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特許7577211オレフィン系重合体、それにより製造されたフィルム、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体、それにより製造されたフィルム、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20241025BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241025BHJP
   C08F 4/02 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
C08F4/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023530855
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 KR2021016517
(87)【国際公開番号】W WO2022108252
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0157561
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ムンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ドン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィ ガプ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ラン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】リム ソンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ジソン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117678(JP,A)
【文献】特表2007-518871(JP,A)
【文献】特表2016-504442(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080744(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0159300(US,A1)
【文献】特開2015-113282(JP,A)
【文献】特表2022-505078(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080745(WO,A1)
【文献】特開2004-149760(JP,A)
【文献】特表2021-517604(JP,A)
【文献】特開2003-096125(JP,A)
【文献】特表2017-505370(JP,A)
【文献】特表2022-505072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/16
C08F 4/6592
C08F 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度が0.915~0.935g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50であり、(4)下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上であるオレフィン系重合体であって、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する、オレフィン系重合体であって、
下記化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物の少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、下記化学式2-1、2-2、および3-1で表される遷移金属化合物の少なくとも1つの第2遷移金属化合物とを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合することで製造され、
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体であり、
前記オレフィン系単量体は、エチレンであり、前記オレフィン系共単量体は、1-ヘキセンである、オレフィン系重合体。
【化1】
前記化学式中、Meはメチル基である。
【数1】
ここで、C20およびC80は、共単量体分布において累積重量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%および80%のポイントにおける共単量体の含量であり、M20およびM80は、共単量体分布において累積重量分率がそれぞれ20%および80%のポイントにおける分子量である。
【請求項2】
(1)オレフィン系重合体の密度が0.915~0.930g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数が0.5~2.0g/10分であり、(3)MFRが20~45であり、(4)CDSが3~15である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
前記第1遷移金属化合物に対する前記第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項4】
前記触媒は、下記化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物、および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含む、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【化2】
[化学式6]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基であり、
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基であり、
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール基であるか、または置換もしくは非置換のC1-20アルキル基である。
【請求項5】
前記触媒は、遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含む、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項6】
前記担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項7】
前記担体に担持されるハイブリッド遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、前記担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
前記オレフィン系重合体は、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
なくとも1種の第1遷移金属化合物は、下記化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物の少なくとも1つ、少なくとも1種の第2遷移金属化合物は、下記化学式2-1、2-2および3-1で表される遷移金属化合物の少なくとも1つとを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が0.915~0.935g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50であり、(4)下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上であり、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有し、
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体の共重合体であり、
前記オレフィン系単量体は、エチレンであり、前記オレフィン系共単量体は、1-ヘキセンである、オレフィン系重合体の製造方法。
【化3】
前記化学式中、Meはメチル基である。
【数2】
記数式1のC20、C80、M20、およびM80は、請求項1における定義と同様である。
【請求項10】
前記オレフィン系単量体の重合は、気相重合により行われる、請求項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体、それにより製造されたフィルム、およびその製造方法に関する。具体的に、本発明は、加工性に優れるオレフィン系重合体、それにより製造され、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れるオレフィン系重合体フィルム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために用いられる触媒の1つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合した化合物として、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために用いられる他の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒は、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散し、活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する1つの化合物であるため、全ての活性点が同一の重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒により重合された高分子は、分子量分布が狭く、共単量体の分布が均一であり、チーグラー・ナッタ触媒に比べて共重合活性度が高い。
【0004】
一方、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を用いて、低圧でエチレンとα-オレフィンを共重合することで製造され、分子量分布が狭く、一定長さの短鎖分岐(short chain branch;SCB)を有し、一般的に長鎖分岐(long chain branch;LCB)を有しない。直鎖状低密度ポリエチレンから製造されたフィルムは、一般的なポリエチレンの特性に加え、破断強度および伸び率が高く、引裂強度、衝撃強度などに優れるため、従来の低密度ポリエチレン(low-density polyethylene)や高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)の適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどに広く用いられている。
【0005】
ところが、メタロセン触媒により製造される直鎖状低密度ポリエチレンは、狭い分子量分布により加工性に劣り、それにより製造されるフィルムは、熱封かん特性が低下する傾向がある。
【0006】
したがって、加工性に優れるとともに、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れるフィルムを製造できるオレフィン系重合体が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工性に優れるとともに、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れるオレフィン系重合体フィルムを製造できるオレフィン系重合体を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記オレフィン系重合体から製造され、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れるオレフィン系重合体フィルムを提供することにある。
本発明のまた他の目的は、前記オレフィン系重合体およびオレフィン系重合体フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、(1)密度が0.915~0.935g/cm、好ましくは0.915~0.930g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分、好ましくは0.5~2.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50、好ましくは20~45であり、(4)下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上、好ましくは3~15であるオレフィン系重合体であって、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する、オレフィン系重合体が提供される。
【0010】
【数1】
【0011】
前記数式1中、C20およびC80は、共単量体分布において累積重量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%および80%のポイントにおける共単量体の含量であり、M20およびM80は、共単量体分布において累積重量分率がそれぞれ20%および80%のポイントにおける分子量である。
【0012】
本発明の具体例において、前記オレフィン系重合体は、下記化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される化合物および下記化学式3で表される化合物の中から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合することで製造してもよい。
【0013】
【化1】
前記化学式1~化学式3中、MおよびMは、互いに異なり、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、
~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、R~R10は、それぞれ独立して、隣接する基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成してもよい。
【0014】
本発明の具体例において、MおよびMは、互いに異なり、それぞれジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R~R10は、それぞれ水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールであってもよい。
本発明の好ましい具体例において、Mがハフニウムであり、Mがジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルであってもよい。
【0015】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が下記化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、第2遷移金属化合物が下記化学式2-1、2-2、および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【0016】
【化2】
前記化学式中、Meはメチル基である。
【0017】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である。
【0018】
本発明の具体例において、前記触媒は、下記化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物、および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒を含んでもよい。
【0019】
【化3】
[化学式6]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0020】
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基であり、
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基であり、
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール基であるか、または置換もしくは非置換のC1-20アルキル基である。
【0021】
本発明の具体例において、前記触媒は、遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含んでもよい。
本発明の好ましい具体例において、前記担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
ここで、担体に担持されるハイブリッド遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである。
【0023】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体との共重合体である。具体的に、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体がプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである、直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、前記化学式2で表される化合物および前記化学式3で表される化合物の中から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の(1)密度が0.915~0.935g/cm、好ましくは0.915~0.930g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分、好ましくは0.5~2.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50、好ましくは20~45であり、(4)前記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上、好ましくは3~15であり、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する、オレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0025】
本発明の具体例において、オレフィン系単量体の重合は、気相重合により行われてもよく、具体的に、オレフィン系単量体の重合は、気相流動層反応器内で行われてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、加工性に優れ、それにより製造されるフィルム、特に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】数式1で定義されるCDSの測定方法を説明するためのGPC-FTIRグラフである。
図2】実施例1のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図3】実施例2のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図4】実施例3のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図5】実施例4のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図6】実施例5のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図7】比較例1のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
図8】比較例2のオレフィン系重合体のCDSを測定するためのGPC-FTIRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
オレフィン系重合体
本発明の一実施形態によると、(1)密度が0.915~0.935g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50であり、(4)下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上であるオレフィン系重合体であって、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する、オレフィン系重合体が提供される。
【0029】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、密度が0.915~0.935g/cmである。好ましくは、オレフィン系重合体の密度が0.915~0.930g/cmであってもよい。
【0030】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分である。好ましくは、190℃で2.16kgの荷重で測定されるオレフィン系重合体の溶融指数が0.5~2.0g/10分であってもよい。
【0031】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50である。好ましくは、オレフィン系重合体のMFRが20~45であってもよい。
【0032】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上である。好ましくは、オレフィン系重合体のCDSが3~15であってもよい。
【0033】
【数2】
【0034】
前記数式1中、C20およびC80は、共単量体分布において累積重量分率(cumulative weight fraction)がそれぞれ20%および80%のポイントにおける共単量体の含量であり、M20およびM80は、共単量体分布において累積重量分率がそれぞれ20%および80%のポイントにおける分子量である。
【0035】
オレフィン系重合体のCDSは、共単量体分布グラフにおいて累積重量分率がそれぞれ20%および80%のポイントにおける分子量に対する共単量体の含量の勾配を示す。オレフィン系重合体のCDSが大きいほど、分子量の大きい高分子鎖に共重合体が集中し、優れた機械的強度および熱封かん特性を有することができる。
ここで、オレフィン系重合体の共単量体分布は、GPC-FTIR装置を用いて、重合体の分子量、分子量分布と共に連続的に測定することができる。
【0036】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体から製造されるフィルムは、厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する。好ましくは、オレフィン系重合体から製造されるフィルムは、厚さ50μmを基準として1,250~1,550gの落下衝撃強度を有してもよい。
【0037】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、比較的に広い分子量分布を有し、高分子量成分に短鎖分岐が相対的に多く存在するため、それにより製造されるオレフィン系重合体フィルムの機械的強度、特に落下衝撃強度に優れるものと理解される。
【0038】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体フィルムは、ストレッチフィルム、オーバーラップフィルム、ラミー、サイレージラップ、農業用フィルムなどとして効果的に用いることができる。
【0039】
本発明の具体例において、本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体からフィルムを成形する方法は、特に限定されず、本発明が属する技術分野で公知の成形方法を用いてもよい。例えば、上述したオレフィン系重合体をインフレーションフィルム成形、押出成形、キャスティング成形などの通常の方法により加工してオレフィン系重合体フィルムを製造してもよい。中でも、インフレーションフィルム成形が最も好ましい。
【0040】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、下記化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される化合物および下記化学式3で表される化合物の中から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合することで製造してもよい。
【0041】
【化4】
前記化学式1~化学式3中、MおよびMは、互いに異なり、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)である。具体的に、MおよびMは、互いに異なり、それぞれジルコニウムまたはハフニウムであってもよい。好ましくは、Mがハフニウムであり、Mがジルコニウムであってもよい。
【0042】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドである。具体的に、Xは、それぞれハロゲンまたはC1-20アルキルであってもよい。好ましくは、Xが塩素またはメチルであってもよい。
【0043】
~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、置換もしくは非置換のC1-20アルキリデン、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、ここで、R~R10は、それぞれ独立して、隣接する基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成してもよい。具体的に、R~R10は、それぞれ水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールであってもよい。
【0044】
本発明の具体例において、MおよびMは、互いに異なり、それぞれジルコニウムまたはハフニウムであり、Xは、それぞれハロゲンまたはC1-20アルキルであり、R~R10は、それぞれ水素、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20アルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールであってもよい。
本発明の好ましい具体例において、Mがハフニウムであり、Mがジルコニウムであり、Xが塩素またはメチルであってもよい。
【0045】
本発明の好ましい具体例において、第1遷移金属化合物が下記化学式1-1および1-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、第2遷移金属化合物が下記化学式2-1、2-2、および3-1で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【0046】
【化5】
前記化学式中、Meはメチル基である。
【0047】
本発明の具体例において、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が100:1~1:100の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が50:1~1:50の範囲である。好ましくは、第1遷移金属化合物に対する第2遷移金属化合物のモル比が10:1~1:10の範囲である。
【0048】
本発明の具体例において、前記触媒は、下記化学式4で表される化合物、化学式5で表される化合物、および化学式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の助触媒化合物を含んでもよい。
【0049】
【化6】
【0050】
前記化学式4中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、C1-20炭化水素、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であってもよい。具体的に、Rは、メチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであってもよい。
【0051】
【化7】
【0052】
前記化学式5中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)である際、R、R、およびRは、それぞれ独立して、メチルまたはイソブチルであってもよく、Dがボロン(B)である際、R、R、およびRは、それぞれペンタフルオロフェニルであってもよい。
【0053】
[化学式6]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0054】
前記化学式6中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール基であるか、または置換もしくは非置換のC1-20アルキル基である。具体的に、[L-H]は、ジメチルアニリニウムカチオンであってもよく、[Z(A)は、[B(Cであってもよく、[L]は、[(CC]であってもよい。
【0055】
具体的に、前記化学式4で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記化学式5で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記化学式6で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどが挙げられる。
【0058】
本発明の具体例において、前記触媒は、遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含んでもよい。具体的に、担体は、遷移金属化合物および助触媒化合物の両方を担持してもよい。
【0059】
この際、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでもよく、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基とシロキサン基を有する物質が用いられてもよい。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として用いられてもよく、通常、これらはNaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有してもよい。また、これらは炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどを含んでもよい。ただし、担体は、これらに限定されず、遷移金属化合物と助触媒化合物を担持可能であれば特に限定されない。
【0060】
担体は、平均粒度が10~250μmであってもよく、好ましくは、平均粒度が10~150μmであってもよく、より好ましくは20~100μmであってもよい。
【0061】
担体の微細気孔の体積は0.1~10cc/gであってもよく、好ましくは0.5~5cc/gであってもよく、より好ましくは1.0~3.0cc/gであってもよい。
【0062】
担体の比表面積は1~1,000m/gであってもよく、好ましくは100~800m/gであってもよく、より好ましくは200~600m/gであってもよい。
【0063】
本発明の好ましい具体例において、担体がシリカであってもよい。この際、シリカは、乾燥温度が200~900℃であってもよい。乾燥温度は、好ましくは300~800℃、より好ましくは400~700℃であってもよい。乾燥温度が200℃未満である場合には、水分が多すぎるため、表面の水分と助触媒化合物が反応し、900℃を超えると、担体の構造が崩壊し得る。
【0064】
乾燥されたシリカ中のヒドロキシ基の濃度は0.1~5mmole/gであってもよく、好ましくは0.7~4mmole/gであってもよく、より好ましくは1.0~2mmole/gであってもよい。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmole/g未満であると、-助触媒化合物の担持量が低くなり、5mmole/gを超えると、触媒成分が不活性化する問題が生じ得る。
【0065】
担体に担持される遷移金属化合物の総量は、担体1gを基準として0.001~1mmoleであってもよい。遷移金属化合物と担体との比が上記範囲を満たすと、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0066】
担体に担持される助触媒化合物の総量は、担体1gを基準として2~15mmoleであってもよい。助触媒化合物と担体との比が上記範囲を満たすと、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0067】
担体は、1種または2種以上が用いられてもよい。例えば、1種の担体に遷移金属化合物および助触媒化合物の両方が担持されてもよく、2種以上の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物がそれぞれ担持されてもよい。また、遷移金属化合物および助触媒化合物のいずれか1つのみが担体に担持されてもよい。
【0068】
オレフィン重合用触媒に使用可能な遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的吸着方法または化学的吸着方法が用いられてもよい。
【0069】
例えば、物理的吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥する方法、または遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥することで遷移金属化合物が担持された担体を製造し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後に乾燥することで助触媒化合物が担持された担体を製造した後、これらを混合する方法などであってもよい。
【0070】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先に担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカ表面のヒドロキシ基(-OH))と触媒化合物を共有結合させる方法などであってもよい。
【0071】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)、またはオレフィン系単量体と共単量体との共重合体(copolymer)であってもよい。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系共単量体との共重合体である。
【0072】
ここで、オレフィン系単量体は、C2-20α-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)、およびC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0073】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセンなどであってもよく、オレフィン系重合体は、上記で例示したオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、または2種以上含む共重合体であってもよい。
【0074】
例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20α-オレフィンが共重合された共重合体であってもよい。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系共単量体が1-ヘキセンである、直鎖状低密度ポリエチレンであってもよい。
【0075】
この場合、エチレンの含量は55~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。α-オレフィン系共単量体の含量は0.1~45重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0076】
オレフィン系重合体の製造方法
本発明の一実施形態によると、下記化学式1で表される少なくとも1種の第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される化合物および下記化学式3で表される化合物の中から選択される少なくとも1種の第2遷移金属化合物とを含むハイブリッド触媒の存在下で、オレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を得るステップを含む、オレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0077】
【化8】
前記化学式中、M、M、X、およびR~R10は、前記オレフィン系重合体の項目における説明と同様である。
【0078】
前述したように、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造されるオレフィン系重合体は、(1)密度が0.915~0.935g/cm、好ましくは0.915~0.930g/cmであり、(2)190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.3~3.0g/10分、好ましくは0.5~2.0g/10分であり、(3)190℃で、21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と、2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が20~50、好ましくは20~45であり、(4)下記数式1で定義される共単量体分布勾配(comonomer distribution slope;CDS)が3以上、好ましくは3~15であり、それにより製造されるフィルムが厚さ50μmを基準として1,200~1,550gの落下衝撃強度を有する。
【0079】
【数3】
【0080】
前記数式1のC20、C80、M20、およびM80は、前記オレフィン系重合体の項目における説明と同様である。
【0081】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、カチオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0082】
本発明の一実施形態として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法などにより製造されてもよい。好ましくは、オレフィン系単量体の重合は、気相重合により行われてもよく、具体的に、オレフィン系単量体の重合は、気相流動層反応器内で行われてもよい。
【0083】
オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により製造される場合、使用可能な溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
実施例
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0085】
製造例
化学式1-1の遷移金属化合物(bis(n-propylcyclopentadienyl)hafnium dichloride)、および化学式2-1の遷移金属化合物(bis(n-butylcyclopentadienyl)zirconium dichloride)はTCIから購入し、化学式1-2の遷移金属化合物(dimethylbis(n-propylcyclopentadienyl)hafnium dichloride)、化学式2-2の遷移金属化合物(bis(i-butylcyclopentadienyl)zirconium dichloride)、および化学式3-1の遷移金属化合物((pentamethylcyclopentadienyl)(n-propylcyclopentadienyl)zirconium dichloride)はMCNから購入し、追加の精製過程を経ずに用いた。
【0086】
製造例1
化学式1-1の遷移金属化合物4.47gと化学式2-1の遷移金属化合物1.67gに10%メチルアルミノキサンのトルエン溶液892gを投入し、常温で1時間撹拌した。反応が終わった溶液を200gのシリカ(XPO-2402)に投入し、さらに1.5リットルのトルエンを入れ、70℃で2時間撹拌した。担持が終わった触媒を500mlのトルエンで洗浄し、60℃の真空中で一晩乾燥させ、粉末状の担持触媒280gを得た。
【0087】
製造例2
化学式1-1の遷移金属化合物4.47gと化学式2-2の遷移金属化合物1.67gを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法で担持触媒278gを得た。
【0088】
製造例3
化学式1-1の遷移金属化合物4.47gと化学式3-1の遷移金属化合物1.68gを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法で担持触媒280gを得た。
【0089】
製造例4
化学式1-2の遷移金属化合物4.07gと化学式2-2の遷移金属化合物1.67gを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法で担持触媒275gを得た。
【0090】
製造例5
化学式1-2の遷移金属化合物4.07gと化学式3-1の遷移金属化合物1.68gを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法で担持触媒278gを得た。
【0091】
実施例1~5
気相流動層反応器を用いて、製造例1~5によりそれぞれ得られた担持触媒の存在下で、エチレン/1-ヘキセン共重合体を製造した。反応器のエチレン分圧を約15kg/cmに維持し、重合温度を80~90℃に維持した。
前記実施例の重合条件を下記表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
比較例1~2
比較のために、ハンファソリューション社製の直鎖状低密度ポリエチレンM1810HN(密度0.9180g/cm、溶融指数1.0g/10分;比較例1)とM2010EN(密度0.9200g/cm、溶融指数1.0g/10分;比較例2)を用いた。
【0094】
試験例
前記実施例のオレフィン系重合体の物性を下記のような方法および基準に従って測定した。その結果を下記表2に示した。
【0095】
(1)密度(density)
ASTM D1505に準じて測定した。
【0096】
(2)溶融指数(melt index)および溶融指数比(melt flow ratio;MFR)
ASTM D1238に準じて、190℃で、21.6kgの荷重と2.16kgの荷重でそれぞれ溶融指数を測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0097】
(3)共単量体分布勾配(CDS)
170℃で、ゲル浸透クロマトグラフィー-FTIR(GPC-FTIR)を用いて測定した。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例1~5と比較例1~2それぞれの樹脂を、40mmのブローフィルム押出機(40mmΦスクリュー、75mmΦダイ、2mmダイギャップ)を介して、厚さ50μmのフィルムに製造した。この際、押出条件は、C1/C2/C3/A/D1/D2=160/165/170/175/180/180℃、スクリュー速度60rpm、ブローアップ比(blow-up ratio;BUR)2に固定した。
前記実施例と比較例のオレフィン系重合体フィルムの物性を下記のような方法および基準に従って測定した。その結果を下記表3に示した。
【0100】
(4)落下衝撃強度
落下衝撃強度は、厚さ50μmのフィルムを固定した後、直径38.10±0.13mmの重りを0.66±0.01mの高さから落下させるASTM D1709(A)方法に準じて測定した。
【0101】
(5)ヘイズ(haze)
厚さ50μmの規格にフィルムを成形し、ASTM D1003に準じて測定した。この際、1試験片当たりに5回測定し、その平均値を取った。
【0102】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、加工性に優れ、それにより製造されるオレフィン系重合体フィルム、具体的に直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、機械的強度、特に落下衝撃強度に優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8