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特許7577233処理システム、内視鏡システム及び画像処理システムの作動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】処理システム、内視鏡システム及び画像処理システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20241025BHJP
   A61B 1/273 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
A61B1/045 623
A61B1/273
A61B1/045 614
A61B1/045 618
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024014165
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】63/534,537
(32)【優先日】2023-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 直裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 英敏
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第114176775(CN,B)
【文献】国際公開第2019/049229(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0255461(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0375656(US,A1)
【文献】特開2000-237202(JP,A)
【文献】特開2008-012049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアを含むプロセッサを含み、
前記プロセッサは、
口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得し、
前記十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを前記内視鏡画像から推定し、
推定された前記深度マップから前記口側隆起の頂上ラインを推定し、
推定された前記頂上ラインに基づくガイド表示を、前記内視鏡画像に重畳して表示する処理を行うことを特徴とする処理システム。
【請求項2】
請求項1の処理システムにおいて、
前記ガイド表示は、
ESTにおける切開ガイド表示であることを特徴とする処理システム。
【請求項3】
請求項1の処理システムにおいて、
入力された画像から前記深度マップを推定するように学習された学習済みモデルを記憶するメモリを含み、
前記プロセッサは、
前記学習済みモデルに前記内視鏡画像を入力することで、前記深度マップを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項4】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
処置具が挿入されていない状態の第1内視鏡画像と、前記処置具が挿入された状態の第2内視鏡画像とに基づいて、前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項5】
請求項4の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記第1内視鏡画像から推定された第1深度マップと、前記第2内視鏡画像から推定された第2深度マップとの差分に基づいて、前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項6】
請求項4の処理システムにおいて、
入力された画像から前記深度マップを推定するように学習された学習済みモデルを記憶するメモリを含み、
前記プロセッサは、
前記学習済みモデルに前記第1内視鏡画像を入力することで、第1深度マップを推定し、
前記学習済みモデルに前記第2内視鏡画像を入力することで、第2深度マップを推定し、
前記第1深度マップと前記第2深度マップとに基づいて、前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項7】
請求項6の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記第1内視鏡画像に写る前記十二指腸乳頭部の位置と、前記第2内視鏡画像に写る前記十二指腸乳頭部の位置とが位置合わせされた状態において、前記第1深度マップと前記第2深度マップとの差分に基づいて前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項8】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記内視鏡画像に基づいて乳頭開口部を検出し、
前記乳頭開口部を起点として前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項9】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記内視鏡画像に基づいて、処置具のうち前記内視鏡画像に写る部分を検出し、
検出された前記部分の先端を起点として前記頂上ラインを推定することを特徴とする処理システム。
【請求項10】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
推定された前記頂上ラインの乳頭開口部側の一端を中心として、推定した前記頂上ラインを12時方向にしたときにおける、前記12時方向から11時方向の間を示す前記ガイド表示を前記内視鏡画像に重畳表示することを特徴とする処理システム。
【請求項11】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
ハチマキひだの位置情報を推定し、
推定した前記ハチマキひだの前記位置情報に基づいて切開長の情報を推定し、
推定した前記切開長に基づく長さの前記ガイド表示を前記内視鏡画像に重畳表示することを特徴とする処理システム。
【請求項12】
請求項1の処理システムにおいて、
前記プロセッサは、
前記内視鏡画像に基づいて十二指腸管腔内の圧力が適正圧力の範囲内であるか否かを推定し、
前記十二指腸管腔内の圧力が前記適正圧力の範囲外である場合、前記十二指腸管腔内の圧力を前記適正圧力の範囲内になるように送気または脱気する処理を行うことを特徴とする処理システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項の処理システムと、
内視鏡と、
を含むことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項14】
画像処理システムの作動方法であって、
前記画像処理システムは、
口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得し、
前記十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを前記内視鏡画像から推定し、
推定された前記深度マップから前記口側隆起の頂上ラインを推定し、
推定された前記頂上ラインに基づくガイド表示を、前記内視鏡画像に重畳して表示することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項15】
請求項14の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
ESTにおける切開ガイド表示であって、推定された前記頂上ラインに基づく前記ガイド表示を、前記内視鏡画像に重畳して表示することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項16】
請求項14の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
処置具が挿入されていない状態の第1内視鏡画像と、前記処置具が挿入された状態の第2内視鏡画像とに基づいて、前記頂上ラインを推定することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項17】
請求項16の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
前記第1内視鏡画像から推定された第1深度マップと、前記第2内視鏡画像から推定された第2深度マップとの差分に基づいて、前記頂上ラインを推定することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項18】
請求項17の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
前記第1内視鏡画像に写る前記十二指腸乳頭部の位置と、前記第2内視鏡画像に写る前記十二指腸乳頭部の位置とが位置合わせされた状態において、前記第1深度マップと前記第2深度マップとの差分に基づいて前記頂上ラインを推定することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項19】
請求項14の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
前記内視鏡画像に基づいて乳頭開口部をさらに検出
前記乳頭開口部を起点として前記頂上ラインを推定することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【請求項20】
請求項14の画像処理システムの作動方法において、
前記画像処理システムは、
ハチマキひだの位置情報を推定
推定した前記ハチマキひだの前記位置情報に基づいて切開長の情報をさらに推定
推定した前記切開長に基づく長さの前記ガイド表示を前記内視鏡画像に重畳表示することを特徴とする画像処理システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理システム、内視鏡システム及び画像処理システムの作動方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いて胆管がん等の処置を行う手法が知られている。特許文献1には、立体視できる内視鏡を用いて十二指腸乳頭部の立体形状を推定する手法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-167272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胆管への処置については、どの方向に切開等を行うべきかについて支援する等、更なる利便性の向上が求められている。特許文献1は、切開のガイド表示を行う手法を開示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ハードウェアを含むプロセッサを含み、前記プロセッサは、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得し、前記十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを前記内視鏡画像から推定し、推定された前記深度マップから前記口側隆起の頂上ラインを推定し、推定された前記頂上ラインに基づくガイド表示を、前記内視鏡画像に重畳して表示する処理を行う処理システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、上記した処理システムと、内視鏡と、を含む内視鏡システムに関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得する処理と、前記十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを前記内視鏡画像から推定する処理と、推定された前記深度マップから前記口側隆起の頂上ラインを推定する処理と、推定された前記頂上ラインに基づくガイド表示を、前記内視鏡画像に重畳して表示する処理を行う処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】処理システム等の構成例を説明する図。
図2】EST等の処置に関係する臓器及び組織を示す図。
図3】十二指腸乳頭部を模式的に説明する図。
図4】十二指腸乳頭部を模式的に説明する別の図。
図5】ESTを行うときの十二指腸乳頭部等を模式的に説明する図。
図6】ESTナイフの先端部を概念的に説明する図。
図7】ESTで切開すべき方向を説明する図。
図8】本実施形態の処理例を説明するフローチャート。
図9】頂上ライン推定処理の処理例を説明するフローチャート。
図10】処理部の構成例を説明する図。
図11】処理システムの別の構成例を説明する図。
図12】頂上ラインの推定を説明する図。
図13】本実施形態の手法の作用効果を説明する図。
図14】処理システム等の別の構成例を説明する図。
図15】圧力判定部が行う処理例を説明するフローチャート。
図16】処理部の別の構成例を説明する図。
図17】内視鏡画像取得処理の処理例を説明するフローチャート。
図18】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図19】第1深度マップと第2深度マップについて説明する図。
図20】処理部の別の構成例を説明する図。
図21】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図22】処理部の別の構成例を説明する図。
図23】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図24】点群データの生成について説明する図。
図25】第1点群データと第2点群データについて説明する図。
図26】処理部の別の構成例を説明する図。
図27】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図28】乳頭開口部を起点とする頂上ラインについて説明する図。
図29】処理部の別の構成例を説明する図。
図30】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図31】処置具の一端を起点とする頂上ラインについて説明する図。
図32】処理部の別の構成例を説明する図。
図33】頂上ライン推定処理の別の処理例を説明するフローチャート。
図34】切開領域について説明する図。
図35】臓器の構造が変更されている例を説明する図。
図36】臓器の構造と切開領域の表示との関係を説明する図。
図37】処理部の別の構成例を説明する図。
図38】切開長推定部が行う処理例を説明するフローチャート。
図39】切開長推定部が行う処理による作用効果を説明する図。
図40】切開長推定部の別の構成例を説明する図。
図41】切開長推定部が行う別の処理例を説明するフローチャート。
図42】切開長推定部の別の構成例を説明する図。
図43】切開長推定部が行う別の処理例を説明するフローチャート。
図44】処理部の別の構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態の内視鏡システム1及び内視鏡システム1に含まれる処理システム3の構成例を説明するブロック図である。本実施形態の処理システム3は、プロセッサ10を含む。本実施形態のプロセッサ10は、下記のハードウェアにより構成される。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子で構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシタ等である。
【0011】
また、例えば本実施形態の処理システム3は、図1に不図示のメモリ20と、メモリ20に記憶された情報に基づいて動作するプロセッサ10を含んで構成されてもよい。これにより、プロセッサ10は、表示制御部50、処理部100等として機能できる。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。なお、プログラムは、例えば図11で後述する学習済みモデル22を含んでもよい。プロセッサ10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を用いることができる。メモリ20は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリ20はコンピューターにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサ10により実行されることで、各部の機能が処理として実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサ10のハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。また、メモリ20は記憶装置とも呼ぶ。なお、説明の便宜上、本実施形態の手法に係る処理等の主体は、断りが無い限りプロセッサ10で統一しているが、ソフトウェアとしての処理部100等に適宜読み替えることができる。また、図1では処理システム3は一のプロセッサ10を含むように図示しているが、本実施形態の手法を複数のプロセッサ10によって実現することを妨げるものではない。つまり、表示制御部50と処理部100は別々のプロセッサ10で構成してもよい。処理部100に含まれる各部についても同様である。例えば図10で後述する深度推定部110と頂上ライン推定部120を別々のプロセッサ10で実現してもよい。図14図16図20図22図26図29図32図37図40図42図44についても同様である。
【0012】
表示制御部50は、内視鏡5の先端部に設けられた不図示のイメージャからの画像信号を受信し、その画像信号から表示画像を生成して図1に不図示の表示装置9に表示する処理を行う。本実施形態において、内視鏡5の先端部に設けられた不図示のイメージャにより撮像された画像を内視鏡画像という。また、内視鏡画像は、当該カメラで撮像された映像を静止画にしたものであってもよい。本実施形態においては、図2で後述するように、当該撮像装置は、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像する。つまり、本実施形態のプロセッサ10は、表示制御部50として機能し、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得する。十二指腸乳頭部は、詳細は後述するが、十二指腸において、乳頭開口部及びその周辺構造を含む部分をいう。周辺構造とは例えば口側隆起、ハチマキひだ、輪状ひだ、小帯等をいう。また、本実施形態では、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像とは、上記した周辺構造のうち少なくとも口側隆起が写っている内視鏡画像をいう。
【0013】
処理部100は、処理システム3の各部を制御する。また、詳細は後述するが、処理部100は、本実施形態の手法に係る処理を実行する各部として機能する。例えば処理部100は、表示制御部50が生成した表示画像データを受信し、処理部100に含まれる各部によって各種データを生成し、生成した各種データを表示制御部50に送信する。これにより、表示制御部50は、イメージャで撮像した画像データと、処理部100から受信した各種データに基づいて表示装置9を制御する。これにより、内視鏡画像と後述のガイド表示GM等が重畳して表示装置9に表示されることが実現する。処理部100に含まれる各部は、例えば後述する頂上ライン推定部120、切開領域生成部160、切開長推定部170等である。
【0014】
内視鏡5は、例えば医療向けの軟性内視鏡である。以下に述べるように、本実施形態はERCPを行った後のESTを行う際のガイド表示GMを表示する手法に係るものである。この場合における内視鏡5は、詳細には図示していないが、内視鏡先端部の側面にイメージャの対物レンズ、照明レンズ及び処置具チャネルの開口が設けられた側視型内視鏡が主に用いられる。なお、ERCPは内視鏡的逆行性胆管膵管造影(Endoscopic Retrograde Cholangio Pancreatography)の略であり、ESTは内視鏡的乳頭括約筋切開術(Endoscopic Sphincterotomy)の略である。
【0015】
図2に、上記した手技に関係する臓器及び組織を示す。なお、臓器は、複数種類の組織が集まって独自の構造を構成すると共に特定の機能を有するものである。例えば図2では、肝臓、胆のう、膵臓、食道、胃及び十二指腸が、臓器に該当する。組織は、血管、筋肉及び皮膚等のように、関連する細胞が結合して構成されたものである。例えば図2では、胆管及び膵管が、組織に該当する。なお、図2に示す臓器の構造の例は、図35で後述する外科的治療等によって変更されていない一般的な例を示している。臓器の構造とは、消化管の解剖学的構造とも言うことができる。なお消化管とは、胃および腸管である。ここでの胃は、胃切除を行った場合、残胃部を含む。また腸管とは小腸、大腸等を含む。また小腸は十二指腸、空腸、回腸を含む。図2に示す臓器の構造の場合、ERCPの手技において、胃側から十二指腸に向かって内視鏡先端部が挿入される。
【0016】
そして、内視鏡5のイメージャに乳頭部がおおまかに写る位置まで挿入部が挿入され、十二指腸乳頭部に対して内視鏡5を位置合わせする。具体的には、例えば内視鏡5のイメージャの対物レンズが十二指腸乳頭部に正対し、かつイメージャの撮像領域の中央に当該十二指腸乳頭部が位置するように、内視鏡先端部の位置の調整が行われる。
【0017】
図3は、十二指腸乳頭部を正対して見たときの十二指腸乳頭部の形態を模式的に示す図である。図3に示すように口側隆起、ハチマキひだ、輪状ひだ、小帯と呼ばれる構造が、乳頭開口部の周辺に存在している。口側隆起は、乳頭開口部から尾根状に伸びる隆起である。なお、図3において、互いに直交する方向として方向DR11、方向DR12、方向DR13を説明の便宜上図示している。本実施形態では、方向DR12が向かう側を「上側」と呼ぶことがある。また、図3に示した十二指腸乳頭部の右側面を模式的に示すと、図4のようになる。また、以降の説明において、方向DR13が向かう側を「奥側」と呼ぶことがある。一方、方向DR13が向かう側と反対側、すなわち内視鏡5のイメージャの対物レンズ側を「手前側」と呼ぶことがある。
【0018】
ERCPにおいて、内視鏡5の不図示の処置具チャネルにカニューラを挿入して内視鏡先端部のチャネル開口からカニューラを突出させ、そのカニューラの先端を、乳頭開口部を介して胆管に差し込む。カニューラは、体内に挿入され医療用に用いられる医療用チューブのことである。カニューラに造影剤を注入してカニューラ先端から胆管内に造影剤を流し込む。この状態でX線撮影又はCT撮影を行うことで、胆管、胆のう及び膵管が写るX線画像又はCT(Computed Tomography)画像を取得する。その後、カニューラにガイドワイヤを挿入してカニューラ先端からガイドワイヤを突出させ、胆管内にガイドワイヤを挿入する。そしてガイドワイヤを胆管内に留置したままカニューラを抜去する。これにより、図5に示すように、ガイドワイヤのみが不図示の内視鏡先端部から突出して胆管内に留置された状態となる。なお、図示はしていないが、当該ガイドワイヤは内視鏡5の処置具チャネルを通り処置具挿入口の外側まで延びている。これにより、種々の内視鏡処置具等を処置具挿入口から挿入し、当該内視鏡処置具を胆管まで通すことができる。
【0019】
ESTの処置においては、例えばESTナイフが留置されたガイドワイヤに沿って胆管に挿入される。図6は、本実施形態のESTナイフの先端部を概念的に示した図である。なお、本実施形態においては、公知のESTナイフに係る手法を幅広く適用でき、図6は単なる例示に過ぎない。ESTナイフは例えば絶縁性チューブに複数のルーメンが設けられるように構成されている。例えばA1に示すルーメンは前述のガイドワイヤを通すために設けられている。A2に示すルーメンにはナイフワイヤが通り、ナイフワイヤに張力がかかっていない場合ナイフワイヤは絶縁性チューブに収納された状態をとる。ESTナイフの処置具挿入口側には不図示のハンドルが設けられ、当該ハンドルを処置具挿入口側に引くことでナイフワイヤに張力がかかり、A3に示すように、絶縁性チューブの開口部からナイフワイヤが露出した状態になる。そこで、例えば乳頭開口部を切開拡張したい場合は、A3に示す状態を作り、ナイフワイヤに高周波電流を流すことで、乳頭開口部周辺の組織が焼失切開される。なおA4に示すルーメンは例えば造影剤の注入に用いることができる。また、A5に示す先端部の面は、ESTナイフに複数のルーメンが設けられることと、ナイフワイヤがESTナイフの先端部から突出しないこととを概念的に示しているに過ぎず、現実のESTナイフの先端部の面と同様とは限らない。
【0020】
ESTナイフを用いる処置の例として胆石の摘出が挙げられる。例えば図示は省略するが、胆管に有る胆石を摘出する場合、ガイドワイヤに通したバスケット処置具を胆管に挿入し、当該胆石をバスケットに捕獲した状態でバスケット処置具を引き抜く処置が行われる。胆石のサイズが大きい場合、胆石を粉砕する手法も有るが、乳頭開口部を切開拡張しておいて胆石を摘出する方法が処置の時間を短くする点で望ましい観点から、ESTナイフを用いる処置が多くの症例で採用されている。処置の時間が短い方が、合併症等が発症する可能性を低くできるからである。
【0021】
ESTナイフで乳頭開口部を切開するにあたり、胆管に沿った方向に切開することが極めて重要である。胆管に沿った方向以外の方向を切開すると、動脈の損傷、後腹膜穿孔等の合併症を引き起こす可能性があり、それらを回避する必要がある。しかし図5から明らかなように胆管は乳頭開口部に対して奥側に位置することから、ユーザは内視鏡画像から胆管の経路を直接認識することができない。より具体的には例えば図7のA10の点線領域で示す方向が胆管に沿った方向である場合、当該領域がESTで切開すべき方向となるが、内視鏡画像のみを手がかりにA10で示す領域を認識することは困難である。そこで本実施形態では、以下に述べる手法によってESTナイフで切開すべき方向を推定し、推定される方向をガイドするガイド表示GMを表示する。
【0022】
図8のフローチャートを用いて、本実施形態の手法にかかる処理例を説明する。先ず管腔内圧力を適正化する処理(ステップS100)が行われる。例えば十二指腸の管腔が委縮している状態は、内視鏡5のイメージャによる十二指腸乳頭部の明確な撮像、ESTによる切開処置等を妨げることから、管腔内圧力を上げて十二指腸の管腔を伸展させる。一方、十二指腸の腸壁は薄いため、十二指腸の管腔を過度に伸展させないようにすることも要する。ステップS100は、例えばユーザが内視鏡画像を観察しながら後述の送気・脱気装置7を手動で操作してもよいし、後述するように処理システム3が自動で行ってもよい。なお、フローの図示は省略するが、ステップS100によって管腔内圧力が適正化された後も、ユーザは内視鏡画像から管腔内圧力が所望の範囲内であるかについて定期的に確認する。
【0023】
その後プロセッサ10は、内視鏡画像取得処理(ステップS200)を行う。例えば前述したように、プロセッサ10は表示制御部50として機能し、内視鏡5の先端のイメージャが撮像した内視鏡画像の画像データを取得する。その後プロセッサ10は、図9で後述する頂上ライン推定処理(ステップS300)を行う。その後プロセッサ10は、ステップS300で推定された頂上ラインに基づくガイド表示GMを、内視鏡画像に重畳して表示する処理を行う(ステップS400)。頂上ラインとは、口側隆起のうち最も手前側に位置する部分を含むライン状の領域をいい、頂上ラインは一定の幅があってもよい。或いは、口側隆起の尾根の稜線に該当するライン状の領域を頂上ラインと考えてもよい。頂上ラインは胆管の経路に対応していることが経験的に知られているが、内視鏡画像から頂上ラインを直接把握することは困難である。なお前述のように十二指腸乳頭部はハチマキひだ、輪状ひだが有るが、これらの構造は個人差が大きく頂上ラインとの相関は無いとされている。
【0024】
図9は、頂上ライン推定処理(ステップS300)のより詳細なフローチャートである。プロセッサ10は、内視鏡画像から口側隆起及びその周辺の深度マップを推定する処理(ステップS302)を行う。深度マップは、マップの各点に対して、その各点における被写体の深度が割り当てられた情報をいう。本実施形態の深度マップは、例えば内視鏡画像の各画素において、その各画素における被写体の深度が割り当てられている。
【0025】
その後プロセッサ10は、深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定する処理(ステップS304)を行う。なお、以降の説明または図示において、内視鏡画像から口側隆起及びその周辺の深度マップを推定することを、単に内視鏡画像から深度マップを推定することと簡略して記載することがある。また、以降の説明または図示において、深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定することを、単に深度マップから頂上ラインを推定することと簡略して記載することがある。
【0026】
図9のフローチャートに示す処理は、例えば処理部100を図10のように構成することで実現できる。図10において処理部100は、深度推定部110と頂上ライン推定部120を含む。つまり、プロセッサ10は、図10の深度推定部110として機能することで図9のステップS302を実行し、図10の頂上ライン推定部120として機能することで図9のステップS304を実行する。
【0027】
より具体的には、例えば処理システム3を図11に示す構成例のようにすることで、プロセッサ10を深度推定部110として機能させることができる。図11において、処理システム3は、メモリ20と入力部30と出力部40とをさらに含む。メモリ20には学習済みモデル22が記憶されている。
【0028】
入力部30は、外部からのデータを受信するインターフェースである。出力部40は、後述する推論段階より推論されたデータを外部に送信するインターフェースである。入力部30と出力部40の具体的なハードウェアは、プロセッサ10が果たす機能に応じて適宜決定される。また、一のプロセッサ10が異なる種類の推論を行う場合は、一の推論によって出力部40から出力されたデータが入力部30に再度入力され、再度入力されたデータに基づいてプロセッサ10が他の推論を行うこともある。例えば図10で後述する深度推定部110と頂上ライン推定部120が同一のプロセッサ10によって機能する場合があるとする。この場合、プロセッサ10が深度推定部110として機能して出力部40から出力された深度マップは、再度入力部30に入力され、プロセッサ10は頂上ライン推定部120として機能し、頂上ラインアノテーションデータが出力部40から出力される。なお以降の学習済みモデル22を用いる処理の説明においては、入力部30と出力部40の図示及び説明を便宜上省略する。
【0029】
学習済みモデル22は、教師あり学習としての機械学習を行うことにより生成されたプログラムモジュールである。学習済みモデル22は入力データと正解ラベルとを対応付けたデータセットに基づいた教師あり学習によって生成されている。より具体的には例えば学習済みモデル22は、学習段階において不図示の学習装置により生成される。学習装置は、後述の重み係数が初期値として設定されている未学習モデルを不図示の記憶装置に記憶している。そして入力データと正解ラベルとを対応付けたデータセットとしての訓練データを未学習モデルに入力し、その推論結果に基づいて未学習モデルにフィードバックを行うことで重み係数が最適化され、学習済みモデル22として生成される。
【0030】
なお図11では一の学習済みモデル22がメモリ20に記憶されているように図示しているが、メモリ20は複数の学習済みモデル22を記憶してもよい。例えばプロセッサ10が、深度推定部110として機能し、かつ後述する圧力判定部60としても機能する場合は、それぞれの機能に対応する学習済みモデル22がメモリ20に記憶され、実行される処理に対応した学習済みモデル22が適宜選択される。
【0031】
本実施形態の学習済みモデル22において、モデルの少なくとも一部にニューラルネットワークが含まれている。ニューラルネットワークは、図示は省略するが、データが入力される入力層と、入力層からの出力に基づいて演算を行う中間層と、中間層からの出力に基づいてデータを出力する出力層を有する。中間層の数は特に限定されない。また、中間層における各層に含まれるノードの数は特に限定されない。中間層において所与の層に含まれるノードは、隣接する層のノードと結合される。各結合には重み係数が設定されている。各ノードは、前段のノードの出力と重み係数を乗算し、乗算結果の合計値を求める。さらに各ノードは、合計値に対してバイアスを加算し、加算結果に活性化関数を適用することによって当該ノードの出力を求める。この処理を、入力層から出力層へ向けて順次実行することによって、ニューラルネットワークの出力が求められる。なお活性化関数としては、シグモイド関数やReLU関数等の種々の関数が知られており、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。
【0032】
また、既存の学習済みモデルに対して、追加学習を行うことで学習済みモデル22を生成してもよい。追加学習は、例えばファインチューニング等の手法が用いられる。具体的には例えば既存の学習済みモデルの出力層を追加する等の再構築を行い、上記した訓練データを用いた機械学習を行うことで、重み係数が最適化される。
【0033】
深度推定部110として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば内視鏡画像を入力データとし、深度マップを正解ラベルとするデータセットとして学習されている。そして推論段階では内視鏡画像が入力部30に入力され、プロセッサ10はメモリ20から対応する学習済みモデル22を読み出し、当該学習済みモデル22に内視鏡画像を入力する。これにより、推論された深度マップが、学習済みモデル22から出力部40を介して出力される。
【0034】
なお、オープンソースとして公開されている単眼深度推定モデルを、深度推定部110として機能させるための学習済みモデル22としてもよい。このようにすることで、上記した学習段階を設ける必要が無いことから、訓練データを用意する負担を削減できる。訓練データを用意する負担とは、例えば正解ラベルとしての十二指腸乳頭部の深度マップを作成するために、深度センサ等を搭載した内視鏡5を用意する負担等である。なお、上記した単眼深度推定モデルに対して、上記した追加学習を行う等の改変を行ってもよい。
【0035】
このように、プロセッサ10が深度推定部110として機能することで図9のステップS302が行われ、例えば図12のA21に示した領域の内視鏡画像が入力されると、A22に示す深度マップが出力される。A22に示す深度マップを構成するピクセル毎に深度値が含まれている。なお、本実施形態の深度マップは、便宜上、4~5階調からなる階調分けで表示しているが、より多くの階調で表示してもよい。また、発明の要旨を分かりやすくするため、A22に示す深度マップは、ハチマキひだ、輪状ひだ、小帯による凹凸等を除外して表現している。後述する深度マップについても同様である。また、説明の便宜上、A21は処置具が挿入されていない十二指腸乳頭部を示しているが、例えば前述したガイドワイヤが胆管に留置された段階における十二指腸乳頭部の内視鏡画像であってもよいし、EST処置具がさらに挿入された段階における十二指腸乳頭部の内視鏡画像であってもよく、適宜決定される。
【0036】
図9のステップS304は、プロセッサ10が対応する学習済みモデル22を読み出すことによって行われ、頂上ライン推定部120として機能する。この場合の学習済みモデル22は、深度推定部110から出力された深度マップを入力データとし、頂上ラインアノテーションデータを正解ラベルとするデータセットとして機械学習が行われている。なお、推論段階での精度を向上させるために、深度マップに対応する内視鏡画像をさらに入力データとして追加してもよい。
【0037】
なお、図9のステップS304は、機械学習を用いない手法でも実現できる。例えば深度推定部110から出力された深度マップを入力データとし、所定のピクセル数毎に深度値の平均値を算出し、算出された値に基づいて頂上ラインを推定する。
【0038】
このように、プロセッサ10は、頂上ライン推定部120として機能することで、例えば図12のA23に示す領域に基づいて、A24に示す領域を頂上ラインとして推定する。A23に示す領域は、深度マップにおいて手前側を示す階調からなる領域である。そして、プロセッサ10は、推定した頂上ラインに基づいてガイド表示GMの画像データを生成し、生成したガイド表示GMの画像データを出力する。
【0039】
このような頂上ライン推定処理(ステップS300)が行われることで、ステップS400により図13のA31に示すような内視鏡画像が後述の表示装置9に表示される。A31に示す内視鏡画像には、十二指腸乳頭部にガイド表示GMが重畳して表示される。
【0040】
以上のことから、本実施形態の処理システム3は、ハードウェアを含むプロセッサ10を含む。プロセッサ10は、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得し、十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを内視鏡画像から推定し、推定された深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定し、推定された頂上ラインに基づくガイド表示GMを、内視鏡画像に重畳して表示する処理を行う。十二指腸乳頭部が写る内視鏡画像からは胆管の経路を直接把握することはできない。また、胆管の経路は口側隆起の形状と相関関係があることが知られているが、内視鏡画像は奥行方向に関する情報を持たない二次元画像であることから、十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像から口側隆起の形状を直接把握することは困難である。その点、本実施形態の処理システム3は、内視鏡画像から深度マップを推定することから、深度マップに基づいて口側隆起の形状を推定できる。また、深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定し、推定された頂上ラインに基づくガイド表示GMを内視鏡画像に重畳して表示することから、ユーザはガイド表示GMを見ることで口側隆起の頂上ラインを把握できる。これにより、胆管に対する処置の利便性を向上させることができる。
【0041】
また、例えば内視鏡先端に立体視をするための撮像装置を搭載する手法についても提案されているが、このような撮像装置を内視鏡先端部に実際に搭載することは、内視鏡先端部のサイズを増大させる等により難しい問題がある。その点、本実施形態の手法を適用することで、通常の内視鏡画像から深度マップを推定し、口側隆起の頂上ラインを推定していることから、立体視をするための撮像装置を搭載することなく、十二指腸乳頭部における胆管の経路を推定することができる。
【0042】
また、本実施形態の手法は内視鏡システム1として実現してもよい。つまり、本実施形態の内視鏡システム1は、上記した処理システム3と内視鏡5とを含む。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態の手法は処理方法として実現してもよい。つまり、本実施形態の処理方法は、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得する処理(ステップS200)と、十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを内視鏡画像から推定する処理(ステップS302)と、推定された深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定する処理(ステップS304)とを行う。また、本実施形態の処理方法は、推定された頂上ラインに基づくガイド表示を、内視鏡画像に重畳して表示する処理(ステップS400)をさらに行う。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態の処理システム3において、ガイド表示GMは、ESTにおける切開ガイド表示であってもよい。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、ガイド表示GMは、ESTにおける切開ガイド表示であってもよい。このようにすることで、ユーザは、口側隆起の頂上ラインを推定しながらESTを行うことができる。具体的には例えばユーザはESTナイフのナイフワイヤを通電しながらガイド表示GMに沿ってナイフワイヤを移動させることで、図13のA32に示すように、所望の方向に切開を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態の処理システム3は、入力された画像から深度マップを推定するように学習された学習済みモデル22を記憶するメモリ20を含んでもよい。また、プロセッサ10は、学習済みモデル22に内視鏡画像を入力することで、深度マップを推定してもよい。このようにすることで、機械学習された学習済みモデル22を用いて深度マップを推定する処理システム3を構築できる。
【0046】
本実施形態の手法は上記に限らず、特徴を追加する等、種々の変形実施が可能である。例えば、本実施形態の処理システム3は、図8のステップS100を自動で行ってもよい。具体的には例えば処理システム3を図14に示す構成例のようにし、図15のフローチャートに示す処理例を図8のステップS100に組み入れることで、ステップS100に相当する処理の自動化を実現できる。また、図8のステップS200以降が行われた後に、例えばタイマー割込み処理等によって図15の処理を定期的に行ってもよい。このようにすることで、本実施形態の手法を行うのに適した管腔内圧力を維持できる。
【0047】
図14は、本実施形態の内視鏡システム1をより詳細に示したブロック図である。内視鏡システム1は、前述の処理システム3、内視鏡5の他、送気・脱気装置7、表示装置9をさらに含む。処理システム3に含まれるプロセッサ10は、前述の表示制御部50、処理部100の他、圧力判定部60をさらに含む。
【0048】
圧力判定部60は、内視鏡5から表示制御部50を介して受信した内視鏡画像に基づいて十二指腸管腔内圧力の判定を行い、当該判定の判定結果に基づいて送気・脱気装置7を制御する。送気・脱気装置7は、不図示の挿入部の内部チャネルを介して内視鏡先端部と繋がっている。これにより、内視鏡先端部を介して十二指腸管腔に対して送気または脱気を行うことができる。なお送気・脱気装置7は公知の装置であり、詳細な説明は省略する。
【0049】
図15のフローチャートの処理例について説明する。プロセッサ10は、内視鏡画像から十二指腸管腔内の圧力を推定し(ステップS102)、推定した十二指腸管腔内の圧力は所定範囲より高いか否かについて判断する処理を行う(ステップS110)。ステップS102の実現手段については後述する。所定範囲は、過去の症例等に基づいてユーザが適宜決定する。プロセッサ10は、推定した十二指腸管腔内の圧力が所定範囲より高い場合(ステップS110でYES)、十二指腸管腔内を脱気する処理(ステップS112)を行い、フローを終了する。これにより、十二指腸管腔内の圧力をより低くすることができる。一方、プロセッサ10は、推定した十二指腸管腔内の圧力が所定範囲より高くないと判断した場合(ステップS110でNO)、推定した当該圧力が所定範囲より低いか否かを判断する処理(ステップS120)を行う。プロセッサ10は、推定した当該圧力が所定範囲より低いと判断した場合(ステップS120でYES)、十二指腸管腔内を送気する処理(ステップS122)を行い、フローを終了する。これにより、十二指腸管腔内の圧力をより高くすることができる。一方、推定した当該圧力が所定範囲より低くないと判断した場合(ステップS120でNO)、フローを終了する。言い換えれば、ステップS110でNOの場合かつステップS120でNOの場合は、推定した当該圧力が所定範囲内であり、送気も脱気も行う必要が無いと判断される。
【0050】
プロセッサ10を圧力判定部60として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば十二指腸管腔内が撮像された内視鏡画像と、当該内視鏡画像に対して十二指腸管腔内のしわの数、しわの深さ等の特徴量と、十二指腸管腔内の圧力判定結果とが関連付けられたデータセットにより機械学習されている。十二指腸管腔内の圧力判定結果とは、例えば「十二指腸管腔内の圧力は、所定範囲内の圧力である」「十二指腸管腔内の圧力は、所定範囲より高い圧力である」「十二指腸管腔内の圧力は、所定範囲より低い圧力である」等により分類された判断結果であり、正解ラベルとしての役割を果たす。
【0051】
そして推論段階では、十二指腸管腔内が撮像された内視鏡画像が入力データとして入力部30に入力される。そしてプロセッサ10はメモリ20から学習済みモデル22を読み出す。これによりプロセッサ10は、圧力判定部60として機能し、入力された内視鏡画像に対してしわの数、しわの深さ等の特徴量を抽出する処理と、抽出した特徴量に対応する正解ラベルを選択する処理と、選択された正解ラベルを出力データとして出力部40を介して出力する処理を行う。これにより、図15のステップS102が実現できる。そして選択された正解ラベルの内容に応じてステップS102以降の処理が行われる。
【0052】
このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、内視鏡画像に基づいて十二指腸管腔内の圧力が適正圧力の範囲内であるか否かを推定し(ステップS102)、十二指腸管腔内の圧力が適正圧力の範囲外である場合、十二指腸管腔内の圧力を適正圧力の範囲内になるように送気または脱気する処理(ステップS112、ステップS122)を行う。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法は、内視鏡画像に基づいて十二指腸管腔内の圧力が適正圧力の範囲内であるか否かを推定する処理と、十二指腸管腔内の圧力が適正圧力の範囲外である場合、十二指腸管腔内の圧力を適正圧力の範囲内になるように送気または脱気する処理とを、さらに行う。このようにすることで、十二指腸の管腔内を、頂上ラインの推定、ESTの切開等に適した状態にすることができる。
【0053】
なお、例えば上記した正解ラベルのうち、「十二指腸管腔内の圧力は、所定範囲より高い圧力である」のラベルをさらに複数段階にランク分けしてもよい。また、プロセッサ10は、出力されたランクに対応するように、圧力判定部60から送気・脱気装置7に出力するコマンドを選択し、選択したコマンドを送気・脱気装置7に出力してもよい。「十二指腸管腔内の圧力は、所定範囲より低い圧力である」のラベルについても同様である。これにより、送気・脱気装置7の制御をより正確に行うことができる。
【0054】
また、図示は省略しているが、後述する図20図22図26図29図32図37図44の処理部100も圧力判定部60を制御する構成としてもよい。
【0055】
また、例えば本実施形態は、十二指腸乳頭部の形状が異なり得る内視鏡画像を複数取得し、それぞれの内視鏡画像から推定した深度マップに基づいて頂上ラインを推定する手法としてもよい。例えば処理部100を図16に示す構成例のようにし、図8のステップS200を図17のフローチャートに示す処理例のようにし、図8のステップS300を図18のフローチャートに示す処理例のようにすることで、上記した手法が実現できる。図16に示す処理部100は、頂上ライン推定部120が深度推定結果減算部122をさらに含む点で、図10に示す処理部100と異なる。
【0056】
図17に示す内視鏡画像取得処理(ステップS200)について説明する。プロセッサ10は、第1内視鏡画像を取得し(ステップS202)、その後第2内視鏡画像を取得する(ステップS204)。その後、図8のフローチャートに戻り、頂上ライン推定処理(ステップS300)とステップS400の処理が行われる。
【0057】
第1内視鏡画像と第2内視鏡画像の組み合わせは、十二指腸乳頭部の形状が異なり得る内視鏡画像同士であれば、特に問わない。例えば第1内視鏡画像は、図19のA41に示すように、口側隆起を含み、処置具が挿入されていない状態における十二指腸乳頭部の内視鏡画像を採用できる。また、第2内視鏡画像は、例えば図19のA42に示すように、口側隆起を含み、かつ処置具が挿入されている状態における十二指腸乳頭部の内視鏡画像を採用できる。A42に示す第2内視鏡画像が撮像される状態は、例えば処置具としてのガイドワイヤが挿入された状態であるが、前述のカニューラが挿入された状態であってもよいし、ESTナイフを挿入してESTを開始する直前の状態であってもよい。このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、処置具が挿入されていない状態の第1内視鏡画像と、処置具が挿入された状態の第2内視鏡画像とに基づいて、頂上ラインを推定する。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、処置具が挿入されていない状態の第1内視鏡画像と、処置具が挿入された状態の第2内視鏡画像とに基づいて、頂上ラインを推定する処理(ステップS202、ステップS204、ステップS300)を行う。このようにすることで、胆管の経路をより精度良く推定することができる。処置具は胆管に挿入されていることから、頂上ラインの変化は胆管の経路の変化に対応していると考えられる。
【0058】
なお、ステップS202はリアルタイムで内視鏡5のイメージャが撮像したことにより第1内視鏡画像を取得する処理に限らず、例えば既にメモリ20等に記憶された第1内視鏡画像を選択する処理であってもよい。ステップS204についても同様である。例えば上記したように第1内視鏡画像を処置具が挿入されていない状態における十二指腸乳頭部の内視鏡画像とする場合は、例えばERCPを行うときに内視鏡先端のイメージャが十二指腸乳頭部と位置合わせしたときに撮像した内視鏡画像を別途メモリ20等に記憶しておけばよい。また、ガイドワイヤが胆管に初めて挿入されたタイミングにおける十二指腸乳頭部の内視鏡画像を第2内視鏡画像とする場合は、当該タイミングで撮像した内視鏡画像を別途メモリ20等に記憶しておけばよい。或いは、ESTを開始する直前のタイミングにおける十二指腸乳頭部の内視鏡画像を第2内視鏡画像とする場合は、リアルタイムで内視鏡5のイメージャが撮像した内視鏡画像を取得する処理をステップS204とすればよい。
【0059】
図18に示す頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。プロセッサ10は、第1内視鏡画像から第1深度マップを推定し(ステップS310)、第2内視鏡画像から第2深度マップを推定し(ステップS320)、第1深度マップと第2深度マップとの差分に基づいて頂上ラインを推定する(ステップS350)。図18のステップS310とステップS320は、図9のステップS302に対応する処理であり、例えばステップS310により図19のA41に示す第1内視鏡画像に基づいて、A61に示す第1深度マップが生成される。同様に、ステップS320により図19のA42に示す第2内視鏡画像に基づいて、A62に示す第2深度マップが生成される。なお、説明の便宜上、図19のA61に示す第1深度マップは、A41に示す第1内視鏡画像のうち点線枠内の内視鏡画像に対応する部分を表示している。同様に、A62に示す第2深度マップは、A42に示す第2内視鏡画像のうち点線枠内の内視鏡画像に対応する部分を表示している。
【0060】
その後プロセッサ10は、深度推定結果減算部122として機能し、A62に示す第2深度マップとA61に示す第1深度マップとの差分を求める。つまり、それぞれの深度マップのピクセル毎に階調値の差分を求め、差分値が相対的に高いピクセルの集合が処置具の挿入に伴い深度が変化した領域と推定される。処置具がガイドワイヤの場合、図5で前述したように当該ガイドワイヤは胆管を通っていることから、上記した深度が変化した領域は胆管が通っている領域と推定できる。
【0061】
このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、第1内視鏡画像から推定された第1深度マップと、第2内視鏡画像から推定された第2深度マップとの差分に基づいて、頂上ラインを推定する。このようにすることで、状態が異なる深度マップの差分に基づいて頂上ラインを推定する処理システム3を構築できる。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、第1内視鏡画像から推定された第1深度マップと、第2内視鏡画像から推定された第2深度マップとの差分に基づいて、頂上ラインを推定する処理(ステップS310、ステップS320、ステップS350)を行う。このようにすることで、状態が異なる深度マップの差分に基づいて頂上ラインを推定する処理方法を構築できる。
【0062】
なお、図11等で前述したように、図9のステップS302は、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われることから、図18のステップS310、ステップS320も同様に学習済みモデル22を用いて行われる。つまり、本実施形態の処理システム3は、入力された画像から深度マップを推定するように学習された学習済みモデル22を記憶するメモリ20を含む。プロセッサ10は、学習済みモデル22に第1内視鏡画像を入力することで、第1深度マップを推定し、学習済みモデル22に第2内視鏡画像を入力することで、第2深度マップを推定し、第1深度マップと第2深度マップとに基づいて、頂上ラインを推定する。このようにすることで、機械学習された学習済みモデル22を用いて、二つの深度マップに基づいて頂上ラインを推定する処理システム3を構築できる。
【0063】
また、例えば本実施形態は、位置合わせを行ってから頂上ラインを推定する手法としてもよい。例えば処理部100を図20に示す構成例のようにし、図8のステップS200を前述の図17のフローチャートに示す処理例のようにし、図8のステップS300を図21のフローチャートに示す処理例のようにすることで、上記した手法が実現できる。図20の処理部100の構成例は、図16の処理部100の構成例に対して、キーポイント検出部130と、第1深度推定結果位置合わせ部141とをさらに含む点で異なる。なお、既に説明した処理については説明を省略する。
【0064】
図21の頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。プロセッサ10は、図18と同様の第1内視鏡画像から第1深度マップを推定する処理(ステップS310)を行うとともに、キーポイント検出部130として機能して第1内視鏡画像からキーポイントを検出する処理(ステップS312)を行う。ここでのキーポイントは、第1深度マップと第2深度マップとを位置合わせするための基準となる位置情報をいい、具体的には乳頭開口部、ハチマキひだ、小帯等である。キーポイントは特徴点またはランドマークとも言うことができる。プロセッサ10をキーポイント検出部130として機能させる処理が、ステップS312に相当する。
【0065】
ステップS312は、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われる。例えばプロセッサ10をキーポイント検出部130として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば十二指腸乳頭部が撮像されている内視鏡画像が入力されると、キーポイントとなる乳頭開口部等を当該内視鏡画像にセグメンテーション等して出力するように機械学習されている。ステップS312に係る学習済みモデル22は、画像認識分野で用いられるCNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、またはこれらをさらに発展させたモデルを少なくとも一部に用いてもよい。CNN等をさらに発展させたモデルとは例えばSegNet(Segmentation Network)、FCN(Fully Convolutional Network)、U-Net(U-Shaped Network)、PSPNet(Pyramid Scene Parsing Network)YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot Multi-Box Detector)等である。
【0066】
その後プロセッサ10は、図18と同様の第2内視鏡画像から第2深度マップを推定する処理(ステップS320)を行うとともに、第2内視鏡画像からキーポイントを検出する処理(ステップS322)を行う。ステップS322は、前述したステップS312と同様に、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われる。
【0067】
その後プロセッサ10は、第1深度推定結果位置合わせ部141として機能し、検出したキーポイントを基準に第1深度マップと第2深度マップを位置合わせする処理(ステップS330)を行う。例えば前述の図19のA51に示すように、ステップS312によって第1内視鏡画像からキーポイントとして乳頭開口部が検出される。同様に、例えば図19のA52に示すように、ステップS322によって第2内視鏡画像からキーポイントとして乳頭開口部が検出される。
【0068】
そしてプロセッサ10は、第1深度推定結果位置合わせ部141として機能し、A51で検出したキーポイントの座標情報に基づいて、例えば図19のA71に示す位置が第1深度マップにおける乳頭開口部の位置と特定する。なおA51に示すキーポイントが領域として検出されている場合は、示された領域の重心の位置をA71に示す位置として特定すればよい。同様に、プロセッサ10は、A52で検出したキーポイントの座標情報に基づいて、例えば図19のA72に示す位置が第2深度マップにおける乳頭開口部の位置と特定する。そしてプロセッサ10は、A71に示す位置座標とA72に示す位置座標を同一座標となるように、第1深度マップまたは第2深度マップのいずれか一方の位置座標を変換する。その後、プロセッサ10は前述のステップS350を行い、頂上ラインを推定する。
【0069】
なお、ステップS330は、学習済みモデル22を用いて行うこともできる。例えば内視鏡画像と、当該内視鏡画像におけるキーポイントと、異なる内視鏡画像同士におけるキーポイントの対応関係の情報とを関連付けたデータセットで学習済みモデル22を学習させればよい。
【0070】
また、例えば処理部100を図22に示す構成例のようにし、図8のステップS200を前述の図17のフローチャートに示す処理例のようにし、図8のステップS300を図23のフローチャートに示す処理例のようにすることで、上記した手法を同様に実現できる。図22の処理部100の構成例は、図16の処理部100の構成例に対して、点群データ生成部132と、第2深度推定結果位置合わせ部142とをさらに含む点で異なる。
【0071】
図23の頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。プロセッサ10は、図18と同様の第1内視鏡画像から第1深度マップを推定する処理(ステップS310)を行った後、第1深度マップから第1点群データを生成する処理(ステップS314)を行う。例えばプロセッサ10は、点群データ生成部132として機能し、第1深度マップとして図24のA63に示すような深度マップを深度推定部110から取得し、所定のアルゴリズムに基づいてA83に示すような点群データを生成する。所定のアルゴリズムは、深度マップから点群データを生成する公知の手法であればよい。
【0072】
その後プロセッサ10は、図18と同様の第2内視鏡画像から第2深度マップを推定する処理(ステップS320)を行った後、第2深度マップから第2点群データを生成する処理(ステップS324)を行う。ステップS324は、上記したステップS314と同様の処理である。
【0073】
図23の処理例における第1内視鏡画像と第2内視鏡画像は、図21の処理例の場合と同様である。つまり、図23の処理における第1内視鏡画像は、例えば図25のA44に示すように処置具が挿入されていない状態における十二指腸乳頭部の内視鏡画像であり、図23の処理における第2内視鏡画像は、例えば図25のA45に示すように処置具が挿入された状態における十二指腸乳頭部の内視鏡画像である。これにより、A44に示す第1内視鏡画像は、ステップS310により図25に不図示の第1深度マップが生成され、ステップS314により当該第1深度マップに基づいてA84に示す第1点群データが生成される。同様に、A45に示す第2内視鏡画像は、ステップS320により図25に不図示の第2深度マップが生成され、ステップS324により当該第2深度マップに基づいてA85に示す第2点群データが生成される。
【0074】
その後プロセッサ10は、第2深度推定結果位置合わせ部142として機能し、第1点群データと第2点群データに基づいて第1深度マップと第2深度マップを位置合わせする処理(ステップS340)を行う。ICPアルゴリズムは、公知の手法につき詳細な説明は省略するが、一方の点群データの各点について、他方の点群データから最も近傍となる点を探索して対応づけ、対応付けた点の差を最小化するように、第1点群データの座標系と第2点群データの座標系との位置姿勢を調整する。これにより、例えばA94に示す輪郭部分を構成する各点と、A95に示す輪郭部分を構成する各点との差が最小化され、第1点群データと第2点群データとのマッチングが行われる。そして、プロセッサ10は、点群データの座標系の調整に対応するように、第1深度マップと第2深度マップとの位置関係を調整する。
【0075】
なお、ステップS340は、学習済みモデル22を用いて行うこともできる。例えば対応する位置座標が異なる点群データの組み合わせを入力データとし、位置関係を調整した際に用いられた座標変換データを正解ラベルとデータセットで学習済みモデル22を学習させればよい。その後プロセッサ10は、位置関係を調整した第1深度マップと第2深度マップとの差分に基づいて、頂上ラインを推定する(ステップS350)。
【0076】
以上のことから、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、第1内視鏡画像に写る十二指腸乳頭部の位置と、第2内視鏡画像に写る十二指腸乳頭部の位置とが位置合わせされた状態において、第1深度マップと第2深度マップとの差分に基づいて頂上ラインを推定する。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、第1内視鏡画像に写る十二指腸乳頭部の位置と、第2内視鏡画像に写る十二指腸乳頭部の位置とが位置合わせされた状態において、第1深度マップと第2深度マップとの差分に基づいて頂上ラインを推定する処理(ステップS330、ステップS340、ステップS350)を行う。このようにすることで、頂上ラインの推定の精度をより向上させることができる。処置具を挿入する過程で内視鏡先端部が動き、第1内視鏡画像における十二指腸乳頭部の位置と第2内視鏡画像における十二指腸乳頭部の位置が一致しなくなる可能性がある。その点、本実施形態の手法を適用することで、処置具の挿入前後における十二指腸乳頭部の位置を一致させることができるので、第1深度マップと第2深度マップとの差分をより正確に求めることができる。
【0077】
また、例えば本実施形態は、ガイド表示GMの一端の位置を設定する手法としてもよい。例えば処理部100を図26に示す構成例のようにし、図8のステップS300を図27のフローチャートに示す処理例のようにすればよい。図26の処理部100の構成例は、図16の処理部100の構成例に対して、乳頭開口部検出部150をさらに含む点で異なる。
【0078】
図27の頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。プロセッサ10は、前述と同様に内視鏡画像から深度マップを推定する処理(ステップS302)を行うとともに、乳頭開口部検出部150として機能し、内視鏡画像上の乳頭開口部を検出する処理(ステップS360)を行う。
【0079】
ステップS360は、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われる。つまりプロセッサ10を乳頭開口部検出部150として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば十二指腸乳頭部が撮像されている内視鏡画像が入力されると、乳頭開口部を当該内視鏡画像にセグメンテーション等して出力するように機械学習されている。
【0080】
そしてプロセッサ10は、検出した乳頭開口部を基準に頂上ラインを推定する処理を行う(ステップS362)。例えば図28において、例えばB1に示す領域が、ステップS360によって検出された乳頭開口部の領域であり、B2に示す領域が、ステップS302により生成された深度マップで最も手前側と推定されている領域とする。この場合、プロセッサ10は、例えばB1の領域の重心座標を算出し、B3に示すような重心座標点を設定する。その後プロセッサ10は、B4に示すように、B3の重心座標と、B2の領域の中央部分を通過する仮想上の線を頂上ラインとして設定する処理を行う。なお説明の便宜上、B4に示す線の方向は、紙面の縦方向に一致するものとする。後述する図34についても同様である。そしてプロセッサ10は、図示はしていないが、B4に示す線のうち、B3に示す点を始点としてB2の領域を含むラインを頂上ラインと推定し、推定した頂上ラインに対応するガイド表示GMを表示する。
【0081】
このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、内視鏡画像に基づいて乳頭開口部を検出し、乳頭開口部を起点として頂上ラインを推定する。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、内視鏡画像に基づいて乳頭開口部を検出する処理(ステップS360)をさらに行い、乳頭開口部を起点として頂上ラインを推定する処理(ステップS362)を行う。このようにすることで、乳頭開口部を起点とするガイド表示GMを表示できる。頂上ラインが乳頭開口部を含むとは限らないが、ESTは乳頭開口部を切開拡張する手技であるから、乳頭開口部を起点とするガイド表示GMが表示されることはユーザにとって便宜である。
【0082】
また、例えば処理部100を図29に示す構成例のようにし、図8のステップS300を図30のフローチャートに示す処理例のようにすることで、同様の手法が実現できる。図29の処理部100の構成例は、図16の処理部100の構成例に対して、処置具検出部152をさらに含む点で異なる。
【0083】
図30の頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。プロセッサ10は、深度推定部110として機能し、前述のステップS302を行うとともに、処置具検出部152として機能し、内視鏡画像上の処置具を検出する処理(ステップS370)を行う。
【0084】
ステップS370は、ステップS360と同様に、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われる。つまりプロセッサ10を処置具検出部152として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば処置具が挿入されている十二指腸乳頭部が撮像されている内視鏡画像が入力されると、撮像されている処置具の領域をセグメンテーション等して出力するように機械学習されている。
【0085】
そしてプロセッサ10は、検出した処置具を基準に頂上ラインを推定する処理を行う(ステップS372)。例えば図31において、例えばB11が、ステップS370によって検出された、処置具のうち内視鏡画像に写る部分の先端の領域であり、B12に示す領域が、ステップS302により生成された深度マップで最も手前側と推定されている領域とする。この場合、プロセッサ10は、B13に示すように、B11に示す領域の中央部分と、B12に示す領域の中央部分を通過する仮想上の線を設定する処理を行う。そしてプロセッサ10は、図示はしていないが、B13に示す線のうち、B11に示す領域を始点としてB12の領域を含むラインを頂上ラインと推定し、推定した頂上ラインに対応するガイド表示GMを表示する。
【0086】
このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、内視鏡画像に基づいて、処置具のうち内視鏡画像に写る部分を検出し、検出された部分の先端を起点として頂上ラインを推定する。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、内視鏡画像に基づいて、処置具のうち内視鏡画像に写る部分を検出する処理(ステップS370)をさらに行い、検出された部分の先端を起点として頂上ラインを推定する処理(ステップS372)を行う。このようにすることで、処置具の一端を起点とするガイド表示GMを表示できる。ESTを行うにあたり、処置具としてのESTナイフ起点とするガイド表示GMが表示されることはユーザにとって便宜である。処置具によって内視鏡画像から乳頭開口部自体を明確に視認できないことがあるが、処置具のうち内視鏡画像に写る部分の先端の位置は、乳頭開口部の位置に対応しているので、図29図31で述べた手法は、図26図28で述べた手法と同等の効果が期待できる。
【0087】
また、本実施形態は例えばガイド表示GMに一定の幅をもたせるように表示する手法としてもよい。具体的には、例えば処理部100を図32に示す構成例のようにし、図8のステップS300を図33のフローチャートに示す処理例のようにすることで、上記した手法が実現できる。図32の処理部100の構成例は、図26の処理部100の構成例に対して、切開領域生成部160をさらに含む点で異なる。なお、図示は省略するが、図32の処理部100は図29の処理部100に切開領域生成部160を追加して構成してもよい。この場合、図30のフローチャートに、後述するステップS364に相当する処理を追加すればよい。
【0088】
図33の頂上ライン推定処理(ステップS300)について説明する。なお、図27と同様の処理については説明を省略する。プロセッサ10は、図27のステップS302、ステップS360、ステップS362を行った後、切開領域生成部160として機能し、推定した頂上ラインを12時の方向としたときに11時から12時の間を示す領域を切開領域として生成する処理(ステップS364)を行う。なお、ここでの12時の方向は、推定した頂上ラインの乳頭開口部側の一端を中心とした場合における12時の方向である。
【0089】
例えばステップS302によって頂上ラインが推定される。そしてステップS360、ステップS362が行われた結果として、図34に示すようにガイド表示GMが乳頭開口部の重心位置を始点とし、紙面の縦方向に一致する方向に表示される。そして、プロセッサ10は、切開領域生成部160として機能し、B21に示す仮想上のラインを生成する処理と、B22に示す領域を切開領域として生成する処理を行う。
【0090】
なお、図33等の処理は、所定の外科的治療により臓器の構造が変更されている場合においても適用できる。言い換えれば、臓器の構造が変更されると内視鏡画像の見え方も異なるが、内視鏡画像の見え方に関わらず図33等の処理を適用できる。
【0091】
図35図36を用いて具体的に説明する。所定の外科的治療として例えば図35に示すようなビルロート2法によって臓器の構造が変更されている場合、EST等を行うにあたり内視鏡先端部は空腸側から十二指腸の乳頭部に向かって挿入される点で、図2に示した場合と異なる。なおビルロート2法においては、図35のC1に示すように、肥満治療、胃がんの切除等を目的に胃の幽門側を切除した後、残胃部の断端と空腸が吻合されることで食物の通り道がバイパスされる。また、C2に示すように十二指腸の端部が縫合閉鎖される。なお肥満とは、平均余命の短縮、健康上の問題等を生じさせ得る程度に、過剰な体脂肪が蓄積された状態のことをいう。肥満手術は例えばBMIが一定値を超えている場合またはBMIが一定値を超えるとともに併存疾患を有している場合に行われる。BMIはボディマス指数(Body Mass Index)の略である。なお、所定の外科的治療としては他にルーワイ胃バイパス術等が挙げられる。
【0092】
そして例えば図36のC11に示す管腔の側壁に十二指腸乳頭部が存在し、十二指腸乳頭部はC12に示す構造をしているものとし、C22に示す位置に乳頭開口部が位置しているものとする。なお、図36において、方向DR1は、胃側から十二指腸側へ向かう方向に沿う方向であるものとし、方向DR2は、方向DR1と逆の方向即ち空腸側から十二指腸側へ向かう方向に沿う方向であるものとする。方向DR3及び方向DR4は方向DR1に垂直な方向でかつ管腔の壁面に沿う方向であるものとし、方向DR3が紙面に対して上向きとする。
【0093】
図2のように臓器の構造が変更されていない場合は、内視鏡先端部は方向DR1に向かうように挿入される。そして内視鏡先端部のイメージャによって撮像される内視鏡画像は、方向DR1が上向きになることから、C13に示す画像となる。一方、図35のように臓器の構造が変更されている場合は、内視鏡先端部は方向DR2に向かうように挿入される。方向DR2に向かうように挿入された内視鏡先端部のイメージャによって撮像される内視鏡画像は、方向DR2が上向きになることから、C14に示すような画像となる。つまりC13に示す内視鏡画像と、C14に示す内視鏡画像は、内視鏡画像に垂直な方向を軸にして180度回転した関係になる。
【0094】
図2のように臓器の構造が変更されていない場合は、ガイド表示GMの一端を中心として、ガイド表示GMが向く方向を12時としたときの11時の方向は、C23の点線に示す方向となり、ガイド表示GMとC23の点線の間の領域が切開領域となる。一方、図35のように臓器の構造が変更されている場合、ガイド表示GMの一端を中心として、ガイド表示GMが向く方向を12時としたときの11時の方向は、C24の点線に示す方向となり、ガイド表示GMとC24の点線の間の領域が切開領域となる。
【0095】
このように、C14の内視鏡画像だけを見ると、ガイド表示GMの方向とC24の点線の方向は12時と11時の関係ではないようにも見えるが、本実施形態においては、頂上ラインの乳頭開口部側の一端を12時の中心と規定していることから、切開領域を正確に表示することができる。以上のことから、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、推定された頂上ラインの乳頭開口部側の一端を中心として、推定した頂上ラインを12時方向にしたときにおける、12時方向から11時方向の間を示すガイド表示を内視鏡画像に重畳表示する(ステップS364、ステップS400)。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、推定された頂上ラインの乳頭開口部側の一端を中心として、推定した頂上ラインを12時方向にしたときにおける、12時方向から11時方向の間を示すガイド表示を内視鏡画像に重畳表示する(ステップS364、ステップS400)処理を行う。このようにすることで、ESTによる切開処置を行うにあたり、より安全な切開処置を行うことを促進できる。例えばESTの切開作業はマニュアル作業となるため、誤差が生じ得る。しかし上記した12時方向に対して1時方向に切開方向がずれることは動脈を損傷させる可能性がある。その点、本実施形態の手法を適用することで、切開方向を11時側に誘導させることができるので、ESTの切開作業に誤差が生じても動脈が損傷する可能性を低くすることができる。
【0096】
また、本実施形態は、ガイド表示GMの長さをさらに規定する手法をさらに含んでもよい。具体的には、例えば処理部100を図37に示す構成例のようにし、図27の処理例に図38のフローチャートに示す処理例を追加することで、上記した手法が実現できる。図37の処理部100の構成例は、図26の処理部100の構成例に対して、切開長推定部170をさらに含む点で異なる。また、切開長推定部170は、ハチマキひだ推定部180をさらに含む。なお、図示は省略するが、図37の処理部100は図29の処理部100に切開長推定部170等を追加して構成してもよい。この場合、図30の処理例に図38のフローチャートに示す処理例を追加すればよい。
【0097】
図38のフローチャートに示す処理例について説明する。プロセッサ10は、ハチマキひだ推定部180として機能し、ハチマキひだを推定する処理(ステップS380)を行う。
【0098】
ステップS380は、機械学習された学習済みモデル22を用いて行われる。つまりプロセッサ10をハチマキひだ推定部180として機能させる場合に読み出される学習済みモデル22は、例えば深度推定部110が生成した深度マップを入力データとし、当該深度マップにおいてハチマキひだに相当する領域を正解ラベルとして出力するように機械学習されている。なお、図示はしていないが、例えば切開長推定部170は表示制御部50から内視鏡画像を受信し、学習済みモデル22は、内視鏡画像を入力データとし、当該内視鏡画像におけるハチマキひだに相当する領域を正解ラベルとして出力するように機械学習してもよい。
【0099】
そしてプロセッサ10は、切開長推定部170として機能し、ハチマキひだの位置情報から切開長の目安を推定する処理(ステップS390)を行う。その後プロセッサ10は、図8のステップS400を行う。これにより、例えば図39のB31に示すような内視鏡画像を得ることができる。B31に示す内視鏡画像において、ステップS380により、B32に示すようにハチマキひだと推定される領域がセグメンテーションされる。また、ステップS390によって、B33に示す乳頭開口部からB32に示すハチマキひだの領域までの長さで、ガイド表示GMが表示されている。
【0100】
このように、本実施形態の処理システム3において、プロセッサ10は、ハチマキひだの位置情報を推定し(ステップS380)、推定したハチマキひだの位置情報に基づいて切開長の情報を推定し(ステップS390)、推定した切開長に基づく長さのガイド表示GMを内視鏡画像に重畳表示する。本実施形態の手法を処理方法として実現する場合においても同様である。つまり、本実施形態の処理方法において、ハチマキひだの位置情報を推定する処理(ステップS380)と、推定したハチマキひだの位置情報に基づいて切開長の情報を推定する処理(ステップS390)とをさらに行い、推定した切開長に基づく長さのガイド表示GMを内視鏡画像に重畳表示する処理(ステップS400)を行う。このようにすることで、ユーザは、推定されたハチマキひだの位置情報を参考にして、ESTを行うことができる。これにより、ユーザは、ESTの切開範囲を、大切開を避けて小切開または中切開に留めるようにESTを行うことができる。これにより、過剰な出血、穿孔等を防止できる。なお、小切開はハチマキひだを超えない切開範囲をいい、大切開は口側隆起の上側の縁までの切開範囲をいい、中切開は小切開と大切開の中間の切開範囲をいう。
【0101】
また、図40に示すように、切開長推定部170は、ハチマキひだ推定可否判断部182、アラーム情報生成部184をさらに含んでもよい。この場合、図38の処理例を図41のフローチャートに示す処理例に変形してもよい。
【0102】
図41のフローチャートに示す処理例について説明する。なお、図38と同様の処理については説明を適宜省略する。プロセッサ10は、前述のステップS380を行った後、ハチマキひだ推定可否判断部182として機能し、ハチマキひだの推定確率が所定値以上であるか否かについて判断する処理(ステップS382)を行う。
【0103】
そしてプロセッサ10は、ハチマキひだの推定確率が所定値未満である場合(ステップS382でNO)、アラーム情報生成部184として機能し、アラーム情報を生成する(ステップS384)。例えばプロセッサ10は、図39のB34に示すようなハチマキひだの推定確率を表示するとともに、当該推定確率が所定値未満である旨の表示処理をさらに行ってもよいし、所定のアラーム音を発する処理を行ってもよく、公知の手法を幅広く適用できる。ハチマキひだと推定される確率が所定値以上でない場合は、B32に示す領域と異なる領域が実際のハチマキひだである可能性が高くなる。そのため、表示されるガイド表示GMの切開長だけESTを行っても、所望の範囲よりも大きな範囲で切開されてしまう可能性がある。その点、本実施形態の手法を適用することで、意図しない範囲で切開されることを防止できる。一方、プロセッサ10は、ハチマキひだの推定確率が所定値以上であった場合(ステップS382でYES)、前述のステップS390を行う。
【0104】
また、切開長推定部170は、図42に示すようにアラーム情報生成部184に替えて切開長短縮化部186を含むようにしてもよい。この場合、図38の処理例を図43のフローチャートに示す処理例に変形してもよい。
【0105】
図43のフローチャートに示す処理例について説明する。なお、図38図41と同様の処理については説明を適宜省略する。プロセッサ10は、前述のステップS380、ステップS382の処置を行う。そしてプロセッサ10は、ハチマキひだの推定確率が所定値未満である場合(ステップS382でNO)、切開長短縮化部186を含む切開長推定部170として機能し、ハチマキひだの位置情報から切開長の目安を推定し、推定した切開長の目安を短縮する処理(ステップS386)を行う。そしてプロセッサ10は、図8のステップS400を行う。図41で前述したように、ステップS382でNOとなる場合、図39のB32に示す、推定されたハチマキひだ領域より広い領域が、実際のハチマキひだの領域である可能性が高い。そこで、図示は省略するが、例えばプロセッサ10は、乳頭開口部からハチマキひだまでの長さを求め、さらに当該長さに一定の割合で短縮した長さからなるガイド表示GMを表示する。このようにすることで、ハチマキひだの領域の推定精度が十分ではない場合に、所望の範囲よりも大きな範囲で切開されてしまう可能性を低くすることができる。
【0106】
なお、図26図32図37の処理部100による手法を個別に説明しているが、これらの手法は適宜組み合わせることができる。例えば図44に示すように、処理部100は、深度推定部110、頂上ライン推定部120の他、乳頭開口部検出部150、切開領域生成部160、切開長推定部170を含む構成とすることもできる。同様に、図示は省略するが、処理部100は、深度推定部110、頂上ライン推定部120の他、処置具検出部152、切開領域生成部160、切開長推定部170を含む構成とすることもできる。
【0107】
以上、本開示を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、開示の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の開示を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0108】
1…内視鏡システム、3…処理システム、5…内視鏡、7…脱気装置、9…表示装置、10…プロセッサ、20…メモリ、22…学習済みモデル、30…入力部、40…出力部、50…表示制御部、60…圧力判定部、100…処理部、110…深度推定部、120…頂上ライン推定部、122…深度推定結果減算部、130…キーポイント検出部、132…点群データ生成部、141…第1深度推定結果位置合わせ部、142…第2深度推定結果位置合わせ部、150…乳頭開口部検出部、152…処置具検出部、160…切開領域生成部、170…切開長推定部、180…推定部、182…推定可否判断部、184…アラーム情報生成部、186…切開長短縮化部、DR1,DR2,DR3,DR4,DR11,DR12,DR13…方向、GM…ガイド表示
【要約】
【課題】胆管の処置の利便性を向上させる処理システム等の提供。
【解決手段】処理システム3は、ハードウェアを含むプロセッサ10を含む。プロセッサ10は、口側隆起を含む十二指腸乳頭部を撮像した内視鏡画像を取得し、十二指腸乳頭部を含む領域の深度マップを内視鏡画像から推定し、推定された深度マップから口側隆起の頂上ラインを推定し、推定された頂上ラインに基づくガイド表示GMを、内視鏡画像に重畳して表示する処理を行う。このようにすることで、ユーザはガイド表示GMを見ることで口側隆起の頂上ラインを把握できる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
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図13
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