(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】エレベータ巻上機及びエレベータ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
B66B11/08 A
B66B11/08 G
(21)【出願番号】P 2024021938
(22)【出願日】2024-02-16
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 英人
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-18157(JP,A)
【文献】特開2010-37108(JP,A)
【文献】特開2022-154393(JP,A)
【文献】特開2013-14395(JP,A)
【文献】特開2004-18168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動シーブ、
前記駆動シーブを回転させる巻上機モータ、
ブレーキ回転体と、前記ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、前記駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバー
を備え、
前記ブレーキカバーは、
通常位置と密閉位置との間で前記巻上機モータに対して回転可能なカバー本体
を有しており、
前記密閉位置は、前記巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉し前記巻上機ブレーキへの浸水を抑制する位置であり、
前記通常位置は、前記巻上機ブレーキの周囲の空間の上部を開放する位置であり、
前記カバー本体は、冠水時に浮力によって前記通常位置から前記密閉位置まで回転するようになっているエレベータ巻上機。
【請求項2】
前記ブレーキカバーは、
前記カバー本体の下端部に設けられているヒンジ
をさらに有しており、
前記カバー本体は、前記ヒンジを介して、前記巻上機モータに対して回転可能に連結されている請求項1記載のエレベータ巻上機。
【請求項3】
前記カバー本体は、
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆う主部と、
前記主部における前記巻上機モータとは反対側の端部の下端から突出している突出部と
を有している請求項1又は請求項2に記載のエレベータ巻上機。
【請求項4】
前記ブレーキカバーは、
前記カバー本体が前記通常位置に位置するときに、前記カバー本体の側面と前記巻上機モータとの間の隙間を塞ぐ塞ぎ部材
をさらに有している請求項1又は請求項2に記載のエレベータ巻上機。
【請求項5】
駆動シーブ、
前記駆動シーブを回転させる巻上機モータ、
ブレーキ回転体と、前記ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、前記駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバー
を備え、
前記ブレーキカバーは、
通気口が設けられているカバー本体と、
前記通気口を開放する通常位置と、前記通気口を閉じて前記巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉する密閉位置との間で変位可能に前記カバー本体に設けられている蓋部材と
を有しており、
前記蓋部材は、冠水時に浮力によって前記通常位置から前記密閉位置まで変位するようになっているエレベータ巻上機。
【請求項6】
前記カバー本体における前記通気口の内側に設けられているファン
をさらに備えている請求項5記載のエレベータ巻上機。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項5、及び請求項6のいずれか1項に記載のエレベータ巻上機が昇降路のピットに設置されているエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ巻上機及びエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータでは、昇降路のピットに縦柱が設置されている。巻上機は、基台上に固定されている。基台には、移動装置が設けられている。基台は、移動装置によって、縦柱に沿って上昇可能になっている。移動装置は、ピットの冠水時に、基台を上昇させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータでは、重量物である巻上機を上昇させるために、十分な強度の縦柱、基台、移動装置等をピットに設置する必要があり、構造が大掛かりになる。
【0005】
これに対して、巻上機ブレーキへの浸水を抑制すために、巻上機ブレーキをカバーで覆うと、巻上機ブレーキへの通電により発生した熱がカバー内にこもり、巻上機ブレーキが高温に晒される恐れがある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成により、巻上機ブレーキへの浸水を抑制しつつ、ブレーキカバー内が高温になることを抑制することができるエレベータ巻上機及びエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベータ巻上機は、駆動シーブ、駆動シーブを回転させる巻上機モータ、ブレーキ回転体と、ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバーを備え、ブレーキカバーは、通常位置と密閉位置との間で巻上機モータに対して回転可能なカバー本体を有しており、密閉位置は、巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉し巻上機ブレーキへの浸水を抑制する位置であり、通常位置は、巻上機ブレーキの周囲の空間の上部を開放する位置であり、カバー本体は、冠水時に浮力によって通常位置から密閉位置まで回転するようになっている。
また、本開示に係るエレベータ巻上機は、駆動シーブ、駆動シーブを回転させる巻上機モータ、ブレーキ回転体と、ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバーを備え、ブレーキカバーは、通気口が設けられているカバー本体と、通気口を開放する通常位置と、通気口を閉じて巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉する密閉位置との間で変位可能にカバー本体に設けられている蓋部材とを有しており、蓋部材は、冠水時に浮力によって通常位置から密閉位置まで変位するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、簡単な構成により、巻上機ブレーキへの浸水を抑制しつつ、ブレーキカバー内が高温になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1によるエレベータ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1のエレベータ巻上機を示す側面図である。
【
図4】
図2のブレーキカバーの通常時の状態を示す側面図である。
【
図5】
図4のピットの冠水時におけるブレーキカバーの状態を示す側面図である。
【
図6】
図5の水位が上昇した状態を示す側面図である。
【
図7】実施の形態2によるエレベータ巻上機の要部を示す側面図である。
【
図8】
図7のピットの冠水時におけるエレベータ巻上機の状態を示す側面図である。
【
図10】実施の形態2の蓋部材の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータ装置を示す斜視図である。図において、昇降路11内には、第1かごガイドレール12、第2かごガイドレール13、第1釣合おもりガイドレール14、及び第2釣合おもりガイドレール15が設置されている。
【0011】
かご16は、第1かごガイドレール12と第2かごガイドレール13との間に設けられている。また、かご16は、第1かごガイドレール12及び第2かごガイドレール13に案内されて、昇降路11内を昇降する。
【0012】
釣合おもり17は、第1釣合おもりガイドレール14と第2釣合おもりガイドレール15との間に設けられている。また、釣合おもり17は、第1釣合おもりガイドレール14及び第2釣合おもりガイドレール15に案内されて、昇降路11内を昇降する。
【0013】
昇降路11のピット11aには、機械台18が設置されている。機械台18上には、エレベータ巻上機30が設置されている。即ち、エレベータ巻上機30は、昇降路11のピット11aに設置されている。また、エレベータ巻上機30は、巻上機本体31と、駆動シーブ32とを有している。
【0014】
駆動シーブ32には、懸架体19が巻き掛けられている。懸架体19としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。
【0015】
かご16及び釣合おもり17は、懸架体19によって昇降路11内に吊り下げられている。また、かご16及び釣合おもり17は、駆動シーブ32が回転することによって昇降路11内を昇降する。
【0016】
かご16の下部には、第1かご吊り車21と、第2かご吊り車22とが設けられている。釣合おもり17の上部には、釣合おもり吊り車23が設けられている。
【0017】
第1かごガイドレール12の上端部には、第1綱止め具24が取り付けられている。昇降路11の頂部には、第1上部梁25と第2上部梁26とが配置されている。第1上部梁25は、第1釣合おもりガイドレール14の上端部と、第2釣合おもりガイドレール15の上端部とに固定されている。第2上部梁26は、第1上部梁25と、第2かごガイドレール13の上端部とに固定されている。
【0018】
第2上部梁26には、かご返し車27が支持されている。第1上部梁25には、釣合おもり返し車28と、第2綱止め具29とが支持されている。
【0019】
懸架体19は、第1端部19aと、第2端部19bとを有している。第1端部19aは、第1綱止め具24に接続されている。第2端部19bは、第2綱止め具29に接続されている。
【0020】
また、懸架体19は、第1端部19a側から順に、第1かご吊り車21、第2かご吊り車22、かご返し車27、駆動シーブ32、釣合おもり返し車28、釣合おもり吊り車23に巻き掛けられて、第2端部19bに至っている。
【0021】
このように、実施の形態1のエレベータ装置は、2:1ローピング方式の機械室レスエレベータである。
【0022】
図2は、
図1のエレベータ巻上機30を示す側面図である。
図3は、
図2の巻上機本体31を示す正面図であり、
図2の矢印IIIに沿って見た図である。巻上機本体31は、巻上機モータ33と、シャフト34と、巻上機ブレーキ35と、ブレーキカバー40とを有している。
【0023】
巻上機モータ33は、シャフト34を回転させる。シャフト34には、駆動シーブ32が固定されている。駆動シーブ32は、シャフト34を中心として、シャフト34とともに回転する。即ち、巻上機モータ33は、シャフト34を介して、駆動シーブ32を回転させる。
【0024】
巻上機ブレーキ35は、駆動シーブ32及びシャフト34の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキ35は、駆動シーブ32及びシャフト34の回転を制動する。
【0025】
ブレーキカバー40は、巻上機モータ33における駆動シーブ32とは反対側の端部に取り付けられている。また、ブレーキカバー40は、巻上機ブレーキ35の周囲の空間を覆うことにより、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制する。即ち、ブレーキカバー40は、防水カバーである。
図2では、ブレーキカバー40の一部を破断することにより、ブレーキカバー40内の構成が示されている。
【0026】
巻上機ブレーキ35は、ブレーキ回転体としてのブレーキディスク36と、ブレーキ本体としての一対のクランパ37とを有している。即ち、実施の形態1の巻上機ブレーキ35は、ディスクブレーキである。
図2では、一対のクランパ37のうちの一方が省略されている。
【0027】
ブレーキディスク36は、シャフト34における駆動シーブ32とは反対側の端部に固定されている。また、ブレーキディスク36は、シャフト34を中心として、シャフト34とともに回転する。一対のクランパ37は、ブレーキディスク36を把持することにより、ブレーキディスク36に制動力を印加する。
【0028】
図4は、
図2のブレーキカバー40の通常時の状態を示す側面図である。
図5は、
図4のピット11aの冠水時におけるブレーキカバー40の状態を示す側面図である。
図6は、
図5の水位が上昇した状態を示す側面図である。
図5及び
図6における斜線部分は、水を示している。
【0029】
ブレーキカバー40は、カバー本体41と、ヒンジ42と、左右一対の塞ぎ部材43とを有している。
図4及び
図5では、左右一対の塞ぎ部材43のうちの片方のみが見えている。
【0030】
カバー本体41は、ヒンジ42を介して、水平な回転軸を中心として巻上機モータ33に対して回転可能に連結されている。ヒンジ42は、カバー本体41の下端部に設けられている。これにより、カバー本体41は、
図4に示す通常位置と、
図6に示す密閉位置との間で、巻上機モータ33に対して回転可能である。
【0031】
密閉位置は、カバー本体41によって巻上機ブレーキ35の周囲の空間を密閉し、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制する位置である。
【0032】
通常位置は、巻上機ブレーキ35の周囲の空間の上部をブレーキカバー40の外部に開放する位置である。カバー本体41が通常位置に位置するとき、カバー本体41の上端と巻上機モータ33との間には、開口40aが設けられている。
【0033】
カバー本体41は、冠水時に浮力によって通常位置から密閉位置まで自動的に回転するようになっている。具体的には、冠水によりピット11a内の水位が上昇した場合、ヒンジ42を支点とした重心位置でのカバー本体41の重量よりも、浮力の方が大きければ、水位の上昇に伴ってカバー本体41が巻上機モータ33と密着する方向へ自動的に回転する。
【0034】
各塞ぎ部材43は、カバー本体41が通常位置に位置するときに、カバー本体41の側面と巻上機モータ33との間の隙間を塞いでいる。また、各塞ぎ部材43は、可撓性を有しているシート状の部材である。これにより、各塞ぎ部材43は、カバー本体41が密閉位置に移動する際に折り畳まれ、カバー本体41が巻上機ブレーキ35の周囲の空間を密閉することを妨げない。
【0035】
カバー本体41は、ケース状の主部41aと、突出部41bとを有している。主部41aは、巻上機ブレーキ35の周囲の空間を覆う部分である。突出部41bは、主部41aにおける巻上機モータ33とは反対側の端部の下端から、巻上機モータ33とは反対側へ突出している。
【0036】
突出部41bは、通常位置と密閉位置との間でカバー本体41が回転することにより、上下方向へ変位する。カバー本体41が通常位置に位置しているとき、突出部41bの先端は、ピット11aの床面に当たっている。また、突出部41bは、ピット11aの冠水時に、浮力を受けて上方へ変位する。
【0037】
このようなエレベータ巻上機30では、エレベータ装置の通常運転時に、カバー本体41が通常位置に位置している。そして、カバー本体41が通常位置に位置しているとき、巻上機ブレーキ35の周囲の空間の上部が開口40aを通して外部に開放されている。即ち、巻上機ブレーキ35がブレーキカバー40の外部に露出している。
【0038】
このため、エレベータ巻上機30の運転に伴い、一対のクランパ37、巻上機モータ33等から熱が発生した場合にも、ブレーキカバー40内に熱がこもることがなく、ブレーキカバー40内が高温になることを抑制することができる。
【0039】
また、例えば大雨によりピット11aに水が入った場合には、水位の上昇に伴って、水からの浮力を受けてカバー本体41が密閉位置に回転する。このため、簡単な構成により、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制することができる。
【0040】
従って、実施の形態1のエレベータ巻上機30によれば、簡単な構成により、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制しつつ、ブレーキカバー40内が高温になることを抑制することができる。
【0041】
また、カバー本体41は、ヒンジ42を介して、巻上機モータ33に対して回転可能に連結されている。このため、簡単な構成により、カバー本体41を通常位置と密閉位置との間で回転させることができる。
【0042】
また、カバー本体41には、突出部41bが設けられている。このため、カバー本体41の全体を大型化することなく、冠水時に浮力によりカバー本体41を密閉位置側へ速やかに回転させることができる。
【0043】
また、ブレーキカバー40は、一対の塞ぎ部材43を有している。このため、簡単な構成により、巻上機ブレーキ35への浸水をより確実に抑制することができる。
【0044】
なお、カバー本体41と巻上機モータ33との間に磁石が設けられてもよい。これにより、カバー本体41が密閉位置に回転した際におけるカバー本体41と巻上機モータ33との間の密着度を高めることができ、巻上機ブレーキ35への浸水をより確実に抑制することができる。
【0045】
また、カバー本体41と巻上機モータ33との間にシール部材が設けられてもよい。これによっても、カバー本体41が密閉位置に回転した際におけるカバー本体41と巻上機モータ33との間の密着度を高めることができ、巻上機ブレーキ35への浸水をより確実に抑制することができる。
【0046】
実施の形態2.
次に、
図7は、実施の形態2によるエレベータ巻上機30の要部を示す側面図である。
図8は、
図7のピット11aの冠水時におけるエレベータ巻上機30の状態を示す側面図である。
図8における斜線部分は、水を示している。
図9は、
図7の巻上機本体31を示す正面図である。
【0047】
実施の形態2の巻上機本体31は、巻上機モータ33と、シャフト34と、巻上機ブレーキ35と、ブレーキカバー50とを有している。実施の形態2におけるブレーキカバー50以外の構成は、実施の形態1と同様である。
【0048】
ブレーキカバー50は、ケース状のカバー本体51と、一対の平板状の蓋部材52と、複数の塞ぎ部材53を有している。カバー本体51は、巻上機ブレーキ35の周囲の空間を覆っている。カバー本体51における巻上機モータ33とは反対側の端面には、一対の通気口51aが設けられている。
【0049】
各蓋部材52は、図示しないヒンジを介して、水平な回転軸を中心としてカバー本体41に回転可能に取り付けられている。ヒンジは、蓋部材52の下端部に設けられている。また、各蓋部材52は、カバー本体41に対して回転することにより、
図7に示す通常位置と、
図8に示す密閉位置との間で変位可能になっている。
【0050】
通常位置は、対応する通気口51aを開放する位置である。密閉位置は、対応する通気口51aを閉じて、巻上機ブレーキ35の周囲の空間を密閉する位置である。
【0051】
各蓋部材52は、冠水時に浮力によって通常位置から密閉位置まで自動的に回転するようになっている。
【0052】
各塞ぎ部材53は、対応する蓋部材52が通常位置に位置するときに、蓋部材52の側面とカバー本体51との間の隙間を塞いでいる。また、各塞ぎ部材53は、可撓性を有しているシート状の部材である。これにより、各塞ぎ部材53は、蓋部材52が密閉位置に移動する際に折り畳まれ、蓋部材52が密閉位置に変位することを妨げない。
【0053】
各蓋部材52が通常位置に位置するとき、一対の蓋部材52の上端とカバー本体51との間には、一対の開口50aが設けられている。
【0054】
一対の通気口51aのうちの一方は、吸気口である。一対の通気口51aのうちの他方は、排気口である。カバー本体51における吸気口の内側には、吸気ファン54が設けられている。カバー本体51における排気口の内側には、排気ファン55が設けられている。
【0055】
このようなエレベータ巻上機30では、エレベータ装置の通常運転時に、各蓋部材52が通常位置に位置している。そして、各蓋部材52が通常位置に位置しているとき、巻上機ブレーキ35の周囲の空間が一対の通気口51a及び一対の開口50aを通して外部に開放されている。
【0056】
このため、エレベータ巻上機30の運転に伴い、一対のクランパ37、巻上機モータ33等から熱が発生した場合にも、ブレーキカバー50内に熱がこもることがなく、ブレーキカバー50内が高温になることを抑制することができる。
【0057】
また、例えば大雨によりピット11aに水が入った場合には、水位の上昇に伴って、水からの浮力を受けて各蓋部材52が密閉位置に回転する。このため、簡単な構成により、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制することができる。
【0058】
従って、実施の形態2のエレベータ巻上機30によれば、簡単な構成により、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制しつつ、ブレーキカバー50内が高温になることを抑制することができる。
【0059】
また、ブレーキカバー50には、吸気ファン54及び排気ファン55が設けられている。このため、カバー本体51が通常位置に位置するときに、吸気ファン54及び排気ファン55を駆動することにより、ブレーキカバー50内の積極的な排気が可能となる。これにより、ブレーキカバー50内が高温になることをより確実に抑制することができる。
【0060】
なお、実施の形態2において、通気口51aは、1つ又は3つ以上であってもよい。これに伴い、蓋部材52も、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0061】
また、実施の形態2において、蓋部材52の形状は平板状に限らず、例えば、実施の形態1の突出部41bのような突出部が設けられていたり、
図10に示すようなケース状であったりしてもよい。
【0062】
また、実施の形態2において、吸気ファン54及び排気ファン55のいずれか一方は省略されてもよい。
【0063】
また、実施の形態2において、吸気ファン54及び排気ファン55の両方が省略されてもよい。
【0064】
また、各蓋部材52とカバー本体51との間に磁石が設けられてもよい。これにより、各蓋部材52が密閉位置に回転した際における各蓋部材52とカバー本体51との間の密着度を高めることができ、巻上機ブレーキ35への浸水をより確実に抑制することができる。
【0065】
また、各蓋部材52とカバー本体51との間にシール部材が設けられてもよい。これによっても、各蓋部材52が密閉位置に回転した際における各蓋部材52とカバー本体51との間の密着度を高めることができ、巻上機ブレーキ35への浸水をより確実に抑制することができる。
【0066】
また、実施の形態2では、各蓋部材52は、通常位置と密閉位置との間で回転可能である。しかし、各蓋部材52は、通常位置と密閉位置との間でスライド可能となっていてもよい。
【0067】
また、実施の形態1と実施の形態2とは、適宜組み合わされてもよい。例えば、実施の形態1のカバー本体41に、通気口51a及び蓋部材52が設けられてもよい。この場合、通気口51aの内側にファンが設けられてもよい。
【0068】
また、実施の形態1、2において、ブレーキ回転体はブレーキドラムであってもよい。即ち、巻上機ブレーキは、ドラムブレーキであってもよい。
【0069】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0070】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0071】
(付記1)
駆動シーブ、
前記駆動シーブを回転させる巻上機モータ、
ブレーキ回転体と、前記ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、前記駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバー
を備え、
前記ブレーキカバーは、
通常位置と密閉位置との間で前記巻上機モータに対して回転可能なカバー本体
を有しており、
前記密閉位置は、前記巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉し前記巻上機ブレーキへの浸水を抑制する位置であり、
前記通常位置は、前記巻上機ブレーキの周囲の空間の上部を開放する位置であり、
前記カバー本体は、冠水時に浮力によって前記通常位置から前記密閉位置まで回転するようになっているエレベータ巻上機。
(付記2)
前記ブレーキカバーは、
前記カバー本体の下端部に設けられているヒンジ
をさらに有しており、
前記カバー本体は、前記ヒンジを介して、前記巻上機モータに対して回転可能に連結されている付記1記載のエレベータ巻上機。
(付記3)
前記カバー本体は、
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆う主部と、
前記主部における前記巻上機モータとは反対側の端部の下端から突出している突出部と
を有している付記1又は付記2に記載のエレベータ巻上機。
(付記4)
前記ブレーキカバーは、
前記カバー本体が前記通常位置に位置するときに、前記カバー本体の側面と前記巻上機モータとの間の隙間を塞ぐ塞ぎ部材
をさらに有している付記1から付記3までのいずれか1項に記載のエレベータ巻上機。
(付記5)
駆動シーブ、
前記駆動シーブを回転させる巻上機モータ、
ブレーキ回転体と、前記ブレーキ回転体に制動力を印加するブレーキ本体とを有しており、前記駆動シーブの静止状態を保持する巻上機ブレーキ、及び
前記巻上機ブレーキの周囲の空間を覆うブレーキカバー
を備え、
前記ブレーキカバーは、
通気口が設けられているカバー本体と、
前記通気口を開放する通常位置と、前記通気口を閉じて前記巻上機ブレーキの周囲の空間を密閉する密閉位置との間で変位可能に前記カバー本体に設けられている蓋部材と
を有しており、
前記蓋部材は、冠水時に浮力によって前記通常位置から前記密閉位置まで変位するようになっているエレベータ巻上機。
(付記6)
前記カバー本体における前記通気口の内側に設けられているファン
をさらに備えている付記5記載のエレベータ巻上機。
(付記7)
付記1から付記6までのいずれか1項に記載のエレベータ巻上機が昇降路のピットに設置されているエレベータ装置。
【符号の説明】
【0072】
11 昇降路、11a ピット、30 エレベータ巻上機、32 駆動シーブ、33 巻上機モータ、35 巻上機ブレーキ、36 ブレーキディスク(回転体)、37 クランパ(ブレーキ本体)、40,50 ブレーキカバー、41,51 カバー本体、41a 主部、41b 突出部、42 ヒンジ、43 塞ぎ部材、51a 通気口、52 蓋部材、54 吸気ファン、55 排気ファン。
【要約】
【課題】簡単な構成により、巻上機ブレーキへの浸水を抑制しつつ、ブレーキカバー内が高温になることを抑制することができるエレベータ巻上機を得ることを目的とする。
【解決手段】カバー本体41は、通常位置と密閉位置との間で巻上機モータ33に対して回転可能である。密閉位置は、カバー本体41によって巻上機ブレーキ35の周囲の空間を密閉し、巻上機ブレーキ35への浸水を抑制する位置である。通常位置は、巻上機ブレーキ35の周囲の空間の上部をブレーキカバー40の外部に開放する位置である。カバー本体41は、冠水時に浮力によって通常位置から密閉位置まで自動的に回転するようになっている。
【選択図】
図4