IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケアメディ カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ ソガン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】電気化学的流量モニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/64 20060101AFI20241028BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20241028BHJP
【FI】
G01F1/64
G01F1/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023501572
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021008690
(87)【国際公開番号】W WO2022010276
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0085710
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0089241
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522464595
【氏名又は名称】ケアメディ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREMEDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Sinsu-dong,Sogang University),Teilhard Hall 415-ho,35,Baekbeom-ro,Mapo-gu Seoul 04107,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515139031
【氏名又は名称】ソガン ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ディベロップメント ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウンソップ
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ウンファ
(72)【発明者】
【氏名】パク,テゾァ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122883(JP,A)
【文献】特開2006-337221(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00077413(EP,A1)
【文献】特開2012-122783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00 ~ 1/74
G01N 27/28
A61M 1/16
G01F 23/24 ~ 23/263
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的流量モニタリング装置において、
所定の体積を有し、イオン性流体を収容する空間が中央に形成されたメンブレンと、
前記メンブレンの両側に各々設けられた第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極及び第2の電極に電圧を印加して前記空間を濃度分極状態に変化させる制御部とを含み、
前記空間には、流体が出入り可能な流体移動通路が前記第1の電極及び第2の電極と平行に結合され、
前記制御部は、
前記第1の電極及び第2の電極に所定の電圧を供給する電源供給部と、
前記空間に注入された流体のイオンが、前記空間の両端に配置された前記第1の電極及び第2の電極に移動することによって発生するイオン電流を測定する測定部とを含み、
前記電源供給部が前記空間に収容された流体を濃度分極状態に誘導した後、前記測定部が濃度分極状態の空間に前記流体移動通路を介して注入された流体により、発生したイオン電流値を基に流量を算出する、電気化学的流量モニタリング装置。
【請求項2】
前記流体は、0.1mM~10mMの低いイオン度を有する溶液である、請求項1に記載の電気化学的流量モニタリング装置。
【請求項3】
前記メンブレンの空間は、2μL~4μLの体積である、請求項1に記載の電気化学的流量モニタリング装置。
【請求項4】
前記第1の電極及び第2の電極の間隔は、50μm~1mmである、請求項1に記載の電気化学的流量モニタリング装置。
【請求項5】
前記第1の電極及び第2の電極の一側に突出した形態で形成され、前記制御部と電気的に連結される連結部をさらに含む、請求項1に記載の電気化学的流量モニタリング装置。
【請求項6】
前記流体移動通路に連結され、前記空間に予め設定された流量の流体を注入するポンピング部をさらに含む、請求項1に記載の電気化学的流量モニタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的流量モニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物注入ポンプは、正確にコントロールして注入されなければ、治療に有効ではないだけでなく、誤注入(過剰注入、過少注入)による副作用を最小化することができない。現在病院等で活用されている薬物注入ポンプは、容積ポンプ(volumetric pump)、注射器ポンプ(syringe pump)、体内植込み型ポンプ(implantable pump)などがあり、殆どの場合、流量のモニタリングが正確に測定されて制御されていない。これは、個別に簡単に活用可能なマイクロリットル(microliter)或いはナノリットル(nanoliter)レベルの流量を精密に測定する簡単な技術が存在しないためである。
【0003】
図1は、従来の電気浸透ポンプに活用される電極を示す図である。
【0004】
電気浸透ポンプは、多孔性膜(多孔性メンブレン)の両端の電極を利用して電圧をかけた際に生じる電気浸透現象により流体が移動することを利用したポンプである。多孔性膜の材料としては、一般的に、シリカ(silica)、ガラス(glass)などが使用されるが、これらは水溶液に浸されていれば表面が負の電荷を帯びる。この状態で電圧を加えれば、(+)電極部から(-)電極部への流体の移動が起こる(図1の上側の図)。多孔性膜には多数の流体が通れる経路がある。このうち1つを拡大してみると、流体通路の表面(多孔性膜材料の表面となる)は負の電荷(bound anion)を帯びるようになるので、これは、当接する流体において動くことのできる(+)電荷を有する陽イオン(mobile cation)が移動して電荷均衡の合う状態となる。このとき、電圧を加えれば、(+)電極部の側から(-)電極部の方向へ陽イオン(mobile cation)が表面に沿って移動しながら、これによる水素結合ネットワークで連結された流体全体が滑るように流れる現象が生じるが、これを電気浸透現象と言い、この原理を利用したポンプが電気浸透ポンプである。
【0005】
図1を参照すると、電気浸透ポンプに活用される電極は、流体の移動を円滑にするために、多孔性電極である白金網(Pt mesh)、多孔性カーボン紙或いは繊維(carbon paper or carbon cloth)、又は多孔性構造の上にコーティングされた様々な電極物質が活用される。また、電極は、シリカなどにより構成された多孔性膜を挟んで電圧をかければ、これによる流体の移動が起こる。
【0006】
電気浸透ポンプの流量は、電圧の大きさ、電圧をかけた時間などに応じて調節可能である。よって、電気浸透ポンプの注入正確度を向上させるために、流量に対するフィードバックが可能な精密な流量モニタリング装置が求められる。
【0007】
それに関し、従来技術として、電気化学的な分極現象を利用した流速測定装置が報告されているが(ACS Sensors 2019)、この場合は、直接電流を測定する方式ではなく、濃度分極を引き起こす電極対が別にあり、流体が通る通路にて他の電極対でインピーダンス(impedance)を測定する方式である。これは、測定しようとする流体に電極が直接当たるため、流体が薬物である場合は汚染の恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような問題を解決するために、本発明の一実施例は、薬物の汚染なしに、薬物の過剰注入、過少注入による危険及び副作用を防止すべく、マイクロリットル或いはナノリットルレベルの流量を精密にモニタリングし、一定のイオン濃度を有する溶液を注入する電気化学的流量モニタリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
但し、本実施例が解決しようとする技術的課題は、上記したような技術的課題に限定されるものではなく、また他の技術的課題が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を解決するすための技術的手段として、電気化学的流量モニタリング装置は、所定の体積を有し、イオン性流体を収容する空間が中央に形成されたメンブレンと、メンブレンの両側に各々設けられた第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に電圧を印加して空間を濃度分極状態に変化させる制御部とを含み、メンブレンは、空間に流体が出入り可能な流体移動通路を含み、制御部は、濃度分極状態で流体移動通路を介して注入された流体により、発生したイオン電流値を基に流量を算出する。
【0011】
流体は、0.1mM~10mMの低いイオン度を有する溶液である。
【0012】
メンブレンの空間は、2μL~4μLの体積である。
【0013】
第1の電極及び第2の電極の間隔は、50μm~1mmである。
【0014】
第1の電極及び第2の電極の一側に突出した形態で形成され、制御部と電気的に連結される連結部をさらに含む。
【0015】
流体移動通路に連結され、空間に予め設定された流量の流体を注入するポンピング部をさらに含む。
【0016】
制御部は、第1の電極及び第2の電極に所定の電圧を供給する電源供給部と、空間に注入された流体のイオンが第1の電極及び第2の電極の両端に移動することによって発生するイオン電流を測定する測定部とを含む。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の課題を解決するための手段によれば、本発明は、一対の電極で濃度分極と流量に比例した電流或いは電荷量の測定が可能となるので、濃度分極を引き起こす別の電極対を含む従来の技術とは構造的に異なっているだけでなく、遥かに単純な形態を表す。
【0018】
本発明に係る流量の測定は、一定のイオン濃度を有する全ての溶液に適用可能であるが、0.1~10mM程度の低いイオン度の溶液を活用する電気浸透ポンプに適用するのに非常に有用である。
【0019】
また、既存の電気浸透ポンプに本発明に係る流量モニタリング装置を流量のフィードバックとして連結すれば、遥かに正確な流量コントロールが可能となる。
【0020】
さらに、本発明に係る流量モニタリング装置は、薬物の他にも別の様々な定量注入に活用が可能であり、現在流量センサの開発分野で現われているボトルネック(bottle-neck)問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の電気浸透ポンプに活用される電極を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係る分極後のイオン性溶液注入によるイオン電流測定原理を説明するための図である。
図3】本発明の一実施例に係る流量センサ用電極と結合された流体移動通路及びポンピングの構成を示す図である。
図4a】本発明の一実施例に係る流量センサ用電極の間に配置されたメンブレンを概略的に示す図である。
図4b】本発明の一実施例に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施例に係る1mm間隔に分極された電極間へのイオン性溶液注入による電流特性変化グラフである。
図6a】本発明の一実施例に係る流量と電流の線型性グラフである。
図6b】本発明の一実施例に係る流量による電流の安定性グラフである。
図7】本発明の一実施例に係る50μm間隔に分極された電極間へのイオン性溶液注入による電流特性変化グラフである。
図8】本発明の一実施例に係る流量による電流変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳しく説明する。ところが、本発明は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0023】
本発明の明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。
【0024】
本発明の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0025】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。本発明の明細書全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、又はその数値に近接した意味として使用され、本発明の理解を助けるために正確あるいは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。本発明の明細書全体において使用される程度の用語「~(する)ステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0026】
本発明は、マイクロリットル或いはナノリットルレベルの流量を精密にモニタリングすることで薬物ポンプなど微量精密ポンプの注入正確度を高める技術であって、電気化学的な原理が適用される。特に、溶液のイオン度(イオンの濃度)が一定の溶液の流量及び流速を決定するのに適用されても良い。2つの電極の間に電圧をかけてイオンの濃度分極現象(concentration polarization)が誘導された状態でイオン性液体(流体、溶液)が投入されれば、この液体に含まれたイオンが電極の両端に移動し、これにより電流(イオン電流、ionic current)が測定される。この電流は投入された流量と比例するので、測定された電流或いは電荷量を流量と連携される定量的指標として使用しても良い。
【0027】
図2は、本発明の一実施例に係る分極後のイオン性溶液注入によるイオン電流測定原理を説明するための図である。図3は、本発明の一実施例に係る流量センサ用電極と結合された流体移動通路及びポンピングの構成を示す図である。図4aは、本発明の一実施例に係る流量センサ用電極の間に配置されたメンブレンを概略的に示す図である。図4bは、本発明の一実施例に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【0028】
図面に示すように、本発明の一実施例に係る電気化学的流量モニタリング装置は、ポンピング部10と、流体移動通路110と、空間125が形成されたメンブレン120と、第1の電極130と、連結部140と、第2の電極150と、電源供給部210及び測定部220により構成された制御部20とを含む。
【0029】
具体的に、本発明の流量モニタリング装置は、所定の体積を有し、イオン性流体を収容する空間125が中央に形成されたメンブレン120と、メンブレン120の両側に各々設けられた第1の電極130及び第2の電極150と、第1の電極130及び第2の電極150に電圧を印加して空間を濃度分極状態に変化させる制御部20とを含む。ここで、メンブレン120は、空間に流体が出入り可能な流体移動通路110を含む。また、制御部20は、濃度分極状態で流体移動通路110を介して注入された流体により、発生したイオン電流値を基に流量を算出する。
【0030】
例えば、流体は、0.1mM~10mMの低いイオン度を有する溶液であっても良いが、これに限定されるものではない。0.1~10mM程度の低いイオン度を有する溶液が電気浸透ポンプにおいて一般的に使用され、溶液が低いイオン濃度である方が電気浸透現象でより有利である。
【0031】
例えば、図4aは、図3に示された第1の電極130と、メンブレン120と、第2の電極150との配置関係が概略的に示された斜視図である。
【0032】
第1の電極130及び第2の電極150は、メンブレン120の両側にそれぞれ配置されても良い。
【0033】
また、第1の電極130及び第2の電極150は、一側に突出した形態で形成された連結部140を含んでいても良い。このとき、連結部140は、制御部20と電気的に連結されても良い。
【0034】
メンブレン120は、所定の体積を有し、イオン性流体が流体移動通路110を介して流入され、収容される空間125を含んでいても良い。
【0035】
一例において、メンブレン120は、非多孔性薄膜からなっていても良い。これにより、流体は、流体移動通路110を介して空間125に注入され、注入された流体は空間125の内部に収容されることができる。このとき、メンブレン120の空間125は、2μL~4μLの体積を有するように形成されても良く、流体を収めておく役割をする。好ましくは、球形に形成された空間125は、直径2mm、厚さ1mmであって、約3μLの体積を有するように形成されても良い。ここで、通路の形状が球形に限定されるものではなく、流量に応じて様々な体積を有する形状に形成されても良い。
【0036】
例えば、図4aに示されたメンブレン120の両側に第1の電極130及び第2の電極150が結合され、図3に示されたポンピング部10が流体移動通路110と連結されても良い。
【0037】
このとき、ポンピング部10は、流体移動通路110に連結され、空間125に予め設定された流量の流体を注入する役割をする。一例において、ポンピング部10は、従来の電気浸透ポンプと連結されて流量コントロールが行われても良いが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、結合された流量センサ用電極は、図2に示すように、メンブレン120の中央を貫通した形態で形成された空間125と、空間125を挟んで対向して配置された第1の電極130及び第2の電極150とにより構成されても良い。一例において、第1の電極130及び第2の電極150の間隔は、50μm~1mmであっても良い。
【0039】
例えば、図2(a)を参照すると、電源供給部210は、第1の電極130及び第2の電極150の両端に電気分解が起こらない程度の電圧を印加し、第1の電極130及び第2の電極150の間に位置したメンブレン120の空間125を濃度分極状態に変化させても良い。好ましくは、電源供給部210は、電圧として1.0Vを印加しても良い。
【0040】
次いで、第1の電極130及び第2の電極150の間に位置した空間125の内部が濃度分極状態においてイオンを含む流体が注入されれば、図2(b)に示すように、第1の電極130及び第2の電極150の間に位置した空間125に陽イオンの電流が流れる。このとき、制御部20が空間125の内部で発生する電流値又は電荷量を測定し、測定値に基づいて流体の微小体積を算出しても良い。
【0041】
図4bを参照すると、制御部20は、第1の電極130及び第2の電極150に所定の電圧を供給する電源供給部210と、空間125に注入された流体のイオンが第1の電極130及び第2の電極150の両端に移動することにより発生するイオン電流を測定する測定部220とを含んでいても良い。例えば、図4aに示された第1の電極130及び第2の電極150において突出した連結部140が制御部20と連結されても良い。
【0042】
以下、本発明の一実施例に係る流量モニタリング装置を利用した流量と電流の特性を説明することとする。
【0043】
(例1)流量センサの構成
一例において、図3に示すように、本発明の電気化学的流量モニタリング装置は、第1及び第2の電極130、150の間において、両面テープ120(メンブレン)の中央が一定の体積になるように空間125を作り、溶液が出入り可能な流体移動通路110を含む。また、図4bに示すように、電極130、150の両端に、外部から電圧をかけ、電流を測定できるように連結部140を含む。このとき、流体を収め、流量センサの役割をする通路である球形の空間125は、直径2mm、厚さ1mmであって、約3μLの体積を有する。
【0044】
図5は、本発明の一実施例に係る1mm間隔に分極された電極間へのイオン性溶液注入による電流特性変化グラフである。
【0045】
(例2)1mm間隔の電極を利用した流量センサの性能
図5を参照すると、第1及び第2の電極130、150に1.0Vを印加して空間125の内部を濃度分極状態に変化させる。その後、ポンピング部10(注射器ポンプ)を利用し、0.5mMのLiSO溶液を10秒間それぞれ2μL、3μL、4μLずつ注入しながら電流の特性を観察した。図5(a)乃至図5(c)に示すように、それぞれ2μL、3μL、4μLの流体(溶液)を順次に注入した場合、電流特性は、時間の流れに応じて減少することが表れた。
【0046】
図6aは、本発明の一実施例に係る流量と電流の線型性グラフである。
【0047】
図6aを参照すると、ピーク電流を流量と係わる値に連携させ得ることを示している。4μLの場合、溶液の体積が空間125の体積よりも多少大きく、大きさが少し小さくなったと推定される。
【0048】
図6bは、本発明の一実施例に係る流量による電流の安定性グラフである。
【0049】
図6bを参照すると、それぞれの流速(流量)において複数回繰り返して実験した結果、再現性は2%以内であることが確認された。
【0050】
最初の3つのデータは、注射器ポンプの初使用の不安定に起因することが確認され、残りの7つのデータにて平均、標準偏差を計算した。2μLの場合、27±0.4nAで1.5%の精密度を表し、3μLの場合、37±0.3nAで0.8%の精密度を表し、4μLの場合、45±0.3nAで0.8%の精密度を表す。
【0051】
図7は、本発明の一実施例に係る50μm間隔に分極された電極間へのイオン性溶液注入による電流特性変化グラフである。
【0052】
(例3)50μm間隔の電極を利用した流量センサの性能
図7を参照すると、例2と類似した形態の構造であるが、両電極130、150の間の間隔は50μmと1/20に減らし、電極の面積は3mm×19mmと18倍増加した流量センサ電極を活用して電流を測定した。このとき、空間125の内部体積は例2と類似するよう、3μLを有するように形成した。両電極に1.0Vの電圧を印加してベースラインを安定させた後に0.5μLの流体を順次に注入した場合、電流の特性が図7に示すように一定に表れた。
【0053】
図8は、本発明の一実施例に係る流量による電流変化グラフである。
【0054】
図8を参照すると、例3の流量センサ構造を利用し、0.5mMのLiSO溶液を10秒間それぞれ0.5、1.0、2.0μL注入して電流の特性を観察した。このとき、注入された溶液の体積の増加に応じて電流値も増加し、電流の特性が比例して表れた。
【0055】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0056】
本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4a
図4b
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6a
図6b
図7
図8