(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】成型方法
(51)【国際特許分類】
B29C 69/02 20060101AFI20241025BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20241025BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B29C69/02
F16J15/00 B
F16J15/10 N
(21)【出願番号】P 2023534578
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2021026895
(87)【国際公開番号】W WO2023286286
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390035909
【氏名又は名称】興国インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】森 啓将
(72)【発明者】
【氏名】平山 宏司
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002579(WO,A1)
【文献】特開2011-144852(JP,A)
【文献】特開2005-047262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 69/02
F16J 15/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び凸部を有する基材にシール材を成型する際に、前記凹部又は前記凸部と前記シール材とが交差するように前記シール材を前記基材に成型する成型方法であって、
前記シール材の原料が注入される溝を有する第1の金型に、前記原料が架橋しない温度で前記溝に前記原料を注入する第1の工程と、
前記溝に前記原料が注入された前記第1の金型と第2の金型との間に前記基材を挟み、前記原料が架橋する温度で前記原料を前記シール材として前記基材に成型する第2の工程と、
を備え、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記シール材が成型される位置から前記シール材が延びる第1方向に略直交する第2方向に所定距離離れた位置にお
いて、前記第2方向に略直交する断面を見たとき、少なくとも前記凹部及び前記凸部に対向する面が平面である、成型方法。
【請求項2】
凹部及び凸部を有する基材にシール材を成型する際に、前記凹部又は前記凸部と前記シール材とが交差するように前記シール材を前記基材に成型する成型方法であって、
前記シール材の原料が注入される溝を有する第1の金型に、前記原料が架橋しない温度で前記溝に前記原料を注入する第1の工程と、
前記溝に前記原料が注入された前記第1の金型と第2の金型との間に前記基材を挟み、前記原料が架橋する温度で前記原料を前記シール材として前記基材に成型する第2の工程と、
を備え、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記シール材が成型される位置から前記シール材が延びる第1方向に略直交する第2方向に所定距離離れた位置にお
いて、前記第2方向に略直交する断面を見たとき、少なくとも前記凹部及び前記凸部に対向する面が前記基材と接していない、成型方法。
【請求項3】
前記第1の金型は、前記第2の工程において前記基材の前記凹部又は前記凸部を押さえたときに前記基材の前記凹部又は前記凸部との間に空隙を生じる押圧部を有し、
前記第2の金型の前記基材に対向する面が平面である、請求項1又は請求項2に記載の成型方法。
【請求項4】
前記第1の金型は、前記溝の近傍に前記溝と離間した逃がし溝を有する、請求項3に記載の成型方法。
【請求項5】
前記第1の金型は、前記溝と前記逃がし溝とを連結する連結溝を有する、請求項4に記載の成型方法。
【請求項6】
前記第2の金型は、前記シール材の原料が注入される溝を有し、
前記第1の工程において、前記第2の金型の前記溝には前記原料が架橋しない温度で注入され、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記第2の金型との間に前記基材が挟まれ、前記基材の両面に前記シール材が成型される、請求項2に記載の成型方法。
【請求項7】
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記溝の近傍に前記溝と離間した逃がし溝を有する、請求項6に記載の成型方法。
【請求項8】
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記溝と前記逃がし溝とを連結する連結溝を有する、請求項7に記載の成型方法。
【請求項9】
前記基材は、前記凹部及び前記凸部を除いた部分を有し、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記第2方向に前記所定距離離れた位置にお
いて、前記第2方向に略直交する断面を見たとき、前記凹部及び前記凸部を除いた部分に対向する面が平面である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の成型方法。
【請求項10】
前記基材は、金属、樹脂又は紙である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の成型方法。
【請求項11】
前記原料は、ゴムである、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材を基材に成型する成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、樹脂又は紙等の基材にゴム等のシール材を成型する成型方法が提案されている。
図10は従来のトランスファー成型を行う成型機1000の断面図であり、(a)は成型機1000のポット1022にゴム生地1050が装入されている状態を示す図、(b)は成型機1000において型締め及びゴム生地1050の射出が行われた状態を示す図である。成型機1000は、熱板1010、1012、金型1020、1032を有している。金型1020は、ゴム生地1050が装入されるポット1022、基材1040にシール材を成型するための溝1026、ゴム生地1050を溝1026に射出するためのゲート1024を有している。金型1032は、基材1040を配置するための凹部1033を有している。成型機1000は、ゴム生地1050の装入及び基材1040の配置後、型締めによりゴム生地1050に例えば1MPa~200MPaの圧力(以下、射出圧という)を加え、溝1026にゴム生地1050を射出(注入)する。成型機1000は、熱板1010により発生した例えば80℃~220℃の熱によってゴム生地1050を架橋することにより、セパレータ等の基材1040にシール材を成型する。
【0003】
また例えば、特許文献1には、燃料電池用セルのセパレータやハードディスクドライブにおけるトップカバー等に用いられるガスケット一体型プレートの製造方法が開示されている。なお、基材には、平板だけでなく、凹部及び/又は凸部(以下、凹凸部という)を有するものがあり、基材の両面が気体や液体と接する面として使用される。このような基材では、凹凸部に交差するようにシール材を成型する場合もある。凹凸部を有する基材にシール材を成型する場合、金型は凹凸部にクリアランスを設けて基材を押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の成型方法では、クリアランス部分にシール材の原料が流れてバリが発生してしまうため、射出圧に加えバリの発生を抑制するための大きな型締め圧も必要となる。これにより、基材の凹凸部と金型とが接触する部分において、基材の破損や変形、表面状態の悪化等が生じるおそれがある。このため、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形等を低減することが求められている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形を低減することができる成型方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)凹部及び凸部を有する基材にシール材を成型する際に、前記凹部又は前記凸部と前記シール材とが交差するように前記シール材を前記基材に成型する成型方法であって、
前記シール材の原料が注入される溝を有する第1の金型に、前記原料が架橋しない温度で前記溝に前記原料を注入する第1の工程と、
前記溝に前記原料が注入された前記第1の金型と第2の金型との間に前記基材を挟み、前記原料が架橋する温度で前記原料を前記シール材として前記基材に成型する第2の工程と、
を備え、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記シール材が成型される位置から前記シール材が延びる第1方向に略直交する第2方向に所定距離離れた位置における断面を見たとき、少なくとも前記凹部及び前記凸部に対向する面が平面である、成型方法。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形を低減することができる成型方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の予備成形工程を示す断面図であり、(a)成形機のポットにゴム生地が装入されている状態を示す図、(b)成形機において型締め及びゴム生地の注入が行われた状態を示す図
【
図2】実施形態の加硫成型工程における成型機の要部を示す断面図であり、(a)成形機に1対のキャビプレート及び基材が配置された状態を示す図、(b)成形機に複数対のキャビプレート及び基材が配置された状態を示す図、(c)成型後の基材を示す断面図、(d)プレートで基材の内側の領域を密閉した状態を示す図
【
図3】実施形態のキャビプレートの構成を示す図であり、(a)キャビプレートの溝が設けられている面を示す図、(b)(a)のA-A断面図、(c)(a)のA’-A’矢視断面における斜視図
【
図4】第1の実施形態との比較のための図であり、(a)凹凸部を有する基材を示す要部の斜視図、(b)従来の成型方法でシール材を成型した場合のバリを示す要部の斜視図、(c)(b)のB0-B0断面に対応する従来の成型工程時の金型(上型)、基材、金型(下型)の要部の断面図
【
図5】第1の実施形態の予備成形工程及び加硫成型工程でシール材を基材に成型した場合を示す要部の斜視図であり、(a)逃がし溝を有しないキャビプレートを用いた場合の基材及びシール材を示す要部の斜視図、(b)(a)のB1-B1断面に対応する加硫成型工程時のキャビプレート、基材、金型(下型)を示す要部の斜視図、(c)(a)のC-C断面に対応するキャビプレートを示す要部の断面図
【
図6】第2の実施形態の予備成形工程及び加硫成型工程でシール材を基材に成型した場合を示す要部の斜視図であり、(a)逃がし溝を有するキャビプレートを用いた場合の基材及びシール材、サイドリップを示す要部の斜視図、(b)(a)のD-D断面に対応するキャビプレートを示す要部の断面図、(c)、(d)(a)のE-E断面に対応するキャビプレート及び金型の変形例を示す要部の断面図
【
図7】(a)第1、第2の実施形態の基材の変形例を示す図、(b)(a)のF-F断面に対応するキャビプレート及び金型の一例を示す要部の断面図
【
図8】(a)第1、第2の実施形態の基材の変形例を示す図、(b)(a)のG-G断面に対応する2つのキャビプレートの一例を示す要部の断面図
【
図9】第3の実施形態の(a)基材の断面の位置を示す図、(b)~(e)キャビプレート(上型)と金型(下型)の種々の組み合わせを示す図
【
図10】従来例の成型機の断面図であり、(a)成型機のポットにゴム生地が装入されている状態を示す図、(b)成型機において型締め及びゴム生地の射出が行われた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら実施形態について説明する。ここで、「成形」とは金型の使用を問わず架橋させない状態でゴムの形を作る工程をいい、「成型」とは金型を使用し架橋反応まで行ってゴムの形(架橋ゴム)を作る工程をいう。
【0012】
[実施形態]
<シール材付きの基材が完成するまでの流れ>
本実施形態の成形方法の基本的な流れを説明する。シール材が例えばゴムの場合、ゴム生地の材料が配合され混練される。使用されるゴムには、例えば、フッ素ゴム、EPDM、NBR、CR、シリコーン等の熱硬化性弾性体、熱可塑性弾性体、熱可塑性樹脂等が用いられる。次に、混練された材料に促入れが行われる。ここで促入れとは、加硫促進剤、加硫剤をゴムコンパウンドに入れ、混ぜて練ることをいう。なお、原料となるゴムと充填材や架橋剤(加硫剤)等の配合剤が均一に混合された状態もゴムコンパウンド(ゴム生地)という。次に、促入れが行われたゴム生地が分出・成形された後、後述するキャビプレートの溝にゴム生地が所定の圧力で注入(射出)され未加硫(未架橋)のまま成形が行われる。以下の説明において、未加硫(未架橋)のまま成形が行われる工程を予備成形工程という。
【0013】
予備成形工程においてゴムが注入されたキャビプレートと基材とが積層され一対となった状態で加硫(架橋)が行われる。以下の説明において加硫(架橋)が行われる工程を加硫成型工程という。なお、加硫成型工程には、シール材の原料となる物質が加硫(架橋)する温度で基材に成型される場合も含まれる。加硫(架橋)が終了し、シール材が転写(成型)された基材に例えば2次加硫が行われた後、最後に仕上げと検査等が行われ、一連の作業が終了し、シール材付きの基材が製品として完成する。
【0014】
(予備成形工程)
第1の工程である予備成形工程について説明する。
図1は、本実施形態の予備成形工程における成形機100を示す断面図であり、(a)は成形機100のポット122に、基材に成形されるシール材の原料であるゴム生地150が装入されている状態を示す図、(b)は成形機100においてキャビプレート160の溝162にゴム生地150の注入が行われた状態を示す図である。
図1には、上下方向を両矢印で示している。なお、
図1~
図3では、説明のため基材は平板であるものとし、基材に応じて形状が決定するキャビプレート160も平板であるものとする。
【0015】
成形機100は、熱板110、112、金型120、130を有している。金型120は、ゴム生地150が装入されるポット122、ゴム生地150をキャビプレート160の溝162に注入するためのゲート124を有している。金型130は、キャビプレート160を配置するための凹部133を有している。
【0016】
第1の金型であるキャビプレート160は、ゴム生地150が注入される溝162、予備成形工程又は加硫成型工程において溝162からゴム生地150を逃がすための溝(以下、逃がし溝という)164を有している。また、キャビプレート160は後述する連結溝(不図示)も有している。
【0017】
成形機100では、
図1(a)に示すように、ゴム生地150がポット122に装入され、金型130の凹部133にキャビプレート160が配置される。なお、金型120(ゲート124)と金型130(キャビプレート160の溝162)との位置決めは、公知の方法等によって実施されているものとする。その後、
図1(b)に示すように、金型120、130に圧力(以下、型締め圧ともいう)が加えられて型締めされ、ポット122からゲート124を介してゴム生地150を注入するための圧力が加えられてキャビプレート160の溝162にゴム生地150が注入される。ゴム生地150の注入時に要する圧力を注入圧といい、例えば1~200MPaである。また、
図1(b)に示す型締め時の熱板110、112において発生する熱の温度は、ゴム生地150が加硫(架橋)せず(言い換えれば、未加硫(未架橋)で)(シール材の原料となる物質が架橋せず)、かつ、流動性が維持される温度である。例えば、本実施形態では、予備成形工程を80℃の温度で実施する。この点、予備成形工程は未加硫成形工程ともいえる。なお、予備成形工程における温度は80℃に限定されず、例えばゴム生地150の粘度に応じて設定される。キャビプレート160の溝162へのゴム生地150の充填率は例えば90%~110%とするが、充填率もこの値に限定されない。
【0018】
(加硫成型工程)
第2の工程である加硫成型工程について説明する。
図2は、本実施形態の加硫成型工程における成型機200の要部を示す断面図であり、(a)は成型機200に1対のキャビプレート160及び基材140が配置された状態を示す図、(b)は成型機200に複数対(例えば3対)のキャビプレート160及び基材140が配置された状態を示す図、(c)は成型後の基材140を示す断面図、(d)はプレート180で基材140の内側の領域を密閉した状態を示す図である。
図2には、上下方向を両矢印で示している。なお、
図2(b)では2対目、3対目は1対目と同じ構成であるため符号を省略している。
【0019】
成型機200は、熱板210、212、第2の金型222(以下、単に金型222という)を有している。基材140は、例えば金属、樹脂又は紙である。基材140は、シール材172が成形される面142と、面142とは反対側の面144とを有している。基材140の面142には、予備成形工程においてゴム生地150が溝162に注入されたキャビプレート160が合わせられ、面144には金型222が合わせられる。すなわち、基材140は金型としてのキャビプレート160と金型222との間に挟まれる。なお、キャビプレート160(ゴム生地150が充填された溝162)と基材140との位置決めは、公知の方法等によって実施されているものとする。
【0020】
この状態で、ゴム生地150が加硫(架橋)する(シール材の原料となる物質が架橋する)温度、例えば120℃~220℃で熱板210、212により加熱するとともに、上下方向に所定の圧力(例えば5MPa)が加えられる。ここで、ゴム生地150の溝162への注入は予備成形工程において完了しているため、所定の圧力には注入圧は含まれず型締め圧のみとなる。言い換えれば、加硫成型工程における注入圧は0MPaである。また、所定の圧力と熱が加えられたときに、溝162内のゴム生地150が後述する連結溝(不図示)を介して逃がし溝164に逃げる。なお、溝162内のゴム生地150は、予備成形工程時に逃がし溝164に逃げてもよい。
【0021】
なお、
図2(a)はキャビプレート160と基材140の対を1対として加硫成型工程を実施した例であるが、これに限定されない。例えば、
図2(b)に示すように、3対のキャビプレート160及び基材140を一度の加硫成型工程において成型する等、複数の対としてもよい。また、
図2では、上にキャビプレート160、下に基材140としているが、上下が逆であってもよい。上下を逆にした場合、金型222は上型となる。
【0022】
以上のようにして、
図2(c)に示すように、キャビプレート160の溝162に注入されていたゴム生地150がシール材172として基材140の面142に転写(成型)される。また、
図2(d)に示すように、基材140のシール材172が成型された面142に対向するようにプレート180を合わせることで、シール材172によって内側の領域が密閉される。密閉された領域には、例えば気体や液体等が保持される。なお、逃がし溝164に逃げたゴム生地150部分が加硫(架橋)したものを、以下、サイドリップ174という。ここで、
図1、
図2では、基材140の面142にシール材172を設けているが、基材140の面144や基材140の両面(面142及び面144)にシール材172を設けてもよい。
【0023】
(キャビプレート)
キャビプレート160の構成について説明する。
図3はキャビプレート160の構成を示す図であり、(a)はキャビプレート160の溝162が設けられている面(以下、タッチ面という)168を示す図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のA’-A’矢視断面における斜視図である。キャビプレート160は、溝162、逃がし溝164、連結溝166を有している。
【0024】
溝162は、上述したようにゴム生地150が注入される溝である。例えば本実施形態では、基材140を2つの長辺と2つの短辺を有する矩形状とし、基材140の端部に沿って矩形の枠状となるようにシール材を成型するものとする。このため、
図3(a)に示すように、キャビプレート160の溝162も同様に矩形の枠状となるように設けられている。溝162は、所定の深さD1(
図3(c)参照)を有している。溝162の深さD1は、基材140に成型されるシール材の高さを決めるものでもある。なお、シール材を基材140のどの位置に、どのくらいの長さ、幅で成型するかについては、基材140及び/又はシール材の使用の目的に応じて決定されるものとし、
図3に示した形状等に限定されない。
【0025】
逃がし溝164は、溝162に離間して平行に設けられているが、平行でなくともよい。逃がし溝164は、加硫成型工程(又は予備成形工程)において溝162に注入されたゴム生地150が、加熱時に膨張して溝162の体積を上回り余剰となった場合に、余剰となったゴムを逃がすための溝である。すなわち、逃がし溝164を設けることで、加硫成型工程後のバリの発生を抑制することができる。
図3(a)に示すように、例えば本実施形態では、逃がし溝164は、溝162とキャビプレート160の4つの辺(端部)との間に設けられている。本実施形態では、逃がし溝164は連続して設けられ、溝162と同様に矩形の枠状である。
【0026】
なお、逃がし溝164は、不連続に設けられていてもよい。また、逃がし溝164は、シール材172が成型された基材140が使用される目的を阻害しない位置に設けられる。例えば、
図3(a)のキャビプレート160を用いてシール材172が成型される基材140の場合、溝162により成型されるシール材172よりも内側の領域の密閉性を保持するためにシール材172が成型される。このため、キャビプレート160では、密閉性の保持が求められていないシール材172よりも外側の領域(すなわち、基材140の端部)に相当する位置に、逃がし溝164が設けられている。
【0027】
逃がし溝164は、所定の深さD2(
図3(c)参照)を有している。逃がし溝164の深さD2は、サイドリップ174の高さを決めるものでもある。ここで、逃がし溝164の深さD2は溝162の深さD1よりも浅い(D2<D1)。言い換えれば、サイドリップ174の高さはシール材172の高さよりも低い。これは、シール材172の高さをサイドリップ174の高さよりも高くすることで、基材140にプレート180を合わせたときに、シール材172よりも内側の領域の密閉性を保持するためである(
図2(d)参照)。逃がし溝164の深さD2や、連続とするか不連続とするか、不連続とする場合の長さ、幅、形状等については、
図3に示したものに限定されず、基材140及び/又はシール材172の使用の目的やゴム生地150の粘度、注入量、注入圧等に応じて設定してもよい。
【0028】
連結溝166は、加硫成型工程(又は予備成形工程)において熱によって膨張したゴム生地150を逃がし溝164に逃がすための溝である。連結溝166は、例えば深さdが約0.005mm~約0.2mm、長さLが約1~6mmでタッチ面168よりも低くなるように形成されている。ここで、長さLは溝162に平行な方向の長さである。なお、連結溝166の深さdは溝162の深さD1及び逃がし溝164の深さD2よりも浅い(d<D2<D1)。
【0029】
連結溝166は、
図3(a)に示すように、溝162と逃がし溝164との間に、離散的に設けられている。連結溝166を設ける位置、個数、幅(言い換えれば、溝162と逃がし溝164との間隔)、長さL、深さdは、基材140及び/又はシール材172の使用の目的や、溝162及び逃がし溝164の構成、ゴム生地150の粘性、ゲート124の位置等に応じて設定すればよい。
【0030】
キャビプレート160の材料としては、加硫成型工程における加硫時の温度(以下、加硫(架橋)温度という)に耐えることができ、かつ、熱伝導性の良い、例えば鉄、SUS、アルミ、銅等の金属が好適である。また、キャビプレート160の材料として、例えばセラミックや樹脂等も上述した条件を満たすものであれば使用することができる。また、キャビプレート160は、予備成形工程及び加硫成型工程において、変形を防ぎかつ剛性が保てる程度の厚さであるものとする。
【0031】
キャビプレート160の溝162及び逃がし溝164の体積は、キャビプレート160の設計時に既知の値であるため、余剰となるゴムの量を逃がし溝164で制御することが可能となり、バリの発生を低減することができる。また、予備成形工程においてゴム生地150の注入が行われるため、加硫成型工程においてゴム生地150を基材140に成型する際には注入圧がない。このため注入圧を起因とする基材140の変形や破損を低減することができる。また、加硫成型工程において注入圧がかからないため、従来バリの発生を抑えるために型締め圧に加えていた分の圧力を低減することができる。さらに、例えばトランスファー成型やインジェクション成型等ではゲート痕が残るが、本実施形態の予備成形工程では未加硫でゴム生地150をキャビプレート160の溝162に注入するためゲート痕を小さくする又は無くすことができる。
【0032】
<凹凸形状を有する基材と従来の成型方法について>
第1の実施形態との比較のために、従来の凹部及び/又は凸部(以下、凹凸部という)を有する基材と成型方法について
図4を用いて説明する。
図4(a)は凹凸部を有する基材300を示す要部の斜視図であり、(b)は従来の成型方法でシール材172を成型した場合のバリ900を示す要部の斜視図であり、(c)は(b)のB0-B0断面に対応する従来の成型工程時の金型910(上型)、基材300、金型920(下型)の要部の断面図である。なお、
図4(b)では図を見やすくするために、基材300を破線で示している。また、上下方向を両矢印で示している。
【0033】
基材300は、面310、面320を有している。ここで、面310はシール材172が成型される面であり、面320はシール材が成型されない面であり、面310の反対側の面である。以下の説明においては、面320が下側に、面310が上側になるように基材300を配置した状態で上下方向や凹部、凸部を規定する。
【0034】
基材300は、例えば4つの凸部332と3つの凹部334を有しており、凸部332と凹部334とが連続して交互に設けられている。なお、面320側から基材300を見た場合は、凸部332が凹部となり凹部334が凸部となる。以下、凸部332及び凹部334を総称して凹凸部330ということもある。凹凸部330の長手方向に平行な方向をX方向(第2方向)とし、X方向に略直交する方向をY方向(第1方向)とする。基材300は、実際にはX方向及びY方向に延びているものとする。基材300の凹凸部330は、気体又は液体の流路として用いられる場合があり、気体又は液体は面310側を流れる場合も面320側を流れる場合もある。すなわち、基材300は、両面(面310及び面320)が製品の使用の目的を実現するために用いられる場合がある。
【0035】
凹凸部330に交差する、例えば略直交するようにシール材172を成型する場合に、従来の成型方法(例えばトランスファー成型やインジェクション成型等)を用いた場合の課題について説明する。
図10で説明したように、従来の成型方法では、ゴム生地1050に射出圧を加えて射出するときに溝1026にゴム生地1050を射出(注入)する。
図10では平らな基材1040を用いて説明したが、
図4(a)のような凹凸部330を有する基材300を2つの金型で挟んで型締めする場合、2つの金型の形状は、基材300の凹凸部330に応じた形状となる。
図4(c)に示す金型910(上型でもある)は、基材300の凹凸部330に応じた形状を有する金型である。
図4(c)に示す金型920(下型でもある)は、基材300の凹凸部330に応じた形状を有する金型である。なお、金型910は、
図10の金型1020のようにシール材172を成型するための溝(
図4(c)には不図示)を有するものとする。
【0036】
さらに、金型910及び金型920は、基材300の凹凸部330を押さえるための押圧部をそれぞれ有している。金型910は凹部334の数に応じた(例えば3つ)押圧部912を有し、金型920は凸部332の数に応じた(例えば4つ)押圧部922を有している。
図4(c)に示すように、金型910の押圧部912のY方向の長さ(以下、幅という)は、基材300の凹部334のY方向の幅よりも小さくなるように設けられている。これはY方向における金型910と基材300との位置決めに誤差が生じた場合であっても基材300に影響を与えないようにするためである。すなわち、金型910は基材300の凹凸部330に対してY方向にクリアランスSp1を有している。同様に、金型920の押圧部922のY方向の幅は、基材300の凸部332のY方向の幅よりも小さくなるように設けられている。これはY方向における金型920と基材300との位置決めに誤差が生じた場合であっても基材300に影響を与えないようにするためである。すなわち、金型920は基材300の凹凸部330に対してY方向にクリアランスSp2を有している。
【0037】
従来の成型方法では、成型時に射出圧及び型締め圧がかかり、金型910の溝(不図示)に射出されたゴム生地1050がクリアランスSp1に流れてしまい、
図4(b)に示すような凹凸部330のX方向に沿った大きなバリ900となっていた。
【0038】
<第1の実施形態の成型方法について>
(キャビプレートが逃がし溝を有しない場合)
第1の実施形態の成型方法について
図5を用いて説明する。なお、凹凸部330を有する基材300の構成は
図4(a)で説明したものと同様であるため、同じ符号を用い、説明を省略する。
図5は、第1の実施形態の予備成形工程及び加硫成型工程でシール材172を基材300に成型した場合を示す要部の斜視図である。
図5(a)は逃がし溝を有しないキャビプレート410を用いた場合の基材300及びシール材172を示す要部の斜視図であり、(b)は(a)のB1-B1断面に対応する加硫成型工程時のキャビプレート410、基材300、金型420(下型)を示す要部の斜視図であり、(c)は(a)のC-C断面に対応するキャビプレート410を示す要部の断面図である。
図4(a)では図を見やすくするために、基材300を破線で示している。また、上下方向を両矢印で示している。
【0039】
第1の金型であるキャビプレート410は、溝462、押圧部412を有している。溝462は、予備成形工程においてシール材172を成形するためにゴム生地150が注入される溝である。押圧部412は加硫成型工程において基材300の凹凸部330を押さえる部分であり、
図4(c)の金型910と同様に基材300との間にクリアランスSp3が生じるように設けられている。すなわち、押圧部412のY方向における幅は、基材300の凹部334のY方向における幅よりも小さい。キャビプレート410は、逃がし溝及び連結溝を有していない。
【0040】
このように、キャビプレート410が逃がし溝及び連結溝を有していない場合でも、加硫成型工程時に熱による膨張によって溝462の体積よりも大きくなった分のゴムはクリアランスSp3に逃げる。すなわち、クリアランスSp3を
図3で説明した逃がし溝164と同様に機能させる。以下、クリアランスSp3に逃げたゴムをサイドリップ176という。第1の実施形態では、予備成形工程においてゴム生地150の注入を行っているため、加硫成型工程時には注入圧がかからない。これにより、従来の
図4(b)のような大きなバリ900は発生しない。
【0041】
また、第2の金型である金型420は面422を有し、面422は、少なくとも基材300の凹凸部330に対向する部分が平面となっている。なお、金型420は、基材300の凹凸部330以外の部分に対向する部分も平面である。第1の実施形態では、予備成形工程と加硫成型工程とを分けており、加硫成型工程時に注入圧がないため、金型420(下型)は、
図4の金型920の押圧部922に相当する押圧部を有する必要がない。このため、基材300の凸部332における面320(シール材172を成型しない面)側は、金型420と接触することなくシール材172を基材300の面310に成型することができる。これにより、基材300の凹凸部330の破損、変形等を低減することができる。また、基材300の面320は金型420との摩擦が発生しないため、凸部332の面320側の摩擦による傷等を発生させることがなく表面状態を悪化させない。これにより、基材300の凸部332の面320が気体や液体の流路として用いられる場合に、気体又は液体の流れを阻害しない。
【0042】
なお、第1の実施形態では、基材300の凹凸部330が伸びる方向であるX方向に略直交する(約90度)Y方向にシール材172を成型したが、これに限定されず、凹凸部330に交差するように(言い換えれば平行ではない方向に)シール材172を成型する場合に適用可能である。
【0043】
以上、第1の実施形態によれば、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形を低減することができる成型方法を提供することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態で説明した
図1~
図3については同様であり、同じ符号を用い説明を省略する。
【0045】
(キャビプレートが逃がし溝を有する場合)
図6は、第2の実施形態の予備成形工程及び加硫成型工程でシール材172を基材300に成型した場合を示す要部の斜視図である。
図6(a)は逃がし溝564を有するキャビプレート510を用いた場合の基材300及びシール材172、サイドリップ174を示す要部の斜視図であり、(b)は(a)のD-D断面に対応するキャビプレート510を示す要部の断面図である。
図6(c)(d)は(a)のE-E断面に対応するキャビプレート及び金型の変形例を示す要部の断面図である。
図5(a)では図を見やすくするために、基材300を破線で示している。また、上下方向を両矢印で示している。
【0046】
第1の金型であるキャビプレート510は、溝562、逃がし溝564、押圧部(不図示)を有している。溝562は、予備成形工程においてシール材172を成形するためにゴム生地150が注入される溝である。押圧部(不図示)は
図5で説明した押圧部412と同様の構成であり説明を省略する。逃がし溝564は、加硫成型工程(又は予備成形工程)において溝562から溢れたゴム生地150を逃がすための溝である。
【0047】
このように、キャビプレート510が逃がし溝564を有している場合、加硫成型工程時に熱等による膨張によって溝562の体積よりも大きくなった分のゴムは、まず押圧部(不図示)と基材300の凹凸部330との間のクリアランスを介して逃がし溝564に逃げる。このため、逃がし溝564を基準として溝562とは反対側のクリアランスに沿って、逃がし溝564から遠ざかる方向に逃げるゴムの量を低減することができる。ここで、クリアランスに逃げたゴムを
図5と同様にサイドリップ176という。
図6(a)では描画した一部のサイドリップ176に符号を付していないが、シール材172とサイドリップ174との間にX方向にわたっているゴム部分はいずれもサイドリップ176である。なお、キャビプレート510は連結溝を有していてもよく、この場合の連結溝は
図3で説明した連結溝166と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0048】
第2の実施形態においても、予備成形工程においてゴム生地150の注入を行っているため、加硫成型工程時には注入圧がかからない。これにより、従来の
図4(b)のような大きなバリ900は発生しない。また、第2の実施形態でも、予備成形工程と加硫成型工程とを分けており、加硫成型工程時に注入圧がないため、金型(下型)(不図示)は押圧部を有する必要がない。金型(下型)の構成は、
図5(b)の金型420と同様の構成である。すなわち、金型(下型)のE-E断面に相当する断面図も
図5(a)のB1-B1断面に相当する断面図である
図5(b)と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
なお、
図6では、X方向において、溝562の両側に逃がし溝564を設けたがこれに限定されない。逃がし溝564の数、位置、長さ(Y方向の長さ)、幅(X方向の長さ)、深さ等については、基材300及び/又はシール材172の使用の目的等に応じて設定すればよい。例えば、サイドリップ174をバリの発生を抑えたい場所、例えば基材300の凹凸部330近傍にのみ設けてもよく、この場合に、サイドリップ174のY方向における開始位置及び終了位置を、凸部332を避ける位置に設定してもよい。なお、サイドリップ174のY方向における開始位置及び終了位置を、凸部332に設けてもよい。
【0050】
図6(c)、(d)は、キャビプレート及び金型の他の例を示す図である。第2の実施形態の金型(下型)は、第1の実施形態の
図5(b)で示した、平らな面422を有する金型420と同様の構成である。しかし、
図6(c)に示すように、E-E断面において、基材300の凹部334に対向するキャビプレート510aの面512aが平ら(平面)となるようにし、金型520aの方が基材300の凸部332を押圧する押圧部522を有していてもよい。なお、押圧部522と凸部332との間には、Y方向において所定のクリアランスが設けられている点は、第1の実施形態の
図5(b)のSp3と同様である。
【0051】
さらに、
図6(d)に示すように、キャビプレート510bについて凹部334に対向する面512bが平ら(平面)となるようにし、金型520bも凸部332に対向する面522bが平ら(平面)となるようにしてもよい。以上のように、X方向に略直交する断面を見たとき、キャビプレート及び金型の少なくとも一方が、基材の凹凸部に対向する平らな面を有する構成であればよい。
【0052】
第2の実施形態では、サイドリップ174を設ける構成であるため、サイドリップ174によってバリの発生を制御することが可能である。このため、サイドリップ174の近傍であっても、キャビプレート510aやキャビプレート510bのように基材300との間に隙間が生じても、ゴム生地150の隙間への流入を抑えることが可能である。また、
図6(c)、(d)のキャビプレート510a及び金型520a、又は、キャビプレート510b及び金型520bを、第1の実施形態のサイドリップ174を設けない構成に適用することも可能である。なお、第1の実施形態では、バリの発生を制御するサイドリップ174が存在しない。このため、キャビプレートの面を平らにする場合には、シール材172の端部からX方向に所定距離(例えば、1mm~2mm)離れた位置において、X方向に略直交する断面をみたときの面を平らにすればよい。
【0053】
以上のように、第2の実施形態の成型方法を用いることで、加硫成型工程において注入圧がなくなるため、キャビプレート及び/又は金型によって、凹凸部の少なくとも一部を抑える必要がなくなり、平らな面とすることができる。これにより、摩擦による傷が基材300に発生することはなく、また、基材300が押圧力によって歪むこともない。
【0054】
<基材の変形例:バルク形状>
図7(a)は第1、第2の実施形態の基材の変形例を示す図、(b)は(a)のF-F断面に対応するキャビプレート及び金型の一例を示す要部の断面図である。例えば、
図7(a)は凹凸部を有する基材600(バルク形状の基材)を示す要部の斜視図である。なお、
図7(a)では図を見やすくするために、シール材172及びサイドリップ176を破線で示している。また、サイドリップ176の符号は一部省略している。また、上下方向、X方向、Y方向を両矢印で示している。基材600は、面610、面620を有している。ここで、面610はシール材172が成型される面であり、面620はシール材が成型されない面であり、面610の反対側の面である。面620には凹凸部は設けられておらず、面620は略平らな面である。以下の説明においては、面620が下側に、面610が上側になるように基材600を配置した状態で上下方向や凹部、凸部を規定する。
【0055】
基材600は、例えば4つの凸部632と3つの凹部634を有しており、凸部632と凹部634とが連続して交互に設けられている。以下、凸部632及び凹部634の長手方向に平行な方向をX方向とし、X方向に略直交する方向をY方向とする。基材600は、実際にはX方向及びY方向に延びているものとする。基材600の凹部634は、気体又は液体の流路として用いられる場合があり、気体又は液体は面610側を流れる。このような形状の基材600に対しても、第1の実施形態及び第2の実施形態の方法によってシール材172を成型することが可能である。
【0056】
図7(b)は、
図7(a)のF-F断面における、加硫成型工程で用いられる第1の金型であるキャビプレート510cと第2の金型である金型520cを示す図である。基材600の面620は平面であるため、金型520cも平面である。一方、キャビプレート510cは、押圧部を有しておらず、基材600の凸部632及び凹部634に対向する面が平面となっており、
図6(d)で説明した構成と同様である。なお、キャビプレートは、
図5(b)のキャビプレート410のように押圧部412に相当する押圧部を有していてもよい。
【0057】
<基材の変形例:中空形状>
図8(a)は凹凸部を有する基材700を示す要部の斜視図である。なお、
図8(a)でも図を見やすくするために、シール材172、182及びサイドリップ176を破線で示している。また、サイドリップ176の符号は一部省略している。また、上下方向、X方向、Y方向を両矢印で示している。基材700は、略同じ形状の基材710と基材720とを、中空の管が形成されるように貼り付けた基材である。ここで、基材710にはシール材172が成型され、基材720にはシール材182が成型される。すなわち、
図8(a)の基材700は、両面にシール材172、182が形成される。なお、基材720側にもサイドリップ(不図示)は形成される。したがって、基材300、600のように、キャビプレート410、510、510a、510bが金型420、520a、520bとそれぞれ対になって基材300、600を挟んでいたのに対し、
図8(a)の基材700は、キャビプレート510dとキャビプレート510eとにより挟まれる(
図8(b)参照)。すなわち、第1の金型も第2の金型もシール材の原料が注入される溝を有するキャビプレートとなっている。
【0058】
基材710は凸部732と凹部734とを有しており、基材720は凸部742と凹部744とを有している。基材710の凸部732と基材720の凸部742とが中空の管を形成している。
【0059】
基材700は、例えば4組の凸部732、742と3組の凹部734、744とを有しており、凸部732、742と凹部734、744とが連続して交互に設けられている。以下、凸部732、742及び凹部734、744の長手方向に平行な方向をX方向とし、X方向に略直交する方向をY方向とする。基材700は、実際にはX方向及びY方向に延びているものとする。基材710の凸部732と基材720の凸部742とで形成される管は、気体又は液体の流路として用いられる場合がある。このような形状の基材700に対しても、加硫成型工程において注入圧がないため、管をつぶしてしまうことがなく、第1の実施形態及び第2の実施形態の方法によってシール材172、182を成型することが可能である。
【0060】
図8(b)は、
図8(a)のG-G断面における、加硫成型工程で用いられる第1の金型であるキャビプレート510dと第2の金型であるキャビプレート510eを示す図である。例えば、キャビプレート510dは押圧部を有しておらず、基材700の凸部732及び凹部734に対向する面が平面となっている。一方、キャビプレート510eは、基材720の凹部744を押圧する押圧部512eを有している。なお、キャビプレート510dが押圧部を有しキャビプレート510eが押圧部を有していなくてもよいし、キャビプレート510d及びキャビプレート510eが両方とも押圧部を有していなくてもよい。
【0061】
このように、第1の実施形態及び第2の実施形態では、第1の金型及び/又は第2の金型は、シール材172が成型される位置からシール材172が延びるY方向に略直交するX方向に所定距離離れた位置における断面を見たとき、少なくとも基材の凹部及び凸部に対向する面が平面である。このため、種々の形状の基材にシール材を成型することが可能である。
【0062】
以上、第2の実施形態によれば、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形を低減することができる成型方法を提供することができる。
【0063】
[第3の実施形態]
<基材の凹凸部以外の部分について>
キャビプレートの押圧部の有無について説明する。
図9(a)は基材の断面の位置を示す図、(b)~(e)はキャビプレートと金型の種々の組み合わせを示す図である。
図9では、基材は第1の実施形態の説明で用いた基材300を用いているが、他の形状の基材(例えば基材600、700等)であってもよい。また、キャビプレートは第1の実施形態の説明で用いた逃がし溝を有しないキャビプレート410を用いているが、第2の実施形態で説明した逃がし溝を有するキャビプレートであってもよい。また、上下方向や、X方向、Y方向についても第1の実施形態と同様である。
【0064】
図9(a)のB1-B1断面に相当するキャビプレート410、基材300、金型420の断面について、
図5(b)に示したように、キャビプレート410は、基材300の凹凸部330(ここでは凹部334)に対向する部分に押圧部412を有している。
図9(a)のB2-B2断面の位置は、B1-B1断面の位置よりもシール材172(キャビプレート410の溝462)に近い位置であり、クリアランスSp3(
図5参照)へのゴム生地150の流入が発生するため、押圧部412は基材300に接している必要がある。
【0065】
一方、
図9(a)のB3-B3断面の位置は、B1-B1断面の位置よりもシール部材172(キャビプレート410の溝462)から遠い位置であり、例えば、第2の実施形態で説明したX方向に所定距離である1mm~2mmの位置である。B3-B3断面の位置では、キャビプレート410の溝462から十分離れており、クリアランスへのゴム生地150の流入は略ない。このため、
図5(b)に示した押圧部412は不要となり、キャビプレート410のB3-B3断面に相当する位置での断面形状は、
図9(b)に示したキャビプレート510bの面512bのような形状(平ら)となる。
【0066】
<基材の凹凸部以外の部分に対向するキャビプレートの面について>
これまでは、キャビプレートに関して、基材300の凹凸部330に対向する面について説明したが、基材300の凹凸部330以外の部分に対向する面について説明する。第2の実施形態でも説明したように、
図9(a)のB3-B3断面に相当する位置では、ゴム生地150の流入が略ないため、キャビプレートは基材300に接しない構造をとることができる。
【0067】
図9(b)に示すように、基材300は、凹凸部330の両端部(図では他方の端部は省略している)に凹凸部330以外の部分340(凹凸部330を除いた部分)を有している。上述した実施形態では、例えばキャビプレート510bは、基材300の部分340に対向する押圧部514bを有し、押圧部514bは基材300の部分340に接している。なお、
図9(b)は
図6(d)と同様の図であり、同じ構成には同じ符号を付している。
【0068】
しかし、
図9(c)に示すように、B3-B3断面に相当する断面において、キャビプレート510fは、面512fと面514fとを有していてもよい。ここで面512fは、基材300の凹凸部330に対向し凸部332に接する面である。面514fは、基材300の部分340に対向し基材300の部分340に接しない面である。すなわち、キャビプレート510fの面512fと面514fとは連続する平面となっている。また、金型520fは、面522fが平らで基材300の部分340及び凹部334に接している。このように、キャビプレート510fと金型520fとの組み合わせであってもよい。
【0069】
また、
図9(d)に示すように、B3-B3断面に相当する断面において、キャビプレート510gは、面512gと面514gとを有していてもよい。ここで面512gは、基材300の凹凸部330に対向し凹凸部330に接していない面である。面514gは、基材300の部分340に対向し基材300の部分340に接している面である。また、金型520gは、面522gが平らで基材300の部分340及び凹凸部330に接していない。このように、キャビプレート510gと金型520gとの組み合わせであってもよい。
【0070】
さらに、
図9(e)に示すように、B3-B3断面に相当する断面において、キャビプレート510hは、面512hと面514hとを有していてもよい。ここで面512hは、基材300の凹凸部330に対向し凹凸部330に接していない面である。面514hは、基材300の部分340に対向し基材300の部分340に接していない面である。すなわち、キャビプレート510hの面512hと面514hとは連続する平面となっている。また、金型520hは、面522hが平らで基材300の部分340及び凹凸部330に接していない。このように、キャビプレート510hと金型520hとの組み合わせであってもよい。
【0071】
以上説明した、キャビプレートの押圧部の有無と、金型の押圧部の有無とは、種々の組み合わせを採用することが可能である。また、キャビプレート及び/又は金型が押圧部を有しない平らな面を有する構成としたときに、基材と接する又は接しないようにする組み合わせも種々に可能である。さらに、基材の形状についても、凹凸部を有していればよく、第1の実施形態で説明した基材300や、第2の実施形態で説明した基材600、700等、凹凸部を有する種々の構造の基材に、上述した組み合わせのキャビプレート及び金型を適用することが可能である。
【0072】
以上、第3の実施形態によれば、基材の凹凸部に交差する方向にシール材を成型する際に、基材の破損や変形を低減することができる成型方法を提供することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0074】
上述した実施形態では、面320はシール材172が成型されない面として説明したが、面320にもシール材172が成型されてもよい。本実施形態の成型方法では、加硫成型工程では注入圧がないため、基材300の凹凸部330に注入圧が加わらず、凹凸部330の形状を損なうことなくシール材172を成型することが可能である。
【0075】
上述した実施形態では、基材300は複数の凹部334及び凸部332を有しているが、基材300は少なくとも1つの凹部334又は凸部332を有していればよく、少なくとも1つの凹部334又は凸部332にシール材172が交差するように成形されるものであれば適用可能である。
【0076】
上述した実施形態では、キャビプレート及び/又は金型の平らな面422、512a、512b、522bは、基材300等と接していたが、接していなくてもよい。これは、加硫成型工程において注入圧がかからず、ゴム生地150の隙間への流入がないからである。
【0077】
さらに、キャビプレートの面512a、512b、512f、512g、514f、514h等、金型の面422、522b、522f、522g、522h等は、一部又は全部が基材300に接しない平面形状としたが、平面形状に限定されない。これらの面が、所定の曲率半径を有する曲面形状や、段差を有する階段形状(蛇腹形状)、テーパ形状等他の形状であってもよいし、これらの面が例えば孔(又は穴)等の所定の構造を有していてもよい。
【0078】
また、例えば、本発明は以下の趣旨を含むものとする。
[趣旨1]
本発明の成型方法は、
凹部及び凸部を有する基材にシール材を成型する際に、前記凹部又は前記凸部と前記シール材とが交差するように前記シール材を前記基材に成型する成型方法であって、
前記シール材の原料が注入される溝を有する第1の金型に、前記原料が架橋しない温度で前記溝に前記原料を注入する第1の工程と、
前記溝に前記原料が注入された前記第1の金型と第2の金型との間に前記基材を挟み、前記原料が架橋する温度で前記原料を前記シール材として前記基材に成型する第2の工程と、
を備え、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記シール材が成型される位置から前記シール材が延びる第1方向に略直交する第2方向に所定距離離れた位置における断面を見たとき、少なくとも前記凹部及び前記凸部に対向する面が平面である。
【0079】
[趣旨2]
本発明の成型方法は、
凹部及び凸部を有する基材にシール材を成型する際に、前記凹部又は前記凸部と前記シール材とが交差するように前記シール材を前記基材に成型する成型方法であって、
前記シール材の原料が注入される溝を有する第1の金型に、前記原料が架橋しない温度で前記溝に前記原料を注入する第1の工程と、
前記溝に前記原料が注入された前記第1の金型と第2の金型との間に前記基材を挟み、前記原料が架橋する温度で前記原料を前記シール材として前記基材に成型する第2の工程と、
を備え、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記シール材が成型される位置から前記シール材が延びる第1方向に略直交する第2方向に所定距離離れた位置における断面を見たとき、少なくとも前記凹部及び前記凸部に対向する面が前記基材と接していない。
【0080】
[趣旨3]
前記第1の金型は、前記第2の工程において前記基材の前記凹部又は前記凸部を押さえたときに前記基材の前記凹部又は前記凸部との間に空隙を生じる押圧部を有し、
前記第2の金型の前記基材に対向する面が平面であってもよい。
【0081】
[趣旨4]
前記第1の金型は、前記溝の近傍に前記溝と離間した逃がし溝を有してもよい。
【0082】
[趣旨5]
前記第1の金型は、前記溝と前記逃がし溝とを連結する連結溝を有してもよい。
【0083】
[趣旨6]
前記第2の金型は、前記シール材の原料が注入される溝を有し、
前記第1の工程において、前記第2の金型の前記溝には前記原料が架橋しない温度で注入され、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記第2の金型との間に前記基材が挟まれ、前記基材の両面に前記シール材が成型されてもよい。
【0084】
[趣旨7]
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記溝の近傍に前記溝と離間した逃がし溝を有してもよい。
【0085】
[趣旨8]
前記第1の金型及び前記第2の金型は、前記溝と前記逃がし溝とを連結する連結溝を有してもよい。
【0086】
[趣旨9]
前記基材は、前記凹部及び前記凸部を除いた部分を有し、
前記第1の金型及び/又は前記第2の金型は、前記第2方向に前記所定距離離れた位置における断面を見たとき、前記凹部及び前記凸部を除いた部分に対向する面が平面であってもよい。
【0087】
[趣旨10]
前記基材は、金属、樹脂又は紙であってもよい。
【0088】
[趣旨11]
前記原料は、ゴムであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 成形機
200、1000 成型機
110、112、210、212、1010、1012 熱板
120、130、222、420、910、920、1020、1032 金型
122、1022 ポット
124、1024 ゲート
133、1033 凹部
140、300、600、700、710、710、1040 基材
142、144、310、320、422、512a、512b、522b 面
150、1050 ゴム生地
160、410、 キャビプレート
162、462、562、1026 溝
164、564 逃がし溝
166 連結溝
168 タッチ面
172、182 シール材
174、176 サイドリップ
180 プレート
330 凹凸部
332、632、732、742 凸部
334、634、734、744 凹部
340 凹凸部以外の部分
412、512e、522、912、922 押圧部
510、510a、510b、510c、510d、510c キャビプレート
510d、510e、510f、510g、510h キャビプレート
512b、512f、512g、512h 面
514b、514f、514g、514h 面
520a、520b、520c 金型
520d、520e、520f、520g、520h 金型
522b、522f、522g、522h 面
900 バリ
Sp1、Sp2、Sp3 クリアランス