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特許7577281レトロウイルスベクターの産生細胞およびパッケージング細胞、ならびにそれらの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】レトロウイルスベクターの産生細胞およびパッケージング細胞、ならびにそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20241028BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241028BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C12N15/86 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022564610
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2020115522
(87)【国際公開番号】W WO2021218000
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】202010366440.4
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522414475
【氏名又は名称】シンセン・エウレカ・バイオテクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN EUREKA BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ボォーフゥ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,インフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,クゥー
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/175600(WO,A1)
【文献】特表2019-509764(JP,A)
【文献】特表2019-509066(JP,A)
【文献】特表2019-506173(JP,A)
【文献】特表2010-531650(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103131672(CN,A)
【文献】特開2015-043785(JP,A)
【文献】CUI, R et al.,991. Generation of Stable Producer Cell Lines (PCL) of Lentiviral Vector (LV) Using PiggyBac Transposase,Molecular Therapy,2020年04月28日,Vol. 28, No. 4S1,pp. 430-431
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを産生するための産生細胞を調製する方法であって、
前記レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクターであり、
スリーピングビューティー(Sleeping Beauty、SB)トランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列と、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列とを宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでピギーバック(Piggy Bac、PB)トランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含む方法。
【請求項2】
前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列が、2つ以上の構築物に位置している、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子はHIV-1ウイルスのgag、polおよびrev遺伝子である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記SBトランスポゾンシステムで使用されるトランスポザーゼがSB100Xであり、および/または前記PBトランスポゾンシステムで使用されるトランスポザーゼがePiggyBacである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記gag、polおよびrev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの1つ以上の転写が制御される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子または配列は、テトラサイクリン発現誘導システムの単独制御下、またはテトラサイクリンおよびCumate発現誘導システムの二重制御下に置かれる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、VSV-Gであり、
テトラサイクリン発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写は配列番号19のTRE3G(商標)配列の制御下にあり、および/またはVSV-Gコード配列の転写は配列番号19のTRE3G(商標)配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたは配列番号19のTRE3G(商標)配列-イントロンの制御下にあり、
テトラサイクリンおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写は配列番号22のTREadv(商標)CuO配列、配列番号22のTREadv(商標)CuO配列-イントロン、配列番号19のTRE3G(商標)配列、配列番号20のTRE3G(商標)CuO配列または配列番号20のTRE3G(商標)CuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、VSV-Gの転写は配列番号22のTREadv(商標)CuO配列、配列番号22のTREadv(商標)CuO配列-イントロン、配列番号19のTRE3G(商標)配列-イントロンまたは配列番号20のTRE3G(商標)CuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロン、配列番号21のTREadv(商標)配列-イントロン、配列番号22のTREadv(商標)CuO配列-イントロン、配列番号19のTRE3G(商標)配列-イントロンまたは配列番号20のTRE3G(商標)CuO配列-イントロンの制御下にある、請求項に記載の方法。
【請求項9】
SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、テトラサイクリン発現誘導システムのトランスアクチベータータンパク質コード配列、またはテトラサイクリン発現誘導システムのトランスアクチベータータンパク質コード配列とCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
標的核酸断片を担持するレンチウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、レンチウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、レンチウイルスのrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列が前記産生細胞のゲノムに組み込まれ、
前記gagおよびpol遺伝子の配列、rev遺伝子の配列、並びにウイルスのエンベロープタンパク質コード配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列をそれぞれ有しかつ、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列をそれぞれ有し、かつ、前記IR/DR配列および前記ITR配列が前記産生細胞中に同時に存在する、産生細胞。
【請求項11】
前記標的核酸断片配列の両末端に部位特異的リコンビナーゼシステムの認識配列を有し、および/または、前記エンベロープタンパク質コード配列の両末端に部位特異的リコンビナーゼシステムの認識配列を有する、請求項10に記載の産生細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウイルスベクター分野に関し、具体的には、レトロウイルスベクター特にレンチウイルスベクター分野に関し、より具体的には、レトロウイルスベクター特にレンチウイルスベクターの調製方法、レトロウイルスベクター特にレンチウイルスベクターの調製のための産生/パッケージング細胞および前記細胞の調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レトロウイルスは、RNAウイルスに属し、エンベロープを持つ二本鎖RNAウイルスであり、そのゲノムをRNAからDNAに「逆転写」できることを主な特徴としている。ビリオンは、通常、直径約100nmで、ヌクレオキャプシド(NC)タンパク質と複合体を形成した二量体ゲノム(2つの同一の一本鎖プラス鎖RNA)を含むものである。そのゲノムは、逆転写酵素(RT)、インテグラーゼ(IN)、プロテアーゼ(PR)などの酵素活性を持つタンパク質を含むタンパク質キャプシド(CA)にカプセル化されている。これらの酵素はウイルス感染に必要である。マトリックスタンパク質(MA)は、キャプシドコアの外に層を形成している。当該層は、エンベロープと相互作用し、エンベロープは、宿主細胞膜に由来し、ウイルスコア粒子を取り囲む脂質二重層である。当該エンベロープに固定されているのは宿主細胞上の特異的受容体を認識し、感染プロセスを開始する役割を果たすウイルスエンベロープ糖タンパク質(Env)である。エンベロープタンパク質は、前記タンパク質を脂質膜に固定する膜貫通(TM)サブユニットと、細胞受容体に結合する表面(SU)サブユニットの2つのサブユニットから形成される。
【0003】
最も一般的に使用されているレトロウイルスベクターであるγ-レトロウイルスベクターは、2017年に宣言された遺伝子治療臨床試験で使用されたトランスフェクション法全体の17.3%を占めた。現在、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)などの複雑なレトロウイルスに由来するレンチウイルスベクターへの関心が高まっており、2012年の遺伝子治療臨床試験の2.9%から2017年の7.3%まで増加している。これは、レンチウイルスが非分裂細胞に形質導入できるためである。この特性により、レンチウイルスを他のウイルスベクター(γ-レトロウイルスベクターを含む)から区別することができる。なお、レンチウイルスは、レトロウイルスと比べて、より好ましい遺伝子挿入部位系統を有するものである。レトロウイルスおよびレンチウイルスベクターの最も魅力的な特性は、9kbと高い遺伝子送達ツールとしての遺伝子送達能力と、患者の免疫反応が少なく、臨床的に証明された安全性が高いことと、インビボおよびインビトロでの高い形質導入効率と、外来遺伝子を標的細胞ゲノムに恒久的に取り込んで、送達された遺伝子の長期にわたる発現が得られることである。
【0004】
プロトタイプレンチウイルスベクターシステムは、よく研究されたヒト病原性ウイルスであるHIV-1ウイルスに基づいて開発されるものである。HIV-1に加えて、他のレンチウイルスも遺伝子送達ベクター(TV)として使用するために開発されているが、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(Simian immunodeficiency virus、SIV)、または、ネコ免疫不全ウイルス(Feline immunodeficiency virus、FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(Bovine immunodeficiency virus、BIV)或いはヤギ関節炎脳炎ウイルス(Caprine arthritis-encephalitis virus、CAEV)を含む非霊長類動物レンチウイルスなどのそれらのほとんどは臨床研究段階に達していない。馬伝染性貧血ウイルス(Equine infectious anemia virus、EIAV)に基づくベクターのみが、パーキンソン病の治療における臨床使用の段階まで開発されている(ProSavin)。
【0005】
主にヒトにおけるHIV-1の病原性によって引き起こされる安全性の問題により、3世代のレンチウイルスベクターシステムが現在開発されている。第一世代のレンチウイルスベクターシステムはパッケージングプラスミド、エンベローププラスミド、および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(transcriptional casstte)を有するトランスファーベクター(transfer vector)プラスミドの3つのプラスミドからなるスリープラスミドシステムに代表される。パッケージングプラスミドは、HIV-1プロウイルスゲノムに由来し、5’末端のLTRがサイトメガロウイルス初期プロモーターに置換され、3'LTRがシミアンウイルス-40ポリアデニル酸(SV40 polyA)配列に置換され、HIV-1のエンベロープ遺伝子envが削除されている。パッケージングプラスミドは、rev、vif、vpr、vpuおよびnefヘルパー遺伝子を同時に発現する。削除されたHIV-1のエンベロープ遺伝子は、水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)のエンベロープタンパク質遺伝子VSV-Gに置き換えられ、エンベローププラスミドによって発現される。標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを有するトランスファーベクタープラスミドは、HIV-1の5'末端のLTR、5'末端の非翻訳領域全体、約300bpの5'末端のgag遺伝子、および中央ポリプリントラクト(cppt)断片を担持し、またRev応答エレメント(RRE)断片を担持する。このトランスファーベクタープラスミドは、標的核酸断片をクローニングし、ウイルスアセンブリ時にウイルスゲノムRNAを提供するために使用される。第2世代のレンチウイルスベクターシステムは、第1世代を改良し、パッケージングプラスミドからHIV-1のヘルパー遺伝子(vif、vpr、vpu、およびnef遺伝子)をすべて削除して得られたものである。これらのヘルパー遺伝子の削除は、ウイルスの力価と感染力に影響を与えず、同時にベクターの安全性を高める。第3世代のレンチウイルスベクターシステムは、パッケージングプラスミドからrev遺伝子を除去し、別のパッケージングプラスミドに別々に配置する4つのプラスミドからなる。また、第3世代のレンチウイルスベクターシステムは、2つの安全特性を同時に追加する。第一の安全特性は、自己不活性化レンチウイルストランスファーベクタープラスミドの構築である。つまり、ウイルスゲノム転写カセットにおける3′LTRのU3領域が削除されているため、レンチウイルスベクターは逆転写反応の終了後、5′LTRと3′LTRのU3領域エンハンサーおよびプロモーター断片を永久に失い、これによって、この時点で全てのウイルスタンパク質が存在していても、ウイルスのゲノムRNAの転写が不可能になるので、ウイルスのパッケージ化がうまくいかなくなる。このため、第3世代のトランスファーベクタープラスミドは、自己不活性化(self-inactivating、SIN)トランスファーベクタープラスミドとも呼ばれる。また、U3領域の欠失は、宿主細胞へのベクター遺伝子挿入による発がん性を大幅に低下させる。第二の安全特性は、転写トランス活性化機能を有するtat遺伝子を除去し、5'LTRのU3領域エンハンサーおよびプロモーター配列の代わりに異種プロモーター配列を用いてウイルスゲノムRNAを転写する。そして、レンチウイルスゲノムRNAを転写する際に、異種プロモーター自体が転写されないため、レンチウイルスベクターのパッケージングとトランスフェクションは1回のみであることが保証される。第3世代のレンチウイルスシステムは、元のHIV-1ゲノムのgag、polおよびrev遺伝子配列のみを保持するため、第3世代のレンチウイルスベクターシステムはより安全である。
【0006】
レトロウイルススベクター/レンチウイルスベクターは、異なる異種エンベロープ糖タンパク質を置換することにより、異なる偽型を有することができ、例えば、レンチウイルス(Lentivirus、例えば、ヒト、サル、ネコ、ウシ免疫不全ウイルス(immunodeficiency virus)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(caprine arthritis-encephalitis virus)、馬伝染性貧血ウイルス(Equine infectious anemia virus)など)エンベロープタンパク質、レトロウイルス(Retroviruse、例えば、マウス白血病ウイルス(Murine leukemia virus、10A1、4070A)、ギボン白血病ウイルス(Gibbon ape leukemia virus)、ネコ白血病ウイルス(Feline leukemia virus、RD114)、アンフォトロピックレトロウイルス(Amphotropic retrovirus)、エコトロピックレトロウイルス(Ecotropic retrovirus)、ヒヒサル白血病ウイルス(Baboon ape leukemia virus)など)エンベロープタンパク質、パラミクソウイルス(Paramyxoviruses、例えば、麻疹ウイルスエン(Measles virus)、ニパウイルス(Nipah virus)など)エンベロープタンパク質、ラブドウイルス(Rhabdoviruses、例えば、狂犬病ウイルス(Rabies virus)、モコラウイルス(Mokola virus)など)エンベロープタンパク質、フィロウイルス(Filoviruses、例えば、エボラザイールウイルス(Ebola Zaire virus)など)エンベロープタンパク質、アレナウイルス(Arenaviruses、例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus)など)エンベロープタンパク質、バキュロウイルス(Baculovirus)エンベロープタンパク質、アルファウイルス(Alphaviruses、例えば、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)、西部馬脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)など)エンベロープタンパク質、オルソミクソウイルス(Orthomyxoviruses、例えば、インフルエンザウイルス(Influenza virus)、家禽ペストウイルス(Fowl Plague Virus)など)エンベロープタンパク質、疱疹病毒(Vesiculoviruses、例えば、水泡性口炎病毒(Vesicular stomatitis virus)、チャンディプラウイルスおよびピリーウイルス(Chandipura virus and Piry virus)など)エンベロープタンパク質に置換する。現在のレンチウイルスベクターのほとんどは、水疱性口内炎ウイルスエンベロープ糖タンパク質(VSV-G)を用いて調製されている。これは、当該糖タンパク質により、レンチウイルスベクターが幅広い形質導入スペクトル(transduction spectrum)を有するとともに、当該糖タンパク質が下流工程でより良い安定性を有するためである。
【0007】
現在、ほとんどのレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターは、好ましくは、哺乳動物細胞株を宿主細胞として用いて作製され、最も広く用いられているのは293TまたはHEK293細胞株およびそれらに基づいてスクリーニングされるかまたは操作された由来細胞株である。HEK293細胞は、アデノウイルスE1A遺伝子をトランスフェクトしたヒト腎上皮細胞株である。293T細胞はHEK293細胞に派生し、同時にSV40ラージT抗原を発現する。SV40複製開始部位とプロモーター領域を含有するプラスミドは293T細胞内で複製され、一定期間高いコピー数を維持することができるため、プラスミドに担持された遺伝子のタンパク質発現量が増加する。また、293T細胞は、HEK293細胞と比較して、細胞の成長速度が速く、トランスフェクション効率が高いという特徴を持っている。293T細胞は、以上の特徴から、ウイルスベクター調製効率が高い。なお、文献報告によると、ウイルスベクターに使用される産生/パッケージング細胞は、哺乳動物細胞HepG2細胞、CHO細胞、BHK細胞、COS細胞、NIH/3T3細胞、Vero細胞、HT1080細胞、Te671細胞、CEM細胞、NSO細胞、およびPerC6細胞をさらに含む。
【0008】
従来のレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの調製方法は、通常、哺乳動物宿主細胞、通常マウスまたはヒト由来の細胞に、gag遺伝子、pol遺伝子、rev遺伝子(レンチウイルスベクター用)、エンベロープ糖タンパク質遺伝子、および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(レトロウイルス/レンチウイルスのRNAゲノムへの転写およびパッケージングのためのプロモーターを含む、レトロウイルス/レンチウイルスゲノムのパッケージングとトランスフェクションに必要なさまざまなシス作用配列、例えば、5'LTR、PBS、ψパッケージングシグナル、cppt(レンチウイルスベクター用)、RRE(レンチウイルスベクター用)、pptおよび3'LTR配列など;形質導入されるべき標的核酸断片、3'末端のポリアデニル酸シグナルなど)を、通常マウスまたはヒト細胞由来の哺乳動物宿主細胞にそれぞれ導入することである。これは、上記遺伝子を含むプラスミドなどの構築物を上記宿主細胞に一過性にトランスフェクションして、その後24~72時間ウイルスベクターを産生し、それらを回収することにより達成されるか(一過性の産生)、または、上記宿主細胞ゲノムに上記遺伝子を安定に組み込んで安定産生細胞株(producer cell line)を形成して、継続産生を行うことにより達成される(安定産生)。
【0009】
一過性の産生では、ウイルス遺伝子構築物は、トランスフェクションプラスミド法によって導入され、負に荷電したDNAと複合体を形成できるカチオン試薬が使用され、エンドサイトーシスを介して細胞に取り込まれる。ポリエチレンイミン(PEI)は、最も広く使用され、最も効率的な陽イオン試薬の1つである。現在、PEIトランスフェクションは、上記の構築物を導入するために臨床および産業用途で主に使用されているが、プロセススケールアップ後に、プロセスの不安定性や低ウイルス産生力価などの主な問題がある。リン酸カルシウム沈殿、陽イオン性リポソーム複合体形成、LipofectamineおよびFuGENE(登録商標)などの非リポソームトランスフェクション試薬などの他の方法も使用できる。ただし、これらの方法は、スケールアップが難しいか、費用がかかりすぎるため、小規模産生または研究目的でのみ利用できる。あるいは、バキュロウイルスまたはアデノウイルスを用いてレンチウイルス遺伝子構築物を導入するウイルス感染も、レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの産生のために開発され、検証されてきた。ただし、この方法では、臨床グレードのウイルス産生基準を満たすために、レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターとバキュロウイルスまたはアデノウイルスの追加の下流分離が必要である。そして、バキュロウイルスまたはアデノウイルスを用いてレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターを調製するプロセスは、プラスミドDNAトランスフェクション法と比較して、複雑で、最終的なトランスフェクション力価が高くない。あるいは、連続フローエレクトロポレーションも大量の細胞トランスフェクション用に開発されており、原則として、レトロウイルス/レンチウイルスの一過性トランスフェクション産生にも使用できるが、この技術は、プロセススケールアップ能力と高価な機器と消耗品によって依然として制限されている。
【0010】
レトロウイルス/レンチウイルスの安定産生細胞株の構築は、ウイルス遺伝子構築物を細胞ゲノムにそれぞれ組み込んで、構成的な発現または調節的な発現を可能にすることに依存している。通常、まず、gag、pol、rev(レンチウイルスベクター用)、およびenv遺伝子を同時または順次細胞に導入し、これらの遺伝子が安定してゲノムに挿入され、高発現している細胞を、対応する耐性スクリーニングとクローン選択により選択し、パッケージング細胞株(packaging cell line)を確立する。その後、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを導入して、標的核酸断片を担持するウイルスベクター産生細胞株を構築する。これは、逆転写後に複製できる非SIN(self-inactivating)ベクターを使用する場合、ウイルス感染によって直接達成される。それ以外の場合、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットが上記パッケージング細胞のゲノムに安定に組み込まれている産生細胞株を得るために、プラスミド化学トランスフェクションを実行した後、耐性スクリーニングとクローン選択を行う必要がある。標的核酸断片を担持するウイルスベクターを安定して産生する産生細胞株を迅速に構築するための効率的な方法は、まず、(選択可能な)マーカー遺伝子を含むレンチウイルスゲノム転写カセットを元の細胞に挿入し、マーカー遺伝子を用いて、安定した組み込みと高レベルの長期発現のウイルスベクターの産生細胞株をスクリーニングして、その後、FLP-FRTまたはCre-loxリコンビアーゼ系などの部位特異的リコンビナーゼシステム(site-specific recombiase)によって、標的核酸断片で上述産生細胞株を構築するために使用されるマーカー遺伝子を置換することである。この方法は、高力価のヒト由来レトロウイルスベクター産生細胞株を確立することを可能にすることが証明されている(Schucht, R., et al.(2006)."A new generation of retroviral producer cells: predictable and stable virus production by Flp-mediated site-specific integration of retroviral vectors." Mol Ther 14(2): 285-292.; Loew, R., et al. (2010). "A new PG13-based packaging cell line for stable production of clinical-grade self-inactivating gamma-retroviral vectors using targeted integration." Gene Ther 17(2): 272-280.)。さらに、標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質を迅速に置換するためのウイルスベクターパッケージング細胞株または産生細胞株のプラットフォームは、類似の原理を使用することによって開発することができる。安定したレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクター産生細胞株の開発は、時間と労力がかかる複雑なシステムエンジニアリングであり、細胞株プラットフォームの開発と特性評価を完全に行うには1年以上かかる。さらに、作業の複雑さのため、多くの公開された作品は、ウイルス産生力価、細胞株の安定性、培養適応などの問題により、産業上のニーズを満たすことができない。ただし、代償として、安定ウイルス産生細胞株の開発に成功すると、安定産生細胞株には、臨床および産業用途の分野では、プロセスの信頼性、プロセススケールアップ能力、コスト、およびウイルス製品の安全性などの点で、一過性トランスフェクション産生プロセスと比較して、かけがえのない利点がある。まずは、安定産生細胞株の産生プロセスはより安定しており、完全特性評価の産生プラットフォームを提供して、低いバッチ間のばらつきでより安全なウイルスベクターを産生することができる;次には、このようなプロセスでは、スケールアップがより容易であり、一過性の産生システムのように培養体積の増大につれて産生力価が急激に低下することはない;また、DNAプラスミドおよびトランスフェクション試薬などの原材料が必要ないため、プラスミドの産生のために追加のGMP産生ラインを確立する必要はない;最後では、単位歩留まりが高くなり、産生プロセスの品質管理が簡素化される。産生規模を拡大する場合、安定産生細胞株に基づく産生プロセスは、研究開発、産生、管理、運用と保守、およびコストの面での利点をさらに強調する。これらの利点は、遺伝子治療および細胞治療の分野における技術や医薬品の産業化を促進する上で有益である。
【0011】
安定産生細胞株を用いてレトロウイルスベクターを産生することは、10年以上にわたって科学研究や臨床試験で使用されてきた。ただし、安定したレンチウイルスベクターのパッケージング細胞株と産生細胞株の確立は依然として困難である。これは、rev、tat、nef、env、vpr、およびPRプロテアーゼを含むさまざまなHIV-1エンコードタンパク質に細胞毒性があり、細胞死を引き起こす可能性があるためである。その中で、revおよびPRプロテアーゼは、現在のパッケージングシステムで依然として必要とされている。そして、レンチウイルスシステムで一般的に使用される偽型エンベロープタンパク質VSV-Gも強い細胞毒性を持っている。実験室レベルでは、プラスミドトランスフェクションによる一過性の産生は、細胞毒性タンパク質がウイルス産生に影響を与えるのを避けるための一般的なソリューションである。安定レンチウイルス産生細胞株を開発する場合、上記の細胞毒性タンパク質の発現は、発現誘導システムを使用するなど、厳密に制御する必要がある。そうしないと、すべての高発現細胞株が死滅し、安定産生細胞株を形成することが困難になる。
【0012】
現在入手可能な精製済み細胞ストック中のレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの力価は、106~107感染性粒子/mL培地である。ただし、臨床試験で患者を治療するために必要なベクターの平均量は、患者あたり1010の感染性粒子のレベルである。さらに、ウイルス産生は、通常、感染性粒子/物理的粒子の比率が低い(1:100未満)という特徴がある。同時に、これらのウイルスベクターは非常に感受性が高く、37°Cの細胞培養上清で感染性を急速に失い、半減期は約8~12時間であるため、ウイルスの産生性に対するニーズがさらに高まる。既存の一過性トランスフェクションプラットフォームに基づいて、患者1人あたり約10~100Lの培養体積で産生されたウイルスベクターを必要になる。そして、既存の産生技術は力価とプロセススケールアップの両方で大幅に改善することは困難である。したがって、現在のレトロウイルスベクター/レンチウイルスベクター産生システムの性能は、治療のニーズよりもはるかに低く、より高い産生量の安定産生細胞株を構築すること、および大規模産生プロセスを解決することは、産生性の問題を解決するための鍵である。
【0013】
しかし、レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの安定産生細胞株を構築することには、かなりの技術的困難がある。安定産生細胞株を構築するための既存の方法は、安定した遺伝子挿入の効率が低いため、通常、同時または段階的なスクリーニングのために多数の耐性遺伝子を導入する必要がある。多くのスクリーニング過程は、血清を含む接着培養条件下で実施され、スクリーニングされた細胞株は、無血清培地の懸濁培養条件に適合しない可能性があり、したがって、国際バイオ医薬品の技術開発動向と安全要件を満たしていない。産生細胞株を構築する時、各レトロ/レンチウイルスパッケージング遺伝子の調節と発現の最適化が不十分なため、最終的な安定細胞株は、ウイルス産生力価が高くないか、または、高いリーク(leak)発現がある。そして、リークの高い発現は産生細胞株の不安定性につながり、細胞培養の増殖の時、パッケージング遺伝子のリーク発現の細胞毒性が細胞の成長品質に影響するため、プロセスの拡大の要求を達成することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、安定したレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター産生細胞株の効率的な構築方法と、この方法によって構築されたウイルスパッケージング/産生細胞株は、当該技術分野において緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、ウイルスパッケージングに必要なgag、pol、rev(レンチウイルスベクター用)、env遺伝子、および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを、スリーピングビューティー(Sleeping Beauty、SB)トランスポゾンシステムとPiggyBac (PB)トランスポゾンシステムとの組み合わせによって宿主細胞(例えば、293T細胞)のゲノムに安定的に挿入し、そして、発現誘導システム(例えば、Tet-Onシステムおよび/またはCumateシステム)と組み合わせて、誘導可能で調節可能なウイルス産生システムを開発して、上記した問題を解決する。
【0016】
レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターを用いて形質導入操作を行う場合、標的核酸断片を、レトロウイルス/レンチウイルスにパッケージングされたRNAゲノムにロードする必要がある。「標的核酸断片」という用語は、一般的に、適用目的に応じて、タンパク質をコードする核酸配列などの遺伝子であってもよく、低分子干渉リボ核酸(small interfering RNA、単にsiRNAと称する)、長いノンコーディングリボ核酸(long non-doding RNAs、単にLncRNAと称する)、CRISPR遺伝子編集システムのガイドRNA(guide RNA、gRNA)、トランスファーリボ核酸(transfer RNA、単にtRNAと称する)、リボソームリボ核酸(Ribosomal RNA、単にrRNAと称する)、または、他の機能性リボ核酸のコード配列などの機能的核酸配列(RNA)であってもよく、相同組換え配列、タンパク質に結合することができるDNAまたはRNA配列、他の核酸断片(例えば、プライマーまたはプローブ)に結合することができるDNAまたはRNA配列などの他の機能的核酸配列であってもよく、天然の核酸配列または人工の核酸配列のいずれであってもよく、上記の核酸配列の1つまたは複数の組み合わせであってもよい。標的核酸断片は、遺伝子発現を調節するための、プロモーター、エンハンサー、インシュレーター、ポリアデニル酸シグナルなどの核酸配列を含んでもよい。レトロウイルス/またはレンチウイルスのRNAゲノムは、レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターを構築する際に、ウイルスにパッケージングできるリボ核酸断片を指し、一般的に、ψパッケージングシグナル、長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)などの、ウイルスのパッケージングおよび形質導入に必要な配列を含む。レンチウイルスのRNAゲノムは、一般的に、すべての5’末端の非翻訳領域、約300bpの5'末端のgag遺伝子、中央ポリプリントラクト(cppt)断片を含み、Rev応答エレメント(RRE)断片をさらに含む。1つ以上の断片が欠けていると、レンチウイルスのパッケージングまたは形質導入効率に深刻な影響を与える可能性がある。レトロウイルスベクター/レンチウイルスベクターの調製において、標的核酸断片を担持するウイルスゲノムのRNA断片は、通常、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(transcripiontal cassette)を構築することによって得られる。転写カセットは、プロモーター機能を有する核酸配列(レトロウイルス/レンチウイルス自身LTR配列または他の異種プロモーターであり得る)およびウイルスのRNAゲノムに対応するDNA配列を含み、通常、転写の終結を調節するポリアデニル酸シグナル配列をさらに含む。レトロウイルススベクター/レンチウイルスベクターの調製において、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを有する構築物(例えば、転写カセットをトランスファーベクタープラスミドに構築する)は、宿主細胞に送達された後、宿主細胞の転写分子メカニズムにより、標的核酸断片を担持する対応するウイルスゲノムRNA断片に転写され、当該ウイルスゲノムRNA断片は、ウイルスベクターにパッケージ化され得る。
【0017】
本開示において、レトロウイルスには、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、フジナミ肉腫ウイルス(FuSV)、Moloneyマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス肉腫ウイルス(FBR MSV)、Moloneyマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、Abelsonマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球症ウイルス-29(MC29)、トリ脳脊髄炎ウイルス(AEV)、サル免疫不全ウイルス(Simian immunodeficiency virus、SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(Feline immunodeficiency virus、FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(Bovine immunodeficiency virus、BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(Caprine arthritis-encephalitis virus、CAEV)、ギボン白血病ウイルス(Gibbon ape leukemia virus)、ネコ白血病ウイルス(Feline leukemia virus)、アンフォトロピックレトロウイルス(Amphotropic retrovirus)、エコトロピックレトロウイルス(Ecotropic retrovirus)、ヒヒサル白血病ウイルス(Baboon ape leukemia virus)、および他のすべてのレトロウイルスファミリー(Retroviridae)ウイルスなどのレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
トランスポゾン(transposon)とは、ゲノム内の位置を変えることができるDNA配列を指す。トランスポゾンは、突然変異を生成または元に戻し、細胞ゲノムのサイズを変更することができる。DNAトランスポゾンは、発現したトランスポザーゼの作用により、あるDNAサイトから別のDNAサイトに単純なカットアンドペースト方式で転位することができる。トランスポジションは、定義されたDNA断片、通常はトランスポゾンの両末端にある直接反復配列(direct repeat、単にDRと称する)とそれらに連結された逆位反復配列(invert repeat、単にIRと称する)、および中間の挿入配列(insert sequence、単にISと称する)を1つのDNA分子から切り出し、同じまたは異なるDNA分子またはゲノム内の別の部位に移動する正確なプロセスである。
【0019】
「スリーピングビューティー(Sleeping Beauty、SB)トランスポゾンシステム」は、SBトランスポザーゼおよびSBトランスポゾンからなり、特定のDNA挿入配列を脊椎動物のゲノムに挿入することができる。SBトランスポザーゼは、トランスポゾンを受容体DNA配列のTAジヌクレオチド塩基対に挿入することができる。挿入部位は、同じDNA分子(または染色体)の別の位置または別のDNA分子(または染色体)に位置することができる。哺乳動物(ヒトを含む)ゲノムには、約2億個のTA部位がある。TA挿入部位は、トランスポゾンの組み込み中に複製される。TA配列のこの複製はトランスポジションのマーカーであり、いくつかの実験でメカニズムを決定するために使用される。SBトランスポゾンは、標的挿入配列、およびSBトランスポザーゼによって識別されるための、当該標的挿入配列の両末端に位置するIR/DR配列(例えば、SEQ ID NO:23またはその相補配列に示されるように、短い直接反復(direct repeats、DR)および逆位反復(inverted repeats、IR)を含有するそれ自体)からなる。トランスポザーゼはトランスポゾン内にコード化することができ、またはトランスポザーゼは別の供給源から提供することができる。SBトランスポゾンシステムにおけるトランスポザーゼとIR/DR配列とトランスポゾンとの野生型および異なる変異体は、当技術分野で知られているものである。公開されたスリーピングビューティートランスポゾンを含むプラスミドは、pT/HB(Addgene、#26555)、pT2/HB(Addgene、#26557)、pT3(Yant,S.R.,etal.(2004)."Mutational analysis of the N-terminal DNA-binding domain of sleeping beauty transposase: critical residues for DNA binding and hyperactivity in mammalian cells." Mol Cell Biol 24(20): 9239-9247.)などを含む。SBトランスポザーゼの変異体は、SB10、SB11、SB100X(コード配列はSEQ ID NO:30に示される)など(例えば、WO9840510A1、WO2003089618A2、WO2009003671A2、WO2017046259A1、WO2017158029A1などを参照、これらは参照により本明細書に組み込まれる)を含むが、これらに限定されない。本明細書では、「スリーピングビューティー(SB)トランスポゾンシステム」という用語は、SBトランスポザーゼの野生型および異なる変異体、ならびにSBトランスポゾンの野生型および異なる変異体を含有するSBトランスポゾンシステムを含むことができる。
【0020】
イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)由来する「PiggyBac(PB)トランスポゾンシステム」は、PBトランスポザーゼおよびPBトランスポゾンからなり、カットアンドペーストのメカニズムにより、ベクターと染色体との間でトランスポジションを効率的に行うことができる。トランスポジションを行う過程では、PBトランスポザーゼは、トランスポゾンベクターの両末端に位置するトランスポゾン特異的逆位末端逆位反復配列(Inverted terminal repeart、単にITRと称する、3’ITRは、例えば、SEQ ID NO:24またはその相補配列であり、5’ITRは、例えばSEQ ID NO:25またはその相補配列である)を認識し、5’ITRと3’ITRの間に位置する、元の部位由来の挿入配列を効果的に移動させ、染色体TTAA部位に効果的に組み込ませる。PiggyBacトランスポゾンシステムの強力な活性により、PBトランスポゾンベクター内の2つのITRの間の標的挿入配列をターゲットゲノムに簡単に移動させることができる。PBトランスポゾンシステムにおけるトランスポザーゼとトランスポゾンとの野生型および異なる変異体(例えば、SEQ ID NO:31に示されるコード配列を有するePiggyBac)は、当技術分野で知られているものである。PiggyBacトランスポゾンシステムに関する情報は、例えば、特許文献US6218185B1、US6551825B1、US7105343B1、US2002173634A1、US2010240133A1、WO2006122442、WO2010085699、WO2010099296、WO2010099301、WO2012074758、US8592211など、および非特許文献Lacoste, A., et al. (2009). "An efficient and reversible transposable system for gene delivery and lineage-specific differentiation in human embryonic stem cells." Cell Stem Cell 5(3): 332-342;Yusa, K., et al. (2011). "A hyperactive piggyBac transposase for mammalian applications." Proc Natl Acad Sci U S A 108(4): 1531-1536(上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照することができる。本明細書では、「PiggyBac(PB)トランスポゾンシステム」という用語は、PBトランスポザーゼの野生型および異なる変異体、ならびにPBトランスポゾンの野生型および異なる変異体を含有するPBトランスポゾンシステムを含むことができる。
【0021】
本開示では、発現誘導システム(Inducible expression system)によって、宿主細胞に導入された核酸構築物中の関連遺伝子の転写および発現は制御される。本開示では、使用され得る発現誘導システムの具体例は、テトラサイクリン誘導システムにおけるTet-Off発現誘導システム(例えば、Gossen, M. and H. Bujard (1992). "Tight control of gene expression in mammalian cells by tetracycline-responsive promoters." Proc Natl Acad Sci U S A 89(12): 5547-5551;Yu, H., et al. (1996). "Inducible human immunodeficiency virus type 1 packaging cell lines." J Virol 70(7): 4530-4537;Kaul, M., et al. (1998). "Regulated lentiviral packaging cell line devoid of most viral cis-acting sequences." Virology 249(1):167-174(上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照)、テトラサイクリン誘導システムにおけるTet-On発現誘導システム(例えば、WO0075347A2、WO2007058527A2(上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照)、Cumateシステム(例えば、WO02088346A2、WO2006037215A1(上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照)、Cumate発現誘導システム(Mullick, A., et al. (2006). "The cumate gene-switch: a system for regulated expression in mammalian cells." BMC Biotechnol 6: 43;WO02088346A2、WO2006037215A1(上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。一態様では、発現誘導に使用される発現誘導システムは、Tet-On発現誘導システムまたはCumate発現誘導システムである。別の態様では、発現誘導に使用される発現誘導システムは、Tet-On発現誘導システムとCumate発現誘導システムとの組み合わせである。Tet-On発現誘導システムでは、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン(Dox)などのテトラサイクリン誘導体の存在下でのみ、リバーステトラサイクリン依存性のトランスアクチベーター(reverse tetracycline controlled transactivator、rtTA)がTet-On発現誘導システムのTRE応答エレメント(マルチコピー連続TetOオペレーター配列と最小プロモーター配列を含有する核酸配列、Tet Response Element、以下ではTREと称する)に結合して、下流に連結される調節された核酸断片の転写を開始することができる。現在一般的に使用されるTet-On発現誘導システムには、第2世代のTet-On発現誘導システム(Tet-On Advanced、Clontech、ここでのトランスアクチベーターrtTAおよび応答エレメントTREは以下ではそれぞれrtTAadv(コード核酸配列:SEQ ID NO:29)およびTREadv(SEQ ID NO:21)と称する)および第3世代のTet-On発現誘導システム(Tet-On 3G、Clontech、ここでのトランスアクチベーターrtTAおよび応答エレメントTREは以下ではそれぞれrtTA3G(コード核酸配列:SEQ ID NO:28)およびTRE3G(SEQ ID NO:19)と称する)を含む。第2世代のTet-On発現誘導システムおよび第3世代のTet-On発現誘導システムにおけるトランスアクチベーターrtTAおよびTREは、組み合わせて使用することができる。例えば、rtTAadvはTRE3Gと組み合わせて使用することができ、rtTA3GはTREadvと組み合わせて使用することもできる。Cumate発現誘導システム(Cumate Inducible System)は、Pseudomonas putidaのp-cymオペロンから開発され、プロモーターTATAボックスの下流に連結されたCuOオペレーターおよびリプレッサーCymRタンパク質からなる。リプレッサーCymRタンパク質は、CuOオペロンに結合できる、Cumateおよびその誘導体が依存するものである。Cumateが存在しない場合、CymRタンパク質はCuOオペレーターに結合して、下流に連結された標的核酸配列の転写と発現を阻害する。CymRタンパク質がCumateに結合した後、CuOオペレーターに対するCymRタンパク質の親和性が低下し、CymRタンパク質とCuOオペレーターが分離して、下流に連結された標的核酸配列の転写と発現を阻害しなくなる。本開示では、Tet-On発現誘導システムをCumate発現誘導システムと組み合わせて使用する場合、マルチコピー連続TetOオペレーター配列、TATAボックスを含む最小プロモーター配列、およびCuOオペレーター配列を含む複合応答エレメント配列が構築される。ここで、TREadvCuO(SEQ ID NO:22)複合応答エレメントは、第2世代のTet-On発現誘導システムのTREadv配列中のマルチコピー連続TetOオペレーター配列に基づいて設計され、TRE3GCuO複合応答エレメント(SEQ ID NO:20)は、第3世代のTet-On発現誘導システムのTRE3G配列中のマルチコピー連続TetOオペレーター配列に基づいて設計される。Tet-On発現誘導システムをCumate発現誘導システムと組み合わせて使用する場合、Tet-On発現誘導システムのトランスアクチベーターrtTAタンパク質とCumate発現誘導システムのリプレッサーCymRタンパク質を同時に発現させる必要がある。ここで、使用されるTet-Onトランスアクチベーターは、rtTAadvであってもよく、rtTA3Gであってもよい。好ましくは、ヒトコードコドンに基づいて最適化されたrtTA3G(SEQ ID NO:28)およびCymR(SEQ ID NO:27)配列が使用される。一態様では、本開示の目的のために使用される発現誘導システムは、金属イオン誘導性発現誘導システム、ホルモン誘導性発現誘導システムおよび温度誘導性発現誘導システムを含み得る。
【0022】
本開示の一態様では、gagおよびpol遺伝子(実施例におけるgag/polは、gag遺伝子およびpol遺伝子が同じ構築物に位置し、フレームシフト(frameshift)によって発現されることを表す)、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(例えばVSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの1つ以上の転写が制御され、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列を発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、好ましくは、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列をTet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、より好ましくは、前記制御された転写は、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下にありか、第3世代のTet-On発現誘導システムの単独制御下にある。本開示の一態様では、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の全ての転写が制御され、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列を発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、好ましくは、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列をTet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、より好ましくは、前記制御された転写は、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下にありか、第3世代のTet-On発現誘導システムの単独制御下にある。本開示の一態様では、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちのrev遺伝子およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列の転写が制御され、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列を発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、好ましくは、前記制御された転写は、前記遺伝子または配列をTet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムの制御下に置くことにより達成され、より好ましくは、前記制御された転写は、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下にありか、第3世代のTet-On発現誘導システムの単独制御下にある。
【0023】
調節された核酸断片の誘導条件下での発現量および非誘導条件下でのリーク発現量は、発現誘導システムの品質を評価するための2つの重要な指標である。良好な発現誘導システムは、より高い誘導発現量とより低いリーク発現量を持つ必要がある。本発明者らは、単一のTet-On発現誘導システム、またはTet-OnとCumateの複合発現誘導システムの誘導発現量およびリーク発現量が(1)TRE応答エレメントの最小プロモーター配列、(2)rtTAトランスアクチベーターの変異体の選択、および(3)スプライシング可能なイントロン配列が誘導システムの応答エレメントの3'末端と調節された標的核酸配列の5'末端との間に連結されているかどうか、の影響を受ける、ことを見出した。本開示は、TREadv、TRE3G、TREadvCuOおよびTRE3GCuOの4つの応答エレメント、ならびにrtTAadvおよびrtTA3Gの2つのトランスアクチベーターを同時設計および使用する。第3世代のTRE3G応答エレメントによる制御は、第2世代のTREadv応答エレメントによる制御よりも厳密であり、調節された核酸断片は、より低いリーク発現量を有するが、誘導発現量はTREadvよりも低い。本開示に設計のTet-OnとCumateの複合発現誘導システムの応答エレメントTREadvCuO(SEQ ID NO:22)およびTRE3GCuO(SEQ ID NO:20)による制御は、任意の単一のTet-On誘導システムの応答エレメントによる制御よりも厳密であるため、調節された核酸断片のリーク発現量を大幅に減少するが、同時に調節された核酸断片の誘導発現量も大幅に減少する。トランスアクチベーターrtTA3Gは、rtTAadvと比較して、誘導条件下で類似な転写活性化活性を有するが、非誘導条件下では、rtTA3Gの基礎リーク転写活性化活性はより低い。発現プラスミド中のプロモーターの3'末端に連結されたイントロンは、一般的に、メッセンジャーRNA(mRNA)の安定性を高め、mRNAの核外への輸送効率を高め(Akef, A., et al. (2015). "Splicing promotes the nuclear export of beta-globin mRNA by overcoming nuclear retention elements."RNA 21(11): 1908-1920を参照)、調節された核酸断片の発現量を高めることができる。本発明者らは、単一の発現誘導システムにおいて、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロンを連結することにより、調節された核酸断片の誘導発現量を高めることができるが、同時に調節された核酸断片のリーク発現量も大幅に増加することを見出した。本開示のTet-OnとCumateの複合発現誘導システムにおいて、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロン配列を挿入することにより、非誘導条件でのリーク発現量を大幅に増加させることなく、誘導条件での誘導発現量を大幅に増加させることができる。
【0024】
レンチウイルス産生細胞株を構築する場合、rev遺伝子とVSV-G遺伝子とgagおよびpol遺伝子と標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットとの発現量、発現量の相対的な比率、発現されたタンパク質または転写された核酸の細胞毒性、および発現または転写の順序をバランスさせる必要があるので、各遺伝子および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットのプロモーターまたは発現誘導システムの応答エレメントを最適化する必要がある。発現が必要なレンチウイルスのrev遺伝子とVSV-G遺伝子とgagおよびpol遺伝子と標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットにおいて、revおよびウイルスのエンベロープタンパク質VSV-Gは明らかな細胞毒性を有し、そして、revは、一般的にRRE配列を含有するgagおよびpol遺伝子の発現も調節するため、発現誘導システムによる厳密な制御が必要である。Gagおよびpol遺伝子の発現は、revが制御されている条件で厳密に調節する必要はないが、特に単一のTet-On発現誘導システムを用いてrevおよびVSV-Gの発現を制御する場合に、発現誘導システムでgagおよびpol遺伝子の発現を制御すると、非誘導条件でのリーク発現のウイルス力価がさらに低下する可能性がある。これに基づく、本開示は、4種類の応答エレメント、および、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロン配列が連結されるかどうかに基づいて、8種類のレンチウイルス遺伝子発現の調節配列:TREadv(誘導システムの応答エレメントはTREadv配列(SEQ ID NO:21)であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にイントロンは存在していない)、TREadvCuO誘導システムの応答エレメントはTREadvCuO配列(SEQ ID NO:22)であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にイントロンは存在していない)、TRE3G(誘導システムの応答エレメントはTRE3G配列(SEQ ID NO:19)であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にイントロンは存在していない)、TRE3GCuO(誘導システムの応答エレメントはTRE3GCuO配列(SEQ ID NO:20)であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にイントロンは存在していない)、TREadv-イントロン(誘導システムの応答エレメントはTREadv配列であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロンが連結されている)、TREadvCuO-イントロン(誘導システムの応答エレメントはTREadvCuO配列であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロンが連結されている)、TRE3G-イントロン(誘導システムの応答エレメントはTRE3G配列であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロンが連結されている)、およびTRE3GCuO-イントロン(誘導システムの応答エレメントはTRE3GCuO配列であり、応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間にスプライシング可能なイントロンが連結されている)が設計され、テストされる。これによって、レンチウイルスの各遺伝子発現を調節する最適な組み合わせを最適化している。本開示では、応答エレメントの3'末端と応答エレメントによって制御・調節された核酸断片の5'末端との間にあるイントロンは、前記応答エレメントおよび前記応答エレメントによって制御・調節された核酸断片に直接連結されていてもよいし、直接連結されていなくてもよい。これは、本開示の内容に従って、必要に応じて、当業者によって調整することができるものである。そして、直接連結されていない場合、当業者は、応答エレメントと応答エレメントによって制御・調節された核酸断片との間の距離は、応答エレメントによる調節された核酸断片の転写制御に影響を与えるべきではないことを理解すべきである。本開示の一態様では、単一のTet-On発現誘導システムの場合、revの調節配列は好ましくはTRE3Gであり、VSV-Gの調節配列は、好ましくはTRE3G-イントロンであり、gagおよびpolの調節配列は、好ましくはCMVプロモーター(または当技術分野で一般的に使用される他の真核プロモーター)-イントロンまたはTRE3G-イントロンであり、より好ましくはTRE3G-イントロンであり、rtTAトランスアクチベーターは好ましくはrtrtTA3Gである。この条件下で、上記した関連するプラスミドの一過性トランスフェクションは、6.94E+05RLUおよび176倍の誘導/リークウイルス産生力価比に達することができる。第2世代のTet-Onシステム(4.64E+05RLU、7倍の誘導/リークウイルス産生力価比)と比較して、ウイルス産生力価は49.6%向上しており、ウイルスリーク発現制御は25倍向上している。本開示の一態様では、Tet-OnとCumateの複合発現誘導システムの場合、revの調節配列は好ましくはTREadvCuO、TREadvCuO-イントロン、TRE3G、TRE3GCuO、およびTRE3GCuO-イントロンであり、より好ましくはTRE3G、TRE3GCuOおよびTRE3GCuO-イントロンであり、さらに好ましくはTRE3Gであり、VSV-Gの調節配列は、好ましくはTREadvCuO、TREadvCuO-イントロン、TRE3G-イントロンおよびTRE3GCuO-イントロンであり、より好ましくはTREadvCuO-イントロン、TRE3G-イントロンおよびTRE3GCuO-イントロンであり、さらに好ましくはTRE3GCuO-イントロンであり、gagおよびpolの調節配列は好ましくはCMVプロモーター(または当技術分野で一般的に使用される他の真核プロモーター)-イントロン、TREadv-イントロン、TREadvCuO-イントロン、TRE3G-イントロンおよびTRE3GCuO-イントロンを含むイントロン含有調節配列であり、より好ましくはTRE3GCuO-イントロンであり、rtTAトランスアクチベーターは好ましくはrtrtTA3Gである。この条件下で、上記した関連するプラスミドの一過性トランスフェクションは、1.46E+06RLUおよび12032倍の誘導/リークウイルス産生力価比に達することができる。第2世代のTet-Onシステム(4.64E+05RLU、7倍の誘導/リークウイルス産生力価比)と比較して、ウイルス産生力価は214.7%向上しており、ウイルスリーク発現制御は1719倍向上している。
【0025】
上記した応答エレメントの3'末端と調節された核酸断片の5'末端との間に連結されているスプライシング可能なイントロンの選択は、特に限定されず、当業者は、哺乳動物細胞でRNAスプライシング(Splicing)を実行できる配列であれば、上記機能を実現できることを理解できる。選択可能なイントロン配列は、ウサギβ-グロブリンイントロン、ヒトβ-グロブリンおよび免疫グロブリン重鎖イントロンに由来するハイブリッドイントロン、EF-1αイントロンA、SV40イントロン、アデノウイルスおよび免疫グロブリン重鎖イントロンに由来するハイブリッドイントロン、修飾されたヒトサイトメガロウイルスイントロン、ニワトリβ-アクチン(CBA)およびマウスマイクロウイルス(MMV)イントロンに由来するハイブリッドイントロン、ニワトリβ-アクチンおよびウサギβ-グロブリンイントロンに由来するキメラおよびmP1イントロンなどの一般的に使用されるクローニングベクターのイントロンを含むが、これらに限定されない。また、選択可能なイントロン配列は、任意の真核生物の任意の遺伝子の任意のイントロン、または、イントロンスプライシング規則に基づいて設計された人工イントロン配列であってもよい。本開示の実施例に使用されるイントロン配列は、例えば、SEQ ID NO:26に示されるヒトβ-グロブリンイントロン配列(BGI配列)であってもよい。
【0026】
本開示では、トランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを宿主細胞ゲノムに安定に組み込む。本開示の一態様では、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、および/または標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットのうちの1つ以上をTet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムの制御下に置くと、トランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット、ならびに、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列を宿主細胞ゲノムに組み込む。本開示の一態様では、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット、ならびに、発現誘導システムアクチベーターまたはリプレッサータンパク質コード配列(例えば、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサータンパク質CymRのコード配列)を宿主細胞ゲノムに一括組み込んで、レンチウイルスを調製する産生細胞株を直接構築する。本開示の一態様では、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、上記した遺伝子と配列は、それぞれ宿主細胞に導入する。本開示の好ましい態様では、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(ならびに、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)を2回に分けて宿主細胞ゲノムに組み込む。まずは、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムのいずれかを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(ならびに、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)のうちの1つ以上を宿主細胞ゲノムに組み込んで、パッケージング細胞株を構築し、次に、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムの別の未使用のトランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット(ならびに、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)のうちの残りの1つ以上を前記パッケージング細胞株のゲノムに組み込んで、さらに、産生細胞株を構築する。本開示の好ましい態様では、まずは、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムのいずれかを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)を宿主細胞ゲノムに組み込んで、パッケージング細胞株を構築し、次に、SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムの別の未使用のトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)がゲノムに組み込まれたパッケージング細胞株のゲノムに組み込んで、さらに、産生細胞株を構築する。この場合、既に構築されているゲノムにgagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列)が組み込まれた安定したパッケージング細胞に単一の標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットの構築物を導入し、上記構築物の細胞クローンをゲノムに安定に組み込むように簡単なスクリーニングを行うことのみにより、標的核酸断片を担持するレンチウイルスベクターを調製するために使用できるレンチウイルスベクター産生細胞株を構築することができる。本発明者らは、同一のトランスポゾンシステムのみ(SBシステムのみまたはPBシステムのみ)を用いて、上記全ての遺伝子および配列を順次宿主細胞ゲノムに組み込む場合、後者の遺伝子または配列の1つ以上を導入する際に、既に宿主細胞に導入されて宿主ゲノムに組み込まれた前者の遺伝子または配列の1つ以上にトランスポザーゼが作用して、前記前者の遺伝子または配列が宿主ゲノムから切り離されてしまい、全ての遺伝子および配列を含むスパッケージング/産生細胞株の作製の生産性が低下する、ことを見出した。本発明者らは、遺伝子または配列の1つ以上を2回分けて宿主細胞ゲノムに組み込む際に、異なるトランスポゾンシステムを用いることにより、前記弊害を効果的に回避することができる、ことを見出した。従って、本開示では、前記した遺伝子または配列の1つ以上を2回分けて宿主細胞ゲノムに組み込む過程において、異なるトランスポゾンシステムを使用している。すなわち、例えば、まずは、SBシステムを用いて、遺伝子または配列の1つ以上を宿主細胞ゲノムに組み込んで、その後、PBシステムを用いて、遺伝子または配列の残りの1つ以上を宿主細胞ゲノムに組み込むか、または、まずは、PBシステムを用いて、遺伝子または配列の1つ以上を宿主細胞ゲノムに組み込んで、その後、SBシステムを用いて、遺伝子または配列の残りの1つ以上を宿主細胞ゲノムに組み込む。本開示の好ましい態様では、まずは、SBシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)を宿主細胞ゲノムに組み込んで、パッケージング細胞株を構築し、次に、PBシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)がゲノムに安定に組み込まれたパッケージング細胞のゲノムに組み込んで、さらに、産生細胞を構築する。
【0027】
安定にトランスフェクトされた細胞株を構築するための従来のトランスフェクションおよびスクリーニング方法とは異なり、PBおよびSBトランスポゾンシステムはどちらも、挿入された配列断片を宿主細胞ゲノムに積極的に組み込む機能を持っている。最適化により、単一の一過性トランスフェクションは、非耐性スクリーニング条件下で、細胞集団において40%を超える成功した安定した組み込み効率の平均を達成することができ、1回のトランスフェクション操作で、細胞ゲノムに挿入された配列断片の20コピー以上を安定に組み込む細胞クローンを得るとともに、サイズと配列が異なる挿入された配列断片の複数のコピーを細胞のゲノムに組み込むことができる。一方、PBおよびSBトランスポゾンシステムを用いて挿入された配列断片を宿主細胞ゲノムに組み込む効率は、各トランスポゾン構築物を細胞に導入する際の全トランスポゾン構築物と全トランスポザーゼ構築物のモル比と、トランスポゾン構築物の導入量と、トランスポゾンに挿入された配列断片の長さとに関連している。一般的に、トランスポゾン構築物は、DNAプラスミド、ミニサークルDNA(minicircle DNA)、線状DNA断片またはウイルスベクターであり得る。一般的に、トランスポザーゼ構築物は、DNAプラスミド、ミニサークルDNA(minicircle DNA)、線状DNA断片、ウイルスベクター、RNAまたはタンパク質であり得る。トランスポゾンおよびトランスポザーゼの構築物としてDNAプラスミドを用いる場合、一過性トランスフェクション時のトランスポゾン/トランスポザーゼプラスミドのモル比を5:1以上にすることで、細胞ゲノムへの挿入された配列断片の安定的な組み込み効率を大幅に向上させることができる。なお、細胞ゲノムへのトランスポゾンの組み込み効率は、挿入された配列断片の長さの増加につれて低減する。両者の間には比較的安定した線形関係がある。複数の挿入された配列断片を細胞ゲノムに同時に組み込む操作において、最終的に細胞ゲノムに組み込まれる各挿入された配列断片のコピー数およびモル比は、挿入された配列断片の長さに応じて各トランスポゾン構築物の添加量および相対モル比を調整することによって制御することができる。本開示の一態様では、好ましくは、まず、SBトランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)を宿主細胞ゲノムに組み込む。構築プロセスにおいて、上記パッケージング細胞株は、上記遺伝子およびタンパク質コード配列を含むトランスポゾンプラスミドおよびSBトランスポザーゼプラスミドを、全トランスポゾンプラスミドと全SBトランスポザーゼプラスミドとのモル比が5:1以上、より好ましくは10:1~40:1である条件下で一過性にトランスフェクトすることによって構築される。構築されたパッケージング細胞株のゲノムにおいて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列の少なくとも1つのコピー(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列の少なくとも1つのコピー、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列の少なくとも1つのコピーおよび/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列の少なくとも1つのコピー)が安定に組み込まれている。好ましくは、宿主細胞ゲノムに組み込まれるgagおよびpol遺伝子のコピー数を細胞あたり2コピー以上に調整する。宿主細胞ゲノムに組み込まれるVSV-Gタンパク質コード配列に対するgagおよびpol遺伝子配列のコピー比が1:1~3:1である。より好ましくは、宿主細胞ゲノムに組み込まれるgagおよびpol遺伝子のコピー数を細胞あたり4~6コピーに調整する。宿主細胞ゲノムに組み込まれるVSV-Gタンパク質コード配列に対するgagおよびpol遺伝子配列のコピー比が2:1~3:1である。SBトランスポゾンシステムによって上記パッケージング細胞株が構築された後、さらに、PBトランスポゾンシステムによって、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットが、上記パッケージング細胞株のゲノムに組み込まれる。構築プロセスにおいて、安定レンチウイルス産生細胞株は、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを含むトランスポゾンプラスミドおよびPBトランスポザーゼプラスミドを、トランスポゾンプラスミドとPBトランスポザーゼプラスミドとのモル比が5:1以上、より好ましくは10:1~40:1である条件下で一過性にトランスフェクトすることによって構築される。構築された産生細胞株のゲノムにおいて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットの少なくとも1つのコピーが安定に組み込まれている。PBとSBの二重トランスポゾンシステムを用いて産生細胞株を構築する方法には、挿入された遺伝子のコピー数を増やすことと、宿主細胞ゲノムに組み込まれる各挿入された配列断片のモル比を正確に調整することと、最適な高収量産生細胞株の構築とスクリーニングの成功率と、細胞スクリーニングの手順と時間の削減と、耐性遺伝子の数の削減などの利点がある。
【0028】
本開示の一態様では、gag遺伝子、pol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列(例えば、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)がそれぞれ異なるトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の任意の2つが1つのトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の任意の3つが1つのトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の任意の4つが1つのトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の任意の5つが1つのトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の任意の3つが6つのトランスポゾン構築物に構築されている。本開示の一態様では、上記の遺伝子または配列断片の全てが1つのトランスポゾン構築物に構築されている。産生細胞株において複製可能なレンチウイルス(replication-competent lentivirus、単にRCLと称する)が産生される可能性を低減し、宿主細胞ゲノムに組み込まれる各ウイルスパッケージング遺伝子および配列断片のコピー数比を最適化するために、好ましくは、gag遺伝子およびpol遺伝子が同一のトランスポゾン構築物に構築されており、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットがそれぞれ3つの独立したトランスポゾン構築物に構築されており、Tet-On発現誘導システムを単独で使用する場合、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列が独立したトランスポゾン構築物に構築されており、Tet-OnとCumateの複合発現誘導システムを使用する場合、好ましくは、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列およびCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列が同一のトランスポゾン構築物に構築されている。
【0029】
本開示では、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列、および標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列(例えば、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)をそれぞれ担持する構築物のうちの1つ以上は、スクリーニング遺伝子配列をさらに担持する。本開示では、スクリーニング遺伝子配列は、真核細胞に使用されるスクリーニング遺伝子配列である。本開示の一態様では、前記スクリーニング遺伝子は、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子からなる群より選ばれるものであり得る。または、前記スクリーニング遺伝子は、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(Dihydrofolate reductase)、グルタミン合成酵素(Glutamine synthetase)、チミジンキナーゼ(Thymidine kinase)をコードする核酸配列からなる群より選ばれる代謝経路スクリーニング遺伝子であり得る。本開示の一態様では、前記スクリーニング遺伝子の発現は、プロモーター、内部リボソーム侵入部位(internal ribosome entry site、単にIRESと称する)またはP2A自己スプライシングポリペプチド配列によって、好ましくはSV40プロモーターによって調節することができる。本開示の一態様では、まずは、SBトランスポゾンシステムを用いて、gagおよびpol遺伝子、rev遺伝子、およびウイルスのエンベロープタンパク質(例えば、VSV-G)のコード配列(好ましくは、ならびに、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはリプレッサータンパク質コード配列、例えば、Tet-Onおよび/またはCumate発現誘導システムを使用する場合、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列および/またはCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列)を宿主細胞ゲノムに組み込んで、パッケージング細胞株を構築する操作手順において、前記構築物のうちの1つ以上は、異なるスクリーニング遺伝子配列を担持することができ、1つのスクリーニング遺伝子配列のみを使用することが好ましく、当該スクリーニング遺伝子配列は、上記の構築物のいずれかに位置することができ、例えば、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはプレッサータンパク質コード配列を担持する構築物に位置することができる(例えば、Tet-On発現誘導システムを単独で使用する場合、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列の構築物が1つのスクリーニング遺伝子配列(例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HygroR))を担持する;または、Tet-OnとCumateの複合発現誘導システムを使用する場合、Tet-OnトランスアクチベーターrtTAタンパク質コード配列およびCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列が位置する同一の構築物が1つのスクリーニング遺伝子配列(例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HygroR))を担持する)。その後、PBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットを宿主細胞ゲノムに安定に組み込んで産生細胞株を構築する操作手順において、前記標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットの構築物は、好ましくは、前のものとは異なる別の耐性遺伝子配列(例えば、ピューロマイシン耐性遺伝子(PuroR))を担持する。本開示の一態様では、ウイルスのエンベロープタンパク質(VSV-G)のコード配列の構築物は、上記の2つとは異なる第3の耐性遺伝子配列(例えば、ブラストサイジン耐性遺伝子(BSD))を担持する。本開示の一態様では、十分にハイスループットなモノクローナル細胞スクリーニングの条件下で、本開示に記載の構築物は、スクリーニング遺伝子を含まなくてもよく、安定した高収量のパッケージング/産生細胞株は、モノクローナル細胞のウイルス産生能のみによってスクリーニングすることができる。
【0030】
本開示では、標的核酸断片を担持するレンチウイルスゲノム転写カセットは、例えば、pLVPRT-tTR-KRAB(Addgene、#11648)、pLenti CMVtight eGFP Puro (w771-1)(Addgene、#26431)などの第2世代のレンチウイルスベクターのトランスファーベクタープラスミド、または、例えば、pSLIK-Hygro(Addgene、#25737)、pHIV-EGFP(Addgene、#21373)、pSico(Addgene、#11578)、pRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPRE(Addgene、#12252)、Tet-pLKO-puro(Addgene、#21915)、pLenti-puro(Addgene、#39481)、pLVUT-tTR-KRAB(Addgene、#11651)などの第3世代のレンチウイルスベクターのトランスファーベクタープラスミドから得ることができる。第3世代のレンチウイルスベクターのウイルスゲノム転写カセットと第2世代のレンチウイルスベクターのウイルスゲノム転写カセットのほとんどは、LTR、5’末端非コード断片、HIV-1Ψパッケージングシグナル、RRE、cPPT、およびgag配列の一部などのウイルスのパッケージングと形質導入で重要な役割を果たす核酸配列を共有している。第3世代のレンチウイルスゲノム転写カセットと第2世代のレンチウイルスゲノム転写カセットの主な違いは、第2世代のレンチウイルスゲノム転写カセットにおいて、CMVやRSVなどの構成的に活性なプロモーターを使用して、5'LTR配列でプロモーターとして機能するU3配列を置き換え、かつ、レンチウイルストランスファーベクターがSIN(self-inactivating)ベクターとなるように、3'-LTR配列のU3配列が欠失していることである。第3世代のレンチウイルスゲノム転写カセットでは、pSLIK-Hygro、pHIV-EGFP、pSicoベクターは、CMVプロモーターを用いてレンチウイルスゲノムRNAを転写することに対して、pRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPRE、Tet-pLKO-puro、pLenti-puroは、RSVプロモーターを用いて、レンチウイルスゲノムRNAを転写する。他の第3世代のレンチウイルストランスファーベクタープラスミドと比較して、Tet-pLKO-puroおよびpLenti-puroは、レンチウイルスゲノム転写カセットにWPRE配列を含んでいない。上述のレンチウイルストランスファーベクタープラスミド中のレンチウイルスゲノム転写カセットはすべて、原則として、本開示に記載のレンチウイルス産生に安定な細胞株を構築する方法に適用可能である。本開示の一態様では、pRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPRE(Addgene、#12252)トランスファーベクタープラスミド中の核酸配列に基づいて、本開示で使用されるレンチウイルスゲノム転写カセットの配列は設計され、この配列を含むプラスミド構築物は構築される。
【0031】
本開示に記載のレトロウイルス/レンチウイルス産生細胞株の構築方法は、標的核酸配列および/またはエンベロープタンパク質を迅速に置換するためのウイルス産生細胞株を構築することもできる。当該ウイルス産生細胞株は、部位特異的組換え戦略を使用して構築されたウイルス産生細胞株を含むが、これに限定されない。部位特異的組換えは、保存的部位特異的組換え(conservative site-specific recombination)としても知られており、少なくともある程度の相同性を持つ配列断片間でDNA鎖交換が起こる遺伝子組換えである。リコンビナーゼ媒介カセット交換(recombinase-mediated cassette exchange、単にRMCEと称する)などの多くの異なるゲノム修飾戦略は、部位特異的組換えに依存している。これは、転写カセットまたは標的核酸配列を所定のゲノムの特定の部位に標的導入するための高度な方法である。部位特異的組換えは、一般的に、部位特異的リコンビナーゼ(site-specific recombiase、単にSSRと称する)と、部位特異的リコンビナーゼによって認識され、相同組換えを受ける特定の部位配列からなる。アミノ酸配列の相同性とリコンビナーゼ触媒メカニズムの相関関係に基づいて、ほとんどの部位特異的リコンビナーゼは、チロシン(Tyr)リコンビナーゼまたはセリン(Ser)リコンビナーゼとして分類できる。一般的なチロシンリコンビナーゼはCreまたはFLPである。また、一般的なセリンリコンビナーゼは、gamma-deltaおよびTn3異化酵素などの古典的なメンバーと、新しく発見されたφC31-、Bxb1-、およびR4インテグラーゼ(integrase)である。部位特異的リコンビナーゼが結合して相同組換えされる特異的部位配列は、通常30~200塩基の長さであり、部位特異的リコンビナーゼが結合する2つの部分的に反転して繰り返される対称配列と、当該配列に囲まれ、相同組換えを起こす中間配列から構成される。部位特異的組換えは通常、2つの同一の特定部位配列間で発生するが、例外もある(例えば、λファージインテグラーゼシステムのattPおよびattBサイト)。Cre-loxおよびFLP-FRT部位特異的組換えシステムは、リコンビナーゼ媒介カセット交換に一般的に使用される成熟システムである。Cre-loxシステムは、CreリコンビナーゼとCreによって認識されるloxp配列からなり、FLP-FRTシステムは、flippaseリコンビナーゼ(FLP)と、FLPによって認識される短いフリッパーゼ認識部位配列(short flippase recognition target、単にFRTと称する)からなる。2つの部位特異的組換えシステムは、部位特異的リコンビナーゼの認識部位配列の数と方向、および同じまたは異なるDNA分子と認識部位の核酸変異の設計戦略に基づいて、標的核酸配列断片の切り出し、挿入、転位および逆位を達成することができる。リコンビナーゼ媒介カセット交換戦略の設計において、部位特異的リコンビナーゼ認識配列は、通常、置換される核酸配列(それ自体がマーカー遺伝子を含んでいるか、マーカー遺伝子(第1のマーカー遺伝子)に連結されていてもよい)の両末端に設定され(第1のマーカー遺伝子および置換される標的核酸配列は両方とも、2つの特異的リコンビナーゼ認識部位配列の間に位置する)、細胞株は、第1のマーカー遺伝子の特性に基づいてスクリーニングされる。置換用の標的核酸配列(好ましくは、第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子に連結される)は、一般的にはベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)に設定され、両末端に同様に部位特異的リコンビナーゼ認識配列がある(第2のマーカー遺伝子および置換用の標的核酸配列は、両方とも、2つの特異的リコンビナーゼ認識部位配列の間に位置する)。置換用の標的核酸断片を担持するベクターおよび対応する部位特異的リコンビナーゼの発現ベクター(例えば、部位特異的リコンビナーゼのコード配列を担持するプラスミド、ウイルスベクター、RNA、または部位リコンビナーゼタンパク質)が第1のマーカー遺伝子に基づいてスクリーニングされた細胞株に同時に送達されると、置換される元の核酸断片は、部位特異的リコンビナーゼの触媒作用の下で、第2のマーカー遺伝子を担持する置換用の標的核酸断片で置換される。第2のマーカー遺伝子の特性に基づいてスクリーニングした後、リコンビナーゼ媒介カセット交換を首尾よく完了した標的細胞株を得ることができる。類似な戦略を使用することにより、標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質を迅速に置換するための迅速置換ウイルス産生細胞株を構築することができる。例えば、元の核酸断片(それ自体がマーカー遺伝子を含んでいるか、マーカー遺伝子(第1のマーカー遺伝子A)に連結されていてもよい)および/またはマーカー遺伝子(第1のマーカー遺伝子B)に連結された元のエンベロープタンパク質コード配列に基づいて、本開示の方法に従って、迅速置換ウイルス産生細胞株を構築する。ここで、前記元の核酸断片(それ自体がマーカー遺伝子を含んでいるか、マーカー遺伝子に連結されていてもよい)の両末端で部位特異的リコンビナーゼ認識部位配列が設置されており、および/またはマーカー遺伝子に連結されるの元のエンベロープタンパク質コード配列の両末端で部位特異的リコンビナーゼ認識部位配列が設置されている。標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列を迅速に置換する場合、両末端に特異的リコンビナーゼ認識部位配列を持ち、かつマーカー遺伝子(第2のマーカー遺伝子)に連結された置換用の標的核酸断片および/または置換用のエンベロープタンパク質コード配列(マーカー遺伝子(第2のマーカー遺伝子)および置換用の標的核酸断片は、両方とも、2つの特異的リコンビナーゼ認識部位配列の間に位置しており、および/または、マーカー遺伝子(第2のマーカー遺伝子)および置換用のエンベロープタンパク質コード配列は、両方とも、2つの特異的リコンビナーゼ認識部位配列の間に位置しており、そして、置換用の配列に連結された第2のマーカー遺伝子(Aおよび/またはB)は産生細胞株の構築に使用された第1のマーカー遺伝子(Aおよび/またはB)とは異なる。)を含むベクターおよび対応する部位特異的リコンビナーゼの発現ベクターは、上記の迅速置換ウイルス産生細胞株に、同時に送達され、置換用の標的核酸断片および/または置換用のエンベロープタンパク質コード配列に連結された第2のマーカー遺伝子(Aおよび/またはB)に基づいて、リコンビナーゼ媒介カセット交換を首尾よく達成し、新規標的核酸断片および/または新規エンベロープタンパク質コード配列を含むウイルスを産生することができる産生細胞株がスクリーニングされる。上記したマーカー遺伝子は、例えば、真核細胞に使用される耐性遺伝子配列である。前記耐性遺伝子配列は、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子からなる群より選ばれるものである。または、前記マーカー遺伝子は、例えば、代謝経路スクリーニング遺伝子である。前記代謝経路スクリーニング遺伝子は、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(Dihydrofolate reductase)、グルタミン合成酵素(Glutamine synthetase)、チミジンキナーゼ(Thymidine kinase)をコードする遺伝子からなる群より選ばれるものである。または、前記マーカー遺伝子は、例えば、蛍光タンパク質マーカー遺伝子である。前記蛍光タンパク質マーカー遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(dsRed)、チェリー蛍光タンパク質(mcherry)、シアン蛍光タンパク質(ECFP)、黄色蛍光タンパク質(EYFP)、およびその他の蛍光タンパク質の変異由来タンパク質をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである。または、前記マーカー遺伝子は、例えば、レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子である。前記レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子は、例えば、ルシフェラーゼ(luciferase)、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、クロラムフェニカルアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenical acetyltransferase)をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである。または、前記マーカー遺伝子は、例えば、上記の様々なマーカー遺伝子の任意の組み合わせである。
【0032】
本開示では、レトロウイルス/レンチウイルスパッケージング細胞株および産生細胞株を構築するために使用される宿主細胞は哺乳動物細胞である。本開示での使用に適した宿主細胞の例は、293T細胞、HepG2細胞、CHO細胞、BHK細胞、HEK293細胞、COS細胞、NIH/3T3細胞、Vero細胞、HT1080細胞、Te671細胞、CEM細胞、NSO細胞、またはPerC6細胞、および、これらの細胞由来の誘導体である。一態様では、前記宿主細胞は、HEK293細胞またはHEK293細胞由来の細胞である。一態様では、前記宿主細胞は、293T細胞である。一態様では、産生/パッケージング細胞は、接着培養または懸濁培養で培養することができる。一態様では、産生/パッケージング細胞は、血清を用いて、または血清なしで培養することができる。
【0033】
本開示において、Tet-On発現誘導システムに使用できるテトラサイクリンおよびその誘導体は、本明細書に記載のテトラサイクリン依存性トランスアクチベーターrtTAに少なくとも10-6Mの結合定数Ka、好ましくは10-9M以上の結合定数Kaで結合できる構造のテトラサイクリンに類似した化合物を含む。テトラサイクリンの誘導体は、例えば、ドキシサイクリン(Dox)、アンヒドロテトラサイクリン(Atc)、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびデオキシテトラサイクリンからなる群より選ばれ得る。
【0034】
本開示では、リプレッサーCymRに結合しCumate発現誘導システムに使用できるCumate機能的類似体は、例えば、p-エチル安息香酸、p-プロピル安息香酸、p-イソプロピル安息香酸、p-イソブチル安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、p-n-ジメチルアミノ安息香酸、p-n-エチルアミノ安息香酸、および例えば米国特許第7,745,592号に記載されている他のCumate機能的類似体からなる群より選ばれ得る。
【0035】
本開示の一態様では、以下の各項を提供する。
【0036】
第1項:スリーピングビューティー(Sleeping Beauty、SB)トランスポゾンシステムを用いて、レトロウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの全てではなく1つ以上を宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでPiggyBac(PB)トランスポゾンシステムを用いて、前記レトロウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの残りの1つ以上を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含むか、または、PBトランスポゾンシステムを用いて、レトロウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの全てではなく1つ以上を宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでSBトランスポゾンシステムを用いて、前記レトロウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの残りの1つ以上を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含む、標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを産生するための産生細胞を調製する方法。
【0037】
第2項:SBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの全てではなく1つ以上を宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでPBトランスポゾンシステムを用いて、前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの残りの1つ以上を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含むか、または、PBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの全てではなく1つ以上を宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでSBトランスポゾンシステムを用いて、前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの残りの1つ以上を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含む、標的核酸断片を担持するレンチウイルスベクターを産生するための産生細胞を調製する方法。
【0038】
第3項:SBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列と、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでPBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含むか、または、PBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列と、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでSBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むことを含む、第2項に記載の方法。
【0039】
第4項:前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列が、2つ以上の構築物に位置している、第2項に記載の方法。
【0040】
第5項:gag、pol遺伝子の配列が1つの構築物に位置し、rev遺伝子の配列が別の構築物に位置し、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列が第3の構築物に位置し、且つ、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列が第4の構築物に位置している、第4項に記載の方法。
【0041】
第6項:前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子はHIV-1ウイルスのgag、polおよびrev遺伝子である、第2項に記載の方法。
【0042】
第7項:前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、ネコ白血病ウイルス(RD114)エンベロープタンパク質、アンフォトロピックレトロウイルスエンベロープタンパク質、エコトロピックレトロウイルスエンベロープタンパク質、ヒヒサル白血病ウイルスエンベロープタンパク質、ニパウイルスエンベロープタンパク質、モコラウイルスエンベロープタンパク質、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスエンベロープタンパク質、チクングニアウイルスエンベロープタンパク質、ロスリバーウイルスエンベロープタンパク質、セムリキ森林ウイルスエンベロープタンパク質、シンドビスウイルスエンベロープタンパク質、ベネズエラ馬脳炎ウイルスエンベロープタンパク質、西部馬脳炎ウイルスエンベロープタンパク質、インフルエンザウイルスエンベロープタンパク質、家禽ペストウイルスエンベロープタンパク質、チャンディプラウイルスおよびピリーウイルスエンベロープタンパク質、サル免疫不全ウイルスエンベロープタンパク質、ネコ免疫不全ウイルスエンベロープタンパク質、馬伝染性貧血ウイルスエンベロープタンパク質、エボラウイルスエンベロープタンパク質、狂犬病ウイルスエンベロープタンパク質、バキュロウイルスエンベロープタンパク質、C型肝炎ウイルスエンベロープタンパク質、ネコ内在性レトロウイルスエンベロープタンパク質、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質、マウス白血病ウイルスの両種向性4070Aおよび10A1、ギボン白血病ウイルスエンベロープタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスのgp120および水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)からなる群より選ばれる、第2項に記載の方法。
【0043】
第8項:前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)である、第2項に記載の方法。
【0044】
第9項:前記SBトランスポゾンシステムで使用されるトランスポザーゼがSB100Xであり、および/またはPBトランスポゾンシステムで使用されるトランスポザーゼがePiggyBacである、第2項に記載の方法。
【0045】
第10項:前記gag、polおよびrev遺伝子、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列のうちの1つ以上の転写が制御される、第2項に記載の方法。
【0046】
第11項:前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、VSV-Gであり、且つ、rev遺伝子およびVSV-Gコード配列の転写が制御される、第10項に記載の方法。
【0047】
第12項:前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、VSV-Gであり、且つ、gag、polおよびrev遺伝子、ならびにVSV-Gコード配列の転写が制御される、第10項に記載の方法。
【0048】
第13項:前記制御された転写は、前記遺伝子または配列を発現誘導システムの制御下に置くことにより達成される、第10項に記載の方法。
【0049】
第14項:前記発現誘導システムはテトラサイクリン発現誘導システムおよびCumate発現誘導システムからなる群より選ばれる、第13項に記載の方法。
【0050】
第15項:前記遺伝子または配列は、Tet-On発現誘導システムの単独制御下、またはTet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下に置かれる、第14項に記載の方法。
【0051】
第16項:Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、および/またはVSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列、TRE3GCuO配列またはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、VSV-Gの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロン、TREadv配列-イントロン、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、第15項に記載の方法。
【0052】
第17項:Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列またはTRE3GCuO配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、第16項に記載の方法。
【0053】
第18項:Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、gag、polの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ前記宿主細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は2~8コピー/細胞であり、前記宿主細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は1:1~4:1である、第17項に記載の方法。
【0054】
第19項:前記宿主細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は4~6コピー/細胞であり、前記宿主細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は2:1~3:1である、第18項に記載の方法。
【0055】
第20項:SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列、またはTet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列とCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込む、第15項に記載の方法。
【0056】
第21項:前記Tet-Onトランスアクチベータータンパク質はrtTA3Gである、第20項に記載の方法。
【0057】
第22項:SBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列またはTet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列とCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでPBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むか、または、PBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに、Tet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列またはTet-Onトランスアクチベータータンパク質コード配列とCumateオペロンのリプレッサーCymRタンパク質コード配列とを前記宿主細胞のゲノムに組み込み、次いでSBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込む、第15項に記載の方法。
【0058】
第23項:第1~22項のいずれか1項に記載の方法によって調製された産生細胞。
【0059】
第24項:2020年4月13日に中国普通微生物菌種保管センターに寄託番号CGMCC No.19675で寄託された、第23項に記載の産生細胞。
【0060】
第25項:標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを産生するための産生細胞であって、レトロウイルスのgagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列がそのゲノムに組み込まれ、前記gagおよびpol遺伝子の配列、ウイルスのエンベロープタンパク質コード配列、ならびに標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列またはPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列をそれぞれ有し、かつ、前記IR/DR配列および前記ITR配列が前記産生細胞中に同時に存在する、標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを産生するための産生細胞。
【0061】
第26項:前記gagおよびpol遺伝子の配列、ならびにウイルスのエンベロープタンパク質コード配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列をそれぞれ有し、前記標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列を有するか、または、前記gagおよびpol遺伝子の配列、ならびにウイルスのエンベロープタンパク質コード配列の両末端にPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列をそれぞれ有し、前記標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列を有する、第25項に記載の産生細胞。
【0062】
第27項:前記レトロウイルスはレンチウイルスであり、前記産生細胞は、レンチウイルスのrev遺伝子の配列がそのゲノムにさらに組み込まれ、かつ、前記rev遺伝子の配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列またはPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列を有する、第25項に記載の産生細胞。
【0063】
第28項:前記レトロウイルスはHIV-1ウイルスである、第27項に記載の産生細胞。
【0064】
第29項:前記gag、polおよびrev遺伝子の配列、ならびにウイルスのエンベロープタンパク質コード配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列をそれぞれ有し、前記標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列を有するか、または、前記gag、polおよびrev遺伝子の配列、ならびにウイルスのエンベロープタンパク質コード配列の両末端にPBトランスポザーゼに認識されるためのITR配列をそれぞれ有し、前記標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列の両末端にSBトランスポザーゼに認識されるためのIR/DR配列を有する、第27項に記載の産生細胞。
【0065】
第30項:前記ウイルスのエンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)である、第25項に記載の産生細胞。
【0066】
第31項:前記標的核酸断片配列の両末端に部位特異的リコンビナーゼシステムの認識配列を有し、および/または、前記エンベロープタンパク質コード配列の両末端に部位特異的リコンビナーゼシステムの認識配列を有する、第23項に記載の産生細胞または第25項に記載の産生細胞。
【0067】
第32項:レトロウイルスベクターにおける標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質を置換するためのシステムであって、第31項に記載の産生細胞と、部位特異的リコンビナーゼシステムと、置換用の標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列とを含む、システム。
【0068】
第33項:前記部位特異的リコンビナーゼシステムはFLP-FRTまたはCre-loxリコンビナーゼシステムである、第32項に記載のシステム。
【0069】
第34項:前記産生細胞における元の標的核酸断片はマーカー遺伝子を含んでいるか、マーカー遺伝子と連結されており、および/または、前記産生細胞における元のエンベロープタンパク質コード配列はマーカー遺伝子と連結されており、かつ置換用の標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列に連結されているマーカー遺伝子は前記産生細胞における元のマーカー遺伝子と異なる、第32項に記載のシステム。
【0070】
第35項:前記マーカー遺伝子は、真核細胞に使用される耐性遺伝子配列、代謝経路スクリーニング遺伝子、蛍光タンパク質マーカー遺伝子、レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせである、第34項に記載のシステム。
【0071】
第36項:前記耐性遺伝子配列は、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子からなる群より選ばれるものである、第35項に記載のシステム。
【0072】
第37項:前記代謝経路スクリーニング遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(Dihydrofolate reductase)、グルタミン合成酵素(Glutamine synthetase)、チミジンキナーゼ(Thymidine kinase)をコードする遺伝子からなる群より選ばれるものである、第35項に記載のシステム。
【0073】
第38項:前記蛍光タンパク質マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(dsRed)、チェリー蛍光タンパク質(mcherry)、シアン蛍光タンパク質(ECFP)、黄色蛍光タンパク質(EYFP)および蛍光タンパク質の他の変異由来タンパク質をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである、第35項に記載のシステム。
【0074】
第39項:前記レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子は、ルシフェラーゼ(luciferase)、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、クロラムフェニカルアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenical acetyltransferase)をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである、第35項に記載のシステム。
【0075】
第40項:第31項に記載の産生細胞を提供することと、部位特異的リコンビナーゼシステムを用いて、産生細胞における元の標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列を置換用の標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列に置換することとを含む、レトロウイルス産生細胞における標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質を置換するための方法。
【0076】
第41項:前記部位特異的リコンビナーゼシステムはFLP-FRTまたはCre-loxリコンビナーゼシステムである、第40項に記載の方法。
【0077】
第42項:前記産生細胞における元の標的核酸断片はマーカー遺伝子を含んでいるか、マーカー遺伝子と連結されており、および/または、前記産生細胞における元のエンベロープタンパク質コード配列はマーカー遺伝子と連結されており、かつ置換用の標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質コード配列に連結されているマーカー遺伝子は前記産生細胞における元のマーカー遺伝子と異なる、第40項に記載の方法。
【0078】
第43項:前記マーカー遺伝子は、真核細胞に使用される耐性遺伝子配列、代謝経路スクリーニング遺伝子、蛍光タンパク質マーカー遺伝子、レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせである、第42項に記載の方法。
【0079】
第44項:前記耐性遺伝子配列は、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子からなる群より選ばれるものである、第43項に記載の方法。
【0080】
第45項:前記代謝経路スクリーニング遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(Dihydrofolate reductase)、グルタミン合成酵素(Glutamine synthetase)、チミジンキナーゼ(Thymidine kinase)をコードする遺伝子からなる群より選ばれるものである、第43項に記載の方法。
【0081】
第46項:前記蛍光タンパク質マーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(dsRed)、チェリー蛍光タンパク質(mcherry)、シアン蛍光タンパク質(ECFP)、黄色蛍光タンパク質(EYFP)および蛍光タンパク質の他の変異由来タンパク質をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである、第43項に記載の方法。
【0082】
第47項:前記レポーター遺伝子検出に使用されるプロテアーゼ遺伝子は、ルシフェラーゼ(luciferase)、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、クロラムフェニカルアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenical acetyltransferase)をコードする遺伝子配列からなる群より選ばれるものである、第43項に記載の方法。
【0083】
第48項:第40項に記載のレトロウイルス産生細胞における標的核酸断片および/またはエンベロープタンパク質を置換するための方法によって得られたレトロウイルス産生細胞。
【0084】
第49項:発現誘導システムの誘導物質を第23~31項のいずれか1項に記載の産生細胞または第48項に記載の産生細胞に添加することと、
得られた標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを回収して精製することとを含む、標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターを産生するための方法。
【0085】
第50項:前記誘導物質はテトラサイクリンもしくはテトラサイクリン誘導体、および/または、Cumateならびにその機能的類似体である、第49項に記載の方法。
【0086】
第51項:前記テトラサイクリン誘導体はドキシサイクリンである、第50項に記載の方法。
【0087】
第52項:第49項に記載の方法によって調製された標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクター。
【0088】
第53項:標的核酸断片を細胞に送達するための試薬の調製における、第23~31項のいずれか1項に記載の産生細胞、第48項に記載の産生細胞、または、第52項に記載の標的核酸断片を担持するレトロウイルスベクターの使用。
【0089】
第54項:レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列と水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)のコード配列とを宿主細胞に導入し、前記gag、polおよびrev遺伝子、ならびにVSV-Gコード配列のうちの1つ以上の転写は、Tet-On発現誘導システムの単独制御、またはTet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下にあり、Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、および/またはVSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列、TRE3GCuO配列またはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、VSV-Gの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロン、TREadv配列-イントロン、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、レンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞を調製する方法。
【0090】
第55項:Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列またはTRE3GCuO配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、第54項に記載の方法。
【0091】
第56項:前記レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列とVSV-Gコード配列が宿主細胞のゲノムに組み込まれる、第54項に記載の方法。
【0092】
第57項:SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列とVSV-Gコード配列とを宿主細胞のゲノムに組み込む、第56項に記載の方法。
【0093】
第58項:Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、gag、polの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ前記宿主細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は2~8コピー/細胞であり、前記宿主細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は1:1~4:1である、第56項に記載の方法。
【0094】
第59項:前記宿主細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は4~6コピー/細胞であり、前記宿主細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は2:1~3:1である、第58項に記載の方法。
【0095】
第60項:SBトランスポゾンシステムまたはPBトランスポゾンシステムを用いて、レンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列とVSV-Gコード配列とを宿主細胞のゲノムに組み込んだ後、同じトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに組み込むか、または、一過性トランスフェクション法を用いて、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット配列を前記宿主細胞のゲノムにさらに導入する、第56項に記載の方法。
【0096】
第61項:レンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞であって、前記パッケージング/産生細胞はレンチウイルスのgag、polおよびrev遺伝子の配列と水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)のコード配列とを含み、前記gag、polおよびrev遺伝子、ならびにVSV-Gコード配列のうちの1つ以上の転写は、Tet-On発現誘導システムの単独制御、またはTet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御下にあり、Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、および/またはVSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列、TRE3GCuO配列またはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、VSV-Gの転写はTREadvCuO配列、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、および/または、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロン、TREadv配列-イントロン、TREadvCuO配列-イントロン、TRE3G配列-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、レンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0097】
第62項:前記レンチウイルスのgag遺伝子の配列、および/または、pol遺伝子の配列、および/または、rev遺伝子の配列、および/または、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-G)のコード配列が前記パッケージング/産生細胞のゲノムに組み込まれる、第61項に記載のレンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0098】
第63項:Tet-On発現誘導システムの単独制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gコード配列の転写はTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3G配列-イントロンの制御下にあり、Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列またはTRE3GCuO配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ、gag、polの転写は真核プロモーター-イントロンまたはTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にある、第61項に記載のレンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0099】
第64項:Tet-OnおよびCumate発現誘導システムの二重制御の場合、revの転写はTRE3G配列の制御下にあり、VSV-Gの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、gag、polの転写はTRE3GCuO配列-イントロンの制御下にあり、かつ前記パッケージング/産生細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は2~8コピー/細胞であり、前記パッケージング/産生細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は1:1~4:1である、第61項に記載のレンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0100】
第65項:前記パッケージング/産生細胞のゲノムにおけるgag/pol遺伝子の挿入コピー数は4~6コピー/細胞であり、前記パッケージング/産生細胞のゲノムに挿入されたgag/polとVSV-Gとのコピー数の比は2:1~3:1である、第64項に記載のレンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0101】
第66項:2020年4月13日に中国普通微生物菌種保管センターに寄託番号CGMCC No.19674で寄託された、第61項に記載のレンチウイルスベクターを産生するためのパッケージング/産生細胞。
【0102】
第67項:第61~66項のいずれか1項に記載のパッケージング/産生細胞を、レンチウイルスベクターの産生に適した条件で培養することを含む、レンチウイルスベクターの産生方法。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、実施例で使用されるいくつかのプラスミドのパターンを示す図である。
図2図2は、実施例2においてSBおよびPBトランスポゾンシステムの転座特異性の検証を示す図である。横軸は細胞継代数であり、縦軸は様々な同時トランスフェクトされた組み合わせ細胞のEGFP陽性の割合(図2A)およびEGFP蛍光強度中央値(MFI)(図2B)である。
図3図3は、実施例2においてレンチウイルスベクターを安定的に産生する産生細胞を構築するフローチャートを示す図である。
図4図4は、実施例2においてSBおよびPBトランスポゾンシステムの異なる組み合わせにより構築されたレンチウイルス安定産生細胞のウイルス産生能の検出結果を示す図であり、ここで、横軸は構築された産生細胞の番号であり、縦軸はウイルストランスフェクション力価を検出するLuciferase実験のRLU値である。
図5図5は、実施例3において単一のレンチウイルスパッケージング遺伝子のウイルス産生能に対する異なる調節配列の影響を示す図である。図はウイルス力価検出結果を示るものである。横軸はテストされる異なる調節配列の名前であり、縦軸はウイルストランスフェクション力価を検出するLuciferase実験のRLU値である。異なる調節配列の制御下にあるrev(図5A)、VSV-G(図5B)およびgag/pol(図5C)の誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の検出結果。
図6図6は、実施例3において異なる調節配列の最適化された組み合わせによって調節されたrev、VSV-Gおよびgag/polの発現、ならびに誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の比較を示す図である。図は、ウイルス力価検出結果を示すものである。横軸は異なる調節配列を有するプラスミドの組み合わせであり、縦軸はウイルストランスフェクション力価を検出するLuciferase実験のRLU値である。
図7図7は、実施例4において宿主細胞ゲノムに組み込まれた単一遺伝子のコピー数が細胞のウイルス産生能に及ぼす影響を示す図である。横軸は細胞にトランスフェクトしたときの異なるプラスミドのモル比を表し、左縦軸はウイルストランスフェクション力価を検出するLuciferase実験のRLU値であり、右縦軸は、細胞ゲノムでテストされる遺伝子の平均組み込みコピー数である。図7Aは、ゲノムに組み込まれたrtTA3G-CymR断片のコピー数がウイルス産生能に及ぼす影響を示す図であり、図7Bは、ゲノムに組み込まれたrev断片のコピー数がウイルス産生能に及ぼす影響を示す図であり、図7Cは、ゲノムに組み込まれたVSV-G断片のコピー数がウイルス産生能に及ぼす影響を示す図であり、図7Dは、ゲノムに組み込まれたgag/pol断片のコピー数がウイルス産生能に及ぼす影響を示す図である。
図8図8は、実施例4において宿主細胞ゲノムに組み込まれたgag/polおよびVSV-G断片の異なる組み込みコピー数がが細胞のウイルス産生能に及ぼす影響を示す図である。横軸は細胞にトランスフェクトしたときの異なるプラスミドのモル比を表し、左縦軸はウイルストランスフェクション力価を検出するLuciferase実験のRLU値であり、右縦軸は、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比である。
図9図9は、実施例5においてEuLV293T3rd安定レンチウイルスパッケージング細胞株の構築、スクリーニングおよび懸濁適応を示すフローチャートである。
図10図10は、実施例5においてSB16モノクローン(図10A)およびSB28モノクローン(図10B)のスクリーニング過程と、96ウェルプレート、24ウェルプレートおよび6ウェルプレートのスクリーニング結果を示す図である。横軸はLuciferase標準サンプルに対するモノクローナル細胞によるウイルスのRLU検出結果の比(2に基づく指数として表される)であり、縦軸は各データ間隔におけるモノクローナル細胞の数である。図中、点線・・・・はすべてのモノクローナルサンプルのRLUの比の平均値であり、ボックスは検出結果に基づいてスクリーニングおよび取得されたモノクローナル細胞株である。
図11図11は、実施例5においてHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法による、懸濁培養に適応したモノクローナルパッケージング細胞株のウイルス産生能の検出結果を示す図である。ここで、横軸は検出される細胞の番号であり、縦軸はウイルストランスフェクション力価に対応するLuciferase検出実験のRLU値である。
図12図12は、接着培養による高収量モノクローナルパッケージング細胞株のウイルス産生力価に対する、異なるレンチウイルスパッケージング遺伝子プラスミドの組み合わせの一過性トランスフェクションの効果を示す図である。横軸は、一過性にトランスフェクトされたレンチウイルスパッケージング遺伝子の組み合わせを表し、ここで、「-」は非誘導条件を表し、「+」は誘導条件を表す。縦軸は、ウイルストランスフェクション力価に対応するLuciferase検出実験のRLU値である。実線は、293T細胞を一過性にトランスフェクトすることによって得られた陽性対照のウイルス産生力価を表す。点線は、各細胞による誘導ウイルス産生に対する陽性対照のウイルス産生力価を表す。
図13図13は、懸濁培養による高収量モノクローナルパッケージング細胞株のウイルス産生力価に対する、異なるレンチウイルスパッケージング遺伝子プラスミドの組み合わせの一過性トランスフェクションの効果を示す図である。横軸は、一過性にトランスフェクトされたレンチウイルスパッケージング遺伝子の組み合わせを表し、ここで、「-」は非誘導条件を表し、「+」は誘導条件を表す。縦軸は、ウイルストランスフェクション力価に対応するLuciferase検出実験のRLU値である。実線は、293T細胞を一過性にトランスフェクトすることによって得られた陽性対照のウイルス産生力価を表す。点線は、各細胞による誘導ウイルス産生に対する陽性対照のウイルス産生力価を表す。
図14図14は、実施例7で構築した異なる標的核酸断片を担持する安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生能と、一過性トランスフェクション法によるウイルス産生能との比較を示す図である。横軸は検出されるトランスファーベクタープラスミドの数であり、縦軸はウイルストランスフェクション力価に対応するLuciferase検出実験のRLU値である。
図15図15は、無血清懸濁培養条件下での、実施例7で構築された安定レンチウイルス産生細胞の誘導および漏出(リーク)ウイルス産生力価を示す図である。横軸において、「-」は非誘導条件を表し、「+」は誘導条件を表す。縦軸はウイルストランスフェクション力価に対応するLuciferase検出実験のRLU値である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下の実施例を提供して、本発明の技術案を説明する。以下の実施例は、本発明の範囲および精神を限定するものと解釈されるべきではない。
【0105】
実施例1:プラスミドの構築方法
以下の実施例で使用されるDNA断片のPCR増幅、DNA断片の制限酵素消化、DNA断片のゲル回収、2つ以上のDNA断片のT4 DNAリガーゼライゲーション、ライゲーションコンピテントセルの形質転換、プラスミドミニプレップおよび同定などの分子クローニング技術は、すべて当技術分野で周知のものであった。以下の実施例において、PCR酵素(Thermo、F-530S)、制限酵素(NEB)、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen、15224041)、DNA断片ゲル回収キット(Omega、D2500-02)、プラスミドミニキット(TIANGEN、DP105-03)、コンピテントセル(XL-10 Gold、HuNanfenghui Biotech Co.、Ltd.、JZ011)を使用した。SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:18で示される核酸配列は、GenScriptによって合成され、本開示のプラスミドの構築に使用され、プラスミドの配列決定および同定は、Invitrogenによって行われた。以下の実施例で使用されるいくつかのプラスミドのマップを図1に示す。表1は、プラスミド構築のためのプライマー情報を示す。表2は、配列SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:31の配列のエレメント組成を示す。表3は、プラスミドの機能エレメントの説明である。表4は、本開示で構築されるプラスミドの番号および対応する名前を示す。以下の実施例に含まれる各プラスミドが採用する機能エレメントの配列情報は、本開示を実施するための一例であり、当業者は、以下の実施例に用いられるプラスミド上の各機能エレメント配列を同様の生物学的機能を有する他のエレメント配列に置換することにより本開示の効果が得られると予想することができる。前記同様の生物学的機能を有する他のエレメント配列は、例えば、骨格配列(複製起点(replication origin)、耐性遺伝子など)、消化部位配列、トランスポゾン反復配列、誘導システム応答エレメント配列、インシュレーター(Insulator)配列、プロモーター配列、イントロン配列、ポリアデニル酸シグナル(PolyA)配列、異なるコドンに最適化された遺伝子配列、上記の各機能エレメントの配列および遺伝子配列の変異体、ならびに各機能エレメントの配列および遺伝子配列のクローニング位置とクローニング配列とクローニング方向を含むが、これらに限定されない。具体的な構築方法は、以下に示す。
【0106】
1.プラスミド18BF007および18BF004の構築:合成配列SEQ ID NO:2(2900bp)および配列SEQID NO:3(1386bp)をNotIおよびAsiSIで消化し、それぞれプラスミド18BF003(配列SEQ ID NO:1、1893bp)のNotIおよびAsiSI制限部位に連結して、それぞれプラスミド18BF007および18BF004を構築した。
【0107】
2.プラスミド18BF011および18BF063の構築:プラスミド18BF007をMluIおよびSphIで消化し、1730bp断片をゲルにより回収し、18BF003プラスミドのMluIおよびSphI制限部位に連結して、プラスミド18BF011を構築した。合成配列SEQ ID NO:4(915bp)をMluIおよびClaIで消化し、18BF007のMluIおよびClaI制限部位に連結し、CMVプロモーターを置換して、プラスミド18BF063を構築した。
【0108】
3.プラスミド18BF072、18BF071、19BF249、19BF248、19BF247、19BF246、18BF070および18BF069の構築:pRSV-Rev(Addgene、#12253)をテンプレートとして、C-rev-F(SEQ ID NO:34)およびC-rev-R(SEQ ID NO:35)をプライマーとして、rev遺伝子断片(380bp)をPCR増幅した後、ClaIおよびXhoIで消化し、プラスミド18BF063のClaIおよびXhoI制限部位に連結して、プラスミド18BF072を構築した。合成配列SEQID NO:5(887bp)、配列SEQ ID NO:6(897bp)および配列SEQ ID NO:7(852bp)をMluIおよびClaIで消化し、プラスミド18BF072のMluIおよびClaI制限部位に連結して、TRE3GCuO-BGI断片を置換して、それぞれプラスミド18BF071、19BF249および19BF248を構築した。プラスミド18BF072、18BF071、19BF249および19BF248をBstBIで消化し、それぞれ4147bp(18BF072)、4119bp(18BF071)、4129bp(19BF249)および4084bp(19BF248)断片をゲルにより回収し、T4リガーゼで連結して、それぞれプラスミド19BF247、19BF246、18BF070および18BF069を構築した。
【0109】
4.プラスミド18BF068、18BF067、19BF245、19BF244、19BF243、19BF242、18BF066、18BF065および19BF254の構築:pMD2.G(Addgene、#12259)をテンプレートとして、C-VSVG-F(SEQ ID NO:32)およびC-VSVG-R(SEQ ID NO:33)をプライマーとして、VSV-G遺伝子断片(1565bp)をPCR増幅した後、ClaIおよびXhoIで消化し、プラスミド18BF063のClaIおよびXhoI制限部位に連結して、プラスミド18BF068を構築した。合成配列SEQID NO:5(887bp)、配列SEQ ID NO:6(897bp)および配列SEQ ID NO:7(852bp)をMluIおよびClaIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF068のMluIおよびClaI制限部位に連結し、TRE3GCuO-BGI断片を置換して、プラスミド18BF067、19BF245および19BF244を構築した。プラスミド18BF068をClaIおよびXhoIで消化し、1550bp断片をゲルにより回収し、プラスミド19BF247、19BF246、18BF070および18BF069のClaIおよびXhoI制限部位にそれぞれ連結し、rev遺伝子を置換して、それぞれプラスミド19BF243、19BF242、18BF066および18BF065を構築した。合成配列SEQID NO:8(887bp)をSpeIおよびPvuIIで消化し、プラスミド18BF068のAvrIIおよびPmeI制限部位に連結して、プラスミド19BF254を構築した。
【0110】
5.プラスミド18BF074、19BF131、19BF130、19BF251、19BF250、19BF126、19BF129、19BF128および18BF076の構築:pMDLg/pRRE(Addgene、#12251)をテンプレートとして、C-RRE-F(SEQ ID NO:36)およびC-RRE-R(SEQ ID NO:37)をプライマーとして、RRE断片(400bp)をPCR増幅し、C-GagPol-F(SEQ ID NO:38)およびC-GagPol-R(SEQ ID NO:39)をプライマーとして、gag/pol遺伝子断片(4336bp)をPCR増幅した後、XbaIとXhoIおよびEcoRIとXbaIでそれぞれ2つのDNA断片を消化し、プラスミド18BF007のEcoRIおよびXhoI制限部位に連結して、プラスミド18BF074を構築した。合成配列SEQID NO:4(915bp)、配列SEQ ID NO:5(887bp)、配列SEQ ID NO:6(897bp)および配列SEQ ID NO:7(852bp)をMluIおよびEcoRIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF074のMluIおよびEcoRI制限部位に連結し、CMV-BGI断片を置換して、プラスミド19BF131、19BF130、19BF251および19BF250を構築した。プラスミド18BF074、19BF131、19BF130および19BF250をBstBIで消化し、それぞれ8758bp(18BF074)、8494bp(18BF131)、8466bp(19BF130)および8421bp(19BF250)断片をゲルにより回収し、T4リガーゼで連結して、それぞれプラスミド19BF126、19BF129、19BF128および18BF076を構築した。
【0111】
6.プラスミド19BF257、19BF256、19BF075および19BF074の構築:合成配列SEQ ID NO:9(633bp)および配列SEQ ID NO:10(1496bp)をClaIとXhoIおよびSpeIとAgeIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF007のClaIおよびXhoI制限部位、ならびにAvrIIおよびAgeI制限部位にこの順に連結して、プラスミド19BF073を構築した。合成配列SEQ ID NO:11(1979bp)をMluIおよびAgeIで消化し、プラスミド18BF007のMluIおよびAgeI制限部位に連結し、CMV-BGI-MCS-pA断片を置換して、プラスミド18BF008を構築した。合成配列SEQ ID NO:12(768bp)および配列SEQ ID NO:13(765bp)をClaIおよびXhoIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF008のClaIおよびXhoI制限部位にそれぞれ連結して、プラスミド18BF085および18BF084を構築した。合成配列SEQ ID NO:10(1496bp)をSpeIおよびAgeIで消化し、プラスミド18BF085および18BF084のAvrIIおよびAgeI制限部位にそれぞれ連結して、プラスミド19BF257および19BF256を構築した。プラスミド19BF073をSpeIおよびAgeIで消化し、3821bp断片をゲルにより回収し、プラスミド18BF085および18BF084のAvrIIおよびAgeI制限部位にそれぞれ連結して、プラスミド19BF075および19BF074を構築した。
【0112】
7.プラスミド18BF019および18BF031の構築:合成配列SEQ ID NO:15(1044bp)および配列SEQ ID NO:14(1320bp)をBamHIとXhoIおよびXhoIとBglIIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF011のBamHIおよびBglII制限部位に連結して、プラスミド18BF019を構築した。合成配列SEQ ID NO:16(1806bp)および配列SEQ ID NO:14(1320bp)をBamHIとXhoIおよびXhoIとBglIIでそれぞれ消化し、プラスミド18BF011のBamHIおよびBglII制限部位に連結して、プラスミド18BF031を構築した。
【0113】
8.プラスミド18BF094、19BF255、18BF091、18BF096および19BF252の構築:プラスミド18BF071および19BF254をPacIおよびAvrIIでそれぞれ消化し、DNA断片1762bpおよび3838bpをゲルによりそれぞれ回収し、回收された2つの断片をプラスミド18BF004のPacIおよびAvrII制限部位にそれぞれ連結して、プラスミド18BF094および19BF255をそれぞれ構築した。プラスミド18BF068をPacI、AvrIIおよびPvuIで消化し、DNA断片2975bpをゲルにより回収し、回收されたDNA断片をプラスミド18BF004のPacIおよびAvrII制限部位に連結して、プラスミド18BF091を構築した。プラスミド18BF074をPacIおよびPmeIで消化し、DNA断片6428bpをゲルにより回収し、プラスミド18BF004のPacIおよびPmeI制限部位に連結して、プラスミド18BF096を構築した。プラスミド19BF074をSpeIおよびPmeIで消化し、DNA断片6513bpをゲルにより回収し、プラスミド18BF004のSpeIおよびPmeI制限部位に連結して、プラスミド19BF252を構築した。
【0114】
9.プラスミド19BF081、19BF217および19BF218の構築:pRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPRE(Addgene、#12252)をテンプレートとして、hPGK-F(SEQ ID NO:40)およびhPGK-R(SEQ ID NO:41)をプライマーとして、PGK遺伝子断片(706bp)をPCR増幅し、pGL3-Basic(Promega、E1751)をテンプレートとして、Luc-F(SEQID NO:42)およびLuc-R(SEQ ID NO:43)をプライマーとして、luciferase遺伝子断片(1728bp)をPCR増幅した後、MluIとBamHI(538bp断片をゲルにより回収)およびBamHIとXhoIでそれぞれ2つのDNA断片を消化し、プラスミド19BF126のMluIおよびXhoI制限部位に連結し、元のプラスミドDNA断片を置換して、プラスミド18YYH26を構築した。HepG2(ATCC HB-8065)細胞および健康なヒト末梢単核細胞(PBMC)の全RNAをTRIzol(ThermoFisher 15596026)で抽出し精製した。SuperScript IV(ThermoFisher 18090010)の指示に従って、HepG2とPBMCの混合全RNAをテンプレートとして、cDNAライブラリーを作製した。当該cDNAライブラリーをテンプレートとして、F8V1-F(SEQ ID NO:44)およびF8V1HA-R(SEQ ID NO:45)をプライマーとして、F8cHA遺伝子断片(PCR産物の長さが7116bpであり、DNA配列決定により、18bp~7070bpのPCR産物は、NM_000132.3配列の172bp~7224bpと同一である)をPCR増幅した後、ClaIおよびXhoIで消化し、プラスミド19BF126のClaIおよびXhoI制限部位に連結し、元のプラスミドDNA断片を置換して、プラスミド19BF215を構築した。プラスミド19BF215をテンプレートとして、F8V1F(SEQ ID NO:44)とFP-BDDF8-R(SEQ ID NO:47)およびFP-BDDF8-F(SEQ ID NO:46)とF8V1HA-R(SEQ ID NO:45)をプライマーとして、2つのDNA断片2317bpおよび2154bpをPCR増幅した。この2つのDNA断片を融合PCRによって連結し、F8V1F(SEQ ID NO:44)およびF8V1HA-R(SEQ ID NO:45)をプライマーとして、PCR増幅して、BDDF8cHA(4434bp遺伝子断片を得た。その後、ClaIおよびXhoIで消化し、プラスミド19BF126のClaIおよびXhoI制限部位に連結し、元のプラスミドDNA断片を置換して、プラスミド19BF216を構築した。合成配列SEQ ID NO:18(3610bp)をSpeIおよびAgeIで消化し、プラスミド18BF004のSpeIおよびAgeI制限部位に連結して、プラスミド19BF080を構築した。合成配列SEQ ID NO:17(1320bp)をXhoIおよびBglIIで消化し、プラスミド19BF080のXhoIおよびBamH I制限部位に連結して、プラスミド19BF214を構築した。プラスミド18YYH26、19BF215および19BF216をPac IおよびXho Iでそれぞれ消化し、DNA断片2272bp、7792bpおよび5110bpをゲルによりそれぞれ回収し、回収された断片をプラスミド19BF214のPacIおよびXho I制限部位にそれぞれ連結して、プラスミド19BF081、19BF217および19BF218をそれぞれ構築した。
【0115】
10.プラスミド18BF022、18BF033および19BF078の構築:合成配列SEQ ID NO:17(1320bp)をXho IおよびBgl IIで消化し、プラスミド18BF007のXho IおよびBgl II制限部位に連結して、プラスミド18BF022を構築した。プラスミド18BF022をMlu I、Age IおよびPvu Iで消化し、DNA断片3052bpをゲルにより回収し、プラスミド18BF004のMlu IおよびAge I制限部位に連結して、プラスミド18BF033を構築した。合成配列SEQ ID NO:18(3610bp)をSpe IおよびAge Iで消化し、プラスミド18BF007のSpe IおよびAge I制限部位に連結し、元のプラスミドDNA断片を置換して、プラスミド19BF077を構築した。プラスミド19BF081をPac IおよびNde Iで消化し、DNA断片3598bpをゲルにより回収し、プラスミド19BF077のPac IおよびNde I制限部位に連結して、プラスミド19BF078を構築した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
実施例2:SBおよびPB二重トランスポゾンシステムを使用したレンチウイルス産生細胞株の構築
1.SBおよびPBトランスポゾンシステムの特異性の検証
SBおよびPB二重トランスポゾンシステムを用いてレンチウイル産生細胞株を構築する前に、SBおよびPBトランスポゾンシステムの特異性、つまり、SBおよびPBトランスポザーゼがそれぞれのトランスポゾン結合配列のみを認識できるかどうかを実証する必要がある。特異性検証実験は、以下のように行った。EGFPを担持するSB/PBトランスポゾンプラスミド(18BF022/18BF033)およびSB/PBトランスポザーゼプラスミド(18BF019/18BF031)を293T細胞にそれぞれトランスフェクトし、そして、連続継代で293T細胞におけるEGFPシグナル損失率を検出することにより、2セットのトランスポゾンシステムが交差して機能するかどうかを評価した。具体的な手順は次の通りである。
【0121】
293T細胞(ATCC、CRL3216)を37℃、5%CO2の雰囲気で培養し、培地は10%FBS(ExCell、11H116)を添加したDMEM完全培地(DMEM(Sigma、D6429)を用いた。293T細胞を6ウェルプレート(Corning、3516)に1ウェルあたり8E5細胞で播種した。24時間培養した後、「MolecμLar Cloning: A Laboratory Manual(Fourth edition)Chapter15、Michael R. Green、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2012」に記載のリン酸カルシウムトランスフェクションプロトコールに従って0.12mol/Lの塩化カルシウム、1xHEPESバッファー、および5.5μgの全プラスミド量を含むトランスフェクション試薬を調製し、当該トランスフェクション試薬200μLを各ウェルに加えた。ここで、SBおよびPBのトランスポゾンプラスミドはそれぞれ18BF022および18BF033であり、レポーター遺伝子は両方ともEGFPであった。SBおよびPBトランスポザーゼプラスミドは、それぞれ18BF019および18BF031であった。トランスポゾンプラスミドおよびトランスポザーゼプラスミドは、モル質量10:1でリン酸カルシウム同時トランスフェクトした。実験では、合計6つの同時トランスフェクションの組み合わせが設定された。つまり、(1)SBトランスポゾンとSBトランスポザーゼ(18BF022+18BF019)、(2)PBトランスポゾンおよびPBトランスポザーゼ(18BF033+18BF031)、(3)SBトランスポゾンおよびPBトランスポザーゼ(18BF022+18BF031)、(4)PBトランスポゾンおよびSBトランスポザーゼ(18BF033+18BF019)、(5)SBトランスポゾンと空のプラスミド(18BF022+18BF003)、(6)PBトランスポゾンと空のプラスミド(18BF033+18BF003)であった。6時間トランスフェクトした後、培地を新しいDMEM完全培地に交換した。24時間トランスフェクトした後、細胞をパンクレアチン(Sigma、T4799)で消化し、フローサイトメトリー(ACEA、NovoCyte3130)を用いて、細胞のEGFP陽性の割合と蛍光強度の中央値(MFI)を検出し、世代P1のデータとして記録された。その後、細胞をスクリーニング圧力なしの条件下で培養し、3日ごとに継代維持し、EGFP陽性の割合とMFI値を継代ごとにフローサイトメトリーで検出し、合計5回の連続継代を記録した。
【0122】
図2は、SBおよびPBの特異性の検証の結果である。横軸は細胞継代数であり、縦軸は様々な同時トランスフェクトされた組み合わせ細胞のEGFP陽性の割合(図2A)およびEGFP蛍光強度中央値(MFI)(図2B)である。図に示すように、トランスフェクション後のサンプルの6つの群のP1世代におけるEGFP陽性の割合は61.1%~79.1%であり、MFIは32685~44827であった。その後、スクリーニング圧力なしの連続培養中、EGFP陽性の割合は急速に減少したが、SB実験群18BF022+18BF019とPB実験群18BF033+18BF031のEGFPの減少はP2世代以降大幅に減少し、そして、P5世代では、EGFP陽性の割合は31.3%(SB実験群)と25.8%(PB実験群)で安定しており、MFIは18007(SB)と9085(PB)で安定していた。SBトランスポゾンとPBトランスポザーゼクロスオーバー群、PBトランスポゾンとSBトランスポザーゼクロスオーバー群、SBトランスポゾンとトランスポザーゼなし、およびPBトランスポゾンとトランスポザーゼなしの4つの実験群は、EGFP陽性の割合とMFI値は、継続的に減少し、そして、P5世代では、EGFP陽性の割合は約0.5%に減少し、MFIは3000以下に減少した。4つの実験群の結果に有意差はなっかた。この結果は、SBおよびPBトランスポゾンシステムが哺乳動物細胞を効率的かつ安定にトランスフェクトできること、および両方のシステムが特異的であることを示している。
【0123】
2.SBおよびPB二トランスポゾンシステムを用いて異なるプラスミドの組み合わせによるレンチウイルス産生細胞株の構築
本実施例では、遺伝子断片を細胞ゲノムに効率的に組み込むことができ、互いに干渉しないSBおよびPBトランスポゾンシステムの特性を利用して、レンチウイルスパッケージングに使用される遺伝子rev、VSV-G、gag/pol、標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセット、および発現誘導システムアクチベーターrtTAおよび/またはリプレッサーCymRタンパク質コード配列を、さまざまな組み合わせで、SBおよび/またはPBトランスポゾンシステムを使用して、1回または2回トランスフェクトし、細胞スクリーニングを行って、レンチウイルスベクターを安定して産生する産生細胞株を構築した。実験フローは図3を参照する。本実施例で説明した組み合わせは一例に過ぎず、当業者であれば、本実施例に示す方法で他の組み合わせを容易に実現することができる。この実施例では、hPGK-Luciferase-IRES-EGFP配列を標的核酸断片として、本開示に記載の安定レンチウイルス産生細胞株の構築方法を開発し検証した。当該方法は、原則として標的核酸断片によって制限されなく、任意の標的核酸断片であってもよい。
【0124】
細胞株のトランスフェクションおよびスクリーニング実験の第1ラウンド:3mlDMEM完全培地中、293T細胞を培養皿あたり1.5E6細胞で60mm培養皿に播種し、37℃、5%CO2で24時間培養した。PEI方法により、以下のように細胞トランスフェクションを行った。トランスフェクションを行う時、60mm培養皿あたり9.5μgの全プラスミド量を含有する500μLのトランスフェクション試薬を添加した。各実験群におけるプラスミドの添加量は表5を参照する。全プラスミド量とPEI MAX(Polysciences、24765-1)との質量比は1:4であった。プラスミドとPEI MAXを均一に混合し、15分間静置した後、培養皿に加えた。3時間トランスフェクトした後、培地をDMEM完全培地に交換し、トランスフェクション操作を終了した。24時間トランスフェクトした後、細胞をパンクレアチンで消化し、すべて100mm培養皿(Corning、430167)に播種した。表5に示すスクリーニング耐性によって細胞薬剤スクリーニングを実施し、細胞株が安定するまで、連続的に薬剤圧力下で少なくとも3継代のスクリーニングを実施した。ここで、ハイグロマイシン(Hygromycin、Sangon Biotech A600230-0001)のスクリーニング濃度が200μg/mlであった。細胞が安定して成長した後、薬剤を除去し、細胞をDMEM完全培地に導入して培養した。
【0125】
細胞株のトランスフェクションおよびスクリーニング実験の第2ラウンド:表5には細胞株のトランスフェクションおよびスクリーニング実験の第1ラウンドで構築した細胞株を示し、そのうちの遺伝子組み換えヒト胚性腎細胞株EuLV-F2は、2020年4月13日に中国普通微生物菌種保管センターに寄託番号CGMCC No. 19674で寄託された(CGMCC、住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号)。EuLV-F2、EuLV-F3、EuLV-F4、EuLV-F5、EuLV-F7、EuLV-F8、EuLV-F9、EuLV-F10という8種類の細胞株を60mm培養皿8枚に1.5E6細胞で播種し24時間培養した。PEI方法により、細胞トランスフェクションを行い、各実験群のプラスミドの添加量を表6に示す。24時間トランスフェクトした後、細胞をパンクレアチンで消化し、すべて100mm培養皿に播種した。表6に示すスクリーニング耐性によって細胞薬剤スクリーニングを実施し、細胞株が安定するまで、連続的に薬剤圧力下で少なくとも3継代のスクリーニングを実施した。ここで、ピューロマイシン(Puromycin、aladdin P113126)のスクリーニング濃度が2.5μg/mlであり、ブラストサイジン(ブラストサイジンSとも言う。英語名:Blasticidin-S HCl。aladdin B139600)のスクリーニング濃度は10μg/mlであった。細胞が安定して成長した後、薬剤を除去し、細胞をDMEM完全培地に導入して培養した。細胞株のトランスフェクションおよびスクリーニング実験の第2ラウンドにおいて、EuLV-F2-S2、EuLV-F3-S3、EuLV-F4-S4、EuLV-F5-S5、EuLV-F7-S7、EuLV-F8-S8、EuLV-F9-S9およびEuLV-F10-S10との8種類の細胞株を構築した。ここで、遺伝子組み換えヒト胚性腎細胞株EuLV-F2-S2は、2020年4月13日に中国普通微生物菌種保管センターに寄託番号CGMCC No.19675で寄託された(CGMCC、住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号)。
【0126】
HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法により、上記の安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生能を検出した。DMEM完全培地中、スクリーニング後に得られた12種類の細胞株EuLV-NC-SB、EuLV-NC-PB、EuLV-F1、EuLV-F2-S2、EuLV-F3-S3、EuLV-F4-S4、EuLV-F5-S5、EuLV-F6、EuLV-F7-S7、EuLV-F8-S8、EuLV-F9-S9、EuLV-F10-S10を6ウェルプレート(Corning、3516)に1ウェルあたり8E+05細胞で播種し、37℃、5%CO2で培養した。24時間培養した後、培地を、1μg/mlのDOX(塩酸ドキシサイクリン(DOX)、Sangon Biotech、A600889)、200μg/mlのCumate(Aladdin、I107765)および5mmol/Lの酪酸ナトリウム(Sigma、303410)のインデューサーを含むDMEM完全培地に交換し、ウイルスの産生を誘導した。293T細胞にプラスミドを一過性にトランスフェクションして作製したレンチウイルスを陽性対照として設定し、具体的な方法は次の通りである。293T細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり8E+05細胞で播種し、24時間培養した後、トランスフェクション試薬(DNAの全量は5μgであり、19BF081:pMD2.G(Addgene 12259):pMDLg/PRRE(Addgene 12251):pRSV-Rev(Addgene 12253)=1:1:1:1(モル比)、全DNAとPEI MAXとの質量比は1:4であった。)を添加した。2時間トランスフェクトした後、インデューサー(最終濃度5mmol/Lの酪酸ナトリウム、1μg/mlのDOX、200μg/mlのCumate)を上記のように添加した。HT1080細胞のLuciferaseウイルス力価検出方法は次のように行った。インデューサーを上記実験群と対照群の細胞に添加して、24時間後、HT1080細胞を、DMEM完全培地中、96ウェルプレート(Corning 3916)に1ウェルあたり1E4細胞で播種した。48時間ウイルス産生誘導をした後、レンチウイルスを含有する培地を回収し、遠心分離機により14000rpmで10分間遠心分離してウイルス上清を回収した。ウイルスサンプルを添加する1時間前に、HT1080細胞の培地を、8μg/mlのpolybrene(Sigma、H9268)を含有するDMEM完全培地と交換した。その後、96ウェルプレートの各ウェルに検出対象のウイルス液を50μLずつ、陰性対照ウェルにDMEM完全培地を50μLずつ添加し、サンプルと対照のウェルを2連ずつ用意した。48時間培養した後、Steady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega、E2610)キットを使用説明書(Promega、FB037)に従って使用して、各ウェルの相対光単位RLUを検出した。ここで、検出機器は蛍光マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer VictorV)であった。
【0127】
図4は、異なるSB、PBトランスポゾンシステムおよび異なるレンチウイルスパッケージング遺伝子の組み合わせによって構築された安定レンチウイルス産生細胞がウイルスを産生するように誘導された後、HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって測定されたウイルストランスフェクション力価のRLU値の検出結果である。横軸はプラスミドの異なる組み合わせによって構築された細胞株であり、縦軸は作製したレンチウイルスをHT1080細胞に感染させた後のLuciferaseの相対発現値RLUである。結果は、異なるSBおよび/またはPBトランスポゾン、ならびに、異なるレンチウイルスパッケージング遺伝子の組み合わせを使用することにより、安定レンチウイルス産生細胞株を迅速に構築することができ、さまざまな組み合わせによって構築された安定細胞株が誘導された後にウイルス力価を明らかに検出できることに対して、トランスフェクション中、スクリーニング後のNC-SBおよびNC-PB細胞の非トランスポザーゼ対照ではウイルス力価を検出できず、RLU値はバックグラウンド対照NCと有意な差はなかったことを示している。安定レンチウイルス産生細胞株の構築において、発現誘導システムアクチベーターおよび/またはプレッサー、ならびにレンチウイルスパッケージング遺伝子rev、VSV-G、gag/polを含有するパッケージング細胞が一般に最初に構築され、次いで、当該パッケージング細胞に基づく、標的核酸断片を担持するレンチウイルスゲノム転写カセットを含有する最終的な安定レンチウイルス産生細胞が構築される。EuLV-F2-S2細胞は、レンチウイルスベクターの最適なパッケージング能力(4.68E+05RLU)を示すので、本開示では、好ましくは、以下のように安定レンチウイルス産生細胞株を構築した。まず、SBトランスポゾンシステムを用いて、Tet-On発現誘導システムトランスアクチベーターrtTAコード配列および/またはCumate発現誘導システムリプレッサーCymRコード配列、ならびにレンチウイルスパッケージング遺伝子rev、VSV-G、gag-pol遺伝子を含有するレンチウイルスベクターパッケージング細胞株を構築し、次に、PBトランスポゾンシステムを用いて、標的核酸断片を担持するレンチウイルスゲノム転写カセットを上記のレンチウイルスベクターパッケージング細胞株のゲノムに安定に挿入し、安定レンチウイルス産生細胞株を構築した。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
実施例3:レンチウイルス遺伝子rev、VSV-G、およびgag/polの誘導発現の最適化
この実施例では、rev、VSV-G、およびgag/pol遺伝子の誘導発現が最適化された。主な最適化条件には、(1)Tet-On発現誘導システムトランスアクチベーターrtTAの選択;(2)発現誘導システムの最適化には、Tet-On発現誘導システムに基づくTREadv、TRE3G応答エレメントの単一調節の最適化と、Tet-OnとCumateの複合発現誘導システムに基づくTREadvCuO、TRE3GCuO応答エレメントの複合調節の最適化が含まれること;ならびに、(3)スプライシング可能なイントロンが、プロモーターまたは発現誘導システムトランスの応答エレメントの3'末端と調節された核酸配列の5'末端との間に連結されているかどうかことが含まれた。上記の3つの点に基づいて、誘導応答エレメントとイントロンとの8つの組み合わせおよび2つのTet-OnトランスアクチベーターrtTAadvとrtTA3Gが設計されテストされて、レンチウイルスパッケージング遺伝子gag/pol、VSV-Gおよびrevの発現を調節し、かつさまざまな条件に基づいて、レンチウイルスの産生力価とリーク力価は最適化された。プラスミド構築情報の詳細については、実施例1を参照して説明する。具体的な手順は次の通りである。
【0131】
1.293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞の構築
293T細胞培養、PEIトランスフェクションおよびハイグロマイシンスクリーニングなどの実験手順については、実施例2を参照する。293T細胞を60mm培養皿あたり1.5E+06細胞で播種し、10%FBS(ExCell、11H116)を添加したDMEM(Sigma、D6429)完全培地中、37℃、5%CO2で培養した。24時間培養した後、PEI方法により、トランスフェクションを行い、全プラスミド量は5.5μgであった。トランスフェクションは、プラスミド19BF074:プラスミド18BF019=10:1(モル比)で行い、293T-rtTAadv-CymR細胞を得た。トランスフェクトした後、200μg/mlのハイグロマイシン薬剤のスクリーニングを少なくとも3継代行った。薬剤スクリーニングの圧力下での細胞の成長が元の293T細胞の成長と一致した後、以下の実験を行った。
【0132】
2.単一プラスミド置換方法によるrev、VSV-Gおよびgag/polの遺伝子発現調節モードのスクリーニングと最適化
293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞において、実施例1で構築された8つのrevプラスミド、8つのVSV-Gプラスミド、および9つのgag/polプラスミドで、revを発現するpRSV-Rev(Addgene、#12253)プラスミド、VSV-Gを発現するpMD2.G(Addgene、#12259)プラスミドおよびgag/polを発現するpMDLg/pRRE(Addgene、#12251)プラスミドをそれぞれ置換し、19BF081プラスミドを標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットのトランスファーベクタープラスミドとして、DOXおよびCumateインデューサーの存在下または非存在下でPEI一過性トランスフェクションによって、ウイルスを調製した。そして、HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、ウイルス産生力価およびリーク力価を評価した。各実験条件下で、誘導発現の試験プラスミドを1つだけ置換し、他の共形質転換プラスミドは非誘導発現プラスミドとした。8つのrevテストプラスミドは、18BF072、18BF071、19BF249、19BF248、19BF247、19BF246、18BF070および18BF069であり、8つのVSV-Gテストプラスミドは、18BF068、18BF067、19BF245、19BF244、19BF243、19BF242、18BF066および18BF065であり、9つのgag/polテストプラスミドは、8BF074、19BF131、19BF130、19BF251、19BF250、19BF129、19BF128、18BF076および19BF126であり、陽性対照プラスミドは、pMD2.G、pRSV-RevおよびpMDLg/pRREであった。実験手順は次の通りである。
【0133】
スクリーニングされた安定な293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞を、ウェルあたり1.5E+05細胞で24ウェルプレートに播種し、培養量は500μLであった。24時間培養した後、PEI方法によりトランスフェクションを行い、全プラスミド0.8μg、PEI3.2μgを含有するトランスフェクション混合液50μlを各ウェルに添加した。0.8μgのプラスミドにおいて、対応するrev、VSV-G、gag/polおよび19BF081プラスミドの混合モル比は1:1:1:1であった。本開示に設計されたベクターを使用して、rev最適化実験群においてpRSV-Revプラスミドのみを置換し、VSV-G実験群においてpMD2.Gプラスミドのみを置換し、gag/pol実験群においてpMDLg/pRREプラスミドのみを置換した。pMD2.G、pRSV-RevおよびpMDLg/pRREプラスミドを陽性対照群にトランスフェクトしてレンチウイルスを調製した。プラスミドおよびPEIをよく混合し、15分間放置し、24ウェルプレートに加え、各サンプルに2つのウェルを用意した。3時間トランスフェクトした後、培地を5mmol/Lの酪酸ナトリウムを含有する完全培地に交換し、1μg/mlのDOXおよび200μg/mlのCumateインデューサーを各サンプルのウェルの1つに添加し、これを誘導群とし、別のウェルに等量の培地を添加し、非誘導群とした。さらに48時間培養した後、各ウェルのウイルス上清を回収し、実施例2のHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法に従って、誘導および非誘導条件下での各サンプルのRLU値を検出した。結果は図5に示す。
【0134】
図5は、293T-rtTAadv-CymRまたは293T-rtTA3G-CymR細胞中、異なる発現誘導システム応答エレメントによって調節されること、および発現誘導システムトランスの応答エレメントの3'末端と調節された核酸配列の5'末端との間に連結されているかどうかの条件下での、レンチウイルスパッケージング遺伝子rev(図5A)、VSV-G(図5B)およびgag/pol(図5C)の誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価のLuciferase力価検出結果である。
【0135】
誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の結果に基づいて、revの好ましい調節エレメントはTREadvCuO(18BF070)、TREadvCuO-BGI(19BF249)、TRE3G(19BF246)、TRE3GCuO(19BF247)およびTRE3GCuO-BGI(18BF072)であり、より好ましくは、TRE3G、TRE3GCuOおよびTRE3GCuO-BGIであり、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、(1)TRE3G(19BF246):6.80E+05RLU、135倍および9.24E+05RLU、322倍;(2)TRE3GCuO(19BF247):6.34E+05RLU、275倍および7.79E+05RLU、279倍;(3)TRE3GCuO-BGI(18BF072):7.46E+05RLU、105倍および4.96E+05RLU、68倍であった。その中で、Tet-On単一誘導システムでは、好ましいトランスアクチベーターはrtTA3Gであり、好ましい応答エレメントはTRE3Gであり、Tet-OnとCumate複合誘導システムでは、好ましい応答エレメントはTRE3G、TRE3GCuOおよびTRE3GCuO-BGIである。
【0136】
誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の結果に基づいて、VSV-Gの好ましい調節エレメントはTREadvCuO(18BF066)、TREadvCuO-BGI(19BF245)、TRE3G-BGI(18BF067)およびTRE3GCuO-BGI(18BF068)であり、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、(1)TREadvCuO(18BF066):3.34E+05RLU、1323倍および3.35E+05RLU、974倍;(2)TREadvCuO-BGI(19BF245):5.96E+05RLU、506倍および4.62E+05RLU、886倍;(3)TRE3G-BGI(18BF067):4.22E+05RLU、110倍および4.27E+05RLU、629倍;ならびに(4)TRE3GCuO-BGI(18BF068):8.09E+05RLU、1539倍および5.76E5RLU、1260倍であった。その中で、Tet-On単一誘導システムでは、好ましいトランスアクチベーターはrtTA3Gであり、好ましい応答エレメントはTRE3G-BGIであり、Tet-OnとCumate複合誘導システムでは、好ましい応答エレメントはTREadvCuO-BGI、TRE3G-BGI、TRE3GCuO-BGIであり、より好ましい応答エレメントはTRE3GCuO-BGIである。
【0137】
誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の結果からわかるように、応答エレメント3’末端とgag/polコード配列の5’末端との間にイントロン(BGI)配列が連結されていない場合、誘導群および非誘導群のいずれにおいても、検出力価はバックグラウンド値に近い1000RLU以下であり、CMVプロモーターの下流にイントロンが存在しない場合(19BF126)、検出力価もイントロンが存在する場合(18BF074)の19.4%に減少していた。これは、プロモーターとgag/polコード配列の間に連結されたスプライシング可能なイントロン配列がgag/polコード配列の高発現のための重要な条件であることを示している。イントロンを含有するgag/polプラスミドのトランスフェクションにより、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、(1)TREadv-BGI(19BF250):8.60E+05RLU、87倍および6.43E+05RLU、135倍;(2)TREadvCuO-BGI(19BF251):9.01E+05RLU、413倍および6.21E+05RLU、326倍;(3)TRE3G-BGI(19BF130):7.53E+05RLU、257倍および7.16E+05RLU、333倍;ならびに(4)TRE3GCuO-BGI(19BF131):8.22E+05RLU、641倍および8.47E+0.5RLU、692倍;(5)CMV-BGI(18BF074):1.28E+06RULおよび1.10E+06RLUであった。gag/polコード配列の発現もrevrevによって調節されるので、gag/polコード配列の調節は必要ではなかった。上記の結果に基づいて、gag/polコード配列の好ましい調節エレメントは、CMV-BGI、TREadv-BGI、TREadvCuO-BGI、TRE3G-BGIおよびTRE3GCuO-BGIであった。その中で、Tet-On単一誘導システムでは、好ましい調節エレメントはrtTRE3G-BGIおよびCMV-BGIであり、Tet-OnとCumate複合誘導システムでは、好ましい応答エレメントはCMV-BGI、TREadv-BGI、TREadvCuO-BGI、TRE3G-BGIおよびTRE3GCuO-BGIであり、より好ましい応答エレメントはCMV-BGI、TREadvCuO-BGI、TRE3GCuO-BGIであり、さらに好ましい応答エレメントはCMV-BGIおよびTRE3GCuO-BGIである。gag/pollコード配列のプロモーターの選択に関する上記の結果に関して、当業者は、CMVプロモーター以外の当技術分野で一般的に使用される他の真核生物プロモーター(例えば、PGK、CAGGS、EF1a、RSV、SV40など)およびBGI以外の当技術分野で一般的に使用される他のイントロンの組み合わせを使用してgag/polの転写を調節すると、CMV-BGIの設計案と類似の結果を得ることができる、ことを合理的に期待することができる。
【0138】
3.上記の好ましい調節エレメントに基づくrev、VSV-Gおよびgag/pol発現プラスミドの組み合わせの総合最適化
上記の単一プラスミド置換方法によるrev、VSV-Gおよびgag/polの遺伝子発現スクリーニングと最適化の実験結果に従って、(1)rev:18BF072、19BF247および19BF246;(2)VSV-G:18BF068および18BF067;(3)gag/pol:18BF074、19BF131および19BF130プラスミドを選択して、表7に示す組み合わせに従い、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞において、レンチウイルスを調製するための上記の24ウェルプレート一過性トランスフェクション方法により、それぞれDOXおよびCumateインデューサーの存在下または非存在下でウイルスを調製した。そして、HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、ウイルス産生力価およびリーク力価を評価した。細胞播種、プラスミドの添加量と各プラスミドのモル比、PEIトランスフェクション、トランスフェクションの液体交換、ウイルス産生の誘導、およびHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出などの実験条件は、本実施例の単一プラスミド置換スクリーニング実験と同じであった。その結果は図6に示す。
【0139】
図6に示すように、誘導ウイルス産生力価および非誘導リーク力価の結果に基づいて、Tet-On単一誘導に好ましいプラスミドの組み合わせはrev:19BF246、VSV-G:18BF067、およびgag/pol:18BF074または19BF130である。18BF074プラスミドを使用した場合、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、6.83E+05RLU、45倍および7.28E+05RLU、167倍であり、19BF130プラスミドを使用した場合、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、5.20E+05RLU、24倍および6.94E+05RLU、176倍であった。実験結果は、18BF074プラスミドと19BF130プラスミドの間で誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比に有意差はなく、rtTA3GはrtTAadvトランスアクチベーターと比較して非誘導リークを有意に減少させることができることを示している。
【0140】
図6に示すように、Tet-OnとCumate複合誘導システムにおけるプラスミドの最適な組み合わせに関して、誘導後の3つの最適なウイルス産生力価RLU平均値は、サンプル番号19BF246+18BF068+19BF131、19BF246+18BF068+18BF074、および19BF247+18BF068+18BF074プラスミドの組み合わせからのものである。19BF246+18BF068+19BF131プラスミドの組み合わせを使用した場合、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、1.28E+06RLU、1935倍および1.46E+06RLU、12032倍であり、19BF246+18BF068+18BF074プラスミドの組み合わせを使用した場合、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、8.75E+05RLU、262倍および1.07E+06RLU、975倍であり、19BF247+18BF068+18BF074の組み合わせを使用した場合、293T-rtTAadv-CymRおよび293T-rtTA3G-CymR細胞における対応する誘導RLU平均値および誘導/リークウイルス産生力価比は、それぞれ、1.05E+06RLU、563倍および1.09E+06RLU、839倍であった。上記の3つのデータセットと図2のデータに基づいて、revの好ましいプラスミドは19BF246または19BF247であり、revのより好ましいプラスミドは19BF246であり、VSV-Gの好ましいプラスミドは18BF068であり、gag/polの好ましいプラスミドは19BF131および18BF074であり、gag/polのより好ましいプラスミドは19BF131であり、トランスアクチベーターは、好ましくrtTA3Gである。
【0141】
【表7】
【0142】
実施例4:細胞ゲノムにおけるrtTA-CymR、rev、VSV-Gおよびgag/pol断片の安定組み込み比率の最適化
レンチウイルスの高効率産生には、誘導後のウイルス遺伝子の高発現量と、各ウイルス遺伝子の適切な相対発現比が必要である。各遺伝子の発現量は、主にプロモーターまたは誘導応答エレメントの効率と、細胞ゲノムに組み込まれたコピー数の影響を受ける。標的核酸断片を細胞ゲノムに安定に組み込むトランスポゾンシステムの効率は、遺伝子断片の長さによって影響を受ける。標的核酸断片が長いほど、組み込み効率が低下する。したがって、標的核酸断片の長さに応じて、安定細胞株を構築する際の一過性トランスフェクション中のトランスポゾンプラスミドの比率を調整して、各断片の組み込み比率を最適化することができる。この実施例では、実施例3で最適化された1つの好ましいプラスミドの組み合わせである19BF075、19BF246、18BF068および19BF131プラスミドを例として使用した。まず、細胞株構築中の一過性トランスフェクション用のrev、VSV-Gおよびgag/pol単一パッケージング遺伝子プラスミドのモル比を調整することにより、トランスフェクションプラスミドの添加量と宿主細胞ゲノムに組み込まれたコピー数との関係、および対応する構築された細胞のウイルス産生能力が決定された。次に、細胞株構築中の一過性トランスフェクション用の単一または複数の重要な遺伝子のモル比を組み合わせて最適化することにより、最適なゲノム組み込みコピー数とモル比が決定された。この実施例で決定されたゲノム組み込みの最適比率に基づき、実施例3に示される各プロモーター/応答エレメントのウイルス産生効率、または本開示に含まれない他のプロモーター/応答エレメントの比較された発現効率に従って、他のプラスミドまたは組み合わせの最適化された挿入コピー数およびモル比を導き出すことができる。したがって、これらもこの実施例によって支持される特許請求の範囲内に入る。
【0143】
1.パッケージング細胞株のウイルス産生能に対する単一遺伝子挿入割合の調整効果
細胞培養、PEIトランスフェクションおよびハイグロマイシン薬剤スクリーニングなどの実験手順については、実施例2を参照する。293T細胞を60mm培養皿あたり1.5E+06細胞で播種し、10%FBS(ExCell、11H116)を添加したDMEM(Sigma、D6429)完全培地中、37℃、5%CO2で培養した。24時間培養した後、PEI方法により、表8に示す各種プラスミドの含有量に従ってトランスフェクションを行った(PEIとDNAとの質量比は4:1)。トランスフェクションを行った後、細胞株が安定して成長するまで、200μg/mlのハイグロマイシン薬剤のスクリーニングを少なくとも3継代行い、EuLV-R1からR17までの合計17個のレンチウイルスパッケージング細胞株を構築した。各細胞株を安定化させた後、実施例3の24ウェルプレートでのウイルスの調製方法を参照して、EuLV-R1~R17細胞株を24ウェルプレートにウェルあたり1.5E+05細胞で播種し、19BF081プラスミドをトランスファーベクタープラスミドとして使用し、PEI一過性トランスフェクションによって上記EuLV-R1~R17細胞をトランスフェクトした(19BF081プラスミド:0.28μg、空のプラスミド18BF003:0.52μg、全プラスミド0.80μg。PEIとDNAとの質量比は4:1。)。6時間トランスフェクトした後、培地を交換し、インデューサーを添加して(最終濃度1μg/mlのDOX、200μg/mlのクメートおよび5mmol/Lの酪酸ナトリウム)、ウイルス産生を誘導した。48時間後に、培養上清を回収し、HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、EuLV-R1~R17細胞のウイルス産生力価を検出した。
【0144】
EuLV-R1~R17を24ウェルプレートにウェルあたり1.5E+05細胞で播種し、48時間培養した後、細胞を回収し、ゲノムDNAを抽出し、EuLV-R1~R5細胞株のゲノムに組み込まれたrtTAおよびCymR遺伝子のコピー数、EuLV-R1およびEuLV-R6~R9細胞株のゲノムに組み込まれたrev遺伝子のコピー数、EuLV-R1およびEuLV-R10~R13細胞株のゲノムに組み込まれたVSV-Grev遺伝子のコピー数、EuLV-R1およびEuLV-R14~R17細胞株のゲノムに組み込まれたgag/pol遺伝子のコピー数をqPCR方法で完全に定量化した。具体的な方法は以下の通りである。上記の細胞株から各1.0E+06細胞を回収し、ゲノムDNA精製キット(TIANGEN、DP304-03)の説明書に従って、ゲノムgDNAを抽出し、精製されたgDNAをキット溶出バッファーで50ng/μlに調整した。プラスミド19BF074、18BF072、18BF068および18BF074をそれぞれygroR(rtTAおよびCymRのコピー数の検出)、rev、VSV-Gおよびgag/pol遺伝子の標準サンプルとして使用し、脱イオン水でそれぞれ47.9ng/μl、23.8ng/μl、30.0ng/μlおよび47.6ng/μlに希釈した。このような濃度では、各プラスミドはサンプル1マイクロリットルあたり5.0E+09コピー数に相当した。4標準サンプルをさらに1マイクロリットルあたり8.0E+06コピー数まで希釈した後、2倍勾配で1マイクロリットルあたり1.56E+04コピー数まで希釈し、4標準サンプルのこの10希釈サンプルを検出される各遺伝子のqPCR標準曲線として使用した。上記の細胞gDNAサンプルと各遺伝子のqPCR標準曲線サンプル2μlずつをqPCR試薬に加え、20μlになるまで水を添加した。ここで、qPCR試薬は、10μlのNovoStart Probe qPCR SuperMix、0.4μlのROX I色素(Novoprotein Scientific Inc.E091-01A)およびそれぞれ0.4μlの濃度10μMのフォワードおよびリバースプライマーとTaqmanプローブ(General Bio(安徽省)から合成されるものであった。プライマーおよびプローブの具体的な情報を表10に示す。HygroRのフォワードおよびリバースプライマーとプローブは、それぞれSEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53であり、revのフォワードおよびリバースプライマーとプローブは、それぞれSEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56であり、VSV-Gのフォワードおよびリバースプライマーとプローブは、それぞれSEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59であり、gag/polのフォワードおよびリバースプライマーとプローブは、それぞれSEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50であった。)を含むものであった。PCR反応は、AQプログラムの下、ABI 7900リアルタイムPCR検出器で次の手順に従って実行された。手順は、95°C 5分開始、95°C 30秒-60°C 30秒-72°C 30秒を40サイクル、および60°C 30秒であった。標準曲線とサンプルのCT値から各サンプル中の検出される遺伝子のコピー数を算出し、細胞あたり6pgのゲノムDNAから細胞あたりの遺伝子のコピー数を算出した。
【0145】
実験結果は図7に示す。横軸は、細胞を構築する際にトランスフェクトされた4つのプラスミドのモル比を表す。左縦軸は各細胞の誘導ウイルス産生力価のRLU値を表す。右縦軸は各細胞のゲノムに組み込まれたHygroR(rtTAおよびCymRのコピー数の検出)、rev、VSV-G、またはgag/pol断片のコピー数結果を表す。その結果から、以下のことが示された。(1)rtTA3G-CymR(HygroRプローブの実験結果)および細胞ゲノムに組み込まれたrev断片のコピー数の増加は、EuLVパッケージング細胞株のウイルス産生能に有意な影響を及ぼさなかった(図7Aおよび7B)。(2)ゲノムに組み込まれたVSV-Gのコピー数が細胞あたり1コピーから細胞あたり2コピーに増加すると、ウイルス産生力価は6.5E+05RLUから1.1E+06RLUに大幅に増加した。しかし、ゲノムに組み込まれたVSV-Gのコピー数が1細胞あたり4コピー以上になると、ウイルス産生力価が徐々に低下し、ゲノムに組み込まれたVSV-Gのコピー数が1細胞あたり6コピーになると、3.9E+05RLUまで低下した(図7C)。これは、誘導された発現後のVSV-Gの細胞毒性は、ゲノムに組み込まれたコピー数の増加とともに増加し、それによって、EuLVパッケージング細胞株のウイルス産生能力に影響を与える可能性があることが示されている。(3)組み込まれたgag/pol断片のコピー数は、EuLVパッケージング細胞株のウイルス産生能に正の影響を与えた。ウイルス産生力価は、ゲノムに挿入されたgag/polのコピー数の増加とともに増加し、コピー数が細胞あたり4.7コピー以上に達したときに最高のウイルス産生力価1.6E+06RLUに達し、ウイルスコピー数を6以上に連続的に増やしても産生能力をさらに高めることはできなかった(図7D)。
【0146】
2.ゲノムに組み込まれたVSV-Gおよびgag/polのコピー数および相対的な比率をさらに調整することによる、EuLVパッケージング細胞株のウイルス産生能の最適化
以上の結果から分かるように、細胞のゲノムに組み込まれたVSV-Gおよびgag/pol断片のコピー数およびモル比は、EuLVパッケージング細胞株のウイルス産生能を最適化するための鍵であり、VSV-Gおよびgag/pol断片の総トランスフェクション量とモル比をさらに最適化する必要がある。SBトランスポゾンシステムを使用してEuLVパッケージング細胞株を構築する上記の方法と一致して、表9に示す各プラスミドの含有量に基づいて、EuLV-VG1~VG5パッケージング細胞株をさらに構築した。各細胞株をハイグロマイシンでスクリーニングして安定に成長させた後、上記のレンチウイルスを24ウェルプレートで調製する方法と同様の方法を用いて、標的遺伝子プラスミドとして19BF081プラスミドを用いてウイルスを調製した。luciferaseウイルス力価はHT1080細胞によって検出された。同時に、上記のqPCR定量方法を使用して、各細胞株のゲノムDNAに組み込まれた細胞あたりのVSV-Gおよびgag/pol断片のコピー数を検出し、結果は図8に示す。
【0147】
実験結果は図8に示す。横軸は、細胞を構築する際にトランスフェクトされた4つのプラスミドのモル比を表す。左縦軸は各細胞の誘導ウイルス産生力価のRLU値を表す。右縦軸は細胞のゲノムに組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比を表す。結果は以下のように示す。EuLV-VG1~VG5細胞において、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片のコピー数が1細胞あたり5.2コピーに達し、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比は2.73に達した時(EuLV-VG2)、2.8E+06RLUの最大ウイルス産生力価に達した。組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比をさらに増加させると、パッケージング細胞のウイルス産生能が低下した。この結果から分かるように、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片のコピー数が1細胞あたり2~8コピーに達し、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比は1:1~4:1にあり、rtTA3G-CymRおよびrev断片の少なくとも1つのコピーが細胞ゲノムに組み込まれた場合、ウイルス産生力価の高いパッケージング細胞株を得ることができる。好ましくは、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片のコピー数が1細胞あたり4~6コピーに達し、細胞ゲノムに組み込まれたgag/pol断片とVSV-G断片とのコピー数の比は2:1~3:1にあり、rtTA3G-CymRおよびrev断片の少なくとも1つのコピーが細胞ゲノムに組み込まれた場合、ウイルス産生力価の高いパッケージング細胞株を得ることができる。
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
【表10】
【0151】
実施例5:EuLV293T3rdレンチウイルスパッケージング細胞株の構築およびハイスループットなモノクローナルのスクリーニング
EuLV293T3rdレンチウイルスパッケージング細胞株を構築するプロセスは、図9に示し、プラスミドトランスフェクションと細胞スクリーニング、モノクローナルスクリーニング、および懸濁適応の3つのステップを含む。実験の詳細と結果は、以下のように詳細に説明する。
【0152】
1.プラスミドトランスフェクションおよび細胞株スクリーニングによる初期EuLV293T3rdレンチウイルスパッケージング細胞株の構築
具体的な実験方法は以下の通りである。細胞培養、PEIトランスフェクションおよびハイグロマイシンスクリーニングなどの実験手順については、実施例2、3および4を参照することができる。293T(ATCC、CRL3216)細胞を60mmの培養皿に培養皿あたり1.5E+06細胞で播種し、10%FBS(ExCell、11H116)を添加した3mlのDMEM(Sigma、D6429)完全培地中、37℃、5%CO2で24時間培養した。PEIトランスフェクション法により、プラスミドのトランスフェクションを行った。ここで、全プラスミド量は5μgであり、全プラスミドに対するPEIの質量比は4:1であった。プラスミド19BF257:19BF246:18BF067:19BF130:18BF019のモル比が3:3:2:12:2でトランスフェクションを行い、EuLV293T3rd-SB16細胞を構築し、プラスミド19BF075:19BF246:18BF068:19BF131:18BF019のモル比が3:3:2:12:2でトランスフェクションを行い、EuLV293T3rd-SB28細胞を構築した。24時間トランスフェクトした後、細胞をすべて100mm培養皿に播種してさらに培養し、200μg/mlのハイグロマイシン(Sangon Biotech A600230-0001)を添加して、スクリーニングを行った。このスクリーニング圧は、細胞が安定するまで、継代培養の少なくとも3継代の間維持された。細胞が安定するかどうかは、(1)細胞の成長速度は元の293T細胞と同じであったことと、(2)構築された細胞ではSBトランスポザーゼ発現プラスミド18BF019が実質的に消失しており、ECFP陽性細胞の割合が1%以下に低下していることが示されたことと、(3)生細胞の割合は95%以上であったことに基づいて判断した。上記の基準に基づいて、Tet-On単一発現誘導システムによって調節されたEuLV293T3rd-SB16(単にSB16細胞と称する)およびTet-OnとCumate複合発現誘導システムによって調節されたEuLV293T3rd-SB28(単にSB28細胞と称する)の初期細胞株が得られた。
【0153】
2.EuLV293T3rd-SB16およびEuLV293T3rd-SB28高収量モノクローナルパッケージング細胞株のスクリーニング
具体的な実験方法は以下の通りである。SB16およびSB28高収量モノクローナル細胞株のスクリーニングプロセスは図9に示す。まずは、SB16およびSB28細胞を限界希釈法により1ウェルあたり1細胞で10枚の384ウェルプレートに播種して、1回目のスクリーニングを行った。スクリーニング基準は、(1)1つだけのモノクローナル細胞があったことと、(2)細胞形態は正常であったことと、(3)細胞の成長速度は元の293T細胞と同じであったことであった。その後、細胞を96ウェルプレート、24ウェルプレート、および6ウェルプレート培養系に増殖させたとき、各モノクローナル細胞の誘導ウイルス産生力価をHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって検出した。
【0154】
図10は、各スクリーニング段階における標準サンプルに対するモノクローナル細胞のウイルス産生力価比を示すものである。HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、モノクローナル細胞のウイルス産生力価のRLU値を検出し、500の間隔に従って0から100000までの各間隔でモノクローナル細胞の数をカウントし、横軸は各間隔の上限と標準サンプル検出のRLU値の比(2を底とする対数で表される)であり、縦軸は各統計範囲内のモノクローナル細胞の数である。図10Aは、SB16細胞株のスクリーニング結果を示し、96ウェルプレート、24ウェルプレートおよび6ウェルプレートスクリーニング手順で、それぞれ94個、30個、および9個のモノクローナル細胞が選択される。図10Bは、SB28細胞株のスクリーニング結果を示し、96ウェルプレート、24ウェルプレートおよび6ウェルプレートスクリーニング手順で、それぞれ87個、30個、および9個のモノクローナル細胞が選択される。細胞スクリーニングの具体的な手順は次の通りである。
【0155】
384ウェルプレートのモノクローナルスクリーニングに関して、具体的な実験手順は以下の通りである。上記で構築さらたSB16およびSB28初期細胞を、DMEM完全培地中、37℃、5%CO2の条件で70%コンフルエンスの単層まで培養した。限界希釈法により、細胞を384ウェルプレートに1ウェルあたり1細胞の密度で播種し、SB16およびSB28細胞をそれぞれ5枚の384ウェルプレートに播種した。細胞が壁に接着するまで2時間播種した後、細胞が1つだけのサンプルウェルを倒立顕微鏡(Olympus IX71)で観察しマークし、他のサンプルウェルは廃棄した。播種後5日目と9日目に培地を新鮮なDMEM完全培地に交換した。10日目に、コンフルエンスが50%を超えるモノクローナル細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり2E+04細胞で播種し、合計271株のSB16モノクローナル細胞と313株のSB28細胞を得た。
【0156】
96ウェルプレートモノクローナルスクリーニングに関して、具体的な実験手順は以下の通りである。384ウェルプレートのモノクローナルスクリーニング手順から得られた細胞を24時間培養した後、細胞を2枚の新しい96ウェルプレートに1ウェルあたり5E+03および2.5E+04細胞で播種し、継代培養およびレンチウイルスの誘導ウイルス産生検出に使用した。モノクローナル細胞の誘導ウイルス産生の手順では、293T細胞を一過性にトランスフェクトする方法により、レンチウイルスの陽性対照を調製した。その方法は、以下の通りである。293T細胞を1ウェルあたり2.5E+04細胞で96ウェルプレートに播種し、24時間培養した後、PEI方法により、プラスミドを一過性にトランスフェクトしてウイルスを調製した(DNAの全量は0.3μgであり、プラスミド19BF081:pMD2.G:pMDLg/PRRE:pRSV-Rev=1:1:1:1(モル比)、全DNAとPEI MAXとの質量比は1:4であった。)。2時間トランスフェクトした後、インデューサー(最終濃度2mmol/Lの酪酸ナトリウム、1μg/mlのDOX、200μg/mlのCumate)添加し、さらに48時間培養した後、4500rpmで15分間遠心分離して、ウイルス上清を回収した。96ウェルプレートでモノクローナル細胞によるウイルス産生を誘導する方法は次の通りである。96ウェルプレートに1ウェルあたり2.5E+04細胞で播種した上記の検出されるモノクローナル細胞をさらに24時間培養した後、トランスフェクション試薬を添加した(DNAの全量は0.3μgであり、19BF081の添加量は上記陽性対照と同じであり、残存プラスミド量は18BF003で0.3μgとし、全DNAとPEI MAXとの質量比は1:4であった。)。その後、ウイルス産生を誘導し、ウイルス上清を回収する方法は、陽性対照の調製方法と同じであった。実施例2に記載のHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、陽性対照およびウイルス産生誘導用モノクローナル細胞の各サンプルのRLU値を検出した。次に、Luciferaseウイルス力価の結果から、陽性対照よりもRLU値の高いモノクローナル細胞を、RLU値の高いものからRLU値の低いものの順に選択し、87個のSB16モノクローナル細胞と94個のSB28モノクローナル細胞を得た。
【0157】
24ウェルプレートと6ウェルプレートのモノクローナルスクリーニングに関して、具体的な実験手順は以下の通りである。24ウェルプレートおよび6ウェルプレートにおける高収量モノクローナル細胞のスクリーニングプロセスは、前述の96ウェルプレートにおけるモノクローナルスクリーニングと実質的に同じであった。継代中、24ウェルプレートの播種密度は1ウェルあたり2E+04細胞であり、6ウェルプレートの播種密度は1ウェルあたり2E+05細胞であった。モノクローナル細胞のウイルス産生を誘導する手順では、24ウェルプレートの播種密度は1ウェルあたり1E+05細胞であり、6ウェルプレートの播種密度は1ウェルあたり8E+05細胞であった。PEI方法でプラスミドをトランスフェクトする場合、24ウェルプレートのウェルあたりのDNAの全量は1.2μgであり、6ウェルプレートのウェルあたりのDNAの全量は5μgであり、その他のトランスフェクション条件、例えば、各プラスミドの割合、およびDNAとPEIの比は、上記の実験方法と一致していた。HT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法の結果によると、24ウェルプレートでのモノクローナルスクリーニングの段階では、87個のSB16および94個のSB28モノクローナル細胞からそれぞれ30個の高収量パッケージング細胞株がスクリーニングされた。6ウェルプレートでのモノクローナルスクリーニング段階では、30個のSB16および30個のSB28モノクローナル細胞からそれぞれ9個の高収量パッケージング細胞株がスクリーニングされた。最終的にスクリーニングされたモノクローナル細胞の番号を表11に示す。
【0158】
【表11】
【0159】
3.高収量EuLV293T3rdモノクローナルパッケージング細胞の懸濁適応とウイルスパッケージング能の検出
具体的な実験方法は以下の通りである。表11で得られた18個のモノクローナル細胞を、5E+05細胞/mlおよびボトルあたり20mlで、懸濁適応のために125ml振盪フラスコ(Corning 431143)に播種した。培地はFreestyle293(Gibco(登録商標)FreeStyleTM293Expression Medium 12338018)であった。培養条件は37℃、5%CO2、振とう距離1.9cmのシェーカー、回転数140rpmであった。細胞は、2.5E+06細胞/mlまで成長した時点で継代培養し、明らかな細胞クラスターがなくなり、倍加時間が24時間未満になるまで継続的に培養して、上記18個の細胞の懸濁培養細胞株を得た。懸濁培養SB16およびSB28細胞株のウイルス調製方法は以下の通りである。上記の細胞を2.5E+06細胞/mlの密度まで懸濁培養した後、細胞を1000rpmで3分間遠心分離することにより回収し、新鮮なFreestyle293培地に再懸濁し、4E+06細胞/mlの細胞密度に調整した。細胞懸濁液を1ウェルあたり0.5mlで96ディープウェルプレートに導入し、DMEM培地で調製したPEIトランスフェクション試薬50μLを加えた。ここで、PEIトランスフェクション試薬は、7.5μgのPEI MAXと2.5μgの全DNA(1μgの18BF081と1.5μgの18BF003を含む)を含んだ。混合後、細胞を培養シェーカーでさらに培養した。培養条件は37℃、5%CO2、振とう距離1.0cmのシェーカー、回転数1000rpmであった。2時間後、インデューサー(最終濃度2mmol/Lの酪酸ナトリウム、1μg/mlのDOX、200μg/mlのCumate)添加し、さらに48時間培養した後、1500rpmで15分間遠心分離して、ウイルス上清を回収した。その後、実施例2に記載のHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、ウイルス力価を検出した。検出結果は図11に示す。横軸はモノクローナル番号であり、縦軸はRLUで表される力価の検出結果である。結果から分かるように、すべてのモノクローナル細胞が無血清懸濁培養条件に適応でき、懸濁培養条件下で19BF081プラスミドを一時的にトランスフェクトしたさまざまなモノクローナル細胞のウイルス産生力価は9.96E+04~4.68E+06RLUで、平均力価は8.56E+05RLU、中央値は5.7E+05RLUであった。
【0160】
実施例6:EuLV293T3rd最適ウイルス産生パッケージング細胞株の最適化度の検出
トランスファーベクタープラスミドの一過性トランスフェクションによるレンチウイルスのパッケージングの時点で、実施例5でスクリーニングされた最適なウイルス産生モノクローナルパッケージング細胞株を、構成的に活性なプロモーターによって調節されるrev、gag/pol、およびVSV-Gレンチウイルスパッケージングの他の発現プラスミドで同時形質転換し、ウイルスパッケージング遺伝子の発現の継続的な増加がパッケージング細胞のウイルス産生力価をさらに増加させることができるかどうかを検出し、それによって、細胞株の各パッケージング遺伝子断片が飽和に達したかどうか、および各ウイルスパッケージング遺伝子断片の相対比率が最適化されたかどうかを判断した。上記の実験のために、実施例5から6つの高収量接着細胞株および5つの高収量懸濁細胞株を選択した。細胞株の名前と番号は表12に示す。
【0161】
【表12】
【0162】
接着培養高収量細胞株のレンチウイルスパッケージング遺伝子の補充実験は、以下の通りである。表12に示す接着高収量細胞株をDMEM完全培地中、37℃、5%CO2で培養した。その後、各細胞を6ウェルプレートの異なるウェルに1ウェルあたり8E+05細胞で播種し、実施例2のリン酸カルシウムトランスフェクション方法に従ってトランスフェクションを行った。トランスフェクション中、0.12mol/Lの塩化カルシウム、1xHEPESバッファー、および6.8μgの全プラスミド量を含有する200μLのトランスフェクション試薬を各ウェルに添加した。表13は、各実験群におけるプラスミドの組み合わせおよび含有量を示す。ここで、18BF084プラスミドはrtTAadvトランスアクチベーターを発現し、19BF081は標的核酸断片hPGK-Luciferase-IRES-EGFPを担持するレンチウイルスゲノムを転写するトランスファープラスミドであり、pMD2.G(Addgene、12259)はVSV-Gタンパク質を発現し、pMDLg/pRREは、gagおよびpolタンパク質を発現し、pRSV-Revはrevタンパク質を発現した。6時間トランスフェクトした後、培地を5mMの酪酸ナトリウムを含有するDMEM完全培地に交換し、1μg/mlのDOXおよび200μg/mlのCumateインデューサーを、表13に従ってインデューサーを追加する必要があるサンプルに追加した。さらに48時間培養した後、実施例2に記載のHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、各接着細胞株のレンチウイルス産生能を検出した。その結果は図12に示す。横軸は各実験群におけるプラスミドのトランスフェクションの組み合わせを表し、縦軸は対応する実験群の感染HT1080細胞におけるLuciferase発現のRLU値を表す。図中の点線は、この条件で19BF081トランスファープラスミドを一過性にトランスフェクトした接着細胞株の誘導ウイルス産生力価のRLU値を表し、図中の実線は293Tの陽性対照の結果を表す。結果は、レンチウイルスパッケージング遺伝子が補充されていない場合、6個のパッケージング細胞のトランスフェクション力価が9.9E+05RLU~5.8E+06RLUの間であったことを示している。rev、VSV-G、gag/polなどのレンチウイルスパッケージング遺伝子を補充した後、ほとんどの高収量細胞株(例えば、EuLV293T3rd-SB28-1A3およびEuLV293T3rd-SB28-1C2)は、ウイルス産生力価を有意に増加させていない。ウイルス産生能の上昇が大きい細胞は、初期ウイルス産生力価が低い細胞であった。rtTA、rev、VSV-G、gag/pol単一遺伝子または複数の遺伝子をさらに補充した後、ほとんどの細胞株でウイルス産生力価が低下し、gag/pol遺伝子をさらに補充したことで恩恵を受けたのは一部の細胞株のみであった。これは、スクリーニングされた細胞株のほとんどのパッケージング遺伝子は完全に最適化されており、ウイルスパッケージング遺伝子をさらに追加すると、逆に細胞株のウイルス産生力価が低下することを示している。なお、gag/polの挿入コピー数および発現量が細胞株のウイルス産生力価にとって重要であることも証明されている。
【0163】
懸濁培養高収量細胞株のパッケージング遺伝子の補充実験は、以下の通りである。表12に示す懸濁細胞株をFreeStyle(Gibco(登録商標) FreeStyleTM 293 Expression Medium、12338018)培地で培養した。培養条件は37℃、8%CO2、振とう距離1.9cmのシェーカー、回転数140rpmであった。トランスフェクションの2時間前に、各懸濁細胞株を96ウェルディープウェルプレートにウェルあたり4E+06細胞で1mlの培養液量で播種した。実施例5のPEI法に従って細胞をトランスフェクトし、2.5μgの全プラスミド量および7.5μgのPEIを含有する100μLのトランスフェクションサンプルを、トランスフェクション中に各ウェルに添加した。各実験群のプラスミドの添加量を表14に示す。トランスフェクトした後、ディープウェルプレートを振とう距離1mmのシェーカー、回転数1000rpm/minの環境で培養した。3時間トランスフェクトした後、最終濃度2mMの酪酸ナトリウムを添加し、1μg/mlのDOXおよび200μg/mlのCumateインデューサーを、表14に従ってインデューサーを追加する必要があるサンプルに追加した。さらに48時間培養した後、実施例2に記載のHT1080細胞Luciferaseレンチウイルス力価検出方法によって、各懸濁細胞のレンチウイルス産生能を検出した。その結果は図13に示す。横軸は各実験群におけるプラスミドのトランスフェクションの組み合わせを表し、縦軸は対応する実験群の感染HT1080細胞におけるLuciferase発現のRLU値を表す。図中の点線は、この条件で19BF081トランスファープラスミドを一過性にトランスフェクトした懸濁細胞株の誘導ウイルス産生力価のRLU値を表し、図中の実線は293Tの陽性対照の結果を表す。結果は、レンチウイルスパッケージング遺伝子が補充されていない場合、5個の懸濁細胞のRLUが8.9E+05RLU~4.0E+06RLUの間であったことを示している。rev、VSV-G、gag/polなどのレンチウイルスパッケージング遺伝子を補充した後、ほとんどの高収量細胞は、ウイルス産生力価を有意に増加させていない。ウイルス産生能の上昇が大きい細胞は、初期ウイルス産生力価が低い細胞であった。rtTA、rev、VSV-G、gag/pol単一遺伝子または複数の遺伝子をさらに補充した後、ほとんどの細胞株でウイルス産生力価が低下し、gag/pol遺伝子をさらに補充したことで恩恵を受けたのは一部の細胞のみであった。これは、スクリーニングされた細胞株のほとんどのパッケージング遺伝子は完全に最適化されており、ウイルスパッケージング遺伝子をさらに追加すると、逆に細胞株のウイルス産生力価が低下することを示している。
【0164】
【表13】
【0165】
【表14】
【0166】
実施例7:高収量パッケージング細胞株EuLV293T3rd-SB16-3D3およびEuLV293T3rd-SB28-1C2に基づくさまざまなレンチウイルス産生細胞株の構築
この実施例では、3つの異なる標的核酸断片を含有するトランスファーベクタープラスミドをPBトランスポゾンシステムによってEuLV293T3rd-SB16-3D3(以下、単に3D3と称する)およびEuLV293T3rd-SB28-1C2(以下、単に1C2と称する)パッケージング細胞のゲノムに安定に組み込み、そして、それぞれスクリーニングして、3つの異なるレンチウイルスを安定に産生する6つのレンチウイルス産生細胞株を取得した。標的核酸断片を担持するウイルスゲノム転写カセットの上記の3つのトランスファーベクタープラスミドは、それぞれ、(1)19BF081(hPGK-Luciferase-IRES-EGFP、レンチウイルスゲノムの長さ5.7kbp)、(2)19BF218(Bタンパク質ドメインが削除された凝固因子8配列、CMV-BDDF8cHA-IRES-EGFP、レンチウイルスゲノムの長さ8.5kbp)、(3)19BF217(凝固因子8全長配列、CMV-F8cHA-IRES-EGFP、レンチウイルスゲノムの長さ11.2kbp)であった。上記の産生細胞株のレンチウイルス産生力価の検出を容易にするために、上記の標的核酸断片はすべてIRES-EGFP配列と連結された。プラスミドを構築する詳細な方法に関しては、実施例1を参照することができる。その後、接着培養条件下で、これらの安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生能力を、同じトランスファープラスミドで293Tを一過性にトランスフェクトしてレンチウイルスを産生する方法によって得られた細胞の能力と比較した。その後、3D3および1C2に基づいて構築され、19BF081トランスファーベクターを担持する2種類の細胞を選択して、無血清培地で懸濁培養し、そして、そのような条件で、誘導されたウイルス産生力価と非誘導下でのリークウイルス産生力価を検出した。本開示に記載の安定レンチウイルス産生細胞株を構築するための方法は、標的核酸断片を担持する任意の安定レンチウイルス産生細胞株を構築するに用いられることができる。
【0167】
3D3および1C2細胞に基づいて、3つの異なるレンチウイルスを安定に産生する産生細胞株が構築され、具体的な手順は次の通りである。3D3および1C2細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり1.5E+06細胞で3mlのDMEM完全培地に播種し、37℃、5%CO2で24時間培養した後、PEI方法によってトランスフェクトした。ここで、全プラスミド量は5.5μgであり、トランスファープラスミドとPBトランスポザーゼプラスミド(18BF031)とのモル比は10:1であり、全PEI量は22μgであった。ここで、トランスファープラスミドは、それぞれ、19BF081、19BF218および19BF217であった。24時間トランスフェクトした後、2.5μg/mlのピューロマイシン(Puromycin、aladdin P113126)を添加して、細胞株が安定するまで少なくとも3回の継代をスクリーニングした。6つの安定レンチウイルス産生細胞株、すなわち、3D3-19BF081、3D3-19BF218、3D3-19BF217、1C2-19BF081、1C2-19BF218、および1C2-19BF217が得られた。
【0168】
安定レンチウイルス産生細胞株の方法によって得られた細胞のウイルス産生能と、一過性トランスフェクション法によって得られた細胞のウイルス産生能との比較について、具体的な手順は以下の通りである。上記で得られた6種類の細胞を6ウェルプレートに1ウェルあたり8E+05細胞でDMEM完全培地に播種し、37℃、5%CO2で24時間培養した後、培地を新たなDMEM完全培地に置換し、そして、インデューサー(最終濃度2mmol/Lの酪酸ナトリウム、1μg/mlのDOX、および200μg/mlのCumate)を添加した。さらに48時間培養した後、4500rpmで15分間遠心分離してウイルス上清を回収した。293T細胞を一過性にトランスフェクトすることによるウイルスの調製方法は、実施例5に記載の陽性対照レンチウイルスの調製方法と同じであり、各トランスファーベクタープラスミドのモル比pMD2.G:pMDLg/PRRE:pRSV-Rev=1:1:1:1であり、トランスファーベクタープラスミドはそれぞれ19BF081、19BF218および19BF217であった。
【0169】
上記のウイルスサンプルのトランスフェクション力価は、HT1080細胞のEGFP陽性率方法に基づいて検出された。具体的な手順は次の通りである。HT1080細胞(ATCC CCL-121)を、293Tと同じ培養条件で、1ウェルあたり5E+04細胞で24ウェルプレート(Corning 3524)に播種した。24時間後、少なくとも3つのウェルを採取し、トリプシンで消化してカウントし、他のウェルを8μg/mLのpolybrene(Sigma H9268)を含有する500μLのDMEM完全培地に交換した。ウイルス溶液をDMEM完全培地でさまざまな検出濃度に希釈した後、100μLの希釈したウイルス溶液をHT1080細胞の培養に使用した24ウェルプレートに添加した。各ウイルスサンプルについて、さまざまな希釈濃度が検出された。陰性対照に100μLのDMEM完全培地を添加して均一に混合し、48時間培養した。その後、各ウェルのEGFP陽性率をフローサイトメトリー(Aisen NovoCyte Flow Cytometer)で検出した。EGFP陽性率が15%~30%の希釈率を選択し、次の式に従ってレンチウイルス力価を計算した。レンチウイルス力価(TU/ml)=希釈倍率×(24ウェルプレートの細胞カウント結果×陽性率)/0.1ml。実験結果は図14に示す。結果は、安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生方法によるウイルス産生力価は、293T細胞を一過性にトランスフェクトする方法によるウイルス産生力価よりも有意に高いことを示している。2つの異なる誘導発現戦略に基づいて構築された3D3および1C2細胞から構築された6つの最終産生細胞株のウイルス産生力価はすべて、対応する一過性にトランスフェクトされた293T陽性対照のウイルス産生力価よりも有意に高かった。19BF081(5.7kb)、19BF217(11.2kb)および19BF218(8.5kb)トランスファーベクターを担持する3つの3D3安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生力価は、それぞれ、1.11E6 TU(EGFP)/ml、2.33E5 TU(EGFP)/mlおよび1.05E6 TU(EGFP)/mlであり、それぞれ一時的にトランスフェクトされた陽性対照の6.14倍、8.27倍、および5.01倍高かった。上記の3つのトランスファーベクターを担持する3つの1C2安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生力価は、それぞれ、1.59E6 TU(EGFP)/ml、3.55E5 TU(EGFP)/mlおよび1.81E6 TU(EGFP)/mlであり、それぞれ一時的にトランスフェクトされた陽性対照の8.81倍、12.6倍および8.62倍高かった。また、安定レンチウイルス産生細胞株のウイルス産生力価は、長い標的核酸断片を発現する場合、一過性にトランスフェクトされた対照のウイルス産生力価よりも最大1桁以上高かったため、より幅広い産業用途がある。例えば、遺伝子治療を使用して血友病を治療する際に、全長凝固因子8を発現するレンチウイルスベクターを構築する(例えば、19BF217)。
【0170】
懸濁培養条件で、3D3-19BF081および1C2-19BF081細胞のウイルス産生力価およびリークウイルス力価が検出され、具体的な手順は次の通りである。実施例5に記載の細胞懸濁適応法に従って、3D3-19BF081および1C2-19BF081細胞を懸濁培養に適応させた。懸濁細胞が2.5E+06細胞/mlまで成長した時点で、細胞を1000rpmで3分間遠心分離することにより回収し、新鮮なFreestyle293培地で、細胞密度を4E+06細胞/mlに調整した。細胞懸濁液を5ml/チューブで50ml遠沈管に導入し、インデューサー(最終濃度2mmol/Lの酪酸ナトリウム、1μg/mlのDOX、200μg/mlのCumate)を添加した誘導群とDMEM培地を添加した非誘導群に設定した。その後、シェーカーで48時間培養した後、4500rpmで15分間遠心分離して、ウイルス上清を回収した。陽性対照は、同じ懸濁培養条件で培養した293T細胞を一過性にトランスフェクトすることによって調製されたウイルスであり、具体的な手順は次の通りである。プラスミドトランスフェクションはPEIトランスフェクション方法で行い、全プラスミド量は12.5μgであり、全プラスミドに対するPEIの質量比は4:1であり、プラスミド19BF081:pMD2.G:pMDLg/PRRE1:pRSV-Revのモル比は1:1:1:1であった。6時間トランスフェクトした後、最終濃度2mmol/Lとなるように酪酸ナトリウムを添加し、遠心分離によりウイルスサンプルが回収されるまで培養を続けた。その後、実施例2に記載のHT1080細胞Luciferaseウイルス力価検出方法によって、各サンプルのRLU値を検出した。その結果は図15に示す。結果は、3D3-19BF081および1C2-19BF081細胞が懸濁培養条件にうまく適応し、誘導後にそれぞれ7.08E6RLUおよび1.08E7RLUのウイルス産生力価に達し、懸濁した293T細胞を一過性にトランスフェクトすることによって調製されたウイルスの3.72倍および5.8倍であったことを示している。非誘導条件下では、2種類の細胞のリークウイルス産生力価のRLU蛍光値は、19BF081ベクターを含有しない元の細胞および293T細胞のバックグラウンドRLU値と実質的に同じであり、この実験の結果に基づいて、3D3-19BF081および1C2-19BF081細胞の誘導/リークウイルス産生力価の比率は、それぞれ5853倍および41646倍であることが測定された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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