(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】迅速な試料処理及び分析のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20241028BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241028BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241028BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241028BHJP
【FI】
G01N35/00 B
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2019564950
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 US2018034443
(87)【国際公開番号】W WO2018218053
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513208191
【氏名又は名称】ノースウエスタン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTHWESTERN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】633 Clark Street,Evanston,Illinois 60208,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マクフォール,サリー モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ケルソ,デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】リード,ジェニファー リン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストバーグ,トム
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】加々美 一恵
【審判官】渡▲辺▼ 純也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/210006号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0244522号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
(a)加熱器のプラットフォーム、
(b)各々の厚みが1mm以下の2つの表面間に挟まれる1mm以下の厚さのウェルを含む試料容器、
(c)前記加熱器のプラットフォームに取り付けられる第一及び第二の加熱器であって、反対の向きにあり、それによって前記第一及び第二の加熱器間に隙間が生じるもの
であって、前記第一及び第二の加熱器間の前記隙間は、第一の温度帯であるもの、
(d)前記加熱器のプラットフォームに取り付けられる第三及び第四の加熱器であって、反対の向きにあり、それによって前記第三及び第四の加熱器間に隙間が生じるもの
であって、前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間は、第二の温度帯であるもの、
(e)往復モーターであって、前記試料容器が、(i)前記第一及び第二の加熱器間の前記隙間内に存在する位置、ならびに(ii)前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間内に存在する位置の間で前記加熱器のプラットフォームを物理的に移動させるもの、ならびに
(f)前記加熱器のプラットフォームに配置された加熱器サーボであって、(1)前記第一及び第二の加熱器間の隙間を狭めることにより前記試料容器が前記第一の温度帯にあるとき前記試料容器を締め付け、(2)前記第一及び第二の加熱器間の隙間を広げることにより前記試料容器の締め付けを解除し、前記往復モーターによって前記加熱器のプラットフォームを前記試料容器に対して移動できるようにし、(3)前記第三及び第四の加熱器間の隙間を狭めることにより前記試料容器が前記第二の温度帯にあるとき前記試料容器を締め付け、(4)前記第三及び第四の加熱器間の隙間を広げることにより前記試料容器の締め付けを解除し、前記往復モーターによって前記加熱器のプラットフォームを前記試料容器に対して移動できるようにする加熱器サーボを含み
、
前記第一の温度帯及び前記第二の温度帯は、異なる温度で維持され、
前記装置は、冷却部を含まない、
装置。
【請求項2】
さらに、前記往復モーターを指示する制御装置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
試料を処理する方法であって、
(a)請求項1または2に記載の装置の前記試料容器に試料を入れること、及び
(b)所定のスケジュールに従って、前記加熱器のプラットフォームを、前記試料容器が(i)前記第一及び第二の加熱器間の前記隙間内に存在する位置、ならびに(ii)前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間内に存在する位置の間を往復させることを含む前記方法であり、
前記第一及び第二の加熱器間の前記隙間は、前記試料容器で、前記試料を前記第一及び第二の加熱器間の前記隙間の温度にするのに十分な時間維持され、前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間は、前記試料容器で、前記試料を前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間の温度にするのに十分な時間維持される、前記方法。
【請求項4】
検出器を更に含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
(a)さらに、前記往復モーターを指示する制御装置を含む、
または
(b)前記検出器が蛍光光度計または画像センサーである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
試料を処理及び分析する方法であって、
(a)請求項4または5に記載の装置の前記試料容器に試料を入れること、及び
(b)所定のサイクルに従って、前記試料容器が、(i)第一及び第二の加熱器間の前記隙間内に存在する位置、(ii)前記第三及び第四の加熱器間の前記隙間内に存在する位置、ならびに(iii)前記検出器に隣接する位置の間で前記加熱器のプラットフォームを往復させることを含む前記方法であり、
前記試料容器は、前記第一及び第二の加熱器の間の前記隙間で、前記試料を前記第一及び第二の加熱器の間の前記隙間の温度にするのに十分な時間維持され、前記試料容器は、前記第三及び第四の加熱器の間の前記隙間で、前記試料を前記第三及び第四の加熱器の間の前記隙間の温度にするのに十分な時間維持され、前記試料及び/または試料容器の特性は、前記検出器にて得られる、前記方法。
【請求項7】
(a)前記特性が蛍光強度である、
または
(b)前記試料が、前記第一及び第二の加熱器、前記第三及び第四の加熱器、ならびに前記検出器を通して10サイクル以上、サイクルを繰り返される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月24日に出願された米国仮特許出願第62/510,503号の優先権を主張する。当該仮出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に提供するのは、試料の迅速な処理及び分析のための装置及び方法である。具体的には、あるアッセイで、少量の試料(例えば、核酸試料)を、装置内で異なる温度帯に曝露し(例えば、接触させ)、該試料を処理(例えば、増幅)し、及び/または分析(例えば、定量)する。
【背景技術】
【0003】
核酸試験は、多くの他の用途の中でも感染症の検出及び診断方法を提供する。最も広く実践されておりかつ最も信頼できる核酸試験方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を採用している。PCRの制限は、反応溶液に30℃以上異なり得る複数の温度を通してサイクルを行うのに1時間以上かかることである。定量またはリアルタイムPCR(qPCRまたはRT-PCR)は、蛍光読み取り値を各サーマルサイクル中またはその間に取る必要があるため、さらに時間がかかる。qPCRを行うために必要なこの長い処理時間及び電気エネルギーのため、診断が迅速かつ正確に行われる必要がある多くの状況ではこれは使用されない。
【0004】
通常のqPCRプロトコルは、30~50サイクルの試験液の95℃への加熱、次いで60℃への冷却、その後の蛍光読み取りを行う。通常のサーマルサイクラーでは、その加熱及び冷却のステップは、熱電冷却器(TEC)を備えたプラスチック製のチューブで行われ、これは、チューブの壁を通して試験液の熱を出し入れする。かかるサーマルサイクラーは、PCR手順に非効率性をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に提供するのは、試料の迅速な処理及び分析のための装置及び方法である。具体的には、あるアッセイで、少量の試料(例えば、核酸試料)を、装置内で異なる温度帯に曝露し(例えば、接触させ)、該試料を処理(例えば、増幅)し、及び/または分析(例えば、定量)する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料容器、第一の温度帯、第二の温度帯、及び往復機構を含む装置であり、ここで、該往復機構は、該試料容器を該第一及び第二の温度帯間で物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料容器、第一の温度帯、第二の温度帯、及び往復機構を含む装置であり、ここで、往復機構は、該第一及び第二の温度帯を該試料容器と接触するように物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、該第一及び第二の温度帯は各々、該往復機構が該試料容器を第一及び第二の温度帯に物理的に動かした場合に(または、該温度帯を該試料容器に物理的に動かした場合に)該試料容器が接触させられる(またはごく接近する(例えば、<5mm、<4mm、<3mm、<2mm、<1mm、<0.9mm、<0.8mm、<0.7mm、<0.6mm、<0.5mm、<0.4mm、<0.3mm、<0.2mm、<0.1mm))温度調節装置(例えば、加熱器)を含む。いくつかの実施形態では、温度調節装置は、ある温度帯の固定温度を維持する。いくつかの実施形態では、温度調節装置は、一定温度またはほぼ一定温度(例えば、<10%の変動、<5%の変動、<2%の変動、<1%の変動、<0.5%の変動、<0.2%の変動、<0.1%の変動)を使用中(例えば、試料容器との接触時、試料容器への隣接時、試料容器がない場合等)に維持するように構成される、任意の構成要素である。いくつかの実施形態では、装置はさらに、検出帯を含み、該往復機構は、該試料容器を、該第一の温度帯、該第二の温度帯、及び該検出帯の間を物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、該温度帯のうちの一方または両方は、検出帯でもある。いくつかの実施形態では、装置はさらに、検出帯を含み、該往復機構は、該第一の温度帯、該第二の温度帯、及び該検出帯を物理的に移動させ、試料に接触させる。いくつかの実施形態では、該検出帯は、蛍光光度計または画像センサーを含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、サーボを含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、ステッピングモーターを含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、DCモーター及びポジションセンサーを含む。いくつかの実施形態では、該試料容器は、液体試料を含むことが可能なウェルを含む。いくつかの実施形態では、該試料容器は、液体試料を吸収することが可能な多孔質材料を含む。いくつかの実施形態では、該試料容器は、毛細管力によって充填することが可能なチャンネルを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料(例えば、標的核酸を含む試料)を処理する方法であって、(a)本明細書に記載の装置の試料容器に試料を入れること及び(b)該試料容器を、該第一及び第二の温度帯に所定の時間暴露する(例えば、接触させる)ことを含む方法である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料容器、第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、検出器、及び往復機構(例えば、モーター、サーボ等)を含む装置であり、ここで、該往復機構(例えば、モーター、サーボ等)は、該試料容器を第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、及び画像センサー間で物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料容器、第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、検出器、及び往復機構(例えば、モーター、サーボ等)を含む装置であり、ここで、該往復機構(例えば、モーター、サーボ等)は、該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、及び該画像センサーを物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、装置はさらに、該往復機構(例えば、モーター、サーボ等)を指示する制御装置を含む。いくつかの実施形態では、該検出器は、画像センサーまたは蛍光光度計である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料(例えば、標的核酸を含む試料)を処理する方法であって、(a)本明細書に記載の装置の試料容器に試料を入れること及び(b)該試料容器を、該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、及び該検出器を、所定のサイクルに従って往復させることを含む方法であり、該試料容器は、該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)で、該試料を該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)の温度にするのに十分な時間維持され、該試料容器は、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)で、該試料を該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)の温度にするのに十分な時間維持され、該試料及び/または試料容器の特性は、該検出器にて得られる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料(例えば、標的核酸を含む試料)を処理する方法であって、(a)本明細書に記載の装置の試料容器に試料を入れること及び(b)該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、及び該検出器を、所定のサイクルに従って、該試料容器と、接触/近接するしないを往復させることを含む方法であり、該試料容器は、該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)で、該試料を該第一の温度調節装置(例えば、加熱器)の温度にするのに十分な時間維持され、該試料容器は、該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)で、該試料を該第二の温度調節装置(例えば、加熱器)の温度にするのに十分な時間維持され、該試料及び/または試料容器の特性は、該検出器にて得られる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、(a)試料ホルダー、(b)該試料ホルダーに取り付けられる試料容器、(c)第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)であって、反対の向きにあり、それによって該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間に隙間が生じるもの、(d)第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)であって、反対の向きにあり、それによって該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間に隙間が生じるもの、ならびに(e)往復機構(例えば、サーボ、モーター等)であって、該試料容器が、(i)該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内に存在する位置、ならびに(ii)該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内に存在する位置の間で該試料ホルダーを物理的に移動させるものを含む装置である。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該試料ホルダーを移動させる。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該熱調節装置(及びそれらの間の隙間)を移動させる。いくつかの実施形態では、装置はさらに、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)を指示する制御装置を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料(例えば、標的核酸を含む試料)を処理する方法であって、(a)本明細書の装置の該装置の該試料容器に試料を入れること及び(b)所定のスケジュールに従って、該試料容器が、(i)該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内にある構成、ならびに(ii)該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内にある構成の間で該装置を往復させることを含む方法であり、該試料容器は、該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間で、該試料を該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間の温度にするのに十分な時間維持され、該試料容器は、該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間で、該試料を該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間の温度にするのに十分な時間維持される。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該試料ホルダーを移動させる。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該熱調節装置(及びそれらの間の隙間)を移動させる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、(a)試料ホルダー、(b)該試料ホルダーに取り付けられる試料容器、(c)検出器、(d)第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)であって、反対の向きにあり、それによって該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間に隙間が生じるもの、(e)第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)であって、反対の向きにあり、それによって該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間に隙間が生じるもの、ならびに(f)往復機構(例えば、サーボ、モーター等)であって、該試料容器が、(i)該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内に存在する位置、(ii)該第三及び第四の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間内に存在する位置、ならびに(iii)該検出器に隣接する位置に該装置を物理的に置くものを含む装置である。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該試料ホルダーを移動させる。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該熱調節装置(及びそれらの間の隙間)ならびに検出器を移動させる。いくつかの実施形態では、装置はさらに、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)を指示する制御装置を含む。いくつかの実施形態では、該検出器は、蛍光光度計または画像センサーである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、試料(例えば、標的核酸を含む試料)を処理する方法であって、(a)本明細書に記載の装置の該試料容器に試料を入れること及び(b)所定のサイクルに従って、該試料容器が、(i)該第一及び第二の温度調節装置(例えば、加熱器)に隣接している構成、(ii)該第三及び第四の温度調節装置(例えば、加熱器)に隣接している構成、ならびに(iii)該検出器に隣接している構成の間で該装置を往復させることを含む方法であり、該試料容器は、該第一及び第二の温度調節装置(例えば、加熱器)間の隙間で、該試料を該第一及び第二の調節装置(例えば、加熱器)間の隙間の温度にするのに十分な時間維持され、該試料容器は、該第三及び第四の温度調節装置(例えば、加熱器)間の隙間で、該試料を該第三及び第四の温度調節装置(例えば、加熱器)間の隙間の温度にするのに十分な時間維持され、該試料及び/または試料容器の特性は、該検出器にて得られる。いくつかの実施形態では、該特性は蛍光強度である。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該試料ホルダーを移動させる。いくつかの実施形態では、該往復機構(例えば、サーボ、モーター等)は、該熱調節装置(及びそれらの間の隙間)ならびに検出器を移動させる。いくつかの実施形態では、該試料は、該第一及び第二の温度調節装置(例えば、加熱器)、該第三及び第四の温度調節装置(例えば、加熱器)、ならびに該検出器を通して2サイクル以上(例えば、5、10、15、20、25、30、またはそれ以上のサイクル)サイクルを繰り返される。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、複数の薄層を含み、各薄層が、1mm以下(例えば、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm、250μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1mm、またはそれらの間の範囲)の厚さを有し、該複数の薄層同士が接着して試料容器を構成するカードを形成する試料ホルダー装置であって、ここでは、中心の薄層が試料格納用の切り欠きを含み、前部及び後部の薄層が該中心層に適用されて組み立てカードを形成した場合にこの切り欠きが試料容器を形成し、該前部の薄層は、該前部及び中心の薄層同士を接着して組み立てカードを形成した場合に該格納用の切り欠きに隣接して位置する透明窓を含み、該組み立てカードは、該試料ホルダー装置を機器に接続するための係合要素を含む。いくつかの実施形態では、前部の薄層全体が透明である。いくつかの実施形態では、該係合要素は、該前部及び後部の薄層の一方または両方にスロットの切り欠きを含む。いくつかの実施形態では、該係合要素は、該前部、中心、及び後部の薄層にスロットの切り欠きを含む。いくつかの実施形態では、装置はさらに、該前部または後部の薄層にポートの切り欠き、及び該中心層にポートのチャンネルを含み、該ポートの切り欠き及びポートのチャンネルは、組み立てカードにおいて、該試料容器に液体試薬を添加するためのポートを形成するように整列する。いくつかの実施形態では、ポート閉鎖要素、ここで、該ポート閉鎖要素が該組み立てカードで該ポートの切り欠きに適用されると、該試料容器がシールされる。いくつかの実施形態では、該前部または後部の薄層におけるベントの切り欠き、及び該中心層のベントのチャンネル、ここで、該ベントの切り欠き及びベントのチャンネルは、組み立てカードにおいて、液体試薬が該ポートから該試料容器に添加される際に、該試料容器から空気を放出するためのベントを形成するように整列する。いくつかの実施形態では、装置はさらに、ベント閉鎖要素を含み、該ベント閉鎖要素が該組み立てカードで該ベントの切り欠きに適用されると、該試料容器がシールされる。いくつかの実施形態では、該薄層の各々は、同一の周囲断面を含む。いくつかの実施形態では、1層以上の支持層が、該前部及び/または後部の薄層に接着される。いくつかの実施形態では、該支持層は、薄層ではない(例えば、該装置の該薄層より厚いもの)。いくつかの実施形態では、該支持層は、該複数の薄層と同一の周囲断面を含む。いくつかの実施形態では、支持層は、該薄層及び該支持層がカードに組み立てられた際に該透明窓、係合要素、及び試料容器へのアクセスを提供する切り欠きを含む。いくつかの実施形態では、装置はさらに、該試料容器内にアッセイ試薬を含む。いくつかの実施形態では、該アッセイ試薬は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試薬を含む。いくつかの実施形態では、該アッセイ試薬は、該試料容器の内面で乾燥される。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、(a)本明細書に記載の試料ホルダー装置、及び(b)(i)第一の温度帯、(ii)第二の温度帯、(iii)検出帯、及び(iv)往復機構を含む機器を含むシステムであって、ここで、該往復機構は、該試料ホルダー装置の係合要素へ取り付けられるように構成され、活性化時には、所定のサイクルに従って、該第一の温度帯、該第二の温度帯、及び該検出帯の間で該試料容器を往復させるように構成される。いくつかの実施形態では、該検出帯は、蛍光光度計または画像センサーを含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、モーターまたはサーボを含む。いくつかの実施形態では、該第一及び第二の温度帯は、各々、該往復機構が該試料容器をそれぞれ、該第一及び第二の温度帯内に物理的に移動させると、該試料容器が接触または近接される加熱器を含む。いくつかの実施形態では、該第一及び第二の温度帯は、各々、2つの対向する加熱器を含み、該試料容器は、該往復機構が該試料容器をそれぞれ、該第一及び第二の温度帯に物理的に移動させた場合に、該2つの対向する加熱器間にもたらされる。いくつかの実施形態では、2つの対向する加熱器の対における一方または両方の加熱器は可動であり、該加熱器は、該試料容器が該温度帯に入る際には該試料容器を囲むように、また、該試料容器が該温度帯から出る場合に該試料容器を開放するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供するのは、標的核酸の増幅、検出、及び/または定量化のための本明細書に記載の装置及び方法の使用である。いくつかの実施形態では、PCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR等を行うための本明細書の装置の使用を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置を用いてPCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR等を行うための方法を提供する。いくつかの実施形態では、試薬、温度、時間、サイクル等、及び任意の方法のステップまたは装置の構成要素を、本明細書に記載の及び当分野で理解される詳細に従って提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A~B。試料容器125を試料アーム120上に含む例示的な装置100を示す概略図。往復駆動モーター130は、試料アームを2つの位置の間で動揺させ、試料容器125を(A)第一の温度帯110と(B)第二の温度帯111の間で移動させる。
【
図2】
図2A~B。試料容器225を試料アーム220上に含む例示的な装置200を示す概略図。往復駆動モーター230は、試料アームを2つの位置の間で摺動させ、試料容器225を(A)第一の温度帯210と(B)第二の温度帯211の間で移動させる。
【
図3】
図3A~B。試料容器325を試料ディスク320上に含む例示的な装置300を示す概略図。往復駆動モーター330は、試料ディスクを2つの位置の間で動揺させ、試料容器325を(A)第一の温度帯310と(B)第二の温度帯311の間で移動させる。
【
図4】
図4A~C。試料容器425を試料ディスク420上に含む例示的な装置400を示す概略図。往復駆動モーター430は、試料ディスクを3つの位置の間で動揺させ、試料容器425を(A)第一の温度帯410、(B)検出帯411、及び(C)第二の温度帯412の間で移動させる。
【
図5】
図5A~C。試料容器525を試料アーム520上に含む例示的な装置500を示す概略図。往復駆動モーター530は、試料アームを3つの位置の間で摺動させ、試料容器525を(A)第一の温度帯510、(B)検出帯511、及び(C)第二の温度帯512の間で移動させる。
【
図6】
図6A~B。(A)例示的な試料容器(例えば、多孔質媒体容器(PMC))のガラス繊維材料の拡大像。(B)試料アーム(ブレード構造)、PMC(斜線入りの円)、及び該ブレードを往復機構に取り付けるために使用される穴の図(上面図)。
【
図7】
図7A~C。本明細書のある特定の実施形態で使用するための例示的なカートリッジの図。(A)3層のカセットの図。上部フィルム、ブレード及びPMC、ならびに下部フィルムを示している。いくつかの実施形態では、該ブレード及びPMCを含むように転写接着剤で該フィルム同士を接着する。(B)上部フィルムを通してポートの下に配置されたPMCを備えた組み立てカセット。試料(例えば、PCR試薬、標的核酸等)が該ポートを通して添加される。(C)PMCの両側が透明の防湿フィルムで覆われた、前向きの位置の組み立てカセット。ポートは、サイクリングの間の蒸気損失を減らすためにシールされる。
【
図8】
図8A~C。例示的なサーマルサイクリング装置の図。3つの異なる見方、すなわち、透視(左)、カセット、往復駆動、及び加熱器の正面図(中央)、ならびにサーボ及び加熱器の上面図(右)で示す、
図7に示す試料カセットを含む。(A)カセットがアームに搭載され、それが後部の垂直プレート上の往復サーボによって駆動される。カセットの移動時、前面のヒーターは、両方とも引き戻され、後ろのヒーターとの隙間が形成される。(B)該往復サーボは、該PMCを第一の温度帯(例えば、第一のセットの加熱器(例えば、95℃の加熱器)間)に摺動で移動させる。水平プレート上の該加熱器サーボは、該前面のヒーターを該カセットに接触させるように移動させ、該後ろの加熱器に対してそれを押し上げる。(C)該サーボは、該カセットを外し、これがその後該往復サーボによって第二の温度帯(例えば、第二のセットの加熱器(例えば、60℃の加熱器)間)に動かされる。該第二の加熱器間の位置にある時点で、該加熱器サーボがしっかりと締め付ける。
【
図9A】制御装置と連動した
図8の図に示される例示的な装置の画像。
【
図9B】(A)に示す装置の2枚の0.25mm厚フィルター間に挿入された熱電対で測定した温度応答。57℃から97℃までの加熱時間は3.6秒である。97℃から57℃までの冷却時間は4.1秒である。時定数は約1秒である。
【
図10】PCR反応を示すアガロースゲルの画像。
図9に示される例示的な装置で行われたもの(レーン2)、
図9に示される例示的な装置の試料カセットで行われたが、60℃及び95℃に維持した水槽間で該カセットを往復させることによって加熱したもの(レーン3)、ならびに60℃及び95℃に維持した水槽間で往復させたガラス管で行われたもの(レーン4)。
【
図11】
図11A~C。(A)該PMCを保持し、スロットの係合を介して機械的に駆動されるディスクを含む例示的なカセットの図。(A)上部フィルム、ブレード及びPMC、ならびに下部フィルムを示す3層カセットの図。(B)カセットを回り、PMCを温度帯間で移動させる半矩形試料アームを含む例示的なカセットの画像。360℃の回転が可能である。(C)試料アームの回転可能な領域の上のバリア領域を含む例示的なカセットの図。該バリアは、ブレードを往復磁石に良好に結合させるための止めを提供する。
【
図12】
図12A~C。
図10~11に示すもの等のディスクカセットを含む例示的な装置の図。(A)ディスクカセットを含む硬質カートリッジ。(B)カートリッジが例示的な装置内に格納されている。(C)装置のカバーが閉じられ、その場に、例えば、つまみねじで支えられている。
【
図13】
図12に示される装置、検出器の電源(後方左)、マイクロコントローラー(中央後方)、LEDドライバ(前方右)、及びラップトップコンピューター(後方右)を示す例示的なシステムの画像。
【
図14】
図14A~F。例示的な装置のサブシステムを示す図。(A)開くように後方がヒンジで連結された上面カバーは、2つの固定加熱器及び蛍光光度計を含む。(B)ベースは、サーボによって上下に移動する2つの加熱器を含む。PMCを保持するディスクは、サーボによって駆動される中央ハブによって回転する。(C)カバーが閉じた断面図は、下部の加熱器を上下に移動させる機構を示している。(D)往復サーボ、加熱器の結合、及びサーボを示す下部の斜視図。(E)検出器ボード及び2つのヒートシンク付きLEDを備えた蛍光光度計アセンブリ。(F)LED、レンズ、干渉フィルター、及び検出器を示す蛍光光度計の断面図。
【
図15】
図15A~D。PCRサイクルのステップにおける例示的な装置の画像。(A)カートリッジのロード時、ディスクは、PMCが注入ポートの下になるように配置される。(B)回転して、PMCを高温の加熱器に位置合わせする。(C)サーボがディスクとPMCを低温の加熱器まで回転させる。(D)サーボがブレードとPMCを蛍光光度計の読み取り位置まで移動させる。
【
図16】
図16A~B。試料容器を含む試料ホルダーが、カセット上で少なくとも第一の(A)位置及び第二の(B)位置の間で直線的に摺動する例示的なカセットの一部の図。
【
図17】
図17A~B。試料ホルダーの例示的な変更の図。(A)試料容器を直接取り巻く材料は、熱伝導性材料を含む一方、さらに周囲の材料は、より安価及び/または伝導性の低い材料である。(B)単一の試料ホルダー上の複数の試料容器。
【
図18】
図18A~C。例示的な装置1800を示す概略図。(A)試料容器1825、第一の温度帯1810、第二の温度帯1811、帯のホルダー1840を含み、往復機構1830は帯のホルダー1840を摺動させ、その結果、試料容器1825と(B)第一の温度帯1810、及び(C)第二の温度帯1811が整列する。
【
図19】
図19A~D。例示的な装置1900を示す概略図。(A)試料容器1925、第一の温度帯1910、第二の温度帯1911、検出帯1912、帯のホルダー1940を含み、往復機構1930は帯のホルダー1940を摺動させ、その結果、試料容器1925と(B)第一の温度帯1910、(C)第二の温度帯1911、及び(C)検出器1912が整列する。
【
図20】
図20A~C。例示的な試料ホルダー2000を示す図。(A)後部/下部層2001、中央層2002、前部/上部層2003、試料容器2020、流体ポート2050、流体チャンネル2055、空気ベント2060、ベントチャンネル2065、アセンブリガイド2070、及び往復機構の係合スロット2080、(B)後部/下部層2001、中央層2002、前部/上部層2003、及び前部/上部支持層2004、ならびに(C)ポート/ベントカバー2068を含む。
【
図21】
図21A~F。例示的な試料ホルダーの画像。(A)アセンブリガイドを通した2つのアセンブリダボで固定具に組み立てられた層。(B)支持層に接着されたポート/ベントカバー(テープ)。(C)試料ホルダーを除いた装置。装置を広げ、往復機構及び後部加熱器(右)ならびに検出器及び前部加熱器(左)を示している。(D)「読み取り」位置に合わせて装置に取り付けられた試料容器。(E)第一の温度帯に位置合わせして装置に取り付けられた試料ホルダー。ならびに(F)第二の温度帯に位置合わせして装置に取り付けられた試料ホルダー。
【
図22】常磁性粒子の存在下及び非存在下、様々な条件下での酵素活性を示すグラフ及び表。
【
図23】様々な試薬及び常磁性粒子の試料容器への凍結乾燥が酵素活性に与える影響を示すグラフ及び表。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本技術の理解を容易にするため、いくつかの用語及び表現を以下に定義する。さらなる定義は、詳細な説明全体で説明する。
【0016】
本明細書で使用される、「a」もしくは「an」または「the」は、1つまたは1つを超えることを意味することができる。例えば、「a」ウィジェットは、1つのウィジェットまたは複数のウィジェットを意味することができる。
【0017】
本明細書で使用される、「対象」及び「患者」という用語は、任意の動物、例えば、イヌ、ネコ、鳥類、家畜、及び特に哺乳類、好ましくはヒトを指す。
【0018】
本明細書で使用される、「含む」という用語及びその言語変異は、列挙された特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等の存在を、さらなる特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等の存在を排除することなく意味する。反対に、「~からなる」という用語及びその言語変異は、列挙された特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等の存在を意味し、通常関連する不純物を例外として、列挙されていない特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等を排除する。「~から本質的になる」という表現は、列挙された特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等、及び、当該組成物、システム、または方法の基本的な性質に実質的に影響を与えない任意のさらなる特性(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)等を意味する。本明細書における多くの実施形態は、オープンな「含む」言語を用いて記載される。かかる実施形態は、複数のクローズドな「~からなる」及び/または「~から本質的になる」の実施形態を包含する。これらは、かかる言語を用いて代替的に請求または記載され得る。
【0019】
本明細書で使用される、「試料」及び「標本」という用語は、交換可能に、及び最も広い意味で用いられる。ある意味では、試料は、生体試料及び環境試料だけでなく、任意の起源由来の標本または培養を含むことが意図される。生体試料は、動物(ヒトを含む)から得てもよく、流体、固体、組織、及び気体を包含し得る。生体試料としては、血液産物、例えば、血漿、血清、便、尿等が挙げられる。環境試料としては、環境物質、例えば、表面物質、土壌、泥、スラッジ、バイオフィルム、水、及び工業試料が挙げられる。かかる例は、しかしながら、本発明に適用可能な試料型を限定するものと解釈されない。
【0020】
本明細書で使用される、「システム」という用語は、特定の目的のために、任意の適切な方法でまとめられる(例えば、物理的に結び付けられる、流体連結される、電子通信される、データ通信される、一緒にパッケージされる等)組成物、装置、製品、材料等の集まりを指す。
【0021】
本明細書で使用される、「調製すること」という用語及びその言語均等物は、例えば、続いて起こる分析または検出ステップで用いるため、試料またはその1つ以上の成分を変えるためにとられる任意のステップを指す。例示的な試料の調製ステップとしては、例えば、試料の希釈または濃縮、試料成分の単離または精製、試料の加熱または冷却、試料成分(例えば、核酸)の増幅、試料成分の標識化等が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される、「分析すること」という用語及びその言語均等物は、試料またはその1つ以上の成分を特徴づけるためにとられる任意のステップを指す。例示的な分析ステップとしては、例えば、試料成分(例えば、標的核酸)の定量化、試料成分の配列決定等が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、試料の調製ステップ及び分析ステップは、同時に行われ、及び/または順次反復される。例えば、qPCRでは、核酸増幅及び定量化のステップは、連続して反復される。
【0024】
詳細な説明
本明細書に提供するのは、試料の迅速な処理及び分析のための装置及び方法である。具体的には、あるアッセイで、少量の試料(例えば、核酸試料)を、装置内で異なる温度帯に曝露し(例えば、接触させ)、該試料を処理(例えば、増幅)し、及び/または分析(例えば、定量)する。
【0025】
本明細書における実施形態は、本明細書の装置及び方法から、かさばる試料容器(例えば、プラスチック製チューブ)及び熱電冷却器(TEC)を排除することによって、従来のサーマルサイクラー及びPCRプロトコルの制限を克服する。いくつかの実施形態では、少量の試料または試験液(例えば、標的核酸及び他の試薬(例えば、増幅試薬、検出試薬等)を含む)を容器内で装置のある位置に保持し(例えば、毛細管力によってその場で保持し(例えば、容器内で2つの表面(例えば、薄肉プラスチックフィルム)間、多孔質媒体容器(PMC)内等)、2つ以上の定位置の温度帯(例えば、温度調節装置(例えば、加熱器)間を往復させる。いくつかの実施形態では、定位置の温度帯間を往復させることに加えて、定期的な分析のために、該試料または試験液を検出帯(例えば、蛍光リーダー)に往復させる。いくつかの実施形態では、あるサイクルは、試料容器を2つ以上の温度帯及び検出帯を通して往復させることを含む。いくつかの実施形態では、試料容器を帯間で往復させることには、試料容器(及び/または試料ホルダー)を、装置の残りの部分に対して(及び/または帯(例えば、温度帯、検出帯等)に対して)移動させることが含まれる。いくつかの実施形態では、試料容器を帯間で往復させることには、帯(例えば、温度帯、検出帯等)を、装置の残りの部分に対して(及び/または試料容器に対して)移動させることが含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、一連の帯を通る2回以上のサイクル(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、もしくはそれ以上、またはその中の範囲(例えば、10~35サイクル)を含む(例えば、1サイクルは、第一の温度帯、第二の温度帯、及び検出帯に相当する)。
【0026】
いくつかの実施形態では、該試料または試験液は、比較的少ない質量の格納用の物質を用いて装置内に格納される(例えば、格納用物質は、格納される試験液の質量の25%未満(例えば、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれらの間の範囲)である)。いくつかの実施形態では、試験液は、格納帯内の利用可能な格納容積の少なくとも50%(50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、もしくはそれ以上、またはそれらの間の範囲)を満たす(例えば、加熱される及び/冷却される格納帯に相対的に少ない空気を残して)。いくつかの実施形態では、唯一各サイクルで温度を変える有効質量は、試料または試験液及び格納用物質である。いくつかの実施形態では、該格納帯は、空のチャンバーまたは容器である。いくつかの実施形態では、該格納帯は、チャンバーまたは容器を含み、内部に格納用物質を含む。いくつかの実施形態では、該格納用物質は、多孔質媒体容器(PMC)を含む。いくつかの実施形態では、該格納用物質は、ヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、溶媒(例えば、水)を吸収し、識別できる溶解なしで急速に膨潤し、可逆変形可能な3次元ネットワークを維持する物質である。例えば、参照することによりその全体が組み込まれるPark、et al.,Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery,Technomic Pub.Co.,Lancaster,Pa.(1993)を参照されたい。例示的なヒドロゲルは、当分野で理解されており、例えば、参照することによりその全体が組み込まれる米国特許第6,605,294号に記載されている。いくつかの実施形態では、該格納用物質は、高吸収性ポリマー(SAP)及び/または超多孔質ヒドロゲル(SPH)、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム及びアクリル酸スルホプロピル等のアクリル酸の塩及びエステル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等のポリマーを含むものを含む(例えば、参照することによりその全体が組み込まれるOmidian et al.Journal of Controlled Release 102(2005)3-12を参照されたい)。いくつかの実施形態では、該試験液は、2つの表面(例えば、フィルム、膜等)間で毛細管力によって保持される。いくつかの実施形態では、容器は、ウェルを含む(例えば、リップ、フィルム、膜等で覆われる)。
【0027】
いくつかの実施形態では、試料容器は、3層で形成される。すなわち、(i)第一の物質層が該容器の後部(または下部)を形成し、(ii)第二の層が該容器の壁、及び任意に、該容器への/からのチャンネルを形成し、(iii)第三の層が、該容器の前部(または上部)を形成する(
図20)。
【0028】
いくつかの実施形態では、該第一及び第三の層は薄肉フィルムであり、中央層に適用される(例えば、接着される)。該フィルム材料の剛性、熱抵抗、防湿、及び自己蛍光は、装置の性能に影響を与え得る(例えば、往復性能、加熱性能、検出性能等)。装置の構造に適した材料は本明細書に記載されており、当分野で理解されるが、しかしながら、本明細書における実施形態の開発の過程で行われた実験で、望ましい組み合わせの特性を備えたフィルム材料としては、シクロオレフィンポリマー(COP、ZEONEX(登録商標))シクロオレフィンコポリマー(COC、TOPAS)、厚さ10~500μm(例えば、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、400μm、500μm、またはそれらの間の範囲)が挙げられることが判断された。
【0029】
いくつかの実施形態では、該試料容器及び/または他の開口は、当該装置の中心層に切り込まれる。中心層(または他の層)に開口/切り込みを作るために適切な技術としては、レーザー切断、ナイフ切断、型切断、水ジェット切断等が挙げられる。いくつかの実施形態では、該第一または第三の層を通る穴またはスロットは、ベント(例えば、該容器と気体を交換するための)及び/またはポート(例えば、該容器と液体を交換するための)を与える。いくつかの実施形態では、中心層の厚さが当該容器の容積に影響を与える。いくつかの実施形態では、本明細書における実施形態の開発の過程で行われた実験で、ポリカーボネートを含むフィルム/層の切断(レーザー切断)が、切り口の周囲の溶融物質由来の残渣による高レベルのバックグラウンド蛍光をもたらすことが示された。例えば、シクロオレフィンポリマー(COP、ZEONEX(登録商標)、(例えば、ZF14-188))の使用で、該残留蛍光が除外される。所望の特性も有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、該層(例えば、フィルム)は、互いに接着される(例えば、接着剤で)。いくつかの実施形態では、低蛍光接着剤を用いて該第一及び/または第三の層を中心層に接着する。適切な低蛍光接着剤としては、3M(商標)Silicone Adhesive Transfer Tape 91022、3M(商標)Silicone Double Coated Tape 96042、Adhesive Research Silicone Transfer Film AR care 7876等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施形態では、黒色及び/または不透明材料が該中心層に好都合である。これは、かかる材料が生成する自己蛍光のレベルが低いこと、及び接着剤や他の起源由来の自己蛍光を遮断するそれらの能力のためである。所望の特性を有する材料としては、黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、CARBONFEATHER、Kimoto(例えば、188X1B)が挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、該試料容器を形成する層に加えて、1層以上の支持層(例えば、上部/前部支持層及び下部/後部支持層)が提供される(例えば、該第一及び第三の層に接着される)(
図21A)。いくつかの実施形態では、含まれる該試料を形成する層は極めて薄いため、それらをより厚い支持層と結合させることで、取扱性及び製造可能性が改善される。いくつかの実施形態では、充填、通気、熱伝達、及び蛍光読み取りのために、該支持層を通して穴が開けられる。いくつかの実施形態では、該支持層(複数可)を通した1つ以上の穴は、当該装置の操作のために不透明材料(例えば、粘着テープ(例えば、3M Scotch(登録商標)Super 33+(商標)Vinyl Electrical Tapeである))で覆われる。いくつかの実施形態では、支持層に適切な材料としては、ポリカーボネート(例えば、透明ポリカーボネート)または本明細書に記載の他のポリマーもしくは非ポリマー材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、支持層は、厚さが0.1~4mm(例えば、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、0.95mm、1mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2mm、2.5mm、3mm、4mm、またはそれらの間の範囲)である。
【0033】
いくつかの実施形態では、試料を含む容器(例えば、ウェル、スポット等)は、装置またはシステム内/上の複数の異なる温度帯及び/または試料検出帯間を往復する(例えば、物理的に移動する)。いくつかの実施形態では、該試料は、該容器内にとどまり、該容器自体が当該装置内/上の帯間を往復する。いくつかの実施形態では、様々な帯(例えば、温度)の特性/機能性は一定のままであり、試料の調製/分析の異なるステップは、該試料(該容器内の)が様々な帯を移動するにつれて行われる。
【0034】
いくつかの実施形態では、試料を含む容器(例えば、ウェル、スポット、チャンバー等)は、装置上の固定位置に保持され、装置またはシステム内/上で、複数の異なる温度帯及び/または試料検出帯が往復する(例えば、物理的に移動する)。いくつかの実施形態では、該試料は、該容器内にとどまり、該容器は固定されたままであり、該帯が当該装置内/上で往復する。いくつかの実施形態では、複数の異なる温度帯及び/または試料検出帯が装置上の固定位置に保持され、試料容器(例えば、ウェル、スポット、チャンバー等)が装置またはシステム内/上で往復する(例えば、物理的に移動する)。いくつかの実施形態では、該試料は容器内にとどまり、該帯は固定のままであり、該容器が該装置内/上を往復する。いくつかの実施形態では、様々な帯(例えば、温度)の特性/機能性は一定のままであり、試料の調製/分析の異なるステップは、該様々な帯及び該試料容器が互いに近接内外に移動するにつれて行われる。
【0035】
試料を容器内に保持し、代わりに該容器及び/または帯を往復させることが、試料の損失を低減、汚染のリスクを低減、ステップを行う時間を短縮、等をする。帯の特性/機能性を変えるのではなく、様々な帯(例えば、温度帯)の特性/機能性を一定に保持し、試料容器を帯間で(または帯を容器に対して)往復させることで、当該ステップを行う時間及びコストが削減される。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書における装置/システムは、1つ以上の試料容器、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれ以上、またはそれらの間の範囲)の調製/分析帯(例えば、温度帯、画像センサー等)、及び該試料容器を該調製/分析帯間で例えば、規定の順序で移動させる往復機構を含む。いくつかの実施形態では、該試料容器は、試料ホルダー(例えば、カセット、アーム、ディスク等)内/上にあり、該ホルダーは、該往復機構に係合し、該試料容器の該調製/分析帯間の移動を容易にする。いくつかの実施形態では、該調製/分析帯、または該帯が中に/上に存在する装置の構成要素は、該往復機構に係合し、該調製/分析帯の該試料容器の近接(例えば、該試料容器との接触)内外への移動を容易にする。
【0037】
指定のない限り、本明細書の範囲内の装置/システムは、該装置/システムの個々の要素の配向、形状、サイズ、材料、及び/または接続手段に限定されない。例えば、
図1~5は、本明細書の範囲内の装置の例示的な実施形態を示す概略図を提供する。本明細書の実施形態は、
図1~5の構造に限定されるのではなく、それらは、変更される場合がある例示的な構成及び/または本明細書に記載の他の詳細及び実施形態と組み合わせてもよい例示的な構成を示す。
【0038】
図1A~Bは、試料容器125を試料アーム120上に含む例示的な装置100を示す。往復駆動モーター130は、試料アームを2つの位置の間で動揺させ、試料容器125を(A)第一の温度帯110と(B)第二の温度帯111の間で移動させる。いくつかの実施形態では、試料アーム120は、規定の位置間での往復駆動モーター130の回転が、試料容器125を第一の110及び第二の111温度帯間で移動させるように、往復駆動モーター130に接続される。試料容器125は、液体試料格納用の任意の適切な材料または配置(例えば、ウェル等)でよい。該温度帯は、各々、該試料容器がごく接近する(例えば、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.4mm、0.2mm、0.1mm、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲)あるいは直接接触する1つ以上の加熱素子を含んでもよい。
【0039】
図2A~Bは、
図1A~Bと同様の構成要素(例えば、容器225、試料アーム220、往復駆動モーター230、第一の温度帯210、第二の温度帯211)を含むが、試料アーム220の係合のための往復駆動モーター230による代替的な機構を備えた例示的な装置200を示す。往復駆動モーター230は、試料アーム220を2つの位置の間で摺動させ、それにより、試料容器225を第一の210及び第二の211温度帯間で移動させる。
【0040】
図3A~Bは、
図1~2の試料アームの代わりに試料ディスク320を含む例示的な装置300を示す。
図1と同様、規定の位置の間での往復駆動モーター330の回転が、試料容器325を第一の310及び第二の311温度帯間で移動させる。
図1~3に示すもの以外の往復駆動モーター、試料ホルダー(例えば、アームまたはディスク)、及び試料容器間の相互作用のための代替的な手段及び機構は、本明細書の範囲内である。
【0041】
図4A~Cは、
図3の装置300と同様であるが、第一の温度帯410、検出帯411、及び第二の温度帯412を備えた例示的な装置400を示す。これらの帯の配置及び/または配向は、本明細書の装置を限定するものではない。往復機構430は、試料容器425を該温度帯及び検出帯間で移動させ、試料容器425が様々な帯に配置される順序によって限定されない。いくつかの実施形態では、装置は、さらなる温度帯、さらなる検出帯、及び/または試料容器が配置される他の帯を含んでもよい。
【0042】
図5A~Cは、
図4と同様、第一の温度帯510、検出帯511、及び第二の温度帯512を含む例示的な装置500を示すが、試料容器525は、
図2と同様、試料アーム520上に存在する。
図1~5に示し、本明細書に記載する様々な要素、詳細、配向、及び配置は、任意の適切な組み合わせで組み合わせ、試料の調製及び/または分析のための装置/システムを提供してもよい。
【0043】
図6~9及び11~17は、本明細書の実施形態に用いられる例示的な装置及びその要素を示す。試料の調製及び/または分析に適切な装置/システムを提供するためのこれらの要素及び/またはこれら装置の要素と、本明細書に記載の他の実施形態との組み合わせ及び/または再配置は、本明細書の範囲内である。
【0044】
図18A~Cは、
図2A~Bと同様の構成要素(例えば、容器1825、往復機構1830、第一の温度帯1810、第二の温度帯1811)を含むが、該温度帯が、往復機構1830を係合するホルダー1840上に配置された例示的装置1800を示す。往復機構1830は、複数の位置間でホルダー1840(ひいては該温度帯)を摺動させ、それにより、第一の1810及び第二の1811温度帯と試料容器1825を整列させる。
【0045】
図19A~Dは、
図5A~Bと同様の構成要素(例えば、容器1925、往復機構1930、第一の温度帯1910、第二の温度帯1911、検出器1912)を含むが、該温度帯及び検出器が、往復機構1930を係合するホルダー1940上に配置された例示的装置1900を示す。往復機構1930は、複数の位置間でホルダー1940(ひいては該温度帯)を摺動させ、それにより、第一の温度帯1910、第二の温度帯1911、及び検出器1912と試料容器1925を整列させる。他の図に示される、及び本明細書に記載される様々な要素、詳細、配向、及び配置は、試料の調製及び/または分析のための装置/システムを提供するために、任意の適切な組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書の装置/システムは、様々な調製/分析帯間で試料を物理的に移動させる(または、該様々な調製/分析帯を該試料の近接内外に移動させる)ことによって、試料を様々な条件(例えば、温度)に曝露し、及び/または試料の様々な特性(例えば、蛍光)を検出する。試料は、調製/分析帯間を、試料容器から当該試料を取り出すことなく動かされ、該試料容器自体が、試料を中に入れたままで、当該装置の様々な調製/分析帯間を動かされる(または、様々な調製/分析帯が、該試料の近接内外に動かされる)。
【0046】
図20A~Dは、様々な構成要素を含む例示的な試料ホルダー2000を示す。該試料ホルダーは、複数の独立した層からなるカードを含む。異なる層内の穴及び他の切り欠きがポート、ベントチャンネル、試料容器、及び他の要素を該カード上/内に形成する。該様々な層同士は、単一の試料ホルダーを形成するためにシール/接着される。
図20の例示的な試料ホルダー(
図21にも示される)は、重力を、当該容器の深さを通って垂直にではなく、該試料容器の幅(例えば、直径)方向に向かわせるように、装置に垂直に搭載されるように構成される。いくつかの実施形態では、装置(例えば、往復機構を含む装置)へ試料ホルダーを垂直に搭載することで、液体の充填及び空気の除去が容易になる。摺動部への液体の流れは、静水圧のために改善され、空気の流出は、液体と空気の密度の差のために改善される(
図20A)。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書の装置は、例えば、試料の体積の容器材料に対する比を最大にすることによって、試料の加熱/冷却を効率的なものにする。いくつかの実施形態では、試料容器内で利用可能な空間は、少なくとも50%(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、またはそれらの間の範囲)を試料で満たされる。いくつかの実施形態では、容器材料は薄肉である(例えば、<1mm、<0.5mm、<0.2mm、<0.1mm、<0.05mm、<0.02mm、<0.01mm)。いくつかの実施形態では、試料の質量の容器の質量に対する比は、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、またはそれらの間の範囲である。
【0048】
任意の適切な種類の容器が本明細書の実施形態で使用され得る。例えば、試料は、ウェル、チューブ、チャンバー、リザーバー、カプセル、チャンネル等に含まれ得る。該容器は、単一の材料及び/または一体成形の材料から形成される(例えば、一体容器に成形または製造される)場合もあれば、複数の材料及び/または片(例えば、別々に製造された片)を含む場合もある。
【0049】
いくつかの実施形態では、試料容器は薄肉であり(例えば、5mm以下(例えば、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.75mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.25mm、0.2mm、0.175mm、0.15mm、0.125mm、0.1mm、0.075mm、0.05mm、0.025mm、0.01mm、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲(例えば、3mm以下、0.1~0.25mm、等)))、2つ(例えば、上部/前部及び下部/後部)の表面間に良好に挟まれている。いくつかの実施形態では、該ウェルの断面形状は、円形、正方形、長方形、六角形、または任意の他の適切な形状である。いくつかの実施形態では、該ウェルの断面寸法は、当該容器内の試料全体が温度調節装置へごく接近しやすくするため、厚さより大きい。いくつかの実施形態では、該ウェルの断面寸法は、1~20mm(例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、12mm、14mm、16mm、17mm、18mm、20mm、またはそれらの間の範囲(例えば、5~10mm))である。
【0050】
いくつかの実施形態では、試料容器は、試料ホルダーに取り付けられるか、またはそれに保持される(該試料ホルダーは、次に往復機構と係合する)。他の実施形態では、該試料容器は試料ホルダーの一部である。例えば、いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、複数の層を含む。中心層は空間を含み、これが、上部/前部及び下部/後部の層間に配置されると、試料容器の役割を果たすリザーバーを作る。該上部/前部及び/または下部/後部の層は、硬質(例えば、プラスチック)材料、膜もしくはフィルム、またはそれらの何らかの組み合わせでよい。該試料容器のサイズは、該空間の寸法、及び該中心層の厚さに依存する。
図7及び
図20は、本構造の異形を利用する例示的な試料ホルダー(例えば、カートリッジ様式)を示す。
【0051】
いくつかの実施形態では、試料容器は、試料を当該試料容器に添加するためのポートまたは開口を含む。いくつかの実施形態では、ポートまたは他の開口は、試料ホルダーの外面層(例えば、前部/上部層または後部/下部層)に、中央層の開口と一致する穴を含む。いくつかの実施形態では、該試料容器及び/または試料ホルダーは、該ポート/開口を閉鎖する要素/機構(例えば、蓋、キャップ、膜等)を含む。いくつかの実施形態では、該容器は、試料を当該容器に添加した後にシールされる。
図7に示すように、いくつかの実施形態では、例示的な試料ホルダーの中心層の位置を、上部層及び/または下部層に対して変更する(例えば、摺動させる)ことで、該試料容器の閉鎖/シールがもたらされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、試料容器は、毛細管力を生成して、試料を該容器に引き入れ、及び/または該容器内で該試料の位置を保持する。いくつかの実施形態では、毛細管力は、容器(例えば、ウェル)の側部/下部によって、及び/または多孔質材料(例えば、細孔を有する膜)を採用することによって生成される。容器の表面が毛細管力を生成する実施形態では、該表面を被覆してその表面エネルギーを高めることによってそれらを高めてもよい。かかる被覆材としては、Baltic Nanotechnologies Hendlex Antifog、Microclair Sports Anit-fog Treatment、及び同様の溶液等の防曇溶液が挙げられる。多孔質材料を採用する本明細書の装置の実施形態では、毛細管力は表面によって該細孔内で生成される。これは、大きな毛細管圧を、容器の寸法を過度に抑制することなく生成するのに有利である。かかる構造はいくつかの実施形態では好ましい場合がある一方で、従来のウェル/容器もまた採用され得る。毛細管力を与えることが可能な任意の種類の多孔質材料を採用することができる。かかる多孔質材料としては、ナイロン、ニトロセルロース、混合セルロースエステル、ポリスルホン等が挙げられる。繊維膜、例えば、ガラス、ポリエステル、綿、または紡糸ポリエチレン等を使用してもよい。いくつかの実施形態では、試薬(例えば、PCR試薬)を該多孔質材料内で乾燥し、その後、試料または緩衝液の添加時に再水和させる。いくつかの実施形態では、容器は、液体試料の添加時に膨潤するヒドロゲルを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、試料容器は、液体試料を含むのに適した任意の材料、試料を加熱/冷却するのに適した任意の材料、非反応性の任意の材料、処分が容易な任意の材料、及び/または安価な任意の材料を含む。適切な材料としては、プラスチック、金属、フィルム、膜等が挙げられる。いくつかの実施形態では、試料容器、ならびに当該試料ホルダー及び本明細書の装置システムの他の構成要素は、ベークライト、ネオプレン、ナイロン、PVC、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、PVB、シリコーン、ゴム、ポリアミド、合成ゴム、加硫ゴム、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ゴアテックス、ポリカーボネート等が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上のプラスチック、非プラスチック成分、例えば、ガラス、繊維製品(例えば、動物、植物、鉱物、及び/または合成起源由来)等、テフロン(登録商標)、HDPE、ナイロン、PEEK、PTFE、及び/またはPEBAX、または他の適切な材料を含む。いくつかの実施形態では、試料容器、試料ホルダー、及び/または本明細書の装置システムの他の構成要素は、シクロオレフィンポリマー(COP)及び/または被覆ポリエステル(KIMOTO CARBONFEATHER)もしくはポリプロピレンフィルム(例えば、ITW/FORMEX GK-10)を含む。いくつかの実施形態では、試料容器、ならびに当該試料ホルダー及び本明細書の装置システムの他の構成要素は、アルミニウム、アンチモン、ホウ素、カドミウム、セシウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、銀、錫、チタン、タングステン、バナジウム、亜鉛、及びそれらの合金が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の金属を含む。いくつかの実施形態では、該試料容器ホルダーの材料は、試料への(例えば、温度帯及び/または加熱器からの)熱伝達を高めるように、当該装置内/上の容器を往復させるのに十分な機械的強度をもたらすように、コストを低くするように、重量を小さくするように、及び/または試料成分等との反応性を低くするように選択される。いくつかの実施形態では、試料ホルダーの様々な層は、1つ以上の接着剤を用いて互いに接着される。いくつかの実施形態では、接着剤は、転写粘着テープまたは両面テープ、例えば、3M(商標)Silicone Adhesive Transfer Tape 91022、3M(商標)Silicone Double Coated Tape 96042、Adhesive Research Silicone Transfer Film ARcare 7876等である。いくつかの実施形態では、接着剤はエポキシ、シリコーン系、シアノアクリレート、ウレタン接着剤、アクリル接着剤、ゴムセメント、感圧接着剤、感熱接着剤、熱硬化性構造用接着剤、UV硬化性接着剤、アクリル、発泡体、ラテックスシーラント、ポリスルフィドシーラント、ポリウレタンシーラント等である。
【0054】
いくつかの実施形態では、試料容器は、熱伝導性の材料(例えば、金属(例えば、アルミニウム等)等)を含む。いくつかの実施形態では、試料容器が温度帯にある間に温度調節装置(例えば、加熱器)に隣接するまたはこれと接触する材料は、熱伝導性である。いくつかの実施形態では、該容器の周囲の材料(例えば、試料容器が温度帯にある間に温度調節装置(例えば、加熱器)に隣接せず、これと接触もしないもの)は、断熱材(insulator)(例えば、ポリマー、プラスチック等)である。いくつかの実施形態では、該容器の周囲の材料は、剛性、コスト、重量、自己蛍光の低減等を基に選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、該試料容器を構成する層のうちの1層以上(例えば、前部/上部層、中央層、下部/後部層、支持層等)及び/または試料ホルダーもしくは本明細書の装置の他の構成要素は、所望の厚さ(例えば、10~500μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm、250μm、300μm、400μm、500μm、またはそれらの間の範囲)のシクロオレフィンポリマー(COP)または環状オレフィンコポリマー(COC、Shin et al.Pure Appl.Chem.,Vol.77,No.5,pp.801-814、2005、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、試料容器の1つ以上の表面は、1つ以上の所望の特性及び/または機能性を付与するように被覆される。例えば、試料の損失を減らすため、疎水性被覆剤が該試料容器の1つ以上の表面に使用され得る。適切な疎水性被覆剤としては、パラリエン(paralyene)、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0057】
本明細書のシステム/装置の様々な構成要素は任意の所望の材料で構成され得るが、ある特定の実施形態では、試料ホルダー(例えば、ディスク、アーム等)及び/または試料容器のすべてまたは一部は、射出成形品と熱シールされたカバーフィルムで構成される。
【0058】
いくつかの実施形態では、該試料容器は、試料ホルダーに取り付けられ、及び/または試料ホルダー上/内に存在する。いくつかの実施形態では、該試料ホルダーも往復機構に取り付けられ、それにより、該往復機構の動きが、様々な調製/分析帯での該試料容器の適切な配置に変わる。いくつかの実施形態では、該ホルダーは、該試料容器を固定位置に配置し、様々な調製/分析帯が動かされる。試料ホルダーは、任意の適切な形状でよく、例としては、ディスク、アーム、カートリッジ/カセット等が挙げられる。いくつかの実施形態では、ホルダーは、システム/装置に取り外し可能に取り付け可能である。例えば、該ホルダーは、使用に際しては往復機構に取り付けられ、試料を試料容器に添加する際には該往復機構から取り外され得る。いくつかの実施形態では、該試料ホルダーは、取り外せないように、例えば、該往復機構を介して該装置に取り付けられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、試料容器は、試料ホルダーに取り外し可能に取り付け可能である。いくつかの実施形態では、試料容器は、試料ホルダー内にある。いくつかの実施形態では、試料容器は、試料ホルダーの構成要素である。いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、単一の試料容器、及び/または試料容器のための単一の取り付け点を含む。他の実施形態では、試料ホルダーは、複数の試料容器及び/または試料容器のための複数の取り付け点を含む(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、もしくはそれ以上、またはそれらの間の範囲)。いくつかの実施形態では、複数の試料容器は、多重反応及び/または並列に実行される複数の反応を容易にする。
【0060】
いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、試料及び/または試薬を、ホルダー上/内の試料容器に導入するための1つ以上のベント及びポートを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の試薬(例えば、PCR試薬)は、試料容器の内側で乾燥される。
【0061】
いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、ロード位置及び処理位置を含む。例えば、
図7及び11では、中心層のボイドが隣接層の開口と位置合わせされると、該ホルダーは試料のロード位置にあり、該中心層のボイドを隣接層の開口に合わせないように該中心層を摺動または回転させることで、該ホルダーが処理位置に配置されることが分かる。
【0062】
本明細書の実施形態は、該試料容器を調製/分析帯間で移動させるための往復機構を含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、該試料ホルダー/容器を自動(例えば、電動または電池式)で移動させる。該往復機構は、ステップモーター、アクチュエーター、サーボ、磁石、DCモーター等のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、該往復機構は、位置センサーを含む。いくつかの実施形態では、該往復機構は、電動モーター及び/またはサーボを含み、これが該試料ホルダーを所望の位置に(及び所望の回数)移動させ、それにより、該試料容器を所望の調製/分析帯で位置合わせする。任意の適切な種類のムーバー(mover)またはアクチュエーター、例えば、サーボモーター、ギヤードモーター、ソレノイド、圧電素子、磁石駆動装置、形状記憶材料等が、本明細書の往復機構に使用され得る。いくつかの実施形態では、該往復機構は、手動で駆動される。例えば、ハンドクランクを用いて該装置に動力を供給し、該温度帯を加熱するため及び/または該往復機構を駆動するために発電してもよい。いくつかの実施形態では、該往復機構は、該温度帯及び/または検出器間での手動での該試料ホルダー/容器の移動を容易にする。
【0063】
全体を通して記載されるように、本明細書の装置/システムは、試料容器(及び試料)を、2つ以上の調製/分析帯間で、該試料容器及び/または該調製/分析帯の移動により、物理的に移動させる。いくつかの実施形態では、該調製/分析帯のうちの1つ以上は温度帯である。いくつかの実施形態では、該試料容器は、調整された温度を維持する該装置内/上の位置に、該試料容器及び/または該調製/分析帯の移動によって配置される。いくつかの実施形態では、該温度帯は、規定の温度を維持する。いくつかの実施形態では、該既定の温度は、0℃~100℃(例えば、1℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、99℃、またはそれらの間の範囲(例えば、50~99℃)もしくは温度(例えば、67℃))である。いくつかの実施形態では、温度帯の温度は、温度調節装置によって維持される。いくつかの実施形態では、該温度調節装置は、加熱素子(加熱器)及び/または冷却素子を含む。本明細書のほとんどの実施形態は、温度調節装置として加熱器を含むと記載しているが、他の温度調節装置(例えば、冷却器、ファン等)を本明細書の任意の適切な実施形態で使用してもよい。いくつかの実施形態では、特定の温度の流体(例えば、冷却液)が温度調節因子として用いられる。いくつかの実施形態では、ファンが温度調節装置として採用される。本明細書の特定の実施形態で記載される加熱器または加熱素子を、本明細書の実施形態の範囲内の代替的な温度調節因子(例えば、冷却器、ファン、流体の温度調節因子、固体の温度調節因子等)で置き換えてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、温度帯は単一の加熱器を含む。いくつかの実施形態では、温度帯は2つの加熱器を含む。いくつかの実施形態では、試料容器は、温度帯内の加熱器(複数可)に隣接して、及び/または直接接触して配置される。いくつかの実施形態では、該加熱器(複数可)への近接近(例えば、直接の接触)は、急速に(例えば、20秒、18秒、16秒、14秒、12秒、10秒、9秒、8秒、7秒、6秒、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、またはそれらの中の範囲(例えば、2~6秒))該試料容器(及び試料)を該加熱器(複数可)の温度にする。いくつかの実施形態では、該往復機構は、該試料容器を(例えば、試料ホルダーを介して)該温度帯に移動させる。いくつかの実施形態では、該往復機構は、該温度帯を該試料容器の近くに(例えば、接触して)移動させる。いくつかの実施形態では、1つ以上の加熱器は該装置内で可動である。いくつかの実施形態では、該試料容器が該温度帯に至ると、該加熱器が動かされ、該試料容器に直接接触し、及び/または該試料容器を包み込む。
【0065】
いくつかの実施形態では、温度帯は2つの加熱器を含む。いくつかの実施形態では、各加熱器は、試料の接触面(または試料の提示面)を含む。これは、該試料容器が該温度帯内で適切に位置合わせされた際に、該試料容器に隣接する、または接触する加熱器の部分である。いくつかの実施形態では、2つの加熱器は、温度帯の中で、それらの試料提示面が互いに向かい合い、試料提示面間で隙間を形成するように位置合わせされ、その中で試料容器が構成される(例えば、定寸、装置上への配置等)。いくつかの実施形態では、試料容器が当該温度帯を往復する(例えば、試料容器及び/または温度帯の移動によって)と、該容器の2面(例えば、上部及び下部)が各々、当該加熱器の試料提示面に隣接する。いくつかの実施形態では、該試料容器の該温度帯への往復時、一方または両方の加熱器が互いに向かって物理的に動かされ、該容器が存在する隙間を狭くする。いくつかの実施形態では、該加熱器(複数可)の移動により、該加熱器(複数可)と該試料容器が接触する。
【0066】
全体を通して記載されるように、本明細書の装置/システムは、試料容器(及び試料)を、2つ以上の調製/分析帯間で、(例えば、該試料容器及び/または該温度帯の移動により)物理的に往復させる。いくつかの実施形態では、ある調製/分析帯は検出帯である。いくつかの実施形態では、該試料容器は、該検出帯を往復し、該試料の1つ以上の特性が定量化/認定される。いくつかの実施形態では、該検出帯が往復して該試料容器と位置を合わせ、該試料の1つ以上の特性が定量化/認定される。特定の実施形態では、該試料の色、蛍光、発光が検出される。いくつかの実施形態では、ある検出帯は、照度計、蛍光光度計、分光光度計、クロマトグラフ、顕微鏡、蛍光撮像装置、デジタル撮像装置等を含む。
【0067】
実施形態では、本明細書のシステム及び/または装置は、それらの構成要素を含めて、コンピューター制御下または他の電子制御下で動作する。例えば、プロセッサが、該システム及び/またはその構成要素ならびに本明細書に記載の機能とともにまたはその中に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)、手作業による処理、またはそれらの組み合わせを用いて含まれる。本明細書で使用される、「制御装置」、「機能」、「サービス」、及び「論理」という用語は、一般に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、または、本明細書のシステム、装置、及び/または構成要素を制御することと併せたソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアの組み合わせを表す。ソフトウェアの実行の場合は、モジュール、機能、または論理は、プログラムコードを表し、プロセッサ(例えば、CPU(複数可))で実行された際に指定のタスクを実行する。該プログラムコードは、1つ以上のコンピューター可読メモリ素子(例えば、メモリ及び/または1つ以上の有形的表現媒体)等に保存され得る。本文書に記載の構造、機能、方法、及び技術は、様々なプロセッサを有する市販のコンピュータープラットフォーム上で実行することができる。プロセッサは、それらが形成される材料によっても、その中で採用される処理機構によっても限定されない。例えば、該プロセッサは、半導体(複数可)及び/またはトランジスタ(例えば、電子集積回路(IC))からなってもよい。メモリは、プロセッサに含まれ得る。該メモリは、データ、例えば、複数のシステムを運用するための命令のプログラム、該システム及び/またはシステムの構成要素、データ等を保存することができる。単一のメモリ素子を用いることができるが、多種多様な種類及び組み合わせのメモリ(例えば、有形的メモリ、持続性メモリ)、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクメモリ、取り外し可能な媒体メモリ、外部メモリ、及び他の種類のコンピューター可読記憶媒体を採用してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、プロセッサ、CPU、または他の電子ベースの制御装置(複数可)は、該往復機構に対して、該試料容器を該2つ以上の調製/分析帯を通して移動させるように指示し、それら帯の実行(例えば、所望の温度の維持、試料の画像の取得等)を指示する。例えば、該制御装置は、第一の温度帯の加熱器(複数可)を95℃に、及び第二の温度帯を60℃に維持するように命令を与える。該制御装置は、該往復機構に対して、該試料容器を規定の期間及び規定の回数、該2つの温度帯間を動揺するように指示する。該試料容器に適切な試料及び試薬(例えば、標的核酸、ヌクレオチド、プライマー、緩衝剤、マグネシウム、ポリメラーゼ等)があれば、該試料が2つの温度帯を移動することで、該標的核酸の増幅がもたらされる。いくつかの実施形態では、使用者が、該調製/分析帯の特性及び該帯を通る該試料容器の所望の動作(例えば、順序、期間、サイクル等)を設定するためにプロセッサに命令を与える。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロセッサ、CPU、または他の電子ベースの制御装置(複数可)は、該往復機構に対して、該2つ以上の調製/分析帯を、該試料容器と交互に近接して移動するように指示し、それら帯の実行(例えば、所望の温度の維持、試料の画像の取得等)を指示する。例えば、該制御装置は、第一の温度帯の加熱器(複数可)を95℃に、及び第二の温度帯を60℃に維持するように命令を与える。該制御装置は、該往復機構に対して、該試料容器に近接する該2つの温度帯を規定の期間及び規定の回数、動揺するように指示する。該試料容器に適切な試料及び試薬(例えば、標的核酸、ヌクレオチド、プライマー、緩衝剤、マグネシウム、ポリメラーゼ等)があれば、該試料が(温度帯の移動により)2つの温度帯を移動することで、該標的核酸の増幅がもたらされる。いくつかの実施形態では、使用者が、該調製/分析帯の特性及び動作を設定するためにプロセッサに命令を与える。
【0070】
本明細書のシステム/装置は、様々な試料の調製/分析の方法及び適用に使用される。試料は、当該試料容器から該試料を取り出すことなく複数の条件及び/または分析技術に迅速に曝露される。本明細書に記載の多くの実施形態は、複数の温度に試料を曝露することに関する(例えば、サーマルサイクリング)。本明細書に記載のシステム/装置は、必ずしもかかる実施形態に限定されないが、かかる実施形態に関する使用をさらに記載する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書の装置及び方法で使用するための試料は、1つ以上の核酸(例えば、DNA、RNA等)を含む。いくつかの実施形態では、該試料は、標的核酸配列を含むか、または含むと思われる。いくつかの実施形態では、試料内の1つ以上の核酸(例えば、標的核酸)の増幅、検出、定量化等のための方法を提供する。いくつかの実施形態では、様々なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が、本明細書の装置及び方法を用いて採用される。
【0072】
本明細書の装置及び方法は、PCRを実行するのに有用である。本明細書の実施形態で使用され得るPCRのある特定の基本原理は、例えば、参照することによりそれらの全体が組み込まれる米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号、及び第4,965,188号に記載されている。分析または他の用途のため、標的DNAの試料を増幅するのに基本的なPCRが用いられる。PCRは、変性、プライマー対の逆鎖へのアニーリング、及びプライマーの伸長の複数のサイクルを用い、標的核酸配列の複製数を指数関数的に増加させる。基本的なPCR反応は、標的DNA鎖を複製し、次いで該複製を用いてその後のサイクルでさらなる複製を生成することを含む。二本鎖標的DNAの温度を上げて該DNAを変性し(例えば、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、97℃、98℃、99℃、またはそれらの間の範囲(例えば、92~97℃))、その後温度を下げて、変性された標的DNAの各鎖に対して少なくとも1つのプライマーをアニールする(例えば、48℃、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、72℃、74℃、またはそれらの間の範囲(例えば、62~72℃))。いくつかの実施形態では、プライマーは、対、すなわち、順方向プライマー及び逆方向プライマーとして使用され、プライマー対またはプライマーセットと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、該プライマーセットは、変性された標的DNAの一方の鎖の5’末端と結合することができる5’上流プライマー及び変性された標的DNAの他方の鎖の3’末端と結合することができる3’下流プライマーを含む。所与のプライマーが変性された標的DNAの鎖に結合すると、該プライマーは、ポリメラーゼの作用によって伸長される(例えば、該アニーリング温度で、または別の伸長温度で(例えば、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、またはそれらの間の範囲))。いくつかの実施形態では、該ポリメラーゼは、熱安定性のDNAポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ(またはその適切な異形(例えば、AMPLITAQ GOLD、CRIMSON TAQ、DEEP VENTR等))である。アンプリコンと呼ばれる場合がある伸長産物は、次いで得られた鎖から変性され、該プロセスが反復され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供する装置及び方法は、核酸含有試料をPCR反応の様々な温度段階を通すサイクリングに有用である。
【0073】
いくつかの実施形態では、ある装置は、2つの温度帯を含み、試料容器は、所定の期間該帯間を往復する(例えば、該試料容器または該温度帯の移動によって)。いくつかの実施形態では、第一の温度帯は、試料に含まれる標的核酸及び任意のプライマーまたはプローブを変性するのに適した温度のものである。いくつかの実施形態では、試料容器は、第一の温度帯に1~30秒(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、もしくは任意の時間またはそれらの間の範囲(例えば、2~8秒))間維持される。いくつかの実施形態では、第二の温度帯は、プライマー(複数可)を標的核酸にアニーリングするのに適し、ポリメラーゼに新たな相補鎖を合成させる(例えば、伸長)のに適した温度のものである。いくつかの実施形態では、試料容器は、第二の温度帯に1~30秒(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、もしくは任意の時間またはそれらの間の範囲(例えば、2~8秒))間維持される。いくつかの実施形態では、該試料容器は、該2つの温度帯間を2~50サイクル(例えば、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれらの間の値もしくは範囲)往復する。いくつかの実施形態では、帯間を該試料容器が往復する時間は、1秒以下(例えば、1秒、0.75秒、0.5秒、0.4秒、0.3秒、0.2秒、0.1秒、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲(例えば、0.5秒以下))である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ある装置は、3つの温度帯を含み、試料容器は、所定の期間該帯間を往復する。いくつかの実施形態では、該3つの温度帯は、選択的に、所定の期間該試料容器に近づけられる。いくつかの実施形態では、第一の温度帯は、試料に含まれる標的核酸及び任意のプライマーまたはプローブを変性させるのに適した温度のものである。いくつかの実施形態では、試料容器は、第一の温度帯に1~30秒(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、もしくは任意の時間またはそれらの間の範囲(例えば、2~8秒))間維持される。いくつかの実施形態では、第二の温度帯は、プライマー(複数可)を標的核酸にアニーリングするのに適した温度のものである。いくつかの実施形態では、試料容器は、第二の温度帯に1~30秒(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、もしくは任意の時間またはそれらの間の範囲(例えば、2~8秒))間維持される。いくつかの実施形態では、第三の温度帯は、ポリメラーゼに新たな相補鎖を合成させる(例えば、伸長)のに適した温度のものである。いくつかの実施形態では、試料容器は、第二の温度帯に1~30秒(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、もしくは任意の時間またはそれらの間の範囲(例えば、2~8秒))間維持される。いくつかの実施形態では、該試料容器は、該3つの温度帯間を2~50サイクル(例えば、2、4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれらの間の値もしくは範囲)往復する。いくつかの実施形態では、帯間を該試料容器が往復する時間は、1秒以下(例えば、1秒、0.75秒、0.5秒、0.4秒、0.3秒、0.2秒、0.1秒、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲(例えば、0.5秒以下))である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書の装置及び方法は、40サイクルの増幅反応(例えば、2つの温度帯及び1つの検出器)を15分以下(例えば、15分、14分、15分、15分、15分、15分、15分、15分、15分、15分、15分、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲(例えば、6~10分、12分以下等)で行うことが可能である。
【0076】
いくつかの実施形態では、該装置及び方法は、複数の温度を通すサイクリングを利用するPCRまたは他の増幅技術の変形を行うのに使用される。例えば、逆転写PCR(RT-PCR)と呼ばれる変形では、逆転写酵素(RT)を用いてmRNAから相補的DNA(cDNA)を作り、該cDNAを次いでPCRで増幅し、DNAの複数の複製を産生する。いくつかの実施形態では、PCRは、デジタルPCRであり、例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるVogelstein,B.,&Kinzler,K.W.(1999) “Digital PCR”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:9236-9241を参照されたい。一般にLCRと呼ばれるリガーゼ連鎖反応(Weiss,R.,Science 254:1292(1991)、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)は、標的核酸の隣接領域にハイブリダイズする相補的DNAオリゴヌクレオチドの2つのセットを使用する。該DNAオリゴヌクレオチドは、熱変性、ハイブリダイゼーション、及びライゲーションの反復サイクルにおいてDNAリガーゼによって共有結合され、検出可能な二本鎖ライゲートオリゴヌクレオチド産物を産生する。一般にSDAと呼ばれる鎖置換増幅(Walker,G.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89: 392-396(1992)、米国特許第5,270,184号及び第5,455,166号、これらの各々は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)は、プライマー配列対の標的配列の逆鎖へのアニーリング、二重半ホスホロチオエート化プライマー伸長産物を産生するためのdNTPαSの存在下でのプライマー伸長、半修飾制限エンドヌクレアーゼ認識部位のエンドヌクレアーゼ媒介ニッキング、及び、既存の鎖を置き換え、次回のプライマーアニーリング、ニッキング、及び鎖置換のための鎖を産生するための該ニックの3’末端からのポリメラーゼ媒介プライマー伸長のサイクルを使用し、産物の幾何級数的な増幅をもたらす。好熱性SDA(tSDA)は、好熱性エンドヌクレアーゼ及びポリメラーゼを、本質的に同じ方法でより高温にて使用する(欧州特許第0684315号、参照することによりその全体が組み込まれる)。温度変化及び/またはサーマルサイクリングを利用する任意の適切な増幅技術が、本明細書に記載の装置及び方法を用いて行われ得る。既知の増幅方法のさらなる考察に関しては、Persing,David H.,“In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology:Principles and Applications(Persing et al.,Eds.),pp.51-87(American Society for Microbiology,Washington,DC(1993)、参照することによりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0077】
最近では、リアルタイム検出によるPCR反応の反応速度を測定する能力により、定量PCR(qPCR)またはリアルタイムPCR(RT-PCR)にて既知のプロセスにおいて高感度で核酸配列の正確かつ精密な定量化が可能になった。これは、例えば、参照することによりそれらの全体が組み込まれる、Holland et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88, 7276(1991))、Gibson et al.(Genome Res.6, 99(1996))、及びHeid et al.(Genome Res.6, 986(1996))によって記載されているTAGMAN5’蛍光発生ヌクレアーゼアッセイ、または“Molecular Beacons”(Tyagi,S.and Kramer,F.R.Nature Biotechnology 14, 303(1996))等の蛍光二重標識ハイブリダイゼーションプローブ技術によって、増幅プロセスの過程でPCR産物の蛍光観察及び測定を通してPCR産物を検出することによって可能になった。Nazarenko et al.(Nucleic.Acids Res.25, 2516(1997)、参照することによりその全体が組み込まれる)は、二重標識ヘアピンプライマーの使用、及び単一のフルオロフォアのみで標識されたプライマーを利用する最近の変更を記載している(Nazerenko et al.,Nucleic.Acids Res.(2002)、参照することによりその全体が組み込まれる)。より広く用いられている方法の1つは、二本鎖DNA特異的蛍光色素の該反応への添加である。例えば、エチジウムブロマイド(Higuchi et al.,Biotechnology(1992)及びHiguchi et al.,Biotechnology 11, 102610, 413(1993))、YO-PRO-1(Ishiguro et at.,Anal.Biochem.229, 207(1995))、またはSYBR Green I(Wittwer et al.,Biotechniques 22,130(1997))、参照することによりそれらの全体が組み込まれる。これらPCR法の改良が、同時増幅、及び、PCR産物の精製もゲル電気泳動による分離もない、増幅核酸の均一な検出をもたらした。この複合法は、試料をさらなる分析のために閉鎖された容器から取り出す必要がないため、試料の取り扱いを減らし、時間を削減し、後続の反応に対する産物の汚染のリスクを大幅に減少させる。
【0078】
リアルタイムPCRによる鋳型定量化の一般原則は、参照することによりそれらの全体が組み込まれるHiguchi et al.,Bio/Technology 10:413-417, 1992、Higuchi et al.,Bio/Technology 11:1026-1030によって開示された。定量PCRのためのこの方法は、増幅反応に添加される二本鎖特異的蛍光色素であるエチジウムブロマイドを利用する。各PCRサイクルで生成される蛍光シグナルは、PCR産物の量に比例する。蛍光対サイクル数のプロットを用いて、増幅の反応速度を記載し、蛍光閾値レベルは、初期鋳型濃度に関連する部分サイクル数(fractional cycle number)を定義するために用いた。具体的には、初期鋳型濃度の対数は、蛍光対サイクル数曲線と蛍光閾値の交点として定義される部分サイクル数(閾値サイクル、またはCt)に反比例する。開始鋳型量が多いほど、低いCt値でのPCR検出となり、量が少ないほど、同一の蛍光閾値(Ct)に達するまでに必要なPCRサイクル数は大きくなり、より高いCt値で検出される。通常、この蛍光閾値の設定は、バックグラウンドの蛍光ノイズに対して、統計的に有意な増加を表すレベルとして定義される。これは、臨界基質が制限されていないPCRプロセスの初期に生じるため、開始鋳型の定量化は、高精度、高精密、及び高感度で広いダイナミックレンジにわたって行われる。
【0079】
qPCRは、出発物質としてDNAまたはRNAを利用して行うことができる。DNA標的に対しては、標準PCRプロトコルが使用され得る。定量的逆転写PCR(RT-qPCR)は、出発物質がRNAの場合に使用される。RNAは、最初に逆転写によって相補的DNA(cDNA)に転写される(例えば、全RNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)から)。該cDNAはその後、qPCR反応の鋳型として使用される。いくつかの実施形態では、記載の装置は、一段階RT-qPCR(例えば、逆転写後、cDNAを精製しないRT-qPCR)の実行に使用され、多くの有用なサイクルを実行するようにプログラムされ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、qPCRは、すべての二本鎖DNA(またはすべての二本鎖核酸)に非特異的に結合する蛍光色素を利用する。例えば、SYBR Greenは、すべての二本鎖DNAに結合する一般に使用される蛍光DNA結合色素であり、その検出は、サイクルを通して蛍光の増加を測定することによって観察され得る。SYBR Greenの強度の増加は、二本鎖DNA(例えば、増幅DNA)の濃度の増加と相関する。SYBR Green Iは、励起及び発光極大がそれぞれ、494nm及び521nmである。いくつかの実施形態では、qPCRプロトコルは、プローブ系のqPCRを含む。プローブ系QPCRは、所望のPCR産物の配列特異的な検出に依存している。すべての二本鎖DNAを検出するSYBR系QPCR法とは異なり、プローブ系QPCRは、蛍光標識標的特異的プローブを利用し、特異性及び感度が高くなる。複数の、検出可能に異なる標識プローブの使用により、単一の試料中で複数の標的配列の検出が可能になる。いくつかの実施形態では、本明細書の装置は、上記の検出法のいずれかで、任意の適切な色素またはプローブで、及び当分野で理解される任意の他のqPCR法(例えば、TAQMANプローブ)で、qPCRを実施するのに使用される。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供する装置及び方法は、標的核酸を定量化するため及び/またはその増幅を観察するための、qPCR反応の様々な温度段階及び検出帯を通る核酸含有試料のサイクリングに有用である。いくつかの実施形態では、装置は、2つまたは3つの温度帯及び少なくとも1つの検出帯を含む。本明細書に記載の通り、検出帯は、所望のフルオロフォアの発光波長を網羅する蛍光光度計、画像センサー、デジタルカメラ、CCD、または試料容器の蛍光を検出することもしくは画像を作り出すことが可能な任意の他の装置を含み得る。いくつかの実施形態では、該試料容器は、上記及び本明細書の他の箇所に記載の通り、温度帯を往復し(例えば、試料容器または温度帯の移動)、サイクル中の所望の点で、検出帯に移動し、蛍光が測定され、及び/または試料容器の画像が取得され、該試料容器はサイクルを続ける。いくつかの実施形態では、検出は、伸長後、変性前に行われる。いくつかの実施形態では、検出は、サイクル中の任意の他の周期的に生じる点で行われる。いくつかの実施形態では、プログラムは、サイクルごとに単一の検出ステップを含む。いくつかの実施形態では、検出ステップは5秒以下(例えば、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、0.75秒、0.5秒、もしくはそれ以下、またはそれらの間の範囲(例えば、<1秒))である。
【0082】
いくつかの実施形態では、様々な試薬がPCR、pPCR、及び/または本明細書に記載の装置を用いる他の方法での使用のために提供される。かかる試薬としては、水、緩衝剤、dNTP、プライマー、対照群、触媒(例えば、マグネシウム触媒(MgCl2等)、開始剤、プロモーター、補因子、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、塩、緩衝剤、キレート剤、プローブ、蛍光色素、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、複数のqPCR反応(例えば、複数の標的に対して検出可能に異なる色素)及び/または他の増幅反応が単一の試料容器内で行われる。いくつかの実施形態では、複数のqPCR反応(例えば、複数の標的に対して検出可能に異なる色素、複数の異なる試料容器で同じ色素)及び/または他の増幅反応が、本明細書に記載の装置及び方法を用いて並行して行われる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置は、核酸増幅に限定されないが、反復する温度変化及び/またはサーマルサイクリングが使用される任意の技術で使用され得る。
【0085】
本明細書に記載の装置及び方法の多数の利点(例えば、比較的従来のPCRシステムに対して)、例えば、より速い熱伝達、より低い電力消費、自己充填容器(複数可)、蛍光読み取り用の広視野、標準PCR試薬を用いる核酸試験プロトコル、反応に使用される同じ容器内で保存される乾燥試薬、PMC材料の大きなシートを被覆し、乾燥し、その後切り取り、組み立てることができる等が存在する。
【0086】
本明細書に記載の装置及び方法は、様々な用途、例えば、診断用途(例えば、診療現場での感染症試験)、ハイスループット核酸試験システム、環境試験、食品試験、家畜試験等に使用される。本明細書の装置及び方法は、試料、時間、及びエネルギーの要求が低いため、従来のシステム及びプロトコルが実用的でない用途において有用である。
【実施例】
【0087】
実施例1
例示的な装置
以下の実施例は、試料中の核酸の増幅及び検出用の例示的な装置及びプロトコルを記載する。本明細書の実施形態の範囲全体を限定するものではないが、本実施例は、本実施例で記載の通り使用される場合もあれば、本明細書の範囲内の代替的な組み合わせ及び構成で使用される場合もある特徴、要素、及びステップを提供する。
【0088】
多孔質容器の往復(PCS)は、qPCRを、標的核酸及び反応物を含む溶液が充填された多孔質容器(PC)を3つの位置、すなわち、(1)高温加熱器(例えば、95℃)、(2)低温加熱器(例えば、60℃)、及び(3)前面蛍光光度計の間を往復させることによって行う。このPMCは、毛細管現象を介してPCR溶液をこのPMCの飽和点まで吸い込む多孔質材料(例えば、ガラス繊維デプスフィルタ)の薄肉ディスクである。液体で飽和したPMCは、これら加熱器のいずれかと接触すると急速に温度が変化する。このPCの温度が加熱器の温度で安定するのに、数秒(例えば、1~10秒)しか必要としない。これらの加熱器は定温であるため、これらの数秒は熱伝達に必要な合計時間を表している。
【0089】
このPMC(
図6A)は、薄肉プラスチックシート(例えば、ポリカーボネートプラスチック)から切り取られた「ブレード」(
図6B)に保持されている。このブレードは、このブレード及びPCと接触する表面に疎水性被覆剤が施された2枚の透明フィルムに挟まれている(
図7A~C)。このPMCの高い毛細管現象、及びそれに接触する疎水性表面の組み合わせが、このPMCが処理位置間を往復する際の液体の損失を最小にする。いくつかの実施形態では、このPC、ブレード、及びカバーフィルムは、使い捨てのカセットに形成される。液体試料は、上部フィルムの穴を介して添加される。このブレードは、機械的または磁気的手段のいずれかによって駆動モーターに結合され得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、PMCをPCR試薬で被覆し、乾燥する。それらは、核酸試験液がそのPCに添加された際に再水和される。他の実施形態では、試薬は、核酸試験液に添加し、その後PMCに移すか、または、PMCに別々に移す。
【0091】
例示的なPCRプロトコルでは、DNAまたはRNAを、最初に試料または標本から抽出し、水溶液に集める。例えば、核酸を、血液から抽出し、シリカ被覆常磁性粒子(PMP)にロードし、水溶液に溶離する。この核酸溶液のアリコートを、上部フィルムのポートを介してPMCに移す(例えば、ピペットまたは他の液体輸送装置で)。PMC内の乾燥された試薬は再水和し、この水溶液中に溶解する。これは、PMCの至る所で水分を逃がし、毛細管力で含まれる。
【0092】
このカセットをその後、機器に配置し、ここで、ブレードが往復駆動モーターと係合する(
図8A~C)。埋め込みマイクロコントローラーが、3つの処理位置間の往復のサイクルを行う。標的がRNAの場合、第一の処理位置は、このRNA標的のDNA複製を作る逆転写酵素を最適化するように設定された温度を有する。各サイクルの例示的な順序は、次の通りである:1)95℃で5秒間加熱、2)60℃で5秒間加熱、蛍光読み取り。
【0093】
いくつかの実施形態では、蛍光読み取り値は、各サイクル間でとる。他の実施形態では、試料は、2つの加熱帯間のみでサイクルを行い、増幅は終点の読み取りで分析する(例えば、その装置上または別の機器上で)。
【0094】
実施例2
温度応答
図8に示す種類のものである
図9Aに示す装置を用いて、2枚の0.25mm厚フィルター間に挿入された熱電対で温度応答を測定した(
図9B)。温度は、設定点の0.1℃以内に維持した。57℃から97℃までの加熱時間は3.6秒であり、97℃から57℃までの冷却時間は4.1秒であり、時定数は約1秒であった。
【0095】
実施例3
DNA増幅
図8に示す種類のものである
図9に示す装置を用いたDNA増幅(レーン1及び2)を、60℃及び95℃に保持した水槽間でのカセットの往復(レーン3)、及び水槽でのサイクルを行ったガラス製毛細管での陽性対照(レーン4)と比較するための実験を本明細書の実施形態の開発過程で行った(
図7参照)。各サイクルは、40回実施する5秒間95℃及び5秒間60℃からなる。このPCR反応物を、短い遠心分離ステップによりフィルターから回収し、そのDNAを4%アガロースゲルにて分析した。この実験は、これらの例示的なカートリッジ及び装置が、PCRと適合すること、ならびにこのテストベッドがフィルター系のカートリッジでの増幅をもたらすことを示している。
【0096】
実施例4
例示的装置
以下の実施例は、試料中の核酸の増幅及び検出のための例示的な装置及びプロトコルを記載する。本明細書の実施形態の範囲全体を限定するものではないが、本実施例は、本実施例で記載の通り使用される場合もあれば、本明細書の範囲内の代替的な組み合わせ及び構成で使用される場合もある特徴、要素、及びステップを提供する。
【0097】
例示的なPMC往復装置を
図11~15に示す。本構成では、上部及び下部フィルムは固定であり、PMC及びブレードのみが移動する。利点としては、(1)PCRの開始前に、PMCを充填ポートから離すための手段の排除、(2)各サイクルを加熱及び冷却するための熱質量がより小さいこと、及び(3)フィルムの熱伝達領域で、蛍光読み取り領域の材料とは異なる材料の使用可能性が挙げられる。
【0098】
実施例5
さらなる装置の実施形態
以下の実施例は、本明細書に記載の装置/システムとの組み合わせに使用され得るさらなる実施形態を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態では、ホルダー磁石をムーバー磁石の対と結合し、例えば、バックラッシュ/ヒステリシスを低減する。例えば、2つのムーバー磁石を使用して、ホルダー磁石の両側に結合する。ホルダー磁石がムーバー磁石を横切って引っ張られると、最も高い勾配の結合位置で止まる。このホルダー磁石は、ムーバー磁石からさらに離されると、この位置に引き戻される。ムーバー磁石がホルダー磁石の両側の最大勾配位置にある場合、これら3つの磁石は、安定平衡点を与える。滑り摩擦がホルダー磁石を所望の位置から引き離す場合、摺動が止まれば戻るはずである。
【0100】
いくつかの実施形態では、構成要素及びアセンブリのコスト及び重量は、あまり硬質でない材料を、例えば、ホルダーに使用することで削減される。例えば、ポリカーボネートプラスチックのフレームは、本明細書のある特定の実施形態での使用には十分に硬質のカセットを提供する。
【0101】
いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、カセットまたは装置に沿って、放射状ではなく直線状に移動する(
図16)。この直線運動は、カートリッジの設置面積を減らし、ムーバー磁石の数を減らす。
【0102】
いくつかの実施形態では、試料容器は、多孔質媒体容器を含み、ここでは、液体試料が織布、フィルターパッド等に吸収される。しかしながら、他の実施形態では、この溶液は、その流体とチャンバー自体の間で表面張力によりその場に保持される。例えば、容器のウェルが直径D=2R、ただし、Rは半径、及び高さHを有し、重力の物体力が表面張力の力よりはるかに小さい場合、その流体は表面張力によりウェル内に保持される。重力は、ρgh、ただし、ρ=液体の密度(ρ=1000kg/m2)、g=重力定数(g=9.8m/s2)、及びH=ウェルの高さ、で与えられる。表面張力の力は、σ/R、ただし、σは表面張力、で与えられる。これらの力の間の関係は、従って、ρgH<<σ/Rで書かれる。Rについて解くと、R<<σ/ρgHを与える。H=0.5mmの場合、これは、我々がブレードに使用する0.020”厚さのポリカーボネートシートであるが、R<<14.7mmである。Rが1/10の場合、下記(1)式である。このサイズのウェルは、3.5ulの容積を有する。直径5mmのウェルは、容積20ulを有する。重力対表面張力の力の比率であるボンド数は、0.17である。直径が2mmの場合、ボンド数は0.07である。
【式1】
【0103】
【0104】
いくつかの実施形態では、ウェルの深さを小さくしてより大径のウェルを収容するか、または、直径がより小さい場合には深くする。小径で深いウェルは、パッキングの観点から好ましいが、深さは熱輸送経路長を長くし、熱伝達を遅くする。
【0105】
いくつかの実施形態では、試料容器を囲むプレートは、伝導性材料(例えば、アルミニウムまたは他の伝導性金属)を含む。例えば、試料ホルダー全体ではなく試料チャンバーを直接取り巻くプレートは、伝導性金属を含み(
図17A)、これがプレートを良好な熱伝導体製とするため、試料は、側面ならびに上部及び下部から加熱される。上面と下面の中間にあるウェル内の流体の温度は、指数級数の時間反応を有する。指数項の係数は、分子に熱拡散率及び分母に流体の深さの二乗を有する。0.5mm厚さのパッドの場合、このモデルでは、我々の材料の熱拡散率で加熱器の設定点の5%以内に至るのに3秒かかると予測され、実験的に観察されたものに近い。厚さを半分にして0.25mmにすることで、この時間が0.75秒に短縮される。
【0106】
いくつかの実施形態では、試料ホルダーは、複数の試料容器を含む(
図17B)。かかる配置の利点としては、色素の色に制限されない多重化、及び標的を分割して検出限界を下げることが挙げられる。単一のウェルで複数のアッセイを行うことは、アッセイ及び計装設計の両方にいくつかの課題をもたらす。複数のウェルに試料を分割することで、反応速度論をはるかに単純にし、より強くする。
【0107】
いくつかの実施形態では、蛍光は、カメラチップで読み取る。単一のウェル内の複数のPCR反応を読み取るためのシリコンフォトダイオード検出器の場合、干渉フィルターを用いて波長ごとに異なる色素を分離し、複数のLEDを使用して励起する。各アッセイを別々のウェルで行う場合、これらの課題は除去される。代償は、試料中のNAを分割しなければならないことであり、これにより、各ウェルの標的数が減少する。いくつかの実施形態では、すべてのウェルを同時に画像化し、これにより、読み取り時間が短縮される。いくつかの実施形態では、市販の低照度裏面照明カメラチップで画像を取得する。
【0108】
いくつかの実施形態では、毛細管装置を使用して試料を移し、これにより、装置を使用するためのピペットの必要性がなくなる。毛細管力は、試料を前処理ウェルからPCRウェルに移すのに用いる。
【0109】
実施例6
常磁性粒子
本明細書に記載の装置及びシステム内のアッセイ性能に対して常磁性粒子(PMP)が与える影響を判断するための実験を本明細書の実施形態の開発過程で行った。
図22は、7種の異なるPMP及び凍結乾燥PCR試薬がPCRの有効性に与える影響を調べる実験の結果を示す。
図23は、これらPMPをPCR試薬とともに凍結乾燥することの影響を調べる実験の結果を示す。