(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】作業用ロボット及び作業用システム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2024089609
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】524209615
【氏名又は名称】首都高デジタル&デザイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】浜野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】布施 光弘
(72)【発明者】
【氏名】石塚 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 光
(72)【発明者】
【氏名】小山内 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 晴紀
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027274(JP,A)
【文献】特開2024-035386(JP,A)
【文献】特開平08-164855(JP,A)
【文献】特開平04-254700(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114523473(CN,A)
【文献】特開2002-293233(JP,A)
【文献】中国実用新案第212614816(CN,U)
【文献】特開2020-180000(JP,A)
【文献】特開2024-122571(JP,A)
【文献】特開2002-055091(JP,A)
【文献】実開平06-033015(JP,U)
【文献】特開平09-033648(JP,A)
【文献】特開2004-156364(JP,A)
【文献】特開2023-183600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第118088883(CN,A)
【文献】特開平05-010758(JP,A)
【文献】特開2019-218716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半筒状の型枠体を備えるトンネル覆工用型枠において、磁性を有する
作業面である前記型枠体の外周面とトンネル内周面の間に構成した打設空間の巻厚を検測する測定作業に用いる、作業用ロボットであって、
車体ユニットと、
前記車体ユニットに付設した駆動ユニットと、
前記駆動ユニットと通信可能に接続した操作ユニットと、
前記車体ユニットに付設した撮像ユニットと、
前記撮像ユニットと通信可能に接続した表示ユニットと、
前記車体ユニットに付設し、前記操作ユニットと通信可能に接続した検測ユニットと、を備え、
前記車体ユニットは、底部に磁性体を有し、
前記駆動ユニットは、複数の駆動輪と、前記操作ユニットの操作に従って前記複数の駆動輪を回転制御可能な駆動源と、を有し、
前記複数の駆動輪を前記作業面上に搭載した状態において、前記作業面と前記車体ユニットの底部の間に吸引間隔が保持され、
前記磁性体の磁力によって前記作業面を吸引し、前記複数の駆動輪を前記作業面に押し付けつつ、前記作業面上を移動可能
であり、
前記撮像ユニットが撮影した画像を、前記表示ユニットに表示可能であり、
前記検測ユニットは、前記車体ユニットに軸支した検測杆と、前記操作ユニットの操作に従って前記検測杆を前記車体ユニットに対して上方へ起立回動可能な俯仰機構と、前記検測杆の回動量を測定可能な測定部と、を有し、
前記検測杆の先端をトンネル内周面に突き当てた状態の前記検測杆の回動量に基づいて、前記巻厚を前記表示ユニットに表示可能であることを特徴とする、
作業用ロボット。
【請求項2】
前記検測ユニットが、前記操作ユニットの操作に従って前記検測杆を先端方向に伸長可能な伸縮機構を備えることを特徴とする、
請求項
1に記載の作業用ロボット。
【請求項3】
前記操作ユニットが、
操作部と、
前記操作部の操作による指令を前記駆動源、前記俯仰機構、及び/又は前記伸縮機構に送信可能な通信部と、を備えるコントローラであることを特徴とする、
請求項
2に記載の作業用ロボット。
【請求項4】
前記駆動輪が、車軸を中心に回転可能な主輪と、前記主輪の円周を軸に回転可能な複数の副輪と、の組合せからなる全方向車輪であることを特徴とする、
請求項1に記載の作業用ロボット。
【請求項5】
前記駆動輪の数が3つであり、
前記駆動輪の車軸が、前記車体ユニットの平面視において、中心側から120°間隔で放射状に延在することを特徴とする、
請求項
4に記載の作業用ロボット。
【請求項6】
前記操作ユニットが、前記車体ユニットと接続する通信ケーブルを備え、
前記通信ケーブルが、駆動ユニットとの通信接続機能と、前記車体ユニットの落下防止機能と、を兼備することを特徴とする、
請求項1に記載の作業用ロボット。
【請求項7】
略半筒状の型枠体を備えるトンネル覆工用型枠において、
磁性を有する作業面である前記型枠体の外周面とトンネル内周面の間に構成した打設空間内で作業する作業用システムであって、
車体ユニットと、前記車体ユニットに付設した駆動ユニットと、前記駆動ユニットと通信可能に接続した操作ユニットと、を備え、前記車体ユニットは、底部に磁性体を有し、前記駆動ユニットは、複数の駆動輪と、前記操作ユニットの操作に従って前記複数の駆動輪を回転制御可能な駆動源と、を有し、前記複数の駆動輪を前記作業面上に搭載した状態において、前記作業面と前記車体ユニットの底部の間に吸引間隔が保持され、前記磁性体の磁力によって前記作業面を吸引し、前記複数の駆動輪を前記作業面に押し付けつつ、前記作業面上を移動可能に構成した作業用ロボットと、
前記作業用ロボットを横向きに搭載して前記作業面上を前記型枠体の長手方向に沿って移動可能なベース台車と、
前記ベース台車に付設した測定ローラと、
前記測定ローラと前記作業用ロボットを連結する連結ワイヤと、
前記測定ローラによる前記連結ワイヤの巻き出し量及び/又は巻上げ量から、前記作業面上における前記作業用ロボットの位置を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする、
作業用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用ロボット及び作業用システムに関し、特に作業面から離間して設置した磁性体によって作業面を吸引することで、作業面上を安定的に移動可能な作業用ロボット及び作業用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、吹付コンクリート面に防水シートを敷設した後、トンネル内空に移動式のトンネル覆工用型枠を配置し、防水シート面と型枠体の外面の間に画設した打設空間内にコンクリートを打設することで、覆工コンクリートを成型する。覆工コンクリートの所定の厚み(巻厚)を確保するため、コンクリートの打設に先立ち、覆工巻厚検査を行う(非特許文献1)。
覆工巻厚検査では、型枠体の検査窓から打設空間内へスケールロッドを付き出し、スケールロッドの先端を防水シート越しに吹付コンクリート面へ押し付けることで巻厚を検測している。この他、打設空間内におけるコンクリートの打設状況も、検査窓を通じた目視により管理され、更にトンネル工事に限らず、橋梁や鉄塔などの構造物の検査や点検も、検査路等の狭隘な空間内において作業員が目視することで実施される。
特許文献1には、型枠体の適宜の箇所に検出部を設け、検出部のシリンダからトンネル内周面に向けてロッドを進退可能に構成し、測定部によってロッドの進出距離を検出する、作業用ロボットが開示されている。この作業用ロボットは、複数のロッドの進出距離に基づく機械的手段によって、効率的に覆工巻厚検査を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】2016年制定トンネル標準示方書[山岳工法編]・同解説(公益社団法人土木学会:2016年9月17日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術には、以下の問題点がある。
<1>作業員による覆工巻厚検査は、狭隘な型枠体内の通路上で行われるが、位置によっては通路上に這いつくばるなど無理な姿勢を取らざるを得ず、肉体的負担や作業服の汚れ等を伴うため、作業員にとって負担の大きい苦渋作業となっている。
<2>作業員による覆工巻厚検査は、作業員の手作業と目視によって測定される上、検査窓付近の巻厚しか実測できないため、検測結果の客観性と信頼性に欠ける。
<3>特許文献1の作業用ロボットは、ロッドを型枠体内から外向きに進出させる構造であり、ロッドを型枠体の表面から標準的な巻厚である30cm以上進出させる必要がある。このため、ロッドの収納時には、ロッドが型枠体の内側に30cm以上後退すると共に、ロッドを進退させるシリンダ等の装置が型枠体の内側に突起するため、限られた型枠体内の空間を広く占有する。
<4>以上の課題は、覆工巻厚検査に限らず、打設空間内におけるコンクリートの打設状況の管理や、橋梁の検査路内における躯体劣化状況の点検等、狭隘な空間内における作業一般に共通する。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための、作業用ロボット及び作業用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業用ロボットは、磁性を有する作業面上で作業し、車体ユニットと、車体ユニットに付設した駆動ユニットと、駆動ユニットと通信可能に接続した操作ユニットと、を備え、車体ユニットは、底部に磁性体を有し、駆動ユニットは、複数の駆動輪と、操作ユニットの操作に従って複数の駆動輪を回転制御可能な駆動源と、を有し、複数の駆動輪を作業面上に搭載した状態において、作業面と車体ユニットの底部の間に吸引間隔が保持され、磁性体の磁力によって作業面を吸引し、複数の駆動輪を作業面に押し付けつつ、作業面上を移動可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明の作業用ロボットは、車体ユニットに付設した撮像ユニットと、撮像ユニットと通信可能に接続した表示ユニットと、を備え、撮像ユニットが撮影した画像を、表示ユニットに表示可能に構成してもよい。
【0009】
本発明の作業用ロボットは、略半筒状の型枠体を備えるトンネル覆工用型枠において、作業面である型枠体の外周面とトンネル内周面の間に構成した打設空間の巻厚を検測する測定作業に用い、車体ユニットに付設し、操作ユニットと通信可能に接続した検測ユニットを備え、検測ユニットは、車体ユニットに軸支した検測杆と、操作ユニットの操作に従って検測杆を車体ユニットに対して上方へ起立回動可能な俯仰機構と、検測杆の回動量を測定可能な測定部と、を有し、検測杆の先端をトンネル内周面に突き当てた状態の検測杆の回動量に基づいて、巻厚を表示ユニットに表示可能であってもよい。
【0010】
本発明の作業用ロボットは、検測ユニットが、操作ユニットの操作に従って検測杆を先端方向に伸長可能な伸縮機構を備えていてもよい。
【0011】
本発明の作業用ロボットは、操作ユニットが、操作部と、操作部の操作による指令を駆動源、俯仰機構、及び/又は伸縮機構に送信可能な通信部と、を備えるコントローラであってもよい。
【0012】
本発明の作業用ロボットは、駆動輪が、車軸を中心に回転可能な主輪と、主輪の円周を軸に回転可能な複数の副輪と、の組合せからなる全方向車輪であってもよい。
【0013】
本発明の作業用ロボットは、駆動輪の数が3つであり、駆動輪の車軸が、車体ユニットの平面視において、中心側から120°間隔で放射状に延在してもよい。
【0014】
本発明の作業用ロボットは、操作ユニットが、車体ユニットと接続する通信ケーブルを備え、通信ケーブルが、駆動ユニットとの通信接続機能と、車体ユニットの落下防止機能と、を兼備していてもよい。
【0015】
本発明の作業用システムは、作業用ロボットと、作業用ロボットを横向きに搭載して作業面上を型枠体の長手方向に沿って移動可能なベース台車と、ベース台車に付設した測定ローラと、測定ローラと作業用ロボットを連結する連結ワイヤと、測定ローラによる連結ワイヤの巻き出し量及び/又は巻上げ量から、作業面上における作業用ロボットの位置を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業用ロボット及び作業用システムは、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>型枠体内を移動することなく操作ユニットで遠隔操作できるため、作業員の肉体的負担がない。
<2>遠隔操作によって作業面上を移動させて、検査窓から離れた任意の位置で巻厚を検測できる。また、検査員がディスプレイを介して検測作業を直接視認できるため、検測結果の客観性と信頼性が高い。
<3>上記の他、操作ユニット等のICT手段を通じて、コンクリートの打設状況管理や、構造物の検査路内における点検等、狭隘な空間内における作業を遠隔操作することで、省人化と作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の作業用ロボット及び作業用システムについて詳細に説明する。なお、本発明において「磁性」とは、磁石に磁着する性質程度の意味である。また、本発明において「通信可能に接続」とは、各構成要素が一方向又は双方向に電気的信号を発信可能に接続されていることを意味し、有線接続であるか無線接続であるかを問わない。
【実施例1】
【0019】
[作業用ロボット]
<1>全体の構成(
図1)
本発明の作業用ロボット1は、磁性を有する作業面Sに磁着して遠隔操作によって作業するためのロボットである。ここで「作業」とは、カメラによる監視巡回作業を含む。
作業用ロボット1は、車体ユニット10と、駆動ユニット20と、操作ユニット60と、を少なくとも備える。本例では、作業用ロボット1が更に、撮像ユニット30と、検測ユニット40と、照明ユニット50と、表示ユニット70と、を備える。詳細には、例えば以下の構成を採用する。
車体ユニット10の底部に駆動ユニット20を付設し、車体ユニット10の前面と両側面に撮像ユニット30を付設し、車体ユニット10の前方に検測ユニット40を付設し、車体ユニット10の前面と後面に照明ユニット50を付設する。
駆動ユニット20、撮像ユニット30、検測ユニット40、及び照明ユニット50をそれぞれ操作ユニット60と通信可能に接続する。
撮像ユニット30を表示ユニット70と通信可能に接続する。
作業用ロボット1は、車体ユニット10の底部に設けた磁性体12の磁力によって作業面Sを吸引し、当該吸引力をもって駆動ユニット20を作業面Sに押し付けつつ移動可能な構成に1つの特徴を有する。
【0020】
<1.1>作業用ロボットの用途
本例では、トンネル覆工用型枠Bの型枠体B2の表面(スキンプレート)を作業面Sとして、作業用ロボット1を、トンネル工事における覆工コンクリートの巻厚検測に使用する。
本例では、作業用ロボット1が、作業面S上において鉄筋の下を潜って移動するために、作業用ロボット1の高さ、すなわち車体ユニット10の上部又は折り畳み時の検測ユニット40の上部から駆動ユニット20の底部までの距離は、覆工コンクリートにおける鉄筋の被り厚(100mm)より低く設計する。
なお、作業用ロボット1の用途は巻厚検測に限らず、コンクリート打設状況の確認、コンクリートの締固め等の作業に用いることができる。また、トンネル覆工用型枠Bに限らず、橋梁、鉄塔、鉄骨、配管等に磁着してこれらの設備の点検や修理に用いることもできる。
【0021】
<1.2>トンネル覆工用型枠(
図2)
トンネル覆工用型枠Bは、トンネル内をトンネル軸方向に移動可能な基台B1と、基台B1上に昇降自在に架設した型枠体B2と、を少なくとも備える。
基台B1は、概ね門形に組んだ複数の鋼材をトンネル延長方向に連結してなる枠状体である。基台B1の下部には移動用の車輪を備える。
基台B1と型枠体B2の間には、型枠体B2のセット時に、型枠体B2を上昇させる昇降装置と、型枠体B2の側方セグメントを展開する展開装置を備える。
型枠体B2の外周面とトンネル内周面(防水シート面又は吹付コンクリート面)との間には、作業空間が画設される。
作業空間の厚み、すなわち型枠体B2の外周面とトンネル内周面の間の間隔が巻厚であって、巻厚は概ね30~45cm程度である。
作業空間の前後は、型枠体B2の妻部に並列した妻板(不図示)と、前工区で構築した覆工コンクリートの妻部によってそれぞれ封鎖される。
【0022】
<2>車体ユニット(
図3)
車体ユニット10は、作業用ロボット1の本体を構成するユニットである。
車体ユニット10は、シャシー11と、シャシー11の底部に設けた磁性体12と、を少なくとも備える。本例では更に、落下防止索13を備える。
本例ではシャシー11として、上部に開口を備える平面視多角形状の扁平な函体を採用し、開口を蓋体11aで被覆し、中央底部に磁性体12を内蔵して磁性部11bとする。ただしシャシー11の構造はこれに限らず、例えばシャシー11は平面視円形状等であってもよい。また、磁性体12はシャシー11に内蔵せず底部に外設してもよい。
本例では磁性体12として、ネオジム磁石を採用する。ただし磁性体12はネオジム磁石に限らず、例えばサマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、電磁石等であってもよい。
落下防止索13は、シャシー11の上部から後方に延出する。作業用ロボット1を、斜面や壁面で使用する場合、落下防止索13を高所に締結したワイヤと連結しておくことで、作業用ロボット1が落下して地面に衝突するのを防ぐことができる。
【0023】
<3>駆動ユニット(
図3)
駆動ユニット20は、作業面S上を移動するためのユニットである。
駆動ユニット20は、車体ユニット10と、複数の駆動輪21と操作ユニット60の操作に従って複数の駆動輪21を回転制御可能な駆動源22と、を少なくとも備える。
駆動源22は、駆動輪21を正逆2方向へ回転させるモータと、モータに電力を供給するバッテリと、モータとバッテリの間で電力を制御するスピードコントローラと、を少なくとも備える。
本例ではシャシー11の底面において、磁性部11bを中心に120°間隔で放射状に車軸を設定した3つの駆動源22を配置し、各駆動源22に駆動輪21を付設してシャシー11の底面から外部に露出させる。ただし駆動輪21や駆動源22の数や配置これに限らず、例えば並列配置した2つの駆動輪21を前後2列に配置した4輪構造としてもよい。
【0024】
<3.1>駆動輪(
図3)
駆動輪21は、駆動ユニット20の車輪である。
本例では駆動輪21として、車軸を中心に回転する主輪21aと、主輪21aの円周を軸に回転可能な複数の副輪21bと、の組合せからなる全方向車輪(オムニホイール)を採用する。
全方向車輪は、副輪21bによって、主輪21aの回転方向に対して直角方向にも移動可能な車輪である。全方向車輪は、複数の駆動輪21の回転方向を組み合わせることで、作業用ロボット1を作業面Sに対し斜めを含む全ての方向に進行させることができ、かつ任意の方向に回転させることもできる。
ただし駆動輪21は全方向車輪に限らず、通常の1方向車輪やクローラ等を採用してもよい。
【0025】
<3.2>吸引間隔(
図4)
本発明の作業用ロボット1は、作業面S上に搭載した状態において、作業面Sとシャシー11の底部の間に吸引間隔Dを保持する構造に1つの特徴を有する。
詳細には、シャシー11の底部を駆動輪21の接地部より高く設計することで、作業面Sとシャシー11の底部の間に吸引間隔Dを確保する。
このように、磁性部11bが作業面Sに直接接触せず、吸引間隔Dを確保しつつ作業面Sを吸引する構造であるため、凹凸や段差のある傾斜面上であっても駆動輪21が引っ掛かりにくく、安定して移動することができる。
【0026】
<4>撮像ユニット(
図1)
撮像ユニット30は、作業用ロボット1の周囲を撮影するユニットである。
撮像ユニット30は、走行カメラ31を少なくとも備え、走行カメラ31で撮影した画像を表示ユニット70に送信する。画像には動画と静止画を含む。
本例では走行カメラ31として、CCDカメラを採用し、シャシー11の前後左右に4つの走行カメラ31を設ける。また、コントローラ60を介して、走行カメラ31の撮影方向やズーム倍率等を調整可能な構成とする。
走行カメラ31をシャシー11の全方位に向けて設置することで、作業面S上で車体ユニット10の向きを変えることなく全方位に進行させることができる。
この他、シャシー11の上部に、検測ユニット40による巻厚の検測作業を撮影するための点検カメラ32を設けてもよい。
【0027】
<5>検測ユニット(
図1)
検測ユニット40は、コンクリートの巻厚を検測する手段である。
本例では検測ユニット40として、シャシー11に軸支した検測杆41と、検測杆41を回動させる俯仰機構42と、検測杆41を伸長させる伸縮機構43と、検測杆41の回動量と伸縮量を測定する測定部44と、の組合せを採用する。
検測杆41は、トンネル内周面に接触させる部材である。
本例では検測杆41として、2本のロッドを1本の横桟でH型に組んだ先端部41aと、先端部41aをロッドの長手方向に伸縮自在に保持する2本の基端部41bと、の組合せを採用し、2基端部41bの基端をシャシー11の両側面に軸支する。なお、検測杆41はこれに限らず、少なくともシャシー11に軸支されて回動可能な構造であればよい。
測定部44は、検測杆41の回動量(角度)と伸長量を測定して、回動量情報と伸長量情報を、表示ユニット70へ送信する装置である。
本例では測定部44として、俯仰機構42に接続したエンコーダと、伸縮機構43に接続したストロークセンサの組合せを採用する。
【0028】
<5.1>俯仰機構
俯仰機構42は、検測杆41をシャシー11の上面に対して起立回動させる機構である。
本例では俯仰機構42として、トルクリミッタを備えたサーボモータを採用する。詳細には、サーボモータとトルクリミッタをシャシー11内に内蔵して回転軸をシャシー11の側壁から外部へ突出させる。
上記構造により、サーボモータを回転させることで、検測杆41をシャシー11の上面に対して起立させ、また、電気信号を逆転させることで、検測杆41を下方に倒すことができる。
検測杆41の先端がトンネル内周面に接触してサーボモータのトルクが高くなると、トルクリミッタが作動してサーボモータを停止させる。これによって、検測杆41の変形や俯仰機構42の破損を防ぐと共に、検測杆41の過度の押し付けによる防水シートの破損を回避することができる。
【0029】
<5.2>伸縮機構
伸縮機構43は、検測杆41を伸縮させる機構である。
本例では伸縮機構43として、検測杆41の先端部41aとシャシー11の上部とを連結した電動アクチュエータ(不図示)を採用する。詳細には、電動アクチュエータの先端を先端部41aの横桟に軸支し、後端をシャシー11の上部中央に軸支する。
上記構造により、電動アクチュエータを起動させることで、先端部41aを基端部41bに対して先端方向に伸長させ、また、電気信号を逆転させることで、基端部41bの基端方向に短縮させることができる。
【0030】
<6>照明ユニット(
図1)
照明ユニット50は、作業用ロボット1の周囲を照射するユニットである。
照明ユニット50は、走行ライト51を少なくとも備える。
本例では走行ライト51として、LEDライトを採用し、シャシー11の前後に複数の走行ライト51を設ける。また、コントローラ60を介して、照射方向や照射強度を調整可能な構成とする。
この他、シャシー11の上部に、トンネル内周面を照射して点検カメラ32の撮影を補助する点検ライト52を設けてもよい。
【0031】
<7>操作ユニット(
図5)
操作ユニット60は、駆動ユニット20等を遠隔操作するユニットである。
操作ユニット60は、駆動ユニット20と通信可能に接続する。本例では、操作ユニット60が更に、撮像ユニット30、検測ユニット40、及び照明ユニット50と通信可能に接続し、これらのユニットを遠隔操作することができる。
本例では操作ユニット60として、レバーとボタンの組合せからなる操作部61と、操作部61の操作による指令を駆動源22等に送信する通信部62と、シャシー11内で駆動ユニット20と接続する通信ケーブル63と、の組み合わせからなるコントローラを採用する。ただし操作ユニット60はコントローラに限らず、タブレット端末、PC、ウェラブル端末等であってもよい。
操作ユニット60によって、駆動源22のスピードコントローラへ操作信号を送信し、バッテリからモータへの電力供給量をコントロールすることで、駆動ユニット20の走行速度や進行方向をコントロールする。同様に、検測ユニット40に操作信号を送信することで、俯仰機構42及び伸縮機構43を操作したり、撮像ユニット30の切り替え、撮影方向の調整、照明ユニット50の点灯、照射方向の調整等をコントロールすることができる。
通信ケーブル63は、駆動ユニット20等との通信接続機能の他、作業用ロボット1が落下して、地面に衝突するのを防ぐ落下防止機能を兼備する。なお、通信ケーブル63を用いずに無線接続としてもよい。
【0032】
<8>表示ユニット(
図5)
表示ユニット70は、撮像ユニット30が撮影した画像を表示するユニットである。
表示ユニット70は、撮像ユニット30と通信可能に接続し、ディスプレイ上に撮像ユニット30から受信する画像を表示する。
本例では表示ユニット70として、ディスプレイ71と、プロセッサ、メモリ、ストレージ等を含むコアシステム72と、を備えるタブレットPCを採用し、検測ユニット40と通信可能に接続する。
なお、本例では操作ユニット60と表示ユニット70を別構造としたが、ディスプレイ付きコントローラのような一体構造としてもよい。
【0033】
<9>巻厚の検測方法
本発明の作業用ロボット1を使用して、以下のようにコンクリートの巻厚を検測することができる。
作業用ロボット1を、型枠体A2上に設置する。この際、先端部41aがシャシー11の前方を向くように、検測杆41を倒しておく(
図6A)。
コントローラ60の操作部61を介して駆動ユニット20を操作し、作業用ロボット1を型枠体B2上の任意の側定位置まで移動させる。本例では、検測杆41が折り畳み式であるため、打設空間内に配筋している場合であっても、検測杆41を折り畳み、鉄筋Rの下を潜って移動することができる。
側定位置に到着したら作業用ロボット1の移動を停止し(
図6B)、俯仰機構42を操作して検測杆41を起立させる(
図6C)。このときの検測杆41の回動量を測定部44によって測定する。
検測杆41を最大限起立させても先端部41aがトンネル内周面に届かない場合には、伸縮機構43を操作して検測杆41を伸長させ、先端部41aをトンネル内周面に当接させる(
図6D)。このときの先端部41aの伸長量を測定部44によって測定する。
測定部44は、検測杆41の回動量情報及び伸長量情報を表示ユニット70に送信する。
表示ユニット70は、コアシステム72によって検測杆41の寸法とシャシー11の高さ等を加算して巻厚を演算し、測定位置における巻厚をディスプレイ71上に表示する。
本発明の作業用ロボット1は、検査員に任意の検測位置を選択させ、ディスプレイ41で目視しながらリアルタイムに巻厚を検測することができる(
図5)。このため、検測結果の客観性と信頼性が高い。
【0034】
<10>作業用システム(
図7)
作業用システムAは、作業用ロボット1を用いて作業するシステムである。
作業用システムAは、作業用ロボット1と、ベース台車A1と、測定ローラA2と、連結ワイヤA3と、検出手段A4と、を少なくとも備える。詳細には、ベース台車A1上に測定ローラA2を設置し、測定ローラA2に検出手段A4を付設し、測定ローラA2と作業用ロボット1を連結ワイヤA3で連結する。
ベース台車A1は、作業用ロボット1を搭載して移動する装置である。ベース台車A1には、作業用ロボット1を進行方向に対して横向きに搭載可能な架台を設ける。
当該構造により、例えばベース台車A1を、作業面S上において型枠体B2の長手方向に沿って前後に移動させつつ、作業用ロボット1をベース台車A1上から横向きに発進させることで、作業用ロボット1を方向転換させることなく型枠体B2長手方向に移動させることが可能となり、狭隘な打設空間内における作業用ロボット1の移動が容易となる。
測定ローラA2は、連結ワイヤA3を巻き出し/巻き上げる装置である。
連結ワイヤA3は、作業用ロボット1の通信ケーブル63と兼用してもよい。
【0035】
<10.1>検出手段
検出手段A4は、作業用ロボット1の位置を検出する手段である。
検出手段A4は、測定ローラA2による連結ワイヤA3の巻き出し量と巻上げ量から、作業用ロボット1の移動量をデジタル測定し、作業面S上における作業用ロボット1の位置を検出する。
本例では検出手段A4として、測定ローラA2に組み込んだワイヤエンコーダを採用する。
検出手段A4を、デジタルカウンタや位置決めカウンタと接続することで、移動量情報を表示ユニット70に送信してディスプレイ71にデジタル表示したり、駆動ユニット20と連携してコンクリートの液面以下に進まないように位置決め制御することができる。
【実施例2】
【0036】
[検測ユニットの他の実施例]
検測ユニット40は、検測杆41をシャシー11に外設する実施例1の構造に限られない。
本例では、シャシー11の上面中央に収容凹部11cを設け、収容凹部11c内に折り畳み伸縮式の検測杆41を収容する。
検測杆41は、基端を収容凹部11c内に軸支した筒状の基端部41bと、基端部41bの長手方向に沿って基端部41b内に摺動可能に収容した筒状の中間部41cと、中間部41cの長手方向に沿って中間部41c内に摺動可能に収容した先端部41aと、の組合せを採用する。
検測杆41の短縮時には、先端部41aを中間部41c内の基端側に、中間部41cを基端部41b内の基端側に、それぞれ収納する。検測杆41の伸長時には、先端部41aを中間部41c内の先端側に、中間部41cを基端部41b内の先端側に、それぞれ突出する。
以下では、検測杆41を展開する方法について説明する。
検測杆41を短縮し収容凹部11c内に折り畳んだ状態から、俯仰機構42によって検測杆41を上方に回動して引き起こす(
図8A)。
続いて、伸縮機構43の空圧シリンダによって中間部41cを基端部41b内から先端方向に突出させると同時に、先端部41aを中間部41c内から先端方向に突出させる(
図8B)。
ただし検測ユニット40の構成は上記に限らず、例えば検測杆41を2段階式又は4段階式の伸縮機構としてもよい。また、検測杆41による機械式でなく、超音波、赤外線、又はレーザ等を用いるセンサ式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 作業用ロボット
10 車体ユニット
11 シャシー
11a 蓋部
11b 磁性部
11c 収容凹部
12 磁性体
13 落下防止索
20 駆動ユニット
21 駆動輪
21a 主輪
21b 副輪
22 駆動源
30 撮像ユニット
31 走行カメラ
32 点検カメラ
40 検測ユニット
41 検測杆
41a 先端部
41b 基端部
41c 中間部
42 俯仰機構
43 伸縮機構
44 測定部
50 照明ユニット
51 走行ライト
52 点検ライト
60 操作ユニット
61 操作部
62 通信部
63 通信ケーブル
70 表示ユニット
71 ディスプレイ
72 コアシステム
A 作業用システム
A1 ベース台車
A2 測定ローラ
A3 連結ワイヤ
A4 検出手段
B トンネル覆工用型枠
B1 基台
B2 型枠体
D 吸引間隔
R 鉄筋
S 作業面
【要約】
【課題】作業面から離間して設置した磁性体によって作業面を吸引することで作業面上を安定的に移動可能な作業用ロボット及び作業用システムを提供する。
【解決手段】本発明の作業用ロボット1は、車体ユニット10と、駆動ユニット20と、操作ユニット60と、を備え、磁性体12の磁力によって作業面Sを吸引し、駆動輪21を作業面Sに押し付けつつ移動可能に構成したことを特徴とする。本発明の作業用システムAは、作業用ロボット1と、ベース台車A1と、測定ローラA2と、連結ワイヤA4と、連結ワイヤA4の巻き出し量及び/又は巻上げ量から、作業面S上における作業用ロボット1の位置を検出する検出手段A4と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1