(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】低酸化還元電位水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20230101AFI20241028BHJP
【FI】
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 520G
C02F1/68 530A
C02F1/68 540Z
(21)【出願番号】P 2020174467
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520404872
【氏名又は名称】杉田 秀一
(73)【特許権者】
【識別番号】596060192
【氏名又は名称】南出 喜久治
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005736(JP,A)
【文献】特開2010-201410(JP,A)
【文献】特表2012-529909(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0034299(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/68-1/70
A23L2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水の製造方法であって、
100重量部の飲用水に、1.2重量部以上1.4重量部以下の糖類と、0.95重量部以上1.15重量部以下の塩類と、3.15重量部以上3.85重量部以下の酢類と、6重量部以上7重量部以下の酒類とを添加する第1工程と、
前記第1工程で得られた溶液を撹拌しながら60℃以上沸点未満の温度にまで加熱し、その後、常温にまで冷却する第2工程と、
前記第2工程で得られた溶液を、飲用水によって5倍以上10倍以下に希釈する第3工程と、
を備えたことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な水道水よりも酸化還元電位が低い低酸化還元電位水を製造する方法に関し、特に、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗加齢効果、美肌効果等の様々な効果が期待される低酸化還元電位水が注目されている。低酸化還元電位水とは、一般的な水道水(地域によって異なるが、+450mV~+600mVの酸化還元電位(以下、単に「電位」ともいう)を有する)よりも電位が低い水を指す。低酸化還元電位水を飲用すると、体内のラジカルが除去されることにより、上記の効果が生じると言われている。
【0003】
食品等の電位を低下させる従来の方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が知られている。この方法は、対象となる食品に16kHz~1MHzの周波数の音波を照射する工程(超音波処理)を含むことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法は、特定周波数の音波を照射するための特別な設備を必要とするため、製造コストが高くつくという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、安価かつ簡単に多量の低酸化還元電位水を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る低酸化還元電位水の製造方法は、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水を製造する方法であって、(1)100重量部の飲用水に、1.2重量部以上1.4重量部以下の糖類と、0.95重量部以上1.15重量部以下の塩類と、3.15重量部以上3.85重量部以下の酢類と、6重量部以上7重量部以下の酒類とを添加する第1工程と、(2)第1工程で得られた溶液を撹拌しながら60℃以上沸点未満の温度にまで加熱し、その後、常温にまで冷却する第2工程と、(3)第2工程で得られた溶液を、飲用水によって5倍以上10倍以下に希釈する第3工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記製造方法の第1工程で添加する糖類は、グルコース並びにその誘導体および化合物から選ばれたものであり、これには、調味料として使用可能な白糖、精製糖、黒糖、グルコース、ショ糖および果糖が含まれる。
【0009】
上記製造方法の第1工程で添加する塩類は、塩化ナトリウム並びにその誘導体および化合物から選ばれたものであり、これには、調味料として使用可能な精製塩、漂白塩および岩塩が含まれる。
【0010】
上記製造方法の第1工程で添加する酢類および酒類も、調味料として使用可能なものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価かつ簡単に多量の低酸化還元電位水を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る低酸化還元電位水の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る低酸化還元電位水の製造方法の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明に係る低酸化還元電位水の製造方法は、順次実行する第1工程S1、第2工程S2および第3工程S3を備えている。第1工程S1では、飲用水に糖類、塩類、酢類および酒類を所定の割合で添加し、第2工程S2では、第1工程S1で得られた溶液を所定の温度にまで加熱した後に常温まで冷却し、第3工程S3では、第2工程S2で得られた溶液を飲用水によって所定の希釈率で希釈する。
【0015】
第1工程S1で添加する糖類は、グルコース並びにその誘導体および化合物から選ばれたものであり、これには、調味料として使用可能な白糖、精製糖、黒糖、グルコース、ショ糖および果糖が含まれる。糖類の一例は第一糖業製の「セブン印グラニュー糖」であり、後述する第1~第17試料では、糖類としてこれを使用した。
【0016】
第1工程S1で添加する塩類は、塩化ナトリウム並びにその誘導体および化合物から選ばれたものであり、これには、調味料として使用可能な精製塩、漂白塩および岩塩が含まれる。塩類の一例は木曽物産製の「天外天塩」であり、後述する第1~第17試料では、塩類としてこれを使用した。
【0017】
第1工程S1で添加する酢類は、調味料として使用可能な各種の酢から選ばれたものである。酢類の一例はミツカン製の「ミツカン酢」であり、後述する第1~第17試料では、酢類としてこれを使用した。
【0018】
第1工程S1で添加する酒類は、調味料として使用可能な各種の酒から選ばれたものであり、これには、清酒および焼酎が含まれる。酒類の一例は、宝酒造製の「松竹梅 天」であり、後述する第1~第17試料では、酒類としてこれを使用した。
【0019】
第1工程S1および第3工程S3で使用する飲用水は、飲用可能な各種の水から選ばれたものであり、これには、水道水、井戸水および湧水が含まれる。後述する第1~第17試料では、飲用水として約+600mVの酸化還元電位を有する水道水を使用した。
【0020】
なお、第2工程S2で得られた溶液(以下、「原液」ともいう)は、常温の暗所または冷蔵庫で長期にわたって保存することができる。このため、第2工程S2および第3工程S3の実行は、時間的に連続していなくてもよい。一方、第1工程S1および第2工程S2の実行は、時間的に連続していることが好ましい。
【0021】
続いて、第1工程S1における好適な糖類(セブン印グラニュー糖)の添加量を導き出すために、異なった条件で製造した3つの試料(第1~第3試料)の電位を測定した結果について説明する。なお、本測定では、東亜ディーケーケー製のポータブルORP計「RM-30P」を使用した。後述する測定についても同様である。
【0022】
第1試料は、2L(=2000g)の水道水に20gの糖類、23gの塩類、70cc(≒70g)の酢類、および130cc(≒130g)の酒類を添加し、これを撹拌しながら80℃にまで加熱した後に常温にまで冷却し、さらにこれを水道水で10倍に希釈することにより製造したものである。
【0023】
第2試料は、糖類の添加量を24gとしたこと以外は第1試料と同様にして製造したものである。
【0024】
第3試料は、糖類の添加量を28gとしたこと以外は第1試料と同様にして製造したものである。
【0025】
第1~第3試料の電位測定結果を表1に示す。この結果は、糖類の添加量が24g~28gであれば、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られることを示している。
【表1】
【0026】
続いて、第1工程S1における好適な塩類(天外天塩)の添加量を導き出すために、異なった条件で製造した3つの試料(第4~第6試料)の電位を測定した結果について説明する。
【0027】
第4試料は、塩類の添加量を19gとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0028】
第5試料は、第2試料と同様に、塩類の添加量を23gとして製造したものである。
【0029】
第6試料は、塩類の添加量を27gとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0030】
第4~第6試料の電位測定結果を表2に示す。この結果は、塩類の添加量が19g~23gであれば、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られることを示している。
【表2】
【0031】
続いて、第1工程S1における好適な酢類(ミツカン酢)の添加量を導き出すために、異なった条件で製造した3つの試料(第7~第9試料)の電位を測定した結果について説明する。
【0032】
第7試料は、酢類の添加量を63ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0033】
第8試料は、第2試料と同様に、酢類の添加量を70ccとして製造したものである。
【0034】
第9試料は、酢類の添加量を77ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0035】
第7~第9試料の電位測定結果を表3に示す。この結果は、酢類の添加量が63cc~77ccであれば、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られることを示している。
【表3】
【0036】
続いて、第1工程S1における好適な酒類(松竹梅 天)の添加量を導き出すために、異なった条件で製造した5つの試料(第10~第14試料)の電位を測定した結果について説明する。
【0037】
第10試料は、酒類の添加量を110ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0038】
第11試料は、酒類の添加量を120ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0039】
第12試料は、第2試料と同様に、酒類の添加量を130ccとして製造したものである。
【0040】
第13試料は、酒類の添加量を140ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0041】
第14試料は、酒類の添加量を150ccとしたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0042】
第10~第14試料の電位測定結果を表4に示す。この結果は、酒類の添加量が120cc~140ccであれば、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られることを示している。
【表4】
【0043】
続いて、第3工程S3における好適な希釈率を導き出すために、異なった条件で製造した3つの試料(第15~第17試料)の電位を測定した結果について説明する。
【0044】
第15試料は、希釈率を5倍としたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0045】
第16試料は、第2試料と同様に、希釈率を10倍として製造したものである。
【0046】
第17試料は、希釈率を15倍としたこと以外は第2試料と同様にして製造したものである。
【0047】
第15~第17試料の電位測定結果を表5に示す。この結果は、希釈率が5倍~10倍であれば、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られることを示している。
【表5】
【0048】
以上をまとめると、100重量部の飲用水に、1.2重量部以上1.4重量部以下の糖類と、0.95重量部以上1.15重量部以下の塩類と、3.15重量部以上3.85重量部以下の酢類と、6重量部以上7重量部以下の酒類とを添加し、これを撹拌しながら80℃にまで加熱した後に常温にまで冷却し、さらにこれを飲用水によって5倍以上10倍以下に希釈するだけで、0mV以下の酸化還元電位を有する低酸化還元電位水が得られる。原材料は容易に入手可能なものばかりであり、また、各工程S1~S3を実行するために特別な設備は不要である。
【0049】
なお、上記の80℃は、60℃以上沸点未満の範囲内で適宜調整することができる。第2工程S2の加熱は糖類等の添加物の完全な溶解を目的としたものなので、このような調整を行っても、電位にはほとんど影響はない。