13により表されるエッジと破線14により表されるエッジとの間隔Dを、離間距離と推定する。このようにして、障害物検出器4は、ルート8の両わきにある障害物同士の位置と離間距離とを検出する。
【0027】
図5は、実施の形態1にかかる物体検出装置100の物体検出器3が物体の位置および速度を検出するときの第2の覆域について説明するための図である。水平覆域制御器5は、ルート8の両わきにある各障害物の位置と障害物同士の離間距離とに基づいて、第1の覆域11から第2の覆域12へ覆域を狭くする調整を行う。第2の覆域12は、障害物同士の間に限定された覆域である。
【0028】
物体検出装置100は、覆域を狭める制御によって、ルート8における物体15の位置および速度を検出する際において障害物での電磁波の入射を低減できる。これにより、物体検出装置100は、障害物で囲まれたルートを車両7が通行する場合において、障害物での電磁波の反射に起因するマルチパスまたはクラッタといった現象を低減できる。物体検出装置100は、例えば障害物のすぐ横に人がいる場合であっても、人の位置および速度を高精度に検出することができる。
【0029】
以上により、実施の形態1にかかる物体検出装置100は、通行の障害となる障害物が存在する環境において物体を高精度に検出することが可能となるという効果を奏する。
【0030】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2にかかる物体検出装置101の構成を示す図である。物体検出装置101は、レーダ1を用いて検出された物体とカメラ20を用いて検出された物体との同一判定処理を行う。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
【0031】
物体検出装置101は、図3および図5に示す物体検出装置100と同様に、車両7に搭載される。実施の形態2において、物体検出装置101によって検出される物体は、車両7と当該物体との接触を防ぐために検出が所望される物体である。
【0032】
物体検出装置101は、レーダ1と、レーダ1から入力される信号を処理する信号処理器2と、レーダ1の覆域を制御する水平覆域制御器5とを有する。信号処理器2は、車両7が通行する環境に存在する物体の位置および速度を検出する物体検出器3を有する。第1の物体検出器である物体検出器3は、レーダ1の受信信号に基づいて物体の位置および速度を検出する。物体検出器3は、物体の位置を示す位置データと、物体が移動する速度を示す速度データとを生成する。物体検出器3は、生成された位置データおよび速度データを出力する。
【0033】
また、物体検出装置101は、カメラ20と、画像認識処理を行う画像処理器21と、フュージョン処理器22とを有する。画像処理器21は、障害物の位置および離間距離を検出する障害物検出器23と、車両7が通行する環境に存在する物体の位置および速度を検出する物体検出器24とを有する。
【0034】
カメラ20は、車両7の進行方向先方を車両7から撮影し、画像信号を出力する。障害物検出器23は、車両7から撮影された画像に写されている障害物を認識する。物体検出器24は、車両7から撮影された画像に写されている物体を認識する。障害物検出器23および物体検出器24は、画像から求まる特徴量と、人などの物体および各種の障害物の各々についての特徴データのデータベースとを基に、画像に写されている物体または障害物を認識する。特徴データは、機械学習または深層学習によって取得される。特徴データのデータベースは、物体検出装置101にあらかじめ格納される。
【0035】
障害物検出器23は、ルート8の両わきにある障害物が写された画像を基に、ルート8の両わきにある障害物同士の各々の位置と障害物同士の距離である離間距離とを検出する。障害物検出器23は、障害物の位置を示す位置データと、離間距離を示す離間距離データとを生成する。障害物検出器23は、生成された位置データと離間距離データとを出力する。
【0036】
第2の物体検出器である物体検出器24は、車両7が通行する環境に存在する物体が写された画像に基づいて、物体の位置および速度を検出する。物体検出器24は、物体の位置を示す位置データと、物体が移動する速度を示す速度データとを生成する。また、物体検出器24は、画像に写された物体を認識した結果を示す物体認識データを生成する。物体認識データは、位置および速度が検出された物体の分類を表す。
【0037】
フュージョン処理器22は、同一判定器25を有する。物体検出器3によって生成された位置データと速度データとは、同一判定器25へ入力される。物体検出器24によって生成された位置データと速度データと物体認識データとは、同一判定器25へ入力される。
【0038】
同一判定器25は、物体検出器3によって位置および速度が検出された物体と物体検出器24によって認識された物体とが同一の物体であるか否かを判定する。すなわち、同一判定器25は、レーダ1を用いて検出された物体とカメラ20を用いて検出された物体との同一判定処理を実行する。同一判定器25は、物体検出器3から入力された位置データおよび速度データと、物体検出器24から入力された位置データおよび速度データとを比較することによって、レーダ1を用いて検出された物体とカメラ20を用いて検出された物体とが同一か否かを判定する。
【0039】
同一判定器25は、物体検出器3によって位置および速度が検出された物体と物体検出器24によって認識された物体とが同一の物体であると判定した場合、物体検出器3から入力された位置データおよび速度データに、物体検出器24から入力された物体認識データを紐付ける。これにより、同一判定器25は、位置データおよび速度データに物体認識データが紐付けられたデータである検出データ26を生成する。フュージョン処理器22は、生成された検出データ26を物体検出装置101の外部へ出力する。検出データ26は、車両制御部6へ入力される。車両制御部6は、検出データ26を利用して車両7を制御する。
【0040】
障害物検出器23によって生成された位置データと離間距離データとは、水平覆域制御器5へ入力される。水平覆域制御器5は、障害物検出器23による検出結果である位置データと離間距離データとに基づいて水平方向における覆域を求める。水平覆域制御器5は、覆域の指示をレーダ1に送ることによって、レーダ1の水平方向における覆域を制御する。
【0041】
次に、物体検出装置101の動作について説明する。図7は、実施の形態2にかかる物体検出装置101の動作手順を示すフローチャートである。ここでは、車両7が通行するルートの両わきに障害物がある場合における物体検出装置101の動作を説明する。図7には、ある1つのフレームでの物体検出装置101の動作の手順を示す。
【0042】
ステップS11において、物体検出装置101は、物体および障害物の検出を開始する。レーダ1は、電磁波を発射し、物体または障害物での電磁波の反射によって伝播した反射波を受信することによって受信信号を出力する。ステップS11におけるレーダ1の覆域には、車両7の進行方向先方に存在する障害物を検出可能に広角な範囲をカバーする第1の覆域11が設定される。
【0043】
車両7が通行するルートの両わきに障害物がある場合に、ステップS12において、物体検出装置101の障害物検出器23は、ルート8の両わきにある各障害物の位置と、ルート8の両わきにある障害物同士の離間距離とを、カメラ20が撮影した画像に基づいて検出する。障害物検出器23は、位置データと離間距離データとを出力する。
【0044】
ステップS13において、物体検出装置101の水平覆域制御器5は、障害物についての位置データと離間距離データとに基づいて水平方向における覆域を制御する。水平覆域制御器5は、ルート8の両わきにある障害物同士の各々が検出されたときの第1の覆域11から、障害物同士の間の第2の覆域12へ覆域を狭める制御を行う。
【0045】
ステップS14において、物体検出装置101の物体検出器3は、覆域が第2の覆域12とされてからのレーダ1の受信信号を基に物体の位置および速度を検出する。すなわち、物体検出器3は、ステップS13において制御された覆域における反射波を受信することによって出力された受信信号に基づいて物体の位置および速度を検出する。物体検出器3は、位置データと速度データとを出力する。
【0046】
ステップS15において、物体検出装置101の物体検出器24は、画像に写されている物体を認識する。また、ステップS15において、物体検出器24は、物体の位置および速度を検出する。物体検出器24は、物体認識データと位置データと速度データとを出力する。なお、ステップS14とステップS15との順序は任意であるものとする。また、ステップS14の処理とステップS15の処理とは同時に行われても良い。
【0047】
ステップS16において、物体検出装置101の同一判定器25は、同一判定処理を実行する。同一判定器25は、物体検出器3によって位置および速度が検出された物体と物体検出器24によって認識された物体とが同一の物体であると判定した場合、物体検出器3から入力された位置データおよび速度データに、物体検出器24から入力された物体認識データを紐付ける。これにより、同一判定器25は、位置データおよび速度データに物体認識データが紐付けられたデータである検出データ26を生成する。
【0048】
ステップS17において、同一判定器25は、検出データ26を車両制御部6へ出力する。以上により、物体検出装置101は、図7に示す手順による動作を終了する。その後、物体検出装置101の動作は、次のフレームの動作に移行する。車両制御部6は、物体検出装置101から入力された検出データ26を利用して車両7を制御する。
【0049】
物体検出装置101は、覆域を狭める制御によって、ルート8における物体の位置および速度を検出する際において障害物での電磁波の入射を低減できる。これにより、物体検出装置101は、障害物で囲まれたルートを車両7が通行する場合において、障害物での電磁波の反射に起因するマルチパスまたはクラッタといった現象を低減できる。物体検出装置101は、例えば障害物のすぐ横に人がいる場合であっても、人の位置および速度を高精度に検出することができる。
【0050】
以上により、実施の形態2にかかる物体検出装置101は、通行の障害となる障害物が存在する環境において物体を高精度に検出することが可能となるという効果を奏する。
【0051】
次に、物体検出装置100,101が有するハードウェア構成について説明する。信号処理器2、水平覆域制御器5、画像処理器21およびフュージョン処理器22の各機能は、処理回路を使用して実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサを有する。または、処理回路は、物体検出装置100,101に搭載される専用のハードウェアである。
【0052】
図8は、実施の形態1または2にかかる物体検出装置100,101が有するハードウェア構成の第1の例を示す図である。第1の例は、物体検出装置100の要部である信号処理器2および水平覆域制御器5と、物体検出装置101の要部である信号処理器2、水平覆域制御器5、画像処理器21およびフュージョン処理器22とを、プロセッサ32とメモリ33とを有する処理回路30によって実現する場合の例である。
【0053】
プロセッサ32は、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ32は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)でも良い。メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、などである。
【0054】
メモリ33には、物体検出装置100,101の要部である処理部として動作するためのプログラムが格納される。当該プログラムをプロセッサ32が読み出して実行することにより、物体検出装置100,101の要部を実現することが可能である。
【0055】
入力部31は、物体検出装置100,101の要部である処理部に対する入力信号を外部から受信する回路である。物体検出装置100の入力部31には、レーダ1からの受信信号が入力される。物体検出装置101の入力部31には、レーダ1からの受信信号とカメラ20からの画像信号とが入力される。
【0056】
出力部34は、物体検出装置100,101の要部である処理部で生成した信号を外部へ出力する回路である。物体検出装置100の出力部34は、位置データおよび速度データを車両制御部6へ出力する。物体検出装置101の出力部34は、検出データ26を車両制御部6へ出力する。また、物体検出装置100,101の出力部34は、覆域を制御するための信号をレーダ1へ出力する。
【0057】
図9は、実施の形態1または2にかかる物体検出装置100,101が有するハードウェア構成の第2の例を示す図である。第2の例は、物体検出装置100,101の要部を、専用の処理回路35によって実現する場合の例である。
【0058】
処理回路35は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。物体検出装置100,101の要部である処理部について、機能の一部をプロセッサ32およびメモリ33で実現し、残りの機能を専用の処理回路35で実現しても良い。
【0059】
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられても良い。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 レーダ、2 信号処理器、3,24 物体検出器、4,23 障害物検出器、5 水平覆域制御器、6 車両制御部、7 車両、8 ルート、9 柱、10 壁、11 第1の覆域、12 第2の覆域、13,14 破線、15 物体、20 カメラ、21 画像処理器、22 フュージョン処理器、25 同一判定器、26 検出データ、30,35 処理回路、31 入力部、32 プロセッサ、33 メモリ、34 出力部、100,101 物体検出装置。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9