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特許7577247骨密度低下抑制用組成物及び骨密度低下抑制作用の付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】骨密度低下抑制用組成物及び骨密度低下抑制作用の付与方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7004 20060101AFI20241025BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20241025BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20241025BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
A61K31/7004
A23L33/125
A61P19/10
A61P19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024555389
(86)(22)【出願日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2024006772
【審査請求日】2024-09-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】折越 英介
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015681(JP,A)
【文献】国際公開第2021/149224(WO,A1)
【文献】WANG, Jing et al.,ASP2-1, a polysaccharide from Acorus tatarinowwi Schott, inhibits osteoclastogenesis via modulation of NFATc1 and attenuates LPS-induced bone loss in mice,International Journal of Biological Macromolecules,2020年,Vol.165,pp.2219-2230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
A23L 33/00 ~ 33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムノースを含有し、閉経後の女性に投与し、1日あたり、0.1~2g服用させる為の骨密度低下抑制用組成物。
【請求項2】
ラムノースを少なくとも12週間毎日服用する為の、請求項1に記載の骨密度低下抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラムノースを含有する骨密度低下抑制用組成物及び骨密度低下抑制作用の付与方法に関する。より詳細には、本発明は、閉経後の女性の骨密度低下を抑制するための組成物、及び骨密度低下抑制作用の付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、骨の脆弱性の亢進による骨折リスクの増大を特徴とする疾患である。骨粗鬆症の世界的な有病率は約18.3%、女性だけでは23.1%である(非特許文献1)。さらに、骨粗鬆症に関連した骨折と低骨密度(BMD)による死亡者数、および死亡または障害によって失われた標準余命を示す集団の健康状態としての障害調整生存年数は、1990年から2019年にかけて2倍以上増加しており、低BMDが世界的な健康負担になっている。
【0003】
骨組織は、骨格の質量、構造、質を維持するために、絶えずリモデリングされている。骨代謝は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収の両方によって調節され(非特許文献2)、このバランスを崩す要因の一つがエストロゲンの量の変化である。閉経後の女性では、エストロゲンの欠乏により、破骨細胞新生の促進および骨芽細胞新生の抑制に起因する骨吸収優位となるターンオーバーが誘導されるため、骨粗鬆症の発症が起こりやすい(非特許文献3)。閉経は女性にとって避けられない出来事である。したがって、閉経後の骨量維持は女性の生涯健康維持にとって重要な課題である。
【0004】
骨密度を調節するための骨吸収阻害剤などが提案されているが(特許文献1)、閉経後の女性に特化した有効な骨密度低下抑制方法は十分に研究されているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-38076号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Salari N, Ghasemi H, Mohammadi L, Behzadi M hasan, Rabieenia E, Shohaimi S, Mohammadi M. 2021. The global prevalence of osteoporosis in the world: a comprehensive systematic review and meta-analysis. J Orthop Surg Res. 16(1):609
【文献】Ballhause TM, Jiang S, Baranowsky A, Brandt S, Mertens PR, Frosch K-H, Yorgan T, Keller J. 2021. Relevance of Notch Signaling for Bone Metabolism and Regeneration. Int J Mol Sci. 22(3):1325. doi:10.3390/ijms22031325.
【文献】Shuai Y, Zhang Z, Guo T, Yang R, Jin L, Liu W. 2019 Jul 28. Postmenopausal Osteoporosis: A Mini Review. EMJ Rheumatology.:90-100. doi:10.33590/emjrheumatol/10311765.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、閉経後の女性について、骨密度の低下を抑制するための組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ラムノースを含む組成物を特定態様で投与することにより、骨密度低下を有効に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]
ラムノースを含有し、閉経後の女性に投与するための、骨密度低下抑制用組成物。
【0010】
[2]
ラムノースを組成物に共存させることによる、組成物に骨密度低下抑制作用を付与する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の骨密度低下抑制用組成物を用いることにより、閉経後の女性の骨密度低下抑制が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ラムノースを含有する骨密度低下抑制用組成物に関する。特には、閉経後の女性の骨密度低下抑制用組成物に関する。
【0013】
[骨密度低下抑制用組成物]
本発明の骨密度低下抑制用組成物は、ラムノース(L-Rhamnopyranose monohydrate)を含有する。ラムノースは、主に植物で観察されるデオキシ糖の一つで、様々な代謝物と共役している。ラムノースは食品添加物の甘味料として使用され、日本では既存食品添加物リストに含まれている。ここで、本発明に用いられるラムノースとしては、α型でもβ型でもよい。また、水和物の形であっても良い。
【0014】
本発明の骨密度低下抑制用組成物中のラムノースの含有量は、骨密度低下抑制作用を有する限り、特に制限されず、0.001~100質量%の範囲から適宜設定することができる。骨密度低下抑制用組成物中のラムノースの含有量は、0.01~100質量%が好ましく、0.1~100質量%がより好ましい。骨密度低下抑制用組成物中のラムノースの含有量は、例えば、10~90質量%程度、あるいは20~50質量%程度とすることもできる。
【0015】
本発明の骨密度低下抑制用組成物が飲料の場合、飲料中のラムノースの含有量は、0.01~5質量%、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは、0.1~2質量%、さらに好ましくは0.2~1質量%程度とすることもできる。
【0016】
本発明の骨密度低下抑制用組成物は、各種の担体並びに添加剤を配合することもできる。
【0017】
このような担体または添加剤としては、単糖類(例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース等)、二糖類(例えば、ショ糖、白糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等)、糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニット等)、オリゴ糖、澱粉(例えば、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン等)、澱粉分解物(例えば、デキストリン、粉飴等)、セルロースまたはセルロース誘導体(例えば、結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム等)、及びタルク等の賦形剤;デンプン、α化デンプン、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩等の結合剤;炭酸カルシウム、クロスポピドン、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチ、結晶セルロース、寒天等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、無水ケイ酸等の滑沢剤;ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びプルロニック(登録商標)等の懸濁化剤;白糖、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルフタレート等のコーティング剤;白糖、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、ソルビトール、クエン酸、及びアスパルテーム等の矯味剤等を挙げることができる。また上記成分の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、通常医薬品添加物として許容される、安定剤、界面活性剤、可塑剤、カプセル皮膜、可溶剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸収促進剤、吸着剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢化剤、香料、剤皮、支持体、持続化剤、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼剤、接着剤、増強剤、咀嚼剤、帯電防止剤、香料、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘着増強剤、粘稠剤、pH調整剤、浮遊剤、分散剤、噴射剤、芳香剤、防錆剤、防湿剤、放出制御膜、防腐剤、捕捉剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、離形剤、流動化剤等、または食品の添加物として許容される、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、乳化剤、膨脹剤、調味料、酸味料、苦味料、光沢剤、ガムベース、栄養強化剤、製造用剤等、香料等の任意成分を所望に応じて添加することもできる。
【0018】
本発明の骨密度低下抑制用組成物は、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、任意の可食性成分及び/又はミネラル成分等を含有することができる。
【0019】
可食性成分としては、例えば、賦形剤、有機酸、着色料、アミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、グルタミン酸、ヒスチジン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、セリン、チロシン、イソロイシン、メチオニン等)、栄養素(ビタミン類、ミネラルを含む)、抗酸化剤、保存料、抗菌剤、静菌剤、植物抽出物(例えば、茶抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物等)、果汁(例えば、オレンジ、グレープ、アップル、ピーチ、パイナップル、トマト、イチゴ等)、甘味料(ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、粉末水あめ、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメートまたはその塩、アセサルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物(例えば、ステビオサイド等)、ラカンカ抽出物(例えば、モグロシド等)等の高甘味度甘味料等)、及び香料等が挙げられる。
【0020】
ミネラル成分としては、例えば、亜鉛、銅、カルシウム、マンガン、及びマグネシウム等が挙げられ、このうち、カルシウムが特に好ましく用いられる。
【0021】
本発明の骨密度低下抑制用組成物中のカルシウムの含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.1~0.5質量%がさらに好ましい。1日の目安として、300mg~700mgのカルシウムを摂取できるように設計することが好ましい。
【0022】
本発明の骨密度低下抑制用組成物は、骨密度低下抑制作用を有する飲食品又は医薬品として、あるいは飲食品又は医薬品に骨密度低下抑制作用を付与するための添加物として用いることができる。本発明の骨密度低下抑制用組成物は、その形態を問わないが、粉末状、顆粒状、タブレット状、及びカプセル剤状などの固体の形態、ならびにシロップ状、乳液状、液状、及びジェル状などの半固体又は液体の形態を有することができる。
【0023】
本発明の骨密度低下抑制用組成物が、飲食品又は医薬品である場合、その対象は特に限定されない。
【0024】
具体的には、一般的な飲食品に加え、サプリメントや医薬部外品等の各種組成物が挙げられる。
前記飲食品組成物の例としては、乳飲料、乳酸菌飲料、乳性飲料、炭酸飲料、果実飲料(例:果実ジュース、果実ミックスジュース、果汁入り飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料、希釈飲料等)、野菜飲料、野菜及び果実飲料、茶系飲料(例:紅茶飲料、緑茶飲料、ウーロン茶飲料、麦茶飲料、ブレンド茶飲料、ハーブティーやフレーバーティーその他茶系飲料等)、ニアウォーター、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料、栄養飲料、機能性飲料、ゼリー飲料、ドリンクスープ、豆乳飲料、水に溶いて用いられる粉末ジュース等の粉末飲料、タンパク含有飲料等の飲料類;
カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア、ヨーグルト等のデザート類;
アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓等の冷菓類;
チューインガム及び風船ガム等のガム類(例:板ガム、糖衣状粒ガム);
コーティングチョコレート(例:マーブルチョコレート等)、風味を付加したチョコレート(例:イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート等)等のチョコレート類;
ハードキャンディー(例:ボンボン、バターボール、マーブル等)、ソフトキャンディー(例:キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等)、糖衣キャンディー、ドロップ、タフィ等のキャンディー類;
クッキー、ビスケット、スナック菓子等の菓子類;
セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソース等の液体調味料類;
ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ、シロップ等のジャム類;
赤ワイン等の果実酒、炭酸入りアルコール飲料;
シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;
漬物等の農産加工品;
を包含する。
【0025】
当該飲食品の例は、これらの製品の半製品、及び中間製品等も包含する。
【0026】
さらに、飲食品や医薬品の例としては、散剤(粉末剤)、顆粒剤、錠剤(トローチ剤、チュアブル剤を含む)、丸剤、カプセル剤、フィルム剤、及び液剤(ドリンク剤)の形態のものが挙げられ、栄養助剤、各種サプリメント、口臭予防剤、口中清涼剤等を含む。
【0027】
[骨密度低下抑制作用を付与する方法]
本発明の骨密度低下抑制作用を付与する方法は、飲食品又は医薬品に、ラムノースを添加すること、配合すること、又は共存させることによって実施することができる。ラムノースの含有量やその他の条件は、[骨密度低下抑制用組成物]の記載に準じる。ここで、骨密度低下抑制とは、例えば、骨密度0.7g/cm~0.95g/cm程度の被験者において、24週間後の骨密度低下率を、ラムノース非摂取の対照の骨密度低下率と比べて、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上抑制することを指す。ここで、骨密度低下率(%)は、所定期間経過後における骨密度変化量を当初の骨密度で割り、100を乗じた値である。限定はされないが、例えば、24週間の骨密度変化量を当初の骨密度で割り、100を乗じた値であり得る。
【0028】
(用途)
ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、破骨細胞への分化を抑制し、破骨細胞に分化する細胞数を減少することができる。破骨細胞への分化を抑制することによって、骨粗しょう症やその前駆段階などにおいて見られるような、破骨細胞への分化亢進による骨吸収に偏った骨代謝を、正常なバランスに改善することができるため、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、骨密度低下抑制のために用いることができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、オステオカルシン(OC)又は骨特異的アルカリホスファターゼ(BAP)などの骨形成マーカー、あるいは、総I型プロコラーゲンN末端プロペプチド、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)、I型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTx)、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP-5b)などの骨吸収マーカーを測定することによって、被験者における骨吸収の状態を評価した後に投与することができる。例えば、骨吸収マーカーの測定値が、当該技術分野において一般的に用いられている基準値と比較して、高値である場合には、骨吸収が亢進していることが疑われると判断することができる。NTxについては、例えば、閉経後の女性から採取した血清を用いて測定した値として、10.7~24.0nmol BCE(Bone Collagen Equivalent)/Lを基準値とし(骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド、2018年版、一般社団法人日本骨粗鬆症学会)、例えば、18nmol BCE/L以上24.0nmol BCE/L以下の被験者を対象とすることもできる。TRACP-5bについては、例えば、閉経後の女性から採取した血清を用いて測定した値として、250~760mU/dLを基準値とし(骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド、2018年版、一般社団法人日本骨粗鬆症学会)、450mU/dL以上760mU/dL以下の被験者を対象とすることもできる。当該基準値は、被験者から取得した試料の種類(例えば、血液(血清等)、尿等)、被験者の年齢に応じて適宜設定することができる。また、例えば、骨形成マーカーの測定値が、当該技術分野において一般的に用いられている基準値と比較して、低値である場合には、骨吸収が亢進していることが疑われると判断することができる。OCについては、例えば、閉経後の女性から採取した血清を用いて測定した値として、14.2~54.8ng/mLを基準値とすることができ(骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド、2018年版、一般社団法人日本骨粗鬆症学会)、例えば、14.2ng/mL以上22ng/mL以下の被験者を対象とすることもできる。BAPについては、例えば、閉経後の女性から採取した血清を用いて測定した値として、3.8~22.6μg/Lを基準値とすることができ(骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド、2018年版、一般社団法人日本骨粗鬆症学会)、例えば、3.8~17.5μg/Lの被験者を対象とすることもできる。また、例えば、骨形成マーカーの測定値と当該技術分野において一般的に用いられている基準値とを比較して骨形成の度合いを評価し、骨吸収マーカーの測定値と当該技術分野において一般的に用いられている基準値とを比較して骨吸収の度合いを評価し、骨形成の度合いと骨吸収の度合いとを比較して、骨吸収の度合いが骨形成の度合いよりも大きい場合には、骨吸収が亢進していると判断することができる。このため、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、血清を用いて測定したNTxが、18nmol BCE/L以上、19nmol BCE/L以上、20nmol BCE/L以上、21nmol BCE/L以上、22nmol BCE/L以上又は23nmol BCE/L以上の被験者に摂取させるか、または投与することができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、血清を用いて測定したTRACP-5bが、400mU/dL以上、450mU/dL以上、500mU/dL以上、600mU/dL以上、650mU/dL以上、700mU/dL以上、750mU/dL以上であり、760mU/dL以下の被験者に摂取させるか、または投与することができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、血清を用いて測定したOCが、14.2~54.8ng/mL以下の被験者、好ましくは、14.2~22ng/mL以下の被験者に摂取させるか、または投与することができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、血清を用いて測定したBAPが、3.8~22.6μg/L、好ましくは3.8~17.5μg/Lの被験者に摂取させるか、または投与することができる。当該被験者としては、例えば、閉経後の女性であり、好ましくは健常な閉経後の女性である。
【0029】
破骨細胞への分化を抑制することにより骨吸収に偏った骨代謝が正常なバランスに改善され、骨が脆くなること、又は骨量が低下することなどを抑制できる。このことから、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、骨量増加のために用いることができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、骨量が低下している、または骨量が低下していることが疑われるが健常者の範疇に含まれる被験者に摂取させるか、または投与することができる。例えば、若年成人比較%(YAM;Young Adult Mean)が80%未満であれば、骨量が低下している、または骨量が低下していることが疑われると判断することができる。ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、例えば、YAMが、95%、90%、85%、80%、又は75%以下、YAMが、70%、75%、80%、又は85%以上の被験者に摂取させるか、または投与することができる。
【0030】
また、歯を支える骨(歯槽骨)において、破骨細胞への分化が促進されると、骨代謝が骨吸収に偏った状態となり、歯槽骨の吸収が生じ、歯周炎などの歯周病が生じることが知られている。このことから、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、歯周病の治療または予防のために用いることができる。また、ラムノースを含む、本発明の骨密度低下抑制用組成物は、歯周病を有する、または歯周病を有することが疑われる被験者に摂取させるか、または投与することができる。
【0031】
(用量等)
本発明の骨密度低下抑制用組成物等の摂取量は、対象の、体重、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得るが、成人に対して1日あたり、上記ラムノースとして、一般的に好ましくは、5mg/kg体重以上、より好ましくは10mg/kg体重以上、更に好ましくは、15mg/kg体重以上であり、好ましくは100mg/kg体重以下、より好ましくは75mg/kg体重以下、更に好ましくは50mg/kg体重以下である。また、1日あたり、好ましくは、0.1g~2g以下、より好ましくは、0.3g~1.5g以下、更に好ましくは、0.5~1g以下であり得る。
【0032】
(投与又は摂取対象者)
本発明の骨密度低下抑制用組成物の投与又は摂取対象者としては、閉経後の女性であり、それを必要若しくは希望する人であれば特に限定されない。好ましくは、健常な閉経後の女性である。対象者の体重は、好ましくは、体重60kg以下、より好ましくは55kg以下、更に好ましくは52kg以下、さらにより好ましくは、50kg以下、最も好ましくは、48kg以下であり得る。対象者の体重は、好ましくは、体重40kg以上、より好ましくは41kg以上、更に好ましくは43kg以上であり得る。例えば、40~55kgの対象者、41~52kgの対象者、41~50kgの対象者、43~48kgの対象者であり得る。対象者のBMIは、好ましくは、24kg/m以下、更に好ましくは22kg/m以下、さらにより好ましくは20kg/m以下、最も好ましくは19kg/m以下であり得る。対象者のBMIは、好ましくは、13kg/m以上、更に好ましくは14kg/m以上、さらにより好ましくは15kg/m以上であり得る。対象者のBMIは、好ましくは、13~24kg/m、更に好ましくは14~22kg/m、さらにより好ましくは15~20kg/m、特に好ましくは15~19kg/mであり得る。実施例にも示されるように、BMI値がより低値の対象者で、本発明の効果がより顕著に奏される。骨の成分を維持する働きによって、骨の健康に役立つ食品の摂取を希望する者を対象とすることもできる。女性の骨の成分の維持に役立つ食品、丈夫な骨を維持したい者を対象とすることもできる。閉経後の女性とは、月経が完全に停止した状態で、「1年以上月経がない」対象を指す。また、年齢は限定されないが、典型的には45歳以上、47歳以上又は、50歳以上である。年齢の上限はないが、好ましくは、75歳以下、より好ましくは70歳以下、さらに好ましくは65歳以下を対象とし得る。
【0033】
(骨密度低下抑制用組成物の製造方法)
本発明の骨密度低下抑制用組成物の製造方法に制限はなく、任意の公知方法で製造することができる。これらの製造方法において、各成分の内容や含有量は、前述の骨密度低下抑制用組成物の説明に準ずる。
【0034】
(骨密度低下抑制方法等)
本発明は、ラムノースを含有する組成物を投与又は摂取させることで、骨密度低下を抑制させる方法にも関する。
ここで、骨密度低下抑制の定義、関連疾患の詳細、投与又は摂取対象者、用量等は、上記の骨密度低下抑制用組成物の項に記載の内容に準じる。
【0035】
(ラムノースの、骨密度低下抑制用組成物を製造する為の使用)
本発明はまた、ラムノースの、骨密度低下抑制用組成物又は薬剤を製造する為の使用、に関する。ここで、骨密度低下抑制の定義、関連疾患の詳細、投与又は摂取対象者、用量等は、上記の骨密度低下抑制用組成物の項に記載の内容に準じる。
【0036】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]
ラムノースの、閉経後の女性の為の骨密度低下抑制用組成物の製造の為の使用。
[2]
前記骨密度低下抑制が、健常な閉経後の女性についての骨密度低下リスクを抑制することである、[1]に記載の使用。
[3]
前記骨密度低下抑制用組成物が、前記ラムノースを、1日あたり、0.1~2g服用する為の、[1]又は[2]に記載の使用。
[4]
前記骨密度低下抑制用組成物が、前記ラムノースを、1日あたり、0.5~1g服用する為の、[3]に記載の使用。
[5]
前記骨密度低下抑制用組成物が、ラムノースを少なくとも12週間服用する為の、[1]~[4]のいずれかに記載の使用。
[6]
骨密度低下抑制用組成物が、骨粗鬆症の予防のためのものである、[1]~[5]のいずれかに記載の使用。
[7]
前記骨密度低下抑制用組成物又が、BMIが13~24kg/mの対象のためのものである、[1]~[6]のいずれかに記載の使用。
【0037】
(骨密度低下抑制用組成物)
本発明はまた、以下の態様を含む:
[8]
ラムノースを有効成分として含有する、骨密度低下抑制用組成物。
[9]
前記骨密度低下抑制が、健常な閉経後の女性についての骨密度低下リスクを抑制することである、[8]に記載の骨密度低下抑制用組成物。
[10]
前記骨密度低下抑制用組成物が、前記ラムノースを、1日あたり、0.1~2g服用する為の、[8]又は[9]に記載の骨密度低下抑制用組成物。
[11]
前記骨密度低下抑制用組成物が、前記ラムノースを、1日あたり、0.5~1g服用する為の、[10]に記載の骨密度低下抑制用組成物。
[12]
前記骨密度低下抑制用組成物が、ラムノースを少なくとも12週間服用する為の、[8]~[11]のいずれかに記載の骨密度低下抑制用組成物。
[13]
骨密度低下抑制用組成物が、骨粗鬆症の予防のためのものである、[8]~[12]のいずれかに記載の骨密度低下抑制用組成物。
[14]
前記骨密度低下抑制用組成物が、BMIが13~24kg/m以下の対象のためのものである、[8]~[13]のいずれかに記載の骨密度低下抑制用組成物。
【0038】
(処置方法)
本発明はまた、以下の態様を含む:
[15]
ラムノースを健常な閉経後の女性に投与することを含む、対象における骨密度低下抑制方法。
[16]
前記骨密度低下抑制が、健常な閉経後の女性についての骨密度低下リスクを抑制することである、[15]に記載の方法。
[17]
前記投与が、前記ラムノースを、1日あたり、0.1~2g服用させることである、[15]又は[16]に記載の方法。
[18]
前記投与が、ラムノースを少なくとも12週間服用させることである、[15]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
骨粗鬆症の予防のための方法である、[15]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
BMIが13~24kg/m以下の対象のためのものである、[15]~[19]のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0039】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、特に記載がない限り、配合量その他は、質量基準である。
【0040】
(調製例)
ラムノース(純度98.0%以上)は、エンジュ(Japanese pagoda tree, Sophora japonica L.)から常法により精製した。本品は日本の第10版食品添加物公定書「L-ラムノース」の規格に合致した。
【0041】
試験参加者は、ラムノースを1.0g/日または0.5g/日含有するパック(それぞれラムノース1.0g/日群およびラムノース0.5g/日群)またはプラセボ食品を含有するパック(プラセボ群)を1日1パック、朝食後に水とともに摂取した(両製品ともすべて粉末状)。ラムノース1.0g/日群にはラムノース1.0gのみが含まれ、ラムノース0.5g/日群とプラセボ群にはラムノースの代わりにデキストリンが含まれていた。試験開始前に行われた倫理審査において、これらの試験製品は色、におい、風味の点で区別がつかないことが確認された。
【0042】
(試験方法)
健康な閉経後女性を対象に、ラムノースを1.0g/日または0.5g/日、24週間連続摂取した際の骨密度(BMD)に及ぼす影響を検証した。さらに、ヒトの血中に分泌され、破骨細胞数と相関するTRAPアイソフォーム5b(TRACP-5b)などの骨代謝マーカーを評価することで、ヒトの骨代謝、特に骨吸収に対するラムノースの影響を調べた
【0043】
本試験は、ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験であった。本実施例は、ヘルシンキ宣言(2013年)に従い、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を厳守して実施された。
【0044】
選択基準は、20歳以上65歳未満の健常日本人女性および以下のとおりであった:
(1) 1年以上月経がなく、閉経していると考えられる者、
(2) スクリーニングおよび摂取前(Scr)において、腰椎総量の若年成人平均値(YAM)が、70%以上である者、
(3) 試験責任医師が本試験に適格と判断した者。
本試験では、骨粗鬆症およびホルモン療法中の患者は除外した。
【0045】
(評価)
骨吸収マーカーの介入効果判定期間を参考に、摂取期間を24週間(約6ヶ月)とし、摂取開始後12週間(約3ヶ月)と24週間(約6ヶ月)で評価した。有効性および安全性の評価項目は、Scr時、摂取後12週間(12週間)、摂取後24週間(24週間)に検査した。
【0046】
(結果)
二重エネルギー骨X線吸収測定一体型装置(Discovery X線骨密度測定装置、東洋メディック株式会社、東京、日本)を用いて、腰椎の正面像を撮影した。二重エネルギーX線吸収測定(DEXA) 法を用いてL2、L3、L4の骨密度を測定した。総量の算出には、L2、L3、L4のBMD平均値を合算し、24週間時点の腰椎正面の総量のBMD実測値を求めた。
【0047】
BMD測定。Discovery X線骨密度測定装置を用い、DEXA法で測定した24週間時のScrからの腰椎正面総量のBMD変化量と12週間時のScrからの実測値および変化量を評価した。さらに、L2、L3、L4それぞれのBMDの実測値、L2、L3、L4それぞれの骨面積、骨塩量、Tスコア、YAM値、Zスコア、12週間と24週間の総量とScrからの変化量を評価した。
腰椎の評価については、Discovery X線骨密度測定装置を用いて、左大腿骨 (頚部、転子部、総量) それぞれのBMD、骨面積、骨塩量、Tスコア、YAM値、Zスコアの実測値と12週間および24週間におけるScrからの変化量を評価した。
【0048】
YAM値は、研究参加者のBMDを、若年参加者の平均BMDを100%としたときの百分率で表したものである。Tスコアは、YAM値を0とし、試験参加者のBMDと比較したYAM値の標準偏差(SD)で除した値である。Zスコアは、同年齢群のBMDの平均値を0とし、同年齢群のBMDのSDで割った値を試験参加者のBMDと比較した値である。
【0049】
骨代謝マーカー。12週間と24週間におけるデオキシピリジノリンとペントシジンの測定値、およびScrからの変化量と変化率を尿検査により測定した。各項目の測定は、株式会社LSIメディエンス(日本、東京)にて、常法に従って測定された。
さらに、オステオカルシン、骨特異的アルカリホスファターゼ、総I型プロコラーゲンN末端プロペプチド、I型コラーゲン架橋N-テロペプチド、I型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTx)、TRACP-5bの12週間および24週間における実測値およびScrからの変化量と変化率を測定するため、血液検査を実施した。各項目の測定は、株式会社LSIメディエンスにて常法に従って測定された。本試験プロトコルをUMIN-CTRに登録した後、骨代謝に対する介入効果の有意性を判定するために、これらのマーカーのみ変化率を算出することにした。
【0050】
安全性評価項目として、身体測定、尿検査、血液検査が実施された。
体重、body mass index (BMI)、体脂肪率、収縮期および拡張期血圧は身体測定で測定した。身長は説明会で測定し、BMIの算出に使用した。
さらに、尿蛋白、グルコース、pH、潜血を尿検査で測定した。各項目は株式会社LSIメディエンスで常法に従って測定された。
【0051】
サンプルサイズは、全体で36人(12人/群)が登録された。特に、Julious SA (2005)は、パイロット研究の患者数を12人/群とすることを推奨しており、本実施例のサンプルサイズは妥当であった。
Enrollment, randomization, and blinding (選抜,ランダム化および盲検化)
【0052】
統計解析はすべて両側で行い、有意水準は5%とした。データ解析は、Statistical Package for the Social Sciences (バージョン23、日本アイ・ビー・エム株式会社、東京、日本) を用いて行った。プロトコルから著しく逸脱した参加者は解析集団から除外した。BMD実測値以外のアウトカム以外では、複数の項目および時点における多重性は考慮しなかった。
本試験では、PPS(per protocol analysis set)を有効性評価のための解析データセットとし、SAF(safety analysis population)を安全性評価のための解析データセットとした。
【0053】
参加者のベースライン特性は、年齢、身長、体重、BMI、収縮期および拡張期血圧、閉経からの年数、出産回数、骨折歴、過去の運動歴、腰椎正面総量のBMDについて、PPS、SAFで人口統計学的にまとめた。骨折歴と過去の運動歴についてはカイ二乗検定を用い、それ以外の項目についてはStudentのt検定を用いてラムノース介入群とプラセボ群を比較した。
【0054】
アウトカムは、平均値とSD、群間差、群間差の95%信頼区間として示された。群間差はベースラインの平均値と介入後の推定周辺平均値で示した。Scrデータはベースラインと定義し、分散分析を用いて群間比較を行った。一方で、ベースライン値を共変量、時点、群、過度の飲酒習慣の有無、時点と群の交互作用、ベースライン値と時点の交互作用、試験参加者を因子とする線形混合モデルを用いて、介入後のScrからの測定値および変化量(および変化率)を群間で比較した。本実施例で行われたサブグループ解析で用いられた統計手法は、PPSデータセットの解析で用いられたものと同様であった。
【0055】
各解析データセットにおける参加者のベースライン特性を表1に示す。すべての研究参加者は自然閉経であった。
【表1】
【0056】
腰椎正面総量のBMD、骨面積、骨塩量、Tスコア、YAM値、Zスコアの結果を表2に示す。12週間時点ではラムノース1.0g/日群とプラセボ群との間に有意差は認められなかったが、24週間時点ではBMD、Tスコア、YAM値の測定値および変化量に有意差が認められ、ラムノース1.0g/日群が有意に高値であった。
【表2】
【0057】
TRACP-5bについては、群間で有意差が認められた(表3)。24週間時点におけるTRACP-5bの実測値は、ラムノース1.0g/日群と0.5g/日群のいずれにおいても、プラセボ群と比較して有意に低かった。ベースラインからの変化量および変化率に関しても同様の結果が認められた。
【表3】
【0058】
(サブグループ解析)
PPSの解析対象者の体重とBMIに基づいてサブグループを構築し、追加調査を実施した。体重については明確な基準がないため、ScrにおけるPPSの平均値(52.19kg)未満を基準とした(SG1と定義)。BMIについては、ScrにおけるBMIが20kg/m以下を基準とした(SG2と定義)。SG1及びSG2の参加者背景を表4に示す。
【表4】
【0059】
SG1の腰椎正面総量のBMD測定と各パラメータの結果を表5に示した。ラムノース1.0g/日群とプラセボ群との比較では、12週間および24週間におけるBMD、Tスコア、YAM値、Zスコアの実測値およびベースラインからの変化量は、ラムノース1.0g/日群で有意に高値であった。さらに、24週間の骨塩量の実測値およびベースラインからの変化量は、ラムノース1.0g/日群で有意に高値であった(表5)。
【0060】
ラムノース0.5g/日群とプラセボ群との比較では、12週間および24週間におけるBMD、Tスコア、YAM値の実測値およびベースラインからの変化量は、ラムノース0.5g/日群で有意に高値であった。さらに、24週間における骨塩量およびZスコアの実測値およびベースラインからの変化量は、ラムノース0.5g/日群で有意に高値であった(表5)。
【0061】
TRACP-5b。ラムノース1.0g/日群と0.5g/日群では、12週間と24週間の実測値およびベースラインからの変化量がプラセボ群より有意に低かった(表5)。
【表5】
【0062】
SG2の腰椎正面総量のBMD測定と各パラメータの結果を表6に示した。12週間および24週間におけるBMD、Tスコア、YAM値の実測値およびベースラインからの変化量は、ラムノース1.0g/日群で有意に高い値を示した。さらに、ラムノース1.0g/日群はプラセボ群に比べ、Zスコアの24週間の実測値およびベースラインからの変化量が有意に高かった(表6)。
【0063】
ラムノース0.5g/日群とプラセボ群との比較では、12週間および24週間におけるYAM値の実測値およびベースラインからの変化量が、有意に高い値を示した。さらに、ラムノース0.5g/日群はプラセボ群に比べ、骨塩濃度、TスコアおよびZスコアの24週間の実測値およびベースラインからの変化量が有意に高かった(表6)。
【0064】
TRACP-5b。ラムノース1.0g/日群と0.5g/日群では、24週間の実測値およびベースラインからの変化量がプラセボ群より有意に低かった(表6)。
【表6】
【0065】
本実施例では、健常閉経後女性を対象に、ラムノースを1.0g/日または0.5g/日、24週間連続摂取した場合のBMDに及ぼす影響を検証することを目的とした。24週時点の腰椎正面測定におけるBMDの実測値では、ラムノース0.5g/日群の平均値がプラセボ群よりも高かったが、統計学的有意性は認められなかった。一方、ラムノース1.0g/日群はプラセボ群よりも有意に高い値を示し、ラムノース1.0g/日摂取が閉経後女性のBMD維持に寄与することが示された。
【0066】
以上によれば、体重が平均値(52.19kg)以下の参加者、またはBMIが20kg/m以下の参加者のサブグループでは、ラムノース1.0g/日群だけでなく、ラムノース0.5g/日群でも、24週時点の腰椎の正面測定におけるBMDの実測値は、プラセボ群よりも有意に高かった。
【0067】
BMIが20kg/m以下の65歳以上の個人は栄養不良に分類され(Ministry of Health, Labour and Welfare 2020)、日本では50~64歳の個人の目標BMI範囲は20.0~24.9 kg/mである(Ministry of Health, Labour and Welfare 2019)。閉経後女性を対象とした先行研究では、低体重(BMI≦20.0kg/m)(Wu and Du 2016)と痩せ型(BMI<20.0kg/m)(Armstrong et al. 2012)サブグループ分析を考慮すると、ラムノースを摂取することの効果は、低体重傾向の個人においてより敏感に反映される可能性があった。
【0068】
本実施例では、日本骨粗鬆症学会における骨代謝マーカーの使用ガイドラインに従って被験食品の介入の意義を評価するため、TRACP-5bの変化率を算出した(Nishizawa et al. 2019)。興味深いことに、摂取24週間後時点でラムノース1.0g/日群と0.5g/日群はプラセボ群と比較してTRACP-5b値が有意に低かった。変化率のプラセボ群に対する群間差は、ラムノース1.0g/日群で-18.82%、0.5g/日群で-18.11%であった。ガイドライン(Nishizawa et al. 2019)では、TRACP-5bの最小有意変化率(MSC)は12.4%であり、本試験ではTRACP-5bの群間差がMSCを上回った。したがって、ラムノースは本試験の参加者の破骨細胞の増殖を抑制し、骨吸収を制御したと考えた。
【0069】
BMDおよびTRACP-5b測定の結果は、ラムノースの投与がBMDの維持に寄与することを一貫して示していた。したがって、ラムノースは健常閉経後女性のBMDを維持する食品であると合理的に考えられた。特に、ラムノースを1.0g/日摂取すれば、研究集団におけるBMDの低下を抑制するのに十分であると考えられる。
【0070】
さらに、ラムノースを0.5g/日摂取することで、特定の集団においてBMDの低下を抑制できる可能性が示された。
【要約】
骨密度低下を抑制するための組成物を提供する。具体的には、ラムノースを含有し、閉経後の女性に投与するための、骨密度低下抑制用組成物を提供する。本態様の骨密度低下抑制は、健常な閉経後の女性についての骨密度低下リスクを抑制することであり得る。また、本態様の組成物は、1日あたり、0.1~2g服用する為の組成物であり得る。また、少なくとも12週間毎日服用する為の組成物であり得る。本発明はまた、ラムノースを組成物に共存させることによる、組成物に骨密度低下抑制作用を付与する方法も提供する。