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特許7577269車中泊避難支援システム、車中泊避難支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】車中泊避難支援システム、車中泊避難支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241028BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024105671
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594158150
【氏名又は名称】学校法人君が淵学園
(73)【特許権者】
【識別番号】524248223
【氏名又は名称】Bosai Tech株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004440
【氏名又は名称】弁理士法人ソシデア知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】亜原理 有
(72)【発明者】
【氏名】山戸 健
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和典
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190265(JP,A)
【文献】国際公開第2022/149451(WO,A1)
【文献】特開2022-043420(JP,A)
【文献】 山崎 奈津子,車中泊避難にも対応できる避難所支援システム,会津大学短期大学部産業情報学科経営情報コース 2016年度卒業研究論文要旨集,日本,2017年03月21日,全頁,[online],[2024年8月21日検索],インターネット<URL:https://www.jc.u-aizu.ac.jp/department/management/youshi/2016/29.pdf><URL:https://www.jc.u-aizu.ac.jp/news/2017/03/2016-2.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を記憶する車両記憶部と、
前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を記憶する避難者記憶部と、
車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する統計情報生成部と
車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、
各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、
前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測する支援物資予測部と、
備える車中泊避難支援システム。
【請求項2】
前記支援物資予測部で予測した各車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を、前記各車中泊エリアの位置情報に対応する地図上の位置に表示した分布地図を生成する分布地図生成部を備える請求項に記載の車中泊避難支援システム。
【請求項3】
車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、車中泊避難者に発生する可能性がある健康被害リスク、および前記避難者情報を含む教師データが学習されたリスク学習モデル基づいて、
各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、前記健康被害リスクを予測する健康被害リスク予測部を備える請求項1に記載の車中泊避難支援システム。
【請求項4】
前記健康被害リスクと、当該健康被害リスクに関するアドバイスとを対応付けて記憶するアドバイス記憶部と、
前記アドバイス記憶部を参照して、前記健康被害リスク予測部で予測した各車中泊避難者の健康被害リスクのアドバイスを取得し、取得した前記アドバイスを当該各車中泊避難者の端末に送信するアドバイス提供部と、
を備える請求項に記載の車中泊避難支援システム。
【請求項5】
前記健康被害リスク予測部は、前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した健康被害リスクを集計して、当該車中泊エリアの前記健康被害リスクを予測する請求項に記載の車中泊避難支援システム。
【請求項6】
車中泊避難支援システムが実行する方法であって、
車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を車両記憶部に記憶するステップと、
前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を避難者記憶部に記憶するステップと、
車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成するステップと
車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、
各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、
前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測するステップと、
有する方法。
【請求項7】
車中泊避難支援システムを、
車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を記憶する車両記憶部、
前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を記憶する避難者記憶部、
車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する統計情報生成部
車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、
各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、
前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測する支援物資予測部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時における車中泊避難支援システム、車中泊避難支援方法、およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震及び台風等の災害時の被災者には、避難所に避難した被災者(以下、避難所避難者という)の他に、プライバシーの問題、感染症への不安、及び、ペット等を同伴できない等の避難所の規則の問題等から、自治体等により指定される避難所を利用せず、自家用車等の車両に避難している被災者(以下、車中泊避難者という)がいる。
避難所避難者であっても車中泊避難者であっても、自治体等から適切な支援を受けるために、市との情報共有や避難所等での情報共有ができるアプリが提供されている(例えば、非特許文献参1参照)。
【0003】
特に、車中泊避難者については、災害発生時に、支援を必要とする車中泊避難者を特定し、車中泊避難者に対する支援を提供する技術を改善する方法(特許文献1参照)や、利用者が所定の物品を購入したことを示す購入情報を蓄積し、蓄積した購入情報に基づいて、車両を避難場所として使用する車中泊避難のための所定の要件の充足度を判定して、車中泊避難に関する情報提供を必要とする利用者を推定することで、車中泊避難の可能性がある/している利用者に情報提供する装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許7476784号
【文献】特許7468336号
【非特許文献】
【0005】
【文献】ツナガル+[URL:https://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/t_bousai/tsunagaru_plus.html 2024年6月17日検索]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、過去の災害において、様々な場所で車中泊避難が行われていたり、指定避難所であっても車中泊避難者を把握することができなかったりしたため、車中泊避難に対する状況把握や物資支援が円滑にできなかった。この問題を解決するために、今後、車中泊避難は予め指定されている車中泊エリアで行うことで、車中泊エリア毎に車中泊避難者を一元管理することの検討がなされている。
しかしながら、上記アプリや特許文献1,2は、支援を必要とする車中泊避難者それぞれを把握することはできるが、車中泊エリア毎に車中泊避難者を一元管理することはできない。
【0007】
また、災害発生時からの時間経過に伴って、車中泊エリアの状況は変化し、また車中泊避難者が必要とする支援も変化するが、上記アプリや特許文献1,2では、車両避難開始時からの時間経過は考慮されていないため、時間経過に伴う変化に対応することができないという問題点あった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、車中泊エリア毎に車中泊避難者の情報を効率的に収集して一元管理し、車中泊エリア毎に経時的な状況把握や支援予測を行う車中泊避難支援システム、車中泊避難支援方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を記憶する車両記憶部と、前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を記憶する避難者記憶部と、車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する統計情報生成部と、車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、前記車中泊エリア毎に予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測する支援物資予測部とを備える車中泊避難支援システムを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記支援物資予測部で予測した各車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を、前記各車中泊エリアの位置情報に対応する地図上の位置に表示した分布地図を生成する分布地図生成部を備える車中泊避難支援管理システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、車中泊避難者に発生する可能性がある健康被害リスク、および前記避難者情報を含む教師データが学習されたリスク学習モデル基づいて、各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、前記健康被害リスクを予測する健康被害リスク予測部を備える車中泊避難支援システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記健康被害リスクと、当該健康被害リスクに関するアドバイスとを対応付けて記憶するアドバイス記憶部と、前記アドバイス記憶部を参照して、前記健康被害リスク予測部で予測した各車中泊避難者の健康被害リスクのアドバイスを取得し、取得した前記アドバイスを当該各車中泊避難者の端末に送信するアドバイス提供部と、を備える車中泊避難支援システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記健康被害リスク予測部は、前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した健康被害リスクを集計して、当該車中泊エリアの前記健康被害リスクを予測する車中泊避難支援システムを提供する。
【0015】
また、本発明は、車中泊避難支援システムが実行する方法であって、車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を車両記憶部に記憶するステップと、前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を避難者記憶部に記憶するステップと、車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成するステップと、車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測するステップと、を有する方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、車中泊避難支援システムを、車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を記憶する車両記憶部、前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を記憶する避難者記憶部、車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する統計情報生成部、車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、前記車中泊エリア毎に、前記各車中泊避難者について予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測する支援物資予測部、として機能させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車中泊エリア毎に車中泊避難者の情報を効率的に収集して一元管理し、車中泊エリア毎に経時的な状況把握や支援予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る車中泊避難者支援システムの概要図である。
図2】本発明の実施形態に係る車中泊避難者支援システムの機能構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る車中泊避難支援システムによる車中泊避難支援処理のフローチャートを示す図である
図4】本実施形態に係る車中泊エリアDB135を模式的に示す。
図5】本実施形態に係る車両DBを模式的に示す図である。
図6】本実施形態に係る避難者DBを模式的に示す図である。
図7】本実施形態に係るアドバイスDBを模式的に示す。
図8】本実施形態に係る分布地図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0020】
[基本概念]
図1は、本発明の実施形態に係る車中泊避難支援システム1の概要図である。
車中泊避難支援システム1は、災害時に、車中泊エリアに駐車されて車中泊に用いられる車両に関する車両情報、および当該車両に搭乗している車中泊避難者に関する避難者情報を収集して車中泊エリア毎に管理し、車中泊エリア毎の車両情報および避難者情報に基づいて、経時的統計情報の生成、支援物資の提供数量予測、健康被害リスク予測を行うシステムである。
【0021】
車中泊避難支援システム1は、図1に示すように、車中泊避難支援装置100と、車中泊避難者端末(以下、避難者端末という)200と、を備える。車中泊避難支援装置100と避難者端末200とは、インターネット等の通信回線で接続されるが、災害時のため通常のインターネット等の通信回線が使えない場合には、予め車中泊エリアに設置されたローカルネットワークで、車中泊避難支援装置100と避難者端末200とは接続される。
【0022】
車中泊避難支援装置100は、車中泊避難支援システム1の管理者に管理され、クラウドサーバであってもよいしオンプレミスであってもよい。また、車中泊避難支援装置100は、1台とは限らず、車中泊エリア毎に複数台、設置されてもよい。
【0023】
避難者端末200は、車中泊エリアに滞在している車中泊避難者(以下、避難者という)の端末であって、災害時に使用する端末であるので、スマートフォンやタブレット型端末などのモバイル端末であるのが望ましいが、コンピュータ(PC)であってもよい。避難者端末200は、図1において、1つのみ示しているが、2つ以上存在してもよく、実際のシステムとしては多数の避難者端末200が存在しうる。
【0024】
図1を用いて、車中泊避難支援システム1の概要について説明する。
まず、避難者は、災害発生後、車中泊エリアに車両を駐車した後、避難者端末200から車中泊避難支援装置100に車両受付および車両避難者受付をして、入場受付を行う(S1)。
ここで、車中泊エリアとは、自治体等により予め指定されている、車中泊場所であって、例えば、指定避難所と隣接するグラウンドや、大規模商業施設の駐車場である。なお、車中泊エリアは、1のグラウンドや駐車場に限らず、近接する複数のグラウンドや駐車場から構成されてもよい。
【0025】
詳細には、まず、車中泊エリアに車両を駐車した後、当該車両に搭乗している避難者の内の代表者(例えば、運転者)は、避難者端末200から車中泊避難支援装置100に車両情報を保存して、車中泊エリアへの車両受付を行う。
【0026】
例えば、代表者は、避難者端末200に、車中泊避難支援装置100からアプリをダウンロードする。次に、運転者は、アプリに車両の属性情報および車両の到着日時を入力して、入力された車両の属性情報および到着日時からアプリが生成したQRコードを所定端末に読み込ませる。ここで、車両の属性情報は、例えば、車両のナンバー、車両の所有者、車種等である。また、到着日時は、代表者が入力しなかった場合には、アプリの起動日時やQRコード生成日時を到着日時として取得してもよい。
【0027】
所定端末は、QRコードから取得した車両の属性情報および到着日時と、自身の位置情報とを含む車両情報を車中泊避難支援装置100に送信する。所定端末は、車中泊避難支援装置100と有線または無線(インターネットまたはローカルネットワーク)で接続されている。
そして、車中泊避難支援装置100が、受信した車両情報を保存すると、車両受付が完了する。
【0028】
なお、避難者端末200のアプリに入力された車両の属性情報および到着日時と、避難者端末200の位置情報(経度緯度や住所)とを含む車両情報を、避難者端末200から車中泊避難支援装置100に直接送信してもよい。
【0029】
続いて、車両に搭乗している避難者は、避難者端末200から車中泊避難支援装置100に自身の属性情報を含む避難者情報を保存して、車中泊エリアへの避難者受付を行う。ここで、避難者の属性情報は、例えば、氏名、年齢、性別、搭乗している車両の車両ナンバー、要配慮者情報、連絡先、身長、体重等である。なお、避難者情報には、属性情報の他に、既往病歴、過去病歴、持病などの健康状態情報などの避難者に関する情報を含む。
【0030】
例えば、車両に搭乗している避難者は、避難者端末200に、車中泊避難支援装置100からアプリをダウンロードする。なお、車両受付に用いたアプリと同じであって、既に避難者端末200にダウンロードしている場合にはダウンロードは不要である。
次に、避難者は、アプリに自身の避難者情報を入力して、入力された避難者情報からアプリが生成したQRコードを所定端末に読み込ませる。なお、避難者は、同一車両に同乗する別の避難者の属性情報も併せて入力してもよい。
【0031】
所定端末は、読み込んだQRコードから取得した避難者情報を車中泊避難支援装置100に送信する。
そして、車中泊避難支援装置100が、受信した避難者情報を保存されると、避難者受付が完了する。
【0032】
図1に戻って、次に、車中泊避難支援装置100は、避難者端末200から受信した車両情報および避難者情報を保存し、管理する(S2)。
【0033】
次に、車中泊避難支援装置100は、S2で保存した車両情報および避難者情報に基づいて、車中泊エリア毎にリアルタイムおよび経時的統計情報を生成する(S3)。リアルタイム統計情報は、車中泊エリアの現況を表す統計情報であって、例えば、現時点の駐車台数や世代別人数分布などである。経時的統計情報は、過去のいくつかの時点での統計情報を含み、車中泊エリアの過去の状況変化を表す統計情報であって、例えば、2日前の駐車台数と1日前時点の駐車台数を含み、駐車台数の状況変化を表すことができる。
生成されたリアルタイムおよび経時的統計情報は、災害支援を行っている自治体等に提供され、自治体等による、車中泊エリアの避難者への支援に活用される。
【0034】
次に、車中泊避難支援装置100は、避難者の車中泊エリアへの滞在時間、および保存している避難者情報に基づいて、車中泊エリアへの支援物資の提供数量を機械学習を用いて予測する(S4)。
詳細には、車中泊避難支援装置100は、車両情報の到着時刻に基づいて、避難者の車中泊エリアへの滞在時間を算出する。次に、車中泊避難支援装置100は、保存している避難者情報に基づいて、各避難者について、予め設定された各支援物資について機械学習により必要数量を予測する。そして、車中泊避難支援装置100は、車中泊エリア毎に、各避難者について予測した必要数量を集計した、各車中泊エリアへの各支援物資の提供数量を支援物資情報として生成する。
生成された支援物資情報は、自治体等に提供され、車中泊エリアへの支援物資の提供に活用される。
【0035】
車中泊避難支援装置100は、避難者の車中泊エリアへの滞在時間、および保存している避難者情報に少なくとも基づいて、避難者の健康被害リスクおよび車中泊エリアの健康被害リスクを機械学習を用いて予測する(S5)。
詳細には、車中泊避難支援装置100は、車両情報の到着時刻に基づいて、避難者の車中泊エリアへの滞在時間を算出する。
【0036】
次に、車中泊避難支援装置100は、算出した滞在時間、および避難者情報に少なくとも基づいて、各避難者について、健康被害リスクを機械学習により予測する。ここで、健康被害リスクとは、避難者に生じる可能性のある健康被害の発生リスクであって、例えば、エコノミークラス症候群である。
【0037】
そして、車中泊避難支援装置100は、車中泊エリア毎に、各避難者について予測した健康被害リスクを集計して、各車中泊エリアの健康被害リスクをエリア健康被害リスク情報として生成する。エリア健康被害リスク情報は、例えば、「熊本中央1エリア エリアエコノミ―症候群の発生リスクレベル 高:35人中:10人、低:100人」として生成される。
生成されたエリア健康被害リスク情報は、自治体等に提供され、車中泊エリアへの健康被害発生を防止する支援に活用される。
【0038】
次に、車中泊避難支援装置100は、予め記憶している健康被害リスク毎のアドバイスから、各避難者について予測した健康被害リスクに対するアドバイスを取得し、各避難者の避難者端末200に、予測された健康被害リスクと取得したアドバイスとを送信して、避難者端末200に表示する(S6)。
それにより、避難者各自に直接、健康被害リスクとそれに対するアドバイスを提供できる。
【0039】
このような車中泊避難支援システムによれば、車中泊エリアに駐車した各車両の情報(車両情報)および車両に搭乗している避難者の情報(避難者情報)を効率的に収集して車中泊エリア毎に一元管理することで、車中泊エリア毎にこれらの情報から、車中泊エリア毎の経時的な状況把握を行うことができる経時的統計情報を生成することができる。
【0040】
また、車中泊エリア毎に、避難者の車中泊エリアへの滞在時間と避難者情報とに基づいて機械学習にて支援物資の提供数量予測を行うことができる。それにより、避難者は、要求しなくても、支援物資を必要数量、提供をうけることができる。
更に、避難者毎および車中泊エリア毎に、車両情報および避難者情報に少なくとも基づいて機械学習にて健康被害リスク予測を行うことができる。それにより、避難者の健康被害または車中泊エリア全体での健康被害を予防を支援することができる。
【0041】
[機能構成]
図2は、本実施形態に係る車中泊避難支援システム1の機能構成を示す図である。
図に示すように、車中泊避難支援システム1は、車中泊避難支援装置100と、避難者端末200とを備える。
【0042】
車中泊避難支援装置100は、通信部110と、制御部120と、記憶部130とを備える。
通信部110は、無線または有線によりネットワークに接続し、避難者端末200と通信を行う。
【0043】
制御部120は、例えば、プロセッサ、CPU等の演算手段によって実現され、各種のメモリ、ハードディスク等の記憶手段と協働して機能し、各種のプログラムを実行する。制御部120は、登録部121、統計情報生成部122、支援物資予測部123、健康被害リスク予測部124、アドバイス提供部125、および分布地図生成部126を備える。なお、制御部120が備える各機能部の詳細については、図3に示す車中泊避難支援フローにて併せて説明する。
【0044】
登録部121は、通信部110を介して避難者端末200から車両情報を取得して車両DB131に記憶する。また、登録部121は、通信部110を介して避難者端末200から避難者情報を取得して避難者DB132に記憶する。
統計情報生成部122は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、車中泊エリア毎の経時的統計情報を生成する。
【0045】
支援物資予測部123は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、学習モデル133に格納されている数量予測学習モデルを用いて、車中泊エリア毎の各支援物資の提供数量(支援物資情報)を予測する。
【0046】
健康被害リスク予測部124は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、学習モデル133に格納されているリスク予測学習モデルを用いて、各避難者の健康被害リスクを予測する。また、健康被害リスク予測部124は、予測した各避難者の健康被害リスクに基づいて、車中泊エリア毎の健康被害リスクを予測する。
【0047】
アドバイス提供部125は、健康被害リスク予測部124で予測された、各避難者の健康被害リスクに対応付けられたアドバイスをアドバイスDB134から取得し、取得したアドバイスを各避難者の避難者端末200に送信し、表示させる。
【0048】
分布地図生成部126は、統計情報生成部122で生成した車中泊エリア毎の経時的統計情報、支援物資予測部123で生成した車中泊エリア毎の支援物資情報、および健康被害リスク予測部124で予測した車中泊エリア毎の健康被害リスクの少なくとも一つを、車中泊エリアの位置情報に対応する地図上の位置に表示した分布地図を生成する。
【0049】
記憶部130は、車中泊エリアに駐車している車両に関する車両情報を保存する車両DB131、車両に搭乗している避難者に関する避難者情報を保存する車中泊避難者DB132、支援物資予測部123や健康被害リスク予測部124で用いる学習モデルを保存する学習モデルDB133、健康被害リスク毎のアドバイスを保存するアドバイスDB134、車中泊エリアに関する情報を保存する車中泊エリアDB135を含む。各DBの詳細については、後述する図3に示す車中泊避難支援フローにて併せて説明する。
【0050】
避難者端末200は、無線または有線によりネットワークに接続して車中泊避難支援装置100と通信を行う通信部(図示せず)と、避難者からの操作入力を受け付けるキーボードといった入力部(図示せず)と、情報を登録するためのアプリの画面や予測された健康被害リスクに関する情報といった各種情報等を表示する液晶ディスプレイといった表示部(図示せず)と、を備える。
【0051】
[処理フロー]
続いて、本実施形態に係る車中泊避難支援システム1による車中泊避難支援処理について、制御部120の各機能構成の詳細と共に説明する。
図3は、本実施形態に係る車中泊避難支援システム1による車中泊避難支援処理のフローチャートを示す図である。
【0052】
本処理は、車中泊エリアに駐車された車両に搭乗している避難者の避難者端末200に、車両登録および避難者登録を行うためのアプリが、車中泊避難支援装置100からダウンロードされたことに応じて開始する。
【0053】
登録部121は、避難者端末200のアプリに避難者から入力された車両の属性情報、車両を駐車した車中泊エリアの位置情報、および車両の到着日時を含む車両情報を避難者端末200から受信すると、車両DB131に保存し、車中泊エリアへの車両受付を行う(S101)。
【0054】
詳細には、登録部121は、避難者端末200から受信した車中泊エリアの位置情報に基づいて、車中泊エリアDB135を参照して、車中泊エリアの車中泊エリアIDを取得する。
【0055】
図4に、本実施形態に係る車中泊エリアDB135を模式的に示す。図4に示すように、車中泊エリアDB135に格納される車中泊エリア情報は、車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、車中泊エリア名称、位置情報(緯度,経度)、位置情報(住所)等が含まれる。本実施形態において位置情報は、緯度経度および住所であるが、車中泊エリアが地図上で特定できればよく、これに限られない。
【0056】
そして、登録部121は、取得した車中泊エリアIDと、避難者端末200から受信した車両の属性情報および車両の到着日時とを含む車両情報を、車両DB131に保存する。
【0057】
図5に、本実施形態に係る車両DB131を模式的に示す。図5に示すように、車両DB131に格納される車両情報は、車中泊エリアID、ナンバープレートに記載された自動車登録番号である車両ナンバー、車種、車両の所有者名、到着日時等を含む。
【0058】
また、登録部121は、避難者端末200のアプリに避難者から入力された避難者情報を避難者端末200から受信し、受信した避難者情報の避難者を識別する避難者IDを付与して避難者DB132に保存する(S102)。
【0059】
図6に、本実施形態に係る避難者DB132を模式的に示す。図6に示すように、避難者DB132に格納される避難者情報は、避難者を識別する避難者ID、車両ナンバー、氏名、性別、年齢、身長、体重、妊産婦や障害者等の配慮が必要な者であることを示す要配慮者情報、連絡先等を含む。
なお、車中泊エリアへの避難者受付時に、図6に示す避難者情報の全項目の入力が必要ではなく、予め設定された必須項目、例えば、車両ナンバーと氏名が入力されればよい。そして、未入力の項目は、後から追加できる。
【0060】
図3に戻って、統計情報生成部122は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する(S103)。
【0061】
詳細には、統計情報生成部122は、車両DB131の車両情報および避難者DB132の避難者情報全てに基づいて、リアルタイムの統計情報を生成する。
統計情報とは、例えば、駐車台数、車中泊避難者人数、世代別(乳幼児、児童、成人、高齢者等)人数分布、性別人数分布、車中泊エリアへの滞在時間別人数分布、車種別台数分布等であって、車中泊エリアの状況を表すものである。
【0062】
また、統計情報生成部122は、車両DB131の車両情報および避難者DB132の避難者情報から過去の所定時点における車両情報および避難者情報を抽出し、抽出した車両情報および避難者情報に基づいて過去の所定時点の統計情報を生成する。
過去の所定時点における車両情報および避難者情報の抽出は、車両情報に含まれる到着日時に基づいて、すなわち、過去の所定時点よりも到着日時が古く過去の所定時点では既に保存されていた情報を抽出することで行う。なお、過去の所定時点は複数であってよく、複数の場合には、過去の所定時点それぞれについて、統計情報生成部122は統計情報を生成する。
そして、統計情報生成部122は、生成した過去の所定時点の統計情報を含み、車中泊エリアの過去の状況変化を表す経時的統計情報を生成する。
【0063】
そして、統計情報生成部122は、生成したリアルタイムおよび経時的統計情報を、予め設定されている災害支援を行っている自治体等に送信する。なお、統計情報生成部122が自治体等と通信不可の場合には、生成したリアルタイムおよび経時的統計情報を紙や記憶媒体に出力して提供先に提供してもよい。
自治体等は、提供を受けたリアルタイムおよび経時的統計情報に基づいて、車中泊エリアの現況や車中泊エリアの状況の推移を把握することができる。その結果、自治体等は、車中泊エリアの避難者に現在必要な支援の提供、また、今後必要となる支援の準備をすることができる。
【0064】
図3に戻って、支援物資予測部123は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、車中泊エリア毎の支援物資の提供数量を機械学習を用いて予測する(S104)。
【0065】
詳細には、まず、支援物資予測部123は、車両DB131の到着日時に基づいて、各避難者の車中泊エリアへの滞在時間を算出する。滞在時間は、到着日時から現時点までの時間であってもよいし、予め指定した未来日時(指定日時ともいう)までの時間であってもよい。指定日時までの時間とすることで、支援物資が提供される日時に合わせた予測をすることもできる。
【0066】
支援物資予測部123は、算出した滞在時間、および避難者情報、特に避難者の属性情報を入力することで、予め設定された各支援物資の必要数量を出力する数量予測学習モデルを用いて、避難者毎の各支援物資の必要数量を予測する。予測される避難者毎の各支援物資の必要数量は、現時点までの滞在時間の場合には現時点の避難者に適した各支援物資の必要数量であり、指定日時までの滞在時間の場合には指定日時の避難者に適した各支援物資の必要数量である。
【0067】
上述した場合に、数量予測学習モデルは、避難者の滞在時間、各支援物資の必要数量、および避難者情報(避難者の属性情報)の組で構成される複数の学習用データセットを教師データとしてモデル学習が行われている。一例として、学習モデルは、ディープターニング(深層学習)等の公知の手法により機械学習される。
予め設定された各支援物資は、例えば、過去の災害の経験から決定された支援物資であって、食品類、日用品類、薬品類、乳児用品類など各種である。
【0068】
そして、支援物資予測部123は、避難者毎に予測した各支援物資の必要数量を車中泊エリア毎に集計した、各車中泊エリアへの各支援物資の提供数量を支援物資情報として生成する。
なお、支援物資予測部123に、滞在時間のみを変えて入力することで、同一避難者について各支援物資の経時的必要数量を予測し、各支援物資の経時的必要数量を集計して、車中泊エリアへの各支援物資の経時的提供数量を支援物資情報として生成することもできる。例えば、支援物資予測部123は、避難者および車中泊エリアについて、現時点、24時間後、48時間後の各支援物資の提供数量を予測することができる。
【0069】
そして、支援物資予測部123は、生成した支援物資情報を、予め設定されている災害支援を行っている自治体等に送信する。なお、支援物資予測部123が自治体等と通信不可の場合には、生成した支援物資情報を紙や記憶媒体に出力して提供先に提供してもよい。
自治体等は、提供を受けた支援物資情報に基づいて、車中泊エリアに現時点や指定日時時点で必要な支援物資を把握することができる。その結果、車中泊避難者が要求しなくても、避難者が必要としている支援物資を適切な数量で提供することができる。
【0070】
図3に戻って、健康被害リスク予測部124は、車両DB131および避難者DB132に基づいて、車中泊エリア毎に健康被害リスクを機械学習を用いて予測する(S105)。
ここで、健康被害リスクとは、エコノミークラス症候群、熱中症、低体温症、および一酸化炭素中毒などの避難者に生じる可能性のある健康被害の発生リスクを、例えば、低/中/高の三段階で示したものである。なお、発生リスクレベル分けの区分数は任意であってよく、可能性あり/なしの二段階や、発生確率0~20%/~40%/~60%/~80%/~100%の五段階であってもよい。
【0071】
詳細には、まず、健康被害リスク予測部124は、S104と同様に、車両DB131の到着日時に基づいて、各避難者の車中泊エリアへの滞在時間を算出する。滞在時間を、到着時刻から未来の指定時刻までの時間とすると、今後の健康被害リスクを予測することができる。
【0072】
健康被害リスク予測部124は、算出した滞在時間、および避難者情報を入力することで、健康被害リスクを出力するリスク予測学習モデルを用いて、各避難者の健康被害リスクを予測する。避難者情報には、属性情報だけでなく既往病歴、過去病歴、持病といった健康状態に関する健康状態情報が含まれているのが望ましい。予測される各避難者の健康被害リスクは、現時点までの滞在時間の場合には現時点の健康被害リスクであり、指定日時までの滞在時間の場合には指定日時の健康リスクである。例えば、健康被害リスク予測部124は、滞在時間1時間の30代妊産婦について、エコノミークラス症候群のリスクレベル:低、滞在時間24時間の30代妊産婦について、エコノミークラス症候群のリスクレベル:高と予測する。
【0073】
上述した場合に、リスク予測学習モデルは、避難者の滞在時間、健康被害リスク、および避難者情報の組で構成される複数の学習用データセットを教師データとしてモデル学習が行われている。一例として、学習モデルは、ディープターニング(深層学習)等の公知の手法により機械学習される。
【0074】
そして、健康被害リスク予測部124は、各避難者に予測した健康被害リスクを車中泊エリア毎に集計した、各車中泊エリアの健康被害リスクをエリア健康被害リスク情報として生成する。
なお、健康被害リスク予測部124に、滞在時間のみを変えて入力することで、同一避難者について経時的健康被害リスクを予測し、健康被害リスクを集計して、車中泊エリアの経時的健康被害リスクをエリア健康被害リスク情報として生成することもできる。例えば、健康被害リスク予測部124は、避難者および車中泊エリアについて、現時点および24時間後の健康被害リスクを予測することができる。
【0075】
そして、健康被害リスク予測部124は、生成したエリア健康被害リスク情報を、予め設定されている災害支援を行っている自治体等に送信する。なお、健康被害リスク予測部124が自治体等と通信不可の場合には、生成したエリア健康被害リスク情報を紙や記憶媒体に出力して提供先に提供してもよい。
【0076】
自治体等は、提供を受けたエリア健康被害リスク情報に基づいて、現時点および指定日時時点での車中泊エリアの健康被害リスクを把握することができる。その結果、適切なタイミングや対応策で健康被害の発生を防止することができる。対応策には、例えば、車中泊エリアへの保健士やDMATを派遣することや、健康被害の予防策の案内や注意喚起を行うこと等がある。
【0077】
図3に戻って、アドバイス提供部125は、健康被害リスク予測部124で予測された各避難者の健康被害リスクに対応するアドバイスを避難者端末200に送信し、避難者に提供する(S106)。
詳細には、まず、アドバイス提供部125は、健康被害リスク予測部124で予測された各避難者の健康被害リスクに対応するアドバイスを、アドバイスDB134を参照して取得する。
【0078】
図7に、本実施形態に係るアドバイスDB134を模式的に示す。図7に示すように、アドバイスDB134に格納されるアドバイス情報は、健康被害リスク、アドバイス等を含む。なお、アドバイスは、世代別や性別に設定してもよい。
【0079】
続いて、アドバイス提供部125は、取得したアドバイスを受ける避難者の連絡先を、避難者DB132を参照して取得し、取得した連絡先に送信し、避難者端末200に表示させる。なお、アドバイスを受ける避難者の連絡先が避難者DB132に登録されていない場合には、同一車両に搭乗している避難者であって避難者DB132に連絡先が登録されている避難者に、代わりにアドバイスを送信してもよい。
【0080】
図3に戻って、分布地図生成部126は、S103で生成された経時的統計情報、S104で生成された支援物資情報、およびS105で予測されたエリア健康被害リスクの少なくとも1つを、車中泊エリアの位置情報に対応する地図上の位置に表示した分布地図を生成する(S107)。
【0081】
詳細には、まず、分布地図生成部126は、経時的統計情報、支援物資情報、およびエリア健康被害リスクの少なくとも1つを表示する車中泊エリア(表示車中泊エリアともいう)の位置情報を、車中泊エリアDB125を参照して取得する。表示車中泊エリアは、管理者によって任意に選択されてもよいし、予め設定された所定条件、例えば、エリア健康被害リスクにおいて、エコノミー症候群の発生リスクが高の避難者が100人以上である車中泊エリア、に応じて選択されてもよい。
【0082】
分布地図生成部126は、表示車中泊エリアを含む地図情報を取得し、車中泊エリアの位置情報に対応する地図上の位置に、例えば吹き出しで経時的統計情報、支援物資情報、およびエリア健康被害リスクの少なくとも1つを表示する。地図上には、車中泊エリアを示すアイコンのみを表示し、アイコンが選択されると経時的統計情報、支援物資情報、およびエリア健康被害リスクが吹き出し等で表示されるようにしてもよい。
【0083】
図8は、本実施形態に係る分布地図の一例を示す図である。
分布地図には、表示車中泊エリアの位置を示す3つのアイコンが表示されている。そして、アイコンを選択すると吹き出しが表示され、吹き出しには、例えば、経時的統計情報、が表示される。アイコンを再度選択すると、支援物資情報およびエリア健康被害リスクに切り替えることができる。
複数のアイコンに吹き出しを表示させることもでき、表示車中泊エリアの状況等を対比することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る車中泊避難支援システムによれば、車中泊エリアに駐車した車両の情報(車両情報)および車両に搭乗している避難者の情報(避難者情報)を効率的に収集して車中泊エリア毎に一元管理することで、車中泊エリア毎にこれらの情報から、車中泊エリア毎の経時的な状況把握を行うことができる経時的統計情報を生成することができる。
【0085】
また、車中泊エリア毎に、避難者の車中泊エリアへの滞在時間と避難者情報とに基づいて機械学習にて支援物資の提供数量予測を行うことができる。それにより、避難者は、要求しなくても、その時必要としている支援物資を必要数量、提供をうけることができる。提供数量予測は、現時点だけでなく、今後の指定日時についても行うことができるので、支援側は今後の支援物資も考慮にいれて
【0086】
更に、避難者毎および車中泊エリア毎に、車両情報および避難者情報に少なくとも基づいて機械学習にて健康被害リスク予測を行うことができる。車中泊エリアでの健康被害リスク予測によって、自治体等は、車中泊エリアへの注意喚起や健康被害の予防活動を支援することで、車中泊エリア全体での健康被害の予防を支援することができる。また、避難者に直接健康被害リスクとアドバイスとを提供することにより、避難者毎の健康被害の予防を支援をすることもできる。
【0087】
(変形例1)
本実施形態において、支援物資予測部123は、予め設定された支援物資について必要数量を予測したが、支援物資の種別も予測してもよい。
その場合、支援物資予測部123は、算出した滞在時間、および避難者情報、特に避難者の属性情報を入力することで、支援物資と当該支援物資の必要数量とを併せて出力する支援物資予測学習モデルを用いる。
【0088】
(変形例2)
また、本実施形態において、健康被害リスク予測部124は、算出した滞在時間、および避難者情報を入力することで、健康被害リスクを出力するリスク予測学習モデルを用いて、各避難者の健康被害リスクを予測したが、現季節、現時刻、気象情報等の環境情報を合わせて入力して健康被害リスクを出力するリスク予測学習モデルを用いて各避難者の健康被害リスクを予測してもよい。
環境情報を加えることで、健康被害リスクの予測精度、特に、熱中症、低体温症、および一酸化炭素中毒のリスクの予測精度を向上させることができる。
【0089】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、車中泊避難支援システムについて説明したが、本発明において車中泊避難支援システムが実行する方法や、車中泊避難支援システムを各種手段として機能させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 車中泊避難支援システム
100 車中泊避難支援装置
110 通信部
120 制御部
121 登録部
122 統計情報生成部
123 支援物資予測部
124 健康被害リスク予測部
125 アドバイス提供部
126 分布地図生成部
130 記憶部
131 車両DB
132 避難者DB
133 学習モデルDB
134 アドバイスDB
135 車中泊エリアDB
200 避難者端末

【要約】      (修正有)
【課題】車中泊エリア毎に車中泊避難者の情報を効率的に収集して一元管理し、車中泊エリア毎に経時的な状況把握や支援予測を行う。
【解決手段】車中泊避難支援システム1は、車中泊する車両の属性情報、当該車両が駐車している車中泊エリアを識別する車中泊エリアID、および当該車中泊エリアへの到着日時を含む車両情報を記憶する車両記憶部(車両DB131)と、前記車中泊する車両に搭乗している車中泊避難者の属性情報を含む避難者情報を記憶する避難者記憶部(避難者DB132)と、車中泊エリア毎に、前記車両情報および前記避難者情報に基づいて、リアルタイムおよび経時的統計情報を生成する統計情報生成部122と、車中泊避難者の車中泊エリア滞在時間、各支援物資の必要数量、および前記避難者情報を含む教師データが学習された数量予測学習モデルに基づいて、各車中泊避難者について、前記車両記憶部に記憶されている到着日時に基づいて算出した車中泊エリア滞在時間および前記避難者記憶部に記憶されている避難者情報から、各支援物資の必要数量を予測し、前記車中泊エリア毎に予測した各支援物資の必要数量を集計して、当該車中泊エリアへの前記各支援物資の提供数量を予測する支援物資予測部123とを備える。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8