(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】コイル固定部材およびこれを用いた回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
H02K3/46 Z
(21)【出願番号】P 2023565834
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045501
(87)【国際公開番号】W WO2023105745
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】324003956
【氏名又は名称】三菱ジェネレーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓実
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-14784(JP,A)
【文献】特開2020-137383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状強化材によって形成されたスプリング構造を有する弾性層と、
前記弾性層上に形成され、半硬化状態にしたプリプレグ材料により形成された接着層と、を備え
、
前記スプリング構造は、前記繊維状強化材を含む三次元網目構造または三次元格子構造を有することを特徴とするコイル固定部材。
【請求項2】
前記弾性層は、ゴム状弾性体内に前記スプリング構造が配置されたことを特徴とする請求項1に記載のコイル固定部材。
【請求項3】
前記スプリング構造が、前記繊維状強化材を含む前記三次元網目構造を有する場合、前記三次元網目構造は、前記繊維状強化材同士が不規則に連続して絡み合う状態に加工された
ものであることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のコイル固定部材。
【請求項4】
前記繊維状強化材は、前記弾性層の厚みよりも長い繊維長の単繊維であることを特徴とする請求項3に記載のコイル固定部材。
【請求項5】
前記スプリング構造が、前記繊維状強化材を含む前記三次元格子構造を有する場合、前記三次元格子構造は、
前記繊維状強化材が規則的に連続する
ものであることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のコイル固定部材。
【請求項6】
前記接着層は、前記弾性層の表面および裏面の両面に形成されていることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載のコイル固定部材。
【請求項7】
前記ゴム状弾性体は、半硬化状態にしたプリプレグ材料により形成されていることを特徴とする
請求項2に記載のコイル固定部材。
【請求項8】
前記ゴム状弾性体は、室温よりも高い温度で硬化するシリコーン樹脂により形成されていることを特徴とする
請求項2または請求項7に記載のコイル固定部材。
【請求項9】
前記ゴム状弾性体のゴム硬度は、0度以上50度以下に調整されていることを特徴とする
請求項2、請求項7および請求項8のいずれか1項に記載のコイル固定部材。
【請求項10】
前記繊維状強化材の繊維径は、10nm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1から
請求項9のいずれか1項に記載のコイル固定部材。
【請求項11】
前記接着層および前記弾性層は導電性充填材を有しており、
前記導電性充填材は、表面がカップリング剤または表面処理剤により改質またはコーティングされていることを特徴とする請求項1から
請求項10のいずれか1項に記載のコイル固定部材。
【請求項12】
請求項1から
請求項11のいずれか1項に記載の前記コイル固定部材が、コイルと鉄心との間に配置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項13】
前記コイルは、素線導体と、前記素線導体の外層にマイカテープを巻回して形成される主絶縁層と、前記主絶縁層の外層に半導電性テープを巻回して形成される半導電層とを有しており、
前記コイルは、前記コイル固定部材を用いて鉄心スロットに固定されていることを特徴とする
請求項12に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、コイル固定部材およびこれを用いた回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水車発電機、タービン発電機の固定子などに用いられる固定子コイルでは、運転時の電磁振動によって位置ズレまたは摩耗等を起こすことのないように、固定子コイルと鉄心との間にコイル固定部材を挿入し固定している。また、このコイル固定部材は、固定子コイルおよび鉄心と接触して電気的に導通させることで、固定子コイルと鉄心との間の微小空間で発生するスロット放電を抑制する役割を担う。スロット内の鉄心面には電磁鋼板の積層ズレによって形成される凹凸が、固定子コイル外層には絶縁層の巻き段差によって形成される凹凸がある。これらの凹凸により、コイル固定部材と固定子コイルとの間、コイル固定部材と鉄心との間には非接触部分が多く存在し、熱伝導性の低い空気層が熱抵抗となることで、固定子コイルで発生した熱を鉄心に伝導し放熱するのを妨げている。
【0003】
近年、回転電機の更なる小型化または高出力化に伴って、コイル導体を流れる電流により発生する熱が増大する傾向にある。このため回転電機では、固定子コイル外部から水素または空気等を冷媒として供給すると共に、固定子の鉄心のスロット内に挿入された固定子コイルを、熱伝導性に優れたコイル固定部材により鉄心のスロット内側面に接触させた状態で支持固定し、固定子コイルから鉄心に熱を逃がす構造を採用している。
そこで、従来、シート状の半導電性基材の表面に硬化性を有する熱伝導性物質を塗布したコイル固定部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、L字形積層板の周囲を液状のゴム弾性層を介してシート状の半導電性基材で覆って形成されたコイル固定部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005‐229747号公報
【文献】特開2006‐94622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1、特許文献2に開示された従来の回転電機に用いられるコイル固定部材では、鉄心スロット内側面および固定子コイル側面との接触面積が小さく、熱伝導性の低い空気層が形成され、固定子コイルの冷却性能は良好ではない。また、運転中の固定子コイルの温度の上昇により固定子コイルを構成する有機材料が熱劣化し、電磁振動の抑制効果が低下する。これにより、固定子コイルと鉄心との間の微小空間でスロット放電が発生し、固定子コイルが損傷を受けて絶縁性能を低下させるという問題点があった。
【0006】
本願は、上述のような課題を解決するための技術を開示するものであり、冷却性能の低下を防止すると共に、絶縁性能の低下を抑制することが可能なコイル固定部材およびこれを用いた回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示されるコイル固定部材は、繊維状強化材によって形成されたスプリング構造を有する弾性層と、前記弾性層上に形成され、半硬化状態にしたプリプレグ材料により形成された接着層と、を備え、前記スプリング構造は、前記繊維状強化材を含む三次元網目構造または三次元格子構造を有するものである。
また、本願に開示される回転電機は、前記コイル固定部材が、コイルと鉄心との間に配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示されるコイル固定部材およびこれを用いた回転電機によれば、冷却性能の低下を防止すると共に、絶縁性能の低下を抑制することが可能なコイル固定部材およびこれを用いた回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1によるコイル固定部材を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すコイル固定部材の接続層および弾性層の厚みを示す断面図である。
【
図3】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
【
図4】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
【
図5】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
【
図6A】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の製造方法を示す断面図である。
【
図6B】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の製造方法を示す断面図である。
【
図6C】実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の製造方法を示す断面図である。
【
図7】実施の形態1によるコイル固定部材を有する回転電機を示す断面図である。
【
図8】実施の形態2によるコイル固定部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて実施の形態1によるコイル固定部材について説明する。
なお、各図面中において、同一符号は同一あるいは相当のものであることを示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1によるコイル固定部材を示す断面図である。また、
図2は
図1に示すコイル固定部材の接続層および弾性層の厚みを説明するための断面図である。
図1に示すように、実施の形態1のコイル固定部材1は、繊維状強化材5によって形成されたスプリング構造31を有する弾性層7と、この弾性層7の表面上に形成され、半硬化状態にしたプリプレグ材料により形成された接着層6とを有している。また、
図2に示すように、繊維状強化材5は、弾性層7の厚みD2よりも長い繊維長L1を有する単繊維であり、実施の形態1の弾性層7のスプリング構造31は、単繊維である繊維状強化材5同士が不規則に連続して絡み合う状態(ループ状)に加工された三次元網目構造(ループ構造)である。
【0012】
また、実施の形態1のコイル固定部材1は、弾性層7と、弾性層7の表面および裏面の両面に塗工された接着層6とを有する三層で形成されている。繊維状強化材5は、不規則に連続して絡み合う状態(ループ状)に加工されており、厚みD2の方向に対してスプリング機能を有している。
また、
図2に示すように、実施の形態1のコイル固定部材1は、半硬化状態の弾性層7の両面に半硬化状態の接着層6を塗布して形成されている。接着層6の厚みD1は、鉄心スロット16内の鉄心15に用いられる電磁鋼板の積層ズレによって形成される凹凸、あるいはコイル導体8外層に配置される主絶縁層9の巻き段差によって形成される凹凸を埋めることができる程度に調整されて形成されている。弾性層7の厚みD2は、鉄心スロット16内に固定子コイル24を挿入した状態で、鉄心スロット16内の壁面および固定子コイル24側面に接着層6を所定の圧力で押圧できる程度に調整されて形成されている。
【0013】
<弾性層>
弾性層7は、半硬化状態にしたプリプレグ材料により形成されている。弾性層7は、導電性を有する導電性充填材2を所定量配合したゴム状弾性体4内に、繊維状強化材5によって形成されたスプリング構造31が配置されたシート型材料で、ゴム状弾性体4を半硬化状態に加熱硬化成形したものである。
【0014】
上述した構成を前提とし、実施の形態1のコイル固定部材1の特徴である弾性層7を構成するゴム状弾性体4内に配置される繊維状強化材5について説明する。この繊維状強化材5は、ループ構造を形成できる程度の繊維長L1および曲げ弾性率を有していることが望ましい。これにより、加熱によって接着層6が軟化すると、繊維状強化材5からなるループ構造のスプリング効果によって接着層6を鉄心スロット16内の壁面または固定子コイル24側面に圧迫することが可能となる。
【0015】
上述したように、弾性層7の厚みD2は、鉄心スロット16内に固定子コイル24を挿入した状態で、鉄心スロット16内の壁面および固定子コイル24側面に接着層6を所定の圧力で押圧できる程度に調整されて形成されている。実施の形態1によるコイル固定部材1によれば、弾性層7が、接着層6を鉄心スロット16の内壁面、または固定子コイル24側面に圧迫することができるので、鉄心スロット16内の壁面と固定子コイル24側面との間に、熱伝導性の小さい空気層が形成されるのを抑制することができ、コイル導体8の冷却性能が更に向上する。
【0016】
繊維状強化材5としては、ループ構造を形成できる程度の繊維長L1を有するものであれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。このような性質を有する繊維状強化材5には、例えば、ガラスファイバー、セラミックスファイバー、ポリエステルファイバー、テトロンファイバー、ナイロンファイバーなどの絶縁性繊維状強化材、カーボンファイバー、金属繊維などの導電性繊維強化材が挙げられる。
【0017】
このような、繊維状強化材5から形成されるスプリング構造31は、上下左右方向に伸縮性があるため、外部から受ける圧縮力に応じて変形し、除荷されるとスプリング効果により形状復元する。このため、鉄心スロット16への固定子コイル24の挿入工程において、コイル固定部材1は厚さ方向から圧縮力を受けるため変形し、加熱によって接着層6が軟化すると、繊維状強化材5からなるループ構造のスプリング効果により形状復元し、接着層6を鉄心スロット16内の壁面または固定子コイル24側面に圧迫することが可能となる。
【0018】
図1および
図2に示すように、実施の形態1のコイル固定部材1は、ゴム状弾性体4内に繊維状強化材5がランダムに存在している状態である。繊維状強化材5の繊維長L1は、少なくとも弾性層7の厚みD2よりも大きい。なお、繊維状強化材5の繊維長L1が弾性層7の厚みD2よりも小さくなると、繊維同士が不規則に連続して絡み合うループ構造を形成することが困難になり、スプリング効果による所望の形状復元を発揮できない。
【0019】
実施の形態1に係るコイル固定部材1の内部における繊維状強化材5の繊維径は、10nm以上、50μm以下が望ましく、50nm以上、10μm以下がより望ましい。なお、繊維径が小さくなると、ゴム状弾性体4との混練時に繊維同士が衝突し損傷しやすく、スプリング効果による所望の形状復元を発揮できない。一方、繊維径が大きくなると、繊維間距離は比例して大きくなり、繊維同士が不規則に連続して絡み合う状態(ループ状)に加工された三次元網目構造(ループ構造)を形成することが困難になり、上述したスプリング効果による所望の形状復元性を発揮できない。
【0020】
弾性層7のゴム状弾性体4としては、室温よりも高い所定の温度で硬化するシリコーン樹脂であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。また、接着層6との密着性を改善する目的で、反応性官能基を有する変性シリコーンゴムが用いられる。これにより、後述する回転電機19に実施の形態1のコイル固定部材1を用いた場合、ゴム状弾性体4は硬化後にゴム状の弾性を示すため、回転電機19の運転中の電磁振動を抑制することが可能となる。
【0021】
弾性層7のゴム硬度は、0度以上50度以下の範囲のゴム硬度に調整されている。弾性層7は、容易に圧縮可能なため、後述する鉄心スロット16への固定子コイル24挿入工程において、良好な作業性が得られる。ゴム硬度が50°よりも大きくなると、鉄心スロット16への固定子コイル24の挿入工程において、弾性層7が容易に圧縮できず作業性が低下するため好ましくない。
【0022】
弾性層7の表面抵抗は、少なくとも100Ω以上、10kΩ以下の範囲の導電性を有する抵抗値に調整されている。ここで、弾性層7の表面抵抗値を100Ω以上、10kΩ以下の範囲に調整しているのは、表面抵抗値が100Ωよりも小さい場合、渦電流の発生による温度上昇があり、10kΩよりも表面抵抗が大きい場合には鉄心スロット16間との接触抵抗が問題となるため好ましくない。
【0023】
導電性充填材2としては、熱硬化性樹脂3の導電性より大きい導電性を有する微粒子であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。このような性質を有する導電性充填材2には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、導電性ダイヤモンド、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの導電性炭素物質、炭化ケイ素、酸化インジウム、酸化カドミウム、四酸化三鉄、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、金属被覆物質、金属などが用いられる。
【0024】
また、上記した導電性充填材2は、単独あるいは他の高熱伝導性充填材を含めた2種類以上の混合物として使用することができる。高熱伝導性充填材としては、ゴム状弾性体4の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する充填材であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。このような性質を有する高熱伝導性充填材には、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどのセラミックス焼結体が用いられる。
【0025】
また、上記した導電性充填材2および高熱伝導性充填材は、ゴム状弾性体4との密着性を改善する、もしくはゴム状弾性体4中での分散性を改善するなどの目的で、その表面をカップリング剤もしくは表面処理剤で改質またはコーティングして使用してもよい。このようなカップリング剤には、例えば、γ‐グリシドオキシ‐プロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシジルオキシプロピル‐トリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。また、表面処理剤には、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄アルミナ、シリカ、ジルコニア、シリコーンなどが挙げられる。これらのカップリング剤又は表面処理剤は、単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0026】
なお、実施の形態1に係る弾性層7の構成材料として、上述した成分に加え、実施の形態1の効果を阻害しない範囲で、添加剤を必要に応じて配合してもよい。弾性層7の材料として配合する他の添加剤には、反応性希釈剤、トルエン、キシレンなどの粘度調節剤、硬化促進剤、タレ止剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤、スリップ剤、分散剤、基材湿潤剤などが挙げられる。
【0027】
また、弾性層7内に、ゴム状弾性体4の線膨張係数より大きい線膨張係数を有する充填材を混合した構成にすると、回転電機19の運転時にコイル導体8が発熱するため、弾性層7の温度が上昇し、熱膨張量が大きくなる。コイル導体8と、鉄心スロット16内の壁面間の圧力が大きくなり、接触熱抵抗が低減するため、コイル導体8の冷却性能が更に向上する。
【0028】
<接着層>
図2に示すように、接着層6は、鉄心スロット16内の鉄心15に用いられる電磁鋼板の積層ズレによって形成される凹凸、あるいは、コイル導体8外層に配置される主絶縁層9の巻き段差によって形成される凹凸を埋めることができる厚みD1に調整されて形成されている。固定子コイル24側面と鉄心スロット16内の壁面との間に、熱伝導性の小さい空気層が形成されるのを抑制することができ、コイル導体8の冷却性能が更に向上する。
【0029】
接着層6は、導電性を有する導電性充填材2を所定量配合した熱硬化性樹脂組成物のシート材料で、半硬化状態に加熱硬化成形したものである。この接着層6の表面抵抗は、少なくとも100Ω以上、10kΩ以下の範囲の導電性を有する抵抗値に調整されている。ここで、接着層6の表面抵抗値を100Ω以上、10kΩ以下の範囲に調整しているのは、表面抵抗値が100Ωよりも小さい場合、渦電流の発生による温度上昇があり、10kΩよりも表面抵抗が大きい場合には鉄心スロット16間との接触抵抗が問題となるため好ましくないからである。
【0030】
熱硬化性樹脂3としては、室温よりも高い所定の温度で硬化する高耐熱性を有する熱硬化性樹脂であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。このような性質を有する熱硬化性樹脂3には、例えば、フェノール樹脂、イミド樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0031】
導電性充填材2としては、熱硬化性樹脂3の導電性より大きい導電性を有する微粒子であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではない。このような性質を有する導電性充填材2には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、導電性ダイヤモンド、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの導電性炭素物質、炭化ケイ素、酸化インジウム、酸化カドミウム、四酸化三鉄、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、金属被覆物質、金属などが用いられる。
【0032】
また、上記した導電性充填材2は、単独あるいは他の高熱伝導性充填材を含めた2種類以上の混合物として使用することができる。高熱伝導性充填材としては、熱硬化性樹脂3の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する充填材であれば適宜に使用可能であり、その種類は特に限定されるものではないが、このような性質を有する高熱伝導性充填材には、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどのセラミックス焼結体が用いられる。
【0033】
また、上記した導電性充填材2および高熱伝導性充填材は、熱硬化性樹脂3との密着性を改善する、もしくは熱硬化性樹脂3中での分散性を改善するなどの目的で、その表面をカップリング剤もしくは表面処理剤で改質またはコーティングして使用してもよい。このようなカップリング剤には、例えば、γ‐グリシドオキシ‐プロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシジルオキシプロピル‐トリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。また、表面処理剤には、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄アルミナ、シリカ、ジルコニア、シリコーンなどが挙げられる。これらのカップリング剤又は表面処理剤は、単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0034】
なお、実施の形態1に係る接着層6の構成材料として、上述した成分に加え、本願の効果を阻害しない範囲で、添加剤を必要に応じて配合してもよい。接着層6の材料として配合する他の添加剤には、反応性希釈剤、トルエン、キシレンなどの粘度調節剤、硬化促進剤、タレ止剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤、スリップ剤、分散剤、基材湿潤剤などが挙げられる。
【0035】
上述した実施の形態1のコイル固定部材1は、例えば以下のようにして作製される。ここでは、弾性層7を構成するゴム状弾性体4として加熱硬化型シリコーンゴム、導電性充填材2としてカーボンブラック、繊維状強化材5としてガラスファイバー、接着層6を構成する熱硬化性樹脂3としてエポキシ樹脂を選択して説明する。まず、シリコーンゴムと導電性充填材2、繊維状強化材5を混練する。カーボンブラックおよびガラスファイバーのシリコーンゴム中への混練工程は、剪断力を加えて行う剪断混合を適用することが望ましい。剪断力を加えることで、カーボンブラックおよびガラスファイバーをシリコーンゴム中に均一分散させることが可能である。シリコーンゴム、カーボンブラック、ガラスファイバーの混合物に、硬化剤を添加して混合後、シート状に加熱硬化することで目的とする弾性層7を得ることができる。
【0036】
次に、エポキシ樹脂とカーボンブラックを混練する。カーボンブラックのエポキシ樹脂中への混練工程は、剪断力を加えて行う剪断混合を適用することが望ましい。エポキシ樹脂とカーボンブラックの混合物に、硬化剤を添加して混合後、弾性層7の両面に塗布し加熱硬化することで目的とするコイル固定部材1を得ることができる。なお、上記したコイル固定部材1の製造工程において、上記した任意成分は必要に応じて適宜に添加、混合される。
【0037】
剪断混合を行う混合装置としては、剪断力を加えながら混合可能な装置であれば、適宜に使用可能でその種類は特に限定されるものではない。具体例としては、ビーズミル混合機、3本ロールミル混合機、ホモジナイザー混合機、ラボプラストミル混合機(東洋精機製作所社製)、ミラクルKCK(浅田鉄工所社製)、Distromix(エーテクジャパン社製)、ClearS55(エム・テクニック社製)などが挙げられる。
【0038】
図3は、実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
図3においては、板状のコイル固定部材1を用いた回転電機19の固定子コイル24の構造を示す。
図3に示すように、鉄心15の鉄心スロット16には、スロット底スペーサ12を介して、下コイル18となる固定子コイル24が配置されている。また、下コイル18の上方には、コイル間スペーサ11を介して上コイル17となる固定子コイル24が配置されている。上コイル17、下コイル18において、固定子コイル24と鉄心15との間には、コイル固定部材1がそれぞれ配置されている。鉄心スロット16の開口部には、上コイル17、上コイル17の側壁面に設けられたコイル固定部材1の上部に設けられた楔下スペーサ13を介してスロット楔14が打ち込まれている。固定子コイル24は、コイル固定部材1を用いて鉄心スロット16に固定されている。
【0039】
また
図3に示すように、実施の形態1の固定子コイル24は、素線導体を束ねたコイル導体8と、このコイル導体8の外層にマイカテープを巻回して形成される主絶縁層9と、この主絶縁層9の外層に半導電性テープを巻回して形成される半導電層10とを有しており、板状のコイル固定部材1を用いて鉄心スロット16に、電気絶縁ワニスを用いて加圧含浸処理、熱硬化処理を施すことで形成されている。
【0040】
図4は、実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
図4においては、U字型に配置されたコイル固定部材1を用いた回転電機19の固定子コイル24の構造を示す。
図4に示すように、実施の形態1の固定子コイル24は、素線導体を束ねたコイル導体8と、このコイル導体8の外層にマイカテープを巻回して形成される主絶縁層9と、この主絶縁層9の外層に、半導電性テープを巻回して形成される半導電層10とを有しており、U字型のコイル固定部材1を用いて鉄心スロット16に、電気絶縁ワニスを用いて加圧含浸処理、熱硬化処理を施すことで形成されている。
実施の形態1によるコイル固定部材1によれば、固定子コイル24の周囲の熱抵抗低減効果、固定子コイル24と鉄心スロット16の内壁面との同電位確保の効果がさらに得られる。
【0041】
コイル固定部材1は、板状のコイル固定部材1をU字型に配置して形成されてもよいし、U字型に成形したコイル固定部材1を用いてもよい。
図4に示すように、鉄心15の鉄心スロット16には、スロット底スペーサ12とこのスロット底スペーサ12の表面上に形成されたコイル固定部材1を介して、下コイル18となる固定子コイル24が配置されている。また、下コイル18の上方には、コイル間スペーサ11とこのコイル間スペーサ11の表面上に設けられたコイル固定部材1を介して上コイル17となる固定子コイル24が配置されている。上コイル17、下コイル18において、固定子コイル24と鉄心15との間には、コイル固定部材1がそれぞれ配置されている。鉄心スロット16の開口部には、上コイル17、上コイル17の側壁面に設けられたコイル固定部材1の上部に設けられた楔下スペーサ13を介してスロット楔14が打ち込まれている。固定子コイル24は、コイル固定部材1を用いて鉄心スロット16に固定されている。
【0042】
図5は、実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の固定子コイルを示す断面図である。
図5においては、L字型に配置されたコイル固定部材1を用いた回転電機19の固定子コイル24の構造を示す。
図5に示すように、実施の形態1の固定子コイル24は、素線導体を束ねたコイル導体8と、このコイル導体8の外層にマイカテープを巻回して形成される主絶縁層9と、この主絶縁層9の外層に、半導電性テープを巻回して形成される半導電層10とを有しており、L字型のコイル固定部材1を用いて鉄心スロット16に、電気絶縁ワニスを用いて加圧含浸処理、熱硬化処理を施すことで形成されている。
【0043】
実施の形態1によるコイル固定部材1によれば、
図4と同様に、固定子コイル24の周囲の熱抵抗低減効果、固定子コイル24と鉄心スロット16の内壁面との同電位確保の効果がさらに得られる。また、コイル固定部材1は、板状のコイル固定部材1をL字型に配置して形成されてもよいし、L字型に成形したコイル固定部材1を用いてもよい。
【0044】
図6Aから
図6Cは、実施の形態1によるコイル固定部材を用いた回転電機の製造方法を示す断面図である。
図6Aから
図6Cにおいては、例えば、
図3に示す回転電機19の固定子コイル24の構造を事例とした回転電機の製造方法を説明するが、
図4および
図5に示す構造についても
図6Aから
図6Cに示す製造方法と同様に形成される。
図6Aに示すように、実施の形態1によるコイル固定部材1を鉄心スロット16内に挿入し、
図6Bに示すように、固定子コイル24と鉄心スロット16の内壁面の間に配置する。コイル固定部材1は、固定子コイル24と鉄心スロット16の内壁面との間に挿入されることにより、ゴム状弾性体4である弾性層7が圧縮される。
【0045】
次に、コイル固定部材1を鉄心スロット16内に挿入した後に加熱する。これにより、例えばエポキシ樹脂である接着層6が軟化し、弾性層7は、繊維状強化材5からなる三次元網目構造(ループ構造)のスプリング効果により厚さ方向に形状変化する。
図6Bに示すように、固定子コイル24の表面には、コイル固定部材1の接着層6との間に空隙32が存在している。軟化した接着層6は、
図6Cに示すように、弾性層7の復元力により例えば固定子コイル24の表面または鉄心スロット16の内壁面に押し付けられた状態に変形し、例えば固定子コイル24の表面または鉄心スロット16の内壁面に密接した状態となりその後硬化する。接着層6を鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の側面に押し付け、ほぼ全面積で接着することが可能となり、剥離し難い強固な固定子コイル24が得られる。また、鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の表面の空隙32は、接着層6によって埋め込まれており、凹凸または空隙32が存在しないため、熱伝導率の小さい空気層の形成を抑制することができる。
【0046】
さらに、固定子コイル24の挿入作業性を向上させるために、コイル固定部材1の配置方法は、
図4、
図5に示したように上コイル17、下コイル18で同じ配置にする必要はない。例えば、コイル固定部材1を下コイル18のみにU字型に配置してもよい。また、上コイル17のみにU字型に配置してもよい。
また、固定子コイル24の挿入作業性を向上させるために、コイル固定部材1を下コイル18のみにU字型に鉄心スロット16内側面に配置し、上コイル17のみにL字型に鉄心スロット16内側面に配置してもよい。
【0047】
このように実施の形態1のコイル固定部材1を用いた回転電機19の固定子コイル24は、弾性層7と接着層6から形成されているので、例えば回転電機19の運転時の固定子コイル24の発熱またはスロット放電の影響により、固定子コイル24が損傷し絶縁性能が損なわれてしまうことなどを抑制できる。要するに、実施の形態1に係るコイル固定部材1では、鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の側面の表面形状に応じて接着層6が変形し密接することができ、鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の側面に圧迫することができる。これにより、実施の形態1に係るコイル固定部材1では、固定子コイル24と鉄心スロット16との間に熱伝導性の小さい空気層が形成されることを抑制し、鉄心スロット16と固定子コイル24とを電気的に導通すると共に、高い冷却性能を発揮することができる。
【0048】
図7は、実施の形態1によるコイル固定部材を有する回転電機を示す断面図である。
図7に示すように、回転電機19は、フレーム20内に、ガスクーラー21、電機子である固定子22、及び界磁である回転子26を備えている。フレーム20内には、発電によって生じる熱を冷却するための冷媒が循環し、ガスクーラー21によって循環している冷媒を冷却している。固定子22は、円筒状の固定子コア23、固定子コイル24を有している。固定子コア23は、フレーム20内に固定され、固定子コイル24は、固定子コア23の内周部に固定されている。固定子コア23の軸方向における固定子コイル24の両端部は、固定子コア23から突出しており、コイルエンド25を形成している。
【0049】
一方のコイルエンド25にはメインリードが接続され、回転電機19によって発電された電力をフレーム20の外部に取り出している。回転子26は、回転軸27、回転子コア28、第一保持環29、第二保持環30を有している。回転軸27は、回転子コア28の軸方向における両端から、回転子コア28の軸方向外側へ各々突出し、回転軸27および回転子コア28は、固定子コア23と同軸に配置されている。回転子26が回転することにより、回転子コア28から発生する磁界が固定子コイル24を横切ることで、固定子コイル24に起電力が発生し、電流が発生する。第一保持環29および第二保持環30は、回転子コア28の軸方向の両端に取り付けられ、回転子コア28に巻かれた界磁巻線を固定している。
【0050】
上述した実施の形態1による固定子コイル24を用いて形成された回転電機19は、例えば回転電機19の運転時の固定子コイル24の発熱またはスロット放電の影響により、固定子コイル24が損傷し絶縁性能が損なわれてしまうことなどを抑制できる。要するに、実施の形態1に係るコイル固定部材1およびこれを用いた回転電機19の固定子コイル24では、接着層6が、鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の側面の表面形状に応じて変形し密接することができ、鉄心スロット16の内壁面または固定子コイル24の側面に圧迫することができるので、固定子コイル24と鉄心スロット16との間に熱伝導性の小さい空気層が形成されることを抑制し、鉄心スロット16と固定子コイル24とを電気的に導通すると共に、高い冷却性能を発揮することができる。
【0051】
以上のように、実施の形態1によるコイル固定部材1およびこれを用いた回転電機19について、特に固定子コイル24の構造と製造方法を中心として具体的に説明を行ったが、実施の形態1によるコイル固定部材1は上述した回転電機19にのみ限定して適用されるものではない。前述したように、
図7に示す固定子コイル24を有するモータなどの回転電機19(回転機)に適用してもよいし、発電機用の固定子コイルに使用することも可能である。また、コイル固定部材1の適用例は、上述した回転電機19(回転機)用の固定子22などにおける固定子コイル24にのみ限られるものではなく、電気機械全般に適用可能である。
【0052】
実施の形態2.
図8は実施の形態2によるコイル固定部材を示す断面図である。
図8において、実施の形態1におけるコイル固定部材1を説明するために用いた符号と同一の符号をつけたものは、同一または対応する構成を示しており、その説明を省略する。
実施の形態2によるコイル固定部材1は、
図8に示すように、スプリング構造31を有する弾性層7と、この弾性層7の両面に塗工された接着層6とから構成された三層で形成されている。弾性層7のスプリング構造31は、規則的に連続する繊維状強化材5からなる三次元格子構造であり、三次元格子構造で構成された繊維状強化材5は、弾性層7の厚みD2方向に対してスプリング機能を有している。
【0053】
図8に示すように、上記したコイル固定部材1は、ゴム状弾性体4内に繊維状強化材5が規則的に連続する三次元格子構造を形成している状態である。繊維状強化材5からなる三次元格子構造はスプリング効果による形状復元を有する。このような性質を有する三次元格子構造の格子形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形などが挙げられる。また、ゴム状弾性体4内に三次元格子構造の格子層は少なくとも一層以上が存在し、ゴム状弾性体4内の全体に亘って存在していることが望ましい。なお、ゴム状弾性体4内の全体に亘って存在しない場合、三次元格子構造のスプリング効果による所望の形状復元性を発揮できない。
【0054】
実施の形態2によるコイル固定部材1において使用する材料は、実施の形態1と同様であるが、実施の形態1では、単繊維の繊維状強化材5がシリコーンゴム中に均一分散されているのに対して、実施の形態2では、単繊維の繊維状強化材5ではなく、規則的に連続する三次元格子構造を有する繊維状強化材5を使用している。
【0055】
上述した実施の形態2のコイル固定部材1は、例えば以下のようにして作製される。ここでは弾性層7を構成するゴム状弾性体4として加熱硬化型シリコーンゴム、導電性充填材2としてカーボンブラック、繊維状強化材5としてガラスファイバー、接着層6を構成する熱硬化性樹脂3としてエポキシ樹脂を選択して説明する。まず、シリコーンゴムと導電性充填材2を混練する。カーボンブラックのシリコーンゴム中への混練工程は、剪断力を加えて行う剪断混合を適用することが望ましい。剪断力を加えることで、カーボンブラックをシリコーンゴム中に均一分散させることが可能である。シリコーンゴム、カーボンブラックの混合物に、硬化剤を添加して混合後、繊維状強化材5を塗布し、シート状に加熱硬化することで目的とする弾性層7を得ることができる。
【0056】
次に、エポキシ樹脂とカーボンブラックを混練する。カーボンブラックのエポキシ樹脂中への混練工程は、剪断力を加えて行う剪断混合を適用することが望ましい。エポキシ樹脂とカーボンブラックの混合物に、硬化剤を添加して混合後、弾性層7の両面に塗布し加熱硬化することで目的とするコイル固定部材1を得ることができる。なお、上記したコイル固定部材1の製造工程において、上記した任意成分は必要に応じて適宜に添加、混合される。
実施の形態2によるコイル固定部材1によれば、弾性層7のスプリング構造31は、規則的に連続する三次元格子構造を有する繊維状強化材5により形成されている。弾性層7を構成するゴム状弾性体4内に繊維状強化材5が規則的に三次元格子構造を形成していると、主絶縁層9と半導電層10との界面に存在するボイド内部で放電が発生する際に、溶融して近傍粒子と連結することが可能である。
【0057】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0058】
1 コイル固定部材、2 導電性充填材、3 熱硬化性樹脂、4 ゴム状弾性体、5 繊維状強化材、6 接着層、7 弾性層、8 コイル導体、9 主絶縁層、10 半導電層、11 コイル間スペーサ、12 スロット底スペーサ、13 楔下スペーサ、14 スロット楔、15 鉄心、16 鉄心スロット、17 上コイル、18 下コイル、19 回転電機、20 フレーム、21 ガスクーラー、22 固定子、23 固定子コア、24 固定子コイル、25 コイルエンド、26 回転子、27 回転軸、28 回転子コア、29 第一保持環、30 第二保持環、31 スプリング構造、32 空隙、D1、D2 厚み、L1 繊維長