IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントリックスバイオ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7577252CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物
<>
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図1
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図2
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図3
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図4
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図5
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図6
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図7
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図8
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図9
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図10
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図11
  • 特許-CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20241028BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241028BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241028BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241028BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241028BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241028BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20241028BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K47/68
A61P35/00 ZNA
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C07K16/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023034155
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2021517168の分割
【原出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2023071898
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0062620
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0061067
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520469745
【氏名又は名称】セントリックスバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CentricsBio, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジェ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソイン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、スギョン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506686(JP,A)
【文献】国際公開第2018/071576(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/066760(WO,A1)
【文献】Eur.J.Immunol.,2013年,Vol.43,pp.2151-2161
【文献】Scientific Reports,2018年05月29日,Vol.8,Article8259
【文献】アレルギー,2017年,Vol.66,pp.36-41
【文献】Frontiers in Immunology,2018年11月15日,Vol.9,Article No.2657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性CD300cドメインおよび抗体定常領域を含む融合タンパク質を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記抗体定常領域が、Fcである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記可溶性CD300cドメインが、CD300cタンパク質の細胞外ドメインである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記可溶性CD300cドメインが、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、免疫細胞を活性化させる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記癌が、大腸癌、直腸癌、結腸癌、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、すい臓癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、乳癌、子宮癌、胃癌、骨癌および血液癌よりなる群から選ばれたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
他の抗癌剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
癌の増殖、生存、転移、再発または抗癌剤耐性を抑制する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD300cタンパク質の発現抑制剤または活性抑制剤を含む薬学的組成物
等に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、現代人の死亡原因において最も大きい比重を占めている疾患の一つであり、様々
な原因によって発生した遺伝子の突然変異により正常細胞が変化して発生した疾病であっ
て、正常な細胞の分化、増殖、成長形態等に従わない腫瘍のうち悪性のものを指す。癌と
は、「制御されない細胞成長」と特徴づけられ、このような異常な細胞成長によって腫瘍
と呼ばれる細胞塊が形成されて、周囲の組織に浸透し、ひどい場合には、身体の他の器官
に転移したりする。癌は、手術、放射線および薬物療法等で治療をしても、多くの場合に
、根本的な治癒にならず、患者に苦痛を与え、究極的には、死に至らしめる難治性慢性疾
患である。
【0003】
癌の薬物治療、すなわち、抗癌剤は、一般的に細胞毒性を有する化合物であり、癌細胞
を攻撃して死滅させる方式で癌を治療するが、癌細胞だけでなく、正常細胞にも損傷を与
えるので、大きい副作用を示す。そこで、副作用を減少させるために標的抗癌剤が開発さ
れた。しかしながら、このような標的抗癌剤の場合には、副作用を低減することができる
が、高い確率で耐性が生じるという限界点を示した(韓国特許公開10-2018-00
99557号)。したがって、最近では、体内の免疫系を用いて毒性および耐性による問
題点を減少させる免疫抗癌剤に対する関心が急増している傾向にある。このような免疫抗
癌剤の一例として、癌細胞表面のPD-L1に結合してT細胞のPD-1との結合を抑制
してT細胞を活性化させ、癌細胞を攻撃する免疫チェックポイント抑制剤が開発された。
しかしながら、このような免疫チェックポイント抑制剤の場合にも、効果を示す癌の種類
が多様でないため、多様な癌において同一の治療効果を示す新しい免疫チェックポイント
抑制剤の開発が必要とされているのが現状である。
【0004】
したがって、本発明者らは、多様な癌においてPD-L1のように癌細胞の表面に発現
してT細胞の発現を抑制するタンパク質について鋭意研究した結果、本発明を完成させた
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術上の問題点を解決するために案出されたものであって
、多様な癌細胞の表面に存在するCD300cタンパク質の発現または活性を抑制させる
ことによって、T細胞の活性を増加させ、癌細胞の増殖を抑制できることを確認し、CD
300cの発現抑制剤または活性抑制剤を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学
的組成物などを提供することをその目的とする。
【0006】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限さ
れず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業界における通常の知識を有する
者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を有効成分として含む癌の予防
または治療用薬学的組成物を提供する。
【0008】
本発明の一具体例において、前記CD300cの発現抑制剤は、好ましくは、CD30
0c遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、
短ヘアピンRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム等や、CD300c遺
伝子の発現を減少または抑制する物質であれば、これに制限されない。前記物質がCD3
00cの発現を抑制させる機序は、特に制限されず、一例として転写、翻訳等の遺伝子発
現を抑制する機序として作用することができる。
【0009】
本発明の他の具体例において、前記CD300cの活性抑制剤は、CD300cタンパ
ク質に相補的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティクス、基質類似体、アプタ
マー、抗体等や、CD300cタンパク質に結合してCD300cの活性を減少または抑
制する物質であれば、これに制限されない。前記物質がCD300cタンパク質の活性を
抑制させる機序は、特に制限されず、一例として活性型を不活性型に転換させる機序とし
て作用することができる。前記抗体の一例としては、ポリクローナル抗体であってもよく
、モノクローナル抗体であってもよく、好ましくは、ヒトモノクローナル抗CD300c
抗体であってもよく、または抗体断片であってもよいが、CD300cに特異的に結合す
る抗体であれば、これに制限されない。前記可溶性受容体は、CD300cに結合する受
容体であって、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列に特異的に結合する配列を含むが
、CD300cに結合する受容体であれば、これに制限されない。
【0010】
本発明のさらに他の具体例において、前記癌は、好ましくは、大腸癌、直腸癌、結腸癌
、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、肺癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌
、肝癌、すい臓癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、乳癌、子宮癌、胃癌、骨癌、血液癌等や、
癌細胞の表面にCD300cタンパク質を発現する癌の種類であれば、これに制限されな
い。
【0011】
本発明のさらに他の具体例において、前記薬学的組成物は、他の従来の抗癌剤をさらに
含むことができ、前記抗癌剤は、好ましくは、ドキソルビシン、シスプラチン、ゲムシタ
ビン、オキサリプラチン、5-FU、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、ネシ
ツムマブ、癌抗原、抗癌ウイルス等や現在抗癌剤として使用されている物質であれば、こ
れに制限されない。前記癌抗原は、癌腫に特異的な癌ワクチンであって、好ましくは、膀
胱癌特異的癌抗原としてNY-ESO-1、乳癌特異的癌抗原としてHER2、大腸癌特
異的癌抗原としてCEA、肺癌特異的癌抗原としてVEGFR1、VEGFR2等であっ
てもよいが、癌ワクチンとして知られている癌抗原の種類であれば、これに制限されない
。抗癌ウイルスの一例としてイムリジック、ペクサベク等があるが、知られている抗癌ウ
イルスであれば、これに制限されない。前記抗癌剤をさらに含むことは、好ましくは、併
用投与であるか、本願発明の抑制剤に結合された形態であってもよく、抗癌剤の送達体内
に共に含まれている形態であってもよい。
【0012】
本発明のさらに他の具体例において、前記薬学的組成物は、癌または癌幹細胞の増殖、
生存、転移、再発、抗癌剤耐性等を抑制することを特徴とするが、本発明の薬学的組成物
によって発生する効果であれば、これに制限されない。
【0013】
また、本発明は、(a)CD300cタンパク質が発現する癌細胞を培養するステップ
と;(b)前記培養された癌細胞を候補物質で処理するステップと;(c)前記候補物質
で処理された細胞のCD300c発現量を測定するステップと;(d)前記CD300c
発現量を減少させた候補物質を選別するステップと;を含む、癌の予防または治療用物質
を選別する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、(a)CD300cタンパク質を候補物質で処理するステップと;(
b)前記CD300cタンパク質に結合された候補物質を選別するステップと;を含む、
癌の予防または治療用物質を選別する方法を提供する。
【0015】
本発明の一具体例において、前記発現量を測定するステップとは、mRNAおよび/ま
たはタンパク質の発現水準を測定することであって、mRNAの発現水準を測定すること
は、生物学的試料でCD300c mRNAの存在有無および発現程度を確認することで
あって、mRNAの量を測定することによって確認することができる。このための分析方
法としては、RT-PCR、競争的RT-PCR(competitive RT-PC
R)、リアルタイムRT-PCR、RNaseプロテクションアッセイ法(RPA)、ノ
ーザンブロッティング、DNAマイクロアレイチップ等があるが、これらに限定されるも
のではない。また、タンパク質の発現水準を測定することは、生物学的試料からCD30
0cタンパク質の存在有無および発現水準を確認することであって、前記CD300cタ
ンパク質に対して特異的に結合する抗体を用いてタンパク質の量を確認したり、タンパク
質の活性を測定することによって知ることができる。このための分析方法としては、ウェ
スタンブロッティング、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ法)、ラジオイムノアッ
セイ、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(
Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(Rocket)免疫電気泳動、免疫組
織化学染色、免疫沈降分析、補体結合分析、FACS、プロテインチップ等があるが、こ
れらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の他の具体例において、前記候補物質に結合する物質を選別するステップは、C
D300cタンパク質に結合する物質を選別する方法であって、このための分析方法とし
ては、ウェスタンブロッティング、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ法)、ラジオ
イムノアッセイ、放放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、
免疫組織化学染色、免疫沈降分析、補体結合分析、FACS、プロテインチップ等がある
が、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明のさらに他の具体例において、前記候補物質は、ヌクレオチド、DNA、RNA
、アミノ酸、アプタマー、タンパク質、化合物、天然物、天然抽出物、ベクター等であっ
て、制限されない。
【0018】
また、本発明は、CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を有効成分として含む薬
学的組成物を個体に投与するステップを含む癌の治療方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、CD300cの発現抑制剤または活性抑制剤を有効成分として含む薬
学的組成物の癌の予防または治療用途を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるCD300cの発現抑制剤または活性抑制剤は、多様な癌の表面で発現す
るCD300cに結合したり、CD300cの発現を抑制することによって、T細胞を活
性化させると同時に、癌細胞の増殖を抑制することによって、多様な癌の免疫治療剤とし
て効果的に使用され得る。このような抑制剤は、癌環境内で腫瘍浸潤リンパ球および細胞
毒性Tリンパ球の数を増加させ、骨髄由来抑制細胞の数を減少させると共に、癌の成長お
よび発達を効果的に抑制できるので、本発明のCD300cの発現抑制剤または活性抑制
剤は、新しい免疫治療剤として癌の治療に効果的に使用され得るものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施例によるsCD300c-FcをSDS-PAGEで確認した結果を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施例によるsCD300c-Fcが腫瘍浸潤リンパ球に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例によるsCD300c-FcがNF-κBのシグナル伝達機序に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体がヒトT細胞に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体の肺癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図6図6は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体の乳癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体の大腸癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体がin vivoで癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図9図9は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体がin vivoで癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図10図10は、本発明の一実施例によるCD300c siRNAの癌成長抑制効果を確認した結果を示す図である。
図11図11は、本発明の一実施例による抗CD300c抗体が抗癌免疫反応に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。
図12図12は、CD300cの機能および/または発現を抑制することによって抗癌効果を示す機序を簡略に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のCD300cの発現抑制剤または活性抑制剤は、癌環境内で腫瘍浸潤リンパ球
および細胞毒性Tリンパ球の数を増加させ、骨髄由来抑制細胞の数を減少させると共に、
多様な癌の成長および発達を効果的に抑制できるので、CD300cを表面に発現してい
る多様な癌の治療に効果的に使用され得る。
【0023】
本明細書において、「抗体」とは、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリ
ン分子を含み、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびその機能的な断片を全部
含む。また、前記用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト抗マウス抗体)および異種結合抗体
(例えば、二重特異性抗体)のような遺伝工学により生産された形態を含むことができる
。このうち、モノクローナル抗体は、単一抗原性部位(エピトープ)に対する高度に特異
的な抗体であって、異なるエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは
異なって、モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープのみに対応するので、治療剤
としての品質管理が容易である。前記抗体は、免疫グロブリン分子の構成のうち重鎖およ
び/または軽鎖の可変領域を含み、前記可変領域は、その1次構造として抗体分子の抗原
結合部位を形成する部分を含み、本発明の抗体は、前記可変領域を含む一部断片で構成さ
れ得、好ましくは、前記可変領域は、CD300cに対する可溶性受容体に代替され得る
が、本発明の抗CD300c抗体と同じ効果を示す限り、これに制限されない。
【0024】
本明細書において、「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与によって癌等の疾
患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0025】
本明細書において、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与によって癌等の症
状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0026】
本明細書において、「個体」とは、本発明の薬学的組成物が投与され得る対象を言い、
その対象には制限がない。
【0027】
本明細書において、「薬学的組成物」とは、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟こう剤
、粉末または飲料の形態であることを特徴とし、前記薬学的組成物は、ヒトを対象とする
ことを特徴とする。前記薬学的組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ
通常の方法によって散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液等の経口型剤形、外用剤
、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得る。本発明の薬学的組成物は、
薬剤的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与時
には、結合剤、滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素
、香料等を使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化
剤、等張化剤、安定化剤等を混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤
、賦形剤、潤滑剤、保存剤等を使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、
上述したような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造され得る。例えば、経口
投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリクサー(elixir)、サスペンション
、シロップ、ウェハー等の形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アン
プルまたは多数回投薬形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプ
セル、徐放型製剤等で剤形することができる。
【0028】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキスト
ロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マ
ルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェー
ト、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビ
ニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート
、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油等が使用され得る。また、充填剤、抗
凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤等をさらに含むことができる。
【0029】
本発明による薬学的組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、
静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管
、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。本願に使用され
た用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内
、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学的組成物は、また、直
腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。
【0030】
本発明の薬学的組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、
性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾
患の重症を含む様々な要因によって多様に変わり得、前記薬学的組成物の投与量は、患者
の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者に
より適切に選択され得、1日に0.0001~500mg/kgまたは0.001~50
0mg/kgで投与することができる。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に
分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる点においても本発明の範囲を限定
するものではない。本発明による薬学的組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル
、シロップ、スラリー、懸濁剤で剤形化され得る。
【0031】
以下、本発明の理解を助けるために下記実施例を提示する。しかしながら、下記の実施
例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって
本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0032】
[実施例1:sCD300c-Fcの作製]
癌細胞および免疫系でCD300cの機能を分析するために、可溶性CD300cに抗
体の重鎖領域のうちFc部分が結合されたsCD300c-Fcを作製した。sCD30
0c-Fcの作製のために、配列番号3のアミノ酸配列をコードする遺伝子(配列番号4
)をpcDNA3.1に挿入し、これをHEK293T細胞株に形質転換させた。そして
、sCD300c-Fcの生産のために、形質転換された細胞、および細胞内遺伝子送達
効率を増加させるポリマーを、IgG含量が非常に低いウシ胎児血清が添加されたRPM
I培地に添加して、4日間細胞培養器で培養した。培養が完了した後には、遠心分離機を
用いてsCD300c-Fcが含まれた上層液を分離し、0.22μmフィルターを用い
て1回濾過させた。そして、組み換えプロテインAセファロースカラム(GE heal
thcare)を用いてsCD300c-Fcを分離および精製し、精製されたsCD3
00c-Fcの吸光度を測定して濃度を決定した。そして、精製されたsCD300c-
Fc 2μgをそれぞれReducing sample bufferとNon-re
ducing sample bufferに添加した後に、pre-made SDS
-PAGE gel(Invitrogen)を用いて電気泳動した。その後、クマシー
ブルーを用いてタンパク質を染色した。その結果は、図1に示した。
【0033】
図1に示されたように、純度90%以上のsCD300c-Fcが精製されたことを確
認した。
【0034】
[実施例2:sCD300c-Fcが腫瘍浸潤リンパ球に及ぼす影響確認]
sCD300c-Fcが腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating
lymphocytes;TIL)に及ぼす影響を確認するために、実施例1と同じ方法
で作製されたsCD300c-Fcを使用して実験を進めた。より詳しくは、6ウェルプ
レートに1%のウシ胎児血清(FBS)が添加されたEBM培地(endothelia
l basal medium,Lonza)を分注し、1×10細胞/mLのヒト血
管内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞;HUVEC,PromoCell)と1×10
胞/mLの末梢血液単核球(PBMC,CTL)を接種し、sCD300c-Fcを10
、1、0.1、0.01、および0.001nMの濃度で処理した。そして、37℃、5
%CO条件で16時間の間培養した後に、OD450nmで吸光度を測定して、腫瘍浸
潤リンパ球を測定した。その結果は、図2に示した。
【0035】
図2に示されたように、sCD300c-Fcの濃度が増加するほど腫瘍浸潤リンパ球
の数が増加することを確認し、これを通じて、sCD300c-Fcの処理を通じて末梢
血液単核球が分化してヒト血管内皮細胞に浸潤されるリンパ球の数が増加し、リンパ球の
数は、処理されたsCD300c-Fcの濃度に依存的に増加することを確認した。前記
結果を通じて、sCD300c-Fcの処理を通じて免疫細胞を活性化し得ることを確認
することができた。
【0036】
[実施例3:sCD300c-FcがNF-κBシグナル伝達機序に及ぼす影響確認]
sCD300c-FcがNF-κBシグナリングに及ぼす影響を確認するために、実施
例1と同じ方法で作製されたsCD300c-Fcを使用して実験を進めた。より詳しく
は、THP-1 blue細胞(単球細胞,Invivogen)を96ウェルプレート
にウェル当たり5,000細胞になるように接種した後に、12時間の間培養して、細胞
を安定化させた。そして、sCD300c-Fc、LPS(リポポリサッカライド)およ
び/またはIgGをそれぞれのウェルに処理した後に、37℃、5%CO条件で48時
間の間培養した。そして、培養上層液を分離して、SEAP発色試薬(Invivoge
n)を処理し、1時間の間反応させた後に、650nmで吸光度を測定して、NF-κB
のシグナル強度を測定した。その結果を図3に示した。
【0037】
図3に示されたように、LPSのみを処理した対照群では、NF-κBのシグナルが0
.4程度を示し、sCD300c-Fcを処理した対照群では、0.8程度の基本値を示
すことを確認した。反面、LPSおよびsCD300c-Fcを共に処理した実験群では
、NF-κBシグナルが顕著に増加することを確認した。また、加熱して不活性化させた
sCD300c-Fc(h.i.sCD300c-Fc;heat inactivat
ed sCD300c-Fc)の場合には、NF-κBシグナルに影響を及ぼさないこと
を確認した。前記結果を通じて、sCD300c-FcがNF-κBのシグナル伝達機序
を活性化させて、免疫細胞であるTHP-1単球が活性化し、マクロファージに分化を促
進させて、先天性免疫系を効率的に活性化し得ることを確認することができた。
【0038】
[実施例4:抗CD300c抗体の作製]
(4.1.抗CD300cポリクローナル抗体の作製)
CD300cに対するポリクローナル抗体を作製するために、抗原に使用するCD30
0cの細胞外ドメインの遺伝子(配列番号2)を6×ヒスチジンを発現するように、pE
T28a(Novagen)発現ベクターに挿入し、大腸菌に形質転換させた。そして、
形質転換された大腸菌を100mg/mLのアンピシリンが添加された100mLのLB
培地に接種した後に、吸光度がOD600nmで0.8~1.0になるように培養し、I
PTGを添加した。そして、25℃で16時間の間培養してHisタグを有するCD30
0cの発現を誘導した後に、培養液を遠心分離して上層液を除去し、細胞を獲得した。獲
得された細胞は、50mMのNaHPOおよび500mMのNaCl(pH8.0)
が混合されている溶液を用いて再懸濁させ、超音波を用いて細胞を破砕した。そして、遠
心分離および濾過過程を経てタンパク質の精製のために使用する細胞溶解物を確保した。
細胞溶解物内に含まれているHisタグを有するCD300c(配列番号5;CD300
c-His)は、Ni-NTA Sepharose column(GE healt
hcare)を用いたaffinity chromatography方法を用いて精
製し、step gradient elutionを通じてHisタグを有するCD3
00cを溶出させた。精製されたHisタグを有するCD300cは、実施例1と同じ方
法でSDS-PAGEを実施し、純度90%以上のHisタグを有するCD300cが精
製されたことを確認した。
【0039】
そして、精製されたHisタグを有するCD300cを用いてニュージーランド白ウサ
ギに抗原免疫を実施した。より詳しくは、精製されたHisタグを有するCD300c抗
原を0.5mg/400μLの濃度でリン酸塩緩衝液(PBS)を用いて希釈し、同量の
完全フロイントアジュバント(Sigma)と混合して皮下注射する方法で1次免疫を行
った。そして、2週後に0.5mg/400μLの抗原と同量の不完全フロイントアジュ
バント(Sigma)を混合して同じ方法で2次免疫を実施した後に、2週間隔で同じ方
法で最終4次免疫まで実施した。3次免疫後には、尾静脈で採血して血液を獲得し、獲得
された血液を1/1,000で希釈してELISAを実施して抗体の活性度を評価し、最
終4次免疫後には、麻酔後にウサギの全血を採血して血しょうを獲得した。
【0040】
(4.2.抗CD300c抗体の抗体特異性の確認)
実施例4.1と同じ方法で作製された抗CD300c抗体の特異性を確認するために、
1ng、10ng、100ng、500ng、および1μgの濃度で希釈されたCD30
0c抗原に対する特異性を1,000倍で希釈された血しょうを用いてELISAおよび
ウェスタンブロッティングを実施した。その結果、抗CD300c抗体がCD300c抗
原に対して特異的に反応することを確認した。
【0041】
(4.3.抗CD300c抗体の精製)
実施例4.1と同じ方法で獲得された血しょうから抗CD300c抗体を精製するため
に、affinity purification方法を用いた。より詳しくは、CD3
00c抗原とNHS activated sepharose Fast Flow
resin(GE Healthcare)をcoupling buffer(0.2
MのNaHCO,0.5MのNaCl,pH8.3)を用いて共に混合してアフィニテ
ィーゲルを作製し、これをポリプロピレンカラムにパッキングした。そして、カラムに獲
得された血しょうを添加して抗原に特異的に結合する抗体のみをカラムに残した後に、0
.1Mのグリシン(pH2.5)および0.1Mのクエン酸(pH3.0)が混合された
溶出緩衝液を使用して抗体を精製した。そして、精製された抗体は、リン酸塩緩衝液を用
いて透析させた後に濃縮して、1.0mg/mLの濃度で分けて分注し、-80℃で使用
前まで保管した。
【0042】
(実施例5:抗CD300c抗体がT細胞に及ぼす影響の確認)
抗CD300c抗体がヒトT細胞に及ぼす影響を確認するために実験を進めた。より詳
しくは、一次的にヒトの末梢血液単核細胞(PBMC)からT細胞分離キット(130-
096-534,Milltenyi)を用いて全体T細胞(pan T cells)
を分離した。そして、分離したT細胞を96ウェルプレートにウェル当たり5,000細
胞になるように接種した後に、6時間の間培養して細胞を安定化させ、抗CD3抗体(B
iolegend)および抗CD28抗体(Biolegend)を処理した。そして、
実施例4.3と同じ方法で精製された抗CD300cポリクローナル抗体を濃度別に処理
した。そして、37℃で48時間の間培養した後に、培養上層液を分離してIL-2の量
を測定した。IL-2の量は、IL-2 Quantikineキット(R&D sys
tems)を用いて確認した。その結果は、図4に示した。
【0043】
図4に示されたように、抗CD300c抗体を処理した実験群の場合には、処理濃度に
よってIL-2の量が増加することを確認した。これを通じて、抗CD300c抗体の場
合には、IL-2の分泌量を増加させて適応性免疫系であるT細胞を活性化させることを
確認することができた。
【0044】
[実施例6:抗CD300c抗体のin vitroでの抗癌効果の確認]
(6.1.抗CD300c抗体の肺癌成長抑制効果の確認)
抗CD300c抗体が肺癌の成長を抑制する効果があるかを確認するために、一次的に
A549細胞表面にCD300c抗原を有しているかを確認した。より詳しくは、ヒト肺
癌細胞株であるA549細胞を4%ホルムアルデヒドで固定させた後に、5%ヤギ正常血
清を用いてブロッキングした。そして、1μgの抗CD300c抗体を処理し、反応させ
た後に、FITCラベル抗ウサギIgG抗体を用いて染色した。そして、蛍光標識された
細胞を、フローサイトメーター(FACS)を用いて確認した。その結果は、図5Aに示
した。
【0045】
図5Aに示されたように、ヒト肺癌細胞株には、CD300c抗原を有していることを
確認した。
【0046】
また、肺癌の成長を抑制するかを確認するために、癌細胞の増殖抑制効果を確認した。
より詳しくは、96ウェルプレートにA549細胞をウェル当たり10,000細胞にな
るように接種した後に、18時間の間培養して安定化させた。そして、0.1、1、およ
び10μg/mLの抗CD300c抗体を処理し、72時間の間培養した。そして、顕微
鏡を用いて写真を撮影した。その結果は、図5Bに示した。また、それぞれのウェルにC
CK-8(Dijindo)を10μLずつ添加し、4時間の間反応させた後に、450
nmで吸光度を測定した。その結果は、図5Cに示した。
【0047】
図5Bおよび図5Cに示されたように、抗CD300c抗体の処理濃度が増加するほど
肺癌細胞の増殖が抑制されることを確認し、これを通じて、抗CD300c抗体が肺癌の
成長を抑制することを確認することができた。
【0048】
(6.2.抗CD300c抗体の乳癌成長抑制効果の確認)
抗CD300c抗体が乳癌の成長を抑制する効果があるかを確認するために、実施例6
.1と同じ方法で乳癌細胞株であるMDA-MB-231細胞を使用して細胞増殖抑制効
果を確認した。その結果は、図6に示した。
【0049】
図6に示されたように、抗CD300c抗体の処理濃度が増加するほど乳癌細胞の増殖
が抑制されることを確認し、これを通じて、抗CD300c抗体が乳癌の成長を抑制する
ことを確認することができた。
【0050】
(6.3.抗CD300c抗体の大腸癌成長抑制効果の確認)
抗CD300c抗体が大腸癌の成長を抑制する効果があるかを確認するために、実施例
6.1と同じ方法で転移性大腸癌細胞株であるCT-26細胞を使用して細胞増殖抑制効
果を確認した。その結果は、図7に示した。
【0051】
図7に示されたように、抗CD300c抗体の処理濃度が増加するほど大腸癌細胞の増
殖が抑制されることを確認し、これを通じて、抗CD300c抗体が大腸癌の成長を抑制
することを確認することができた。
【0052】
[実施例7:抗CD300c抗体のin vivoでの抗癌効果確認]
(7.1.抗CD300c抗体の大腸癌成長抑制効果の確認)
抗CD300c抗体がin vivoでも癌細胞の成長を抑制する効果があるかを確認
するために、8週齢のBALB/cマウスに転移性大腸癌細胞株であるCT-26細胞株
を5×10細胞になるようにマウスの右側の側面に皮下注射し、餌と水を与えながら飼
育した。動物の飼育およびすべての実験手続きは、動物実験に対する法規および規制に基
づいて進めた。そして、腫瘍のサイズが約70mmに到達したとき、濃度0.1、1、
および10μgの抗CD300c抗体を0、1、および5日目に腹腔注射で投与した後に
、腫瘍のサイズを確認した。対照群としては、リン酸塩緩衝液を注射した。その結果は、
図8に示した。
【0053】
図8に示されたように、抗CD300c抗体の濃度が増加するほど転移性大腸癌のサイ
ズの増加が減少すると共に、10μgを処理した実験群では、15日まで腫瘍の成長が完
全に抑制されて、これ以上腫瘍が成長しないことを確認した。
【0054】
(7.2.抗CD300c抗体の肺癌成長抑制効果確認)
肺癌動物モデルを用いて実施例7.1と同じ実験を進めた。より詳しくは、4~6週齢
のBALB/cマウスにヒト肺癌細胞株であるA549細胞株を5×10細胞になるよ
うにマウスの右側脇に皮下注射し、餌と水を与えながら飼育した。そして、腫瘍の直径が
約3~5mmに到達したとき、濃度1、10、および100mg/kgの抗CD300c
抗体を0、1、および5日目に腹腔注射で投与した後に、腫瘍のサイズを確認した。対照
群としては、リン酸塩緩衝液を注射した。その結果は、図9に示した。
【0055】
図9に示されたように、抗CD300c抗体の濃度が増加するほど肺癌の増殖が抑制さ
れて腫瘍が成長しないことを確認した。前記結果を通じて、本発明の抗CD300c抗体
がin vivoでも癌の成長を効果的に抑制することを確認することができた。
【0056】
前記結果を通じて、抗CD300c抗体は、多様な癌の増殖を効果的に抑制することが
でき、抗CD300c抗体を抗癌剤として使用可能であることを確認することができた。
【0057】
[実施例8:CD300c siRNAの抗癌効果確認]
CD300cが癌細胞の増殖に及ぼす影響を追加で確認するために、CD300cの発
現抑制が抗癌効果を示すかを確認した。より詳しくは、CD300cに対するsiRNA
(sc-93646,SantaCruz)を用いて提供されるマニュアルに従って肺癌
細胞株であるA549細胞でCD300cの発現を抑制した。対照群としては、Scra
mbled RNAを使用した。siRNAをLipofectamine RNAiM
ax(Life Technologies)を用いて細胞に形質感染させた後に、30
時間培養した。そして、培養された細胞に細胞溶解溶液(20mMのTris-HCl(
pH7.5)、150mMのNaCl、1mMのNaEDTA、1mMのEGTA、1
%のTriton、2.5mMのピロリン酸ナトリウム、1mMのグリセロリン酸、1m
MのNaVO、1μg/mLのロイペプチン、および1mMのPMSF)を処理して
、細胞溶解物を回収した。そして、溶解物内に含まれているタンパク質の量を、BCA法
を用いて定量した。そして、同量のCD300cに特異的に結合する抗体(PA5-87
097,Thermofisher)を用いてウェスタンブロッティングを実施した。そ
の結果は、図10Aに示した。そして、癌細胞の増殖抑制効果を確認するために、96ウ
ェルプレートにA549細胞をウェル当たり10,000細胞になるように接種した後に
、18時間の間培養して安定化させた。そして、siRNAを処理した後に5日間培養し
、CCK-8を用いて吸光度を測定した。その結果は、図10Bに示した。
【0058】
図10Aに示されたように、CD300c siRNAを用いて細胞でCD300cの
発現を抑制できることを確認した。また、図10Bに示されたように、癌細胞株にsiR
NAを処理すると、細胞増殖が抑制されることを確認した。
【0059】
前記結果を通じて、CD300cの発現を抑制させることによって、抗癌効果を示すこ
とを確認することができ、siRNA(小分子干渉RNA)、アンチセンスオリゴヌクレ
オチド(ASO)、miRNA(マイクロRNA)等を用いてCD300cの発現を抑制
し、またCD300cに特異的に結合する抗体、アプタマー等を用いてCD300cの活
性を抑制することによって、多様な癌において抗癌治療効果を示すことができることを確
認することができた。
【0060】
[実施例9:CD300c機能および/または発現抑制を通した抗癌免疫効果の確認]
CD300cの機能および/または発現を抑制することによって、抗癌免疫効果を示す
かを確認するために、実施例7.1と同じ方法で大腸癌細胞株が移植されたBALB/c
マウスに濃度10μgの抗CD300c抗体を0、1、および5日目に腹腔注射で投与し
、7日目に安楽死させた後に、マウスの骨髄を分離した。そして、分離した骨髄から骨髄
由来抑制細胞(Myeloid- derived suppressor cells
;MDSC)、リンパ球、および細胞傷害性Tリンパ球を、フローサイトメーター(FA
CS)を用いて確認した。その結果は、図11に示した。
【0061】
図11に示されたように、抗CD300c抗体を処理したマウスの場合、リンパ球およ
び細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)の場合には、数が増加し、リンパ球は、分化誘導(
CD4+)が促進されたことを確認した。反面、骨髄由来抑制細胞の数が減少したことを
確認した。前記結果を通じて、CD300cの機能および/または発現を抑制することに
よって、癌動物モデルの血液内で免疫系の活性化が誘導され、T免疫細胞の活性または増
殖を抑制させる骨髄由来抑制細胞の数を減少させることによって、抗癌免疫効果を顕著に
増加させて、癌治療効果を示すことを確認することができた。
【0062】
図12は、CD300cの活性および/または発現を抑制することによって抗癌効果を
示す機序について簡略に示す図であって、従前に知られている免疫チェックポイントを形
成しているB7ファミリー(例えば、PD-1/PD-L1相互作用等)のように腫瘍の
表面に発現するCD300cは、T細胞表面の相互結合分子(Binding Part
ner)と結合してT細胞の活性化を抑制する作用をするが、CD300cに対して特異
的に結合する抗CD300c抗体を処理することによって、T細胞の活性および増殖を刺
激して抗癌効果を示すと同時に、腫瘍細胞表面のCD300cに結合して直接的に腫瘍の
増殖を抑制することが確認される。これは、CD300cの発現を抑制するオリゴヌクレ
オチドを用いて、腫瘍表面のCD300cが発現しないようにしても、同じ効果を示すこ
とが確認される。
【0063】
したがって、前記結果を通じて、CD300cの発現および/または機能を抑制するこ
とによって、癌環境内で腫瘍浸潤リンパ球および細胞毒性Tリンパ球の数を増加させ、骨
髄由来抑制細胞の数を減少させて、体内の抗癌免疫反応を効果的に活性化させると共に、
細胞の増殖を抑制して、癌の成長および発達を効果的に抑制できることを確認したので、
CD300cの発現および/または機能を抑制する物質を多様な癌の増殖、再発、転移等
を抑制するのに効果的に使用可能であることを確認することができた。
【0064】
上記に記述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野に
おける通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、
他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、
以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと
理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、多様な癌細胞の表面に存在するCD300cタンパク質の新規な用途に関し
、CD300cタンパク質の発現または活性を抑制させることによって、T細胞の活性を
増加させ、癌細胞の増殖を抑制できることを確認したので、本発明のCD300cの発現
抑制剤または活性抑制剤は、多様な癌に適用可能であると共に、癌の予防および/または
治療効果を顕著に増加させることができるので、多様な癌治療剤に適用されて幅広く使用
可能なものと期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
0007577252000001.xml