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  • 特許-芳香族化合物の塩素化反応方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】芳香族化合物の塩素化反応方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/12 20060101AFI20241025BHJP
   C07C 25/02 20060101ALI20241025BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241025BHJP
【FI】
C07C17/12
C07C25/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023544561
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2022001268
(87)【国際公開番号】W WO2022158937
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010151
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ナムジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジ ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンホ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5669362(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第107417490(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104591958(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1759512(KR,B1)
【文献】特開平3-47141(JP,A)
【文献】特表平10-502014(JP,A)
【文献】特開2006-219446(JP,A)
【文献】特開2002-255869(JP,A)
【文献】特開2002-145810(JP,A)
【文献】特開平10-330300(JP,A)
【文献】特開平6-293677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/12
C07C 25/02
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のカラム型反応器が直列に連結されて、前段の反応器で生成された反応生成物が後段の反応器に投入され、
塩素ガスが各反応器の下部に同一量投入されて、各反応器内で塩素化反応が行われ、
前記反応器それぞれで生成された塩化水素ガスは、各反応器から排出される芳香族化合物の塩素化反応方法であって
前記芳香族化合物はトルエンであり、
各反応器に投入される塩素ガスの気泡の直径は、0.1mm以上5mm以下であり、
各反応器の内部のガスの線速度は、10cm/sec以下であり、
前記塩素化反応は発熱反応であり、隣接する反応器の間に位置する熱交換器により、前段の反応器で生成された反応生成物は、0℃以上50℃以下の温度に冷却され、後段の反応器の下部に定量投入される、芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項2】
隣接する反応器の間に位置したバッファドラムにより、前段の反応器で生成された反応生成物は、塩化水素ガスがさらに排出されて後段の反応器に供給される、請求項1に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項3】
各反応器に位置し、複数個のホールが形成されたガススパージャ(gas-sparger)を介して前記塩素ガスが反応器内の下部に投入される、請求項1に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項4】
前記ガススパージャのホールの直径は、1~5mmである、請求項に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項5】
前記塩素ガスは、ガススパージャのホールから線速度5~10m/secで投入される、請求項1に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項6】
前記芳香族化合物:前記塩素ガスは、総モル数に対して1:1/16~1/8で投入される、請求項1に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項7】
前記各反応器内の転化率は、1~15%である、請求項に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項8】
前記反応器内の前記ガススパージャより下部に位置し、
複数個の原料供給ノズルのホールが形成されたリキッドスパージャを介して前記反応器内の下部に前記芳香族化合物が投入され、
前記芳香族化合物は、前記原料供給ノズルから線速度10~40m/secで投入される、請求項に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項9】
前記熱交換器により、前記反応生成物は、0℃以上25℃以下の温度で冷却される、請求項に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項10】
前記各反応器の反応は、主触媒および助触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項11】
前記主触媒は、FeCl、フェロセン(ferrocene)、PtO、SbClおよびFeからなる群から選択される少なくとも一つ以上である、請求項10に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項12】
前記助触媒は、SCl、チアントレン(thianthrene)、ジフェニルセレニド(diphenylselenide)、テトラクロロフェノキサチン(tetrachlorophenoxathin)、ジクロロチアントレン(dichlorothiantrene)、テトラクロロチアントレン(tetrachlorothiantrene)およびポリクロロチアントレン(polychlorothiantrene)からなる群から選択される少なくとも一つ以上である、請求項10に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【請求項13】
前記主触媒および助触媒の含量比(主触媒:助触媒)は、モル比基準1:0.59以上および1:0.76以下である、請求項10に記載の芳香族化合物の塩素化反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物の塩素化反応方法に関し、より詳細には、フォーム(foam)の発生による反応性の減少現象を防止し、液体の逆流を防止することができる芳香族化合物の塩素化反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロベンゼンまたはクロロトルエンは、様々な産業分野で使用される物質であり、ベンゼンおよびトルエンなど、芳香族化合物の塩素化反応により形成される。一具体例として、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンのようなモノクロロトルエンは、トルエンと塩素をFeClのような触媒の存在下で反応させて製造されることができる。具体的には、トルエンと塩素を触媒の存在下で反応させると、塩素原子が置換され、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンのようなモノクロロトルエンが生成される。
【0003】
従来、このように、芳香族化合物を塩素化反応させてクロロベンゼンまたはクロロトルエンを製造する時に、芳香族化合物と塩素ガスの供給比率などによってジクロロベンゼンまたはジクロロトルエンのような過塩素化した副生成物が生成されることができった。このような副生成物の生成を最大限に抑制するために、通常の生産方法では、ベンゼンまたはトルエンを塩素に対して過量使用し、反応の後、生成物と混合されている多量の未反応ベンゼンまたはトルエンを回収し、また反応物として使用している。
【0004】
しかし、通常の生産方法のように、ベンゼンまたはトルエンを塩素に対して過量使用しても、依然としてジクロロベンゼンまたはジクロロトルエンのような副生成物が相当量生成され、選択度と収率が所定の水準以上に高くならない問題がある。
【0005】
このような従来技術の問題を解決するために、当出願人が既に出願した韓国登録特許公報第10-1759512号では、反応部および冷却部を含む多段構造の一つの反応器内でトルエンと塩素を反応させて、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンの選択性を向上させることにより反応収率を高めた。
【0006】
しかし、多段構造の反応器内で、塩素化反応が行われることによって時間の経過に伴いガスの比率が高くなり、上部に行くほど塩素ガスの滞留時間が減少し、反応器内のガスの線速度の制御が難しいという欠点がある。具体的には、反応時間の経過に伴い反応器内のガスの線速度が増加することによって、所定の線速度を超えると、フォーム(foam)が発生して反応性が減少し、かえって収率が減少するという欠点があった。
【0007】
そのため、本発明者らは、塩素化反応時間が経過した時にも、高い反応性を維持して、生成物の収率を高めることができる効率的な方法について鋭意研究を重ねた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はフォーム(foam)の発生による反応性の減少現象を防止し、反応器内の液体の逆流を防止することができる芳香族化合物の塩素化反応方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による芳香族化合物の塩素化反応方法は、複数個のカラム型反応器が直列に連結されて、前段の反応器で生成された反応生成物が後段の反応器に投入され、塩素ガスが各反応器の下部に同一量投入されて、各反応器内で塩素化反応が行われ、前記反応器それぞれで生成された塩化水素ガスは、各反応器から排出される。
【0010】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記隣接する反応器の間に位置した熱交換器により、前段の反応器で生成された反応生成物は、冷却されて後段の反応器の下部に定量投入されることができる。
【0011】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記隣接する反応器の間に位置したバッファドラムにより、前段の反応器で生成された反応生成物は、塩化水素ガスがさらに排出されて後段の反応器に供給されることができる。
【0012】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、各反応器に位置し、複数個のホールが形成されたガススパージャ(gas-sparger)を介して前記塩素ガスが反応器内の下部に投入されることができる。
【0013】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記ガススパージャのホールの直径は、1~5mmであることができる。
【0014】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記塩素ガスは、ガススパージャのホールから線速度5~10m/secで投入されることができる。
【0015】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記芳香族化合物:前記塩素ガスは、総モル数に対して1:1/16~1/8で投入されることができる。
【0016】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記各反応器内の転化率は、1~15%であることができる。
【0017】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記反応器内の前記ガススパージャより下部に位置する、原料供給ノズルを介して前記反応器内の下部に前記芳香族化合物が投入され、前記芳香族化合物は、前記原料供給ノズルから線速度10~40m/secで投入されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記各反応器内のガスの線速度は7cm/sec以下であることができる。
【0019】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記熱交換器により、前記反応生成物は、0℃以上25℃以下の温度で冷却されることができる。
【0020】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記各反応器に投入される塩素ガスの気泡の直径は、0.1mm以上5mm以下であることができる。
【0021】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記各反応器の反応は、主触媒および助触媒の存在下で行われることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記主触媒は、FeCl、フェロセン(ferrocene)、PtO、SbClおよびFeからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0023】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記助触媒は、SCl、チアントレン(thianthrene)、ジフェニルセレニド(diphenylselenide)、テトラクロロフェノキサチン(tetrachlorophenoxathin)、ジクロロチアントレン(dichlorothiantrene)、テトラクロロチアントレン(tetrachlorothiantrene)およびポリクロロチアントレン(polychlorothiantrene)からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0024】
本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法において、前記主触媒および助触媒の含量(主触媒:助触媒)は、モル比基準1:0.59以上および1:0.76以下であることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による芳香族化合物の反応方法は、直列に配列された複数個の反応器に同一量の塩素ガスを供給し、前段の反応器で生成された反応生成物を後段に供給することにより、反応時間の経過に伴うガスの体積の増加によってフォームが生成され、塩素化反応性が減少することを防止し、製造される生成物の反応収率を高めることができる。
【0026】
また、反応物である生成物の転化率が向上して、未反応の反応物である塩素と反応副生成物である塩化水素(HCl)などの廃棄物の発生が減少し、環境にやさしく経済的な芳香族化合物の反応方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態による芳香族化合物の塩素化反応方法に使用される反応装置の例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
他の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解することができる意味で使用されることができる。明細書の全体にわたりある部分がある構成要素を「含む」とした時に、これは特別に反対の意味を有する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数型は、文章で特に断りのない限り複数型も含む。
【0029】
本明細書で使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時に、その数値でまたはその数値に近接した意味で使用され、本願の理解を容易にするために、正確もしくは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0030】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載の構成要素からなる群から選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味し、前記構成要素からなる群から選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0031】
従来、芳香族化合物を塩素化反応させてクロロベンゼンまたはクロロトルエンを製造する時に、芳香族化合物と塩素ガスの供給比率などに応じて、ジクロロベンゼンまたはジクロロトルエンのような過塩素化した副生成物が生成された。したがって、反応部および冷却部を含む多段構造の一つの反応器内でトルエンと塩素を反応させて、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンの選択性を向上させることにより反応収率を高めようとしたが、多段構造の反応器内で、塩素化反応が行われることによって時間の経過に伴いガスの比率が高くなり、上部に行くほど塩素ガスの滞留時間が減少し、反応器内のガスの線速度の制御が難しいという欠点がある。そのため、反応時間の経過に伴い所定の線速度を超えてフォーム(foam)が発生し、収率が減少するという欠点があった。
【0032】
本発明は、複数個のカラム型反応器が直列に連結されて、前段の反応器で生成された反応生成物が後段の反応器に投入され、塩素ガスが各反応器の下部に同一量で投入されて各反応器内で塩素化反応が行われ、反応器それぞれで生成された塩化水素ガスは、各反応器から排出される。したがって、反応時間の経過に伴うガスの体積の増加によってフォームが生成され、塩素化反応性が減少することを防止し、製造される生成物の反応収率を高めることができる。
【0033】
また、生成物の転化率が向上して、未反応の反応物である塩素と反応副生成物である塩化水素(HCl)などの廃棄物の発生が減少し、環境にやさしく経済的な芳香族化合物の反応方法を提供することができる。
【0034】
具体的には、直列に配列された複数個の反応器において、最前段に位置し、最初に芳香族化合物を含む原料に塩素ガスが供給される最前段の反応器で生成された反応生成物は、これと隣接する後段の反応器に供給され、順に各反応器を経て最後段に位置する反応器に供給されることができる。
【0035】
各反応器内では、前段の反応で生成された反応生成物、すなわち、芳香族化合物が含む原料に塩素ガスが注入されて、芳香族化合物と前記塩素ガスの塩素化反応により生成物が生成される。
【0036】
本発明の一実施形態において、芳香族化合物は、ベンゼンまたはトルエンであることができ、生成物は、これらの塩素化物であることができるが、これに限定されない。一具体例として、芳香族化合物であるトルエンに塩素ガスを供給して、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンを生成することができる。さらに具体的には、過量の芳香族化合物を各反応器の内部に供給することができ、ここで、「過量」とは、一具体例として、下記反応式1の反応物であるトルエンと塩素ガスの化学量論的反応当量比(1:1)以上であり、トルエンの量が多く存在する環境を意味する。これにより、注入される塩素ガスは、全てがトルエンと反応することができる環境になる。
【0037】
トルエンに塩素ガスを供給して、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンを生成するステップは、下記反応式1で表される反応により行われることができる。
【0038】
[反応式1]
【化1】
【0039】
このように、本発明の芳香族化合物の塩素化反応は、最終生成物に塩化水素ガスが含まれることによって反応の経過に伴いガスの比率が大きくなり、反応器内のガスの線速度が増加するにつれてフォームが発生し得る。そのため、最終生成物の収率に影響を及ぼし得る。
【0040】
本発明は、各反応器内で生成された塩化水素ガスを上部にそれぞれ排出することにより、前段の反応器から後段に反応生成物を供給する時に、反応生成物から塩化水素ガスが除去されるようにする。塩化水素ガス以外に未反応の塩素ガスも排出することができることは言うまでもない。
【0041】
このような本発明は、反応時間の経過に伴い、反応器内のガスの体積が増加して、ガスの線速度の増加によってフォームが発生されることを防止することができ、各反応器内のガスの線速度を一定に維持することができることから線速度の制御が容易であり、生成物の製造工程の設計および工程の維持に有利であることができる。さらには、反応器の内部のガスの体積の増加によって原料などの液体の供給時に逆流が発生することを防止することができる。
【0042】
本発明の一実施形態において、隣接する反応器の間に位置したバッファドラムにより、前段の反応器で生成された反応生成物は、塩化水素ガスがさらに排出された後、後段の反応器に供給されることができる。バッファドラムは、当業界で塩化水素ガスの除去時に使用されるバッファドラムを適用することができ、前段の反応器で塩化水素ガスが1次排出された反応生成物が収容可能な収容空間を形成して塩化水素ガスを2次排出して、反応生成物に含まれた塩化水素ガスを最大限に除去することができるようにする。バッファドラムで塩化水素ガスが2次除去された反応生成物は、後段の反応器に供給されることができる。このように、前段の反応器の反応生成物がバッファドラムを経て、後段の反応器に供給される場合、反応生成物の塩化水素ガスが2次除去されることができることから、高純度の生成物を生成することだけでなく、さらに反応器内のガスの線速度を容易に調節することができる。
【0043】
一方、芳香族化合物と塩素ガスの反応は、発熱反応であり、反応が進むにつれて反応液の温度が高くなる。これにより、多量の塩素ガスが過量のトルエンに投入されるほど反応がさらに進み、反応液の温度がさらに上昇する。o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンなどのように、芳香族化合物の塩素化反応生成物の選択度は、反応温度が高くなるほど減少する傾向にあるため、反応が進み過ぎる場合、選択度が減少する問題が発生し得る。
【0044】
そのため、本発明の一実施形態において、隣接する反応器の間に位置する熱交換器により、前段の反応器で生成された反応生成物は、冷却され、後段の反応器の下部に定量投入されることができる。冷却は、0℃以上および約50℃以下、具体的には5℃以上30℃の温度で行われることができるが、冷却は、塩素が液化しない範囲であれば、限定されず行われることができる。具体的には、塩素ガスの供給圧力に応じて、7.81baraでは25℃であることができ、塩素の供給圧力が5.07baraである場合には10℃であることができる。塩素ガスの供給圧力が3.7baraである場合には0℃まで冷却が可能である。しかし、塩素ガスの温度を下げるためには、冷却を行おうとする温度より低い温度の冷媒が必要であり、必要以上の冷却は、無駄な投資費用が発生する。そのため、運転圧力による塩素液化温度および運転費用などを考慮して、前記範囲が好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明の一実施形態において、塩素ガスの注入は、各反応器に位置し、複数個のホールが形成されたガススパージャ(gas-sparger)により行われることができる。具体的には、ガススパージャは、反応器の内部の下部に位置して、塩素ガス反応器内の下部に投入されることができるようにする。ガススパージャは、当業界に使用されるスパージャであれば、限定されず、いずれも適用が可能である。ガススパージャの塩素ガスが噴射されるホール(ノズル)の直径は、0.5mm~5mm、具体的には1~3mmであることができるが、これに限定されない。ただし、前記範囲で、下記塩素ガスの線速度の設定が容易であることができる。
【0046】
塩素ガスは、各反応器内に同一量で供給されることができ、ガススパージャにより、ガススパージャのホールでの線速度は、1~20m/sec、具体的には5~10m/secで投入(注入)されることができる。このような線速度で塩素ガスが注入されることによって反応器内で1~7cm/secの線速度を示すことができ、カラム型反応器で上部に行くほど線速度が低くなり、ガス粒子が絡み合って反応速度が低下し、フォームが発生する問題を解決することができる。
【0047】
反応器における塩素ガスの量は、芳香族化合物を含む原料(反応液)内の過量のトルエンの総モル数に対して、1/8未満であることができる。より具体的には、1/16超および1/8未満、または1/14以上および1/10以下であることができるが、これに限定されない。ただし、前記範囲で塩素ガスを投入することにより、工程の全体においても高い選択度でトルエンと塩素の反応が行われることができる。
【0048】
注入される塩素ガスの気泡の直径は、0.1mm以上および5mm以下であることができる。反応液に注入される塩素ガスは、均一な大きさ分布を有することが好ましい。塩素ガスの気泡の直径が小さすぎる場合、副反応生成物の反応性が大きくなって選択度が減少する問題が発生し得る。塩素ガスの気泡の直径が大きすぎる場合、塩素ガスの反応性が低くなって反応器の大きさが大きい必要があり、そのため、投資費用、運転費用など工程費用が無駄に増加する問題が発生し得る。
【0049】
本発明の一実施形態において、芳香族化合物の注入は、各反応器内のガススパージャより下部に位置する原料供給ノズルを介して行われることができる。ガススパージャより下部に位置する原料供給ノズルによって芳香族化合物を含む原料は、塩素ガスより反応器の内部の下部に供給されることができる。原料供給ノズルの芳香族化合物が噴射されるホール(ノズル)の直径は、1mm~9mm、具体的には1~5mmであることができるが、これに限定されない。芳香族化合物は、原料供給ノズルにおいて、10~60m/sec、具体的には10~40m/secの線速度で投入されることができるが、これに限定されない。ただし、前記範囲で下記の反応器内で液体の線速度を示すことができる。
【0050】
反応器内において、液体の平均線速度は、0.1cm/s以上および100cm/s以下であることができる。前記範囲で、反応器内の反応物の滞留時間が調節されて、優れた反応性を示すことができる。
【0051】
具体的には、効果的な除熱(冷却)のために、反応器の内部の液体の線速度を速くするための方法として、反応器の内部の流動を向上させると、逆流によって逆混合(Backmixing)が発生し、選択度が低下する。また、液体の線速度の増加に伴い塩素ガスの線速度が速くなると、塩素ガスの転化率が100%にならず、塩素ガスの消費量が大きくなる。塩素の転化率が低くなると、反応生成物である塩化水素ガスと塩素ガスの分離が難しくて、多量の塩素ガスが廃棄物として処理される。
【0052】
本発明は、前記範囲で芳香族化合物および塩素ガスが供給されることによって反応器内のガスは所定の線速度を有し、前記逆混合による選択度の低下および塩素ガスの浪費を防止することができる。具体的には、各反応器の内部のガスの線速度は、10cm/sec以下、さらに具体的には4cm/sec以下であることができる。前記範囲で、フォームの発生が著しく抑制され、高収率で生成物を生成することができる。ここで、ガスは、反応器内の塩素ガスだけでなく、反応によって生成される塩化水素ガスを含むことができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、内径が13cmおよび高さが600cmである反応器内に芳香族化合物が650g/minで投入されることを基準として、塩素ガスが5~10L/minで投入されることができる。前記範囲で、各反応器内の転化率が1~15%であり、優れた転化率を示すことができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、反応は、主触媒および助触媒の存在下で行われることができる。具体的には、主触媒は、FeCl、フェロセン(ferrocene)、PtO、SbClおよびFeからなる群から選択される1種以上であることができる。助触媒は、SCl、チアントレン(thianthrene)、ジフェニルセレニド(diphenylselenide)、テトラクロロフェノキサチン(tetrachlorophenoxathin)、ジクロロチアントレン(dichlorothiantrene)、テトラクロロチアントレン(tetrachlorothiantrene)およびポリクロロチアントレン(polychlorothiantrene)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0055】
また、主触媒および助触媒の含量比(主触媒:助触媒)は、モル比基準1:0.59以上および1:0.76以下であることができる。これは、本発明者らの先行発明である韓国出願特許10-2016-0069830号を参照して把握することができるように、o-クロロトルエンおよびp-クロロトルエンの選択度が約99.5%以上に向上することができる条件である。
【0056】
本発明において、主触媒と助触媒の含量を前記範囲に限定するものではないが、このような技術が本発明に適用される場合、選択度の向上の効果がさらに向上することができる。
【0057】
本発明の一実施形態による塩素化反応方法は、最後段の反応器で反応が終了した後、生成物を分離回収することができる。芳香族化合物と塩素ガスの反応によって、目的とする生成物以外にも、未反応の芳香族化合物、塩化反応しすぎた副生成物、主触媒および助触媒が残っており、これらの再使用のための分離が必要である。分離は、当業界において周知の様々な方法を採用することができる。
【0058】
以下、本発明の一実施形態による反応方法が行われる具体的な実施例について、図1を参照して直列連結された多数の反応器内で行われる場合を例に挙げて説明する。
【0059】
先ず、6個の互いに同じカラム型反応器が地面と平行な方向に一列配列され、各反応器の間にバッファドラムおよび熱交換器がそれぞれ配置される。ここで、図面に図示されているように、最後段の反応器の後段には、バッファドラムがさらに備えられることができる。
【0060】
また、最前段に位置する反応器内に位置するガススパージャおよび原料供給ノズルを介して塩素ガスおよび過量の芳香族化合物を含む原料をそれぞれ投入する。
【0061】
本発明の塩素化反応方法は、最前段の反応器から最後段の反応器まで順に反応器を経て、各反応器内で塩素化反応をしながら行われることができる。
【0062】
以下、具体的には、最前段に位置する反応器を第1反応器11、これと隣接する後段に位置する反応器を第2反応器12、およびこれと隣接して後段に位置する反応器を最後段まで順に順番を付けて、第1~第6反応器11、12、13、14、15、16とし、このような方法で、バッファドラムを第1~第6バッファドラム21、22、23、24、25、16、熱交換器を第1~第5熱交換器31、32、33、34、35に仮定して説明する。
【0063】
第1反応器11で生成された反応生成物は、第1反応器11で塩化水素ガスが1次除去された後、第1バッファドラム21を経て2次塩化水素ガスが除去されることができる。その後、第1熱交換器31に供給され、第1熱交換器31を介して冷却されて第2反応器12に供給されることができる。このような方法で、第2~第5反応器12、13、14、15および第2~第5バッファドラム22、23、24、25、第2~第5熱交換器32、33、34、35を経て、最終的に、第6反応器16に供給されることができる。第6反応器16で最終的に反応を終了した反応生成物は、第6バッファドラム26を経て塩化水素が除去されることができる。
【0064】
第1~第6反応器11、12、13、14、15、16では、それぞれ塩素ガスが同様に供給され、各反応器内で投入された塩素ガスと芳香族化合物を含む原料または前段の反応器から供給された反応生成物が反応して塩素化物を生成する。各反応器に供給される反応生成物は、第1~第5の熱交換器31、32、33、34、35を経て、0℃以上および25℃以下に冷却される。前記範囲の温度で冷却を行う理由は、上述のとおりである。
【0065】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明が下記の実施例に限定されない。
【0066】
(実施例1)
内径が13cmおよび高さが600cmである反応器内にトルエンおよび塩素ガスを投入し、ここで、塩素ガスは、ガススパージャのホールから線速度は5~10m/sec、トルエンを含む原料の投入速度は原料供給ノズルで10~40m/secに調節して、反応器内のガスの線速度を調節した。ここで、トルエンと塩素のモル比は2:1であり、触媒としてFeClを使用し、助触媒としてSClを使用し、FeClとSClの濃度は、それぞれ300ppm、150ppmであった。
【0067】
その後、ガス-液体相の総体積でのガスの体積分率であるガスホールドアップ(gas-hold up)を測定し、反応器内の気泡の大きさとガスホールドアップにより表面積を測定し、反応器に対するフォームの形成可否を判断した。スパージャのノズルでの塩素気泡は、2mmの大きさで注入された。下記表1にその結果を示した。
【0068】
【表1】
【0069】
前記表1を参照すると、線速度4以下では、フォームがほとんど発生しないことを確認することができた。
【0070】
(実施例2)
内径が13cmおよび高さが600cmである反応器内にトルエンを650g/minで投入、塩素ガスを5L/minで投入した。塩素は、ガススパージャのホールから7m/sec、トルエンは、リキッドスパージャホールから20m/secで供給した。
【0071】
反応器内のガスの線速度は、1.77cm/secであった。
【0072】
ここで、下記算式1によりトルエン転化率を測定した。
【0073】
(計算式1)
トルエン転化率=(供給量-反応後のトルエン)/供給量
【0074】
実施例2において、トルエン転化率は、理論上の転化率2.7%であると確認された。これにより、本発明は、塩素化反応設計が非常に容易であることを確認することができた。
【0075】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0076】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等もしくは等価的な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
図1