(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】プランター及びプランター・ラック複合体
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20241028BHJP
A01G 9/04 20060101ALI20241028BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20241028BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A01G9/02 F
A01G9/04
A01G27/00 502R
A01G27/02 B
A01G27/00 502H
(21)【出願番号】P 2023139049
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515140196
【氏名又は名称】株式会社スタートライン
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 新里
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-327357(JP,A)
【文献】実開昭60-17660(JP,U)
【文献】実開平2-70647(JP,U)
【文献】登録実用新案第3074099(JP,U)
【文献】特開2000-157055(JP,A)
【文献】特開平10-108563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0305356(US,A1)
【文献】米国特許第4211037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 27/00 - 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を溜める、本体ケース底面部と該本体ケース底面部の四方より立設された本体ケース側面部とを有する本体ケースと、
前記本体ケース内に配置され複数の柱体用孔が開口された底面部と該底面部の四方より立設された側面部とを有する中板であって、前記底面部の裏面には第1の高さ寸法を持つスペーサ用リブが突設され、前記側面部の上端縁には全周に亘って水平方向に外側に突出する周縁フランジ部が設けられている、中板と、
前記柱体用孔に挿入され、前記本体ケースの底面部と前記中板の底面部との間に配置される多孔質材と、
前記中板の底面部に敷設されて前記複数の柱体用孔を通じて前記多孔質材に接触し、上面層として遮根層を有する不織布シートと、
前記不織布シートの上に載せられる植木鉢と
を備え、
前記中板は、前記スペーサ用リブが前記本体ケース底面部に当接し、前記周縁フランジ部の前記外側の突端が前記本体ケース側面部に略当接するようにして前記本体ケース内に収容され、
前記本体ケースは、
前記本体ケース側面部の上端縁に設けられる本体ケース周縁フランジ部にロートが上から差し込まれることの可能な注入口を有し、前記注入口が、平面視では、
本体ケース周縁フランジ部において半円弧以上の円周弧に形成され
、本体ケース周縁フランジ部より下の部分において前記ロートの先端部形状を覆うように前記本体ケース側面部の外面側に突出していることを特徴とす
るプランター。
【請求項2】
前記多孔質材は、多孔質材の柱体であり、
前記中板の前記底面部
においては、前記多孔質材の柱体の上端側が
前記柱体用孔よ
り露出し、前記柱体用孔より露出した前記多孔質材の柱体の上面が前記不織布シートに面接触していることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項3】
前記植木鉢には、該植木鉢を構成する植木鉢底面部及び植木鉢側面部にスリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項4】
前記本体ケース、前記中板、前記多孔質材の柱体及び前記不織布シートの各部品は、それぞれ分離自在であることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項5】
前記中板は、非
光透過性の材料より形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項6】
請求項1に記載のプランターと、
前記プランターが載置されるラックと
を備えたプランター・ラック複合体であって、
前記本体ケース底面部の裏面には、1対の脚リブが突設され、
前記本体ケースは
前記ラックのフレーム上に載置され、
前記ラックの1対のフレームに載置された状態で、
前記1対の脚リブは前記1対のフレームの内側に位置す
ることを特徴とするプランター
・ラック複合体。
【請求項7】
前記本体ケース側面部の上端縁には、外側に突出する本体ケース周縁フランジ部が設けられ、
前記本体ケース周縁フランジ部の突出端では下方に向かって延びる本体ケース垂直フランジ部が連続して設けられており、前記本体ケース垂直フランジ部は、長手方向の中央箇所が短く、両端付近では、両端に向かって徐々に長くなるよう傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項8】
前記注入口は、円弧状で、周囲部位との接続箇所がアール形状に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のプランター。
【請求項9】
植木鉢が収容される鉢挿入孔が等間隔に設けられた天板を有し、
前記天板は、非
光透過性の材料より形成され、前記中板の複数個所の天板用リブに載置されて前記本体ケースに収容されていることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項10】
前記天板は、複数の前記鉢挿入孔の間
隔が異なるものを選択的に使用できることを特徴とする請求項
9に記載のプランター。
【請求項11】
前記多孔質材は、連続気孔より形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプランター。
【請求項12】
前記不織布シートは、前記遮根層の下層に不織布層を有する構成を特徴とする請求項1に記載のプランター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえばプランターに係り、特に、植物に培養液を自動的に供給するプランターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された自動給水機能付プランターは、周囲に二重の密閉構造の貯水タンク部と、貯水タンク部によって取り巻かれ底面部を有し上面が開いているオープンケース部(植木鉢収容部)と、貯水タンク部内の上部と植木鉢内の土が水を吸い上げられる水面レベルに合わせたオープンケース部の底部とを連通する通気菅と、貯水タンク部の下部とオープンケース部内の底部とを連通する給水管(給水通路)に設けられる仕切り弁とを有する構造である。
【0003】
特許文献2の植木鉢用自動給水器では、周囲に二重壁の密閉構造の貯水タンク部と、貯水タンク部によって取り巻かれ底面部を有し上面が開いている植木鉢収容部と、貯水タンク部内の上部と植木鉢内の土が水を吸い上げられる水面レベルに合わせた植木鉢収容部の底部とを連通する通気管と、給水機構とを有する構造である。
【0004】
特許文献2の植木鉢給水器の給水機構は、給水管の下端開口と貯水タンク部とが連通しているとともに、給水管の下部に開口が設けられ、この開口が、給水管が水平レバーで回動することにより給水管の下部の開口が貯水タンク部内の下部と植木鉢収容部内の底部とを連通する弁機構を有する。これは、特許文献2に開示された植木鉢用自動給水器と、特許文献1の自動給水付プランターとは原理を同じくしているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4968687号公報
【文献】特許第5358418号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の自動給水機能付プランターは、周囲に二重壁の密閉構造の貯水タンク部と植木鉢収容部と通気管と弁機構を有するため、構造が複雑で、部品点数が多いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題点を解消するために案出されたものであり、構造が簡単で部品点数が少なく、しかも、自動潅水機能を有するプランターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願の第1の態様に係るプランターは、培養液を溜める本体ケースと、前記本体ケース内に配置される中板と、前記本体ケースの底面部と前記中板の底面部との間に配置される多孔質材と、前記中板の底面部に敷設されて前記多孔質材に接触し、上面層として遮根層を有する不織布シートとを備え、前記不織布シートの上に植木鉢が載せられる構成を特徴とする。
【0009】
本願の第2の態様に係るプランターとして、第1の態様において、前記多孔質材は、多孔質材の柱体であり、前記中板の前記底面部は、前記多孔質材の柱体の上端側が挿入される柱体用孔を有し、前記柱体用孔より露出した前記多孔質材の柱体の上面が前記不織布シートに面接触している構成としてもよい。
【0010】
本願の第3の態様に係るプランターとして、第1又は第2の態様において、前記植木鉢には、底面部及び側面部にスリットが設けられている構成としてもよい。
【0011】
本願の第4の態様に係るプランターとして、第1-第3のうちのいずれか1の態様において、前記本体ケース、前記中板、前記多孔質材の柱体及び前記不織布シートの各部品は、それぞれ分離自在である構成としてもよい。
【0012】
本願の第5の態様に係るプランターとして、第1-第4のうちのいずれか1の態様において、前記中板は、非透過性の材料より形成されている構成としてもよい。
【0013】
本願の第6の態様に係るプランターとして、第1-第5のうちのいずれか1の態様において、前記本体ケースはラックのフレーム上に載置され、前記本体ケースの底面部の裏面には、ラックの1対のフレームに載置された状態で、前記1対のフレームの内側に位置する1対の脚リブが突設されている構成としてもよい。
【0014】
本願の第7の態様に係るプランターとして、第1-第6のうちのいずれか1の態様において、前記本体ケースは、外側に突出する周縁フランジ部を有し、前記周縁フランジ部の突出端より下方に垂直フランジ部が延設され、前記垂直フランジ部は、その突出端では下方に向かって延びる垂直フランジ部が連続して設けられており、前記垂直フランジ部は、長手方向の中央箇所が短く、両端付近では、両端に向かって徐々に長くなるよう傾斜面に形成されている構成としてもよい。
【0015】
本願の第8の態様に係るプランターとして、第1-第7のうちのいずれか1の態様において、前記本体ケースは、注入口を有し、前記注入口が、平面視では、半円弧以上の円周弧に形成されている構成としてもよい。
【0016】
本願の第9の態様に係るプランターとして、第8の態様において、前記注入口は、円弧状で、周囲部位との接続箇所がアール形状に形成されている構成としてもよい。
【0017】
本願の第10の態様に係るプランターとして、第1-第9のうちのいずれか1の態様において、植木鉢が収容される鉢挿入孔が等間隔に設けられた天板を有し、前記天板は、非透過性の材料より形成され、前記中板の複数個所の天板用リブに載置されて前記本体ケースに収容されている構成としてもよい。
【0018】
本願の第11の態様に係るプランターとして、第10の態様において、前記天板は、複数の前記鉢挿入孔の間隔(個数)が異なるものを選択的に使用できる構成としてもよい。
【0019】
本願の第12の態様に係るプランターとして、第1-第11のうちのいずれか1の態様において、前記多孔質材は、連続気孔より形成されている構成としてもよい。
【0020】
本願の第13の態様に係るプランターとして、第1-第12のうちのいずれか1の態様において、前記不織布シートは、前記遮根層の下層に不織布層を有する構成としてもよい。
【0021】
本願の第14に係るプランターとして、第1-第13のうちのいずれか1の態様において、非健常者の適正に合わせたプランターの構造であることを構成としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の各態様によれば、プランターは、本体ケースと中板と多孔質材と不織布を有すれば良く、密閉構造の貯水タンクや弁機構も不要であるため、構造が簡単で部品点数が少なくて良い。そして、本体ケース内の培養液を多孔質材が吸い上げ、吸い上げられた培養液が不織布シートの吸水性、拡散性によってシート全体にわたって染み渡るため、不織布のどの位置に置かれた植木鉢にも均等に培養液が供給される。従って、構造が簡単で部品点数が少なく、しかも、自動潅水機能を有するプランターを提供できる。又、不織布シートは、上面層として遮根層を有するため、根がらみを防止できる。植物の根が不織布シートに入り込むことができないため、植物の耐性が向上し、植物の成育にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプランターの、ラックに架設された状態のプランターの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプランターの、
図1の一部破断斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプランターの、
図1の一部底面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)はラックに架設された状態のプランターの縦断面図(
図8(a)のA-A線に沿う断面)、(b)は多孔質材の柱体と不織布シートの接触状態を示す要部拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプランターの、ラックに架設された状態のプランターの横断面図(
図8のB-B線に沿う断面)である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るプランターの、本体ケースと中板の組立て斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るプランターの、本体ケースと中板の組立て前の斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は本体ケースと中板の組立て状態の平面図、(b)は本体ケースと中板の組立て状態の側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は本体ケースの上面側から見た斜視図、(b)は本体ケースの裏面側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は本体ケースの上面図、(b)は本体ケースの裏面図、(c)は本体ケースの正面図、(d)は本体ケースの側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は中板の組付け状態での注入口の要部斜視図、(b)は中板を外した状態での注入口の要部斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は中板の上面側から見た斜視図、(b)は中板の裏面側から見た斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るプランターの、(a)は中板の上面図、(b)は中板の裏面図、(c)は中板の正面図、(d)は中板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に示す実施の形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示したものであって、本発明の技術的思想は、下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、種々の変更を加えることができる。特に、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。既に公知の技術である部分は説明を省略している。
【0025】
本発明のプランターの実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る、ラック2に架設された状態のプランター1の斜視図を示す。
図2は
図1の一部破断斜視図を示す。
図3は
図1の一部底面図を示す。
図4(a)はラック2に架設された状態のプランター1の縦断面図(
図2の破断線に沿う断面)、
図4(b)は多孔質材の柱体35と不織布シート36の接触状態を示す要部拡大図を示す。
図5はラック2に架設された状態のプランター1の横断面図である。
図6は本体ケース10と中板20の組立て斜視図を示す。
図7は本体ケース10と中板20の組立て前の斜視図を示す。
図8(a)は本体ケース10と中板20の組立て状態の平面図、(b)は本体ケース10と中板20の組立て状態の側面図を示す。
図9~
図13はそれぞれ本体ケース10と中板20の各詳細図を示す。
【0026】
プランター1は、水耕栽培に適したもので、ラック2に架設された状態で植木鉢40に植えられた植物の養生、成育等を行うものである。プランター1は、ラック2より降ろされて培養液45の補充、植物の観察植物の世話等が行われ、これら作業が終了すると再びラック2に戻される。先ず、ラック2の構成を説明する。ラック2は、間隔を置いて立設された4本の縦フレーム3と、この縦フレーム3間を連結する水平方向に延びる1対の前後フレーム4と、縦フレーム4間を連結する水平方向に延びる1対の左右フレーム5と、1対の左右フレーム5の間の位置で1対の前後フレーム4間を連結する複数の支持フレーム6(
図3に示す)とを備えている。各前後フレーム4は、この実施の形態では、断面が円柱形状をしている。各支持フレーム6は、平板形状である。
【0027】
1対の前後フレーム4と1対の左右フレーム5と複数の支持フレーム6の組は、縦フレーム3の上下方向に間隔を置いて数段配置されている。
図1では、その一段の組のみを示している。
図1では、一段の組に2台のプランター1が並列に配置されている。1台のプランター1は天板30を外した状態を示している。
【0028】
次に、プランター1の構成を説明する。プランター1は、本体ケース10と、この本体ケース10内に配置される中板20と、同じく本体ケース10内に配置される天板30と、本体ケース10の底面部11と中板20の底面部21の間の空間に配置される複数の多孔質材の柱体35と、中板20の底面部21の上面に配置される不織布シート36とを備え、不織布シート36の上に植木鉢40が載置される。
【0029】
本体ケース10は、光透過性の材料より形成され、例えばポリプロピレンより形成されている。本体ケース10は、上面が開口された略直方体形状であり、内部に培養液45を溜める貯液槽として機能する。
【0030】
本体ケース10は、底面部11と底面部11の四方より立設された側面部12とを有する。底面部11の裏面の中央には、大きな領域に亘って中央リブ13が突設されている。底面部11の裏面の中央リブ13より更に両外側には、1対の脚リブ14が突設されている。1対の脚リブ14は、長手方向の直交方向に沿って延設されている。1対の脚リブ14の長手方向の幅寸法W1(
図3、
図4(a)は、上記したラック2の1対の前後フレーム4の隙間空間の間隔W2(
図3.
図4(a))よりも少し小さく設定されている。つまり、本体ケース10をラック2の前後フレーム4に載置した際、1対の前後フレーム4の内側近くに1対の脚リブ
14が入り込んだ状態で載置される(
図2~
図5参照)。又、中央リブ13と各脚リブ14との間には、ラック2の支持フレーム6が配置される(
図3参照)。
【0031】
脚リブ14の長さ(高さ)は、中央リブ13と同様の高さに設定されている。プランター1を平坦地に載置すると、1対の脚リブ14と中央リブが平坦地に着地する。これにより、プランター1は、ガタ付きなく平坦地に置くことができる。
【0032】
四方の側面部12の上端縁には、全周に亘って水平方向に外側に突出する周縁フランジ部15が設けられている。長手方向の側面部12に沿って設けられた1対の周縁フランジ部15は、長手方向の直交方向のものに比べて突出寸法が大きく、且つ、その突出端では下方に向かって延びる垂直フランジ部16が連続して設けられている。1対の垂直フランジ部16は、長手方向の中央箇所が短く、両端付近では、両端に向かって徐々に長くなるよう傾斜面16aとされている。
【0033】
一方の長手方向の周縁フランジ部15には、そのほぼ中央位置に注入口17が開口している。注入口17は、平面視では、半円弧以上の円周弧に形成されている。注入口17は、側面部12に連続して設けられている。注入口17は、側面部12の内面側に開口している。注入口17は、側面部12の底面側に行くに従って徐々に縮径する形状を有し、その最下端が底面部11にまで達している。つまり、注入口17は側面部12の全高さに亘って開口している。
【0034】
本体ケース10は、注入口17を含めて全ての角部がアール形状に形成されている。つまり、注入口17は、円弧状で、周囲部位との接続箇所がアール形状に形成されている。中板20は、非光透過性の材料で形成され、例えば光が透過しないことにより、藻等が繁殖することが抑制されている。中板20は、上面が開口された扁平な略直方体形状である。中板20は、底面部21と底面部21の四方より立設された側面部22とを有する。底面部21には、複数の柱体用孔23が開口している。複数の柱体用孔23は、底面部21の一部に偏在することなく等間隔の位置で万遍なく配置されている。
【0035】
底面部21の裏面には、その中央位置と周縁位置で、且つ、柱体用孔23の開口がない位置に、同一高さ寸法のスペーサ用リブ24、25が突設されている。中央位置のスペーサ用リブ24は、2箇所に設けられ、各スペーサ用リブ24は、底面視では十字形状を有している。周縁位置のスペーサ用リブ25は、底面部21の周縁に沿って間欠的に配置されている。四方の側面部21の上端縁には、全周に亘って水平方向に外側に突出する周縁フランジ部26が設けられている。
【0036】
四方の側面部22の内面には、複数の天板用リブ27が突設されている。天板用リブ27は、下端が底面部21に接続し、上端が周縁フランジ部26の上面と同一高さに設定されている。
【0037】
中板20は、本体ケース10内に収容すると、スペーサ用リブ24,25が本体ケース10の底面部11に当接することによって、本体ケース10の中空位置に配置される。中板20は、全ての角部がアール形状に形成されている。
【0038】
天板30は、非光透過性の材料(アルミ等の反射素材)より形成され、例えば藻等が繁殖しないように形成されている。天板30は、フラットな板形状であり、平面視では中板20より少しだけ小さい寸法に形成されている。天板30には、等間隔の位置に複数の鉢挿入孔31が形成されている。天板30は、その周縁の適所が中板20の複数の天板用リブ27に支持されることによって本体ケース10内に収容されている。天板30は、複数の鉢挿入孔31の間隔(個数)が異なるものを複数用意し、直物の成育状況に応じて天板30の種類を交換できるようになっている。天板30は、全ての角部がアール形状に形成されているようにしてもよいし、一部面取りがあるが切りっぱなしでもよい。
【0039】
各多孔質材の柱体35は、円柱形態であり、上面の中央より円柱体状の突出部35aが突出している。突出部35aは、中板20の柱体用孔23に隙間なく挿入されている。多孔質材の柱体35は、その下端面が本体ケース10の底面部11にほぼ面接触し、突出部35aの上端面が、中板20の柱体用孔23より上面に露出している。多孔質材の柱体35は、内部に連続する微細な孔を多数有し、毛細管現象によって本体ケース10に溜められた培養液45を上方に吸い上げることができる材料より形成されている。多孔質材の柱体35は、好ましくはスポンジ、更に好ましくはpvaスポンジより形成される。pvaスポンジは、ポリビニルアルコールを原料として微細な連続気孔を有する。また、pvaスポンジは、親水性が強く、抜群の吸水能力を持つ。連続気孔組織の為、抵抗が少なく、濾過性能に優れる。自己発塵性が無く、耐久力がある。また、耐摩耗性、耐薬品性にも優れる。吸水時の弾力性が非常にソフトで、柔軟性もある為、対象物の表面への接触感が良好である。気孔のサイズ、形状等、各種用途に合わせたPVAスポンジの加工が可能である。
【0040】
不織布シート36は、中板20の底面部21のほぼ全域に亘って敷設されている。不織布シート36は、多孔質材の柱体35の上端面に面接触している。不織布シート35は、上面層として透水性の遮根層を有し、遮根層の下層に不織布層を有する。不織布シート36は、培養液(液体)45に接すると、ハイスピードで培養液45の吸収を開始し、取り込んだ培養液45を均等に拡散しつつ保持する。不織布シート36は、この実施の形態では、遮根シートと吸水マット(不織布)を張り合わせたシート構造である。
【0041】
植木鉢40(
図4、
図5参照)は、天板30の各鉢挿入孔31に収容される。尚、
図4(a)、
図5では植木鉢40は2鉢のみ図示されている。鉢挿入孔31に収容された植木鉢40は、その底面部が不織布シート35に接触した状態で配置されている。植木鉢40は、少なくとも底面部が水を通す構造、つまり、透水性に形成されている。この実施の形態では、植木鉢40の底面部及び側面部に複数のスリット40a(特に、
図4(b)参照)を設けることによって透水性に形成されている。このスリット40aより不織布シート36に浸漬された培養液45が植木鉢40の内部に浸入可能に形成されている。植木鉢40の内部には吸水性の粒状の培土(図示せず)が密集した状態で収容されている。この密集した培土に植物(例えば挿し木)が植えられている。培地としては、例えば、毛細管現象を有するハイドロボール(粘土を高温で焼いて発泡させたボール状の石)が用いられる。いわゆるハイドロカルチャー栽培である。
【0042】
次に、プランター1の自動潅水作用、培養液の補充作業等を説明する。プランター1の注入口17にロート50を差し込んで(
図1等参照)、培養液45をロート50を介して注入する。注入量は、最大で中板の底面部近くまでとする。注入口50より注入された培養液45は、本体ケース10内に流れ込み、本体ケース10の底に溜まる。溜まった培養液45は、各多孔質材の柱体35で毛細管現象によって吸い上げられる。
【0043】
吸い上げられた培養液45は、各多孔質材の柱体35の上端面より不織布シート36が吸収する。不織布シート36に吸収された培養液45は、不織布シート36の保液性及び拡散性によってシート全域にほぼ均等に保持・拡散される。このようにして、植木鉢40の底面に自動潅水され、不織布シート36上の植木鉢40にスリット40aを介して培養液45が供給される。又、植木鉢40のスリット40aより植物の根が植木鉢40の外部に出て不織布シート36より直接に培養液45を吸収することによっても培養液45が供給される。
【0044】
植木鉢40に供給され、不織布シート45の保液量が減ると(毛細管現象による吸い上げ力より不織布シートの保液力が小さくなると)、多孔質材の毛細管現象(細い管状物体(毛細管)の内側の液体が、外部からエネルギーを与えられることなく管の中を移動する物理現象である。)により柱体35より不織布シート36に培養液45が補充され、多孔質材の柱体35の保液量が減ると、多孔質材の柱体35が本体ケース10内に溜まった培養液45を吸収し、このような動作が本体ケース10内に溜められた培養液45が無くなるまで繰り返される。
【0045】
作業者は、ラック2に載せられたプランター1の培養液45の水位を定期的にチェックする。プランター1の本体ケース10、中板12は非光透過性の材料より形成されているため、作業者はプランター1の外側より培養液45の量をチェックできる。
【0046】
本体ケース10内に溜められた培養液45の量が補充レベルにあると、培養液45の補充作業を行う。プランター1は、一人での持ち運びが困難な寸法であるため、例えばラック2の位置にある場合には、ラックにプランター1を載せたまま培養液45を補充する。
【0047】
植物の手入れ、成育状態の観察等のためにプランター1をラック2より下ろしたり、降ろしたプランター1をラック2の元の位置に戻したりする場合にも二人の作業者で行うことになる。
【0048】
以上説明したように、プランター1は、本体ケース10と中板20と天板30と多孔質材(多孔質材の柱体35)と不織布シート36を有すれば良く、密閉構造の貯水タンクや弁機構も不要であるため、構造が簡単で部品点数が少なくて良い。そして、培養液45を多孔質材の柱体35で吸い上げ、且つ、吸い上げた培養液45が不織布シート36の吸水性、拡散性によってそのシート全体にわたって染み渡るため、不織布シート36のどの位置に置かれた植木鉢40にも均等に培養液が供給される。従って、植木鉢40に培養液が自動供給される。以上より、構造が簡単で部品点数が少なく、しかも、自動潅水機能を有するプランター1を提供できる。又、不織布シート36は、上面層として遮根層を有するため、根がらみを防止できる。植物の根が不織布シート36に入り込むことができないため、植物の耐性が向上し、植物の成育に貢献する。不織布シート36の上に別途遮根シートを敷設する必要がない。
【0049】
植木鉢40には、底面部及び側面部にスリット40aが設けられている。従って、植木鉢40のスリット40aより不織布シート36に浸漬された培養液45が植木鉢40の内部に供給されるため、十分な培養液45の供給が可能である。又、植木鉢40のスリット40aより植物の根が植木鉢40の外部に出て不織布シート36より直接に培養液45を吸収できる。尚、この実施の形態では、植木鉢40の底面部及び側面部にスリット40aが設けられているが、底面部にのみスリット40aを設けても良い。又、この実施の形態では、植木鉢40は、スリット40aが設けることによって透水性に形成されているが、スリット40aではなく、丸孔、楕円孔等であっても良い。更に、植木鉢40は、その素材自体が透水性のものであっても良い。
【0050】
中板20の柱体用孔23を通って多孔質材の柱体35から不織布シート36に供給される。多孔質材の柱体35は不織布シートの面積に合わせてその個数を決定する。
【0051】
中板20は、多孔質材の柱体35の保持、天板30の保持、不織布シート36の設置場所、植木鉢40の載置場所を確保するという多機能を有する部品になるため、部品点数の削減に寄与する。
【0052】
本体ケース10に対して中板20が取り外し自在であり、中板20に対して天板30、多孔質材の柱部35及び不織布シート36が取り外し自在である。つまり、本体ケース10、中板20、天板30、多孔質材の柱体35、及び不織布シート36の各部品は、それぞれ分離自在に設けられている。従って、全ての部品の洗浄が容易である。健常者のみならず非健常者の適正に合わせたので取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として不安傾向や感覚過敏などで細部までの洗浄することへのこだわりなどに配慮した構造といえる。
【0053】
本体ケース10、中板20、天板30は、それぞれの部材の角がアール形状である。従って、洗浄作業がし易く容易である。健常者のみならず非健常者の適正に合わせたので取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として不安傾向や感覚過敏などで細部までの洗浄することへのこだわりなどに配慮した構造といえる。各多孔質材の柱体35は、実施の形態では円柱形態であるが、どのような形態(例えば角柱、楕円柱)でも良い。
【0054】
多孔質材の柱体35は、好ましくはスポンジ、更に好ましくはpvaスポンジより形成される。pvaスポンジは、毛細管現象による培養液の吸い上げ力が非常に強いため、確実に多量の培養液45を吸い上げ、不織布シート36に潤沢に培養液45が拡散し、且つ、保持される。
【0055】
不織布シート36は、上面層として遮根層(図示せず)を有するので、植物の根が不織布層(図示せず)に入り込む、いわゆる根がらみを防止できる。又、植物の根が不織布シート36に入り込むことができないため、植物の耐性が向上し、植物の成育上好ましい。更に、植物の根が不織布シート36に入り込むことができないため、不織布層(図示せず)の長寿命化にもなる。
【0056】
天板30には、複数の鉢挿入孔31が等間隔に設けられているので、植木鉢40を容易に等間隔に並べることができ、各植木鉢40に植えられた植物にほぼ均等な成育環境を提供できる。健常者のみならず非健常者も取り扱いが容易である。天板30は、複数の鉢挿入孔31の間隔(個数)が異なるものが複数用意され、選択的に使用できる。従って、直物の成育状況に応じて天板30の種類を交換でき、植物の成育状況に応じた環境を提供できる。
【0057】
ラック2に載置されたプランター1は、その本体ケース10の底面より突出した1対の脚リブ14がラック2の1対の前後フレーム4の内側位置近くに入り込んでいる。従って、ラック2の前後フレーム4に載置された本体ケース10が大きく横ずれせず、横ずれによる落下を防止できる。健常者のみならず非健常者の適正に合わせたので取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として注意欠陥や身体機能の不自由さなどで不意に触れた際に落下事故等の有事に至らぬことを想定した構造といえる。
【0058】
本体ケース10に周縁フランジ部15及び垂直フランジ部16が設けられているので、プランター1が持ちやすい。又、周縁フランジ部15の突出端では下方に向かって延びる垂直フランジ部16が連続して設けられており、1対の垂直フランジ部16は、長手方向の中央箇所が短く、両端付近では、両端に向かって徐々に長くなるよう傾斜面16aとされている。従って、作業者が垂直フランジ部16の箇所に指を掛けてプランター1を持上げた際に、何らかの理由によって指を掛けた位置が端方向に滑ることを傾斜面16aが防ぎ、指が掛けた位置が滑ることによるプランター1の落下を防止できる。健常者のみならず非健常者の適正に合わせたので取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として注意欠陥や身体機能の不自由などで不意に触れた際に落下事故等の有事に至らぬことを想定した構造といえる。
【0059】
中板20、天板30は、非光透過性の材料にて形成されている。これにより、プランター1の内部に藻等が繁殖することを抑制できる。
【0060】
ここで、最初の培養液45の供給、又は、その後の補充に際して、培養液45を注入する最大の液面レベル、及び、培養液を補充すべき最小の液面レベルを示す目印を本体ケース10に設けることが好ましい。
【0061】
注入口17は、本体ケース10の周縁フランジ部15に設けられているので、周縁フランジ部15より外側に突出していないため、取り扱い性が優れている。又、注入口17が上方より目視できることや本体ケース10の周縁フランジ部15に触れることで安全に注入口17の位置が特定可能である。健常者のみならず非健常者も取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として視覚による確認が困難を要することの配慮した構造といえる。
【0062】
注入口17は、平面視では、半円弧以上の円周弧に形成されている。従って、注入口17にロート50を挿入した場合には、ロート50が脱落することがなく、注入作業が容易にできる。健常者のみならず非健常者も取り扱いが容易である。非健常者の一つの特性として注意欠陥や身体機能の不自由などで不意に触れた際にロート50落下や注入する水がこぼれぬことを想定した構造といえる。
【0063】
植木鉢40は、天板30の等間隔に設けられた各鉢挿入孔31に収容される。従って、複数の植木鉢40を等間隔に配置でき、培養液45の吸収等を均等化に寄与する。又、植木鉢40の転倒等を防止できる。
【0064】
本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 プランター
2 ラック
4 フレーム(前後フレーム)
10 本体ケース
11 底面部
15 周縁フランジ部
16 垂直フランジ部
16a 傾斜面
20 中板
21 底面部
23 柱体用孔
27 天板用リブ
30 天板
31 鉢挿入孔
35 多孔質材の柱体(多孔質材)
36 不織布シート
40 植木鉢
40a スリット
45 培養液
【要約】
【課題】構造が簡単で部品点数が少なく、自動潅水機能を有する非健常者にも容易に取扱い可能なプランターを提供すること。
【解決手段】培養液を溜める本体ケースと、前記本体ケース内に配置される中板と、前記本体ケースの底面部と前記中板の底面部との間に配置される多孔質材と、前記中板の底面部に敷設されて前記多孔質材に接触し、上面層として遮根層を有する不織布シートとを備え、前記不織布シートの上に植木鉢が載せられる非健常者の適正に合わせた構造を有する。
【選択図】
図4