(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ポーラスコンクリート補修方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20241028BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20241028BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20241028BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241028BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C04B28/02
E01C23/00 A
C04B24/26 E
C04B22/06 Z
E04G23/02 B
(21)【出願番号】P 2020172023
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517188312
【氏名又は名称】有限会社渋谷建材
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】大曽根 勇太
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155758(JP,A)
【文献】特開2001-247350(JP,A)
【文献】特許第6606782(JP,B1)
【文献】特開2018-065708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
E01C 21/00-23/24
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材が分離した状態の透水性ポーラスコンクリートを補修する、ポーラスコンクリート補修方法であって、
普通ポルトランドセメントと、シリカフュームと、高性能AE減水剤と、水と、を混合してポーラスコンクリート補修材を構成する工程と、
内部に粉砕石を収容した容器内に、前記ポーラスコンクリート補修材を充填する工程と、
前記容器の管状の吐出口から、ポーラスコンクリートの骨材が分離している箇所に、前記粉砕石が含まれた前記ポーラスコンクリート補修材を吐出して浸透させる工程と、を備える、
ポーラスコンクリート補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポーラスコンクリート補修方法であって、
前記普通ポルトランドセメントを154.5g、前記シリカフュームを5.54g、前記高性能AE減水剤を3.86g
、上水道水を52.2g、の割合で混合する、
ポーラスコンクリート補修方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポーラスコンクリート補修方法であって、
前記普通ポルトランドセメントを468g、前記シリカフュームを16.8g、前記高性能AE減水剤を12g
、上水道水を158g、の割合で混合する、
ポーラスコンクリート補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーラスコンクリート舗装の補修を行うために用いる補修材及び補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、コンクリートとは、砂利、砂などの骨材を、水硬性のセメントと水からなる結合剤(セメントペースト)を混合して練り、硬化結合させた複合材料をいう。コンクリートの施工は、均一で密実となるよう十分に締固めを行い、構造物の耐久性及び水密性を高めるために表面仕上げを行う。
【0003】
そして、透水性ポーラスコンクリートは、砂利、砂(少量又は使用しない)などの骨材を、水硬性のセメントと少量の水からなる結合剤(セメントペースト)を混合して練り、多孔質構造にしたものである。透水性ポーラスコンクリートは、連続した空隙が形成されることによって、雨水等を地下に浸透させる透水機能や、地下水など集水したものを排水する排水機能、空隙部に浸透した水を一時的に蓄える貯留槽の役目などの機能を備えたものとなっている。その施工方法は、敷き均した透水性ポーラスコンクリートを、プレートコンパクタで転圧して仕上げる。
【0004】
一方で、透水性ポーラスコンクリートは、多孔質構造であるために表層部の骨材の飛散、プレートコンパクタの転圧不足による骨材同士の接合不良、施工不良に伴う材料の乾燥による表層部の骨材飛散、などの損傷が生じる場合がある。このようなポーラスコンクリートを補修する方法として、特許文献1に開示の方法がある。具体的に、特許文献1に開示の方法では、ポーラスコンクリートの損傷部を撤去し、かかる損傷部の撤去部位にメッシュ状の繊維ネットを接着剤で張り付け、かかる部位にポーラスコンクリートを打設する、という工程を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したポーラスコンクリートを補修する方法では、損傷部の撤去や繊維ネットの貼り付けといった作業が必要である。その結果、補修に手間や時間がかかるという問題や、損傷部を撤去していることから補修後の強度にも問題が生じる。
【0007】
このため、本発明の目的は、上述した課題を解決し、補修に手間や時間がかからず、補修後も高強度に保つことができる、ポーラスコンクリート補修材及びポーラスコンクリート補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態であるポーラスコンクリート補修材は、
材料として、普通ポルトランドセメントと、シリカフュームと、高性能AE減水剤と、上水道水と、を混合して構成される、
という構成をとる。
【0009】
また、上述したポーラスコンクリート補修材では、
前記普通ポルトランドセメントを154.5g、前記シリカフュームを5.54g、前記高性能AE減水剤を3.86g、前記上水道水を52.2g、の割合で混合して構成される、
という構成をとる。
【0010】
また、上述したポーラスコンクリート補修材では、
前記普通ポルトランドセメントを468g、前記シリカフュームを16.8g、前記高性能AE減水剤を12g、前記上水道水を158g、の割合で混合して構成される、
という構成をとる。
【0011】
また、本発明の他の形態である、上述したポーラスコンクリート補修材を用いたポーラスコンクリート補修方法は、
前記ポーラスコンクリート補修材を構成する材料を攪拌して練り混ぜ、当該練り混ぜた前記ポーラスコンクリート補修材を管状の吐出口を有する容器に充填し、前記容器の前記吐出口からポーラスコンクリートの所定箇所に前記ポーラスコンクリート補修材を吐出する、
という構成をとる。
【0012】
また、上述したポーラスコンクリート補修方法では、
所定場所にポーラスコンクリートを施工する際に、当該ポーラスコンクリートを転圧した直後に、当該ポーラスコンクリートの所定箇所に前記ポーラスコンクリート補修材を吐出する、
という構成をとる。
【0013】
また、上述したポーラスコンクリート補修方法では、
施工済みのポーラスコンクリートの所定箇所に前記ポーラスコンクリート補修材を吐出し、当該ポーラスコンクリート補修材を吐出した箇所に新たなポーラスコンクリートを盛って転圧する、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成されることにより、ポーラスコンクリートの補修に手間や時間がかからず、補修後のポーラスコンクリートも高強度に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を説明する。本発明は、透水性のポーラスコンクリートを補強、補修するための流動性のある補修材であり、また、かかる補修材を用いた補修方法である。
【0016】
本発明の補修材を用いて補強・補修される透水性のポーラスコンクリートは、一般的に以下の方法で施工される。まず、砂利、砂(少量又は使用しない)などの骨材を、水硬性のセメントと少量の水からなる結合剤(セメントペースト)を混合して練る。そして、練り上げた材料を敷き均し、プレートコンパクタで転圧して仕上げる。これにより、敷設された透水性のポーラスコンクリートは、多孔質構造となり、連続した空隙が形成されることによって、雨水等を地下に浸透させる透水機能や、地下水など集水したものを排水する排水機能、空隙部に浸透した水を一時的に蓄える貯留槽の役目などの機能を備える。
【0017】
次に、本発明であるポーラスコンクリート補修材について説明する。まず、ポーラスコンクリート補修材は、下記の表1に示す材料を混合して構成される。つまり、ポーラスコンクリート補修材は、普通ポルトランドセメントと、シリカフュームと、高性能AE減水剤と、上水道水と、を材料とする。
【0018】
そして、ポーラスコンクリート補修材は、特に、各材料を表1に示す配合とすると望ましい。具体的に、表1式の(1)列に示すように、基準単位量として、容積100mL当たりのポーラスコンクリート補修材を生成する場合には、普通ポルトランドセメントを154.5g、シリカフュームを5.54g、高性能AE減水剤を3.86g、上水道水を52.2g、用いると望ましい。そして、上述した各材料の割合を変えることなく、生成するポーラスコンクリートの容積に応じて、各材料の量を変更することとする。
【0019】
【0020】
なお、ポーラスコンクリート補修材は、後述するように練り混ぜ時や施工時にそれぞれ容器に収容されるが、容器の内部に全容積の1%程度が付着して残ることが想定される。このため、所望の容積の使用を保証するためには、使用保証容積に対して1%多く生成することが望ましい。すると、基準単位量である容積100mLを使用保証容積とする場合には、各材料を1.01倍とし、表1の(2)列に示す量を用いると望ましい。そして、使用保証容積を300mLとした場合には、各材料を表1の(3)列に示す量とすると望ましい。但し、実際に製品として販売する際に使用保証容積を約300mLとした場合には、表1の(4)列に示す量とすることとする。つまり、普通ポルトランドセメントを468g、シリカフュームを16.8g、高性能AE減水剤を12g、上水道水を158g、用いることとする。なお、使用保証容積を変更する場合には、使用保証容積に応じて、表1(4)列に示す各材料の割合で当該各材料の量を変更してもよい。
【0021】
ここで、ポーラスコンクリート補修材に用いられる上述した各材料の規格を、以下の各表に示す。表2は普通ポルトランドセメントの規格値、表3はシリカフュームの規格値、表4は高性能AE減水剤の規格値、を示している。また、表5は、上述した上水道水の代わりに使用可能な水の品質を示している。つまり、ポーラスコンクリート補修材に、上水道水の代わりに、表5に示す品質の水であれば河川水や工業用水などのいかなる水を用いてもよい。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
次に、ポーラスコンクリート補修材を用いた補修方法を説明する。まず、上述した各材料を混合することで、ポーラスコンクリート補修材を生成する。具体的に、ポーラスコンクリート補修材は、上述した表1の(1)列あるいは(4)列に示す割合の各材料を、所定の容器内で混合して一定時間攪拌し、練り混ぜる。そして、ポーラスコンクリート補修材を、予め所定量の粉砕石が収容された施工用容器に充填する。これにより、施工用容器内に、粉砕石が含まれた流動性のあるスラリー状のポーラスコンクリート補修材が生成されることとなる。
【0027】
その後は、ポーラスコンクリートを補強あるいは補修したい箇所に、施工用容器の吐出口から、所定量のポーラスコンクリート補修材を吐出する。これにより、吐出されたポーラスコンクリート補修材は、流動性を有することから、ポーラスコンクリートの間隙部に容易に浸透し、かかる間隙部に浸透した状態で硬化結合する。その結果、骨材同士の付着性を向上させ、骨材の飛散を低減することができる。なお、ポーラスコンクリート補修材は、ポーラスコンクリートを施工している最中に利用してもよい。具体的には、所定場所にポーラスコンクリートを施工する際に、当該ポーラスコンクリートを転圧した直後に、当該ポーラスコンクリートを補強・補修したい箇所にポーラスコンクリート補修材を吐出してもよい。例えば、施工したポーラスコンクリートと他の物体と境界箇所に、ポーラスコンクリート補修材を吐出して補修することが考えられる。
【0028】
また、ポーラスコンクリート補修材は、施工済みのポーラスコンクリートの平坦性を直す場合に用いられてもよい。この場合、施工済みのポーラスコンクリートの高さが低い箇所にポーラスコンクリート補修材を吐出し、当該ポーラスコンクリート補修材を吐出した箇所に新たなポーラスコンクリートを盛って転圧する。これにより、施工済みのポーラスコンクリートと新たに盛ったポーラスコンクリートとの一体性を高めることができ、骨材の飛散を低減することができる。
【0029】
そして、上述した材料からなるポーラスコンクリート補修材は、表6に示す性能を有する。以上より、本発明におけるポーラスコンクリート補修材を用いることにより、ポーラスコンクリートの補修に手間や時間がかからず、補修後のポーラスコンクリートを高強度に保つことができる。
【0030】
【0031】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。