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特許7577239長大構造物内部の防食システム及び長大構造物内部の防食方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】長大構造物内部の防食システム及び長大構造物内部の防食方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/08 20060101AFI20241025BHJP
【FI】
E01D19/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024089939
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 潤
(72)【発明者】
【氏名】森田 諭
(72)【発明者】
【氏名】小西 英明
(72)【発明者】
【氏名】北川 淳一
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-350907(JP,A)
【文献】特開2014-234642(JP,A)
【文献】特開平10-054200(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115976940(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114738031(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/08
E21F 1/00
3/00
16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一方向に延びる空間部を有する長大構造の前記空間部を前記一方向について複数のセルに区分する仕切り部と、
前記仕切り部で区分されたそれぞれの前記セルに跨って設けられ、それぞれの前記セルに除湿空気を供給する供給口が設けられた配管と、
前記配管に除湿空気を供給する除湿部と、
前記配管の前記供給口ごとに設けられ、前記セルに供給する除湿空気の流量を調整するバルブと、
前記セルの空気を隣り合う前記セルに吹送するブロアと、
それぞれの前記セルについて複数個所に設けられ、前記セル内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記湿度検出部の検出結果に基づいて、前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記湿度検出部の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの前記湿度検出部の検出結果と、前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量の目標値とを対応付けて機械学習した学習モデルにより、前記入力情報に対する前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量の目標値を推定し、推定結果に基づいて前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する
長大構造物内部の防食システム。
【請求項2】
前記セルは、前記一方向に垂直な平面による断面視において、前記空間部の周縁部に沿った環状の第1部分と、前記第1部分の内側の第2部分とを含み、
前記湿度検出部は、それぞれの前記セルにおいて、前記第1部分と前記第2部分とに設けられる
請求項1に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項3】
前記第1部分は、前記空間部を囲う前記長大構造物の壁部に面し、前記壁部を介して前記空間部の外側の湿分を含む除湿空気が浸入する部分である
請求項2に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項4】
前記第2部分は、前記供給口を含み、前記供給口からの前記除湿空気が直接供給される部分である
請求項2に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項5】
複数の前記セルは、前記一方向に互いに連通するように前記仕切り部により区分され、
前記除湿部は、連通部分及び前記ブロアを介して複数の前記セル内の除湿空気を回収し、除湿して前記配管に供給する
請求項2に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項6】
前記ブロアは、前記第2部分に配置される
請求項2に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項7】
前記ブロアは、前記一方向から見た場合に、前記供給口の下側に配置される
請求項6に記載の長大構造物内部の防食システム。
【請求項8】
内部に一方向に延びる空間部を有する長大構造の前記空間部を前記一方向について複数のセルに区分する仕切り部と、
前記仕切り部で区分されたそれぞれの前記セルに跨って設けられ、それぞれの前記セルに除湿空気を供給する供給口が設けられた配管と、
前記配管に除湿空気を供給する除湿部と、
前記配管の前記供給口ごとに設けられ、前記セルに供給する除湿空気の流量を調整するバルブと、
前記セルの空気を隣り合う前記セルに吹送するブロアと、
それぞれの前記セルについて複数個所に設けられ、前記セル内の湿度を検出する湿度検出部と
を備える長大構造物内部の防食方法であって、
前記湿度検出部の検出結果を入力情報として取得し、
それぞれの前記湿度検出部の検出結果と、前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量の目標値とを対応付けて機械学習した学習モデルにより、前記入力情報に対する前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量の目標値を推定し、推定結果に基づいて前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する
長大構造物内部の防食方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長大構造物内部の防食システム及び長大構造物内部の防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の長大構造物において、内部に空間部が設けられる場合、当該空間部に湿分が浸入して内部から長大構造物が腐食するおそれがあるため、空間部の除湿を行う構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-350907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載においては、長大構造物の内部の空間部が一方向に延びている構成である。このような場合、一方向の全体に亘って空間部をムダ・ムラなく除湿することが困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、長大構造物の内部の空間部をムダ・ムラなく除湿することが可能な長大構造物内部の防食システム及び長大構造物内部の防食方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る長大構造物内部の防食システムは、内部に一方向に延びる空間部を有する長大構造の前記空間部を前記一方向について複数のセルに区分する仕切り部と、前記仕切り部で区分されたそれぞれの前記セルに跨って設けられ、それぞれの前記セルに除湿空気を供給する供給口が設けられた配管と、前記配管に除湿空気を供給する除湿部と、前記配管の前記供給口ごとに設けられ、前記セルに供給する除湿空気の流量を調整するバルブと、前記セルの空気を隣り合う前記セルに吹送するブロアと、それぞれの前記セルについて複数個所に設けられ、前記セル内の湿度を検出する湿度検出部と、前記湿度検出部の検出結果に基づいて、前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する制御部とを備え、前記制御部は、前記湿度検出部の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの前記湿度検出部の検出結果と、前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量とを対応付けて機械学習した学習モデルにより、前記入力情報に対する前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を推定し、推定結果に基づいて前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する。
【0007】
本発明に係る長大構造物内部の防食方法は、内部に一方向に延びる空間部を有する長大構造の前記空間部を前記一方向について複数のセルに区分する仕切り部と、前記仕切り部で区分されたそれぞれの前記セルに跨って設けられ、それぞれの前記セルに除湿空気を供給する供給口が設けられた配管と、前記配管に除湿空気を供給する除湿部と、前記配管の前記供給口ごとに設けられ、前記セルに供給する除湿空気の流量を調整するバルブと、前記セルの空気を隣り合う前記セルに吹送するブロアと、それぞれの前記セルについて複数個所に設けられ、前記セル内の湿度を検出する湿度検出部とを備える長大構造物内部の防食方法であって、前記湿度検出部の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの前記湿度検出部の検出結果と、前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量とを対応付けて機械学習した学習モデルにより、前記入力情報に対する前記除湿部の運転状態並びにそれぞれの前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を推定し、推定結果に基づいて前記除湿部の運転状態、前記バルブの開度及び前記ブロアの風量を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長大構造物の内部の空間部をムダ・ムラなく除湿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る防食システム(長大構造物内部の防食システム)の一例を示す模式図(上方から見た断面図)である。
図2図2は、本実施形態に係る防食システム(長大構造物内部の防食システム)の一例を示す模式図(側方から見た断面図)である。
図3図3は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図4図4は、空間部のセルについて第1部分と第2部分とのそれぞれの空気の流れをモデル化した図である。
図5図5は、制御部の一例を示す機能ブロック図である。
図6図6は、長大構造物の防食方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る長大構造物内部の防食システム及び長大構造物内部の防食方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1及び図2は、本実施形態に係る防食システム(長大構造物内部の防食システム)の一例を示す模式図である。図1は上方から見た断面図であり、図2は側方から見た断面図である。図3は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。図1及び図2において、湿度検出部60の図示を省略している。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る防食システムSYSは、橋梁等の長大構造物100の内部の空間部90を除湿することにより、長大構造物100を腐食から防止する。長大構造物100は、一方向(以下、第1方向D1と表記する)に延びる構成であり、空間部90についても、長大構造物100に沿って第1方向D1に延びる構成である。空間部90は、図3に示す断面視において、長大構造物100を構成する壁部80に囲まれた構成である。
【0013】
防食システムSYSは、仕切り部10と、配管20と、除湿部30と、バルブ40と、ブロア50と、湿度検出部60と、制御部70とを備える。
【0014】
除湿部30は、除湿空気供給部31と、桁内空気回収部32と、除湿処理部33と、外気吸気部34と湿潤空気排気部35とを備える。
【0015】
仕切り部10は、空間部90を第1方向D1について複数のセルSに区分する。換言すると、仕切り部10により、空間部90は、第1方向D1について複数のセルSに区分される。仕切り部10は、空間部90を第1方向D1に完全に仕切る必要はなく、第1方向D1に配置されるリブ(横リブ)等の構造物を仕切り部10とすることができる。この場合、隣り合うセルS同士は、連通部分11により連通された状態となる。
【0016】
本実施形態では、隣り合う各セルS同士の間に連通部分11が形成されるように区分された構成を例に挙げて説明する。なお、第2方向D2は、長大構造物100の幅方向であり、第1方向D1及び高さ方向D3にそれぞれ直交する方向である。
【0017】
配管20は、仕切り部で区分されたそれぞれのセルSに跨って設けられる。配管20は、それぞれのセルSに除湿空気を供給する供給口21を有する。配管20は、空間部90において、第1方向D1に直交する第2方向D2の中央部であり、高さ方向D3の上端に配置される。供給口21は、配管20の下部に配置され、配管20から下方に除湿空気F1を供給する。
【0018】
除湿部30は、除湿空気供給部31を介して配管20に除湿空気F1を供給する。除湿部30は、例えば空間部90において第1方向D1の一方の端部に配置することができる。以下、空間部90では、除湿部30が設けられる側を第1方向D1の上流側と表記し、当該上流側の反対側を第1方向D1の下流側と表記する。本実施形態において、桁内空気回収部32は、複数のセルS内の空気F5を回収する。除湿処理部33は、回収した空気F5を昇温して多くの水蒸気を飽和させた状態とし、湿潤空気排気部35を介して当該空気F5を空間部90の外に排出する。外気吸気部34は、外気を吸入する。除湿処理部33は、吸入した外気を冷却して飽和水蒸気を落とす湿度調整を行う。除湿処理部33は、湿度調整を行った外気である除湿空気F1を、除湿空気供給部31から配管20に供給する。この工程で除湿処理部33により落とされた水分は、桁内空気回収部32で回収された空気F5を昇温する際に飽和され、湿潤空気となって湿潤空気入貴部34から排出される。
【0019】
バルブ40は、配管20の供給口21ごとに設けられる。バルブ40は、開度を調整することにより、セルSに供給する除湿空気F1の流量を調整する。それぞれのバルブ40は、個別に開度を調整可能である。バルブ40の開度は、制御部70の制御により行われる。
【0020】
ブロア50は、隣り合うセルS同士の間に設けられる。ブロア50は、セルSの空気を隣接セルS間で吹送する。ブロア50は、第2方向D2の中央部に配置される。図3に示すように、ブロア50は、第1方向D1から見た場合、供給口21に対して直下の位置に配置される。
【0021】
ブロア50は、第1方向D1の下流側のセルSから上流側のセルSに向けて桁内空気を吹送する。それぞれのブロア50は、除湿空気Fを吹送する際の単位時間当たりの風量(以下、単に風量と表記する)を個別に調整可能である。ブロア50の風量は、制御部70の制御により行われる。
【0022】
湿度検出部60は、それぞれのセルSについて複数個所に設けられる。湿度検出部60は、セルS内の湿度を検出し、検出結果を制御部70に送信する。
【0023】
本実施形態において、各セルSは、壁部80と、仕切り部10とで囲まれている。図3に示すように、各セルSは、制御モデルの構築上、概念的に第1部分S1と第2部分S2とを含む。第1部分S1及び第2部分S2は、第1方向D1にA-A断面を見た場合、同心の領域となっている。第1部分S1は、空間部90の周縁部、すなわち壁部80に沿った筒状の空間である。第1部分S1は、空間部90を囲う長大構造物100の壁部80に面し、壁部80上に存在するであろう添接部、スカラップ、マンホールなどのすき間を介して空間部90の外側の湿分を含む空気F2が浸入する部分である。第2部分S2は、第1部分S1の内側の空間であり、例えば図3においては壁部80に沿って便宜的に直方体状として示した空間である。なお、第2部分S2は、直方体状に限定されない。本実施形態において、第2部分S2は、供給口21を含み、供給口21からの除湿空気F1が直接供給される部分である。第1部分S1と第2部分S2との高さ方向の境界は、例えば供給口21が第2部分S2に含まれるように設定することができる。なお、上記した各ブロア50は、第2部分S2に配置される。互いに隣接するS1とS2の間では、供給口21ならびにブロア50の作用により生じる流れに応じて発生する相互間の気圧差によって空気の移動が生じる。このため、ブロア50は、空気F2と既存の空気および除湿空気F1(除湿空気F4)が混じることで相対的に湿度が下がった空気を、順次上流側のセルSの既存空気と置換していくことができる。
【0024】
本実施形態において、湿度検出部60は、それぞれのセルSにおいて、第1部分S1と第2部分S2とにそれぞれ設けられる。以下の説明において、第1部分S1に設けられる湿度検出部60を第1湿度検出部61と表記し、第2部分S2に設けられる湿度検出部60を第2湿度検出部62と表記する場合がある。第1湿度検出部61は、例えば各セルSにおいて壁部80に取り付けることができる。第2湿度検出部62は、例えば各セルSにおいて、天井等から吊り下げてもよいし、第2部分S2にリブ等の構造物が配置される場合、当該構造物に取り付けてもよい。
【0025】
ここで、長大構造物100の内部の空間部90には、橋梁のリブ等の各種構造物が配置される。本実施形態のように除湿部30により供給口21から除湿空気F1を供給しつつ、連通部分11及びブロア50を介して空気を回収する循環供給を行った場合、上記のように区画される第1部分S1及び第2部分S2においては、当該構造物や仕切り部10等の影響により、第1方向D1の圧力勾配が異なるものとなる。
【0026】
図4は、空間部90のセルSについて第1部分S1と第2部分S2とのそれぞれの除湿空気の流れをモデル化した図である。図4に示す例において、第1部分S1には、湿分を含んだ空気F2が壁部80から供給される。また、第2部分S2には、配管20から供給口21及びバルブ40を介して湿度の調整された除湿空気F1が供給される。第2部分S2に供給された除湿空気F1は、同セルSの第1部分S1に流れる。
【0027】
また、第1部分S1に供給された除湿空気F1及び空気F2は、空気F3として連通部11を介して第1方向D1の上流側のセルSの第1部分S1に流れる。また、第2部分S2に供給された除湿空気F1は、ブロア50により除湿空気F4として上流側のセルSの第2部分S2に吹送される。
【0028】
制御部70は、湿度検出部60の検出結果に基づいて、バルブ40の開度を調整する。図5は、制御部70の一例を示す機能ブロック図である。図5に示すように、制御部70は、通信部71と、処理部72と、記憶部73とを有する。
【0029】
通信部71は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行う。通信部71は、ネットワークインタフェースカード等のインタフェースを含む。
【0030】
処理部72は、各種の情報処理を行う。処理部72は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。
【0031】
処理部72は、取得部74と、推定部75と、を有する。
【0032】
取得部74は、各湿度検出部60の検出結果を入力情報として取得する。
【0033】
推定部75は、取得部74で取得された入力情報(湿度検出部60の検出結果)に基づいて、入力情報に対応するバルブ40の開度及びブロア50の風量を推定する。推定部75は、以下に説明する学習モデルMによりバルブ40の開度及びブロア50の風量を推定する。推定部75は、推定したバルブ40の開度及びブロア50の風量を出力する。
【0034】
学習モデルMは、それぞれの湿度検出部60の検出結果と、それぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量とをデータセットとして、両者の対応関係を機械学習した学習モデルである。学習モデルMは、入力情報として湿度検出部60の検出結果が入力された場合、当該入力情報に対応するバルブ40の開度及びブロア50の風量を出力情報として出力する。
【0035】
湿度検出部60の検出結果は、各セルSについて、第1湿度検出部61による第1部分S1の検出結果と、第2湿度検出部62による第2部分S2の検出結果とが別個に検出されたものである。このように、各セルSについて、第1部分S1の検出結果と第2部分S2の検出結果とを別個のデータとして学習モデルMに学習させることにより、空間部90に対して壁部80から浸潤する外部の湿分の影響、除湿部30に向けた第1方向D1についての圧損の影響、がより反映された推定結果が得られる。
【0036】
本実施形態における学習モデルMは、AI(Artificial Interigence)における学習モデルを指す。具体的には、学習モデルMは、ディープラーニングを例にとって学習された学習モデルであり、ディープラーニングによって学習された分類器を構成するニューラルネットワークを定義するモデル(ニューラルネットワークの構成情報)と、変数とで構成される。
【0037】
記憶部73は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部73は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。記憶部73は、例えば上記した学習モデルMを記憶する。
【0038】
制御部70では、処理部72においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば通信部71が受信したプログラム、記憶部73に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御部70は、各種の情報処理を実行する情報処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、制御部70とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御部70と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0039】
本実施形態では、制御部70において、取得部74が湿度検出部60の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの湿度検出部60の検出結果と、除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量とを対応付けて機械学習した上記の学習モデルMにより、入力情報に対する除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量を推定し、推定結果に基づいて除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を調整する。なお、除湿部30の運転状態は、除湿部30が運転している状態、除湿部30の運転が停止している状態を含む。除湿部30が運転している状態については、例えば運転の強度に応じて複数段階に設定されてもよい。バルブ40の開度を調整することにより、単位時間あたりに配管20からセルSに供給される除湿空気F1の供給量及び単位時間あたりにブロア50により下流側のセルSに送られる除湿空気F4の風量をセルSごとに調整することができる。
【0040】
次に、上記のように構成された防食システムSYSにより長大構造物100を防食するための動作について説明する。図6は、長大構造物100の防食方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
まず、除湿部30により配管20に除湿空気F1を供給する(ステップS10)。配管20には、除湿部30に設けられる除湿器により湿度が調整された除湿空気F1が供給される。除湿部30から供給される除湿空気F1は、配管20を流れ、各セルSに設けられた供給口21及びバルブ40を介して当該セルS(第2部分S2)に供給される。また、各セルSにおいて供給される除湿空気Fをブロア50により1つ上流側のセルSに対して除湿空気F4として吹送する(ステップS20)。また、除湿部30は、連通部分11を介して複数のセルSの空気F3を回収する(ステップS30)。この除湿部30及びブロア50の動作により、長大構造物100の内部の空間部90には、除湿部30、配管20、供給口21及びバルブ40、セルSの第1部分S1、連通部分11、除湿部30を順に循環する除湿空気F1、F3の流れと、除湿部30、配管20、供給口21及びバルブ40、セルSの第2部分S2、ブロア50、除湿部30を順に循環する除湿空気F1、F4の流れとが形成される。
【0042】
一方、空間部90には、外部の湿分を含む空気F2が壁部80を介して浸入する。当該空気F2は、壁部80から各セルS(第1部分S1)に供給され、上記のように循環する除湿空気F1、F3の流れに沿って、連通部分11から除湿部30へと流れる。
【0043】
このような除湿部30の動作において、各セルに設けられる湿度検出部60は、それぞれ湿度を検出して、検出結果を制御部70に送信する(ステップS40)。制御部70において、取得部74は、各湿度検出部60の検出結果を取得する(ステップS50)。当該検出結果には、セルSごとの第1湿度検出部61及び第2湿度検出部62の検出結果が別個に含まれている。推定部75は、取得した検出結果に基づいて、学習モデルMにより除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を推定する(ステップS60)。推定部75は、取得部74で取得した検出結果を入力情報とした場合の学習モデルMの出力情報を除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量の推定結果とする。当該推定結果は、除湿部30の運転状態並びに各セルSのバルブ40の開度及びブロア50の風量を個別に制御するための制御情報である。制御部70は、推定部75の推定結果に基づいて、除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を個別に調整する(ステップS70)。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る防食システムSYSは、内部に第1方向D1に延びる空間部90を有する長大構造物100の空間部90を第1方向D1について複数のセルSに区分する仕切り部10と、仕切り部10で区分されたそれぞれのセルSに跨って設けられ、それぞれのセルSに除湿空気を供給する供給口21が設けられた配管20と、配管20に除湿空気を供給する除湿部30と、配管20の供給口21ごとに設けられ、セルSに供給する除湿空気の流量を調整するバルブ40と、供給口21から供給される除湿空気を隣り合うセルS同士の間で吹送するブロア50と、それぞれのセルSについて複数個所に設けられ、セルS内の湿度を検出する湿度検出部60と、湿度検出部60の検出結果に基づいて、除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を調整する制御部70とを備え、制御部70は、湿度検出部60の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの湿度検出部60の検出結果と、除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量とを対応付けて機械学習した学習モデルMにより、入力情報に対する除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量を推定し、推定結果に基づいて除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を調整する。
【0045】
本実施形態に係る長大構造物100の防食方法は、内部に第1方向D1に延びる空間部90を有する長大構造物100の空間部90を第1方向D1について複数のセルSに区分する仕切り部10と、仕切り部10で区分されたそれぞれのセルSに跨って設けられ、それぞれのセルSに除湿空気を供給する供給口21が設けられた配管20と、配管20に除湿空気を供給する除湿部30と、配管20の供給口21ごとに設けられ、セルSに供給する除湿空気の流量を調整するバルブ40と、供給口21から供給される除湿空気を隣り合うセルS同士の間で吹送するブロア50と、それぞれのセルSについて複数個所に設けられ、セルS内の湿度を検出する湿度検出部60とを備える長大構造物100内部の防食方法であって、湿度検出部60の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの湿度検出部60の検出結果と、除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量とを対応付けて機械学習した学習モデルMにより、入力情報に対する除湿部30の運転状態並びにそれぞれのバルブ40の開度及びブロア50の風量を推定し、推定結果に基づいて除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を調整する。
【0046】
この構成によれば、学習モデルMにより、入力情報である湿度検出部60の検出結果に対応する除湿部30の運転状態、バルブ40の開度及びブロア50の風量を推定することができるため、長大構造物100の内部の空間部90をムダ(想定相対湿度以下に乾燥させること)・ムラ(想定相対湿度に満たない箇所が存在すること)なく除湿することが可能なる。
【0047】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、セルSは、第1方向D1に垂直な平面による断面視において、空間部90の周縁部に沿った環状の第1部分S1と、第1部分S1の内側の第2部分S2とを含み、湿度検出部60は、それぞれのセルSにおいて、第1部分S1と第2部分S2とに設けられる。
【0048】
この構成によれば、第1部分S1の検出結果と第2部分S2の検出結果とを別個のデータとして学習モデルMに学習させることにより、第1部分S1と第2部分S2とで影響が異なる場合に、各部分の影響がより反映された推定結果が得られる。
【0049】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、第1部分S1は、空間部90を囲う長大構造物100の壁部80に面し、壁部80を介して空間部90の外側の湿分を含む空気F2が浸入する部分である。
【0050】
この構成によれば、空間部90に対して壁部80から浸潤する外部の湿分の影響がより反映された推定結果が得られる。
【0051】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、第2部分S2は、供給口21を含み、供給口21からの除湿空気F1が直接供給される部分である。
【0052】
この構成によれば、供給口21から除湿空気F1が直接供給される部分の影響がより反映された推定結果が得られる。
【0053】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、ブロア50は、第2部分S2に配置される。
【0054】
この構成によれば、ブロア50により、湿分を含む空気F2の混入を抑制しつつ、供給口21から供給される除湿空気F1(除湿空気F4)を上流側のセルSに送ることができる。これにより、空間部90を効率的に除湿することができる。
【0055】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、ブロア50は、第1方向D1から見た場合に、供給口21の下側に配置される。
【0056】
この構成によれば、ブロア50により、湿分を含む空気F2の混入を抑制しつつ、供給口21から供給される除湿空気F1(除湿空気F4)を上流側のセルSに送ることができる。これにより、空間部90を効率的に除湿することができる。
【0057】
本実施形態に係る防食システムSYSにおいて、複数のセルSは、第1方向D1に互いに連通するように仕切り部10により区分され、除湿部30は、連通部分及びブロア50を介して複数のセルS内の空気を回収し、除湿して配管20に供給する。
【0058】
この構成によれば、例えば除湿部30に向けた第1方向D1についての圧損の影響がより反映された推定結果が得られる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0060】
D1…第1方向、D2…第2方向、D3…高さ方向、M…学習モデル、S…セル、S1…第1部分、S2…第2部分、SYS…防食システム、10…仕切り部、11…連通部分、20…配管、21…供給口、30…除湿部、31…除湿空気供給部、32…桁内空気回収部、33…除湿処理部、34…外気吸気部、35…湿潤空気排気部、40…バルブ、50…ブロア、60…湿度検出部、61…第1湿度検出部、62…第2湿度検出部、70…制御部、71…通信部、72…処理部、73…記憶部、74…取得部、75…推定部、80…壁部、90…空間部、100…長大構造物
【要約】      (修正有)
【課題】長大構造物の内部の空間部をムダ・ムラなく除湿する。
【解決手段】長大構造物内部の防食システムは、長大構造の空間部を一方向について複数のセルに区分する仕切り部と、それぞれのセルに除湿空気を供給する供給口が設けられた配管と、それぞれのセルについて複数個所に設けられ、セル内の湿度を検出する湿度検出部と、湿度検出部の検出結果に基づいて、バルブの開度及びブロアの風量を調整する制御部とを備え、制御部は、湿度検出部の検出結果を入力情報として取得し、それぞれの湿度検出部の検出結果と、除湿部の運転状態並びにそれぞれのバルブの開度及びブロアの風量とを対応付けて機械学習した学習モデルにより、前記入力情報に対する除湿部の運転状態並びにそれぞれのバルブの開度及びブロアの風量を推定し、推定結果に基づいて除湿部の運転状態、バルブの開度及びブロアの風量を調整する。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6