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特許7577228回り止めを有する電気機械式のブレーキ圧生成器、ブレーキ圧生成器を製造する方法、およびブレーキ圧生成器を含んでいる車両
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  • 特許-回り止めを有する電気機械式のブレーキ圧生成器、ブレーキ圧生成器を製造する方法、およびブレーキ圧生成器を含んでいる車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】回り止めを有する電気機械式のブレーキ圧生成器、ブレーキ圧生成器を製造する方法、およびブレーキ圧生成器を含んでいる車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20241025BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B60T13/74 C
F16C33/20 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023562729
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022059051
(87)【国際公開番号】W WO2022218768
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】102021203804.2
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト,セバスティアン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ウーリヒ,マルティン
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0340560(US,A1)
【文献】特開2016-223565(JP,A)
【文献】特開2018-189102(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011007025(DE,A1)
【文献】特開2020-046056(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0125481(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の液圧ブレーキシステム(10)のための電気機械式のブレーキ圧生成器(14)であって、駆動側の回転運動を並進運動へと変換するための少なくとも1つのねじ伝動機構(40)と、ハイドロリックピストン(80)を含む、ブレーキ圧生成のために前記ねじ伝動機構(40)により操作可能なピストン/シリンダユニット(18)とを有し、前記ねじ伝動機構(40)はねじ山(72)を介して協同作用するスピンドル(68)とスピンドルナット(76)を含み、前記電気機械式のブレーキ圧生成器は電気モータ式の駆動装置(38)を有し、これによって前記スピンドル(68)と前記スピンドルナット(76)が互いに相対的に回転可能であり、前記ハイドロリックピストン(80)は、回り止め(84,88)を構成する、前記ピストン/シリンダユニット(18)のハイドロリックシリンダ(64)に収容され、前記回り止め(84,88)は、軸方向に延びて摺動面(100)を形成する切欠き(88)によって、および前記切欠き(88)の中へ突入する摺動部材(84)によって構成され、それにより前記ハイドロリックピストン(80)が回転しないように固定され、前記スピンドル(68)の回転によって軸方向へスライド可能である、電気機械式のブレーキ圧生成器において、
前記摺動面(100)および/または前記摺動面(100)と協同作用する前記摺動部材(84)の接触面(96)がマイクロプロファイル(104)を有し、そのプロファイル方向は前記ハイドロリックピストン(80)の運動に対して直交するように形成されることを特徴とする、電気機械式のブレーキ圧生成器。
【請求項2】
前記摺動部材(84)は、前記摺動部材(84)に設けられ、前記摺動面(100)に対する領域に少なくとも配置される、前記接触面(96)を形成する接触シュー(92)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気機械式のブレーキ圧生成器(14)。
【請求項3】
前記接触シュー(92)はプラスチック材料で構成されることを特徴とする、請求項2に記載の電気機械式のブレーキ圧生成器(14)。
【請求項4】
前記接触面(96)および/または前記切欠き(88)の前記摺動面(100)は波形構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電気機械式のブレーキ圧生成器(14)。
【請求項5】
前記波形構造は5μmから500μmの間の高さを有する少なくとも1つの波形(108)を有することを特徴とする、請求項4に記載の電気機械式のブレーキ圧生成器(14)。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の電気機械式のブレーキ圧生成器(14)を製造する方法において、前記方法は次の各ステップを含み、
軸方向に延びる、摺動面(100)を有する切欠き(88)が形成され、前記切欠き(88)は前記摺動部材(84)とともに回り止め(84,88)を構成する、方法において、
前記摺動部材(84)の前記接触面(96)および/または前記切欠き(88)の前記摺動面(100)にマイクロプロファイル(104)が形成されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記摺動部材(84)の上に接触シュー(92)が設けられることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロプロファイル(104)は前記接触シュー(92)に射出成形の方式で形成されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロプロファイル(104)は前記接触面(96)の後加工によって形成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロプロファイル(104)は前記摺動部材(84)の上に前記接触シュー(92)が設けられるときの前記接触シュー(92)の弾性変形によって形成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
請求項に記載の、液圧ブレーキシステム(10)のための電気機械式のブレーキ圧生成器(14)を含んでいる車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧生成器に関する。このような電気機械式のブレーキ圧生成器は、特に、駆動側の回転運動をピストン/シリンダユニットのピストン操作のための並進運動へと変換するためのねじ伝動機構を含む。
【0002】
自動車の制動をするために運転者の踏力は多くの場合に十分でないため、通常、自動車にはブレーキ倍力装置が装備される。従来式のブレーキ倍力装置は、通常、内燃機関で生成される負圧によって作動する。このときエンジン圧力と周囲圧力との間の差異が、運転者の踏力に追加して倍力をピストン/シリンダユニットのピストンロッドに印加するために利用される。
【0003】
自動車の将来的な駆動コンセプトには代替的なブレーキ圧発生器が必要となる。従来式の真空ブレーキ倍力装置を作動させるために、負圧が利用できなくなるからである。そのために、この点で興味深い電気機械式のブレーキ圧生成器が開発されている。
【0004】
その場合、操作力はマスタブレーキシリンダで電気モータによって生成される。このような種類の電気機械式のブレーキ圧生成器は、補助力を提供するためばかりでなく、ブレーキバイワイヤシステムで操作力を単独で提供するためにも利用することができる。したがって電気機械式のブレーキ圧生成器は、特に自律走行という観点から利点がある。
【背景技術】
【0005】
特許文献1は、車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧生成器を開示している。この電気機械式のブレーキ圧生成器は、スピンドルとスピンドルナットとを有するねじ伝動機構を有している。スピンドルナットはハウジングとともに、ハウジングにある軸方向の切欠きに係合する、スピンドルナットのトルク支持部で構成される回り止めを形成する。回り止めによって、スピンドルナットが回転しないように固定される。スピンドルが回転すると、トルク支持部が切欠きの中で軸方向に動く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ドイツ特許出願公開第102019205911A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、いっそう長い耐用期間を有する、ねじ伝動機構を有する電気機械式のブレーキ圧生成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、請求項1の構成要件を有する、ねじ伝動機構を有する電気機械式のブレーキ圧生成器が提供される。この課題は、請求項5の構成要件を有する、このような電気機械式のブレーキ圧生成器を製造する方法によって追加的に解決される。本発明の好ましい発展例は、それぞれの従属請求項から読み取ることができる。
【0009】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧生成器を提示する。この電気機械式のブレーキ圧生成器は、駆動側の回転運動をブレーキ圧生成のための並進運動に変換するための少なくとも1つのねじ伝動機構を有し、ハイドロリックピストンを含む、ブレーキ圧生成のためにねじ伝動機構により操作可能なピストン/シリンダユニットを有する。このときねじ伝動機構は、ねじ山を介して協同作用するスピンドルとスピンドルナットとを含み、電気機械式のブレーキ圧生成器は電気モータ式の駆動装置を有し、これによってスピンドルとスピンドルナットが互いに相対的に回転可能である。
【0010】
ハイドロリックピストンは、回り止めを構成する、ピストン/シリンダユニットのハイドロリックシリンダに収容される。回り止めは、軸方向に延びて摺動面を形成する切欠きによって、および切欠きの中へ突入する摺動部材によって構成され、それによりハイドロリックピストンが回転しないように固定され、スピンドルの回転によって軸方向へスライド可能である。
【0011】
本発明の枠内では、スピンドルナットがスピンドルと直接的に接触する純粋なスピンドル伝動だけでなく、ボールねじ伝動もねじ伝動機構として理解される。ボールねじ伝動は、スピンドルとスピンドルナットの間に挿入されたボールを有するねじ伝動である。これら両方の部分は渦巻状の刻み目をそれぞれ有し、これらが共同で、ボールで充填される渦巻状の管を形成する。渦巻線に対して横向きでの、ねじ山における形状接合式の結合は、純粋なスピンドル伝動の場合のようにねじ山の溝と突起の間で行われるのではなく、ボールを介して行われる。
【0012】
本発明の意味において回転とは、スピンドルナットの軸方向軸線を中心とする回転運動であると理解される。駆動されるスピンドルの回転によって、スピンドルナットがそれに応じて軸方向へスライド可能であり、それにより、電気モータないしスピンドルの回転運動をスピンドルナットの並進運動へと変換することができる。このとき回り止めは、スピンドルナットの半径領域ないし外側円周面に配置される。
【0013】
本発明は、摺動面および/または摺動面と協同作用する摺動部材の接触面が、マイクロプロファイルを有し、そのプロファイル方向はハイドロリックピストンの運動に対して直交するように形成されることを特徴とする。
【0014】
マイクロプロファイルとは、マイクロメートルのオーダーで平坦な面と相違する構造であると理解される。したがってマイクロプロファイルにより、接触面または摺動面に隆起部と凹部が形成される。このとき隆起部と凹部は点状に設けられるのではなく、接触面の少なくとも1つの部分領域にわたって連続して延びる。このときマイクロプロファイルの隆起部または凹部の延在方向は、軸方向の運動方向に対して直交するように、ないしはスピンドルナットに対して径方向に、形成される。
【0015】
マイクロプロファイルによって、運動方向で少なくとも1つの収束していく間隙が摺動面と接触面の間で形成される。それにより、運動方向で見て隆起部の前にある領域は潤滑剤貯留部としての役目を果たす。潤滑剤貯留部により、すでにスピンドルナットのわずかな経路の内部で、摺動面と接触面の間に潤滑膜を形成することができる。これに加えて潤滑剤貯留部により、潤滑膜が引き裂かれないことが保証される。それにより、摺動面と接触面の間の固体摩擦を迅速に克服することができる。それに伴って摩耗が生じず、もしくは少なくとも低減され、それに伴って、このような電気機械式のブレーキ圧生成器の耐用期間が長くなる。同様に、スピンドルナットを動かすための力も低減される。
【0016】
1つの好ましい実施形態では、摺動部材は、摺動部材に設けられ、摺動面に対する領域に少なくとも配置される、接触面を形成する接触シューを有する。接触シューは、ハイドロリックピストンとは異なる材料で構成されるのが好ましい。接触シューは、摺動部材を全面的に包囲するのが好ましい。接触シューにより、ハイドロリックピストンの材料を摺動特性に関わりなく選択することができる。このとき接触シューの材料は、摺動面の材料と接触シューとの間で良好な摺動ペアが保証されるように選択されるのが好ましい。それによって摩耗をいっそう低減することができ、それにより耐用期間と効率が向上する。
【0017】
本発明の1つの好ましい実施形態では、接触シューはプラスチック材料で構成される。それにより、任意の形状を簡易に製作可能である。このような接触シューは、簡易かつ経済的に構成可能である。これに加えてプラスチックは軽量かつ低コストである。接触シューの領域で、特別な特性を有する数多くのプラスチックの選択肢も存在し、それにより、意図される用途について好適なプラスチックを見つけることができる。考えられる材料は、特にポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリアミド(PA)である。さらに2成分プラスチックにより、材料の好都合なトライボロジー特性を、別の材料の好都合な強度特性と組み合わせることができる。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態では、接触面および/または切欠きの摺動面は波形構造を有する。このとき波形構造は、接触面および/または摺動面の径方向の高さ全体にわたって延びるのが好ましい。波形構造により、たとえば放物線の形態のプロファイルの連続した推移が形成され、それにより、プロファイルの領域での潤滑剤の渦流化が回避される。それにより、潤滑剤膜がそのような渦流化によって引き裂かれることが回避される。それに伴って恒常的な潤滑剤膜が保証され、それにより摩耗を低減することができる。さらに、摺動部材の軸方向の大きい長さおよび/または並進距離のもとでも、十分に潤滑剤貯留が保証される。
【0019】
波形構造の高さは、接触面と摺動面の粗さによって下方に向かって区切られる。波形構造の上限は、波形の具体的な実施形態に依存し、ならびに、波形が設けられる摺動部材の軸方向長さに依存する。設計は流体シミュレーション/トライボロジーシミュレーションによって行うことができる。
【0020】
波形構造は、5μmから500μmの間の高さを有する少なくとも1つの波形を有するのが好ましい。波形は10μmから100μmの間の高さを有するのが特別に好ましい。このような高さの波形は、潤滑剤貯留部を形成するための十分な効果を実現することが判明している。これに加えてこのような高さにより、乱流に基づく潤滑剤の引裂きや渦流化が生じないことが保証される。それに伴い、このような高さによって上に説明した利点を保証することができる。特に、1つの波形に代えて複数の波形を形成することもでき、それにより、それぞれの波形の間で、ないしは波形の谷部で、潤滑剤貯留部が形成される。
【0021】
代替的な実施形態では、摺動面は、切欠きに挿入される挿入部品によって構成される。それにより、マイクロプロファイルを簡易な方式で摺動面に設けることができる。挿入部品は、プラスチック材料で構成されるのが好ましい。それにより、上で説明した利点を摺動面のプロファイルによって具体化することができる。
【0022】
本発明に課される課題は、このような電気機械式のブレーキ圧生成器を製造する方法によって追加的に解決される。この方法は、軸方向に延びる、摺動面を有する切欠きが形成されるステップを含み、切欠きは摺動部材とともに回り止めを構成する。この方法は、摺動部材の接触面および/または切欠きの摺動面にマイクロプロファイルが形成されることを特徴とする。このようなマイクロプロファイルの構成により、基本的に、上で説明した利点が実現される。
【0023】
摺動部材の上に接触シューが設けられるのが好ましい。マイクロプロファイルは、接触シューに射出成形の方式で形成されるのが好ましい。それにより、マイクロプロファイルがすでに射出成形金型で成形される。このことは、マイクロプロファイルを製作するためにその他の作業ステップが必要ないという利点を有する。
【0024】
別の好ましい実施形態では、マイクロプロファイルは接触面の後加工によって形成される。すなわちマイクロプロファイルは、別の作業ステップによって形成される。それによって生産手順を大幅に変更する必要はない。同様に、たとえば射出成形金型も使用しなくてすむ。
【0025】
1つの好都合な実施形態では、マイクロプロファイルは、摺動部材の上に接触シューが設けられるときの接触シューの弾性変形によって形成される。このとき摺動部材は、所定の方向で若干大きい外側寸法を有する。それにより、接触シューが特定の方向で拡張され、それにより接触シューの外側輪郭も最小限だけ変化する。それにより、事後的な加工を省略することができる。
【0026】
これに加えて本発明は、液圧ブレーキシステムのための電気機械式のブレーキ圧生成器を有する車両を提供する。このような車両により、電気機械式のブレーキ圧生成器に関して挙げた利点を実現することができる。1つの好ましい実施形態では、この車両は自動化された、または完全自律式の車両であってよい。
【0027】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述において詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電気機械式のブレーキ圧生成器を有する車両のための液圧ブレーキシステムを示す模式図である。
図2】電気機械式のブレーキ圧生成器の本発明によるねじ伝動機構の実施例を示す縦断面図である。
図3】接触シューの実施例を示す斜視図である。
図4】接触シューを有する摺動部材の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、電気機械式のブレーキ圧生成器14を有する車両のための液圧ブレーキシステム10の模式図が示されている。液圧ブレーキシステム10は電気機械式のブレーキ圧生成器14を含んでいる。このブレーキ圧生成器14は、ブレーキ液リザーバ22を介してブレーキ液の供給を受けるピストン/シリンダユニット18を含んでいる。
【0030】
ピストン/シリンダユニット18は運転者によって操作されるブレーキペダル26を通じて制御することができ、生じるブレーキペダルストロークがペダルストロークセンサ30によって測定されて、制御装置34に転送される。図1は基本的にブレーキ倍力装置を示しているが、ここで重要なのは、ブレーキペダルストロークがペダルストロークセンサ30を通じて測定されることである。ブレーキペダルストロークなしでのブレーキ圧生成も可能であり、それにより、自律的な走行状態でも車両を制動可能である。
【0031】
制御装置34は、測定されたブレーキペダルストロークに基づき、ブレーキ圧生成器14の電気モータ38に対する制御信号を生成する。ブレーキ圧生成器14の伝動装置(図示せず)と結合されている電気モータ38は、切り離されたシステムの枠内で制御信号に応じて、ブレーキペダル26により入力されるブレーキ力を増強する。そのためにブレーキペダル26の操作に応じて、ブレーキ圧生成器14に配置されたねじ伝動機構40が電気モータ38によって制御され、それにより、電気モータ38の回転運動が並進運動へと変換される。
【0032】
ブレーキペダル26が操作されることで、ブレーキ圧生成器14を用いて、ピストン/シリンダユニット18にあるブレーキ液が圧力のもとにおかれる。このブレーキ圧がブレーキパイプ42を介してブレーキハイドロリック46に転送される。ここではボックスとしてのみ図示されているブレーキハイドロリック46は、たとえばエレクトロニックスタビリティプログラム(ESP)を形成するためのさまざまなバルブおよびその他のコンポーネントによって構成される。ブレーキハイドロリック46は少なくとも1つのホイールブレーキ装置50と追加的に接続されており、それにより、バルブの相応の切換によってブレーキ力をホイールブレーキ装置50に印加可能である。
【0033】
図2は、電気機械式のブレーキ圧生成器14の本発明によるねじ伝動機構40の実施例の縦断面図を示している。ねじ伝動機構40は、カップ状のハイドロリックシリンダ64を形成するハウジング60を含んでいる。ハウジング60は、本実施例では金属で成形されている。これに加えてねじ伝動機構40はスピンドル68を含んでおり、これを図1に示す電気モータ38を通じて駆動可能であり、それによりスピンドル68が回転運動を行う。
【0034】
スピンドル68のねじ山72には、スピンドル68のねじ山72と係合するスピンドルナット76が配置されている。スピンドルナットは、スピンドルナット76に対して同軸に一体的に配置されたハイドロリックピストン80を形成する。スピンドルナット76と一体的に、追加的に2つの摺動部材84が構成されていて、これらはハウジング60の軸方向の切欠き88と協同作用して回り止めを形成する。中心線90よりも上方には、摺動部材84が接触シュー92を有する実施形態が示されており、この接触シューは外側に配置されており、接触面96(図3に示す)を介して、切欠き88に形成されている摺動面100と摺動接触する。中心線90よりも下方には、接触シュー92のない摺動部材84の実施形態が示されている。ここでは接触面96は摺動部材84に形成される。
【0035】
回り止め84,88により、スピンドルナット76が回転しないように固定される。このとき摺動部材84の軸方向の長さは、切欠き88の軸方向の長さよりも大幅に短い。それにより、スピンドル68が回転することでスピンドルナット76が軸方向へスライド可能である。
【0036】
図3は、接触シューの実施例の斜視図を示している。この図面には、特に、マイクロプロファイル104を有する、接触シュー92の接触面96が示されている。マイクロプロファイル104はμm単位で形成されるにすぎないので、接触面96そのものの上でマイクロプロファイル104を見分けることはできない。接触面96に対して、接触面96の左下の角にゼロ点を有する座標系が示されている。このときX軸は、切欠き88の中の摺動部材84の軸方向の運動方向に延びている。このときY軸は、この運動方向に対して直交するように延び、同時に、スピンドルナット76の径方向に相当する方向を表す。マイクロプロファイル104の高さはZ軸によって表される。
【0037】
接触シュー92の下方には、接触面96の上でのマイクロプロファイル104の推移にについて、例示として2つの実施例が示されている。ここでは、マイクロプロファイル104が波形構造を有している様子を見ることができる。左側のグラフには、ただ1つの波形108が形成されているにすぎない。それにより波形の頂点112では、切欠き88の摺動面100と接触シュー92との間の間隙が縮小する。それにより、摺動部材84の軸方向への運動のもとで、接触シュー92と摺動面100の間で潤滑剤がいっそう迅速に波形の頂点112の手前で滞留する。それにより波形の頂点112の領域では、摺動部材84の短い運動の後ですでに潤滑剤流が提供され、それにより、接触シュー92と摺動面100の間の固体摩擦が克服される。摩擦および摩耗がそれによって大幅に低減される。
【0038】
図3は右側のグラフに、接触シュー92の接触面96の上に形成された、例示として3つの波形108を有するマイクロプロファイル104を示している。ここでは左側のグラフと実質的に同じ効果が得られる。これに加えてそれぞれの波形108の間で潤滑剤リザーバがさらに提供され、これによって潤滑剤が貯留されて、固体摩擦を迅速に克服することができる。
【0039】
ここには図示しない実施例では、切欠き88に形成される摺動面100の軸方向の長さ全体にわたって、図3に示すマイクロプロファイル104が設けられていてもよい。換言すると、多数の波形108が摺動面100に設けられる。それによって接触面96の場合と同じ効果が得られ、それにより回り止め84,88の摩耗が低減され、耐用期間が長くなる。
【0040】
図4には、接触シュー92を有する摺動部材84の実施例の平面図が示されている。この実施例では、摺動部材84は両方の接触面96に向かって、ここでは誇張して示されている凸面状の領域116を有している。摺動部材84の上に、軟質材料で構成された接触シュー92が設けられている。接触シュー92は、ここでは平滑な接触面96を有する形態を有している。軟質材料により、接触シュー92が設けられていても凸面状の領域116での軟質材料の圧縮により、凸面状の形態の直接的な形成にはつながらない。しかしこのことは摺動面100での負荷のもとで、凸面状の領域116での圧縮が低減されて、図面には誇張して破線で示されている接触面96の作用が生じることにつながる。このように、波形を有するマイクロプロファイル104が生成され、それによって上に挙げた利点が実現される。
【符号の説明】
【0041】
10 ブレーキシステム
14 ブレーキ圧生成器
18 ピストン/シリンダユニット
38 電気モータ式の駆動装置
40 ねじ伝動機構
68 スピンドル
72 ねじ山
76 スピンドルナット
80 ハイドロリックピストン
84 摺動部材
84,88 回り止め
88 切欠き
96 接触面
92 接触シュー
100 摺動面
104 マイクロプロファイル
図1
図2
図3
図4