(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】慣性センサ及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20241025BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241025BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B81C1/00
B81B3/00
H01L29/84 Z
(21)【出願番号】P 2023534275
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2021125443
(87)【国際公開番号】W WO2022121529
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】202011413591.7
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520339091
【氏名又は名称】セミコンダクター マニュファクチュアリング エレクトロニクス(シャオシン)コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジャオリン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジーフイ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-007346(JP,A)
【文献】特開2011-017693(JP,A)
【文献】特開2007-309936(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106629583(CN,A)
【文献】特開平09-330892(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105621348(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
B81B 3/00
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電材料層を備えた第1ベースと、薄膜層を底部に形成した凹溝がその表面に形成された櫛歯領域を有する第2導電材料層を備えた第2ベースとを提供するステップと、
前記第2導電材料層と前記第1導電材料層を互いに結合させるステップと、
各櫛歯の底部が全て前記薄膜層に固定される可動櫛歯構造を形成するように、少なくとも前記第2導電材料層の前記櫛歯領域を前記薄膜層までエッチングするステップと、
前記薄膜層を除去するステップと、を含
み、
前記第1導電材料層に第1キャビティが形成されており、前記第1導電材料層と前記第2導電材料層を結合させた後、前記櫛歯領域は前記第1キャビティの上に吊設されているようになり、前記櫛歯領域の下方には前記第1キャビティが対応して存在することを特徴とする慣性センサの形成方法。
【請求項2】
前記薄膜層の厚さ寸法は前記凹溝の深さ寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項3】
前記第2導電材料層と前記第1導電材料層を結合させるステップの後、
そのうちの少なくとも一部が前記可動櫛歯構造に電気的に接続するために用いられる複数の電極を前記第2導電材料層に形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項4】
前記第1導電材料層に更に第1開口が形成されており、前記第2導電材料層をエッチングする時に更に前記第2導電材料層に第2開口を形成し、前記第2開口は前記第1開口に連通して仕切口を構成し、複数の前記電極同士は前記仕切口によって互いに電気的に隔てられることを特徴とする請求項3に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項5】
前記第1ベースは、更に、第1基板、及び前記第1基板と前記第1導電材料層との間に形成された第1絶縁層を含み、前記第1導電材料層には、更に、前記第1絶縁層を露出させる
前記第1キャビティと、第2キャビティと、前記第1絶縁層にあるストッパとが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項6】
前記薄膜層の材料は前記第1絶縁層の材料と同じであることを特徴とする請求項5に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項7】
前記第2導電材料層は更にカンチレバー領域を備え、前記第1導電材料層には更に第2キャビティとストッパが形成されており、前記第1導電材料層と前記第2導電材料層を結合させた後、前記第2キャビティと前記ストッパはいずれも前記カンチレバー領域の直下にあるようになり、前記カンチレバー領域の下方には前記第2キャビティが対応して存在することを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項8】
前記第2ベースは、更に、第2基板、及び前記第2基板と前記第2導電材料層との間に形成された第2絶縁層を含み、
前記第2導電材料層をエッチングするステップの前に、前記第2基板を研削して前記第2基板を部分的に除去し、次にエッチングプロセスを用いて残りの第2基板を前記第2絶縁層までエッチングし、続いて前記第2絶縁層を除去して前記第2導電材料層を露出させるステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項9】
前記第2導電材料層をエッチングして可動櫛歯構造を形成する方法は、プラスマエッチングプロセスを用いて前記第2導電材料層をエッチングするステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサの形成方法。
【請求項10】
慣性センサであって、
基板と、
前記基板に形成された第1導電材料層と、
直接前記第1導電材料層に結合される第2導電材料層であって、前記第2導電材料層の櫛歯領域に可動櫛歯構造が形成されており、前記可動櫛歯構造が吊設されるように、前記可動櫛歯構造における前記基板に近い端部が前記第2導電材料層の結合面に対して内へ縮んでいる第2導電材料層と、を含
み、
前記第1導電材料層には更に第1キャビティが形成され、前記可動櫛歯構造が前記第1キャビティの上方に吊設され、前記櫛歯領域の下方には前記第1キャビティが対応して存在することを特徴とする慣性センサ。
【請求項11】
前記第2導電材料層は更にカンチレバー領域を備え、前記第1導電材料層には更に第2キャビティとストッパが形成されており、前記第2キャビティと前記ストッパはいずれも前記カンチレバー領域の直下にあり、前記カンチレバー領域の下方には前記第2キャビティが対応して存在することを特徴とする請求項
10に記載の慣性センサ。
【請求項12】
更に、前記基板と前記第1導電材料層との間にある第1絶縁層を含み、前記第1絶縁層は
前記第1キャビティ、第2キャビティに露出した部分を備え、前記第1導電材料層中
のストッパは前記第1絶縁層に設けられていることを特徴とする請求項
10に記載の慣性センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の技術分野に関し、特に、慣性センサ及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro-Electro-Mechanical System,微小電気機械システム)技術に基づいて製作された慣性センサは、構造が簡単で、マイクロ電子製造プロセスに対する対応性に優れ、ロット生産が可能で、体積が小さい等の長所を有しているため、広範囲に注目されている。
【0003】
従来のプロセスにおいて、慣性センサの形成方法は、一般に、まず、互いに結合する第1ベースと第2ベースを提供するステップと、次に、前記第1ベースの上方に吊設するように、可動櫛歯構造を、前記第2ベースをエッチングして形成するステップと、を含む。しかしながら、従来のプロセスに基づいて製作された慣性センサにおいては、可動櫛歯構造の各櫛歯の側壁が損なわれるという問題がしばしばある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、形成される可動櫛歯構造の櫛歯側壁の損傷を改善するために、慣性センサの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、
第1導電材料層を備えた第1ベースと、薄膜層を底部に形成した凹溝がその櫛歯領域の表面に形成された第2導電材料層を備えた第2ベースとを提供するステップと、
前記第2導電材料層と前記第1導電材料層を互いに結合させるステップと、
その中の各櫛歯の底部が全て前記薄膜層に固定される可動櫛歯構造を形成するように、少なくとも前記第2導電材料層の前記櫛歯領域を前記薄膜層までエッチングするステップと、
前記薄膜層を除去するステップと、を含む慣性センサを提供する。
【0006】
選択可能に、前記薄膜層の厚さ寸法は前記凹溝の深さ寸法よりも小さい。
【0007】
選択可能に、前記第2導電材料層と前記第1導電材料層を結合させるステップの後、そのうちの少なくとも一部が前記可動櫛歯構造に電気的に接続するために用いられる複数の電極を前記第2導電材料層に形成するステップを更に含む。
【0008】
選択可能に、前記第1導電材料層に更に第1開口が形成されており、前記第2導電材料層をエッチングする時に更に前記第2導電材料層に第2開口を形成し、前記第2開口は前記第1開口に連通して仕切口を構成し、複数の前記電極同士は前記仕切口によって互いに電気的に隔てられる。
【0009】
選択可能に、前記第1ベースは、更に、第1基板、及び前記第1基板と前記第1導電材料層との間に形成された第1絶縁層を含む。
【0010】
選択可能に、前記第1導電材料層に第1キャビティが形成されており、前記第1導電材料層と前記第2導電材料層を結合させた後、前記櫛歯領域は前記第1キャビティの上に吊設されているようになる。
【0011】
選択可能に、前記第2導電材料層は更にカンチレバー領域を備え、前記第1導電材料層には更に第2キャビティとストッパが形成されており、前記第1導電材料層と前記第2導電材料層を結合させた後、前記第2キャビティと前記ストッパはいずれも前記カンチレバー領域の直下にあるようになる。
【0012】
選択可能に、前記第2ベースは、更に、第2基板、及び前記第2基板と前記第2導電材料層との間に形成された第2絶縁層を含み、前記第2導電材料層をエッチングするステップの前に、前記第2基板を研削して前記第2基板を部分的に除去し、次にエッチングプロセスを用いて残りの第2基板を前記第2絶縁層までエッチングし、続いて前記第2絶縁層を除去して前記第2導電材料層を露出させるステップを更に含む。
【0013】
選択可能に、前記第2導電材料層をエッチングして可動櫛歯構造を形成する方法は、プラスマエッチングプロセスを用いて前記第2導電材料層をエッチングするステップを含む。
【0014】
本発明は、
基板と、
前記基板に形成された第1導電材料層と、
直接前記第1導電材料層に結合される第2導電材料層であって、前記第2導電材料層に可動櫛歯構造が形成されており、前記可動櫛歯構造が吊設されるように、前記可動櫛歯構造における前記基板に近い端部が前記第2導電材料層の下面に対して内へ縮んでいる第2導電材料層と、を含む慣性センサを提供することを別の目的とする。
【0015】
選択可能に、前記第1導電材料層には更に第1キャビティが形成され、前記可動櫛歯構造が前記第1キャビティの上方に吊設される。
【0016】
選択可能に、前記第2導電材料層は更にカンチレバー領域を備え、前記第1導電材料層には更に第2キャビティとストッパが形成されており、前記第2キャビティと前記ストッパはいずれも前記カンチレバー領域の直下にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明で提供される慣性センサの形成方法では、第2導電材料層の櫛歯領域に凹溝を形成することによって、前記櫛歯領域に形成される可動櫛歯構造を前記第1導電材料層から隔てることができ、また、凹溝の底部には更に第2導電材料層をエッチングする時にエッチングの止めを実現することに利用可能な薄膜層が設けられているため、第2導電材料層に対するエッチングは前記薄膜層まで進むと止まることが可能となり、その下方の第1導電材料層を損なうことがない。また、第2導電材料層をエッチングして可動櫛歯構造を形成する時に、可動櫛歯構造の各櫛歯の底部がいずれも薄膜層に固定され、エッチング工程で櫛歯が捩れることによって櫛歯の側壁が損なわれることが回避される。なお、本発明で提供される形成方法では、厚さの小さい薄膜層を設けることができるので、前記薄膜層を除去する時に小さいエッチング量だけでよく、この時に他の膜層を大量にエッチングすることがなく、デバイス中の各コンポーネントの安定性の確保に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の模式的フローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図3】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図4】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図5】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図6】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図7】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【
図8】本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
背景技術において述べたように、従来の慣性センサの形成方法に基づいて製作される慣性センサは、可動櫛歯構造の各櫛歯の側壁が損なわれやすい。これに対して、本発明の発明者は研究したところ、可動櫛歯構造の櫛歯側壁が損なわれやすい一つの重要な原因としては、第2ベースをエッチングして可動櫛歯構造を形成する工程でエッチングが進行していくに伴い、可動櫛歯構造の捩れ空間がリリースされるので、可動櫛歯構造がエッチング工程で捩れやすく、この時に各櫛歯の側壁がエッチングで損なわれやすくなることであるのが分かった。
【0020】
そのため、本発明は、
第1導電材料層を備えた第1ベースと、薄膜層を底部に形成した凹溝がその櫛歯領域の表面に形成された第2導電材料層を備えた第2ベースとを提供するステップS100と、
前記第2導電材料層と前記第1導電材料層を互いに結合させるステップS200と、
その中の各櫛歯の底部が全て前記薄膜層に固定される可動櫛歯構造を形成するように、少なくとも前記第2導電材料層の前記櫛歯領域を前記薄膜層までエッチングするステップS300と、
前記薄膜層を除去するステップS400と、を含む慣性センサ及びその形成方法を提供する。
【0021】
以下、図面及び具体的実施例を参照しながら、本発明で提案される慣性センサ及びその形成方法について更に詳細に説明する。以下の説明によって、本発明の長所と特徴はより明らかになる。図面全体はかなり簡素化されたものであり、精確な比例を採用しているというわけではなく、ただ補助的に本発明の実施例を便利且つ明らかに説明するのを目的とすることが説明必要である。また、図面に示す「上方」、「下方」、「頂部」、「底部」のような相対的用語は相互間の各種のコンポーネントの関係を記述するためのものとなってもよく、これらの相対的用語は図面で描いた方向以外の素子間の異なる方向を含む目的がある。例えば、デバイスが図面中のビューに対して逆さまになされたものであれば、例えば、別の素子の「上方」にあると記述された素子がこの素子の下方にあるようになる。
【0022】
本実施例では、前記慣性センサの形成方法は下記のステップS100~ステップS400を含んでもよい。以下、
図1、
図2~
図8を参照しながら詳細に説明し、そのうち、
図1は本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の模式的フローチャートであり、
図2~
図8は本発明の一実施例における慣性センサの形成方法の製作手順での構造模式図である。
【0023】
ステップS100において、具体的に
図2を参照すると、第1導電材料層130を備えた第1ベース100と、第2導電材料層230を備えた第2ベース200とを提供する。
【0024】
ここで、前記第2導電材料層230においては、櫛歯領域Aの表面に薄膜層240を底部に形成した凹溝230aが形成されており、前記薄膜層240の材料は例えば酸化ケイ素を含み、前記第2導電材料層230の櫛歯領域Aは可動櫛歯構造を製作するために用いられる。本実施例では、前記薄膜層240は前記凹溝230aのみにあり、また、前記薄膜層240の厚さ寸法は、前記薄膜層240の頂面が前記第2導電材料層230の頂面より高くないように、前記凹溝230aの深さ寸法よりも小さくされている。例えば、前記薄膜層240の厚さ寸法をただ凹溝230aの深さ寸法の半分等にしてもよく、前記凹溝230aの深さ寸法は例えば0.5μm~1.5μmである。
【0025】
更に、前記第2導電材料層230は更にカンチレバー領域Bを備え、前記櫛歯領域Aは前記カンチレバー領域Bの側面にあり、前記カンチレバー領域B部分は慣性センサのマスブロックを構成してもよい。
【0026】
更に、前記第1導電材料層130には、更に、前記第2導電材料層230の櫛歯領域Aに対応する第1キャビティ130aが形成されている(即ち、後ほど第1ベース100と第2ベース200を結合させると、前記第1キャビティ130aが前記櫛歯領域Aに合わせられる)。また、前記第1導電材料層130には、更に、前記第2導電材料層230のカンチレバー領域Bに対応する、前記カンチレバー領域Bに振動空間を提供するための第2キャビティ130bが形成されている(即ち、後ほど第1ベース100と第2ベース200を結合させると、前記第2キャビティ130bが前記カンチレバー領域Bに合わせられる)。
【0027】
更に、前記第1導電材料層130には、更に、前記第2導電材料層230のカンチレバー領域Bに対応する、カンチレバー領域Bの振動が大きすぎて切れる等の問題を回避するように前記カンチレバー領域Bの振動範囲を制限するためのストッパ131が設けられていてもよい。具体的には、後ほど第1ベース100と第2ベース200を結合させた後、前記ストッパ131は即ち前記カンチレバー領域Bの下方にあるようになり、本実施例では、前記カンチレバー領域Bのエッジから止めるために、更に前記ストッパ131を前記第2キャビティ130bのエッジに設けてもよい。更に、前記ストッパ131の頂面は前記第1導電材料層130の頂面より高くない。
【0028】
図2を参照し続けると、前記第1導電材料層130には更に前記第1導電材料層130を貫通する複数の第1開口130cが形成されている。前記第1開口130cは仕切口を構成するためのものである。説明必要なことは、後続のパターン化プロセスの合わせ精度を確保するために、更に構成された複数の仕切口のうち、一部の仕切口を用いて位置合わせマークを構成してもよい点である。これについて、後続のステップで詳細に説明する。
【0029】
本実施例では、前記第2導電材料層230における前記第1開口130cに対応する位置にも凹溝と薄膜層が形成されている。
【0030】
図2を参照し続けると、本実施例では、前記第1ベース100は更に第1基板110を含み、前記第1導電材料層130が前記第1基板110に形成されている。ここで、前記第1導電材料層130の材料は、例えば,イオンドープ後のケイ素材料であり、前記第1導電材料層130の抵抗値は、例えば、0.01Ω~0.02Ωにある。
【0031】
なお、前記第1導電材料層130を形成する前に、前記第1基板110に第1絶縁層120を形成してもよい。また、前記第1絶縁層120を形成した後、前記第1導電材料層130を前記第1絶縁層120に形成し、そして前記第1導電材料層130をエッチングしてパターン化する時に、前記第1絶縁層120をエッチング停止層としてもよい。ここで、前記第1絶縁層120の材料は、例えば、酸化ケイ素を含む。
【0032】
図2を参照し続けると、前記の第2導電材料層230を備えた第2ベース200は、第2導電材料層のみを備えて直接第2ベースを構成してもよく、又は、本実施例では、前記第2ベース200は更に第2基板210を含み、前記第2導電材料層230が前記第2基板210に形成されている。
【0033】
更に、前記第2導電材料層230を形成する前に、前記第2基板210に更に第2絶縁層220を形成し、また、前記第2絶縁層220を形成した後、前記第2導電材料層230を前記第2絶縁層220に形成する。ここで、前記第2絶縁層220の材料は、例えば,酸化ケイ素を含む。
【0034】
選択可能な手段において、前記第2導電材料層230の材料は前記第1導電材料層130の材料と同じであってもよい。本実施例では、前記第2導電材料層230の材料は、例えば、イオンドープ後のケイ素材料であり、前記第2導電材料層230の抵抗値は、例えば、0.01Ω~0.02Ωにある。また、低い抵抗値の第2導電材料層230に比べると、前記第2基板210は大きい抵抗値を有し、例えば、前記第2基板210の抵抗値は8Ω~12Ωにある。
【0035】
ステップS200において、具体的に
図3を参照すると、前記第2導電材料層230が前記第1導電材料層130に向かう方向に前記第2ベース200と前記第1ベース100を結合させる。
【0036】
ここで、前記第2ベース200と前記第1ベース100を結合させる時に、具体的には、前記第1ベース100中の第1導電材料層130と第2ベース200中の第2導電材料層230を互いに結合させる。本実施例では、前記第1導電材料層130と前記第2導電材料層230はいずれもイオンをドープしたケイ素材料を用いて形成され、即ち、第1ベース100と前記第2ベース200との間はケイ素-ケイ素直接結合であることに相当し、この結合プロセスは簡単であると共に、強い結合力を有する。
【0037】
ここで、前記第2導電材料層230の櫛歯領域Aが前記第1導電材料層130の第1キャビティ130aに対応するので、前記第1ベース100と前記第2ベース200を結合させた後、前記凹溝230aは即ち前記第1キャビティ130aの上方にあるようになる。また、前記第2導電材料層230のカンチレバー領域Bは即ち前記第2キャビティ130bの上方にあるようになる。
【0038】
後続の工程で、前記第2導電材料層230をパターン化することによって可動櫛歯構造を形成する。本実施例では、前記第2導電材料層230に更に第2絶縁層220と第2基板210を備えるので、第2導電材料層230をパターン化するステップの前に、前記第2基板210と前記第2絶縁層220を除去するステップを更に含む。
【0039】
具体的には
図3と
図4に示すように、前記第2基板210と前記第2絶縁層220を除去する方法は、まず、前記第2基板210を研削して前記第2基板210を部分的に除去し、次に、エッチングプロセスを用いて残りの第2基板210を前記第2絶縁層220までエッチングし、続いて、前記第2絶縁層220を除去して前記第2導電材料層230を露出させるステップを含んでもよい。
【0040】
具体的に言えば、研削プロセスによって前記第2基板210を部分的に除去し、一部の第2基板210を残し、この時に第2導電材料層230に作用する研削プロセスの機械的応力を有効に軽減でき、前記第2導電材料層230に隠れ裂け目が生じることが回避される。次に、エッチングプロセスを用いて残りの第2基板210をエッチングし、且つ残りの第2基板210をエッチングする時に更に第2絶縁層220をエッチング停止層とし、これによって、第2絶縁層220の保護で、下方の第2導電材料層230に対する損耗を回避でき、第2導電材料層230の厚さに対する精確なコントロールが有効に確保される。更に、第2基板210に対するエッチング精度を向上させるために、プラスマエッチングプロセスを用いて残りの第2基板210をエッチングしてもよい。続いて、ウェットエッチングプロセスを用いて前記第2絶縁層220を除去してもよく、例えば、前記第2絶縁層220の材料は酸化ケイ素を含んでもよく、このように前記第2絶縁層220を除去するウェットエッチングプロセスのエッチング剤は、例えば、フッ化水素酸溶液である。
【0041】
選択可能な手段において、前記第2基板210を研削するステップの前に、更に、第2基板210のエッジにトリミングプロセス(Trim)を実行して第2基板210のエッジ部分を除去するステップを含み、これによって、後で第2基板210に研削プロセスを実行する時に、薄くされた第2基板210のエッジ部分がぶら下がって切れやすいという問題を回避できる。
【0042】
ステップS300において、具体的に
図5と
図6を参照すると、少なくとも前記第2導電材料層230の前記櫛歯領域Aを前記薄膜層240までエッチングして可動櫛歯構造231を形成し、前記可動櫛歯構造231中の各櫛歯の底部はいずれも前記薄膜層240に固定される。
【0043】
具体的には、第2マスク層を用いて可動櫛歯構造のパターンを定義し、前記第2マスク層に基づいて前記第2導電材料層230をエッチングして可動櫛歯構造231を形成してもよく、その方法は、例えば、以下のステップを含む。
【0044】
第1ステップでは、
図5を参照すると、前記第2導電材料層230に第2マスク層250を形成し、前記第2マスク層250において可動櫛歯構造のパターンが定義されている。
【0045】
第2ステップでは、
図6を参照すると、前記第2マスク層250をマスクとして前記第2導電材料層230をエッチングして可動櫛歯構造231を形成し、また、前記第2導電材料層230をエッチングする時に、前記薄膜層240をエッチング停止層として前記薄膜層240までエッチングする。具体的には、前記第2導電材料層230のエッチング方法としては、例えば、エッチング精度を向上させるために、プラスマエッチングプロセスを用いて前記第2導電材料層230をエッチングする。
【0046】
説明必要なことは、前記薄膜層240を設けることによって、エッチング止めの作用を実現し、前記第2導電材料層230のエッチング工程に対するコントロール精度を向上させることができ、一方、前記薄膜層240の止めによって、薄膜層240の下方の膜層をエッチング損傷から有効に保護できる点である。なお、形成される可動櫛歯構造231中の各櫛歯の底部がいずれも前記薄膜層240に固定されるので、エッチング工程が進むに伴い、可動櫛歯構造231の捩れ空間がリリースされる場合であっても、各櫛歯がいずれも前記薄膜層240に固定されるので、各櫛歯が自由に捩れることがなく、エッチング工程での櫛歯の捩れによる櫛歯側壁損傷が回避されることも理解すべきである。特に、各櫛歯のパターンが完全且つ精確にエッチングされることを確保するために、所定の過度エッチング量を増加することが一般であり、また、高い精度のプラスマエッチングプロセスを用いてエッチングを行ってもよく、本実施例では、各櫛歯が前記薄膜層240によって安定的に固定可能なので、大きいエッチング量でも、プラスマによる櫛歯側壁損傷を有効に軽減できる。
【0047】
更に、前記第2導電材料層230をパターン化するステップの前に、そのうちの少なくとも一部が前記可動櫛歯構造231に電気的に接続するために用いられる複数の電極400を前記第2導電材料層230に形成するステップを更に含む。具体的に言えば、前記複数の電極400には互いに電気的に隔てられる第1電極が2つ含まれ、前記2つの第1電極はそれぞれ前記可動櫛歯構造231中の2組の櫛歯に電気的に接続される。
【0048】
更に、前記複数の電極400には、更に、前記第2導電材料層230のカンチレバー領域Bに電気的に接続するための第2電極が含まれている。
【0049】
本実施例では、複数の前記電極400同士は仕切口510によって互いに電気的に隔てられてもよい。具体的に言えば、前記仕切口510によって、複数の電極のうちの第1電極と前記第2電極は導電材料層(第1導電材料層130と第2導電材料層230を含む)を介して互いに接続しないことが可能になる。
【0050】
ここで、前記仕切口510の形成方法は、前記第2導電材料層230をパターン化する時に、更に前記第2導電材料層230に第2開口を形成するステップを含んでもよく、前記第2開口の底部も薄膜層まで達し且つ第1導電材料層130の第1開口130cの上方にあり、第1開口130cと第2開口を上下に互いに連通させることによって、前記仕切口510を構成し、これによって複数の互いに隔てられる電極を形成するように前記仕切口510を利用して隔離する。
【0051】
図面サイズに制限されるため、図面において模式的に二つの仕切口510のみが示され、そして模式的に二つの電極400が示されていることは理解すべきであり、ただし、異なるコンポーネントに接続するための電極400同士が仕切口510によって電気的に隔てられることは理解すべきである。また、前記第1電極の前記可動櫛歯構造231への電気的接続、前記第2電極の前記カンチレバー領域Bへの電気的接続を他の相互接続構造によって実現してもよい。
【0052】
ステップS400において、具体的に
図7を参照すると、前記薄膜層240を除去する。本実施例では、更に、前記第2マスク層250を除去するステップを含む。この時に、前記可動櫛歯構造231は即ち前記第1キャビティ130aの上方に吊設されている。
【0053】
上述したように、前記薄膜層240の厚さが薄いので、小さいエッチング量だけで前記薄膜層240を消耗し切ることができる。具体的には、気相エッチング剤を用いて前記薄膜層240をエッチングしてもよい。本実施例では、気相フッ化水素くん蒸エッチングプロセス(VHF)を用いて前記薄膜層240を除去する。ウェットエッチングプロセスに比べると、気相エッチング剤による前記薄膜層240のエッチングでは、ウェットエッチングプロセスにおいて発生しやすいエッチング液体による隣接櫛歯同士の粘着や捻れ等の問題を有効に回避できる。
【0054】
なお、選択可能な手段において、前記第1絶縁層120の材料は前記薄膜層240の材料と同じであってもよく(例えば、いずれも酸化ケイ素を含む)、このようにして、前記薄膜層240をエッチングする時に、前記第1絶縁層120を微量に消耗することになる。ただし、上述したように、薄膜層240に対するエッチング量が小さいので、第1絶縁層120を大量に消耗することがなく、第1絶縁層120がその上方の膜層を安定的に支持することを確保するのに有利である。
【0055】
更なる手段において、具体的に
図8を参照すると、前記慣性センサの形成方法は、前記第2導電材料層230に向かう表面には前記櫛歯領域Aと前記カンチレバー領域Bに向かうカバーキャビティ610が形成されている一つのカバー基板600を前記第2導電材料層230に結合させるステップを更に含む。ここで、複数の電極400のうちの一部の電極は前記カバーキャビティ610の内にカバーしてもよく、別の一部の電極は外部回路に電気的に接続するために前記カバーキャビティ610の外に位置させてもよい。
【0056】
図8を参照し続けると、前記カバー基板600と前記第2導電材料層230との間は具体的に二つの結合環によって互いに結合してもよい。例えば、前記カバー基板600が前記カバーキャビティ610を囲んだ頂面に第1結合環を形成し、前記第2導電材料層230における対応位置に第2結合環を形成し、結合時に第1結合環と第2結合環を互いに結合接続して結合密封環700を形成する。
【0057】
具体的な実施形態では、前記第1結合環と前記第2結合環の一方の材料はアルミニウムであり、他方の材料はゲルマニウムであり、このように前記第1結合環と前記第2結合環との間でアルミニウム-ゲルマニウム結合が実現される。又は、別の形態では、前記第1結合環と前記第2結合環の材料はいずれも金であり、このように前記第1結合環と前記第2結合環との間で金-金結合が実現される。又は、前記第1結合環と前記第2結合環の一方の材料は金であり、他方の材料はケイ素であり、このように前記第1結合環と前記第2結合環との間で金-ケイ素結合が実現される。
【0058】
上記の形成方法を基に、本実施例では更に慣性センサを提供し、具体的に
図7と
図8を参照すると、前記慣性センサは、基板(即ち、
図7に示す第1基板110)と、前記基板に形成された第1導電材料層130と、直接前記第1導電材料層130に結合される第2導電材料層230であって、前記第2導電材料層230に可動櫛歯構造231が形成されており、前記可動櫛歯構造231が吊設されるように、前記可動櫛歯構造231における前記基板に近い端部が前記第2導電材料層230の結合面に対して内へ縮んでいる第2導電材料層230と、を含む。
【0059】
ここで、前記第1導電材料層130には更に第1キャビティ130aが形成されていてもよく、前記可動櫛歯構造231が前記第1キャビティ130aの上方に吊設される。更に、前記第2導電材料層230は更にカンチレバー領域Bを備え、前記第1導電材料層130には、更に、いずれも前記カンチレバー領域Bの直下にある第2キャビティ130b及びストッパ131が形成されている。本実施例では、前記ストッパ131の頂面は前記第1導電材料層130の結合面よりも低い。
【0060】
本実施例では、前記第1導電材料層130と第2導電材料層230との間は例えば、ケイ素-ケイ素結合プロセスに基づいて直接結合し、このプロセスは簡単であると共に、強い結合力を有する。
【0061】
図7を参照し続けると、前記慣性センサは、前記第2導電材料層230に形成され且つ互いに電気的に隔てられている複数の電極400を更に含む。複数の電極400のうちの一部は前記可動櫛歯構造231に電気的に接続するために用いられ、更に、複数の電極400のうちの一部は前記カンチレバー領域Bに電気的に接続するために用いられる。本実施例の図面において二つの電極400のみが模式的に示されているが、実際の応用で、電極の数、位置及び対応コンポーネントとの接続方式を具体的な状況に応じて調整可能であることは理解すべきである。
【0062】
更に、前記第1導電材料層130と前記第2導電材料層230のいずれにも更に、仕切口510を構成するための、上下に互いに連通する開口が形成されており、前記仕切口510を利用して前記複数の電極400を互いに電気的に隔て、このようにしてそれぞれ独立に対応する可動櫛歯構造231とカンチレバー領域B等に電気的に接続可能となる。
【0063】
前記可動櫛歯構造231の端部が第2導電材料層230中の凹溝によって内へ縮んでいるので、可動櫛歯構造231が吊設可能となることは理解すべきである。従来のプロセスにおいて一つの間隔層を利用して吊設を図る可動櫛歯構造に比べると、本実施例は、可動櫛歯構造231を第2導電材料層から隔てることを確保できるだけでなく、形成される櫛歯構造の品質を薄膜層によって更に改善できる。
【0064】
本発明においては好ましい実施例で以上のように開示したが、上記実施例は本発明を限定するためのものではないことが説明必要である。当業者であれば、本発明の技術手段の範囲から逸脱しない限り、以上で開示した技術内容を利用して本発明の技術手段に多くの可能な変更や修飾を施したり、同等に変化した同等効果の実施例に置換したりすることができる。従って、本発明の技術手段の内容から逸脱しない限り、本発明の技術実質により以上の実施例に施すいかなる簡単な置換、同等な変化及び修飾も本発明の技術手段が保護する範囲に含まれるものとなる。
【0065】
特に説明又は指摘しない限り、明細書中の用語の「第1」、「第2」、「第3」等の記述は、各コンポーネント、要素、ステップの間の論理関係又は順序関係等を示すものではなく、明細書中の各コンポーネント、要素、ステップ等を区別するためのものに過ぎないことも理解すべきである。
【0066】
なお、ここに記載の用語は本発明の範囲を限定するものではなく、特定の実施例を記述するものに過ぎないことが理解すべきである。ここ及び添付された特許請求の範囲で使用された単数形の「一つ」と「一種」は、文脈において明らかに反対の意味を表さない限り、複数の基準を含むことに必ず注意しなければならない。例えば、「一つのステップ」又は「一つの装置」という記述は一つ又は複数のステップ又は装置を記述することを意味し、そしてサブステップ及びサブ装置を含む可能性もある。使用された接続詞全体は最も広義の意味で理解すべきである。また、用語の「又は」は、文脈において明らかに反対の意味を表さない限り、「排他的論理和」の定義ではなく、「論理和」の定義と理解すべきである。なお、本発明の実施例における方法及び/又はデバイスの実現は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組合で実行することを含んでもよい。
【符号の説明】
【0067】
100-第1ベース
110-第1基板
120-第1絶縁層
130-第1導電材料層
130a-第1キャビティ
130b-第2キャビティ
130c-第1開口
131-ストッパ
200-第2ベース
210-第2基板
220-第2絶縁層
230-第2導電材料層
231-可動櫛歯構造
230a-凹溝
240-薄膜層
400-電極
510-仕切口
600-カバー基板
610-カバーキャビティ
700-結合密封環